説明

チューブ容器

【課題】コストの上昇を抑制しつつ、吐出頭部の表面およびこの表面上の内容物に付着した雑菌に起因して、内容物が腐敗あるいは変質するのを抑制する。
【解決手段】有底筒状の容器本体と、この容器本体の上端開口部に取り付けられた吐出頭部11とが備えられるとともに、この吐出頭部11の天面12に吐出孔13が形成されたチューブ容器10であって、吐出頭部11は抗菌剤を含有する樹脂材料で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチューブ容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のチューブ容器として、例えば下記特許文献1に示されるような、有底筒状の容器本体と、この容器本体の上端開口部に取り付けられた吐出頭部とが備えられるとともに、この吐出頭部に吐出孔が形成された構成が知られている。このチューブ容器は、例えば、容器本体を指で押圧して凹ませ吐出孔から吐出頭部の表面に内容物を吐出しつつ、この表面を被塗布部に押し当てることによって、被塗布部に内容物を塗布して用いられている。
ところが、吐出頭部の表面を被塗布部に押し当てた際、吐出頭部の表面およびこの表面上の内容物に被塗布部から雑菌が付着し、この雑菌が吐出孔から吐出頭部内に進入して、吐出頭部内の内容物を腐敗あるいは変質させる等のおそれがあった。
このような問題を解決するための手段として、例えば下記特許文献1に示されるように、使用後に吐出頭部の表面上に残存している内容物を吐出頭部内に進入させない弁機構を吐出頭部に設けることが考えられる。
【特許文献1】特開2005−126120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような構成では、弁機構を設けたことにより部品点数や組立て工程数が増大するため、チューブ容器の高コスト化につながるおそれがある。
【0004】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、コストの上昇を抑制しつつ、吐出頭部の表面およびこの表面上の内容物に付着した雑菌に起因して、内容物が腐敗あるいは変質するのを抑制することができるチューブ容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のチューブ容器は、有底筒状の容器本体と、この容器本体の上端開口部に取り付けられた吐出頭部とが備えられるとともに、この吐出頭部に吐出孔が形成されたチューブ容器であって、前記吐出頭部は抗菌剤を含有する樹脂材料で形成されていることを特徴とする。
この発明では、吐出頭部が抗菌剤を含有する樹脂材料で形成されているので、使用後に前記吐出頭部の表面に残存した内容物が、この表面上で腐敗するのを抑制することができるのはもちろん、たとえ吐出孔を介して吐出頭部内に進入しても、この吐出頭部内で腐敗するのを抑制することができる。すなわち、前記抗菌剤により、吐出頭部の表面上および吐出頭部内それぞれにおいて、吐出頭部の表面およびこの表面上の内容物に付着した雑菌が増殖するのを抑制したり、あるいは経時的に前記雑菌の生菌数を減少させることができる。そして、このように腐敗の発生が抑えられることから、内容物に添加する防腐剤の量を低減することも可能になり、内容物の製造コストを削減することができる。
【0006】
ここで、前記吐出孔は、吐出頭部の表面においてその内方に向けてへこんだ凹曲面状部分に形成されてもよい。
この場合、吐出孔が凹曲面状部分に形成されているので、吐出頭部の表面に内容物を吐出しつつ、この表面を被塗布部に押し当てたときに、内容物が吐出頭部の表面上で必要以上に拡がるのを抑制することが可能になり、吐出頭部の表面において、被塗布部と接触して雑菌が付着した部分に残存する内容物の量を低減することができ、前記腐敗の発生を一層抑えることができる。
【0007】
また、前記樹脂材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、およびポリエステルから選択される少なくとも1種であってもよい。
この場合、チューブ容器の製造コストの増加を抑制できる。
【0008】
さらに、前記吐出頭部は多層構造とされ、最内層部、および最外層部が抗菌剤を含有する樹脂材料で形成されてもよい。
この場合、抗菌剤が、吐出頭部のうち最内層部および最外層部に限定して含まれているので、製造コストを増大させることなく、前記腐敗の発生を抑制することができる。
【0009】
また、前記吐出頭部は、外部からの押圧で実質的に変形不能とされてもよい。
この場合、吐出頭部の表面を被塗布部に押し当てて内容物を被塗布部に塗布する際に、前記吐出頭部が実質的に変形しないので、塗布終了後に吐出頭部を被塗布部から離したときに、吐出頭部の内部空間体積が増大するのを防ぐことができる。したがって、前記吐出頭部の表面上の内容物が、塗布終了後に、吐出孔からの負圧吸引力によって吐出頭部内に吸引されるのを抑制することが可能になり、吐出頭部内の内容物が腐敗するのを確実に抑えることができる。
【0010】
さらに、前記抗菌剤はケイ酸塩系、リン酸塩系または溶解性ガラスから選択される担体に抗菌性金属を担持させた無機系の抗菌剤であってもよい。
この場合、吐出頭部を成形するのに前記樹脂材料を溶融したときの熱によって、前記抗菌剤の抗菌作用が低下するのを、有機系の抗菌剤と比べて抑えることができる。特に、吐出頭部を成形したときに発生した例えばランナーなどの非製品部分を、再溶融して新たな吐出頭部を成形する材料の一部として使用する場合にも、抗菌剤の抗菌作用が低下するのを抑制することができる。したがって、例えば、前記非製品部分を新たな吐出頭部を成形する材料の一部として使用する製造方法を採用して、前記の作用効果を有するチューブ容器を形成することが可能になるので、このチューブ容器の製造コストが増大するのを確実に抑制することができる。
