説明

チラー

【課題】 0℃付近まで水の冷却を可能とするチラーにおいて、外気温が低いために冷凍機の起動時に水が凍結してしまうのを防止する。また、この際、圧縮機への液バックも防止する。
【解決手段】 冷凍機2は、膨張弁5の一次側に、液電磁弁12が設けられる。凝縮器4の一次側と膨張弁5の二次側とは、バイパス路17にて接続される。バイパス路17には、開度調整可能なバイパス弁18が設けられる。蒸発器6とタンク21との間で水を循環させ、蒸発器6における冷媒の気化熱により循環水の冷却が図られる。冷凍機2の起動時、液電磁弁12の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が設定値以下の場合には、蒸発器6への水の導入を停止または制限すると共に、液電磁弁12を閉じた状態でバイパス弁18を開いて冷凍機2を起動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水などの被冷却液を冷却するチラーに関するものである。たとえば、食品冷却や空調などのために、水の凍結を防止しつつ0℃付近(たとえば0.5℃)の冷水を得るためのチラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されるように、冷凍機(1)、熱交換器(2)および冷水タンク(3)により構成された冷水装置において、冷凍機(1)と熱交換器(2)との間を冷媒供給ライン(4)と冷媒還流ライン(5)で接続し、冷媒供給ライン(4)と冷媒還流ライン(5)とをバイパスライン(8)で接続し、このバイパスライン(8)に流量調節弁(9)を設けると共に、熱交換器(2)と冷水タンク(3)との間を冷水供給ライン(6)と冷水還流ライン(7)で接続し、この冷水還流ライン(7)に温度センサ(10)を設け、この温度センサ(10)の検出値に基づいて流量調節弁(9)を制御する冷水装置(チラー)が知られている。
【0003】
また、下記特許文献2に開示されるように、熱交換器(3)の一次側の冷媒温度を温度センサ(15)で検出し、この検出温度に基づき圧縮機(1)をオンオフ制御することで、熱交換器(3)に循環供給される水の凍結を防止するチラーが知られている。
【特許文献1】特開平9−166339号公報 (請求項1、図1、段落番号[0012]および[0013])
【特許文献2】特開2007−292351号公報 (請求項1、図1、図2、段落番号[0032])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チラーを用いて0℃付近まで水の冷却を図る場合には、蒸発器(熱交換器)内において水が凍結しないように、その対策が必要となる。しかしながら、前記特許文献1に記載の発明は、流量調節弁の開度調整により、冷凍機の凝縮器や膨張弁から蒸発器へ供給する冷媒の流量を調整して、水温調整するものであり、水の凍結防止については十分考慮されていない。
【0005】
具体的には、冷媒の流量は調整可能であるものの、冷凍機の凝縮器を介した冷媒のみが蒸発器へ供給されるものである。また、冷凍機の起動前ではなく起動後に、冷媒温度ではなく水温に基づき、蒸発器へ供給する冷媒の流量を調整するものである。従って、外気温が低い状態で冷凍機を起動させると、起動直後に凝縮器から低温の冷媒が膨張弁を介して蒸発器へ入ることが避けられず、蒸発器内において水が凍結するおそれがある。
【0006】
一方、前記特許文献2に記載の発明では、蒸発器の一次側の冷媒温度に基づき、圧縮機をオンオフ制御することで、水の凍結防止を図っているが、前記特許文献1に記載の発明と同様に、冷凍機の凝縮器を介した冷媒のみが蒸発器へ供給されるものである。また、その図2に示されるように、冷凍機の起動前ではなく起動後の制御であるから、前記特許文献1に記載の発明と同様に、外気温が低い状態で冷凍機を起動させると、起動直後に凝縮器から低温の冷媒が膨張弁を介して蒸発器へ入ることが避けられず、蒸発器内において水が凍結するおそれがある。
【0007】
このような不都合は、水を冷却するためのウォータチラーに限らず、被冷却液が凍結するおそれがある他のチラーの場合も同様である。また、前記各特許文献に記載の発明では、水が冷水タンクと蒸発器との間を循環される循環仕様とされるが、蒸発器を通過して得られる冷水を使い捨てる流水仕様など、他の仕様のチラーの場合も同様である。
【0008】
ところで、出願人は、先に、凝縮器の一次側と膨張弁の二次側とを接続するバイパス路を設けることで、凝縮器および膨張弁を介した冷媒の他、バイパス路を介して凝縮器一次側の冷媒を蒸発器へ供給可能に構成したチラーについて提案し、既に特許出願を済ませている(特願2007−178445)。この特許出願の発明によれば、外気温が低く、凝縮器および膨張弁を介した冷媒を用いると、蒸発器内において被冷却液が凍結するおそれがある場合には、バイパス路を介した冷媒を用いることで、蒸発器内における被冷却液の凍結を防止することができる。しかも、冷凍機の起動後ではなく起動前に、蒸発器への冷媒の供給ルートが決定されるので、起動直後に凝縮器および膨張弁を介した低温の冷媒が蒸発器へ入ることが防止され、蒸発器内での被冷却液の凍結を確実に防止することができる。
【0009】
しかしながら、このような構成を採用した場合、圧縮機からバイパス路を介して蒸発器へ供給される冷媒の温度よりも、その冷媒と熱交換させるために蒸発器へ供給される被冷却液の温度が低いと、蒸発器内において、バイパス路からのガス冷媒が被冷却液に熱を奪われて液化し、この液冷媒が圧縮機へ送り込まれて液バックを起こすおそれがある。特に、万一バイパス弁が故障して開いた状態に維持された場合には、アキュムレータを設けていても、液バックを防止できないおそれがある。
【0010】
