説明

ツイスト電線製造方法及びその装置

【課題】所望するツイストピッチのツイスト電線を精度よく製造することができるツイスト電線製造方法及びその装置を提供する。
【解決手段】ツイスト電線製造装置1は、2本並列した電線A,Aの両端部を一対の電線保持部3,3により保持した後、一対の電線保持部3,3の相対回転により電線A,Aを撚り合わせしながら、電線A,AのツイストピッチPを撮影カメラ7により撮影して監視するとともに、撮影カメラ7により撮影した画像情報に基づいて、所定ピッチであるか否かを判定装置8により判定し、所定ピッチであると判定されるまで、電線A,Aを撚り合わせする撚り合せ動作と、電線A,Aを撚り戻りさせる撚り戻り動作とを何回か繰り返して、所望するツイストピッチPのツイスト電線Bを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば複数本の電線を撚り合わせして、所望するツイストピッチのツイスト電線を製造する作業に用いられるツイスト電線製造方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述のツイスト電線製造方法としては、例えば複数本並列した電線の両端部を一対のクランプ部により挟持した後、各クランプ部を、予め設定した回数だけ正回転させて、所定ピッチに撚り合わされたツイスト電線を製造する特許文献1のツイスト電線製造装置がある。
【特許文献1】特開2005−149966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述の製造装置は、ツイスト加工時において、電線を挟持するクランプ部の回転数を作業者の手で設定、入力するので、人為的な入力間違いが発生しやすく、ピッチが狭くなるか、広くなる等のピッチ不良を発生させてしまう可能性が大きい。また、ツイスト加工後において、電線のピッチをピッチ測定器により測定しなければならず、測定作業に手間及び時間が掛かる。
【0004】
この発明は上記問題に鑑み、所望するツイストピッチのツイスト電線を精度よく製造することができるツイスト電線製造方法及びその装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載した発明のツイスト電線製造方法は、複数本の電線を撚り合わせして、所望するツイストピッチのツイスト電線を製造するツイスト電線製造方法であって、上記複数本並列した電線の両端部を一対の保持手段により保持した後、該一対の保持手段を上記電線が撚り合わされる方向へ相対回転させ、上記各保持手段の相対回転により上記電線を撚り合わせしながら該電線のツイストピッチをピッチ検知手段により検知し、上記ピッチ検知手段から出力される検知ピッチ情報に基づいて、上記電線のツイストピッチが所定ピッチであるか否かを判定手段により判定し、上記判定手段により所定ピッチであると判定されるまで、上記各保持手段による電線の撚り合わせ動作を継続して、所望するツイストピッチのツイスト電線を製造することを特徴とする。
【0006】
この発明によると、複数本並列した電線の両端部を一対の保持手段により保持した後、一対の保持手段を電線が撚り合わされる方向へ相対回転させるとともに、各保持手段の相対回転により電線を撚り合わせしながら、電線のツイストピッチをピッチ検知手段により検知又は監視する。ピッチ検知手段から出力される検知ピッチ情報に基づいて、各保持手段の相対回転により撚り合わされる電線のツイストピッチが所定ピッチであるか否かを判定手段により判定する。判定手段により所定ピッチであると判定されるまで、各保持手段の相対回転による電線の撚り合わせ動作を継続して、所望するツイストピッチのツイスト電線を製造する。
【0007】
上記ツイスト電線の製造に用いられる電線は、例えば2本、3本、4本、5本等の任意本数に変更するか、任意の線種、線径、長さ等に変更することができる。また、上記保持手段は、例えばクランプ、チャック等の挟持具で構成することができる。
【0008】
また、ピッチ検知手段は、例えば撮影カメラ(CCDカメラ)等の画像センサ、レーザーセンサ、近接センサ等で構成することができる。また、判定手段及び後述する制御手段は、例えばパーソナルコンピューター、CPU、ROM、RAMを備えた装置等の制御装置で構成することができる。