【0011】
また、前記チューブ容器には、実質的に防腐剤を含有しない内容物が充填されてもよい。
この場合、内容物の製造コストを削減することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係るチューブ容器によれば、コストの上昇を抑制しつつ、吐出頭部の表面およびこの表面上の内容物に付着した雑菌に起因して、内容物が腐敗あるいは変質するのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。この実施形態に係るチューブ容器10は、図1に示されるように、有底筒状の容器本体と、この容器本体の上端開口部に取り付けられたドーム形状の吐出頭部11とが備えられるとともに、この吐出頭部11の天面12に吐出孔13が形成されている。さらに、図示の例では、吐出頭部11において天面12の外周縁からほぼ垂下してなる周壁14に着脱可能に螺着されたキャップ15が備えられ、このキャップ15の天面15aの内側に、吐出孔13を閉塞する栓部材15bが垂設されている。
なお、このチューブ容器10には、例えばクリーム等の高粘度で、かつ実質的に防腐剤が含有されていない液状物が内容物として充填される。また、前記容器本体は、外部からの押圧で凹み、かつこの押圧を解除したときに前記凹みが復元するようになっている。
【0014】
そして、本実施形態では、吐出頭部11の天面12において吐出孔13が形成された部分に吐出頭部11の内方に向けてへこんだ凹曲面状部分16が形成されている。図示の例では、凹曲面状部分16において凹曲面の頂部に吐出孔13が形成されている。さらに、吐出頭部11は、抗菌剤を含有する樹脂材料で全体が一体的に形成された単層構造とされている。前記樹脂材料は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体およびポリエステルから選択される少なくとも1種とされ、単独で使用しても、複数種の樹脂を混合して使用してもよい。そして、前記抗菌剤は無機系の抗菌剤、例えば銀、銅または亜鉛等の抗菌性金属を含有する抗菌剤とされている。また、前記抗菌性金属がケイ酸塩系、リン酸塩系または溶解性ガラスから選択される担体に担持された抗菌剤を使用することが好ましい。
【0015】
さらに、本実施形態では、吐出頭部11は、外部からの押圧で実質的に変形不能とされている。例えば、前記容器本体が、前記樹脂材料で形成された場合、吐出頭部11は、外部からの押圧で変形不能な程度に容器本体よりも肉厚が厚くなっている。なお、これに代えて、前記容器本体を、前記樹脂材料以外の他の樹脂材料で形成してもよい。
【0016】
以上のように構成されたチューブ容器10では、まず、キャップ15を吐出頭部11から取り外して吐出孔13を開口させ、その後、容器本体を指で押圧して凹ませ吐出孔13から天面12の表面に内容物を吐出しつつ、この表面を例えば唇等の被塗布部に押し当てることによって、この被塗布部に内容物を塗布して用いられる。
【0017】
以上説明したように本実施形態に係るチューブ容器10によれば、吐出頭部11が抗菌剤を含有する樹脂材料で形成されているので、使用後に天面12の表面に残存した内容物が、この表面上で腐敗するのを抑制することができるのはもちろん、たとえ吐出孔13を介して吐出頭部11内に進入しても、この吐出頭部11内で腐敗するのを抑制することができる。すなわち、前記抗菌剤により、天面12の表面上および吐出頭部11内それぞれにおいて、天面12の表面およびこの表面上の内容物に付着した雑菌が増殖するのを抑制したり、あるいは経時的に前記雑菌の生菌数を減少させることができる。
そして、このように腐敗の発生が抑えられることから、内容物に添加する防腐剤の量を低減することも可能になり、内容物の製造コストを削減することができる。
【0018】
さらに、容器本体および吐出頭部11のうち、吐出頭部11を形成する樹脂材料にのみ抗菌剤が含まれているので、前記腐敗の発生を抑えるためにこのチューブ容器10の製造コストが増大するのを抑えることができる。
また、吐出孔13が凹曲面状部分16に形成されているので、吐出頭部11の天面12に内容物を吐出しつつ、この表面を被塗布部に押し当てたときに、内容物が吐出頭部11の天面12上で必要以上に拡がるのを抑制することが可能になり、天面12において、被塗布部と接触して雑菌が付着した部分に残存する内容物の量を低減することができ、前記腐敗の発生を一層抑えることができる。
【0019】
さらに、前記樹脂材料が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、およびポリエステルから選択される少なくとも1種とされているので、チューブ容器10の製造コストの増加を抑制することができる。
【0020】
また、本実施形態では、吐出頭部11が、外部からの押圧で実質的に変形不能とされているので、塗布終了後に吐出頭部11を被塗布部から離したときに、吐出頭部11の内部空間体積が増大するのを防ぐことができる。したがって、天面12の表面上の内容物が、塗布終了後に、吐出孔13からの負圧吸引力によって吐出頭部11内に吸引されるのを抑制することが可能になり、吐出頭部11内の内容物が腐敗するのを確実に抑えることができる。
【0021】
