説明

チョコレート様食品とキャラメル様食品を具材とした穀粉焼成物並びにその噴出しを抑制した穀粉焼成物の製造方法

【課題】
焼成前に穀粉生地中に埋没させて用いるフィリングとしてキャラメル様食品を用いた場合に、焼成時の噴出しを抑制したキャラメル様食品ならびにキャラメル様食品を用いた際の噴出し抑制方法を提供する。
【解決手段】
穀粉生地中において、本来耐熱性を有さないチョコレート様食品をキャラメル様食品の鉛直方向上方に設置、望ましくはチョコレート様食品で囲うことで、焼成時のキャラメル様食品の噴出しを抑制または防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョコレート様食品とキャラメル様食品を具材とした穀粉焼成物並びにその噴出しを抑制した穀粉焼成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キャラメルとは生クリーム・水飴・砂糖・バターなどを加熱し(「煮詰め」と称する)、それを冷やして固めることで作るソフトキャンディの一種である。
キャラメルのようなショ糖を含む水溶液を煮詰めることで得られるものを本発明はキャラメル用食品と称するが、この煮詰め時の温度(「煮詰め温度」と称する)とその際の水分量で最終製品の物性が異なる。(引用非特許文献1、表1に抜粋)
通常、キャラメル様食品はそれ自体単独で喫食したり、糖衣やチョコレートコーティングをしたものを喫食する用途が主で、パンやケーキなど具材として組み合わせるには大半が堅すぎであり、用いられることはなかった。
【0003】
<表1 ショ糖溶液の煮詰め温度とその性質の変化>

【0004】
一方でパンやケーキなど具材としてはフィリングが広く知られている。フィリングは、広くはパンやケーキなどでは中に詰めたものを指すが、具体的にはカスタードクリームやチョコレートクリーム、フラワーペーストなどといった可塑性のある食材である。
菓子パンなどに用いるフィリングは、菓子パン生地を焼成した後でフィリングを充填するタイプ(以降、焼成後充填タイプと称する)のものと、菓子パンの生地にフィリングを充填した後に焼成するタイプ(以降、焼成前充填タイプと称する)ものに大別される。
後者の焼成前充填タイプ場合はフィリングも焼成にて加熱を受けることになる。特に焼成に対して何らかの機能を付与していない従来のフィリングは加熱により保形性を失い、滲み出したり、ふきこぼれることが多く、商品価値を損ねる物であった。
【0005】
焼成前充填タイプのフィリングに焼成耐性を付与する方法としてはさまざまな検討がなされてきた。
例えば、小麦粉や澱粉、卵白(特許文献1)、ホエイプロテイン濃縮物(特許文献2)、増粘多糖類(LMペクチン・特許文献3)などを配合し焼成時に凝固することで焼成耐性を付与する方法が挙げられる。
しかし、これらの方法では、焼成にてフィリングが熱変性をおこして凝固して堅くなったり、保形性を付与するために用いた澱粉や多糖類などが糊のような食感や弾力、口溶けの悪化を発現させかねず、自由な商品設計を妨げてしまう。
【0006】
フィリングとして求められる機能にパン類と組み合わせて喫食するのに適した様々な風味があり、その中でキャラメル風味のものもある。
前述の通り、焼成後のフィリングの物性としてキャラメル様食品、特にハードキャラメルや通常のキャラメル程度の堅さのものは喫食には硬すぎて適さない。
一部、煮詰め温度の低い物や、さらに生クリームといった水性組成物などを混ぜあわせて水分量を増やした物(所謂生キャラメル)など、キャラメル様食品の範疇の物の中でも比較的低粘度のものの堅さなどは好適であると考えられるが、フィリングとして用いると焼成中に滲み出しやすい。
【0007】
しかも、糖液を煮詰めたキャラメル様食品はその煮詰め温度に係わらずフィリングとして用いると上部方向に向かって激しく吹き上がり、パン類の上層部を突き破ってあふれ飛び散り、商品価値を著しく損なう。
そのためキャラメル風味のフィリングは通常の耐熱性を付与したフィリングにキャラメルパウダーなどで風味付けをしたものであり、現状キャラメル様食品としてフィリングとして好適に用いることができる物は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−191891号公報