【0009】
請求項2に記載した発明のツイスト電線製造方法は、上記請求項1に記載の構成と併せて、上記判定手段による判定結果に基づいて、上記電線を所定ピッチに撚り合わせした後、該所定ピッチに撚り合わせした状態よりも該電線自体の撚り戻りを考慮した回数だけ多めに撚り合わせすることを特徴とする。
【0010】
この発明によると、判定手段による判定結果に基づいて、複数本の電線を所定ピッチに撚り合わせした後、予め撚り戻りを考慮した回数だけ多めに撚り合わせるので、電線自体が復元力により撚り戻しても、所望するツイストピッチに近い状態に撚り合わせすることができる。
【0011】
請求項3に記載した発明のツイスト電線製造方法は、上記請求項1又は2に記載の構成と併せて、上記判定手段による判定結果に基づいて、上記電線を撚り合わせする撚り合わせ動作と、該電線を撚り戻りさせる撚り戻り動作とを該繰り返すことを特徴とする。
【0012】
この発明によると、電線を撚り合わせする撚り合せ動作と、電線を撚り戻りさせる撚り戻り動作とを、電線自体の撚り戻りがなくなるまで何回か繰り返すので、電線自体の撚り戻りによるピッチのバラツキを少なくすることができる。
【0013】
請求項4に記載した発明のツイスト電線製造装置は、複数本の電線を撚り合わせして、所望するツイストピッチのツイスト電線を製造するツイスト電線製造装置であって、上記複数本並列した電線の両端部を保持する一対の保持手段と、上記一対の保持手段を、上記電線が撚り合わされる方向及び撚り戻しされる方向へ相対回転する回転手段と、上記各保持手段の相対回転により撚り合わされた電線のツイストピッチを検知するピッチ検知手段と、上記ピッチ検知手段から出力される検知ピッチ情報に基づいて、上記電線のツイストピッチが所定ピッチであるか否かを判定する判定手段と、上記判定手段による判定結果に基づいて、上記回転手段の駆動及び停止を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
この発明によると、複数本並列した電線の両端部を一対の保持手段により保持した後、一対の保持手段を、回転手段により電線が撚り合わされる方向に相対回転して、複数本の電線を撚り合わせる。
【0015】
一対の保持手段の相対回転により撚り合わされた電線のツイストピッチをピッチ検知手段により検知又は監視しながら、電線のツイストピッチが所定ピッチであるか否かを判定手段により判定する。例えば基準ピッチを予め記憶しておけば、ピッチ検知手段から出力される検知ピッチ情報と、予め記憶された基準ピッチ情報を判定手段により比較して判定できる。
【0016】
判定手段による判定結果に基づいて、回転手段の駆動及び停止を制御手段により制御し、判定手段により所定ピッチであると判定されるまで、各保持手段の相対回転及び相対移動による電線を撚り合わせする撚り合せ動作と、電線を撚り戻りさせる撚り戻り動作とを何回か繰り返して、所望するツイストピッチのツイスト電線を製造する。
【0017】
上記回転手段は、例えば回転用モータ、回転軸、回転台、回転枠等で構成することができる。
【0018】
請求項5に記載した発明のツイスト電線製造装置は、上記請求項4に記載の構成と併せて、上記保持手段に付与される回転方向のトルクを検知するトルク検知手段を設け、上記トルク検知手段から出力される検知トルク情報に基づいて、上記電線に付与されるトルクが設定範囲内であるか否かを制御手段により判定し、上記制御手段による判定結果に基づいて、上記回転手段の駆動及び停止を制御手段により制御することを特徴とする。
【0019】
この発明によると、トルク検知手段から出力される検知トルク情報に基づいて、電線に付与されるトルクが設定範囲内であるか否かを制御手段により判定するとともに、制御手段による判定結果に基づいて、一対の保持手段を回転する回転手段の駆動及び停止を制御手段により制御することで、電線が撚り戻りを考慮した回数以上に撚り合わされるのを防止する。
【0020】