さらに、前記抗菌剤が、ケイ酸塩系、リン酸塩系または溶解性ガラスから選択される担体に抗菌性金属を担持させた無機系の抗菌剤とされているので、吐出頭部11を成形するのに前記樹脂材料を溶融したときの熱によって、前記抗菌剤の抗菌作用が低下するのを、有機系の抗菌剤と比べて抑えることができる。特に、吐出頭部11を成形したときに発生した例えばランナーなどの非製品部分を、再溶融して新たな吐出頭部11を成形する材料の一部として使用する場合にも、抗菌剤の抗菌作用が低下するのを抑制することができる。したがって、例えば、前記非製品部分を新たな吐出頭部11を成形する材料の一部として使用する製造方法を採用して、前記の作用効果を有するチューブ容器10を形成することが可能になるので、このチューブ容器10の製造コストが増大するのを確実に抑制することができる。
また、チューブ容器10には、実質的に防腐剤を含有しない内容物が充填されているので、内容物の製造コストを低減することができる。
【0022】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
前記実施形態では、吐出頭部11として、外部からの押圧で変形不能な構成を示したが、これに代えて、例えば、吐出頭部11を被塗布部に押し当てたときに、この吐出頭部11が凹むような構成を採用してもよい。
また、前記樹脂材料に含まれる抗菌剤として、無機系の抗菌剤を示したが、これに代えて有機系の抗菌剤を採用してもよい。
【0023】
さらに、前記実施形態では、チューブ容器10に充填される内容物として、クリーム等の高粘度の液状物を示したが、これに代えて、例えば、低粘度の液体を充填してもよい。
さらにまた、前記実施形態では、容器本体として、外部からの押圧で凹み、かつこの押圧を解除したときに前記凹みが復元する構成を示したが、これに代えて、例えばアルミチューブのように外部からの押圧で実質的に変形不能とされた構成を採用してもよい。
【0024】
また、前記実施形態では、吐出頭部11として、抗菌剤を含有する前記樹脂材料で全体が一体的に形成された単層構造を示したが、これに代えて、例えば、中間層部を、抗菌剤を含有しない前記樹脂材料若しくはこの樹脂材料以外の他の樹脂材料、金属箔または蒸着フィルム等で形成する一方、最内層部および最外層部を抗菌剤を含有する樹脂材料で形成してもよい。この場合、抗菌剤が、吐出頭部11のうち最内層部および最外層部に限定して含まれるので、製造コストを増大させることなく、前記腐敗の発生を抑制することができる。さらに、吐出頭部11は、少なくとも最外層部のみを抗菌剤を含有する前記樹脂材料で形成してもよい。また、容器本体についても、単層、積層のいずれで構成しても良い。
【0025】
さらに、前記実施形態における抗菌剤の配合量については、配合量が少ない場合には目的とする抗菌効果が得られず、また、配合量が多い場合には樹脂材料の流動性が悪くなり成形性が低下し、また、外観上、吐出頭部11が白濁するといった問題が生じるため、充填する内容物および前記樹脂材料の各種類や、前記樹脂材料の配合量との関係から目的に応じて適宜設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
コストの上昇を抑制しつつ、吐出頭部の表面およびこの表面上の内容物に付着した雑菌に起因して、内容物が腐敗あるいは変質するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る一実施形態として示したチューブ容器の口部を示す一部縦断面図である。
【符号の説明】
【0028】
10 チューブ容器
11 吐出頭部
12 天面
13 吐出孔
16 凹曲面状部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の容器本体と、この容器本体の上端開口部に取り付けられた吐出頭部とが備えられるとともに、この吐出頭部に吐出孔が形成されたチューブ容器であって、
前記吐出頭部は抗菌剤を含有する樹脂材料で形成されていることを特徴とするチューブ容器。
【請求項2】
請求項1記載のチューブ容器であって、
前記吐出孔は、吐出頭部の表面においてその内方に向けてへこんだ凹曲面状部分に形成されていることを特徴とするチューブ容器。
【請求項3】
請求項1または2に記載のチューブ容器であって、
前記樹脂材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、およびポリエステルから選択される少なくとも1種からなることを特徴とするチューブ容器
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のチューブ容器であって、
前記吐出頭部は多層構造とされ、最内層部、および最外層部が抗菌剤を含有する樹脂材料で形成されていることを特徴とするチューブ容器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のチューブ容器であって、
前記吐出頭部は、外部からの押圧で実質的に変形不能とされていることを特徴とするチューブ容器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のチューブ容器であって、
前記抗菌剤はケイ酸塩系、リン酸塩系または溶解性ガラスから選択される担体に抗菌性金属を担持させた無機系の抗菌剤であることを特徴とするチューブ容器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のチューブ容器であって、
実質的に防腐剤を含有しない内容物が充填されたことを特徴とするチューブ容器。


【図1】
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