【特許文献2】特開昭63−167735号公報
【特許文献3】特開2005−185258号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「お菓子「こつ」の科学−お菓子作りの疑問に答える」河田 昌子、61ページ、柴田書店(1987)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、キャラメル様食品を具材とした穀粉焼成物並びにその噴出しを抑制した穀粉焼成物の製造方法を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、キャラメル様食品とチョコレート様食品を穀粉生地中に特定の位置関係で設置することでキャラメル様食品の噴出しを抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、この発明は、(1)としては、穀粉生地中にキャラメル様食品とその鉛直方向上方3cm以下にチョコレート様食品を配置した上で加熱することを特徴とする穀粉焼成物の製造方法であり、(2)としては、キャラメル様食品をチョコレート様食品で囲う事を特徴とする、(1)記載の穀粉焼成物の製造方法であり、(3)としては、チョコレート様食品が厚さ0.5mm以上である(1)乃至(2)いずれか1項に記載の穀粉焼成物の製造方法であり、(4)としては、キャラメル様食品の水分量が10〜15%であり、且つ糖類を含有する、20℃での硬さが1〜300g/mm2である(1)乃至(3)いずれか1項に記載の穀粉焼成物の製造方法であり、(5)としては、キャラメル様食品の煮詰め温度が110℃〜125℃である(1)乃至(4)いずれか1項に記載の穀粉焼成物の製造方法であり、(6)としては、チョコレート様食品の総カカオ分が35重量%以上、カカオ固形分が17重量%以上である(1)乃至(5)いずれか1項に記載の穀粉焼成物の製造方法であり、(7)としては、チョコレート様食品とキャラメル様食品を具材とした穀粉焼成物であり、(8)としては、穀粉焼成物が型焼きである(7)記載の穀粉焼成物であり、(9)としては、キャラメル様食品をチョコレート様食品で囲うことを特徴とする、噴出し抑制具材である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、キャラメル様食品を、本来耐熱性を有さないチョコレート様食品で囲うことでキャラメル様食品の噴出しを抑制または防止する効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1に係る、キャラメル様食品を埋没させた穀粉焼成物を示す図である。
【図2】本発明の実施例8に係る、殻状チョコレート様食品にキャラメル様食品を流し入れたものを開口部が下になるように埋没させた穀粉焼成物を示す図である。
【図3】本発明の比較例3に係る、殻状チョコレート様食品にキャラメル様食品を流し入れたものを開口部が上になるように埋没させた穀粉焼成物を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、ショ糖を含む水溶液を煮詰めることで得られるものをキャラメル用食品と称し、フィリングとして穀粉生地中に入れ、焼成時に噴出し現象を引き起こすものは、その焼成時の温度帯において粘稠な物性を示す。
その煮詰め温度は表1に示すとおり、キャラメル様食品中の水分と密接な関係がある。
ある特定の煮詰め温度で煮詰められたキャラメル様食品は必然的にある特定の水分量であり、焼成温度耐で特定の粘稠さを示す。
キャラメル様食品の物性は、煮詰め温度が110℃〜125℃で得られたものが好ましく、更に望ましくは115〜120℃である。温度が110℃以下になると物性が柔らかくなりやすく、焼成中にフィリングの滲み出しを起こしやすくなる。125℃以上になると硬くなり、食感等の点でフィリングとして適さない。
【0015】