上記トルク検知手段は、例えば滑りトルク、捩れトルク、歪みトルク等を検知するようなトルク検知装置で構成することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、ツイスト電線の製造時において、複数本の電線を撚り合わせしてなるツイストピッチをピッチ検知手段により検知又は監視しながら製造するので、ツイスト加工前において、電線の回転数を作業者の手で設定したり、ツイスト加工後において、電線のピッチをピッチ測定器により測定したりする必要がなく、ピッチ不良の発生率が少なくなり、所望するツイストピッチに撚り合わせしてなるツイスト電線を精度よく製造することができる。また、ツイスト電線の製造に要する工程及び時間を削減して、製造能力の向上を図ることができる。
【0022】
また、例えば電線類、電線径、電線長等に応じた回転数を予め設定、入力する必要がなく、同一ピッチの電線を安定して製造することができる。
【0023】
また、ピッチ検知手段により検知した検知ピッチ情報を制御手段から回転手段へフィードバックするので、回転手段の停止タイミングを制御することができ、例えば1/2回転、1/4回転等に回転停止すれば、予め設定したピッチ規格値ジャストに適合したツイスト電線を製造することができる。
【0024】
また、電線の撚り戻りを考慮するために、一対の保持手段を自由回転自在にして、フリー状態にした電線のツイストピッチをピッチ検知手段により検知するので、電線が撚り戻りすることがなく、電線のツイストピッチを正確に検知することができる。
【0025】
また、最適なツイストピッチに撚り合わせされるまで、撚り合わせ動作と撚り戻り動作を何回か繰り返すので、撚り戻りによるピッチのバラツキを少なくすることができる。
【0026】
また、電線に付与される張力を解くか緩めて、電線自体の復元力により撚り戻りさせた後、ツイスト加工済みの電線を電線保持部から取り外すので、電線が跳ね上がったり、収縮したりせず、取り外し作業が容易に行える。且つ、装置や機器、作業者等に電線が接触することもなく、ダメージを与える心配もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
この発明は、所望するツイストピッチのツイスト電線を精度よく製造することができるという目的を、複数本の電線を撚り合わせしてなるツイストピッチをピッチ検知手段により監視しながら製造することで達成した。
【実施例】
【0028】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は、複数本の電線を撚り合わせして、所望するツイストピッチのツイスト電線を製造する作業に用いられるツイスト電線製造方法及びその装置を示し、図1に於いて、このツイスト電線製造方法は、2本並列した電線A,Aの両端部を一対の電線保持部3,3により保持した後、一対の電線保持部3,3の相対回転により電線A,Aを撚り合わせしながら、電線A,AのツイストピッチPを撮影カメラ7により撮影して監視するとともに、撮影カメラ7により撮影した画像情報に基づいて、所定ピッチであるか否かを判定装置8により判定し、所定ピッチであると判定されるまで、電線A,Aを撚り合わせする撚り合せ動作と、電線A,Aを撚り戻りさせる撚り戻り動作とを何回か繰り返して、所望するツイストピッチPのツイスト電線Bを製造するものである。
【0029】
また、ツイスト電線Bの製造に用いられる電線Aの本数を、例えば3本、4本、5本等の任意本数に変更するか、任意の線種、線径、長さ等に変更することもできる。
【0030】
上記方法を実行するツイスト電線製造装置1は、平面から見て矩形の基台2上に、2本並列した電線A,Aの両端部を保持する一対の電線保持部3,3と、電線保持部3,3を電線A,Aが撚り合わされる方向及び撚り戻しされる方向へ相対回転する一対の回転用モータ4,4と、電線保持部3,3を電線A,Aに対して長さ方向の張力が付与される方向及び該張力が解かれる方向へ相対移動する移動用モータ5と、一対の電線保持部3,3の相対回転により撚り合わされた電線A,Aの撚り合わせ部分を撮影する撮影カメラ7と、撮影カメラ7により撮影した画像情報に基づいて、電線A,AのツイストピッチPが所定ピッチであるか否かを判定する判定装置8と、判定装置8による判定結果に応じて、回転用モータ4,4と移動用モータ5の駆動及び停止を制御する制御装置9とを備えている。