この発明が解決しようとする課題は、凝縮器の一次側と膨張弁の二次側とをバイパス路で接続し、圧縮機からの冷媒を、凝縮器および膨張弁を介して蒸発器へ供給可能であると共に、バイパス路を介して蒸発器へ供給可能であるチラーにおいて、バイパス路を介して蒸発器へ冷媒を供給してサイクルの予熱を図る際に、液バックを防止することにある。具体的には、外気温が低く、凝縮器および膨張弁を介した冷媒を用いると、蒸発器内において被冷却液が凍結するおそれがある場合において、バイパス路を介した冷媒を用いることで、蒸発器内における被冷却液の凍結を防止する制御を行う際、バイパス路を介して蒸発器へ供給される比較的高温のガス冷媒が被冷却液により液化して、液バックを起こすことを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、圧縮機、凝縮器、膨張弁および蒸発器に冷媒を循環させて冷凍サイクルを実行する冷凍機と、前記蒸発器において冷媒と熱交換させる被冷却液を、前記蒸発器へ導入する導入路と、前記蒸発器において冷媒と熱交換させた被冷却液を、前記蒸発器から導出する導出路と、前記膨張弁の一次側に設けられる液電磁弁と、前記凝縮器の一次側と前記膨張弁の二次側とを接続するバイパス路と、このバイパス路に設けられる開度調整可能なバイパス弁と、前記液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が設定値以下の場合、前記蒸発器への被冷却液の導入を停止または制限すると共に、前記液電磁弁を閉じた状態で前記バイパス弁を開いて前記冷凍機を起動する制御器とを備えることを特徴とするチラーである。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、蒸発器には、凝縮器および膨張弁を介した冷媒の他、これに代えてまたはこれに加えて、バイパス路を介して凝縮器一次側の冷媒が供給可能とされる。従って、外気温が低く、凝縮器および膨張弁を介した冷媒を用いると、蒸発器内において被冷却液が凍結するおそれがある場合には、バイパス路を介した冷媒を用いることで、蒸発器内における被冷却液の凍結を防止することができる。しかも、バイパス路を介した冷媒の流量調整は、開度調整可能なバイパス弁によりなされ、これにより所望の状態で冷凍機を運転することができる。また、このような凍結防止制御を行う際、バイパス路を介したガス冷媒よりも被冷却液が低温の場合、蒸発器内においてガス冷媒が液化するおそれがあるが、請求項1に記載の発明によれば、蒸発器への被冷却液の導入を停止または制限することで、そのような液化を防止することができる。従って、圧縮機への液バックを防止することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記冷凍機の起動時、前記液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力に基づき、前記液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第一設定値を超える第一の場合には、前記蒸発器へ被冷却液を導入すると共に、前記バイパス弁を閉じた状態で前記液電磁弁を開いて前記冷凍機を起動する一方、前記液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第一設定値以下の第二の場合には、前記蒸発器へ被冷却液を導入しないか、前記第一の場合よりも制限して前記蒸発器へ被冷却液を導入すると共に、前記液電磁弁を閉じた状態で前記バイパス弁を開いて前記冷凍機を起動し、これにより前記蒸発器の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第二設定値以上になると、前記蒸発器への被冷却液の導入の停止または制限を解除すると共に、前記液電磁弁を開いた状態で前記バイパス弁の開度を調整することを特徴とする請求項1に記載のチラーである。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第一設定値以下の場合には、液電磁弁を閉じた状態でバイパス弁を開いて冷凍機を起動することで、許容温度以下の冷媒が蒸発器に供給されることがない。従って、外気温が低い場合においても、蒸発器内における被冷却液の凍結を防止することができる。また、そのような凍結防止制御の際、蒸発器への被冷却液の導入は、完全に停止されるか、冷媒の液化を抑制する流量に制限される。従って、圧縮機への液バックを防止することができる。そして、蒸発器の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第二設定値以上になると、蒸発器への被冷却液の導入の停止または制限を解除すると共に、液電磁弁を開いた状態でバイパス弁の開度を調整する。このようにして、冷凍機の起動時の被冷却液の凍結を防止すると共に、その凍結防止制御時の液バックを防止しつつ、チラーを運転することができる。たとえば、0℃付近まで水の冷却が可能なウォータチラーにおいて、蒸発器内における水の凍結を防止すると共に、その凍結防止制御時の液バックを防止しつつ、チラーを運転することができる。
【0015】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記導入路に設けられたポンプの作動の有無により、前記蒸発器への被冷却液の導入の有無を切り替えて制御することを特徴とする請求項2に記載のチラーである。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、凍結防止制御の際、被冷却液を蒸発器へ送り込むポンプを停止することにより、蒸発器内への被冷却液の導入を停止して、バイパス路からのガス冷媒の液化を防止することができる。このようにして、簡易な構成および制御で、液バックを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、外気温が低く、凝縮器および膨張弁を介した冷媒を用いると、蒸発器内において被冷却液が凍結するおそれがある場合、バイパス路を介して凝縮器一次側の冷媒を蒸発器へ供給することで、蒸発器内における被冷却液の凍結を防止することができる。しかも、そのような凍結防止制御時に、比較的高温のガス冷媒が蒸発器において被冷却液で液化されることを防止して、液バックを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
