ツツジの育種法
落葉性のツツジに常緑性に関わる遺伝子を導入できる、非耐暑性のツツジに耐暑性に関わる遺伝子を導入できる、一季咲き性のツツジに四季咲き性に関わる遺伝子を導入できる、ツツジの作出方法を提供するものである。落葉性のツツジと常緑性のツツジを交配することによって、落葉性のツツジに常緑性に関わる遺伝子を導入でき、耐暑性のツツジと非耐暑性のツツジとを交配することによって、非耐暑性のツツジに耐暑性に関わる遺伝子を導入できる、そして一季咲き性のツツジと四季咲き性のツツジとを交配することによって、一季咲き性のツツジに四季咲き性に関わる遺伝子を導入できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツツジが落葉性、非耐暑性、一季咲き性であって、落葉性、非耐暑性、一季咲き性のツツジに、常緑性、耐暑性、四季咲き性に関わる遺伝子を導入する新育種法に関する。より詳しくは、開花植物、すなわち、被子植物(angiosperms)の花と、遺伝子型(genotype)を改変するための処理である交配の方法とからなる新規植物またはそれらを得るための処理に関するものである。また、生殖交雑(sexual hybridization)の段階を含む育種過程(breeding process)において得られた植物やその一部を用いる方法である。また、新規植物(new plants)またはそれらを得るための方法であって、被子植物(angiosperms)などの花き類(flowering plants)に関する。
【背景技術】
【0002】
5亜属、約850種からなるロードデンドロン(Rhododendron)属は、熱帯から寒冷地にかけての低山から高山に分布し、形態的・生態的にも落葉から常緑、あるいは匍匐性から喬木に及ぶなど、膨大な変異を内包しながら特徴あるグループを形成している(非特許文献1、有隅健一:平成2年度科学研究費補助金(一般研究C)研究成果報告書、1991年3月:1−2)。
【0003】
ロードデンドロン属の中で園芸的に高く評価され、多彩な品種分化を遂げてきたのは常緑性のツツジ、落葉性のツツジ、無鱗片シャクナゲ、有鱗片シャクナゲの4亜属群である。これらが多彩な品種分化を遂げ得たのは、亜属内での種のゲノム的分化がそれほど大きくはなかったことから、異種間で遺伝子の相互交換がかなり自由に行われ、交配を繰り返しても、雑種が不稔にならなかったことによる(非特許文献2、有隅健一:平成2年度科学研究費補助金(一般研究C)研究成果報告書、1991年3月:1−2、図4−1)。
【0004】
ツツジ類の育種は、種内あるいは近縁種間での遺伝子交換の範疇にとどまっており、花色や花型などの形質改良の域を出ていない。特に、生態型の改変を伴った新規性ツツジ類の育種はなく、皆無の状況にあるといっていいのが国内外の現状である(非特許文献1、有隅健一:平成2年度科学研究費補助金(一般研究C)研究成果報告書、1991年3月:1−2)。
【0005】
ツツジ類には園芸的観点からはそれぞれに長短がある。例えば、常緑性のツツジ(evergreen azalea)について栽培は比較的容易であるが、黄色と真の青色を欠くなど、花色に問題点がある。また、落葉性のツツジ(deciduous azalea)は、エクスバリー種(exbury azalea)に強烈な黄色があるものの、本邦を代表するミツバツツジ類に限っては、花色は朱赤か紫紅色に限られ、しかも耐暑性はない(非特許文献3、有隅健一:ロードデンドロン、第32巻、第1号:67−83)。
【0006】
本属の内包する膨大な遺伝資源を縦横に活用した新しい園芸種を創出するために、かつて深く交わったことのない異質の生殖質(exotic germplasm)を考慮した育種が展開され、それぞれのツツジ間に散見される異質の生殖質を縦横に会合させることによって、新しい園芸系統が創出されてきた。しかし、耐暑性や四季咲き性などの新しい生殖質を持つ系統(個体)の作出方法は見あたらない(非特許文献1、有隅健一:平成2年度科学研究費補助金(一般研究C)研究成果報告書、1991年3月:1−2)。
【0007】
早春、他のツツジ類に先がけて咲くミツバツツジ類の多くの種は、葉の展開以前か、あるいは展開とほぼ同時に開花するため、開花期にはすばらしい美観を呈する。これはミツバツツジ類の最大の特徴である。また、ひし形に近い葉を枝先に三枚輪生し、一部のミツバツツジでは照り葉性を示すなど、他のツツジ類に見られない特徴を持っている(非特許文献4、竹内照雄:誠文堂新光社、1969年5月:102−120;非特許文献5、山崎 敬他:誠文堂新光社、1976年3月:60−76)。落葉性であるミツバツツジと常緑性のサクラツツジとを交配することによって、常緑性のミツバツツジを作出することができるとされていたが、これまでに作出された報告例はない(非特許文献6、後藤利幸:新花卉、第106号:45)。
【0008】
クルメツツジ(「久留米ツツジ」、Kurume azalea)は、キリシマツツジ(「霧島ツツジ」、R.obtusum)とサタツツジ(R.sataense)をもとに品種改良が進められた園芸品種群で、現在、約300品種が広く栽培されている。クルメツツジは小輪多花性で花色は変異に富み、花型も散りにくい二重咲き(ホーズ・イン・ホーズ、hose−in−hose)の品種が多いことから、鉢物や庭木として人気を博している。また、開花期は4月中旬から5月上旬であり、多花性と一斉開花性の特質があることから、行楽地の植栽として欠かせないものとなっている(非特許文献7、田村輝夫他:葦書房、1989年4月:34−116)。
【0009】
クルメツツジは、花型や花色、あるいは樹姿を対象にして品種改良が進められ、それも旺盛な生育が保証された好適条件下で選抜された品種がほとんどであるため、不良環境には耐えることができない問題点がある。特に、暑地における公園や行楽地、あるいは道路沿いのグリーンベルトに植栽されるクルメツツジが忽然と枯れ上がるのはこの理由による(非特許文献7、田村輝夫他:葦書房、1989年4月:34−116)。
【0010】
マルバサツキ(R.eriocarpum)は、耐乾性、耐暑性に富み、自生地の薩南諸島、特にトカラ列島は、今もなお活動する火山性の島嶼であるため、亜硫酸ガスに対する抵抗性をも持つ丈夫な種である。加えてその名の示すとおり、葉は小葉で丸葉である(非特許文献8、国重正昭:誠文堂新光社、1976年3月:98−99)。
【0011】
ヒラドツツジ(「平戸ツツジ」、Hirado azalea)は、長崎県平戸市近郊で、外来のケラマツツジ(R.scabrum)やタイワンヤマツツジ(R.simsii)と本邦産のモチツツジ(R.macrosepalum)やキシツツジ(R.ripense)との間に生じた自然交雑個体の中から選抜されたもので、ツツジ類の中では最も大型の樹姿、葉、花器を持つものである。また、樹勢は強健で、生育は極めて旺盛である。乾燥や排気ガス、あるいは潮風にも強いところから、わが国では至るところに大量に植栽されている。また、ヒラドツツジは花の大輪性、花色の豊富さ、日持ちの良さを兼ね備え、他の常緑ツツジ類には見ることのできない利点を持つ(非特許文献9、田村輝夫他:葦書房、1989年4月:153−162)。
【0012】
ツツジ類のほとんどは、早春から初夏にかけて咲く、いわゆる一季咲き性を示すが、なかには春開花後、夏から秋にかけて再び開花する四季咲き性のツツジがある。中国南東部から台湾にかけて自生するキンモウツツジ(金毛ツツジ、R.oldhamii)のごく限られた一系統がそうである。このツツジは、葉に密毛があり、花は朱赤色一色と観賞性に乏しいものの、春季開花後、新梢が伸長した後に形成される花芽は、休眠せず開花に至るという周年開花性を示す(非特許文献10、有隅健一他:園芸学会研究発表要旨、1979年:256−257)。一般に、ツツジは春期開花後、花房直下の腋芽を伸長させ花芽を分化し、秋口にかけて花芽を完成する。その後の低温で花芽は休眠に入り、翌春の気温上昇に伴って発達し、開花に至る。キンモウツツジのごく限られた一系統では、夏期の花芽分化開始後急速に花芽を完成し、花芽は休眠に入ることなく発達しそのまま開花する。露地またはガラス室など制御環境下では、7月から8月にかけて開花を開始し、露地では降霜時まで、また、ガラス室内では年を越えて開花し続ける場合がある(非特許文献10)。
【0013】
ツツジ類は、自然条件下においては6月下旬から8月中旬の高温期(18〜25℃)にかけて花芽を分化し、花芽の完成する9月〜10月には気温の低下とともに休眠状態に入る。この花芽の休眠は、冬の低温(4〜7℃に30〜40日間)に遭遇することによって打破され、翌春の気温上昇に伴って開花に至る(非特許文献11、五井正憲:新花卉、第106号:72−75)。
【0014】
特開平11−266728号(以下、特許文献1という)には、ツツジ属植物の植物組織片から多芽体を形成させ、植物体を大量増殖する方法(特許文献1の第0005〜0020段落)の記載がある。「花弁、葉片等、1本の親植物から多数採取することができる出発材料を使用して、多数のシュートを有する多芽体を介することにより、ツツジ属植物を効率よく大量に増殖せしめることができることを見出し、本発明を完成した。」という記載がある。
【0015】
米国特許第13073号明細書(以下、特許文献2という)には、アザレア植物として“スカーレット”の記載がある。「新品種“スカーレット”は寒期および促成栽培期においても常緑の葉を落とすことはなく、」、「大変深い赤色で半八重の花を形成し、フリル咲きし、樹体の長持ちがよく、シリンドロクラジウム(Cylindrocladium)菌の感染実験で低い感染率を示す。」という記載がある。
【0016】
米国公開公報第20040073980号明細書(以下、特許文献3という)には、ロードデンドロンの台木として“ローヅンター48”の記載がある。「堅実で強固な成長を示す、新しいロードデンドロンの台木である。」という記載がある。
【0017】
中国特許第1413435号明細書(以下、特許文献5という)には、ロードデンドロンデラバーイ(Rhododendron delavayi)の種子生産法の記載がある。「アザレアの種を再生生産する方法であり、種子再生のプールを構築し、その中に腐植土油(70−90の割合)と菜園用土(5−15の割合)で配合した用土を準備し、アザレアの種(1の割合)と腐植土油(3−5の割合)で混ぜたものを前記したプールに播種し、低コストで70%以上の再生率を与える方法。」という記載がある。
【0018】
【特許文献1】特開平11−266728号公報(第0005〜0020段落、図1)
【特許文献2】米国特許第13073号明細書。
【特許文献3】米国公開公報第20040073980号明細書
【特許文献4】中国特許第1413435号明細書
【非特許文献1】有隅健一、「ツツジ・シャクナゲにおける耐暑性・新花色領域の創成に関する研究」、平成2年度科学研究費補助金(一般研究C)研究成果報告書、研究課題番号63560032、1991年3月、P.1−2。
【非特許文献2】有隅健一、「ツツジ・シャクナゲにおける耐暑性・新花色領域の創成に関する研究」、平成2年度科学研究費補助金(一般研究C)研究成果報告書、研究課題番号63560032、1991年3月、P.1−2、図4−1。
【非特許文献3】有隅健一、「耐暑性シャクナゲの育種(3)」、ロードデンドロン、2003年、第32巻、第1号、P.67−83。
【非特許文献4】竹内照雄、「ミツバツツジ類とサクラツツジ」、シャクナゲとツツジ、誠文堂新光社、1969年5月、P.102−120。
【非特許文献5】山崎 敬、他2名、「ミツバツツジの種類と栽培」、ツツジその種類と栽培、誠文堂新光社、1976年3月、P.60−76。
【非特許文献6】後藤利幸、「ミツバツツジ類の育種」、新花卉、第106号、1980年6月、P.45。
【非特許文献7】田村輝夫、他8名、「久留米ツツジの栽培と由来」、久留米のつつじ、葦書房、1989年4月、P.34−116。
【非特許文献8】国重正昭、「その他の常緑性ツツジ」、ツツジその種類と栽培、誠文堂新光社、1976年3月、P.98−99。
【非特許文献9】田村輝夫、他8名、「平戸ツツジの栽培と由来」、久留米のつつじ、葦書房、1989年4月、P.153−162。
【非特許文献10】有隅健一、他2名、「四季咲きツツジの育種に関する研究」、園芸学会研究発表要旨、1979年、昭和54年度春季大会、P.256−257。
【非特許文献11】五井正憲、「ツツジの開花特性」、新花卉、第106号、1980年6月、P.72−75。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、ミツバツツジ類は落葉性であり、落葉させずに周年の間、葉を観賞することができなかったという問題点がある。クルメツツジ類は不良環境には耐えることができないことから、暑地における公園や行楽地、あるいは道路沿いのグリーンベルトに栽植しても、数年の内に枯れるという問題点がある。また、ツツジ類の鉢物では、日長処理や生長調節剤処理で分化・発達させた花芽の休眠を打破することで開花を促進させれば、冬場に開花(一季咲き)させることができたものの、露地に植栽されるツツジ類にこの手法を用いるにはきわめて困難であり、露地植栽のツツジ類を四季咲きさせることができなかった問題点がある。
【0020】
本発明は、市場が要請するこれまでには無かった常緑性のミツバツツジ類、不良環境適応性を有したクルメツツジ類、四季咲き性のヒラドツツジ類を作出できることを見出した上で、落葉性のツツジに常緑性に関わる遺伝子を導入するツツジの育種法、非耐暑性のツツジに耐暑性に関わる遺伝子を導入するツツジの育種法、一季咲き性のツツジに四季咲き性に関わる遺伝子を導入するツツジの育種法を提供すると共に、常緑性のミツバツツジ類、耐暑性のクルメツツジ類、四季咲き性のヒラドツツジ類を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、落葉性のツツジと常緑性のツツジを交配することによって、落葉性のツツジに常緑性のツツジの、常緑性に関わる遺伝子を導入すると、結果として、常緑性の遺伝形質が受け継がれることを見出した。すなわち、本発明は、落葉性のツツジを常緑性に変換して育成する常緑性のツツジの育種方法であって、落葉性のツツジに常緑性に関わる遺伝子を導入することを特徴とする常緑性のツツジの育種法である。
【0022】
本発明者らは、上記の課題を解決するために更に、耐暑性のツツジと非耐暑性のツツジとを交配することによって、非耐暑性のツツジに耐暑性のツツジの耐暑性に関わる遺伝子を導入し、結果として、耐暑性の遺伝形質が受け継がれることを見出した。
すなわち、本発明は、また非耐暑性のツツジを耐暑性のツツジに変換して育成する耐暑性のツツジの育種方法であって非耐暑性のツツジと耐暑性のツツジとを交配して、前記非耐暑性のツツジに耐暑性に関わる遺伝子を導入することを特徴とするものである。
【0023】
本発明者らは、上記の課題を解決するために更に、一季咲き性のツツジと四季咲き性のツツジとを交配することによって、一季咲き性のツツジに四季咲き性のツツジの四季咲き性に関わる遺伝子を導入し、結果として、四季咲き性の遺伝形質が受け継がれることを見出した。すなわち本発明は、一季咲き性のツツジを四季性のツツジに変換して育成する四季咲き性のツツジの育種方法であって一季咲き性のツツジと四季咲き性のツツジとを交配して、前記一季咲き性のツツジに四季咲き性に関わる遺伝子(好ましくは一季咲き性のツツジに毎年四季咲き性を繰り返すことのできる遺伝子)を導入することを特徴とするものでる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のミツバツツジ類交配F1の常緑性の出現率を示す図である。調査は2002年2月に行った。
【図2】オンツツジ(◎)×ハヤトミツバツツジ(●)とF1雑種(○)のCIELab表色系上の花色分布を示す図である。
【図3】オンツツジ(◎)×コバノミツバツツジ(●)とF1雑種(○)のCIELab表色系上の花色分布を示す図である。
【図4】オンツツジ(◎)×サクラツツジ(●)とF1雑種(○)のCIELab表色系上の花色分布を示す図である。
【図5】本発明のマルバサツキ×クルメツツジ交配F1の二重咲き性(hose−in−hose)の出現率を示す図である。調査は2002年5月に行った。
【図6】マルバサツキ(●)×クルメツツジ「今猩々」(朱赤色、◎)とF1雑種(○)のCIELab表色系上の花色分布を示す図である。
【図7】マルバサツキ(●)×クルメツツジ「宮城野」(紅紫色、◎)とF1雑種(○)のCIELab表色系上の花色分布を示す図である。
【図8】マルバサツキ(●)×クルメツツジ「裾濃の糸」(紫色、◎)とF1雑種(○)のCIELab表色系上の花色分布を示す図である。
【図9】マルバサツキ(●)×クルメツツジ「麒麟」(桃色、◎)とF1雑種(○)のCIELab表色系上の花色分布を示す図である。
【図10】マルバサツキ(●)×クルメツツジ「暮の雪」(白色、◎)とF1雑種(○)のCIELab表色系上の花色分布を示す図である。
【図11】ヒラドツツジ交配F1雑種の月別開花個体数の推移を示す図である。調査は、2001年9月〜2003年1月に行った。
【図12】ヒラドツツジ交配F1雑種の月別開花個体数の推移を示す図である。調査は、2001年9月〜2004年6月に行った。
【図13】キンモウツツジ(◎)×ヒラドツツジ「大紫」(●)とF1雑種(○)のCIELab表色系上の花色分布を示す図である。
【図14】キンモウツツジ(◎)×ヒラドツツジ「曙」(●)とF1雑種(○)のCIELab表色系上の花色分布を示す図である。
【図15】キンモウツツジ(◎)×ヒラドツツジ「白妙」(●)とF1雑種(○)のCIELab表色系上の花色分布を示す図である。
【図16】キンモウツツジ(◎)×ヒラドツツジ「正之進」(●)とF1雑種(○)のCIELab表色系上の花色分布を示す図である。
【図17】キンモウツツジ(◎)×久留米大輪ツツジ「御代の栄」(●)とF1雑種(○)のCIELab表色系上の花色分布を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
(常緑性の付与)
本発明の常緑性のツツジの育種法は、落葉性のツツジを常緑性にするものであって、落葉性のツツジに常緑性に関わる遺伝子を導入するものである。本発明で使用する常緑性のツツジ類とは、落葉せずに周年の間、葉を付ける遺伝形質を持つツツジ類である。
【0027】
本発明で使用できる落葉性のツツジ類として、限定されるものではないが例えば、アイラム・アザレア(Ilam Azalea)、アウストリヌム(R.austrinum)、アカヤシオ(R.pentaphyllum var.nikoense)、アケボノツツジ(R.pentaphyllum var.shikokianum)、アトランチクム(R.atlanticum)、アマギツツジ(R.amagianum)、アマクサミツバツツジ(R.amakusaense)、アラバメンシス(R.alabamensis)、アルボレッセンス(R.arborescense)、アワノミツバツツジ(R.dilatatum var.decandrum f.lasiocarpum)、ウラジロミツバツツジ(R.osuzuyamense)、エクスベリー・アザレア(Exbury Azalea)、エゾツツジ(R.camtschaticum)、オオバツツジ(R.nipponicum)、オクシデンターレ(R.occidentale)、オクシデンターレ・アザレア(Occidental Azalea)、オンツツジ(R.weyrichii)、カナデンセ(R.canadense)、カネッセンス(R.canescens)、カレンデュラケウム(R.calendulaceum)、キヨスミミツバツツジ(R.kiyosumense)、キレンゲツツジ(R.japonicum f.flavum)、クロフネツツジ(R.schlippenbachii)、ケミツバツツジ(R.dilatatum var.lasiocarpum)、ゲンカイツツジ(R.mucronulatum)、ゲント・アザレア(Ghent Azalea)、コバノミツバツツジ(R.reticulatum)、サイゴクミツバツツジ(R.nudipes)、シブカワツツジ(R.sanctum var.lasiogynum)、シロヤシオ(R.quinquefolium)、ジングウツツジ(R.sanctum)、スペキオースム(R.speciosum)、ダイセンミツバツツジ(R.wadanum var.lagopus)、タカクマミツバツツジ(R.viscistylum)、タンナアカツツジ(R.weyrichii var.psilostylum)、タンナチョウセンヤマツツジ(R.yedoense var.hallaisanense)、トウゴクミツバツツジ(R.wadanum)、トサノミツバツツジ(R.decandrum)、ナップヒル・アザレア(Knap Hill Azalea)、ナンゴクミツバツツジ(R.mayebarae)、ヌディフロルム(R.nudiflorum)、バイカツツジ(R.semibarbatum)、ハヤトミツバツツジ(R.dilatatum var.satsumense)、バーケリ(R.bakeri)、ヒダカミツバツツジ(R.hidakanum)、ヒメミツバツツジ(R.nagasakianum)、ヒュウガミツバツツジ(R.hyugaense)、ファルレレー(R.farrerae)、プルニフォリウム(R.prunifolium)、ミツバツツジ(R.dilatatum)、ムサシミツバツツジ(R.tatuoi)、ムラサキヤシオツツジ(R.albrechtii)、モリス・アザレア(Mollis Azalea)、モーレ(R.molle)、ヤクシマミツバツツジ(R.yakumontanum)、ユキグニミツバツツジ(R.lagopus var.niphophilum)、ラスティカ・フローレ・プレノ・アザレア(Rustica Flore Pleno Azalea)、ルテウム(R.luteum)、レンゲツツジ(R.japonicum)、ロセウム(R.roseum)、ワセイ(R.vaseyi)、とこれらを親とする園芸品種や交配種が挙げられる。