【0031】
上記一対の電線保持部3,3は、基台2上の右側に配置した回転用モータ4の回転軸端部と、基台2上の左側に配置した回転用モータ4の回転軸端部とに軸方向に相対向して設けられ、回転用モータ4,4の正逆回転により、電線保持部3,3により保持した電線A,Aが撚り合わされる正方向と、撚り戻しされる逆方向とに回転する。つまり、回転用モータ4,4を電線A,Aが撚り合わされる方向に正回転して、電線保持部3,3により保持した電線A,Aを撚り合わせる。また、回転用モータ4,4を逆回転して、電線A,Aに付与される巻回力を解くか緩めれば、電線A自体の復元力によりフリー状態に撚り戻りさせることができる。
【0032】
図2にも示すように、電線保持部3を構成する一対の保持体3a,3aは、例えばソレノイド、モータ等の開閉装置により、2本並列した電線A,Aの端部が保持される閉状態と、その保持が解除される開状態とに開閉動作する。なお、電線保持部3は、例えばクランプ、チャック等の挟持体で構成することもできる。
【0033】
一方の回転用モータ4は、基台2上の右側上面に移動不可に固定し、他方の回転用モータ4は、基台2上の左側上面に配置した可動台6Aに固定しており、可動台6Aは、基台2上面に敷設したレール6Bに対して前後方向に水平移動自在に設けている。
【0034】
レール6B後端に連結した移動用モータ5は、可動台6A全体をレール6Bに沿って長さ方向に前後移動させ、固定側の回転用モータ4に設けた一方の電線保持部3と、可動側の回転用モータ4に設けた他方の電線保持部3とを、互いに近接又は離間される方向に相対移動させ、電線A,Aに対して適度な張力がそれぞれ均等に付与される適切な位置に配置する。つまり、可動台6Aを、電線保持部3,3が離間される方向に移動させ、電線保持部3,3により保持した電線A,Aに対して長さ方向に適度な張力を付与する。また、電線保持部3,3が近接される方向に移動させて、電線A,Aに付与される張力を解くか緩めれば、電線Aの復元力によりフリー状態に収束させることができる。
【0035】
また、電線A,Aに付与される張力は、例えば電線類、電線径、電線長等に応じて任意の張力に変更することができる。
【0036】
前記撮影カメラ7は、電線保持部3,3により保持された電線A,Aの巻回部分と対向して可動台6Aの上端側張出し部に垂設され、電線保持部3,3により保持された電線A,Aを上方又は真上から撮影し、その撮影した画像情報を、後述する制御装置9に備えられた画像処理装置10に出力する。また、例えば真横、斜め上方等の任意方向から撮影カメラ7で撮影するか、複数の撮影カメラ7…で撮影する等してもよい。なお、撮影カメラ7に代わる他の例として、例えばレーザーセンサ、近接センサ等のピッチ検知手段により検知することもできる。
【0037】
可動側回転用モータ4の回転軸に設けた張力・トルク検知器11は、電線A,Aに付与される張力と、電線保持部3に付与される回転方向のトルクを検知し、その検知張力情報及び検知トルク情報を制御装置9に出力する。制御装置9は、張力・トルク検知器11により検知した検知張力情報と検知トルク情報を、回転用モータ4と移動用モータ5へフィードバックする。これにより、電線保持部3,3を適切な位置へ配置することができる。
【0038】
なお、基台2上面には、ツイスト加工を開始する開始スイッチ12と、装置全体の駆動を停止する停止スイッチ13と、電線A,Aに加工されるツイストピッチPを可変設定する設定スイッチ14とを配列している。
【0039】
図3は、ツイスト電線製造装置1の制御回路ブロック図を示し、例えばパーソナルコンピューター等で構成される制御装置9にはCPU、ROM、RAMが内蔵され、CPUは、ROM(又はPROM)に格納されたプログラムに沿って、一対の電線保持部3,3と、回転用モータ4と、移動用モータ5と、撮影カメラ7と、判定装置8と、画像処理装置10と、張力・トルク検知器11と、開始スイッチ12と、停止スイッチ13と、設定スイッチ14の駆動及び停止を制御する。
【0040】