この発明のチラーは、冷凍機の蒸発器を、冷媒と被冷却液との熱交換器として用い、蒸発器における冷媒の気化熱で被冷却液の冷却を図る装置である。被冷却液は、典型的には水とされるが、凍結のおそれがある他の液体でもよい。チラーは、被冷却液が水の場合、ウォータチラーまたは冷水装置ということができる。
【0019】
本実施形態のチラーは、圧縮式冷凍機を備える。圧縮式冷凍機は、周知のとおり、圧縮機、凝縮器、膨張弁および蒸発器を備え、冷媒の圧縮、凝縮、膨張および蒸発の冷凍サイクルを実行する。
【0020】
圧縮機は、その形式を特に問わないが、たとえばスクロール圧縮機が用いられる。凝縮器は、典型的にはファンを備える空冷式の熱交換器である。このファンは、所定箇所の冷媒温度が設定温度以下の場合には、回転しないよう制御される。また、膨張弁は、キャピラリチューブなどから構成してもよい。さらに、蒸発器は、冷媒流路と被冷却液流路とを有し、冷媒と被冷却液とを混ぜることなく、間接的に熱交換させる熱交換器である。蒸発器は、典型的にはプレート式熱交換器とされるが、二重管式熱交換器などでもよい。
【0021】
本実施形態のチラーに備えられる冷凍機では、膨張弁の一次側(入口側)に液電磁弁が設けられる。つまり、液電磁弁は、凝縮器と膨張弁との間に設けられ、膨張弁への冷媒供給の有無を切り替える。
【0022】
また、凝縮器の一次側(入口側)と膨張弁の二次側(出口側)とは、バイパス路で接続される。従って、圧縮機からの冷媒は、通常どおり凝縮器および膨張弁を介して蒸発器へ供給可能とされると共に、バイパス路を介して蒸発器へ供給可能とされる。
【0023】
バイパス路を介して蒸発器へ供給する冷媒の流量は、バイパス路に設けられるバイパス弁により調整可能とされる。バイパス弁は、開度調整可能な電動弁から構成されており、具体的にはモータバルブまたは比例制御弁から構成される。但し、バイパス路として管径の異なる複数の管路を並列して設け、それぞれの管路に設けた電磁弁を個別に開閉可能としてもよい。この場合、その複数の電磁弁がバイパス弁として機能し、バイパス路の開度を実質的に調整する。
【0024】
蒸発器を構成する熱交換器は、前述したように、冷媒が通される冷媒流路と、被冷却液が通される被冷却液流路とを有する。蒸発器には、被冷却液を被冷却液流路へ導入する導入路と、被冷却液を被冷却液流路から導出する導出路とが設けられる。また、その導入路には、蒸発器へ被冷却液を送り込むためのポンプが設けられる。従って、ポンプを作動させることで、被冷却液は導入路から蒸発器を介して導出路へ流通し、蒸発器を通過する間に、冷媒の気化熱により冷却を図られる。
【0025】
被冷却液は、蒸発器を通される限り、その流路を特に問わない。また、蒸発器にて冷却を図られた被冷却液は、その用途を特に問わない。たとえば、被冷却液は、蒸発器を通されて冷却された後、負荷との熱交換(たとえば食材の冷却)に使用され、使い捨てられる(流水仕様)。また、被冷却液を貯留するタンクを備え、このタンクから導入路を介して蒸発器へ被冷却液を供給して、蒸発器にて冷却を図った後、導出路を介してタンクへ戻してもよい(循環仕様)。すなわち、蒸発器とタンクとの間で、導入路と導出路とを介して被冷却液を循環させてもよい。
【0026】
循環仕様の場合、蒸発器からタンクへの導出路において負荷との熱交換を図ってもよいし、タンク内において負荷との熱交換を図ってもよい。たとえば、タンクを冷却槽として用い、パックされた食品を、タンク内の被冷却液に浸して冷却を図ることができる。また、蒸発器とタンクとの間で被冷却液の循環を図ってタンク内の被冷却液を冷却すると共に、その冷却された被冷却液を他の装置へ供給して利用してもよい。
【0027】
冷凍機(特に圧縮機、凝縮器のファン)と、それに付設された液電磁弁およびバイパス弁の他、ポンプなどは、制御器により制御される。この制御は、液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力、蒸発器の一次側の冷媒温度または冷媒圧力、および被冷却液の液温などに基づき行われる。そのために、液電磁弁の一次側および蒸発器の一次側には、それぞれ温度センサまたは圧力センサが設けられ、蒸発器からの被冷却液の導出路には、被冷却液の温度を検出する液温センサが設けられる。そして、制御器は、これらセンサの検出信号などに基づき、圧縮機の起動、凝縮器のファンの回転、液電磁弁の開閉、バイパス弁の開閉や開度調整などを実行する。
【0028】
寒冷地などで外気温が低い場合、凝縮器が冷やされることで、液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が低く、そのような低温の冷媒が膨張弁を介して蒸発器へ供給されると、蒸発器内で被冷却液が凍結してしまうおそれがある。そこで、本実施形態のチラーでは、冷凍機の起動時(再起動時を含む)に、液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が確認される。
【0029】
そして、液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第一設定値を超える場合(第一の場合)には、バイパス弁を閉じた状態で液電磁弁を開いて冷凍機を起動する。一方、液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第一設定値以下の場合(第二の場合)には、液電磁弁を閉じた状態でバイパス弁を開いて冷凍機を起動する。
【0030】
第一設定値は、それ以下の温度または圧力の冷媒が膨張弁を介して蒸発器へ供給されると、蒸発器において被冷却液を凍結させるおそれがあるか否かに基づき設定される。液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第一設定値以下である場合には、バイパス路を介した冷媒を用いることで、蒸発器内における被冷却液の凍結が防止される。一方、液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第一設定値を超える場合には、通常の冷凍サイクルを実行する。
【0031】