【0028】
本発明で使用できる常緑性のツツジ類として、限定されるものではないが、例えば、アカシマヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi f.zonale)、アザレア(Azalea)、アシタカツツジ(R.komiyamae)、アマミセイシカ(R.amamiense)、ウレンツツジ(R.enomotoi)、ウンゼンツツジ(R.serpyllifolium)、エゾムラサキツツジ(R.dauricum)、エゾヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi f.latesepalum)、オオコメツツジ(R.tschonoskii var.trinerve)、オオシマツツジ(R.obtusum var.macrogemma)、オオヤマツツジ(R.transiens)、オオリュウキュウ(R.hortense)、オガサワラツツジ(R.boninense)、オタクミツツジ(R.otakumi)、キシツツジ(R.ripense)、キリシマツツジ(R.obtusum var.obtusum)、キンシベ(R.obtusum var.kaempferi f.kinshibe)、キンモウツツジ(R.oldhamii)、クルメツツジ(Kurume Azalea)、ケサクラツツジ(R.tashiroi var.lasiophyllum)、ケラマツツジ(R.scabrum)、コメツツジ(R.tschonoskii)、コリンヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi f.micranthum)、サカイツツジ(R.lapponicum)、サキシマツツジ(R.amanoi)、サクラツツジ(R.tashiroi)、サタツツジ(ヒメマルバサツキ、R.sataense)、サツキ(R.indicum)、サンヨウツツジ(R.komatsui)、シキザキヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi f.semperfloens)、シデヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi f.angustisectum)、シロバナモチツツジ(R.macrosepalum f.leucanthum、シロヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi f.album)、シロリュウキュウ(R.mucronatum)、セイシカ(R.latoucheae)、タイワンヤマツツジ(R.simsii)、タチセンエ(R.obtusum var.kaempferi f.tachi−sene)、チョウジコメツツジ(R.tetramerum)、チョウセンヤマツツジ(R.yedoense var.poukhanense)、テリハヤマツツジ(R.lusidusculum)、トキワバイカツツジ(R.uwaense)、ナカハライ(R.nakaharai)、ニシキヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi f.multicolor)、ハナノエン(R.obtusum var.kaempferi f.hananoen)、ハンノウツツジ(R.hannoense)、ハンヤエヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi f.semiflenum)、ヒカゲツツジ(R.keiskei)、ヒラドツツジ(Hirado Azalea)、ヒロハヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi f.latifolium)、ヒメヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi f.tubiflorum)、フジツツジ(R.tosaense)、ホウライツツジ(R.macrotransiens)、ホソバヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi f.angustifolium)、マルバサツキ(R.eriocarpum)、ミカワヤマツツジ(R.obtusum var.mikawanum)、ミヤコツツジ(R.tectum)、ミヤマキリシマ(R.kiusianum)、ムラサキヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi f.mikawanum)、モチツツジ(R.macrosepalum)、ヤエザキヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi f.komatsui)、ヤクシマヤマツツジ(R.yakuinsulare)、ヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi)、とこれらを親とする園芸品種や交配種が挙げられる。
【0029】
このように本発明において、落葉性のツツジに常緑性のツツジの遺伝子を導入するが、常緑性のツツジを花粉親または種子親として落葉性のツツジと交配することによって落葉性のツツジに常緑性のツツジの遺伝子を導入することが可能である。例えば、落葉性のツツジとして、コバノミツバツツジ(Rhododendron reticulatum)、ハヤトミツバツツジ(Rhododendron satsumense)、オンツツジ(Rhododendron weyrichii)と、常緑性のツツジとしてサクラツツジ(Rhododendron tashiroi)とを交配する。さらに、本発明において、常緑性のツツジの花粉親または種子親の交配は、相互交配であることが可能である。例えば、落葉性のオンツツジ(Rhododendron weyrichii)と、落葉性のハヤトミツバツツジ(Rhododendron satsumense)を交配することによって、常緑性のツツジを育種することが可能となる。
【0030】
なお、これらのツツジの選択は、育種しようとする花の形態(色、花型等)に応じて適宜選択することが可能であるが、本発明者が先に出願した非公開のPCT/JP2004/000297(特願2003−144406号)に記載の花きの花色遺伝型交配法に基づいて行うことが好ましい。
【0031】
すなわち、この出願によると、「花きの主要花色素である、3つのアントシアニジン:ペラルゴニジン(Pgn)、シアニジン(Cyn)、デルフィニジン(Dpn)の遺伝に着目し、自殖や正逆交雑を行い検討した結果、F1〜F4世代の色素表現型の分離から、遺伝の新しい法則を見出した。」、「色素前駆体のB環の水酸化に関与するフラボノイド3’−ヒドロキシラーゼ(F3’H)とフラボノイド3’、5’−ヒドロキシラーゼ(F3’、5’H)の酵素反応系には、HT、HF、HD、HZ、HOの5つの複対立遺伝子が存在し、これらが3’位の水酸化、5’位の水酸化、3’、5’位の水酸化、3’、5’位の水酸化、および3’位と3’、5’位の水酸化を制御し、これらの組合せによって花色表現型が決定されることを見出し、本発明を完成した。」という記載がある。また、「ツツジ(ツツジ科)花弁の色素の分析を行い、各品種の花弁色素遺伝型を調べた。」、「キンモウツツジを種子親に、ヒラドツツジを花粉親として交配を行い、F1ツツジを作出し、それらの花弁色素の分析を行い、各雑種の色素遺伝型と花色遺伝を調べた。」、「二重咲き花(ホーズ・イン・ホーズ;hose−in−hose)の久留米ツツジと一重花のマルバサツキを交配し、二重咲き花雑種と一重花雑種が144個体:123個体(1:1)で分離した。その結果、二重咲き花久留米ツツジおよび二重咲き花雑種の、二重咲き形質に関する遺伝型をDhd(ヘテロ型)と明らかにし、一重花サツキおよび一重花雑種の遺伝型がdd(劣性ホモ型)で有ることを明らかにした。」という記載がある。
【0032】
本発明においてもこのような遺伝子型から花の種類、花型等を予測して選択することが可能である。
【0033】
(耐暑性の導入)本発明の別の態様において、落葉性のツツジと常緑性のツツジから常緑性のツツジを育種することに代わってあるいは落葉性のツツジと常緑性のツツジから常緑性のツツジを育種することに加えて、非耐暑性のツツジと耐暑性のツツジから耐暑性のツツジを育種することが可能である。
【0034】
耐暑性のツツジ類とは、高温、多湿環境下においても生息することのできる遺伝形質(以下、耐暑性遺伝形質という)を持つツツジ類である。耐暑性のツツジ類とは、このような耐暑性遺伝形質を有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、前記落葉性のツツジのうち、耐暑性を有するものは、オンツツジおよびハヤトミツバツツジでありその他は、非耐暑性の落葉性のツツジである。一方、前記常緑性のツツジの例の内、耐暑性を有するものは、ケラマツツジ、サタツツジ、ヒラドツツジ、マルバサツキ、ヤマツツジであり、その他は、非耐暑性の常緑性のツツジである。
【0035】
このような耐暑性のツツジおよび非耐暑性のツツジの選択は、常緑性の導入と同様に、育種する花の形態(色、形状)等に応じて適宜選択することができる。本発明においては、このように耐暑性遺伝子形質を有していない非耐暑性のツツジに耐暑性遺伝子を導入することによって耐暑性のツツジを育種することが可能となる。
【0036】
なお、非耐暑性のツツジまたは耐暑性のツツジのいずれか一方に本発明による常緑性を付与したツツジを使用することによって、交配するツツジの選択範囲が拡がるのと同時に、常緑性および耐暑性の両者をあわせ持つツツジを育種できる。
【0037】
(四季咲き性の導入)本発明の別の態様において、落葉性のツツジと常緑性のツツジから常緑性のツツジを育種することおよび/又は非耐暑性のツツジと耐暑性のツツジから耐暑性のツツジを育種することに加えて、あるいはこれに代わって、一季咲き性のツツジと四季咲き性のツツジから四季咲き性のツツジを育種することが可能となる。
【0038】
本発明において使用する用語四季咲き性のツツジ類とは、周年開花性の遺伝形質(以下、四季咲き遺伝形質という)を持つツツジ類であり、また、一季咲き性のツツジ類とは、四季咲き遺伝子形質を持たないツツジ類である。
【0039】
本発明において使用できる四季咲き性のツツジ類としてこのような四季咲き遺伝形質を持つものであれば特に限定されるものではなく、例えば前記落葉性のツツジおよび常緑性のツツジのうち、キンモウツツジが挙げられる。一方、一季咲き性のツツジ類のツツジ類も特に限定されるものではなく、例えば前記落葉性のツツジおよび常緑性のツツジのうちキンモウツツジ以外のツツジが挙げられる。
【0040】
このように一季咲き性のツツジと四季咲き性のツツジを交配して、一季咲き性のツツジの特徴を持つツツジ類に四季咲き性を付与することが可能となる。
なお一季咲き性のツツジの選択は、常緑性の導入と同様に、育種する花の形態(色、形状)等に応じて適宜選択することができる。
【0041】
更に、このようにして四季咲き性のツツジと一季咲き性のツツジとを交配して得られた四季咲き性遺伝形質を有する交配種を四季咲き性ツツジとして使用することも本発明の範囲内である。同様にして、本発明により常緑性遺伝形質、耐暑性遺伝形質または両者を有する交配種も親植物として好適に使用することが可能である。
【0042】
一季咲き性のツツジまたは四季咲き性のツツジのいずれか一方に本発明の方法により常緑性を付与したツツジまたは常緑性および耐暑性の両方を付与したツツジを使用することによって、交配するツツジの選択範囲が拡がるのと同時に、常緑性および耐暑性の両者をあわせ持つ四季咲き性のツツジを育種できる。
【実施例1】
【0043】
以下、本発明の具体的ツツジの育種方法を実施例に基づいてより詳細に説明する。
〔花粉の保存方法〕ツツジの花粉を小花から採取した葯を薬包紙に包み、シリカゲルを入れたガラスビンに入れ室温で3日間乾燥し、次いで−20℃で冷凍貯蔵した葯を用いた。交配は無加温のガラス室内で行い、まず花弁と雄蕊を取り除き、2〜3日後に雌蕊の先端に粘液が充分に分泌したことを確かめ、貯蔵しておいた花粉を柱頭に塗布した。
【実施例2】
【0044】
〔交配種子の保存方法〕ツツジを交配後、5〜6カ月目に充分に熟し、果皮が褐色に変化したさく果を採取し、室内で乾燥させ、開さくさせた。次いで、得られた種子を薬包紙に包み、シリカゲルを入れたガラスビンに入れ室温で播種時まで保存した。
【実施例3】
【0045】
〔交配種子の播種の方法、その1:ジフィーポットでの播種〕ツツジの交配種子を以下の方法で播種した。12月上旬に、ジフィーポット(径8.5cm)に、赤玉土、鹿沼土、ボラ土のいずれも細粒を1:1:1の割合で混合した用土を7分目まで入れ、さらにその上に細かく砕いた水苔を0.5cmほど敷いたものに交配種子を播種した。なお、用土はあらかじめダニコール1000倍希釈液とスミチオン乳剤1500倍希釈液で滅菌と殺虫処理を行った。播種数は1ポット当たり100粒ずつとし、播種後充分に潅水し、ガラス室内に設置した25℃に保った透明ビニルで被覆した枠内に搬入した。播種後、ほぼ20日で発芽が認められるが、発芽直後から翌年3月下旬の移植時まで、植物育成用蛍光灯を用いて深夜4時間点灯し(午後10時〜午前2時)補光した。また、発芽後は、N:P:Kの比率を4:4:3の割合に調製した発酵油かす液肥を、週1回1000倍希釈濃度で潅水をかねて与えた。
【実施例4】
【0046】
〔交配種子の播種の方法、その2:セルトレイでの播種〕ツツジの交配種子を以下の方法で播種した。12月上旬に、128穴のセルトレイ(54×28×5cm)に赤玉土、鹿沼土、ボラ土のいずれも細粒を1:1:1の割合で混合した用土を8分目まで入れ、さらにその上に細かく砕いた水苔を敷いたものに播種した。播種数は、1穴当たり5〜7粒ずつとした。播種後充分に潅水し、ガラス室内に設置した25℃に保ったビニルで被覆した枠内に搬入した。発芽直後から翌年3月下旬まで、植物育成用蛍光灯を用いて深夜4時間点灯し(午後10時〜午前2時)補光した。また、発芽後は、N:P:Kの比率を4:4:3の割合に調製した発酵油かす液肥を、週1回1000倍希釈濃度で潅水をかねて与えた。翌月4月上旬にかけて、セルトレイ1穴当たり1〜2本(個体)になるように間引きした。これを32℃の高温に保った恒温室内に搬入し、7月上旬までの3ヶ月間、照度3000lux、16時間日長条件下で育苗した。この間、0.1%ハイポネック溶液(商品名:株式会社ハイポネックスジャパン)を2週間毎に与え、ダニコール(商品名:エス・ディー・エス株式会社)1000倍希釈液とスミチオン乳剤(商品名:九州三共株式会社)1500倍希釈液を散布した。7月上旬からセルトレイを無加温のガラス室に移動させ、以降、発酵油かす液肥を2週間に1回1000倍希釈濃度で与え、ダニコール(商品名:エス・ディー・エス株式会社)1000倍希釈液を2週間に1回散布した。
【実施例5】
【0047】
〔実生苗の移植〕その1の方法で播種した翌年3月下旬〜4月上旬にかけて、第1回目の移植を行った。0.5cm〜1cmに伸びた交配実生を、プラントベッド(35×45×深さ10cm)に赤玉土、鹿沼土、ボラ土のいずれも細粒を、1:1:1の割合で混合した用土を8分目まで入れたものに移植した。移植数は、1プラントベッド当たり120〜240個体ずつとした。
【実施例6】
【0048】
〔実生苗の移植後の育苗管理方法、その1〕実生苗の移植後、無加温のガラス室内に搬入した。移植後の管理は、N:P:Kの比率を4:4:3の割合に調製した発酵油かす液肥を2週間に1回1000倍希釈濃度で与え、実生の立枯れを防ぐためにダニコール(商品名:エス・ディー・エス株式会社)1000倍希釈液を2週間に1回散布した。
【0049】
第1回目の移植の翌年3月下旬に、第2回目の移植を行った。プラントベッドで生存していた交配実生を、径9cmの黒ビニルポットに赤玉土、鹿沼土、ボラ土を、1:1:1の割合で混合した用土を8分目まで入れたものに1個体ずつ移植した。
【0050】
さらに、第2回目の移植の翌年3月下旬に、径15cmの黒ビニルポットに同じ用土を用いて第3回目の移植を行った。この第2回目の移植からの4年間の育苗管理は、5月から3カ月毎に油かすを置肥として与え、1カ月毎にスミチオン乳剤(商品名:九州三共株式会社)1500倍希釈液を散布した。
【実施例7】
【0051】
〔実生苗の移植後の育苗管理方法、その2〕実生苗の移植後、32℃の高温に保った恒温室内に搬入し、6月30日までの3ヶ月間、照度3000lux、16時間日長条件下で育苗した。この高温処理の期間中、0.1%ハイポネック(商品名:株式会社ハイポネックスジャパン)溶液を2週間毎に与え、ダニコール(商品名:エス・ディー・エス株式会社)1000倍希釈液とスミチオン乳剤1500倍希釈液を散布した。7月1日にプラントベッドを無加温のガラス室に移動させ、以後、発酵油かす液肥を2週間に1回1000倍希釈濃度で与え、ダニコール(商品名:エス・ディー・エス株式会社)1000倍希釈液を2週間に1回散布した。
【0052】
第1回目の移植の翌年3月下旬に、第2回目の移植を行った。プラントベッドで生存していた交配実生を、赤玉土、鹿沼土、ボラ土を、1:1:1の割合で混合した用土を入れた径9cmの黒ビニルポットに1個体ずつ移植し、無加温のガラス室内で育苗管理した。この間、移植後の5月から3カ月毎に油かすを置肥として与え、1カ月毎にスミチオン乳剤1500倍希釈液を散布した。
【実施例8】
【0053】
1997年3月下旬〜4月中旬にかけて、以下に示す4組合わせで交配を行った。(1)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×ハヤトミツバツツジ(イワツツジ、鹿児島県牧園町産、鉢植え)、(2)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×コバノミツバツツジ(熊本県市房山産、鉢植え)、(3)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×サクラツツジ(鹿児島県屋久島産、鉢植え)、(4)ミツバツツジ(赤紫色、鉢植え)×ハヤトミツバツツジ(イワツツジ、鹿児島県牧園町産、鉢植え)。交配花数、結さく数(結さく率)、総種子数、播種数、発芽率を調査した。その結果を表1に示す。なお、開花期の異なる種間の交配の場合、開花期の早いものを花粉親とし、遅いものを種子親とした。交配日は1997年3月27日〜4月11日、結さく調査日は1997年10月上旬、採さく日は1997年11月下旬、播種日は1997年12月10日〜12日、発芽率調査日は1998年3月26日〜4月3日である。また、生存率の推移を調査した。1998年と1999年の、いずれも3月下旬〜4月上旬にかけて行った第1回目と第2回目の移植後の実生の生存率の推移を表2と表3に示した。1プラントベッド当たり120個体の実生を植え込んだのが第1回目の移植で、1年後、1個体ずつビニルポットに植え付けたのが第2回目の移植である。表2の( )内の生存率は、1998年4月1日の移植数を100%として表示した。移植日は1998年3月26日〜4月3日(第1回目移植)であり、生存率調査日は表2に示す、調査月のほぼ末日とした。表3の( )内の生存率は、1999年4月1日の移植数を100%として表示した.移植日は1999年3月28日〜4月1日(第2回目移植)であり、生存率調査日は表3に示す調査月のほぼ末日とした。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示す4交配組合わせのいずれの交配組合わせでも、ほぼ50%から90%に及ぶ結さく率を示し、組合わせの如何による交配不和合は認められなかった。発芽率は、オンツツジ×サクラツツジの交配組合わせで37.7%と、やや低い値を示したが、他の3交配組合わせでは、ほぼ47%から64%の値を示した。特に、結さく率の高かったオンツツジ×ハヤトミツバツツジの交配組合わせで、64%の比較的高い発芽率を示した。
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
表2および表3から分かるように、両移植とも、移植後2〜3カ月で4交配組合わせは70%以上の高い生存率を示し、移植後6カ月を経過した9月末日には、オンツツジ×ハヤトミツバツツジの交配組合わせが高い生存率を維持した。他は60%以下と、生存率はやや減少した。しかし、10月以降は9月末日の生存率をほぼ保った。移植という処置と夏場の高温が実生の生育にストレスを与えたが、半数以上の実生が生き残った。