RAM(記憶部)には、電線保持部3,3により保持した電線A,Aを撚り合わせるときに付与される張力と、電線保持部3,3を回転するときに付与される回転方向のトルクと、電線保持部3,3の相対位置、移動距離を記憶する。
【0041】
画像処理装置10は、撮影カメラ7により撮影した画像情報を2値化処理するようにプログラムされたパーソナルコンピューター等の処理装置で構成され、図6に示すように、撮影カメラ7により撮影した電線A,Aの画像データを、電線A,Aの画像が明確となるようにコントラストを強調させた後、所定輝度の閾値により2値化処理して、電線A,Aの画素を黒画素として抽出するとともに、その抽出した画像情報を、制御装置9のCPUに出力する。
【0042】
CPUは、画像処理装置10から出力される電線A,Aの画像情報から画素数が少ない幅狭の谷部と、画素数が多い幅広の山部とを算出し、任意部分の谷部を基準として、前後に配列された前側谷部と後側谷部との間隔を1ピッチとして算出するとともに、その算出した1ピッチの検知ピッチ情報を、予めROMに記憶された基準ピッチ情報と比較して、電線A,Aに加工されたツイストピッチPが所定ピッチであるか否かを判定装置8により判定する。また、任意部分の山部を基準として、その前後に配列された前側山部と後側山部の頂部間隔を1ピッチとして認識するようにプログラム設定することもできる。
【0043】
また、所望するツイストピッチPに撚り合わせするのに必要な残りの巻回数を、繰り返し回数と係数とに基づいて算出し、その算出した巻回数だけ撚り合わせ動作と撚り戻り動作を繰り返すように制御することもできる。
【0044】
図示実施例は上記の如く構成するものにして、以下、ツイスト電線製造装置1によるツイスト電線Bの製造方法を説明する。
【0045】
予め、電線A,Aの本数、線径、長さ、種類等に応じて、電線A,Aに対して長さ方向に付与される張力と、回転方向に付与されるトルクを制御装置9のRAM(記憶部)に予め記憶又は入力し、設定スイッチ14を操作して、電線A,Aに加工されるツイストのピッチ長さを予め設定しておく。
【0046】
図4は、ツイスト電線製造装置1によるツイスト前処理のフローチャートである。図1及び図2に示すように、ツイスト電線製造装置1は、2本の電線A,Aの両端部を左右に配置した一対の電線保持部3,3により保持するとともに、ツイスト加工が許容される間隔に近接又は接触させて並列状態にセットする(ステップ1)。
【0047】
次に、制御装置9は、設定スイッチ14がON状態であるか、ピッチ長さが未設定(0設定)であるか否かを判定し、OFF状態又は未設定であると判定した場合、その判定動作を繰り返す(ステップ2)。
【0048】
次に、制御装置9は、設定スイッチ14がON状態で、任意のピッチ長さに設定済みであると判定した場合、開始スイッチ12がON状態であるか否かを判定し、OFF状態であると判定した場合、その判定動作を繰り返す(ステップ3)。
【0049】
次に、制御装置9は、開始スイッチ12がON状態であると判定した場合、電線保持部3,3により保持した電線A,Aの画像情報が撮影カメラ7から画像処理装置10に出力されているか否かを判定し、撮影カメラ7から電線A,Aの画像情報が出力されず、撮影カメラ7により電線A,Aが未認識であると判定した場合、上記ステップ1〜ステップ3の処理動作を繰り返す(ステップ4)。
【0050】
次に、撮影カメラ7から電線A,Aを撮影した画像情報が画像処理装置10に出力され、撮影カメラ7が電線A,Aを認識中であると判定した場合、電線保持部3,3を、移動用モータ5の駆動力により離間方向に相対移動させ、電線A,Aの長さ方向に対して適度な張力がそれぞれ均等に付与される適切な位置に配置する(ステップ5)。
【0051】
次に、制御装置9は、電線A,Aに付与される張力を検知した検知張力情報が張力・トルク検知器11から出力されているか否かを判定し、張力・トルク検知器11から検知張力情報が出力されず、OFF状態であると判定した場合、電線保持部3,3を、移動用モータ5の駆動力により離間方向に相対移動させ、電線A,Aに対して適度な張力を付与するステップ5の動作を繰り返す(ステップ6)。
【0052】