液電磁弁を閉じた状態でバイパス弁を開いて冷凍機を起動すると、バイパス路を介した冷媒が蒸発器へ供給される。バイパス路を介した冷媒は比較的高温であるため、この冷媒よりも被冷却液の温度が低い場合には、蒸発器内において、バイパス路を介した冷媒が被冷却液に熱を奪われて液化し、この液冷媒が圧縮機へ送り込まれるおそれがある。このような圧縮機への液バックを防止するには、冷媒よりも被冷却液の温度が低いか、低いであろう場合には、蒸発器への被冷却液の導入を停止または制限すればよい。たとえば、バイパス路を介した冷媒のみが蒸発器へ供給される際、蒸発器への被冷却液の導入を停止または制限する。その手段として、次の四つの実施形態を挙げることができる。
【0032】
第一実施形態では、導入路に設けられたポンプをオンオフ制御する。そして、冷媒よりも被冷却液の温度が低いか、低いであろう場合、ポンプを停止することで、蒸発器への被冷却液の導入を停止する。従って、蒸発器内において、バイパス路を介した冷媒の液化を防止でき、圧縮機への液バックを防止できる。
【0033】
第二実施形態では、導入路に設けられたポンプをインバータ制御する。そして、冷媒よりも被冷却液の温度が低いか、低いであろう場合、ポンプをインバータ制御することで、前記第一の場合よりも蒸発器への被冷却液の導入を制限する。具体的には、蒸発器へ供給する被冷却液の流量を極端に減少させる。従って、蒸発器内において、バイパス路を介した冷媒の液化を抑制でき、圧縮機への液バックを防止できる。
【0034】
第三実施形態では、導入路に設けられたポンプの二次側の給水調整弁により、蒸発器への被冷却液の導入の有無を切り替えるか、導入の制限とその解除を切り替えて制御する。具体的には、導入路のポンプ二次側に給水調整弁をさらに設け、冷媒よりも被冷却液の温度が低いか、低いであろう場合、給水調整弁を制御することで、蒸発器への被冷却液の導入を停止または制限する。給水調整弁は、開閉のみ可能な電磁弁、または、開度調整可能な電動弁から構成される。給水調整弁が電磁弁の場合、蒸発器への被冷却液の導入の有無を切り替えて制御する。そして、たとえば、バイパス路を介した冷媒のみが蒸発器へ供給される際、給水調整弁を閉じることで、蒸発器への被冷却液の導入を停止する。一方、給水調整弁が電動弁の場合、蒸発器への被冷却液の導入の制限とその解除を切り替えて制御する。そして、たとえば、バイパス路を介した冷媒のみが蒸発器へ供給される際、給水調整弁の開度を絞ることで、蒸発器への被冷却液の導入を制限する。このようにして給水調整弁を制御することで、蒸発器内において、バイパス路を介した冷媒の液化を防止または抑制でき、圧縮機への液バックを防止できる。
【0035】
第四実施形態では、前述した循環仕様の場合において、ポンプから吐出される被冷却液の供給先を、蒸発器または導出路もしくはタンクへ択一的に切り替えて制御する。そして、冷媒よりも被冷却液の温度が低いか、低いであろう場合、ポンプを停止させることなく蒸発器への被冷却液の導入を防止する。具体的には、導入路のポンプ二次側と導出路との間に接続路を設けることで、ポンプからの被冷却液が蒸発器を介さずに導出路へ導かれるようにする。あるいは、導入路のポンプ二次側とタンクとの間に戻し路を設けることで、ポンプからの被冷却液をタンクへ直接に戻してもよい。いずれの場合も、蒸発器内において、バイパス路を介した冷媒の液化を防止でき、圧縮機への液バックを防止できる。
【0036】
液電磁弁を閉じた状態でバイパス弁を開いて冷凍機を起動後には、蒸発器の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が上昇する。そして、蒸発器の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第二設定値以上になると、バイパス弁に加えて液電磁弁も開ける。これにより、バイパス路を介した高温冷媒(気相)と、凝縮器および膨張弁を介した低温冷媒(気液二相)とが、蒸発器へ供給されて冷凍機が運転される。
【0037】
この際、典型的には、蒸発器への被冷却液の導入の停止または制限が解除される。すなわち、蒸発器への被冷却液の導入が停止している場合には、蒸発器への被冷却液の導入が開始される。また、蒸発器への被冷却液の導入が制限されている場合には、流量の増大が図られる。蒸発器への被冷却液の導入制限を解除して所望の流量に戻す際、一気に戻してもよいし、徐々に戻してもよい。
【0038】
また、蒸発器の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第二設定値以上になることで液電磁弁を開いた後には、バイパス弁の開度調整がなされる。バイパス路を介して冷媒を蒸発器へ供給中には、液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力を常時監視する。そして、その温度または圧力が第一設定値を超える場合には、蒸発器内での被冷却液の凍結のおそれはなくなったとして、バイパス弁を全閉する。
【0039】
循環仕様のウォータチラーとして構成した場合、蒸発器にて得られる冷水は、たとえば、加熱調理後の食品の冷却に使用される。食品の安全性や食感および鮮度を保つためには、加熱調理後、速やかに5℃以下の低温に冷却するのが好ましい。そこで、たとえば、循環仕様のウォータチラーにおいて、循環水を数℃というレベルではなく、それ未満の0℃付近(通常0.5〜1.5℃)まで冷却する構成とするのがよい。この場合、水は、冷水タンクと蒸発器との間を循環されるが、その際、蒸発器にて冷却を図られる。冷媒温度に基づき冷凍機を制御すると共に、蒸発器への水の導入を制御することで、圧縮機への液バックおよび水の凍結を防止しつつ、蒸発器から冷水タンクへ戻される冷水の温度、または冷水タンク内の冷水の温度を、所望温度に保つことができる。
【実施例1】
【0040】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、循環仕様のウォータチラーについて説明する。
【0041】
図1は、本発明のチラーの実施例1を示す概略構成図である。本実施例1のチラー1は冷凍機2を備えており、この冷凍機2は圧縮式冷凍機とされる。圧縮式冷凍機は、周知のとおり、圧縮機3、凝縮器4、膨張弁5および蒸発器6を備え、冷媒の圧縮、凝縮、膨張および蒸発の冷凍サイクルを実行する。