キャラメル様食品の水分量は10〜15重量%であることが好ましく、更に望ましくは11〜14重量%、もっとも望ましくは12〜13重量%あることが望ましい。水分量が少なすぎると硬くなり、10重量%を下回ると食感等の点でフィリングとして適さない。水分量が多すぎると柔らかい物性になり、15重量%を超えると焼成中にフィリングの噴出しや滲み出しを起こしやすくなる。
【0016】
また、キャラメル様食品は焼成温度域で特定の粘稠さを持つ物が噴出し現象を起こしやすいのだが、焼成温度域での粘稠さを規定するのは現実的ではなく、むしろ室温での堅さを測定することにてその噴出し現象を引き起こしやすいフィリングを特定できるので汎用性が高い。
堅さの測定方法としては特に限定はされないものの、20℃での硬さをレオメーターにより測定する方法が挙げられる。一例としてはFUDOHレオメーター(RT−2001D・D 株式会社レオテック製)にて、SPEED(送り台速度) 5cm/minの条件で、得られた、
(プランジャーにかかる最大加重(g))/(プランジャー面積(mm))
をもって硬さの値とできる。なお、プランジャー径は適宜変えることができるが径1mmや3mmのものを用いることが望ましい。
【0017】
キャラメル様食品の堅さは1〜300g/mmあることが好ましく、望ましくは10から200g/mm、さらに望ましくは20から100g/mmである。硬さが1g/mm以下であると柔らかい物性になりやすく、焼成中に焼成中にフィリングの噴出しや滲み出しを起こしやすくなる。300g/mm以上になると硬くなり、食感等の点でフィリングとして適さない。
【0018】
キャラメル様食品の配合としては糖類が必須であり、単糖類、オリゴ糖類、糖アルコール類、デキストリン、水飴等が例示できる。単糖類としては具体的には、グルコース、フルクトース、マンノース、キシロースを挙げることができる。またオリゴ糖類としては、通常2糖類から6糖類までのものが含まれるが、具体的にはショ糖、マルトース、乳糖、トレハロース、マルトトリオース等を挙げることができる。糖アルコール類としては具体的には、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、オリゴ糖アルコール等を挙げることができる。特にコストや物性の点でショ糖が望ましい。
糖類以外の配合としては生クリームやバター、粉乳などといった乳類などが挙げられるが、特に限定はされず、従来のキャラメルの配合を適宜用いることが出来る。
【0019】
本発明はチョコレート様食品をキャラメル様食品と組み合せる事を特徴とし、本来耐熱性を有さない、少なくともキャラメル様食品よりはるかに劣る耐熱性であるチョコレート様食品であるにもかかわらず焼成によるキャラメル様食品の噴出しを抑制または防止することが可能である。
また、キャラメル様食品も上記煮詰め温度が110℃〜125℃で得られたものはそれ自体単独では、フィリングとしては物性が硬すぎるが、組み合わせたチョコレート様食品と焼成中に混ざり合うことでフィリングとして適当な硬さになる。
チョコレート様食品は穀粉生地中においてキャラメル様食品の鉛直方向上方3cm以下に設置する必要があり、さらに望ましくは1cm以下、もっとも望ましくは接していることが好ましい。
【0020】
本発明で言うところのチョコレート様食品とは、油脂が連続相をなす食品であれば特に限定はされないが、一例を挙げると、チョコレート類が該当する。また、ここで言うチョコレート類とは、全国チョコレート業公正取引協議会、チョコレート利用食品公正取引協議会で規定されるチョコレート、準チョコレート、チョコレート利用食品だけでなく、油脂類を必須成分とし、必要により糖類、粉乳類、カカオ原料(カカオマス、ココア、ココアバター)、果汁粉末、果実粉末、呈味材、乳化剤、香料、着色料等の副原料を任意の割合で配合したものを言う。なお、チョコレート類の風味は、カカオ原料、粉乳類、糖類が主成分であるスィートチョコレート類、ミルクチョコレート類、ホワイトチョコレート類に限らず、種々の粉末類を使用した、コーヒー風味、キャラメル風味、抹茶風味、果実風味、野菜風味、塩味系風味などの風味バラエティー品も、当然その範囲に入る。