次に、制御装置9は、張力・トルク検知器11から検知張力情報が出力され、ON状態であると判定した場合、電線A,Aを撚り合わせるときに付与される張力と、回転方向のトルクと、電線保持部3,3の位置を制御装置9のRAM(記憶部)に記憶する(ステップ7)。上記ツイスト前処理が完了した後、図5に示すツイスト処理を実行する(ステップ8)。
【0053】
図5は、ツイスト電線製造装置1によるツイスト処理のフローチャートである。図1及び図2に示すように、ツイスト電線製造装置1は、回転用モータ4,4を正回転して、電線保持部3,3により保持した電線A,Aを予め設定した回数だけ撚り合わせる(ステップ9)。
【0054】
次に、制御装置9は、撚り合わせ動作中において、張力・トルク検知器11から出力される検知張力情報に基づいて、電線A,Aに付与される張力が設定範囲内であるか否かを判定するとともに(ステップ10)、張力・トルク検知器11により検知した検知張力情報を移動用モータ5へフィードバックする。
【0055】
次に、制御装置9は、電線A,Aに付与される張力が設定範囲以下又は以上であると判定した場合、電線保持部3,3を、移動用モータ5の駆動力により近接方向又は離間方向に相対移動させ、所定ピッチに撚り合わせるのに適した張力を電線A,Aに対して付与するとともに、電線A,Aに付与される張力が設定範囲内であるか否かを判定するステップ10の動作を繰り返す(ステップ11)。
【0056】
次に、制御装置9は、電線A,Aに付与される張力が設定範囲内であると判定した場合、撮影カメラ7から出力される電線A,Aの画像情報に基づいて、図6に示す電線A,Aに加工されたツイストピッチPが設定値であるか否かを判定装置8により判定させる(ステップ12)。判定装置8からツイストピッチPが設定値以下であるという判定結果が出力された場合、その判定結果に基づいて、上記ステップ9〜ステップ11の処理動作を繰り返す。
【0057】
次に、制御装置9は、判定装置8からツイストピッチPが設定値であるという判定結果が出力された場合、その判定結果に基づいて、回転用モータ4,4の駆動を停止させ、撚り合わせした状態を維持する(ステップ13)。
【0058】
次に、回転用モータ4,4を、繰り返し回数に係数を掛けた回数だけ正回転させ、電線保持部3,3による保持した電線A,Aを回転停止時の撚り合わせ状態から、撚り戻りを考慮した回数だけ撚り合わせる(ステップ14)。これにより、電線A,Aに付与される張力を解く又は緩めると、電線A自体の撚り戻りにより回転停止時の撚り合わせ状態よりもピッチが拡張するのを防止している。
【0059】
初回の撚り合わせ時には、制御装置9のRAMに繰り返し回数が記憶されておらず、予め設定された回数だけ正回転する。次回からは、RAMに記憶された繰り返し回数に係数を掛けた回数だけ正回転するとともに、撚り合わせ動作と撚り戻り動作を繰り返す間の繰り返し回数をRAMに記憶して更新する。
【0060】
次に、電線保持部3,3による電線A,Aの保持を解除し、ツイスト加工した電線A,Aを該電線Aの復元力によりフリー状態に撚り戻りさせる(ステップ15)。
【0061】
次に、制御装置9は、電線保持部3,3による保持解除後において、張力・トルク検知器11から出力される検知トルク情報に基づいて、電線A,Aに付与されるトルクが設定範囲内であるか否かを判定するとともに(ステップ16)、張力・トルク検知器11により検知した検知トルク情報を回転用モータ4へフィードバックさせ、回転用モータ4の駆動及び停止のタイミングを制御する。
【0062】
次に、制御装置9は、電線A,Aが必要以上に撚り合わされ、電線A,Aに付与されるトルクが設定範囲以上であると判定した場合、電線保持部3,3により電線A,Aを再び保持した後(ステップ17)、回転用モータ4,4を撚り戻り方向に逆回転して、電線A,Aに付与されるトルクを設定範囲内に納めた後(ステップ18)、上記ステップ13〜ステップ15の処理動作を繰り返す。
【0063】
なお、電線A,Aに付与されるトルクが設定範囲以下に減衰した場合、回転用モータ4,4を正回転してトルクが設定範囲内に納まるようにすることもできる。
【0064】