【0042】
圧縮機3は、冷媒を圧縮して高温高圧のガスにする。圧縮機3からのガスは、油分離器7を介して凝縮器4へ送られる。油分離器7により、圧縮機3からのガスに含まれる油の分離除去が図られる。圧縮機3は、その形式を特に問わないが、たとえばスクロール圧縮機が用いられる。この場合、凝縮器4の一次側には、KVR弁(高圧圧力調整弁)8を設けておくのが好ましい。
【0043】
凝縮器4は、圧縮機3からのガスを凝縮液化する。本実施例の凝縮器4は、ファン9を備える空冷式の熱交換器である。このファン9は、モータ10により回転される。但し、所定箇所の冷媒温度が設定温度以下の場合には、回転しないよう制御される。凝縮器4からの冷媒は、受液器11および液電磁弁12を介して膨張弁5へ送られる。受液器11は、凝縮器4で液化された冷媒を一次的に貯蔵する。液電磁弁12は、凝縮器4および受液器11から膨張弁5への冷媒の供給の有無を切り替える。
【0044】
膨張弁5は、凝縮器4からの液化冷媒を通過させることで、冷媒の圧力と温度とを低下させる。そして、蒸発器6は、冷媒の蒸発により、周囲から熱を奪う熱交換器である。蒸発器6は、冷媒流路13と水流路14とを有し、冷媒と水とを混ぜることなく、冷媒と水とで熱交換させる熱交換器である。本実施例の蒸発器6は、プレート式熱交換器とされる。
【0045】
蒸発器6にて気化された冷媒は、アキュムレータ15を介して圧縮機3へ戻される。蒸発器6とアキュムレータ15との間には、SPR弁(吸入圧力調整弁)16を設けるのが好ましい。冷凍機2は、以上のように構成されることで、冷凍サイクルを実行可能とされる。
【0046】
本実施例の冷凍機2は、さらに、凝縮器4の一次側と膨張弁5の二次側との間が、バイパス路17で接続される。バイパス路17に冷媒を通した場合に冷凍機2が異常とならないように、バイパス路17は、冷凍サイクルを構成する主管(油分離器7と凝縮器4とを接続する管など)と同等かそれ以上の口径から形成するのが好ましい。また、同じ目的で、前述したように、油分離器7の二次側には、KVR弁8を設けるのが好ましい。
【0047】
バイパス路17を前記主管から分岐して設けることで、圧縮機3からの冷媒は、通常どおり凝縮器4および膨張弁5を介して蒸発器6へ供給可能とされると共に、バイパス路17を介して蒸発器6へ供給可能とされる。バイパス路17には、開度調整可能なバイパス弁18が設けられる。本実施例のバイパス弁18は、モータバルブから構成される。モータバルブとは、モータを正転または逆転させて、開度調整が可能とされた弁である。
【0048】
本実施例の冷凍機2には、第一温度センサ19と第二温度センサ20とが設けられる。第一温度センサ19は、受液器11と液電磁弁12との間に設けられ、液電磁弁12の一次側の冷媒温度を検出する。また、第二温度センサ20は、膨張弁5と蒸発器6との間に設けられ、蒸発器6の一次側の冷媒温度を検出する。この際、膨張弁5と蒸発器6とを接続する主管と、バイパス路17との接続部よりも下流側に設けられる。これにより、液電磁弁12を介した冷媒の温度、バイパス弁18を介した冷媒の温度、およびこれらが混ざった状態の冷媒の温度を検出することができる。
【0049】
蒸発器6を構成するプレート式熱交換器は、その冷媒流路13に、膨張弁5からの冷媒、および/または、バイパス路17からの冷媒が通される。一方、水流路14には、冷水タンク21からの水が給排水される。具体的には、蒸発器6の水流路14は、導入路22と導出路23とを介して、冷水タンク21に接続されている。そして、導入路22には、ポンプ24が設けられている。従って、このポンプ24を作動させることで、冷水タンク21からの水は、導入路22を介して蒸発器6へ供給され、蒸発器6内の水流路14を通った後、導出路23を介して冷水タンク21へ戻される。このようにして、冷水タンク21内の水は、冷水タンク21と蒸発器6との間を循環される。蒸発器6において冷媒が蒸発する際の気化熱を利用して、循環水の冷却を図ることができる。
【0050】
ところで、蒸発器6においては、冷媒流路13を流れる冷媒と、水流路14を流れる循環水とは、通常は対向流とされるが、場合により並行流とすることもできる。また、循環水の温度を検出するために、本実施例では、蒸発器6出口付近において導出路23に水温センサ25を設けている。
【0051】
本実施例のチラー1は、制御器26により制御される。そのため、制御器26は、冷凍機2およびポンプ24に接続されている。より具体的には、制御器26は、圧縮機3、凝縮器4のファン9のモータ10、液電磁弁12およびバイパス弁18の他、ポンプ24などに接続されている。さらに、制御器26は、第一温度センサ19、第二温度センサ20、および水温センサ25に接続されている。そして、制御器26は、これらセンサ19,20,25の検出信号などに基づき、圧縮機3、凝縮器4のファン9のモータ10、液電磁弁12およびバイパス弁18の他、ポンプ24などを制御する。なお、図示例では、制御器26は、二点鎖線で囲まれる冷凍機本体ユニット27を制御し、この冷凍機本体ユニット27が、圧縮機3と、凝縮器4のファン9のモータ10とを制御する構成としているが、制御器26が直接に、圧縮機3と、凝縮器4のファン9のモータ10とを制御する構成としてもよい。
【0052】
チラー1の運転中、ポンプ24を作動させることで、蒸発器6と冷水タンク21との間で水の循環が可能とされる。本実施例のチラー1は、典型的には、導出路23を介して冷水タンク21へ戻される循環水の温度が0℃付近(たとえば0.5℃)となるように運転される。この際、冷凍機2の圧縮機3は、起動(再起動を含む)や停止がなされる場合があるが、起動時には、低温の冷媒で循環水が凍結することがないように制御される。
【0053】
すなわち、圧縮機3が停止して冷媒の循環がない状態では、外気温が低いと凝縮器4が冷やされることで、液電磁弁12の一次側の冷媒温度が低くなる。従って、そのような低温の冷媒が膨張弁5を介して蒸発器6へ供給されると、蒸発器6内で循環水が凍結してしまうおそれがある。そこで、本実施例のチラー1では、冷凍機2の起動時(圧縮機3の起動時ともいえる)に、図2および図3に基づき後述するような制御を行うことで、循環水の凍結の防止が図られる。