【実施例9】
【0059】
2000年および2001年の3月下旬〜4月中旬にかけて、以下に示す6組合わせで交配を行った。(1)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×ハヤトミツバツツジ(イワツツジ、鹿児島県牧園町産、鉢植え)(2)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×コバノミツバツツジ(熊本県市房山産、鉢植え)(3)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×サクラツツジ(鹿児島県屋久島産、鉢植え)(4)ハヤトミツバツツジ(イワツツジ、鹿児島県牧園町産、鉢植え)×コバノミツバツツジ(熊本県市房山産、鉢植え)(5)ハヤトミツバツツジ(イワツツジ、鹿児島県牧園町産、鉢植え)×サクラツツジ(鹿児島県屋久島産、鉢植え)(6)コバノミツバツツジ(熊本県市房山産、鉢植え)×サクラツツジ(鹿児島県屋久島産、鉢植え)。
【0060】
交配花数、結さく数(結さく率)、総種子数、播種数、発芽率を調査した。その結果を表4に示す。なお、開花期の異なる種間の交配の場合、開花期の早いものを花粉親とし、遅いものを種子親とした。これら6組合わせの交配は、貯蔵花粉を用いて3月下旬〜4月中旬にかけて行った。表4の交配日は2000年3月31日〜4月22日、結さく調査日は2000年9月上旬、採さく日は2000年11月上旬、播種日は2000年12月1日〜4日、発芽率調査日は2001年3月29日〜4月1日である。
【0061】
表5の交配日は2001年3月29日〜4月15日、結さく調査日は2001年10月下旬、採さく日は2001年11月中旬、播種日は2001年12月5日〜9日、発芽率調査日は2002年4月2日〜5日である。また、生存率の推移を調査した。2000年度交配種子について、2001年3月下旬〜4月上旬にかけて行ったプラントベッドへの第1回目の移植後、3カ月間に亘って高温処理した実生の生存率を表6に示した。更に、2002年3月下旬〜4月上旬にかけて行ったビニルポットへの第2回目の移植後の生存率の結果を表7に示した。表6の( )内の生存率は、2001年4月1日の移植数を100%として表示した。移植日は2001年3月29日〜4月1日(第1回目移植)であり、移植後3ヶ月間高温処理した。生存率調査日は表6に示す調査月のほぼ末日とした。表7の( )内の生存率は、2002年4月1日の移植数を100%として表示した。移植日は2002年3月26日〜29日
(2回目移植)であり、生存率調査日は表7に示す調査月のほぼ末日とした。
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】
表4(2000年交配)と表5(2001年交配)の結果、表5に示すコバノミツバツツジ×サクラツツジ交配組合わせでの42%を除いては、いずれの年度および交配組合わせでも、ほぼ50%から90%に及ぶ結さく率を示し、組合わせの如何による交配不和合は認められなかった。発芽率は、サクラツツジを片親に用いた交配組合わせでいずれも40%以下と、やや低い値であったが、他の交配組合わせでは58%以上の値を示した。特に、オンツツジ×ハヤトミツバツツジの組合わせと表5のコバノミツバツツジ×ハヤトミツバツツジの組合わせで、70%以上の高い発芽率であった。
【0065】
【表6】
【0066】
【表7】
【0067】
2001年3月下旬〜4月上旬にかけて行ったプラントベッドへの第1回目の移植後、3カ月間に亘って高温処理した実生の生存率を表6に示した。5月末日にはすべての交配組合わせで75%以上を示したものが、9月末日には51〜61%へと激減した。その後も生存率は漸減し、翌年3月末日には35〜48%の値を示した(表6)。これに対し、表7に示した2002年3月下旬〜4月上旬にかけて行ったビニルポットへの第2回目の移植では、移植後の生存率の低下はさほど大きくなく、各交配組合わせは、2002年6月末日に78〜88%であったものが、2003年3月には62〜82%に低下するにとどまった(表7)。
【実施例10】
【0068】
2001年の3月下旬〜4月中旬にかけて、以下に示す6組合わせで交配を行った。(1)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×ハヤトミツバツツジ(イワツツジ、鹿児島県牧園町産、鉢植え)(2)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×コバノミツバツツジ(熊本県市房山産、鉢植え)(3)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×サクラツツジ(鹿児島県屋久島産、鉢植え)(4)ハヤトミツバツツジ(イワツツジ、鹿児島県牧園町産、鉢植え)×サクラツツジ(鹿児島県屋久島産、鉢植え)コバノミツバツツジ(熊本県市房山産、鉢植え)(5)コバノミツバツツジ(熊本県市房山産、鉢植え)×ハヤトミツバツツジ(イワツツジ、鹿児島県牧園町産、鉢植え)(6)コバノミツバツツジ(熊本県市房山産、鉢植え)×サクラツツジ(鹿児島県屋久島産、鉢植え)。これらの交配種子については、移植の操作を行わず、セルトレイにて直接生育させた実生をセルトレイの1穴当たり1〜2個体に実生数を調整し、2002年4月上旬から3カ月間に亘って高温処理した。その生存率を表8に示した。表8の( )内の生存率は、2002年4月1日の調整した実生数を100%として表示した。実生数調整日は2002年4月2日〜5日で、調整後3ヶ月間高温処理を行った。生存率調査日は表8に示す調査月のほぼ末日とした。
【0069】
【表8】
【0070】
表8の結果、6月末日にすべての交配組合わせで78〜88%の値を示したものが、翌年3月末日には62〜82%と、生存率はあまり低下しなかった。この結果、移植を行うことにより生存率が低下したことから、生存率の低下の原因としては、高温環境よりむしろ移植の処理がもたらすことを見出した。
【実施例11】
【0071】
1997年3月下旬〜4月中旬にかけて行った、以下に示す3組合わせの、(1)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×ハヤトミツバツツジ(イワツツジ、鹿児島県牧園町産、鉢植え)、(2)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×コバノミツバツツジ(熊本県市房山産、鉢植え)、(3)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×サクラツツジ(鹿児島県屋久島産、鉢植え)の、交配で生存した391個体のF1雑種について、常緑性(冬期の落葉性)を調査した結果を図1に示す。
【0072】
図1に示すように、オンツツジ×サクラツツジ交配F1実生では、調査した101個体すべてが常緑性を有することを見出した。オンツツジ×ハヤトミツバツツジ交配F1実生は222個体中182個体(82%)が、また、オンツツジ×コバノミツバツツジ交配F1実生は68個体中6個体(9%)が常緑性を示すことを見出した。サクラツツジを片親に用いた場合の交配F1実生が100%常緑性を有したので、サクラツツジの持つ常緑性が優性形質であり、サクラツツジを用いた交雑後代に常緑性の遺伝形質が受け継がれた。
【実施例12】
【0073】
1997年3月下旬〜4月中旬にかけて行った、以下に示す3組合わせの、(1)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×ハヤトミツバツツジ(イワツツジ、鹿児島県牧園町産、鉢植え)、(2)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×コバノミツバツツジ(熊本県市房山産、鉢植え)、(3)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×サクラツツジ(鹿児島県屋久島産、鉢植え)の、2003年3月に開花に至った常緑性のツツジの、花弁の花色を調査した。花弁を採集し、色彩計で測色し、L*、a*、b*値を求め、色相角(h)を算出した。より詳しくは、2003年3月中に開花した、オンツツジ×ハヤトミツバツツジの交配で58個体、オンツツジ×コバノミツバツツジの交配で17個体、オンツツジ×サクラツツジの交配で17個体、ミツバツツジ×ハヤトミツバツツジの交配で9個体の、合計101個体の花色を調査した。
【0074】
オンツツジ×ハヤトミツバツツジ交配実生について、交配親のオンツツジの花弁は、a*値=47.9、b*値=5.4を示し、ハヤトミツバツツジの花弁は、a*値=39.8、b*値=−25.2を示した。F1交配実生は、a*値で43.5〜68.8、b*値で−17.2〜−27.5の範囲に収まる個体分布を示し、花色を現わす色相角h(図2で、横軸であるa*軸と縦軸であるb*軸の交点、即ち、0を中心として、例えばオンツツジがプロットされた(◎)に向かって直線を引き、その直線とa*軸がなす角度を表す、以下同じ)は、交配親の色相角の範疇に入る分布を示した。また、交配実生の色度分布は、オンツツジよりハヤトミツバツツジに偏り、F1雑種がハヤトミツバツツジに似た花色を持つことがわかる(図2)。
【0075】
オンツツジ×コバノミツバツツジ交配実生について、一方の交配親のコバノミツバツツジの花弁は、a*値=57.5、b*値=−23.8を示す。F1交配実生は、a*値で35.2〜62.8、b*値で−13.7〜−23.8の範囲に収まる個体分布を示し、花色を現わす色相角hについては、コバノミツバツツジの色相角を超えて分布するものと、交配親の色相角の範疇に入る分布を示すものがあった。また、交配実生の色度分布は、オンツツジよりコバノミツバツツジに偏り、F1雑種がコバノミツバツツジに似た花色を持つことがわかる。
【0076】
オンツツジ×サクラツツジ交配実生について、一方の交配親のサクラツツジの花弁は、a*値=4.7、b*値=−2.5を示す。F1交配実生は、a*値で15.2〜57.5、b*値で−6.9〜−21.8の範囲に収まる個体分布を示し、花色を現わす色相角hは、交配親の色相角の範疇に入る分布を示した。また、交配実生の色相分布は、オンツツジよりサクラツツジに偏り、F1雑種がサクラツツジに似た花色を持つことがわかる。
【実施例13】
【0077】
1997年、2000年および2001年の3月下旬〜4月中旬にかけて、以下に示す5組合わせで交配を行った。(1)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「今猩々」(朱赤色、二重咲き、露地植え)(2)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「宮城野」(紫紅色、二重咲き、鉢植え)(3)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「裾濃の糸」(紫色、一重咲き、鉢植え)(4)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「麒麟」(桃色、二重咲き、鉢植え)(5)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「暮の雪」(白色、二重咲き、鉢植)。
【0078】
いずれの交配組合せについても、4月中下旬に開花するクルメツツジを花粉親にし、5月上旬に遅れて開花するマルバサツキを種子親とした。花粉は、開花の早いクルメツツジの小花から採取した葯を薬包紙に包み、シリカゲルを入れたガラスビンに入れ、まず4℃で3日間乾燥し、次いで−20℃で冷凍貯蔵したものを用いた。交配は無加温のガラス室内で行い、まず花弁と雄蕊を取り除き、2〜3日後に雌蕊の先端に粘液が充分に分泌したことを確かめ、貯蔵しておいた花粉を柱頭に塗布した。交配後ほぼ6カ月目、果皮が褐色に変化し充分に熟したさく果を採取し、室内で乾燥させ、開さくさせた。次いで、得られた種子を薬包紙に包み、シリカゲルを入れたガラスビンに入れ4℃で播種時まで保存した。
【0079】
播種はジフィーポットに播種した。1998年3月24日〜4月1日にかけて第1回目の移植を、また、1999年3月26日〜29日にかけて第2回目の移植を、さらに、2001年3月18日〜22日にかけて第3回目の移植を行った。交配花数、結さく数(結さく率)、種子数、播種数、発芽率を調査した。その結果を表9、表10および表11に示す。
【0080】
表9について、交配日は1997年6月6日〜25日、結さく調査日は1997年11月下旬、採さく日は1997年12月5日、播種日は1997年12月8日〜10日、発芽率調査日は1998年3月24日〜4月1日であった。表10について、交配日は2000年5月31日〜6月15日、結さく調査日は2000年11月下旬、採さく日は2000年11月21日、播種日は2000年11月29日〜12月2日、発芽率調査日は2001年3月27日〜29日であった。表11について、交配日は2001年5月25日〜6月19日、結さく調査日は2001年11月中旬、採さく日は2001年11月28日、播種日は2001年12月3日〜8日、発芽率調査日は2002年3月31日〜4月4日であった。なお、表10と表11に示す5組合わせの交配は、貯蔵花粉を用いて5月下旬〜6月中旬にかけて行ったものである。
【0081】
【表9】
【0082】
表9に示す5つの組合わせについて、ほぼ50%から80%に及ぶ結さく率を示し、組合わせの如何による交配不和合は認められなかった。発芽率は、マルバサツキ×クルメツツジ「暮の雪」の交配組合わせで39.8%、また、マルバサツキ×クルメツツジ「裾濃の糸」の交配組合わせで42.5%と、やや低い値を示したが、他の3交配組合わせでは、ほぼ50%から60%の値を示した(表9)。結さく率の高かったマルバサツキ×クルメツツジ「宮城野」の交配組合わせは53%の発芽率を示した。
【0083】
【表10】
【0084】
【表11】
【0085】
表10と表11に示すように、マルバサツキ×クルメツツジ「裾濃の糸」の交配組合わせで55%と、やや低い結さく率を示した例もあるが、他は、いずれの年度および交配組合わせでも、ほぼ60%から75%に及ぶ結さく率を示し、組合わせの如何による交配不和合は認められなかった。発芽率は、表10のマルバサツキ×クルメツツジ「宮城野」と表11のマルバサツキ×クルメツツジ「裾濃の糸」の組合わせでいずれも50%以下と、やや低い値を示したが、他
の交配組合わせでは、60%以上の値を示した(表10、表11)。花粉親にクルメツツジを用いた場合、これらは品種レベルで軌(揆)を一つにしていることから、交配組合わせ間で結さく率、発芽率ともに似た値を示すことを見出した。
【実施例14】
【0086】
1997年、2000年および2001年の3月下旬〜4月中旬にかけて行った次の5つの組合わせで交配の、(1)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「今猩々」(朱赤色、二重咲き、露地植え)(2)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「宮城野」(紫紅色、二重咲き、鉢植え)(3)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「裾濃の糸」(紫色、一重咲き、鉢植え)(4)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「麒麟」(桃色、二重咲き、鉢植え)(5)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「暮の雪」(白色、二重咲き、鉢植)の、生存率の推移を調査した。1997年度交配種子について、1998年と1999年の、いずれも3月下旬〜4月上旬にかけて行った第1回目と第2回目の移植後の実生の生存率の推移を調査し、その結果を表12と表13に示した。第1回目の移植では1プラントベッド当たり120個体の実生を植え込んだ。その1年後、第2回目の移植では1個体ずつビニルポットに植え付けた。第1回目の移植を示す表12の( )内の生存率は、1998年4月1日の移植数を100%として表示した。移植日は1998年3月24日〜4月1日に第1回目移植を行い、生存率調査日は表12に示す調査月のほぼ末日とした。第2回目の移植を示す表13の( )内の生存率は、2002年4月1日の移植数を100%として表示した。移植日は1999年3月26日〜29日に第2回目の移植を行い、生存率調査日は表13に示す調査月のほぼ末日とした。
【0087】
【表12】
【0088】
【表13】
【0089】
第1回目の移植(表12)では、移植後2カ月で、5交配組合わせは88%以上のきわめて高い生存率を示したが、移植後6カ月を経過した9月末日には、すべて66%以下と生存率は激減した。また、第2回目の移植(表13)では、移植後3カ月で、5交配組合わせは75%以上の高い生存率を示したが、移植後6カ月を経過した9月末日には、すべて69%以下と生存率は低下した。しかしいずれの年度も、10月以降は生存率は漸減するにとどまった。移植という処置と夏場の高温が実生の生育にストレスを与えたが、この結果から生存したF1実生が耐暑性の遺伝形質を獲得することを見出した。
【実施例15】
【0090】
5つの組合わせで交配の、(1)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「今猩々」(朱赤色、二重咲き、露地植え)(2)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「宮城野」(紫紅色、二重咲き、鉢植え)(3)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「裾濃の糸」(紫色、一重咲き、鉢植え)(4)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「麒麟」(桃色、二重咲き、鉢植え)(5)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「暮の雪」(白色、二重咲き、鉢植)の、2000年度交配種子について、2001年3月下旬に行ったプラントベッドへの第1回目の移植後、3カ月間に亘って高温処理した実生の生存率を調査し、その結果を表14に示した。引き続き2002年3月下旬にビニルポットへの第2回目の移植を行い、生存率を調査し、その結果を表15に示した。表14の( )内の生存率は、2001年4月1日の移植数を100%として表示した。移植日は2001年3月27日〜29日に第1回目移植を行い、移植後3ヶ月間高温処理を行った。生存率調査日は表14に示す調査月のほぼ末日とした。また、表15の( )内の生存率は、2002年4月1日の移植数を100%として表示した。移植日は2002年3月24日〜27日に第2回目の移植を行い、生存率調査日は表15に示す調査月のほぼ末日とした。
【0091】
【表14】
【0092】
【表15】
【0093】
第1回目の移植(表14)では、5月末日にはすべての交配組合わせで78%以上を示したものが、9月末日には40〜42%へと激減した。しかし、その後は生存率の急な低下は見られず、翌年3月末日には35〜42%の値を示した(表14)。第2回目の移植(表15)では、移植後3カ月で、5交配組合わせは74%以上の高い生存率を示したが、移植後6カ月を経過した9月末日には、すべて55%以下と生存率は激減した。しかし、その後は生存率はあまり低下せず、翌年3月末日には32〜45%の値を示した(表15)。移植に加え、高温処理と夏期の高温が、耐暑性の篩いとして充分に効いていると考え、この結果から生存したF1実生が耐暑性の遺伝形質を獲得することを見出した。
【実施例16】
【0094】
5つの組合わせで交配の、(1)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「今猩々」(朱赤色、二重咲き、露地植え)(2)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「宮城野」(紫紅色、二重咲き、鉢植え)(3)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「裾濃の糸」(紫色、一重咲き、鉢植え)(4)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「麒麟」(桃色、二重咲き、鉢植え)(5)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「暮の雪」(白色、二重咲き、鉢植)の、2001年度交配種子について、移植を行わずにセルトレイで生育させた実生を1穴当たり1〜2個体に実生数を調整した後、2002年4月上旬から3カ月間に亘って高温処理した場合の生存率を調査した。その結果を表16に示した。表16の( )内の生存率は、2002年4月1日の調整した実生数を100%として表示した。移植日は2002年3月24日〜27日に第2回目の移植を行い、移植後3ヶ月間高温処理を行った。生存率調査日は表16に示す調査月のほぼ末日とした。
【0095】
【表16】
【0096】