次に、制御装置9は、電線A,Aに付与されるトルクが設定範囲内であると判定した場合、撮影カメラ7から出力される電線A,Aの画像情報に基づいて、電線A,Aに加工されたツイストピッチPが設定値であるか否かを判定し(ステップ19)、その判定結果に応じて、制御装置9により回転用モータ4,4及び移動用モータ5を制御する。
【0065】
次に、制御装置9は、電線A,AのツイストピッチPが設定値以下であると判定した場合、電線保持部3,3により電線A,Aを再び保持した後(ステップ20)、撚り合わせ動作及び撚り戻り動作の繰り返し回数をRAMに記憶し(ステップ21)、回転用モータ4,4の回転を停止した後(ステップ22)、上記ステップ12〜ステップ22の処理動作を実行する。所定ピッチであると判定されるまで、電線A,Aを撚り合わせする撚り合せ動作と、電線A,Aを撚り戻りさせる撚り戻り動作とを何回か繰り返して、所望するツイストピッチPにツイスト加工する。
【0066】
次に、制御装置9は、ステップ19において、電線A,Aに加工されたツイストピッチPが設定値であると判定した場合、回転用モータ4,4及び移動用モータ5の駆動を停止するか、停止状態を維持する。電線保持部3,3による保持を解除して、ツイスト電線Bの両端部を電線保持部3,3から抜き取れば、所望するツイストピッチPに撚り合わせしてなるツイスト電線Bの製造作業が完了する。
【0067】
以上のように、ツイスト電線Bの製造時において、2本の電線A,Aを撚り合わせてなるツイストピッチPを撮影カメラ7により監視しながら製造するので、ツイスト加工前において、電線A,Aの回転数を作業者の手で設定したり、ツイスト加工後において、電線A,AのツイストピッチPをピッチ測定器で測定したりする必要がなく、ピッチ不良の発生率が少なくなり、所望するツイストピッチPに撚り合わせしてなるツイスト電線Bを精度よく製造することができる。また、ツイスト電線Bの製造に要する工程及び時間を削減して、製造能力の向上を図ることができる。
【0068】
また、例えば電線類、電線径、電線長等に応じた回転数を予め設定、入力しておく必要がなく、同一ツイストピッチPの電線A,Aを安定して製造することができる。
【0069】
また、撮影カメラ7により撮影した画像情報から算出したピッチ情報を、制御装置9から回転用モータ4へフィードバックするので、回転用モータ4の駆動及び停止のタイミングを制御することができ、例えば1/2回転、1/4回転等の停止すれば、予め設定したピッチ規格値ジャストに適合したツイスト電線Bを製造することができる。
【0070】
また、電線A,Aの撚り戻りを考慮するために、回転用モータ4からの回転力を遮断し、一対の電線保持部3,3を自由回転自在にして、フリー状態にしたツイスト電線BのツイストピッチPを撮影カメラ7により撮影するので、ツイスト電線Bが撚り戻りすることがなく、撮影カメラ7により撮影した画像情報に基づいてツイスト電線BのツイストピッチPを正確に検知することができる。
【0071】
また、最適なツイストピッチPに撚り合わせされるまで、撚り合わせ動作と撚り戻り動作を繰り返すので、撚り戻りによるピッチのバラツキを少なくすることができる。
【0072】
また、撚り合わせ動作と撚り戻り動作を繰り返す間の繰り返し回数を、制御装置9のRAMに記憶して更新するため、ステップ14の回転数を更新でき、撚り合わせ動作と撚り戻り動作を繰り返す回数を収束することができる。つまり、次回に電線A,Aのツイスト加工を実行する際に、RAMに記憶した前回の繰り返し回数に応じた撚り合わせ動作を1回の動作で行なうので、ステップ20〜ステップ22の処理動作を繰り返す必要がなく、上記動作の繰り返し回数を少なくして、製造に要する時間を短縮することができる。
【0073】
また、電線A,Aに付与される張力を解くか緩めて、電線A自体の復元力により撚り戻りさせた後、ツイスト加工済みの電線A,Aを電線保持部3,3から取り外すので、電線A,Aが跳ね上がったり、収縮したりせず、取り外し作業が容易に行える。且つ、装置や機器、作業者等に電線A,Aが接触することもなく、ダメージを与える心配もない。
【0074】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の保持手段は、実施例の電線保持部3に対応し、