ただし、チョコレート様食品の総カカオ分が35重量%以上うちカカオ固形分が15重量%以上であることが望ましい。さらに望ましくは総カカオ分40重量%以上、カカオ固形分18重量%以上である。カカオ固形分が多い方がフィリングの噴出しを抑える効果が高い。なお、総カカオ分とはココアバターとカカオ固形分の和とする。
【0021】
チョコレート様食品の面積は特に限定はされないが、キャラメル様食品に対してチョコレート様食品が水平面での断面積比で50%以上、望ましくは100%以上であることが好ましい。
チョコレート様食品は厚さ0.5mm以上であることが好ましく、より望ましくは1mm以上であるほうが好ましい。
断面積比50%以下、厚さ0.5mm以下であってもフィリングの噴出しを抑制する力はあるが、小さく、あるいは薄くなるに従い抑制効果も弱くなり、噴出しの程度は軽減させることが出来ても、フィリングによっては噴出しを抑えきれないことがある。また断面積比、厚さの上限は特にないものの、焼成後はキャラメル様食品とチョコレート様食品は一体化するため、極端に厚いものは折角のキャラメル様食品の食感や風味のバランスを崩しかねない。最終製品としての食感や風味などの商品設計に応じ適宜用いることが出来る。
【0022】
チョコレート様食品の形状は特に限定はされず、鉛直方向上方に板状のものを設置することでキャラメル様食品の噴出しを抑制できるが、より望ましくはキャラメル様食品をチョコレート様食品で囲った状態であることが好ましい。
キャラメル様食品をチョコレート様食品で「囲う」とは、キャラメル様食品のまわりをチョコレート様食品で取り巻く状態であり、キャラメル様食品とチョコレート様食品の間は隙間が開いていてもかまわないし、囲っているチョコレート様食品自体も上下前後左右の全方向閉じている必要はないが、チョコレート様食品はキャラメル様食品の鉛直方向上方に設置する必要があるので、囲った状態においても、キャラメル様食品に対して少なくとも鉛直方向上方が閉じている事がのぞましい。さらに鉛直方向下方、水平方向に閉じていると、より強くフィリングの噴出しを抑制する。
【0023】
囲う状態の一例としては、キャラメル様食品にチョコレート様食品をコーティングした状態であったり、殻状の構造、例えば直方体や球形の一端が欠けた形状にあらかじめ成型したチョコレート様食品にキャラメル様食品を入れたものが挙げられる。この形状はコーティングより、あらかじめ成型したものの方がより噴出しを抑制する効果が高く、さらに球形の殻状である方がより効果的である。
本発明はキャラメル様食品をチョコレート様食品で囲ったものを穀粉焼成物中埋没用具材と称する。
【0024】
穀粉生地とは油脂、砂糖類、卵、小麦粉などを原料とした澱粉性生地を指し、特に限定はされないが、具体例としてはバターケーキ生地、シュー生地などが挙げられる。
製法もシュガーバッター法、フラワーバッター法、溶かしバター法、シュガーバッター別立て方、フラワーバッター別立て法等、様々な製法があるがいずれの製法でも良いが生地全体をホイップするような製法はフィリングが沈みやすくなる。また、穀粉焼成物とは穀粉生地を焼成したものを指す。
【0025】
穀粉生地の焼成方法も特に限定されず、焼き型を使用した従来のカップケーキ、パウンドケーキなどの焼成方法を適時用いることが出来る。焼き型にはパウンドケーキ型、ベーキングトレー、カップケーキ型、マフィンカップ、連結式焼き型のことを指す。型の高さは5cm以上であることが望ましい。5cm以下であるとキャラメル様食品が生地中に埋没できないことがある。
焼成方法の一例を挙げるとカップケーキの型に穀粉生地を注ぎ、キャラメル様食品をチョコレート様食品で囲った穀粉焼成物中埋没用具材を埋没させた後に、焼成を行う。生地焼成温度は150℃〜200℃、焼成時間は15分〜60分が好ましい。
【実施例】
【0026】
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明の精神は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、例中、%及び部は重量基準を意味する。
【0027】
<キャラメル様食品1の作成法>
グラニュー糖100gにクリーム(不二製油株式会社製「ガトーノイエ22」、植物性脂肪分 20% 、乳脂肪分22%)75g加え、118℃まで煮詰めてキャラメル様食品を得た。