表16に示すように、5月末日にすべての交配組合わせで89〜98%の高い生存率を示したが、翌年3月末日には62〜72%と、さほど生存率は低下しなかった。生存率の低下は、高温よりむしろ移植という処置がもたらすものと考えられた。この結果、生存したF1実生が耐暑性の遺伝形質を獲得することを見出した。
【実施例17】
【0097】
5つの組合わせで交配の、(1)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「今猩々」(朱赤色、二重咲き、露地植え)(2)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「宮城野」(紫紅色、二重咲き、鉢植え)(3)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「裾濃の糸」(紫色、一重咲き、鉢植え)(4)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「麒麟」(桃色、二重咲き、鉢植え)(5)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「暮の雪」(白色、二重咲き、鉢植)の、耐暑性の遺伝形質を獲得し、生存したF1実生の二重咲き性について調査した。その結果を図2に示す。
【0098】
図2には、マルバサツキ×クルメツツジ「今猩々」の組合わせで58個体中34個体、マルバサツキ×クルメツツジ「宮城野」の組合わせで124個体中57個体、マルバサツキ×クルメツツジ「麒麟」の組合わせで68個体中40個体、マルバサツキ×クルメツツジ「暮の雪」の組合わせで28個体中14個体の二重咲き性F1が開花した。開花個体に占める二重咲き花の割合は、マルバサツキ×クルメツツジ「今猩々」の組合わせで58%、マルバサツキ×クルメツツジ「宮城野」の組合わせで46%、マルバサツキ×クルメツツジ「麒麟」の組合わせで58%、マルバサツキ×クルメツツジ「暮の雪」の組合わせで50%であった。また、マルバサツキ×クルメツツジ「裾濃の糸」の組合わせでは、開花した47個体はすべてが一重咲きであった(図5)。前記の交配組合わせでは、花粉親に用いた「今猩々」、「宮城野」、「麒麟」、「暮の雪」はすべて二重咲きで、「裾濃の糸」は一重咲きである。つまり、F1での二重咲き花の出現割合から、二重咲き性は優性形質で、花粉親に用いた二重咲き品種は、二重咲き性に関してヘテロの遺伝子型を持つことを見出した。結果として、二重咲き品種を花粉親に用いると、50%の確率で二重咲きの花が得られることがわかった。
【実施例18】
【0099】
5つの組合わせで交配の、(1)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「今猩々」(朱赤色、二重咲き、露地植え)(2)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「宮城野」(紫紅色、二重咲き、鉢植え)(3)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「裾濃の糸」(紫色、一重咲き、鉢植え)(4)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「麒麟」(桃色、二重咲き、鉢植え)(5)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「暮の雪」(白色、二重咲き、鉢植)の、1997年度交配種子について、開花した321個体の耐暑性のツツジの、花弁の花色を調査した。花弁を採集し、色彩計で測色し、L*、a*、b*値を求め、色相角(h)を算出した。
【0100】
マルバサツキ×クルメツツジ「今猩々」の交配実生について、まず交配親のマルバサツキの花弁は、a*値=28.4、b*値=−23.2を示し、「今猩々」の花弁は、a*値=58.3、b*値=27.5を示す。交配実生は、a*値で42.4〜68.0、b*値で−2.2〜−27.8の範囲に収まる個体分布を示し、花色を現わす色相角hは、交配親の色相角の範疇に入る分布を示した。また、交配実生の色度については、「今猩々」よりマルバサツキに分布は偏り、F1雑種がマルバサツキに似た花色を持つことがわかる(図6)。
【0101】
マルバサツキ×クルメツツジ「宮城野」の交配実生について、一方の交配親「宮城野」の花弁は、a*値=66.3、b*値=3.0を示す。交配実生は、a*値で43.4〜68.7、b*値で−2.3〜−26.8の範囲に収まる個体分布を示し、花色を現わす色相角hは、交配親の色相角の範疇に入る分布を示した。また、交配実生の色度については、「宮城野」からマルバサツキに及ぶ幅広い分布を示したが、どちらかといえばマルバサツキに分布は偏り、マルバサツキに似た花色を持つF1雑種が多く輩出されたことがわかる(図7)。
【0102】
マルバサツキ×クルメツツジ「裾濃の糸」の交配実生について、一方の交配親「裾濃の糸」の花弁は、a*値=57.5、b*値=−17.8を示す。交配実生は、a*値で48.0〜66.3、b*値で−8.2〜−28.0の範囲に収まる個体分布を示し、花色を現わす色相角hは、交配親の色相角の範疇に入る分布を示すものと、少数ではあるが「裾濃の糸」より小さな角度を示すものがあった。また、交配実生の色度については、マルバサツキより「裾濃の糸」に偏り、F1雑種が「裾濃の糸」に似た花色を持つことがわかる(図8)。
【0103】
マルバサツキ×クルメツツジ「麒麟」の交配実生について、一方の交配親「麒麟」の花弁は、a*値=42.3、b*値=2.5を示す。交配実生は、a*値で29.1〜62.0、b*値で−8.2〜−23.1の範囲に収まる個体分布を示し、花色
を現わす色相角hは、交配親の色相角の範疇に入る分布を示した。また、交配実生の色度については、マルバサツキに分布は偏り、F1雑種がマルバサツキに似た花色を持つことがわかる(図9)。
【0104】
マルバサツキ×クルメツツジ「暮の雪」の交配実生について、一方の交配親「暮の雪」の花弁は、a*値=−4.9、b*値=7.2を示す。交配実生は、a*値で36.3〜57.7、b*値で−16.8〜−26.1の範囲に収まる個体分布を示し、花色を現わす色相角hは、交配親の色相角の範疇に入る分布を示した。また、交配実生の色度については、マルバサツキに分布は偏り、F1雑種がマルバサツキに似た花色を持つことがわかる(図10)。
【実施例19】
【0105】
1997年8月下旬〜9月中旬にかけて、以下に示す5組合わせで交配を行った。(1)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「大紫」(紫紅色、露地植え)(2)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「曙」(桃色、露地植え)(3)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「白妙」(白色、露地植え)(4)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「正之進」(朱赤色、露地植え)(5)キンモウツツジ(鉢植え)×久留米大輪ツツジ「御代の栄」(ヒラドツツジ「白妙」×アザレア「王冠」の雑種、淡桃色、露地植え)1997年4月中下旬に開花したヒラドツツジを花粉親にし、8月下旬に開花するキンモウツツジを種子親とした。花粉は、開花の早いヒラドツツジの小花から採取した葯を薬包紙に包み、シリカゲルを入れたガラスビンに入れ、まず4℃で3日間乾燥し、次いで−20℃で冷凍貯蔵したものを用いた。交配は無加温のガラス室内で行い、まず花弁と雄蕊を取り除き、2〜3日後に雌蕊の先端に粘液が充分に分泌したことを確かめ、貯蔵しておいた花粉を柱頭に塗布した。交配後ほぼ4カ月目、果皮が褐色に変化し充分に熟したさく果を採取し、室内で乾燥させ、開さくさせた。次いで、得られた種子を薬包紙に包み、シリカゲルを入れたガラスビンに入れ4℃で播種時まで保存した。
【0106】
本交配種子を1998年1月18日から20日にかけて、ジフィーポット(径8.5cm)に、赤玉土、鹿沼土、ボラ土のいずれも細粒を、1:1:1の割合で混合した用土を7分目まで入れ、さらにその上に細かく砕いた水苔を0.5cmほど敷いたものに播種した。なお、用土はあらかじめベンレート(商品名:デュポン株式会社)1000倍希釈液とスミチオン乳剤(商品名:九州三共株式会社)1500倍希釈液で滅菌と殺虫処理を行った。播種数は1ポット当たり100粒ずつとし、播種後充分に潅水し、ガラス室内に設置した25℃に保った透明ビニルで被覆した枠内に搬入した。播種後、ほぼ20日で発芽が認められるが、発芽直後から1998年3月下旬の移植時まで、植物育成用蛍光灯を用いて深夜4時間点灯し(午後10時〜午前2時)補光した。また、発芽後は、N:P:Kの比率を4:4:3の割合に調製した発酵油かす液肥を、週1回1000倍希釈濃度で潅水をかねて与えた。本交配について、交配花数、結さく数(結さく率)、種子数、播種数、発芽率を調査した。その結果を表17に示す。表17の交配日は1997年8月31日〜9月18日、結さく調査日は1997年12月上旬、採さく日は1997年12月24日〜1998年1月5日、播種日は1998年1月18日〜20日、発芽率調査日は1998年3月27日〜4月3日であった。
【0107】
【表17】
【0108】
表17に示す5つの組合わせのキンモウツツジ×ヒラドツツジ系の交配は、ほぼ42%から52%に及ぶ結さく率を示し、組合わせの如何による交配不和合は認められなかった。発芽率は、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「曙」、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「白妙」の交配組合わせでほぼ65%、また、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「大紫」、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「正之進」、キンモウツツジ×久留米大輪ツツジ「御代の栄」の交配組合わせで73%から88%を示した(表17)。
【実施例20】
【0109】
1997年8月下旬〜9月中旬にかけて、交配を行った5つの組合わせの、(1)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「大紫」(紫紅色、露地植え)(2)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「曙」(桃色、露地植え)(3)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「白妙」(白色、露地植え)(4)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「正之進」(朱赤色、露地植え)(5)キンモウツツジ(鉢植え)×久留米大輪ツツジ「御代の栄」(ヒラドツツジ「白妙」×アザレア「王冠」の雑種、淡桃色、露地植え)の、後代F1実生の生存率を調査した。実生は1998年3月下旬〜4月上旬にかけて第1回目の移植をプラントベッドに行い、1999年3月下旬〜4月上旬にかけて第2回目の移植を9cmのビニルポットに行った。さらに、2001年3月下旬〜4月上旬にかけて第3回目の移植を15cmのビニルポットに行った。1998年4月から2003年3月までのF1実生の生存率を表18に示す。表18の( )内の生存率は、1998年4月1日の移植数を100%として表示した。移植日は1998年3月27日〜4月3日に第1回目の移植を行い、1999年3月28日〜4月3日に第2回目の移植を行い、2001年3月30日〜4月2日に第3回目の移植を行った。生存率調査日は表18に示す調査月のほぼ末日とした。
【0110】
【表18】
【0111】
表18に示す、第1回目の移植から1年後の第2回目の移植時の生存率は、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「白妙」の組合わせで28%と、かなり低かった例を除いて、他の組合わせではほぼ50%から57%を示した。2000年4月には、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「白妙」で18%と、さらに生存率は低下したが、他の組合わせでも32%から35%と、同様に低下した。その後、2001年3月下旬〜4月上旬にかけて行った第3回目の移植を経て、2003年3月までは、生存率はわずかに低下するにとどまった。キンモウツツジ×ヒラドツツジ「白妙」で12%、他の組合わせで22%〜30%の生存率を示した。
【実施例21】
【0112】
2000年8月下旬〜9月中旬にかけて、以下に示す5組合わせで交配を行った。(1)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「大紫」(紫紅色、露地植え)(2)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「曙」(桃色、露地植え)(3)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「白妙」(白色、露地植え)(4)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「正之進」(朱赤色、露地植え)(5)キンモウツツジ(鉢植え)×久留米大輪ツツジ「御代の栄」(ヒラドツツジ「白妙」×アザレア「王冠」の雑種、淡桃色、露地植え)2000年4月中下旬に開花したヒラドツツジを花粉親にし、8月下旬に開花するキンモウツツジを種子親とした。花粉は、開花の早いヒラドツツジの小花から採取した葯を薬包紙に包み、シリカゲルを入れたガラスビンに入れ、まず4℃で3日間乾燥し、次いで−20℃で冷凍貯蔵したものを用いた。交配は無加温のガラス室内で行い、まず花弁と雄蕊を取り除き、2〜3日後に雌蕊の先端に粘液が充分に分泌したことを確かめ、貯蔵しておいた花粉を柱頭に塗布した。交配後ほぼ4カ月目、果皮が褐色に変化し充分に熟したさく果を採取し、室内で乾燥させ、開さくさせた。次いで、得られた種子を薬包紙に包み、シリカゲルを入れたガラスビンに入れ4℃で播種時まで保存した。
【0113】
本交配種子を2000年1月21日から24日にかけて、ジフィーポット(径8.5cm)に、赤玉土、鹿沼土、ボラ土のいずれも細粒を、1:1:1の割合で混合した用土を7分目まで入れ、さらにその上に細かく砕いた水苔を0.5cmほど敷いたものに播種した。なお、用土はあらかじめベンレート(商品名:デュポン株式会社)1000倍希釈液とスミチオン乳剤(商品名:九州三共株式会社)1500倍希釈液で滅菌と殺虫処理を行った。播種数は1ポット当たり100粒ずつとし、播種後充分に潅水し、ガラス室内に設置した25℃に保った透明ビニルで被覆した枠内に搬入した。播種後、ほぼ20日で発芽が認められるが、発芽直後から2001年3月下旬の移植時まで、植物育成用蛍光灯を用いて深夜4時間点灯し(午後10時〜午前2時)補光した。また、発芽後は、N:P:Kの比率を4:4:3の割合に調製した発酵油かす液肥を、週1回1000倍希釈濃度で潅水をかねて与えた。本交配について、交配花数、結さく数(結さく率)、種子数、播種数、発芽率を調査した。その結果を表19に示す。表19の交配日は2000年8月28日〜9月16日、結さく調査日は2000年12月上旬、採さく日は2000年12月21〜24日、播種日は2001年1月21日〜24日、発芽率調査日は2001年3月26日〜29日であった。
【0114】
【表19】
【0115】
表19に示す5つの組合わせの交配は、ほぼ60%から75%に及ぶ結さく率を示し、組合わせの如何による交配不和合は認められなかった。発芽率は、すべての交配組合わせで65%以上と高かった。
【実施例22】
【0116】
2000年8月下旬〜9月中旬にかけて、交配を行った5つの組合わせの、(1)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「大紫」(紫紅色、露地植え)(2)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「曙」(桃色、露地植え)(3)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「白妙」(白色、露地植え)(4)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「正之進」(朱赤色、露地植え)(5)キンモウツツジ(鉢植え)×久留米大輪ツツジ「御代の栄」(ヒラドツツジ「白妙」×アザレア「王冠」の雑種、淡桃色、露地植え)の、後代F1実生の生存率を調査した。実生は2001年3月下旬〜4月上旬にかけて第1回目の移植をプラントベッドに行い、2002年3月下旬に第2回目の移植を9cmのビニルポットに行った。2001年4月から2003年3月までのF1実生の生存率を表20に示す。表20の( )内の生存率は、2001年4月1日の移植数を100%として表示した。移植日は2001年3月29日〜4月3日に第1回目の移植を行い、2002年3月25日〜4月1日に第2回目の移植を行った。生存率調査日は表20に示す調査月のほぼ末日とした。
【0117】
【表20】
【0118】
表20に示す、第1回目の移植から1年後の第2回目の移植時の生存率は、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「白妙」の組合わせで49%と、50%に満たなかったが、他の組合わせでは、54%から59%を示した。2003年3月には、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「白妙」で32%と、さらに生存率は低下したが、他の組合わせでは、キンモウツツジ×久留米大輪ツツジ「御代の栄」で53%と、生存率を維持した組合わせと、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「曙」、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「大紫」、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「正之進」の41%から47%と、やや生存率の低下した組合わせがあった。
【実施例23】
【0119】
1997年8月下旬〜9月中旬にかけて、交配を行った5つの組合わせの、(1)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「大紫」(紫紅色、露地植え)(2)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「曙」(桃色、露地植え)(3)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「白妙」(白色、露地植え)(4)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「正之進」(朱赤色、露地植え)(5)キンモウツツジ(鉢植え)×久留米大輪ツツジ「御代の栄」(ヒラドツツジ「白妙」×アザレア「王冠」の雑種、淡桃色、露地植え)の、後代F1実生の秋咲きの開花性を調査した。その結果、F1交配実生は、2001年8月には開花樹齢に達し、9月には開花し始めた。2003年1月までに秋季〜冬期に亘って開花した個体は、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「大紫」交配実生で26個体中20個体(開花率77%)、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「曙」交配実生で32個体中24個体(開花率75%)、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「白妙」交配実生で14個体中13個体(開花率93%)、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「正之進」交配実生で30個体中26個体(開花率87%)、キンモウツツジ×久留米大輪ツツジ「御代の栄」交配実生で73個体中60個体(開花率82%)であった。開花個体の実生個体群に占める割合(開花率)はそれぞれ75%以上と、高率で秋咲き性を示した。
【実施例24】
【0120】
1997年8月下旬〜9月中旬にかけて、交配を行った5つの組合わせの、(1)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「大紫」(紫紅色、露地植え)(2)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「曙」(桃色、露地植え)(3)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「白妙」(白色、露地植え)(4)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「正之進」(朱赤色、露地植え)(5)キンモウツツジ(鉢植え)×久留米大輪ツツジ「御代の栄」(ヒラドツツジ「白妙」×アザレア「王冠」の雑種、淡桃色、露地植え)の、後代F1実生の秋咲きの開花した株(個体)数を調査した(図11)。開花は2001年9月に始まり、11〜12月に最大数を数え、2002年3月にはいわゆる春期開花のピークを迎えた。一方、2002年は7月に開花し始め、10〜12月にかけて最大数を数えた。秋(冬)期開花のピークが前年よりやや早まる傾向を示した。この結果、キンモウツツジを種子親に用いた交配から、高率で夏期〜冬期開花性のF1後代の、四季咲き性のツツジを得ることができる。