【0054】
図2は、冷凍機2の起動時、より具体的には圧縮機3の起動時(再起動時を含む)におけるチラー1の制御を示すフローチャートである。また、図3は、図2における凍結防止制御の詳細を示すフローチャートである。
【0055】
いま、チラー1が停止状態にあるとする。この状態では、圧縮機3は停止すると共に、液電磁弁12は閉鎖されており、バイパス弁18は全閉状態とされ、ポンプ24は停止状態とされている。その状態から、冷凍機2を起動しようとする場合、まず、第一温度センサ19に基づく液電磁弁12の一次側の冷媒温度が、凍結防止制御開始温度(第一設定値)以下か否かを確認する(S11)。液電磁弁12の一次側の冷媒温度が凍結防止制御開始温度以下である場合には、図3に示される凍結防止制御にて冷凍機2を起動する(S12)。一方、液電磁弁12の一次側の冷媒温度が凍結防止制御開始温度を超える場合には、通常どおり、液電磁弁12を開放して冷凍機2を起動すると共に、ポンプ24を作動させる(S13)。
【0056】
次に、図3に基づき、凍結防止制御について説明する。液電磁弁12の一次側の冷媒温度が凍結防止制御開始温度以下であることにより、凍結防止制御へ移行した場合、まずバイパス弁18を全開または設定開度まで開いて、冷凍機2を起動する(S21)。これにより、比較的高温の冷媒が、バイパス路17を介して蒸発器6へ供給されつつ、サイクルの予熱が図られる。ところで、凍結防止制御がなされる場合には、通常、冷媒温度が低いために、凝縮器4のファン9は停止している。
【0057】
このようにして、液電磁弁12を閉じてバイパス弁18を開いた状態で圧縮機3を起動すると、第二温度センサ20が検出する冷媒温度は上昇していくことになる。第二温度センサ20に基づく蒸発器6の一次側の冷媒温度が、液電磁弁開放温度(第二設定値)以上となると、液電磁弁12を開けると共に、ポンプ24を作動させる(S22,S23)。液電磁弁12を開けることで、バイパス路17を介した高温冷媒(気相)と、凝縮器4および膨張弁5を介した低温冷媒(気液二相)とが、混合されて蒸発器6へ供給されつつ冷凍機2が運転される。また、ポンプ24を作動させることで、蒸発器6への循環水の導入が行われる。第二温度センサ20に基づく蒸発器6の一次側の冷媒温度は、液電磁弁12を開いた直後には一旦低下するが、その後は上昇していくことになる。
【0058】
第二温度センサ20に基づく蒸発器6の一次側の冷媒温度が、開度調整移行温度以上になるか、液電磁弁12の開放から設定時間経過すると、バイパス弁18を徐々に閉鎖し始める(S24,S25)。すなわち、バイパス弁18を所定速度で徐々に閉鎖するよう制御する。すると、バイパス弁18が全閉する前に、蒸発器6の一次側の冷媒温度が開度固定移行温度(第三設定値)に達する(S26)。
【0059】
蒸発器6の一次側の冷媒温度が開度固定移行温度になれば、その時点における開度にバイパス弁18の開度を固定する(S27)。以後は、その状態で冷凍機2を運転するのであるが、万一、蒸発器6の一次側の冷媒温度が上昇して、開度再調整移行温度以上となれば、再びステップS25へ戻って、バイパス弁18の開度調整が実行される(S28)。
【0060】
このようにして、最終的には、蒸発器6へ供給される冷媒の温度を、蒸発器6へ供給される水温以下で、且つ循環水が凍結しない所望温度で制御する。このような凍結防止制御中には、第一温度センサ19に基づき液電磁弁12の一次側冷媒温度が監視され、その温度が凍結防止制御開始温度を超えると、循環水の凍結のおそれはないので、バイパス弁18を全閉して、通常の冷凍サイクルで運転がなされる。
【0061】
このような構成のチラー1は、蒸発器6から冷水タンク21への導出路23において、負荷との熱交換を図ってもよいし、冷水タンク21内において負荷との熱交換を図ってもよい。たとえば、冷水タンク21を冷却槽として用い、パックされた食品を、冷水タンク21内の冷水に浸して冷却を図ることができる。また、蒸発器6と冷水タンク21との間で、水の循環を図って冷水タンク21内の水を冷却すると共に、その冷却された水を、他の装置(たとえば蓄氷型冷水装置)へ供給して利用してもよい。
【0062】
本実施例のチラー1によれば、蒸発器6には、凝縮器4および膨張弁5を介した冷媒の他、これに代えてまたはこれに加えて、バイパス路17を介して凝縮器4の一次側の冷媒が供給可能とされる。そして、外気温が低く、凝縮器4および膨張弁5を介した冷媒を用いると、蒸発器6内において水が凍結するおそれがある場合には、バイパス路17を介した冷媒を用いることで、蒸発器6内における水の凍結を防止することができる。
【0063】
この際、バイパス路17を介した冷媒よりも循環水の温度が低い場合には、蒸発器6内において、バイパス路17を介した冷媒が循環水に熱を奪われて液化し、この液冷媒が圧縮機3へ送り込まれるおそれがある。すなわち、圧縮機3への液バックを起こすおそれがある。ところが、本実施例のチラー1によれば、バイパス路17を介した冷媒のみが蒸発器6へ供給されている間は、蒸発器6への循環水の導入が停止される。従って、バイパス路17を介した冷媒よりも循環水の温度が低い場合、蒸発器6内において、循環水による冷媒の液化を防止することができる。これにより、圧縮機3への液バックを防止することができる。
【実施例2】
【0064】
次に、本発明のチラーの実施例2について説明する。本実施例2のチラー1も、基本的には前記実施例1と同様の構成である。そこで、以下においては、両者の異なる点を中心に説明する。
【0065】
前記実施例1では、ポンプ24をオンオフ制御したが、本実施例2では、ポンプ24をインバータ制御する。これにより、蒸発器6への循環水の導入の制限とその解除を切り替えることができる。
【0066】