<穀粉生地の作成法>
薄力粉125g、アーモンドプードル125g、グラニュー糖250gを混ぜ合わせ、卵白250gを加える。その中に一度沸騰させたマーガリン250gを加えて均一になるよう混合する。
<使用する焼き型>
焼き型は底面径49mm、上面径62.4mm、高さ38mm、容量86mlのカップケーキ型を使用。
<焼成条件>
180℃、18分で焼成。オーブンは南蛮窯バッケン(七洋製作所)使用。
【0028】
[実施例1]
焼き型の中に前述の穀粉生地を焼き型の1/3の高さまで流し入れ、その上に予め分割しておいたキャラメル様食品1を入れた。その上に1mm圧の板状のチョコレート様食品(カカオ成分58% カカオ固形分17% )を入れ、焼き型の2/3の高さまで穀粉生地を流しこみ(図1)、焼成した。
【0029】
[比較例1]
焼き型の中に前述の穀粉生地を焼き型の1/3の高さまで流し入れ、その上に予め分割しておいたキャラメル様食品1を入れ、焼き型の2/3の高さまで穀粉生地を流しこみ、焼成した。
【0030】
[比較例2]
焼き型の中に前述の穀粉生地を焼き型の1/3の高さまで流し入れ、その上に従来型の耐熱性フィリング(製品名「フローマカスター」(不二製油株式会社製)97重量部:キャラメルペースト(製品名「JUPE キャラメル」、株式会社ナリヅカコーポレーション製)3重量部)を入れ、焼き型の2/3の高さまで穀粉生地を流しこみ、焼成した。
実施例1・比較例1・比較例2の製造条件と評価を表2にまとめた。
【0031】
<表2>

< 総合評価の判断基準>
◎:フィリングも生地内でまとまり、噴出しがなく、キャラメル様食品と穀粉生地の食感のバランスが良い状態
○:フィリングも生地内で幾分散ってはいるが、噴出しがなく、キャラメル様食品と穀粉生地の食感のバランスが良い状態
△:○と×の中間の状態(市場価値はある)
×:噴出しがある、もしくはキャラメル様食品と穀粉生地の食感のバランスが悪い状態
【0032】
キャラメル様食品の上方に板状のチョコレート食品をいれた実施例1は噴出さず、従来型の耐熱性フィリングより良好なキャラメル風味があり、また生地やチョコレート食品と適度に混ざる為、焼成を施される前のキャラメル様食品自体より適当なやわらかさになっていた。
一方、チョコレート食品をいれなかった比較例1はキャラメル様食品が激しく噴出して穀粉生地の焼成品の外にまで飛び散ってしまい、またフィリングの入っていた部分に達する大きな穴があくなど外見的にも悪く、またキャラメル様食品が噴出してしまうため、キャラメル風味を感じることができない。
また、従来型の耐熱性フィリングを入れた比較例2は噴出さないものの、濃厚なキャラメル風味を出すことが出来ず、澱粉由来の糊のような食感になった。
【0033】
[実施例2]
焼き型の中に前述の穀粉生地を焼き型の1/3の高さまで流し入れ、その上に予め分割しておいたキャラメル様食品1を入れ、その上に0.5mm圧の板状のチョコレート様食品(カカオ成分58% カカオ固形分17% )を入れ、焼き型の2/3の高さまで穀粉生地を流しこみ、焼成した。
【0034】
[実施例3]
焼き型の中に前述の穀粉生地を焼き型の1/3の高さまで流し入れ、その上に予め分割しておいたキャラメル様食品1を入れ、その上に3mm圧の板状のチョコレート様食品(カカオ成分58% カカオ固形分17% )を入れ、焼き型の2/3の高さまで穀粉生地を流しこみ、焼成した。
実施例2・実施例3の製造条件と評価を比較のため実施例1とともに表3にまとめた。
【0035】
<表3>

【0036】
キャラメル様食品の上方においた板状のチョコレート食品の厚みを実施例1の半分の0.5mmにした実施例2は実施例1に比べると噴出しを防止する効果がやや弱く、上方が割れ、キャラメル様食品が表面に滲み出たが、何も置かなかった比較例2のような大きな穴もあかず、焼成品の外にまで噴出すということはなかった。また従来型の耐熱性フィリングより良好なキャラメル風味があり、生地やチョコレート食品と適度に混ざる為、焼成を施される前のキャラメル様食品自体より適当なやわらかさになっていた。