【実施例25】
【0121】
1997年8月下旬〜9月中旬にかけて、交配を行った5つの組合わせの、(1)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「大紫」(紫紅色、露地植え)(2)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「曙」(桃色、露地植え)(3)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「白妙」(白色、露地植え)(4)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「正之進」(朱赤色、露地植え)(5)キンモウツツジ(鉢植え)×久留米大輪ツツジ「御代の栄」(ヒラドツツジ「白妙」×アザレア「王冠」の雑種、淡桃色、露地植え)の、後代F1実生の秋咲きの開花した株(個体)数を調査した(図12)。開花は2001年9月に始まり、11〜12月に最大数を数え、2002年と2003年は共に11月に最大数である103個体と116個体を数えた。2002年から毎年3月にはいわゆる春期開花のピークを迎えた。この結果、キンモウツツジを種子親に用いた交配から、高率で夏期〜冬期開花性のF1後代の、四季咲き性のツツジを得ることができ、かつ、これらの四季咲き性のツツジは毎年四季咲きすることがわかる。
【実施例26】
【0122】
1997年8月下旬〜9月中旬にかけて、交配を行った5つの組合わせの、(1)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「大紫」(紫紅色、露地植え)(2)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「曙」(桃色、露地植え)(3)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「白妙」(白色、露地植え)(4)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「正之進」(朱赤色、露地植え)
(5)キンモウツツジ(鉢植え)×久留米大輪ツツジ「御代の栄」(ヒラドツツジ「白妙」×アザレア「王冠」の雑種、淡桃色、露地植え)の、
開花した143個体の耐暑性のツツジの、花弁の花色を調査した。花弁を採集し、色彩計で測色し、L*、a*、b*値を求め、色相角(h)を算出した。
【0123】
キンモウツツジ×ヒラドツツジ「大紫」の交配実生について、まず交配親キンモウツツジの花弁は、a*値=54.1、b*値=25.3で、「大紫」の花弁は、a*値=55.8、b*値=−23.0である。交配実生は、a*値で48.1〜65.0、b*値で18.2〜−20.1の範囲に収まる個体分布を示し、花色を現わす色相角hは、交配親の色相角の範疇に入る分布を示した。また、交配実生の色度については、キンモウツツジと「大紫」のほぼ中間に広く分布し、F1雑種には、キンモウツツジに似た花色のもの、「大紫」に似た花色のもの、両者の中間の花色を示すものが出現した(図13)。
【0124】
キンモウツツジ×ヒラドツツジ「曙」の交配実生について、一方の交配親「曙」の花弁は、a*値=29.9、b*値=−8.3をである。交配実生は、a*値で47.7〜65.0、b*値で23.4〜−15.8の範囲に収まる個体分布を示し、花色を現わす色相角hは、交配親の色相角の範疇に入る分布を示した。また、交配実生の色度については、キンモウツツジから「曙」に及ぶ幅広い分布を示し、キンモウツツジに似た花色のもの、「曙」に似た花色のもの、両者の中間の花色を示すものが出現した(図14)。
【0125】
キンモウツツジ×ヒラドツツジ「白妙」の交配実生について、一方の交配親「白妙」の花弁は、a*値=−1.7、b*値=4.9である。交配実生は、a*値で44.8〜60.1、b*値で19.8〜−16.4の範囲に収まる個体分布を示し、花色を現わす色相角hは、交配親の色相角の範疇にまったく入らない分布を示した。また、交配実生の色度については、キンモウツツジに似た朱赤の花色のものから紫紅のものまでの、連続的な分布を示した(図15)。
【0126】
キンモウツツジ×ヒラドツツジ「正之進」の交配実生について、一方の交配親「正之進」の花弁は、a*値=58.0、b*値=18.4である。交配実生は、a*値で49.8〜58.1、b*値で10.8〜22.7の範囲に収まる個体分布を示し、花色を現わす色相角hは、交配親の色相角の範疇に入らないものが半数以上出現した。また、交配実生の色度については、「正之進」に分布は偏っており、F1雑種は「正之進」に似た花色を持つことがわかる(図16)。
【0127】
キンモウツツジ×久留米大輪ツツジ「御代の栄」の交配実生について、一方の交配親「御代の栄」の花弁は、a*値=37.2、b*値=−9.1である。交配実生は、a*値で0.1〜61.8、b*値で21.5〜−12.2の広大な範囲の個体分布を示した。この個体分布は、低a*値/低b*値、高a*値/高b*値、高a*値/低b*値の、おもに三つのグループに分かれ、他の交配組合わせに見られない特徴を示した。花色を現わす色相角hは、交配親の色相角の範疇にほぼ入る分布を示し、交配実生の色度については、キンモウツツジに偏るもの、「御代の栄」に偏るもの、両者から離れて白色域に偏るものの分布を示した(図17)。
【0128】
これらの実施例から、本発明のツツジの育種法が優れた、常緑性のツツジ、耐暑性のツツジ、四季咲き性のツツジ、を作出方法であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0129】
ミツバツツジ類は落葉性であったが、落葉させずに周年の間、葉を観賞することができるようになった。クルメツツジ類は不良環境には耐えることができなかったが、暑地における公園や行楽地、あるいは道路沿いのグリーンベルトに栽植しても、枯れずに周年開花できる。ツツジ類の鉢物に、日長処理や生長調節剤処理で分化・発達した花芽の休眠を打破することで開花を促進させなくても、露地植栽のツツジ類を四季咲きさせることができる。
【0130】
本発明は、市場が要請するこれまでには無かった常緑性のミツバツツジ類、不良環境適応性を有したクルメツツジ類、四季咲き性のヒラドツツジ類を作出できることを見出した上で、落葉性のツツジに常緑性に関わる遺伝子を導入することのできるツツジの生態型育種法、非耐暑性のツツジに耐暑性に関わる遺伝子を導入することのできるツツジの生態型育種法、一季咲き性のツツジに四季咲き性に関わる遺伝子を導入することのできるツツジの生態型育種法を提供できる。本発明によって、常緑性のミツバツツジ類、耐暑性のクルメツツジ類、四季咲き性のヒラドツツジ類を提供できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツツジが落葉性、非耐暑性、一季咲き性であって、落葉性、非耐暑性、一季咲き性のツツジに、常緑性、耐暑性、四季咲き性に関わる遺伝子を導入する新育種法に関する。より詳しくは、開花植物、すなわち、被子植物(angiosperms)の花と、遺伝子型(genotype)を改変するための処理である交配の方法とからなる新規植物またはそれらを得るための処理に関するものである。また、生殖交雑(sexual hybridization)の段階を含む育種過程(breeding process)において得られた植物やその一部を用いる方法である。また、新規植物(new plants)またはそれらを得るための方法であって、被子植物(angiosperms)などの花き類(flowering plants)に関する。
【背景技術】
【0002】
5亜属、約850種からなるロードデンドロン(Rhododendron)属は、熱帯から寒冷地にかけての低山から高山に分布し、形態的・生態的にも落葉から常緑、あるいは匍匐性から喬木に及ぶなど、膨大な変異を内包しながら特徴あるグループを形成している(非特許文献1、有隅健一:平成2年度科学研究費補助金(一般研究C)研究成果報告書、1991年3月:1−2)。
【0003】
ロードデンドロン属の中で園芸的に高く評価され、多彩な品種分化を遂げてきたのは常緑性のツツジ、落葉性のツツジ、無鱗片シャクナゲ、有鱗片シャクナゲの4亜属群である。これらが多彩な品種分化を遂げ得たのは、亜属内での種のゲノム的分化がそれほど大きくはなかったことから、異種間で遺伝子の相互交換がかなり自由に行われ、交配を繰り返しても、雑種が不稔にならなかったことによる(非特許文献2、有隅健一:平成2年度科学研究費補助金(一般研究C)研究成果報告書、1991年3月:1−2、図4−1)。
【0004】
ツツジ類の育種は、種内あるいは近縁種間での遺伝子交換の範疇にとどまっており、花色や花型などの形質改良の域を出ていない。特に、生態型の改変を伴った新規性ツツジ類の育種はなく、皆無の状況にあるといっていいのが国内外の現状である(非特許文献1、有隅健一:平成2年度科学研究費補助金(一般研究C)研究成果報告書、1991年3月:1−2)。
【0005】
ツツジ類には園芸的観点からはそれぞれに長短がある。例えば、常緑性のツツジ(evergreen azalea)について栽培は比較的容易であるが、黄色と真の青色を欠くなど、花色に問題点がある。また、落葉性のツツジ(deciduous azalea)は、エクスバリー種(exbury azalea)に強烈な黄色があるものの、本邦を代表するミツバツツジ類に限っては、花色は朱赤か紫紅色に限られ、しかも耐暑性はない(非特許文献3、有隅健一:ロードデンドロン、第32巻、第1号:67−83)。
【0006】
本属の内包する膨大な遺伝資源を縦横に活用した新しい園芸種を創出するために、かつて深く交わったことのない異質の生殖質(exotic germplasm)を考慮した育種が展開され、それぞれのツツジ間に散見される異質の生殖質を縦横に会合させることによって、新しい園芸系統が創出されてきた。しかし、耐暑性や四季咲き性などの新しい生殖質を持つ系統(個体)の作出方法は見あたらない(非特許文献1、有隅健一:平成2年度科学研究費補助金(一般研究C)研究成果報告書、1991年3月:1−2)。
【0007】
早春、他のツツジ類に先がけて咲くミツバツツジ類の多くの種は、葉の展開以前か、あるいは展開とほぼ同時に開花するため、開花期にはすばらしい美観を呈する。これはミツバツツジ類の最大の特徴である。また、ひし形に近い葉を枝先に三枚輪生し、一部のミツバツツジでは照り葉性を示すなど、他のツツジ類に見られない特徴を持っている(非特許文献4、竹内照雄:誠文堂新光社、1969年5月:102−120;非特許文献5、山崎 敬他:誠文堂新光社、1976年3月:60−76)。落葉性であるミツバツツジと常緑性のサクラツツジとを交配することによって、常緑性のミツバツツジを作出することができるとされていたが、これまでに作出された報告例はない(非特許文献6、後藤利幸:新花卉、第106号:45)。
【0008】
クルメツツジ(「久留米ツツジ」、Kurume azalea)は、キリシマツツジ(「霧島ツツジ」、R.obtusum)とサタツツジ(R.sataense)をもとに品種改良が進められた園芸品種群で、現在、約300品種が広く栽培されている。クルメツツジは小輪多花性で花色は変異に富み、花型も散りにくい二重咲き(ホーズ・イン・ホーズ、hose−in−hose)の品種が多いことから、鉢物や庭木として人気を博している。また、開花期は4月中旬から5月上旬であり、多花性と一斉開花性の特質があることから、行楽地の植栽として欠かせないものとなっている(非特許文献7、田村輝夫他:葦書房、1989年4月:34−116)。
【0009】
クルメツツジは、花型や花色、あるいは樹姿を対象にして品種改良が進められ、それも旺盛な生育が保証された好適条件下で選抜された品種がほとんどであるため、不良環境には耐えることができない問題点がある。特に、暑地における公園や行楽地、あるいは道路沿いのグリーンベルトに植栽されるクルメツツジが忽然と枯れ上がるのはこの理由による(非特許文献7、田村輝夫他:葦書房、1989年4月:34−116)。
【0010】
マルバサツキ(R.eriocarpum)は、耐乾性、耐暑性に富み、自生地の薩南諸島、特にトカラ列島は、今もなお活動する火山性の島嶼であるため、亜硫酸ガスに対する抵抗性をも持つ丈夫な種である。加えてその名の示すとおり、葉は小葉で丸葉である(非特許文献8、国重正昭:誠文堂新光社、1976年3月:98−99)。
【0011】
ヒラドツツジ(「平戸ツツジ」、Hirado azalea)は、長崎県平戸市近郊で、外来のケラマツツジ(R.scabrum)やタイワンヤマツツジ(R.simsii)と本邦産のモチツツジ(R.macrosepalum)やキシツツジ(R.ripense)との間に生じた自然交雑個体の中から選抜されたもので、ツツジ類の中では最も大型の樹姿、葉、花器を持つものである。また、樹勢は強健で、生育は極めて旺盛である。乾燥や排気ガス、あるいは潮風にも強いところから、わが国では至るところに大量に植栽されている。また、ヒラドツツジは花の大輪性、花色の豊富さ、日持ちの良さを兼ね備え、他の常緑ツツジ類には見ることのできない利点を持つ(非特許文献9、田村輝夫他:葦書房、1989年4月:153−162)。
【0012】
ツツジ類のほとんどは、早春から初夏にかけて咲く、いわゆる一季咲き性を示すが、なかには春開花後、夏から秋にかけて再び開花する四季咲き性のツツジがある。中国南東部から台湾にかけて自生するキンモウツツジ(金毛ツツジ、R.oldhamii)のごく限られた一系統がそうである。このツツジは、葉に密毛があり、花は朱赤色一色と観賞性に乏しいものの、春季開花後、新梢が伸長した後に形成される花芽は、休眠せず開花に至るという周年開花性を示す(非特許文献10、有隅健一他:園芸学会研究発表要旨、1979年:256−257)。一般に、ツツジは春期開花後、花房直下の腋芽を伸長させ花芽を分化し、秋口にかけて花芽を完成する。その後の低温で花芽は休眠に入り、翌春の気温上昇に伴って発達し、開花に至る。キンモウツツジのごく限られた一系統では、夏期の花芽分化開始後急速に花芽を完成し、花芽は休眠に入ることなく発達しそのまま開花する。露地またはガラス室など制御環境下では、7月から8月にかけて開花を開始し、露地では降霜時まで、また、ガラス室内では年を越えて開花し続ける場合がある(非特許文献10)。
【0013】
ツツジ類は、自然条件下においては6月下旬から8月中旬の高温期(18〜25℃)にかけて花芽を分化し、花芽の完成する9月〜10月には気温の低下とともに休眠状態に入る。この花芽の休眠は、冬の低温(4〜7℃に30〜40日間)に遭遇することによって打破され、翌春の気温上昇に伴って開花に至る(非特許文献11、五井正憲:新花卉、第106号:72−75)。
【0014】
特開平11−266728号(以下、特許文献1という)には、ツツジ属植物の植物組織片から多芽体を形成させ、植物体を大量増殖する方法(特許文献1の第0005〜0020段落)の記載がある。「花弁、葉片等、1本の親植物から多数採取することができる出発材料を使用して、多数のシュートを有する多芽体を介することにより、ツツジ属植物を効率よく大量に増殖せしめることができることを見出し、本発明を完成した。」という記載がある。
【0015】
米国特許第13073号明細書(以下、特許文献2という)には、アザレア植物として“スカーレット”の記載がある。「新品種“スカーレット”は寒期および促成栽培期においても常緑の葉を落とすことはなく、」、「大変深い赤色で半八重の花を形成し、フリル咲きし、樹体の長持ちがよく、シリンドロクラジウム(Cylindrocladium)菌の感染実験で低い感染率を示す。」という記載がある。
【0016】
米国公開公報第20040073980号明細書(以下、特許文献3という)には、ロードデンドロンの台木として“ローヅンター48”の記載がある。「堅実で強固な成長を示す、新しいロードデンドロンの台木である。」という記載がある。
【0017】
中国特許第1413435号明細書(以下、特許文献5という)には、ロードデンドロンデラバーイ(Rhododendron delavayi)の種子生産法の記載がある。「アザレアの種を再生生産する方法であり、種子再生のプールを構築し、その中に腐植土油(70−90の割合)と菜園用土(5−15の割合)で配合した用土を準備し、アザレアの種(1の割合)と腐植土油(3−5の割合)で混ぜたものを前記したプールに播種し、低コストで70%以上の再生率を与える方法。」という記載がある。
【0018】
【特許文献1】特開平11−266728号公報(第0005〜0020段落、図1)
【特許文献2】米国特許第13073号明細書。
【特許文献3】米国公開公報第20040073980号明細書
【特許文献4】中国特許第1413435号明細書
【非特許文献1】有隅健一、「ツツジ・シャクナゲにおける耐暑性・新花色領域の創成に関する研究」、平成2年度科学研究費補助金(一般研究C)研究成果報告書、研究課題番号63560032、1991年3月、P.1−2。
【非特許文献2】有隅健一、「ツツジ・シャクナゲにおける耐暑性・新花色領域の創成に関する研究」、平成2年度科学研究費補助金(一般研究C)研究成果報告書、研究課題番号63560032、1991年3月、P.1−2、図4−1。
【非特許文献3】有隅健一、「耐暑性シャクナゲの育種(3)」、ロードデンドロン、2003年、第32巻、第1号、P.67−83。
【非特許文献4】竹内照雄、「ミツバツツジ類とサクラツツジ」、シャクナゲとツツジ、誠文堂新光社、1969年5月、P.102−120。
【非特許文献5】山崎 敬、他2名、「ミツバツツジの種類と栽培」、ツツジその種類と栽培、誠文堂新光社、1976年3月、P.60−76。
【非特許文献6】後藤利幸、「ミツバツツジ類の育種」、新花卉、第106号、1980年6月、P.45。
【非特許文献7】田村輝夫、他8名、「久留米ツツジの栽培と由来」、久留米のつつじ、葦書房、1989年4月、P.34−116。
【非特許文献8】国重正昭、「その他の常緑性ツツジ」、ツツジその種類と栽培、誠文堂新光社、1976年3月、P.98−99。
【非特許文献9】田村輝夫、他8名、「平戸ツツジの栽培と由来」、久留米のつつじ、葦書房、1989年4月、P.153−162。
【非特許文献10】有隅健一、他2名、「四季咲きツツジの育種に関する研究」、園芸学会研究発表要旨、1979年、昭和54年度春季大会、P.256−257。
【非特許文献11】五井正憲、「ツツジの開花特性」、新花卉、第106号、1980年6月、P.72−75。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、ミツバツツジ類は落葉性であり、落葉させずに周年の間、葉を観賞することができなかったという問題点がある。クルメツツジ類は不良環境には耐えることができないことから、暑地における公園や行楽地、あるいは道路沿いのグリーンベルトに栽植しても、数年の内に枯れるという問題点がある。また、ツツジ類の鉢物では、日長処理や生長調節剤処理で分化・発達させた花芽の休眠を打破することで開花を促進させれば、冬場に開花(一季咲き)させることができたものの、露地に植栽されるツツジ類にこの手法を用いるにはきわめて困難であり、露地植栽のツツジ類を四季咲きさせることができなかった問題点がある。
【0020】
本発明は、市場が要請するこれまでには無かった常緑性のミツバツツジ類、不良環境適応性を有したクルメツツジ類、四季咲き性のヒラドツツジ類を作出できることを見出した上で、落葉性のツツジに常緑性に関わる遺伝子を導入するツツジの育種法、非耐暑性のツツジに耐暑性に関わる遺伝子を導入するツツジの育種法、一季咲き性のツツジに四季咲き性に関わる遺伝子を導入するツツジの育種法を提供すると共に、常緑性のミツバツツジ類、耐暑性のクルメツツジ類、四季咲き性のヒラドツツジ類を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、落葉性のツツジと常緑性のツツジを交配することによって、落葉性のツツジに常緑性のツツジの、常緑性に関わる遺伝子を導入すると、結果として、常緑性の遺伝形質が受け継がれることを見出した。すなわち、本発明は、落葉性のツツジを常緑性に変換して育成する常緑性のツツジの育種方法であって、落葉性のツツジに常緑性に関わる遺伝子を導入することを特徴とする常緑性のツツジの育種法である。
【0022】
本発明者らは、上記の課題を解決するために更に、耐暑性のツツジと非耐暑性のツツジとを交配することによって、非耐暑性のツツジに耐暑性のツツジの耐暑性に関わる遺伝子を導入し、結果として、耐暑性の遺伝形質が受け継がれることを見出した。
すなわち、本発明は、また非耐暑性のツツジを耐暑性のツツジに変換して育成する耐暑性のツツジの育種方法であって非耐暑性のツツジと耐暑性のツツジとを交配して、前記非耐暑性のツツジに耐暑性に関わる遺伝子を導入することを特徴とするものである。