具体的には、液電磁弁12の一次側の冷媒温度が凍結防止制御開始温度以下の場合には、ポンプ24をインバータ制御して、蒸発器6への循環水の導入が通常よりも制限される。すなわち、バイパス路17を介した冷媒のみが蒸発器6へ供給されている間は、蒸発器6への循環水の流量を極端に減少させる。従って、バイパス路17を介した冷媒よりも循環水の温度が低い場合において、蒸発器6内における冷媒の循環水による液化を抑制することができ、圧縮機3への液バックを防止することができる。そして、蒸発器6の一次側の冷媒温度が液電磁弁開放温度以上となると、蒸発器6内において冷媒が液化しないと判断され、前述した制限が解除される。これにより、蒸発器6への循環水は、通常時の流量に戻される。その他の構成および制御は、前記実施例1と同様のため、説明は省略する。
【実施例3】
【0067】
図4は、本発明のチラーの実施例3を示す概略図であり、図1における循環水の流路の変形例である。本実施例3のチラー1も、基本的には前記実施例1と同様の構成である。そこで、以下においては、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0068】
前記実施例1では、ポンプ24をオンオフ制御したが、本実施例3では、ポンプ24の二次側に給水調整弁28を設け、この給水調整弁28の開度を制御する。給水調整弁28の開度を制御することで、蒸発器6への循環水の導入の制限とその解除を切り替えることができる。本実施例の給水調整弁28は、開度調整可能な電動弁であるモータバルブから構成される。
【0069】
液電磁弁12の一次側の冷媒温度が凍結防止制御開始温度以下の場合には、ポンプ24を作動させた状態で給水調整弁28の開度が絞られることで、蒸発器6への循環水の導入が通常よりも制限される。すなわち、バイパス路17を介した冷媒のみが蒸発器6へ供給されている間は、給水調整弁28の開度を絞って、蒸発器6への循環水の流量を極端に減少させる。従って、バイパス路17を介した冷媒よりも循環水の温度が低い場合において、蒸発器6内における冷媒の循環水による液化を抑制することができ、圧縮機3への液バックを防止することができる。そして、蒸発器6の一次側の冷媒温度が液電磁弁開放温度以上となると、蒸発器6内において冷媒が液化しないと判断され、前述した制限が解除される。これにより、蒸発器6への循環水は、通常時の流量に戻される。その他の構成および制御は、前記実施例1と同様のため、説明は省略する。
【0070】
本実施例では、給水調整弁28をモータバルブから構成したが、開度調整可能な電動弁である比例制御弁から構成してもよい。また、本実施例の給水調整弁28は、モータバルブや比例制御弁のような電動弁ではなく、開閉のみ可能な電磁弁としてもよい。この場合、蒸発器6への循環水の導入の有無を切り替えることができる。給水調整弁28を閉じることで、バイパス路17を介した冷媒のみが蒸発器6へ供給されている間は、蒸発器6への循環水の導入が停止される。そして、蒸発器6内において、冷媒が液化しないと判断されると、給水調整弁28が開かれて、蒸発器6への循環水の導入が行われる。
【実施例4】
【0071】
図5は、本発明のチラーの実施例4を示す概略図であり、図1における循環水の流路の変形例である。本実施例4のチラー1も、基本的には前記実施例1と同様の構成である。そこで、以下においては、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0072】
前記実施例1では、ポンプ24をオンオフ制御したが、本実施例4では、所望時に、ポンプ24からの循環水が蒸発器6を介さずに導出路23へ直接に導かれる構成とする。
【0073】
すなわち、導入路22のポンプ24二次側と、導出路23の中途との間には、接続路29が設けられる。接続路29と導入路22との接続部、および、接続路29と導出路23との接続部には、それぞれ三方弁(三方切替用モータバルブ)30,30が設けられる。各三方弁30を制御することで、ポンプ24から吐出される水の供給先は、蒸発器6または導出路23へ択一的に切り替えられる。
【0074】
冷凍機2の起動時、液電磁弁12の一次側の冷媒温度が凍結防止制御開始温度以下の場合には、循環水の供給先が導出路23となるように各三方弁30が切り替えられる。これにより、バイパス路17を介した冷媒のみが蒸発器6へ供給されている間、冷水タンク21からの循環水は、導入路22から接続路29を介して導出路23へ流通し、冷水タンク21へ戻される。従って、バイパス路17を介した冷媒よりも循環水の温度が低い場合において、蒸発器6内における冷媒の循環水による液化を防止することができ、圧縮機3への液バックを防止することができる。そして、蒸発器6の一次側の冷媒温度が液電磁弁開放温度以上となると、蒸発器6内において冷媒が液化しないと判断され、循環水の供給先は、蒸発器6に切り替えられる。これにより、冷水タンク21からの循環水は、導入路22から蒸発器6へ導入され、蒸発器6にて冷却された後、導出路23を介して冷水タンク21へ戻される。
【0075】
ところで、図6は、本発明のチラーの実施例4の変形例を示す図である。この変形例では、所望時に、ポンプ24からの循環水が蒸発器6を介さずに冷水タンク21へ直接に戻される。
【0076】
具体的には、導入路22のポンプ24二次側と、冷水タンク21との間に戻し路31が設けられ、この戻し路31と導入路22との接続部に三方弁32が設けられる。三方弁32を制御することで、ポンプ24から吐出される水の供給先は、蒸発器6または冷水タンク21へ択一的に切り替えられる。
【0077】
冷凍機2の起動時、液電磁弁12の一次側の冷媒温度が凍結防止制御開始温度以下の場合には、循環水の供給先が冷水タンク21となるように三方弁32が切り替えられる。これにより、バイパス路17を介した冷媒のみが蒸発器6へ供給されている間、冷水タンク21からの循環水は、導入路22から戻し路31を介して、冷水タンク21へ戻される。従って、バイパス路17を介した冷媒よりも循環水の温度が低い場合において、蒸発器6内における冷媒の循環水による液化を防止することができ、圧縮機3への液バックを防止することができる。そして、蒸発器6の一次側の冷媒温度が液電磁弁開放温度以上となると、蒸発器6内において冷媒が液化しないと判断され、循環水の供給先は、蒸発器6に切り替えられる。これにより、冷水タンク21からの循環水は、導入路22から蒸発器6へ導入され、蒸発器6にて冷却された後、導出路23を介して冷水タンク21へ戻される。