また、板状のチョコレート食品の厚みを実施例1の3倍の3mmにした実施例3は実施例1同様に噴出さず、従来型の耐熱性フィリングより良好なキャラメル風味があり、また生地やチョコレート食品と適度に混ざる為、焼成を施される前のキャラメル様食品自体より適当なやわらかさになっていたが、混ざったチョコレートの量が多いため生地やフィリングを混じりあい、風味もチョコレート感がやや強く、生地とフィリングが混じり合った部分もやや堅い食感となった。
【0037】
[実施例4]
<キャラメル様食品2の作成法>
グラニュー糖100gにクリーム(植物性脂肪分 20% 、乳脂肪分22%)75g加え、110℃まで煮詰めてキャラメル様食品を得た。
焼き型の中に前述の穀粉生地を焼き型の1/3の高さまで流し入れ、その上に予め分割しておいたキャラメル様食品2を入れた。その上に1mm圧の板状のチョコレート様食品(カカオ成分58% カカオ固形分17% )を入れ、焼き型の2/3の高さまで穀粉生地を流しこみ、焼成した。
【0038】
[実施例5]
<キャラメル様食品3の作成法>
グラニュー糖100gにクリーム(植物性脂肪分 20% 、乳脂肪分22%)75g加え、130℃まで煮詰めてキャラメル様食品を得た。
焼き型の中に前述の穀粉生地を焼き型の1/3の高さまで流し入れ、その上に予め分割しておいたキャラメル様食品3を入れた。その上に1mm圧の板状のチョコレート様食品(カカオ成分58% カカオ固形分17% )を入れ、焼き型の2/3の高さまで穀粉生地を流しこみ、焼成した。
なお、フィリング1、フィリング2、フィリング3の硬さを20℃での硬さをレオメーターにて測定した。測定方法はFUDOHレオメーター(RT−2001D・D 株式会社レオテック製)にて、SPEED(送り台速度) 5cm/minの条件で、得られた、
(プランジャーにかかる最大加重(g))/(プランジャー面積(mm))
をもって硬さの値とした。なお、プランジャー径は特にやわらかい実施例4は3mmを、それ以外は1mmを用いた。
実施例4・実施例5の製造条件と硬さと評価を、比較のため実施例1とともに表4にまとめた。
【0039】
<表4>

【0040】
キャラメル様食品の加熱温度を実施例1より低い110℃にした実施例4は同じ厚みのチョコレートを置いたにもかかわらず、実施例1に比べるとやや噴出しやすく、上方が割れ、てキャラメル様食品が表面に滲み出たが、何も置かなかった比較例2のような大きな穴もあかず、焼成品の外にまで噴出すということはなかった。また実施例1同様に従来型の耐熱性フィリングより良好なキャラメル風味があるが、生地やチョコレート食品と混ざる際により大きく滲み込んだが、焼成生地の底まで達するというほどではなかった。
また、キャラメル様食品の加熱温度を実施例1より高い130℃にした実施例5は実施例1同様に噴出さず、従来型の耐熱性フィリングより良好なキャラメル風味があるが、生地やチョコレート食品とやや混ざりにくく、風味はキャラメル風味を同様に感じることが出来たが、やや堅い食感となった。
【0041】
[実施例6]
焼き型の中に前述の穀粉生地を焼き型の1/3の高さまで流し入れ、その上に予め分割しておいたキャラメル様食品1を入れ、その上に3mm圧の板状のミルクチョコレート様食品(カカオ成分40% カカオ固形分5% )をいれる。焼き型の2/3の高さまで穀粉生地を流しこみ、焼成した。
【0042】
[実施例7]
焼き型の中に前述の穀粉生地を焼き型の1/3の高さまで流し入れ、その上に予め分割しておいたキャラメル様食品1を入れ、その上に3mm圧の板状のホワイトチョコレート生地(カカオ成分30% カカオ固形分0% )をいれる。焼き型の2/3の高さまで穀粉生地を流しこみ、焼成した。
実施例7・実施例8の製造条件と評価を比較のため実施例1とともに表4にまとめた。
【0043】
<表5>

【0044】
キャラメル様食品の上方においた板状のチョコレート食品のカカオ固形分を5%まで下げた実施例6、さらに0%にした実施例7は実施例1に比べると噴出しを防止する効果がやや弱く、上方が割れ、キャラメル様食品が表面に滲み出たが、何も置かなかった比較例2のような大きな穴もあかず、焼成品の外にまで噴出すということはなかった。
実施例6・実施例7双方とも従来型の耐熱性フィリングより良好なキャラメル風味があった。