以下同様に、
回転手段は、回転用モータ4に対応し、
ピッチ検知手段は、撮影カメラ7に対応し、
判定手段は、判定装置8に対応し、
制御手段は、制御装置9に対応し、
トルク検知手段は、張力・トルク検知器11に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】ツイスト電線製造装置の全体構成を示す斜視図。
【図2】電線保持部による電線の保持状態を示す拡大斜視図。
【図3】ツイスト電線製造装置の制御回路ブロック図。
【図4】ツイスト電線製造装置によるツイスト前処理のフローチャート。
【図5】ツイスト電線製造装置によるツイスト処理のフローチャート。
【図6】ツイスト電線のツイストピッチを示す拡大平面図。
【符号の説明】
【0076】
A…電線
B…ツイスト電線
P…ピッチ
1…ツイスト電線製造装置
2…基台
3…電線保持部
4…回転用モータ
5…移動用モータ
6A…可動台
6B…レール
7…撮影カメラ
8…判定装置
9…制御装置
10…画像処理装置
11…張力・トルク検知器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の電線を撚り合わせして、所望するツイストピッチのツイスト電線を製造するツイスト電線製造方法であって、
上記複数本並列した電線の両端部を一対の保持手段により保持した後、該一対の保持手段を上記電線が撚り合わされる方向へ相対回転させ、
上記各保持手段の相対回転により上記電線を撚り合わせしながら該電線のツイストピッチをピッチ検知手段により検知し、
上記ピッチ検知手段から出力される検知ピッチ情報に基づいて、上記電線のツイストピッチが所定ピッチであるか否かを判定手段により判定し、
上記判定手段により所定ピッチであると判定されるまで、上記各保持手段による電線の撚り合わせ動作を継続して、所望するツイストピッチのツイスト電線を製造することを特徴とする
ツイスト電線製造方法。
【請求項2】
上記判定手段による判定結果に基づいて、上記電線を所定ピッチに撚り合わせした後、該所定ピッチに撚り合わせした状態よりも該電線自体の撚り戻りを考慮した回数だけ多めに撚り合わせすることを特徴とする
請求項1に記載のツイスト電線製造方法。
【請求項3】
上記判定手段による判定結果に基づいて、上記電線を撚り合わせする撚り合わせ動作と、該電線を撚り戻りさせる撚り戻り動作とを繰り返すことを特徴とする
請求項1又は2に記載のツイスト電線製造方法。
【請求項4】
複数本の電線を撚り合わせして、所望するツイストピッチのツイスト電線を製造するツイスト電線製造装置であって、
上記複数本並列した電線の両端部を保持する一対の保持手段と、
上記一対の保持手段を、上記電線が撚り合わされる方向及び撚り戻しされる方向へ相対回転する回転手段と、
上記各保持手段の相対回転により撚り合わされた電線のツイストピッチを検知するピッチ検知手段と、
上記ピッチ検知手段から出力される検知ピッチ情報に基づいて、上記電線のツイストピッチが所定ピッチであるか否かを判定する判定手段と、
上記判定手段による判定結果に基づいて、上記回転手段の駆動及び停止を制御する制御手段とを備えた
ツイスト電線製造装置。
【請求項5】
上記保持手段に付与される回転方向のトルクを検知するトルク検知手段を設け、
上記トルク検知手段から出力される検知トルク情報に基づいて、上記電線に付与されるトルクが設定範囲内であるか否かを制御手段により判定し、
上記制御手段による判定結果に基づいて、上記回転手段の駆動及び停止を制御手段により制御する
請求項4に記載のツイスト電線製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−242431(P2007−242431A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63527(P2006−63527)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河オートモーティブパーツ株式会社 (571)
【Fターム(参考)】