【0078】
本発明のチラーは、前記各実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。たとえば、前記各実施例では、温度センサ19,20を用いて、冷媒の温度に基づき制御したが、圧力センサを用いて、冷媒の圧力に基づき制御してもよい。また、前記各実施例において、ステップS24は省略することもできる。
【0079】
また、前記各実施例では、バイパス弁18はモータバルブから構成したが、モータバルブの代わりに比例制御弁を用いてもよい。この場合、図3におけるステップS25〜S28は、第二温度センサ(圧力センサ)20に基づき、蒸発器6の一次側の冷媒温度(冷媒圧力)が第三設定値になるように、バイパス弁18の開度を増減することで、より精密な制御を行うことができる。
【0080】
また、前記各実施例において、バイパス路17として管径の異なる複数の管路を並列して設け、それぞれの管路に設けた電磁弁を個別に開閉可能とすることで、バイパス路17を介して蒸発器6へ供給する冷媒の流量を調整してもよい。この場合、その複数の電磁弁がバイパス弁18として機能する。また、前記各実施例において、液電磁弁12は、その名のとおり、通常は開閉のみ可能な電磁弁から構成されるが、場合によりモータバルブなどを用いて、開度調整可能としてもよい。
【0081】
また、前記各実施例では、ウォータチラーについて説明したが、その他のチラーにも同様に適用可能である。すなわち、蒸発器6において冷媒との間で熱交換を図られる被冷却液は、水に限らず、凍結のおそれがあるその他の液体であってもよい。
【0082】
また、前記各実施例では、タンク21と蒸発器6との間を被冷却液が循環される循環仕様としたが、蒸発器6へ供給した被冷却液を、負荷との熱交換(食材の冷却など)に使用後、使い捨てる流水仕様としてもよい。
【0083】
また、前記実施例2および前記実施例3では、蒸発器6への循環水の導入を制限した場合において、その制限の解除は、一気に行ってもよいし、徐々に行ってもよい。
【0084】
さらに、前記各実施例では、バイパス路17を介した冷媒のみが蒸発器6へ供給されている間は、蒸発器6への水の導入を停止または制限する構成としたが、冷媒温度よりも水温が低い場合に蒸発器6内への水の供給を停止または制限すれば足り、これを達成する構成や制御は適宜に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明のチラーの実施例1を示す概略構成図である。
【図2】図1のチラーの冷凍機の起動時の制御を示すフローチャートである。
【図3】図2における凍結防止制御の詳細を示すフローチャートである。
【図4】本発明のチラーの実施例3を示す概略図であり、図1における循環水の流路の変形例である。
【図5】本発明のチラーの実施例4を示す概略図であり、図1における循環水の流路の変形例である。
【図6】図5の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
1 チラー
2 冷凍機
3 圧縮機
4 凝縮器
5 膨張弁
6 蒸発器
12 液電磁弁
17 バイパス路
18 バイパス弁
22 導入路
23 導出路
24 ポンプ
26 制御器
28 給水調整弁
29 接続路
30 三方弁
31 戻し路
32 三方弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、膨張弁および蒸発器に冷媒を循環させて冷凍サイクルを実行する冷凍機と、
前記蒸発器において冷媒と熱交換させる被冷却液を、前記蒸発器へ導入する導入路と、
前記蒸発器において冷媒と熱交換させた被冷却液を、前記蒸発器から導出する導出路と、
前記膨張弁の一次側に設けられる液電磁弁と、
前記凝縮器の一次側と前記膨張弁の二次側とを接続するバイパス路と、
このバイパス路に設けられる開度調整可能なバイパス弁と、
前記液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が設定値以下の場合、前記蒸発器への被冷却液の導入を停止または制限すると共に、前記液電磁弁を閉じた状態で前記バイパス弁を開いて前記冷凍機を起動する制御器と
を備えることを特徴とするチラー。
【請求項2】
前記冷凍機の起動時、前記液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力に基づき、
前記液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第一設定値を超える第一の場合には、前記蒸発器へ被冷却液を導入すると共に、前記バイパス弁を閉じた状態で前記液電磁弁を開いて前記冷凍機を起動する一方、
前記液電磁弁の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第一設定値以下の第二の場合には、前記蒸発器へ被冷却液を導入しないか、前記第一の場合よりも制限して前記蒸発器へ被冷却液を導入すると共に、前記液電磁弁を閉じた状態で前記バイパス弁を開いて前記冷凍機を起動し、これにより前記蒸発器の一次側の冷媒温度または冷媒圧力が第二設定値以上になると、前記蒸発器への被冷却液の導入の停止または制限を解除すると共に、前記液電磁弁を開いた状態で前記バイパス弁の開度を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載のチラー。
【請求項3】
前記導入路に設けられたポンプの作動の有無により、前記蒸発器への被冷却液の導入の有無を切り替えて制御する
ことを特徴とする請求項2に記載のチラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−174769(P2009−174769A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−13284(P2008−13284)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)