実施例6は生地やチョコレート食品と適度に混ざる為、焼成を施される前のキャラメル様食品自体より適当なやわらかさになっていた。
また実施例7は生地やチョコレート食品と混ざる際により大きく滲み込んだが、焼成生地の底まで達するというほどではなかった。
【0045】
<殻状チョコレート様食品の成型>
冷蔵庫で冷やしたチョコレートボンボン型(円形mm、高さmm)にチョコレート(カカオ成分40% カカオ固形分17%)を流し込む。チョコレートボンボン型を傾け、余分なチョコレートを流しだす。冷蔵庫で冷やし、チョコレートボンボン型から殻状チョコレートを抜く。得られた殻状チョコレート様食品の厚みは1mmであった。
【0046】
[実施例8]
焼き型の中に前述の穀粉生地を焼き型の1/3の高さまで流し入れ、予め殻状チョコレート様食品に分割しておいたキャラメル様食品1を流し入れたものを作成しておいたもの(具材と称する)を開口部が下になるように設置し、その上に焼き型の2/3の高さまで穀粉生地を流しこみ(図2)、焼成した。
【0047】
[比較例3]
実施例8の具材開口部が上になるように設置する以外は、同配合・同工程にて穀粉生地を流しこみ(図3)、焼成した。
【0048】
<表6>

【0049】
実施例8・比較例3ともにキャラメル様食品を殻状のチョコレート食品のなかに埋没させたが、開口部が下(すなわちキャラメル様食品の上にチョコレート食品がある状態)の実施例8は、実施例1と同様にキャラメル様食品が噴出さず、従来型の耐熱性フィリングより良好なキャラメル風味があり、また生地やチョコレート食品と適度に混ざる為、焼成を施される前のキャラメル様食品自体より適当なやわらかさになっていた。
しかし開口部が下(すなわちキャラメル様食品の上にチョコレート食品がない状態)の比較例8は比較例1と同様にキャラメル様食品が激しく噴出して穀粉生地の焼成品の外にまで飛び散ってしまい、フィリングの入っていた部分に達する大きな穴が開くなど外見的にも悪く、またキャラメル様食品が噴出してしまうため、キャラメル風味を感じることができないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明により、キャラメル様食品を、本来耐熱性を有さないチョコレート様食品で囲うことでキャラメル様食品の噴出しを抑制または防止することが可能となった。
【符号の説明】
【0051】
1 焼き型
2 穀粉生地
3a 板状のチョコレート様食品
3b 殻状のチョコレート様食品(開口部が下)
3c 殻状のチョコレート様食品(開口部が上)
4 キャラメル様食品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粉生地中にキャラメル様食品とその鉛直方向上方3cm以下にチョコレート様食品を配置した上で加熱することを特徴とする穀粉焼成物の製造方法。
【請求項2】
キャラメル様食品をチョコレート様食品で囲う事を特徴とする、請求項1記載の穀粉焼成物の製造方法。
【請求項3】
チョコレート様食品が厚さ0.5mm以上である請求項1乃至請求項2いずれか1項に記載の穀粉焼成物の製造方法。
【請求項4】
キャラメル様食品の水分量が10〜15%であり、且つ糖類を含有する、20℃での硬さが1〜300g/mm2である請求項1乃至請求項3いずれか1項に記載の穀粉焼成物の製造方法。
【請求項5】
キャラメル様食品の煮詰め温度が110℃〜125℃である請求項1乃至請求項4いずれか1項に記載の穀粉焼成物の製造方法。
【請求項6】
チョコレート様食品の総カカオ分が35重量%以上、カカオ固形分が17重量%以上である請求項1乃至請求項5いずれか1項に記載の穀粉焼成物の製造方法。
【請求項7】
チョコレート様食品とキャラメル様食品を具材とした穀粉焼成物。
【請求項8】
穀粉焼成物が型焼きである請求項7記載の穀粉焼成物。
【請求項9】
キャラメル様食品をチョコレート様食品で囲うことを特徴とする、噴出し抑制具材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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