【0023】
本発明者らは、上記の課題を解決するために更に、一季咲き性のツツジと四季咲き性のツツジとを交配することによって、一季咲き性のツツジに四季咲き性のツツジの四季咲き性に関わる遺伝子を導入し、結果として、四季咲き性の遺伝形質が受け継がれることを見出した。すなわち本発明は、一季咲き性のツツジを四季性のツツジに変換して育成する四季咲き性のツツジの育種方法であって一季咲き性のツツジと四季咲き性のツツジとを交配して、前記一季咲き性のツツジに四季咲き性に関わる遺伝子(好ましくは一季咲き性のツツジに毎年四季咲き性を繰り返すことのできる遺伝子)を導入することを特徴とするものでる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のミツバツツジ類交配F1の常緑性の出現率を示す図である。調査は2002年2月に行った。
【図2】オンツツジ(◎)×ハヤトミツバツツジ(●)とF1雑種(○)のCIELab表色系上の花色分布を示す図である。
【図3】オンツツジ(◎)×コバノミツバツツジ(●)とF1雑種(○)のCIELab表色系上の花色分布を示す図である。
【図4】オンツツジ(◎)×サクラツツジ(●)とF1雑種(○)のCIELab表色系上の花色分布を示す図である。
【図5】本発明のマルバサツキ×クルメツツジ交配F1の二重咲き性(hose−in−hose)の出現率を示す図である。調査は2002年5月に行った。
【図6】マルバサツキ(●)×クルメツツジ「今猩々」(朱赤色、◎)とF1雑種(○)のCIELab表色系上の花色分布を示す図である。
【図7】マルバサツキ(●)×クルメツツジ「宮城野」(紅紫色、◎)とF1雑種(○)のCIELab表色系上の花色分布を示す図である。
【図8】マルバサツキ(●)×クルメツツジ「裾濃の糸」(紫色、◎)とF1雑種(○)のCIELab表色系上の花色分布を示す図である。
【図9】マルバサツキ(●)×クルメツツジ「麒麟」(桃色、◎)とF1雑種(○)のCIELab表色系上の花色分布を示す図である。
【図10】マルバサツキ(●)×クルメツツジ「暮の雪」(白色、◎)とF1雑種(○)のCIELab表色系上の花色分布を示す図である。
【図11】ヒラドツツジ交配F1雑種の月別開花個体数の推移を示す図である。調査は、2001年9月〜2003年1月に行った。
【図12】ヒラドツツジ交配F1雑種の月別開花個体数の推移を示す図である。調査は、2001年9月〜2004年6月に行った。
【図13】キンモウツツジ(◎)×ヒラドツツジ「大紫」(●)とF1雑種(○)のCIELab表色系上の花色分布を示す図である。
【図14】キンモウツツジ(◎)×ヒラドツツジ「曙」(●)とF1雑種(○)のCIELab表色系上の花色分布を示す図である。
【図15】キンモウツツジ(◎)×ヒラドツツジ「白妙」(●)とF1雑種(○)のCIELab表色系上の花色分布を示す図である。
【図16】キンモウツツジ(◎)×ヒラドツツジ「正之進」(●)とF1雑種(○)のCIELab表色系上の花色分布を示す図である。
【図17】キンモウツツジ(◎)×久留米大輪ツツジ「御代の栄」(●)とF1雑種(○)のCIELab表色系上の花色分布を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
(常緑性の付与)
本発明の常緑性のツツジの育種法は、落葉性のツツジを常緑性にするものであって、落葉性のツツジに常緑性に関わる遺伝子を導入するものである。本発明で使用する常緑性のツツジ類とは、落葉せずに周年の間、葉を付ける遺伝形質を持つツツジ類である。
【0027】
本発明で使用できる落葉性のツツジ類として、限定されるものではないが例えば、アイラム・アザレア(Ilam Azalea)、アウストリヌム(R.austrinum)、アカヤシオ(R.pentaphyllum var.nikoense)、アケボノツツジ(R.pentaphyllum var.shikokianum)、アトランチクム(R.atlanticum)、アマギツツジ(R.amagianum)、アマクサミツバツツジ(R.amakusaense)、アラバメンシス(R.alabamensis)、アルボレッセンス(R.arborescense)、アワノミツバツツジ(R.dilatatum var.decandrum f.lasiocarpum)、ウラジロミツバツツジ(R.osuzuyamense)、エクスベリー・アザレア(Exbury Azalea)、エゾツツジ(R.camtschaticum)、オオバツツジ(R.nipponicum)、オクシデンターレ(R.occidentale)、オクシデンターレ・アザレア(Occidental Azalea)、オンツツジ(R.weyrichii)、カナデンセ(R.canadense)、カネッセンス(R.canescens)、カレンデュラケウム(R.calendulaceum)、キヨスミミツバツツジ(R.kiyosumense)、キレンゲツツジ(R.japonicum f.flavum)、クロフネツツジ(R.schlippenbachii)、ケミツバツツジ(R.dilatatum var.lasiocarpum)、ゲンカイツツジ(R.mucronulatum)、ゲント・アザレア(Ghent Azalea)、コバノミツバツツジ(R.reticulatum)、サイゴクミツバツツジ(R.nudipes)、シブカワツツジ(R.sanctum var.lasiogynum)、シロヤシオ(R.quinquefolium)、ジングウツツジ(R.sanctum)、スペキオースム(R.speciosum)、ダイセンミツバツツジ(R.wadanum var.lagopus)、タカクマミツバツツジ(R.viscistylum)、タンナアカツツジ(R.weyrichii var.psilostylum)、タンナチョウセンヤマツツジ(R.yedoense var.hallaisanense)、トウゴクミツバツツジ(R.wadanum)、トサノミツバツツジ(R.decandrum)、ナップヒル・アザレア(Knap Hill Azalea)、ナンゴクミツバツツジ(R.mayebarae)、ヌディフロルム(R.nudiflorum)、バイカツツジ(R.semibarbatum)、ハヤトミツバツツジ(R.dilatatum var.satsumense)、バーケリ(R.bakeri)、ヒダカミツバツツジ(R.hidakanum)、ヒメミツバツツジ(R.nagasakianum)、ヒュウガミツバツツジ(R.hyugaense)、ファルレレー(R.farrerae)、プルニフォリウム(R.prunifolium)、ミツバツツジ(R.dilatatum)、ムサシミツバツツジ(R.tatuoi)、ムラサキヤシオツツジ(R.albrechtii)、モリス・アザレア(Mollis Azalea)、モーレ(R.molle)、ヤクシマミツバツツジ(R.yakumontanum)、ユキグニミツバツツジ(R.lagopus var.niphophilum)、ラスティカ・フローレ・プレノ・アザレア(Rustica Flore Pleno Azalea)、ルテウム(R.luteum)、レンゲツツジ(R.japonicum)、ロセウム(R.roseum)、ワセイ(R.vaseyi)、とこれらを親とする園芸品種や交配種が挙げられる。
【0028】
本発明で使用できる常緑性のツツジ類として、限定されるものではないが、例えば、アカシマヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi f.zonale)、アザレア(Azalea)、アシタカツツジ(R.komiyamae)、アマミセイシカ(R.amamiense)、ウレンツツジ(R.enomotoi)、ウンゼンツツジ(R.serpyllifolium)、エゾムラサキツツジ(R.dauricum)、エゾヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi f.latesepalum)、オオコメツツジ(R.tschonoskii var.trinerve)、オオシマツツジ(R.obtusum var.macrogemma)、オオヤマツツジ(R.transiens)、オオリュウキュウ(R.hortense)、オガサワラツツジ(R.boninense)、オタクミツツジ(R.otakumi)、キシツツジ(R.ripense)、キリシマツツジ(R.obtusum var.obtusum)、キンシベ(R.obtusum var.kaempferi f.kinshibe)、キンモウツツジ(R.oldhamii)、クルメツツジ(Kurume Azalea)、ケサクラツツジ(R.tashiroi var.lasiophyllum)、ケラマツツジ(R.scabrum)、コメツツジ(R.tschonoskii)、コリンヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi f.micranthum)、サカイツツジ(R.lapponicum)、サキシマツツジ(R.amanoi)、サクラツツジ(R.tashiroi)、サタツツジ(ヒメマルバサツキ、R.sataense)、サツキ(R.indicum)、サンヨウツツジ(R.komatsui)、シキザキヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi f.semperfloens)、シデヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi f.angustisectum)、シロバナモチツツジ(R.macrosepalum f.leucanthum、シロヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi f.album)、シロリュウキュウ(R.mucronatum)、セイシカ(R.latoucheae)、タイワンヤマツツジ(R.simsii)、タチセンエ(R.obtusum var.kaempferi f.tachi−sene)、チョウジコメツツジ(R.tetramerum)、チョウセンヤマツツジ(R.yedoense var.poukhanense)、テリハヤマツツジ(R.lusidusculum)、トキワバイカツツジ(R.uwaense)、ナカハライ(R.nakaharai)、ニシキヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi f.multicolor)、ハナノエン(R.obtusum var.kaempferi f.hananoen)、ハンノウツツジ(R.hannoense)、ハンヤエヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi f.semiflenum)、ヒカゲツツジ(R.keiskei)、ヒラドツツジ(Hirado Azalea)、ヒロハヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi f.latifolium)、ヒメヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi f.tubiflorum)、フジツツジ(R.tosaense)、ホウライツツジ(R.macrotransiens)、ホソバヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi f.angustifolium)、マルバサツキ(R.eriocarpum)、ミカワヤマツツジ(R.obtusum var.mikawanum)、ミヤコツツジ(R.tectum)、ミヤマキリシマ(R.kiusianum)、ムラサキヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi f.mikawanum)、モチツツジ(R.macrosepalum)、ヤエザキヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi f.komatsui)、ヤクシマヤマツツジ(R.yakuinsulare)、ヤマツツジ(R.obtusum var.kaempferi)、とこれらを親とする園芸品種や交配種が挙げられる。
【0029】
このように本発明において、落葉性のツツジに常緑性のツツジの遺伝子を導入するが、常緑性のツツジを花粉親または種子親として落葉性のツツジと交配することによって落葉性のツツジに常緑性のツツジの遺伝子を導入することが可能である。例えば、落葉性のツツジとして、コバノミツバツツジ(Rhododendron reticulatum)、ハヤトミツバツツジ(Rhododendron satsumense)、オンツツジ(Rhododendron weyrichii)と、常緑性のツツジとしてサクラツツジ(Rhododendron tashiroi)とを交配する。さらに、本発明において、常緑性のツツジの花粉親または種子親の交配は、相互交配であることが可能である。例えば、落葉性のオンツツジ(Rhododendron weyrichii)と、落葉性のハヤトミツバツツジ(Rhododendron satsumense)を交配することによって、常緑性のツツジを育種することが可能となる。
【0030】
なお、これらのツツジの選択は、育種しようとする花の形態(色、花型等)に応じて適宜選択することが可能であるが、本発明者が先に出願した非公開のPCT/JP2004/000297(特願2003−144406号)に記載の花きの花色遺伝型交配法に基づいて行うことが好ましい。
【0031】
すなわち、この出願によると、「花きの主要花色素である、3つのアントシアニジン:ペラルゴニジン(Pgn)、シアニジン(Cyn)、デルフィニジン(Dpn)の遺伝に着目し、自殖や正逆交雑を行い検討した結果、F1〜F4世代の色素表現型の分離から、遺伝の新しい法則を見出した。」、「色素前駆体のB環の水酸化に関与するフラボノイド3’−ヒドロキシラーゼ(F3’H)とフラボノイド3’、5’−ヒドロキシラーゼ(F3’、5’H)の酵素反応系には、HT、HF、HD、HZ、HOの5つの複対立遺伝子が存在し、これらが3’位の水酸化、5’位の水酸化、3’、5’位の水酸化、3’、5’位の水酸化、および3’位と3’、5’位の水酸化を制御し、これらの組合せによって花色表現型が決定されることを見出し、本発明を完成した。」という記載がある。また、「ツツジ(ツツジ科)花弁の色素の分析を行い、各品種の花弁色素遺伝型を調べた。」、「キンモウツツジを種子親に、ヒラドツツジを花粉親として交配を行い、F1ツツジを作出し、それらの花弁色素の分析を行い、各雑種の色素遺伝型と花色遺伝を調べた。」、「二重咲き花(ホーズ・イン・ホーズ;hose−in−hose)の久留米ツツジと一重花のマルバサツキを交配し、二重咲き花雑種と一重花雑種が144個体:123個体(1:1)で分離した。その結果、二重咲き花久留米ツツジおよび二重咲き花雑種の、二重咲き形質に関する遺伝型をDhd(ヘテロ型)と明らかにし、一重花サツキおよび一重花雑種の遺伝型がdd(劣性ホモ型)で有ることを明らかにした。」という記載がある。
【0032】
本発明においてもこのような遺伝子型から花の種類、花型等を予測して選択することが可能である。
【0033】
(耐暑性の導入)本発明の別の態様において、落葉性のツツジと常緑性のツツジから常緑性のツツジを育種することに代わってあるいは落葉性のツツジと常緑性のツツジから常緑性のツツジを育種することに加えて、非耐暑性のツツジと耐暑性のツツジから耐暑性のツツジを育種することが可能である。
【0034】
耐暑性のツツジ類とは、高温、多湿環境下においても生息することのできる遺伝形質(以下、耐暑性遺伝形質という)を持つツツジ類である。耐暑性のツツジ類とは、このような耐暑性遺伝形質を有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、前記落葉性のツツジのうち、耐暑性を有するものは、オンツツジおよびハヤトミツバツツジでありその他は、非耐暑性の落葉性のツツジである。一方、前記常緑性のツツジの例の内、耐暑性を有するものは、ケラマツツジ、サタツツジ、ヒラドツツジ、マルバサツキ、ヤマツツジであり、その他は、非耐暑性の常緑性のツツジである。
【0035】
このような耐暑性のツツジおよび非耐暑性のツツジの選択は、常緑性の導入と同様に、育種する花の形態(色、形状)等に応じて適宜選択することができる。本発明においては、このように耐暑性遺伝子形質を有していない非耐暑性のツツジに耐暑性遺伝子を導入することによって耐暑性のツツジを育種することが可能となる。
【0036】
なお、非耐暑性のツツジまたは耐暑性のツツジのいずれか一方に本発明による常緑性を付与したツツジを使用することによって、交配するツツジの選択範囲が拡がるのと同時に、常緑性および耐暑性の両者をあわせ持つツツジを育種できる。
【0037】
(四季咲き性の導入)本発明の別の態様において、落葉性のツツジと常緑性のツツジから常緑性のツツジを育種することおよび/又は非耐暑性のツツジと耐暑性のツツジから耐暑性のツツジを育種することに加えて、あるいはこれに代わって、一季咲き性のツツジと四季咲き性のツツジから四季咲き性のツツジを育種することが可能となる。
【0038】
本発明において使用する用語四季咲き性のツツジ類とは、周年開花性の遺伝形質(以下、四季咲き遺伝形質という)を持つツツジ類であり、また、一季咲き性のツツジ類とは、四季咲き遺伝子形質を持たないツツジ類である。
【0039】
本発明において使用できる四季咲き性のツツジ類としてこのような四季咲き遺伝形質を持つものであれば特に限定されるものではなく、例えば前記落葉性のツツジおよび常緑性のツツジのうち、キンモウツツジが挙げられる。一方、一季咲き性のツツジ類のツツジ類も特に限定されるものではなく、例えば前記落葉性のツツジおよび常緑性のツツジのうちキンモウツツジ以外のツツジが挙げられる。
【0040】
このように一季咲き性のツツジと四季咲き性のツツジを交配して、一季咲き性のツツジの特徴を持つツツジ類に四季咲き性を付与することが可能となる。
なお一季咲き性のツツジの選択は、常緑性の導入と同様に、育種する花の形態(色、形状)等に応じて適宜選択することができる。
【0041】
更に、このようにして四季咲き性のツツジと一季咲き性のツツジとを交配して得られた四季咲き性遺伝形質を有する交配種を四季咲き性ツツジとして使用することも本発明の範囲内である。同様にして、本発明により常緑性遺伝形質、耐暑性遺伝形質または両者を有する交配種も親植物として好適に使用することが可能である。
【0042】
一季咲き性のツツジまたは四季咲き性のツツジのいずれか一方に本発明の方法により常緑性を付与したツツジまたは常緑性および耐暑性の両方を付与したツツジを使用することによって、交配するツツジの選択範囲が拡がるのと同時に、常緑性および耐暑性の両者をあわせ持つ四季咲き性のツツジを育種できる。
【実施例1】
【0043】
以下、本発明の具体的ツツジの育種方法を実施例に基づいてより詳細に説明する。
〔花粉の保存方法〕ツツジの花粉を小花から採取した葯を薬包紙に包み、シリカゲルを入れたガラスビンに入れ室温で3日間乾燥し、次いで−20℃で冷凍貯蔵した葯を用いた。交配は無加温のガラス室内で行い、まず花弁と雄蕊を取り除き、2〜3日後に雌蕊の先端に粘液が充分に分泌したことを確かめ、貯蔵しておいた花粉を柱頭に塗布した。
【実施例2】
【0044】
〔交配種子の保存方法〕ツツジを交配後、5〜6カ月目に充分に熟し、果皮が褐色に変化したさく果を採取し、室内で乾燥させ、開さくさせた。次いで、得られた種子を薬包紙に包み、シリカゲルを入れたガラスビンに入れ室温で播種時まで保存した。
【実施例3】
【0045】
〔交配種子の播種の方法、その1:ジフィーポットでの播種〕ツツジの交配種子を以下の方法で播種した。12月上旬に、ジフィーポット(径8.5cm)に、赤玉土、鹿沼土、ボラ土のいずれも細粒を1:1:1の割合で混合した用土を7分目まで入れ、さらにその上に細かく砕いた水苔を0.5cmほど敷いたものに交配種子を播種した。なお、用土はあらかじめダニコール1000倍希釈液とスミチオン乳剤1500倍希釈液で滅菌と殺虫処理を行った。播種数は1ポット当たり100粒ずつとし、播種後充分に潅水し、ガラス室内に設置した25℃に保った透明ビニルで被覆した枠内に搬入した。播種後、ほぼ20日で発芽が認められるが、発芽直後から翌年3月下旬の移植時まで、植物育成用蛍光灯を用いて深夜4時間点灯し(午後10時〜午前2時)補光した。また、発芽後は、N:P:Kの比率を4:4:3の割合に調製した発酵油かす液肥を、週1回1000倍希釈濃度で潅水をかねて与えた。
【実施例4】
【0046】
〔交配種子の播種の方法、その2:セルトレイでの播種〕ツツジの交配種子を以下の方法で播種した。12月上旬に、128穴のセルトレイ(54×28×5cm)に赤玉土、鹿沼土、ボラ土のいずれも細粒を1:1:1の割合で混合した用土を8分目まで入れ、さらにその上に細かく砕いた水苔を敷いたものに播種した。播種数は、1穴当たり5〜7粒ずつとした。播種後充分に潅水し、ガラス室内に設置した25℃に保ったビニルで被覆した枠内に搬入した。発芽直後から翌年3月下旬まで、植物育成用蛍光灯を用いて深夜4時間点灯し(午後10時〜午前2時)補光した。また、発芽後は、N:P:Kの比率を4:4:3の割合に調製した発酵油かす液肥を、週1回1000倍希釈濃度で潅水をかねて与えた。翌月4月上旬にかけて、セルトレイ1穴当たり1〜2本(個体)になるように間引きした。これを32℃の高温に保った恒温室内に搬入し、7月上旬までの3ヶ月間、照度3000lux、16時間日長条件下で育苗した。この間、0.1%ハイポネック溶液(商品名:株式会社ハイポネックスジャパン)を2週間毎に与え、ダニコール(商品名:エス・ディー・エス株式会社)1000倍希釈液とスミチオン乳剤(商品名:九州三共株式会社)1500倍希釈液を散布した。7月上旬からセルトレイを無加温のガラス室に移動させ、以降、発酵油かす液肥を2週間に1回1000倍希釈濃度で与え、ダニコール(商品名:エス・ディー・エス株式会社)1000倍希釈液を2週間に1回散布した。
【実施例5】
【0047】
〔実生苗の移植〕その1の方法で播種した翌年3月下旬〜4月上旬にかけて、第1回目の移植を行った。0.5cm〜1cmに伸びた交配実生を、プラントベッド(35×45×深さ10cm)に赤玉土、鹿沼土、ボラ土のいずれも細粒を、1:1:1の割合で混合した用土を8分目まで入れたものに移植した。移植数は、1プラントベッド当たり120〜240個体ずつとした。
【実施例6】
【0048】
〔実生苗の移植後の育苗管理方法、その1〕実生苗の移植後、無加温のガラス室内に搬入した。移植後の管理は、N:P:Kの比率を4:4:3の割合に調製した発酵油かす液肥を2週間に1回1000倍希釈濃度で与え、実生の立枯れを防ぐためにダニコール(商品名:エス・ディー・エス株式会社)1000倍希釈液を2週間に1回散布した。
【0049】
第1回目の移植の翌年3月下旬に、第2回目の移植を行った。プラントベッドで生存していた交配実生を、径9cmの黒ビニルポットに赤玉土、鹿沼土、ボラ土を、1:1:1の割合で混合した用土を8分目まで入れたものに1個体ずつ移植した。
【0050】
さらに、第2回目の移植の翌年3月下旬に、径15cmの黒ビニルポットに同じ用土を用いて第3回目の移植を行った。この第2回目の移植からの4年間の育苗管理は、5月から3カ月毎に油かすを置肥として与え、1カ月毎にスミチオン乳剤(商品名:九州三共株式会社)1500倍希釈液を散布した。
【実施例7】
【0051】
〔実生苗の移植後の育苗管理方法、その2〕実生苗の移植後、32℃の高温に保った恒温室内に搬入し、6月30日までの3ヶ月間、照度3000lux、16時間日長条件下で育苗した。この高温処理の期間中、0.1%ハイポネック(商品名:株式会社ハイポネックスジャパン)溶液を2週間毎に与え、ダニコール(商品名:エス・ディー・エス株式会社)1000倍希釈液とスミチオン乳剤1500倍希釈液を散布した。7月1日にプラントベッドを無加温のガラス室に移動させ、以後、発酵油かす液肥を2週間に1回1000倍希釈濃度で与え、ダニコール(商品名:エス・ディー・エス株式会社)1000倍希釈液を2週間に1回散布した。
【0052】
第1回目の移植の翌年3月下旬に、第2回目の移植を行った。プラントベッドで生存していた交配実生を、赤玉土、鹿沼土、ボラ土を、1:1:1の割合で混合した用土を入れた径9cmの黒ビニルポットに1個体ずつ移植し、無加温のガラス室内で育苗管理した。この間、移植後の5月から3カ月毎に油かすを置肥として与え、1カ月毎にスミチオン乳剤1500倍希釈液を散布した。
【実施例8】
【0053】
1997年3月下旬〜4月中旬にかけて、以下に示す4組合わせで交配を行った。(1)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×ハヤトミツバツツジ(イワツツジ、鹿児島県牧園町産、鉢植え)、(2)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×コバノミツバツツジ(熊本県市房山産、鉢植え)、(3)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×サクラツツジ(鹿児島県屋久島産、鉢植え)、(4)ミツバツツジ(赤紫色、鉢植え)×ハヤトミツバツツジ(イワツツジ、鹿児島県牧園町産、鉢植え)。交配花数、結さく数(結さく率)、総種子数、播種数、発芽率を調査した。その結果を表1に示す。なお、開花期の異なる種間の交配の場合、開花期の早いものを花粉親とし、遅いものを種子親とした。交配日は1997年3月27日〜4月11日、結さく調査日は1997年10月上旬、採さく日は1997年11月下旬、播種日は1997年12月10日〜12日、発芽率調査日は1998年3月26日〜4月3日である。また、生存率の推移を調査した。1998年と1999年の、いずれも3月下旬〜4月上旬にかけて行った第1回目と第2回目の移植後の実生の生存率の推移を表2と表3に示した。1プラントベッド当たり120個体の実生を植え込んだのが第1回目の移植で、1年後、1個体ずつビニルポットに植え付けたのが第2回目の移植である。表2の( )内の生存率は、1998年4月1日の移植数を100%として表示した。移植日は1998年3月26日〜4月3日(第1回目移植)であり、生存率調査日は表2に示す、調査月のほぼ末日とした。表3の( )内の生存率は、1999年4月1日の移植数を100%として表示した.移植日は1999年3月28日〜4月1日(第2回目移植)であり、生存率調査日は表3に示す調査月のほぼ末日とした。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示す4交配組合わせのいずれの交配組合わせでも、ほぼ50%から90%に及ぶ結さく率を示し、組合わせの如何による交配不和合は認められなかった。発芽率は、オンツツジ×サクラツツジの交配組合わせで37.7%と、やや低い値を示したが、他の3交配組合わせでは、ほぼ47%から64%の値を示した。特に、結さく率の高かったオンツツジ×ハヤトミツバツツジの交配組合わせで、64%の比較的高い発芽率を示した。
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
表2および表3から分かるように、両移植とも、移植後2〜3カ月で4交配組合わせは70%以上の高い生存率を示し、移植後6カ月を経過した9月末日には、オンツツジ×ハヤトミツバツツジの交配組合わせが高い生存率を維持した。他は60%以下と、生存率はやや減少した。しかし、10月以降は9月末日の生存率をほぼ保った。移植という処置と夏場の高温が実生の生育にストレスを与えたが、半数以上の実生が生き残った。
【実施例9】
【0059】
2000年および2001年の3月下旬〜4月中旬にかけて、以下に示す6組合わせで交配を行った。(1)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×ハヤトミツバツツジ(イワツツジ、鹿児島県牧園町産、鉢植え)(2)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×コバノミツバツツジ(熊本県市房山産、鉢植え)(3)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×サクラツツジ(鹿児島県屋久島産、鉢植え)(4)ハヤトミツバツツジ(イワツツジ、鹿児島県牧園町産、鉢植え)×コバノミツバツツジ(熊本県市房山産、鉢植え)(5)ハヤトミツバツツジ(イワツツジ、鹿児島県牧園町産、鉢植え)×サクラツツジ(鹿児島県屋久島産、鉢植え)(6)コバノミツバツツジ(熊本県市房山産、鉢植え)×サクラツツジ(鹿児島県屋久島産、鉢植え)。
【0060】
交配花数、結さく数(結さく率)、総種子数、播種数、発芽率を調査した。その結果を表4に示す。なお、開花期の異なる種間の交配の場合、開花期の早いものを花粉親とし、遅いものを種子親とした。これら6組合わせの交配は、貯蔵花粉を用いて3月下旬〜4月中旬にかけて行った。表4の交配日は2000年3月31日〜4月22日、結さく調査日は2000年9月上旬、採さく日は2000年11月上旬、播種日は2000年12月1日〜4日、発芽率調査日は2001年3月29日〜4月1日である。
【0061】
表5の交配日は2001年3月29日〜4月15日、結さく調査日は2001年10月下旬、採さく日は2001年11月中旬、播種日は2001年12月5日〜9日、発芽率調査日は2002年4月2日〜5日である。また、生存率の推移を調査した。2000年度交配種子について、2001年3月下旬〜4月上旬にかけて行ったプラントベッドへの第1回目の移植後、3カ月間に亘って高温処理した実生の生存率を表6に示した。更に、2002年3月下旬〜4月上旬にかけて行ったビニルポットへの第2回目の移植後の生存率の結果を表7に示した。表6の( )内の生存率は、2001年4月1日の移植数を100%として表示した。移植日は2001年3月29日〜4月1日(第1回目移植)であり、移植後3ヶ月間高温処理した。生存率調査日は表6に示す調査月のほぼ末日とした。表7の( )内の生存率は、2002年4月1日の移植数を100%として表示した。移植日は2002年3月26日〜29日
(2回目移植)であり、生存率調査日は表7に示す調査月のほぼ末日とした。
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】
表4(2000年交配)と表5(2001年交配)の結果、表5に示すコバノミツバツツジ×サクラツツジ交配組合わせでの42%を除いては、いずれの年度および交配組合わせでも、ほぼ50%から90%に及ぶ結さく率を示し、組合わせの如何による交配不和合は認められなかった。発芽率は、サクラツツジを片親に用いた交配組合わせでいずれも40%以下と、やや低い値であったが、他の交配組合わせでは58%以上の値を示した。特に、オンツツジ×ハヤトミツバツツジの組合わせと表5のコバノミツバツツジ×ハヤトミツバツツジの組合わせで、70%以上の高い発芽率であった。
【0065】
【表6】
【0066】
【表7】
【0067】
2001年3月下旬〜4月上旬にかけて行ったプラントベッドへの第1回目の移植後、3カ月間に亘って高温処理した実生の生存率を表6に示した。5月末日にはすべての交配組合わせで75%以上を示したものが、9月末日には51〜61%へと激減した。その後も生存率は漸減し、翌年3月末日には35〜48%の値を示した(表6)。これに対し、表7に示した2002年3月下旬〜4月上旬にかけて行ったビニルポットへの第2回目の移植では、移植後の生存率の低下はさほど大きくなく、各交配組合わせは、2002年6月末日に78〜88%であったものが、2003年3月には62〜82%に低下するにとどまった(表7)。
【実施例10】
【0068】
2001年の3月下旬〜4月中旬にかけて、以下に示す6組合わせで交配を行った。(1)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×ハヤトミツバツツジ(イワツツジ、鹿児島県牧園町産、鉢植え)(2)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×コバノミツバツツジ(熊本県市房山産、鉢植え)(3)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×サクラツツジ(鹿児島県屋久島産、鉢植え)(4)ハヤトミツバツツジ(イワツツジ、鹿児島県牧園町産、鉢植え)×サクラツツジ(鹿児島県屋久島産、鉢植え)コバノミツバツツジ(熊本県市房山産、鉢植え)(5)コバノミツバツツジ(熊本県市房山産、鉢植え)×ハヤトミツバツツジ(イワツツジ、鹿児島県牧園町産、鉢植え)(6)コバノミツバツツジ(熊本県市房山産、鉢植え)×サクラツツジ(鹿児島県屋久島産、鉢植え)。これらの交配種子については、移植の操作を行わず、セルトレイにて直接生育させた実生をセルトレイの1穴当たり1〜2個体に実生数を調整し、2002年4月上旬から3カ月間に亘って高温処理した。その生存率を表8に示した。表8の( )内の生存率は、2002年4月1日の調整した実生数を100%として表示した。実生数調整日は2002年4月2日〜5日で、調整後3ヶ月間高温処理を行った。生存率調査日は表8に示す調査月のほぼ末日とした。
【0069】
【表8】
【0070】
表8の結果、6月末日にすべての交配組合わせで78〜88%の値を示したものが、翌年3月末日には62〜82%と、生存率はあまり低下しなかった。この結果、移植を行うことにより生存率が低下したことから、生存率の低下の原因としては、高温環境よりむしろ移植の処理がもたらすことを見出した。
【実施例11】
【0071】
1997年3月下旬〜4月中旬にかけて行った、以下に示す3組合わせの、(1)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×ハヤトミツバツツジ(イワツツジ、鹿児島県牧園町産、鉢植え)、(2)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×コバノミツバツツジ(熊本県市房山産、鉢植え)、(3)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×サクラツツジ(鹿児島県屋久島産、鉢植え)の、交配で生存した391個体のF1雑種について、常緑性(冬期の落葉性)を調査した結果を図1に示す。
【0072】
図1に示すように、オンツツジ×サクラツツジ交配F1実生では、調査した101個体すべてが常緑性を有することを見出した。オンツツジ×ハヤトミツバツツジ交配F1実生は222個体中182個体(82%)が、また、オンツツジ×コバノミツバツツジ交配F1実生は68個体中6個体(9%)が常緑性を示すことを見出した。サクラツツジを片親に用いた場合の交配F1実生が100%常緑性を有したので、サクラツツジの持つ常緑性が優性形質であり、サクラツツジを用いた交雑後代に常緑性の遺伝形質が受け継がれた。
【実施例12】
【0073】
1997年3月下旬〜4月中旬にかけて行った、以下に示す3組合わせの、(1)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×ハヤトミツバツツジ(イワツツジ、鹿児島県牧園町産、鉢植え)、(2)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×コバノミツバツツジ(熊本県市房山産、鉢植え)、(3)オンツツジ(熊本県天草産、鉢植え)×サクラツツジ(鹿児島県屋久島産、鉢植え)の、2003年3月に開花に至った常緑性のツツジの、花弁の花色を調査した。花弁を採集し、色彩計で測色し、L*、a*、b*値を求め、色相角(h)を算出した。より詳しくは、2003年3月中に開花した、オンツツジ×ハヤトミツバツツジの交配で58個体、オンツツジ×コバノミツバツツジの交配で17個体、オンツツジ×サクラツツジの交配で17個体、ミツバツツジ×ハヤトミツバツツジの交配で9個体の、合計101個体の花色を調査した。
【0074】
オンツツジ×ハヤトミツバツツジ交配実生について、交配親のオンツツジの花弁は、a*値=47.9、b*値=5.4を示し、ハヤトミツバツツジの花弁は、a*値=39.8、b*値=−25.2を示した。F1交配実生は、a*値で43.5〜68.8、b*値で−17.2〜−27.5の範囲に収まる個体分布を示し、花色を現わす色相角h(図2で、横軸であるa*軸と縦軸であるb*軸の交点、即ち、0を中心として、例えばオンツツジがプロットされた(◎)に向かって直線を引き、その直線とa*軸がなす角度を表す、以下同じ)は、交配親の色相角の範疇に入る分布を示した。また、交配実生の色度分布は、オンツツジよりハヤトミツバツツジに偏り、F1雑種がハヤトミツバツツジに似た花色を持つことがわかる(図2)。
【0075】
オンツツジ×コバノミツバツツジ交配実生について、一方の交配親のコバノミツバツツジの花弁は、a*値=57.5、b*値=−23.8を示す。F1交配実生は、a*値で35.2〜62.8、b*値で−13.7〜−23.8の範囲に収まる個体分布を示し、花色を現わす色相角hについては、コバノミツバツツジの色相角を超えて分布するものと、交配親の色相角の範疇に入る分布を示すものがあった。また、交配実生の色度分布は、オンツツジよりコバノミツバツツジに偏り、F1雑種がコバノミツバツツジに似た花色を持つことがわかる。
【0076】
オンツツジ×サクラツツジ交配実生について、一方の交配親のサクラツツジの花弁は、a*値=4.7、b*値=−2.5を示す。F1交配実生は、a*値で15.2〜57.5、b*値で−6.9〜−21.8の範囲に収まる個体分布を示し、花色を現わす色相角hは、交配親の色相角の範疇に入る分布を示した。また、交配実生の色相分布は、オンツツジよりサクラツツジに偏り、F1雑種がサクラツツジに似た花色を持つことがわかる。
【実施例13】
【0077】
1997年、2000年および2001年の3月下旬〜4月中旬にかけて、以下に示す5組合わせで交配を行った。(1)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「今猩々」(朱赤色、二重咲き、露地植え)(2)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「宮城野」(紫紅色、二重咲き、鉢植え)(3)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「裾濃の糸」(紫色、一重咲き、鉢植え)(4)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「麒麟」(桃色、二重咲き、鉢植え)(5)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「暮の雪」(白色、二重咲き、鉢植)。
【0078】
いずれの交配組合せについても、4月中下旬に開花するクルメツツジを花粉親にし、5月上旬に遅れて開花するマルバサツキを種子親とした。花粉は、開花の早いクルメツツジの小花から採取した葯を薬包紙に包み、シリカゲルを入れたガラスビンに入れ、まず4℃で3日間乾燥し、次いで−20℃で冷凍貯蔵したものを用いた。交配は無加温のガラス室内で行い、まず花弁と雄蕊を取り除き、2〜3日後に雌蕊の先端に粘液が充分に分泌したことを確かめ、貯蔵しておいた花粉を柱頭に塗布した。交配後ほぼ6カ月目、果皮が褐色に変化し充分に熟したさく果を採取し、室内で乾燥させ、開さくさせた。次いで、得られた種子を薬包紙に包み、シリカゲルを入れたガラスビンに入れ4℃で播種時まで保存した。
【0079】
播種はジフィーポットに播種した。1998年3月24日〜4月1日にかけて第1回目の移植を、また、1999年3月26日〜29日にかけて第2回目の移植を、さらに、2001年3月18日〜22日にかけて第3回目の移植を行った。交配花数、結さく数(結さく率)、種子数、播種数、発芽率を調査した。その結果を表9、表10および表11に示す。
【0080】
表9について、交配日は1997年6月6日〜25日、結さく調査日は1997年11月下旬、採さく日は1997年12月5日、播種日は1997年12月8日〜10日、発芽率調査日は1998年3月24日〜4月1日であった。表10について、交配日は2000年5月31日〜6月15日、結さく調査日は2000年11月下旬、採さく日は2000年11月21日、播種日は2000年11月29日〜12月2日、発芽率調査日は2001年3月27日〜29日であった。表11について、交配日は2001年5月25日〜6月19日、結さく調査日は2001年11月中旬、採さく日は2001年11月28日、播種日は2001年12月3日〜8日、発芽率調査日は2002年3月31日〜4月4日であった。なお、表10と表11に示す5組合わせの交配は、貯蔵花粉を用いて5月下旬〜6月中旬にかけて行ったものである。
【0081】
【表9】
【0082】
表9に示す5つの組合わせについて、ほぼ50%から80%に及ぶ結さく率を示し、組合わせの如何による交配不和合は認められなかった。発芽率は、マルバサツキ×クルメツツジ「暮の雪」の交配組合わせで39.8%、また、マルバサツキ×クルメツツジ「裾濃の糸」の交配組合わせで42.5%と、やや低い値を示したが、他の3交配組合わせでは、ほぼ50%から60%の値を示した(表9)。結さく率の高かったマルバサツキ×クルメツツジ「宮城野」の交配組合わせは53%の発芽率を示した。
【0083】
【表10】
【0084】
【表11】
【0085】
表10と表11に示すように、マルバサツキ×クルメツツジ「裾濃の糸」の交配組合わせで55%と、やや低い結さく率を示した例もあるが、他は、いずれの年度および交配組合わせでも、ほぼ60%から75%に及ぶ結さく率を示し、組合わせの如何による交配不和合は認められなかった。発芽率は、表10のマルバサツキ×クルメツツジ「宮城野」と表11のマルバサツキ×クルメツツジ「裾濃の糸」の組合わせでいずれも50%以下と、やや低い値を示したが、他
の交配組合わせでは、60%以上の値を示した(表10、表11)。花粉親にクルメツツジを用いた場合、これらは品種レベルで軌(揆)を一つにしていることから、交配組合わせ間で結さく率、発芽率ともに似た値を示すことを見出した。
【実施例14】
【0086】
1997年、2000年および2001年の3月下旬〜4月中旬にかけて行った次の5つの組合わせで交配の、(1)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「今猩々」(朱赤色、二重咲き、露地植え)(2)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「宮城野」(紫紅色、二重咲き、鉢植え)(3)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「裾濃の糸」(紫色、一重咲き、鉢植え)(4)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「麒麟」(桃色、二重咲き、鉢植え)(5)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「暮の雪」(白色、二重咲き、鉢植)の、生存率の推移を調査した。1997年度交配種子について、1998年と1999年の、いずれも3月下旬〜4月上旬にかけて行った第1回目と第2回目の移植後の実生の生存率の推移を調査し、その結果を表12と表13に示した。第1回目の移植では1プラントベッド当たり120個体の実生を植え込んだ。その1年後、第2回目の移植では1個体ずつビニルポットに植え付けた。第1回目の移植を示す表12の( )内の生存率は、1998年4月1日の移植数を100%として表示した。移植日は1998年3月24日〜4月1日に第1回目移植を行い、生存率調査日は表12に示す調査月のほぼ末日とした。第2回目の移植を示す表13の( )内の生存率は、2002年4月1日の移植数を100%として表示した。移植日は1999年3月26日〜29日に第2回目の移植を行い、生存率調査日は表13に示す調査月のほぼ末日とした。
【0087】
【表12】
【0088】
【表13】
【0089】
第1回目の移植(表12)では、移植後2カ月で、5交配組合わせは88%以上のきわめて高い生存率を示したが、移植後6カ月を経過した9月末日には、すべて66%以下と生存率は激減した。また、第2回目の移植(表13)では、移植後3カ月で、5交配組合わせは75%以上の高い生存率を示したが、移植後6カ月を経過した9月末日には、すべて69%以下と生存率は低下した。しかしいずれの年度も、10月以降は生存率は漸減するにとどまった。移植という処置と夏場の高温が実生の生育にストレスを与えたが、この結果から生存したF1実生が耐暑性の遺伝形質を獲得することを見出した。
【実施例15】
【0090】
5つの組合わせで交配の、(1)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「今猩々」(朱赤色、二重咲き、露地植え)(2)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「宮城野」(紫紅色、二重咲き、鉢植え)(3)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「裾濃の糸」(紫色、一重咲き、鉢植え)(4)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「麒麟」(桃色、二重咲き、鉢植え)(5)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「暮の雪」(白色、二重咲き、鉢植)の、2000年度交配種子について、2001年3月下旬に行ったプラントベッドへの第1回目の移植後、3カ月間に亘って高温処理した実生の生存率を調査し、その結果を表14に示した。引き続き2002年3月下旬にビニルポットへの第2回目の移植を行い、生存率を調査し、その結果を表15に示した。表14の( )内の生存率は、2001年4月1日の移植数を100%として表示した。移植日は2001年3月27日〜29日に第1回目移植を行い、移植後3ヶ月間高温処理を行った。生存率調査日は表14に示す調査月のほぼ末日とした。また、表15の( )内の生存率は、2002年4月1日の移植数を100%として表示した。移植日は2002年3月24日〜27日に第2回目の移植を行い、生存率調査日は表15に示す調査月のほぼ末日とした。
【0091】
【表14】
【0092】
【表15】
【0093】
第1回目の移植(表14)では、5月末日にはすべての交配組合わせで78%以上を示したものが、9月末日には40〜42%へと激減した。しかし、その後は生存率の急な低下は見られず、翌年3月末日には35〜42%の値を示した(表14)。第2回目の移植(表15)では、移植後3カ月で、5交配組合わせは74%以上の高い生存率を示したが、移植後6カ月を経過した9月末日には、すべて55%以下と生存率は激減した。しかし、その後は生存率はあまり低下せず、翌年3月末日には32〜45%の値を示した(表15)。移植に加え、高温処理と夏期の高温が、耐暑性の篩いとして充分に効いていると考え、この結果から生存したF1実生が耐暑性の遺伝形質を獲得することを見出した。
【実施例16】
【0094】
5つの組合わせで交配の、(1)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「今猩々」(朱赤色、二重咲き、露地植え)(2)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「宮城野」(紫紅色、二重咲き、鉢植え)(3)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「裾濃の糸」(紫色、一重咲き、鉢植え)(4)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「麒麟」(桃色、二重咲き、鉢植え)(5)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「暮の雪」(白色、二重咲き、鉢植)の、2001年度交配種子について、移植を行わずにセルトレイで生育させた実生を1穴当たり1〜2個体に実生数を調整した後、2002年4月上旬から3カ月間に亘って高温処理した場合の生存率を調査した。その結果を表16に示した。表16の( )内の生存率は、2002年4月1日の調整した実生数を100%として表示した。移植日は2002年3月24日〜27日に第2回目の移植を行い、移植後3ヶ月間高温処理を行った。生存率調査日は表16に示す調査月のほぼ末日とした。
【0095】
【表16】
【0096】
表16に示すように、5月末日にすべての交配組合わせで89〜98%の高い生存率を示したが、翌年3月末日には62〜72%と、さほど生存率は低下しなかった。生存率の低下は、高温よりむしろ移植という処置がもたらすものと考えられた。この結果、生存したF1実生が耐暑性の遺伝形質を獲得することを見出した。
【実施例17】
【0097】
5つの組合わせで交配の、(1)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「今猩々」(朱赤色、二重咲き、露地植え)(2)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「宮城野」(紫紅色、二重咲き、鉢植え)(3)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「裾濃の糸」(紫色、一重咲き、鉢植え)(4)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「麒麟」(桃色、二重咲き、鉢植え)(5)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「暮の雪」(白色、二重咲き、鉢植)の、耐暑性の遺伝形質を獲得し、生存したF1実生の二重咲き性について調査した。その結果を図2に示す。
【0098】
図2には、マルバサツキ×クルメツツジ「今猩々」の組合わせで58個体中34個体、マルバサツキ×クルメツツジ「宮城野」の組合わせで124個体中57個体、マルバサツキ×クルメツツジ「麒麟」の組合わせで68個体中40個体、マルバサツキ×クルメツツジ「暮の雪」の組合わせで28個体中14個体の二重咲き性F1が開花した。開花個体に占める二重咲き花の割合は、マルバサツキ×クルメツツジ「今猩々」の組合わせで58%、マルバサツキ×クルメツツジ「宮城野」の組合わせで46%、マルバサツキ×クルメツツジ「麒麟」の組合わせで58%、マルバサツキ×クルメツツジ「暮の雪」の組合わせで50%であった。また、マルバサツキ×クルメツツジ「裾濃の糸」の組合わせでは、開花した47個体はすべてが一重咲きであった(図5)。前記の交配組合わせでは、花粉親に用いた「今猩々」、「宮城野」、「麒麟」、「暮の雪」はすべて二重咲きで、「裾濃の糸」は一重咲きである。つまり、F1での二重咲き花の出現割合から、二重咲き性は優性形質で、花粉親に用いた二重咲き品種は、二重咲き性に関してヘテロの遺伝子型を持つことを見出した。結果として、二重咲き品種を花粉親に用いると、50%の確率で二重咲きの花が得られることがわかった。
【実施例18】
【0099】
5つの組合わせで交配の、(1)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「今猩々」(朱赤色、二重咲き、露地植え)(2)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「宮城野」(紫紅色、二重咲き、鉢植え)(3)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「裾濃の糸」(紫色、一重咲き、鉢植え)(4)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「麒麟」(桃色、二重咲き、鉢植え)(5)マルバサツキ(鹿児島県中之島産、鉢植え)×クルメツツジ「暮の雪」(白色、二重咲き、鉢植)の、1997年度交配種子について、開花した321個体の耐暑性のツツジの、花弁の花色を調査した。花弁を採集し、色彩計で測色し、L*、a*、b*値を求め、色相角(h)を算出した。
【0100】
マルバサツキ×クルメツツジ「今猩々」の交配実生について、まず交配親のマルバサツキの花弁は、a*値=28.4、b*値=−23.2を示し、「今猩々」の花弁は、a*値=58.3、b*値=27.5を示す。交配実生は、a*値で42.4〜68.0、b*値で−2.2〜−27.8の範囲に収まる個体分布を示し、花色を現わす色相角hは、交配親の色相角の範疇に入る分布を示した。また、交配実生の色度については、「今猩々」よりマルバサツキに分布は偏り、F1雑種がマルバサツキに似た花色を持つことがわかる(図6)。
【0101】
マルバサツキ×クルメツツジ「宮城野」の交配実生について、一方の交配親「宮城野」の花弁は、a*値=66.3、b*値=3.0を示す。交配実生は、a*値で43.4〜68.7、b*値で−2.3〜−26.8の範囲に収まる個体分布を示し、花色を現わす色相角hは、交配親の色相角の範疇に入る分布を示した。また、交配実生の色度については、「宮城野」からマルバサツキに及ぶ幅広い分布を示したが、どちらかといえばマルバサツキに分布は偏り、マルバサツキに似た花色を持つF1雑種が多く輩出されたことがわかる(図7)。
【0102】
マルバサツキ×クルメツツジ「裾濃の糸」の交配実生について、一方の交配親「裾濃の糸」の花弁は、a*値=57.5、b*値=−17.8を示す。交配実生は、a*値で48.0〜66.3、b*値で−8.2〜−28.0の範囲に収まる個体分布を示し、花色を現わす色相角hは、交配親の色相角の範疇に入る分布を示すものと、少数ではあるが「裾濃の糸」より小さな角度を示すものがあった。また、交配実生の色度については、マルバサツキより「裾濃の糸」に偏り、F1雑種が「裾濃の糸」に似た花色を持つことがわかる(図8)。
【0103】
マルバサツキ×クルメツツジ「麒麟」の交配実生について、一方の交配親「麒麟」の花弁は、a*値=42.3、b*値=2.5を示す。交配実生は、a*値で29.1〜62.0、b*値で−8.2〜−23.1の範囲に収まる個体分布を示し、花色
を現わす色相角hは、交配親の色相角の範疇に入る分布を示した。また、交配実生の色度については、マルバサツキに分布は偏り、F1雑種がマルバサツキに似た花色を持つことがわかる(図9)。
【0104】
マルバサツキ×クルメツツジ「暮の雪」の交配実生について、一方の交配親「暮の雪」の花弁は、a*値=−4.9、b*値=7.2を示す。交配実生は、a*値で36.3〜57.7、b*値で−16.8〜−26.1の範囲に収まる個体分布を示し、花色を現わす色相角hは、交配親の色相角の範疇に入る分布を示した。また、交配実生の色度については、マルバサツキに分布は偏り、F1雑種がマルバサツキに似た花色を持つことがわかる(図10)。
【実施例19】
【0105】
1997年8月下旬〜9月中旬にかけて、以下に示す5組合わせで交配を行った。(1)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「大紫」(紫紅色、露地植え)(2)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「曙」(桃色、露地植え)(3)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「白妙」(白色、露地植え)(4)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「正之進」(朱赤色、露地植え)(5)キンモウツツジ(鉢植え)×久留米大輪ツツジ「御代の栄」(ヒラドツツジ「白妙」×アザレア「王冠」の雑種、淡桃色、露地植え)1997年4月中下旬に開花したヒラドツツジを花粉親にし、8月下旬に開花するキンモウツツジを種子親とした。花粉は、開花の早いヒラドツツジの小花から採取した葯を薬包紙に包み、シリカゲルを入れたガラスビンに入れ、まず4℃で3日間乾燥し、次いで−20℃で冷凍貯蔵したものを用いた。交配は無加温のガラス室内で行い、まず花弁と雄蕊を取り除き、2〜3日後に雌蕊の先端に粘液が充分に分泌したことを確かめ、貯蔵しておいた花粉を柱頭に塗布した。交配後ほぼ4カ月目、果皮が褐色に変化し充分に熟したさく果を採取し、室内で乾燥させ、開さくさせた。次いで、得られた種子を薬包紙に包み、シリカゲルを入れたガラスビンに入れ4℃で播種時まで保存した。
【0106】
本交配種子を1998年1月18日から20日にかけて、ジフィーポット(径8.5cm)に、赤玉土、鹿沼土、ボラ土のいずれも細粒を、1:1:1の割合で混合した用土を7分目まで入れ、さらにその上に細かく砕いた水苔を0.5cmほど敷いたものに播種した。なお、用土はあらかじめベンレート(商品名:デュポン株式会社)1000倍希釈液とスミチオン乳剤(商品名:九州三共株式会社)1500倍希釈液で滅菌と殺虫処理を行った。播種数は1ポット当たり100粒ずつとし、播種後充分に潅水し、ガラス室内に設置した25℃に保った透明ビニルで被覆した枠内に搬入した。播種後、ほぼ20日で発芽が認められるが、発芽直後から1998年3月下旬の移植時まで、植物育成用蛍光灯を用いて深夜4時間点灯し(午後10時〜午前2時)補光した。また、発芽後は、N:P:Kの比率を4:4:3の割合に調製した発酵油かす液肥を、週1回1000倍希釈濃度で潅水をかねて与えた。本交配について、交配花数、結さく数(結さく率)、種子数、播種数、発芽率を調査した。その結果を表17に示す。表17の交配日は1997年8月31日〜9月18日、結さく調査日は1997年12月上旬、採さく日は1997年12月24日〜1998年1月5日、播種日は1998年1月18日〜20日、発芽率調査日は1998年3月27日〜4月3日であった。
【0107】
【表17】
【0108】
表17に示す5つの組合わせのキンモウツツジ×ヒラドツツジ系の交配は、ほぼ42%から52%に及ぶ結さく率を示し、組合わせの如何による交配不和合は認められなかった。発芽率は、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「曙」、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「白妙」の交配組合わせでほぼ65%、また、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「大紫」、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「正之進」、キンモウツツジ×久留米大輪ツツジ「御代の栄」の交配組合わせで73%から88%を示した(表17)。
【実施例20】
【0109】
1997年8月下旬〜9月中旬にかけて、交配を行った5つの組合わせの、(1)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「大紫」(紫紅色、露地植え)(2)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「曙」(桃色、露地植え)(3)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「白妙」(白色、露地植え)(4)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「正之進」(朱赤色、露地植え)(5)キンモウツツジ(鉢植え)×久留米大輪ツツジ「御代の栄」(ヒラドツツジ「白妙」×アザレア「王冠」の雑種、淡桃色、露地植え)の、後代F1実生の生存率を調査した。実生は1998年3月下旬〜4月上旬にかけて第1回目の移植をプラントベッドに行い、1999年3月下旬〜4月上旬にかけて第2回目の移植を9cmのビニルポットに行った。さらに、2001年3月下旬〜4月上旬にかけて第3回目の移植を15cmのビニルポットに行った。1998年4月から2003年3月までのF1実生の生存率を表18に示す。表18の( )内の生存率は、1998年4月1日の移植数を100%として表示した。移植日は1998年3月27日〜4月3日に第1回目の移植を行い、1999年3月28日〜4月3日に第2回目の移植を行い、2001年3月30日〜4月2日に第3回目の移植を行った。生存率調査日は表18に示す調査月のほぼ末日とした。
【0110】
【表18】
【0111】
表18に示す、第1回目の移植から1年後の第2回目の移植時の生存率は、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「白妙」の組合わせで28%と、かなり低かった例を除いて、他の組合わせではほぼ50%から57%を示した。2000年4月には、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「白妙」で18%と、さらに生存率は低下したが、他の組合わせでも32%から35%と、同様に低下した。その後、2001年3月下旬〜4月上旬にかけて行った第3回目の移植を経て、2003年3月までは、生存率はわずかに低下するにとどまった。キンモウツツジ×ヒラドツツジ「白妙」で12%、他の組合わせで22%〜30%の生存率を示した。
【実施例21】
【0112】
2000年8月下旬〜9月中旬にかけて、以下に示す5組合わせで交配を行った。(1)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「大紫」(紫紅色、露地植え)(2)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「曙」(桃色、露地植え)(3)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「白妙」(白色、露地植え)(4)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「正之進」(朱赤色、露地植え)(5)キンモウツツジ(鉢植え)×久留米大輪ツツジ「御代の栄」(ヒラドツツジ「白妙」×アザレア「王冠」の雑種、淡桃色、露地植え)2000年4月中下旬に開花したヒラドツツジを花粉親にし、8月下旬に開花するキンモウツツジを種子親とした。花粉は、開花の早いヒラドツツジの小花から採取した葯を薬包紙に包み、シリカゲルを入れたガラスビンに入れ、まず4℃で3日間乾燥し、次いで−20℃で冷凍貯蔵したものを用いた。交配は無加温のガラス室内で行い、まず花弁と雄蕊を取り除き、2〜3日後に雌蕊の先端に粘液が充分に分泌したことを確かめ、貯蔵しておいた花粉を柱頭に塗布した。交配後ほぼ4カ月目、果皮が褐色に変化し充分に熟したさく果を採取し、室内で乾燥させ、開さくさせた。次いで、得られた種子を薬包紙に包み、シリカゲルを入れたガラスビンに入れ4℃で播種時まで保存した。
【0113】
本交配種子を2000年1月21日から24日にかけて、ジフィーポット(径8.5cm)に、赤玉土、鹿沼土、ボラ土のいずれも細粒を、1:1:1の割合で混合した用土を7分目まで入れ、さらにその上に細かく砕いた水苔を0.5cmほど敷いたものに播種した。なお、用土はあらかじめベンレート(商品名:デュポン株式会社)1000倍希釈液とスミチオン乳剤(商品名:九州三共株式会社)1500倍希釈液で滅菌と殺虫処理を行った。播種数は1ポット当たり100粒ずつとし、播種後充分に潅水し、ガラス室内に設置した25℃に保った透明ビニルで被覆した枠内に搬入した。播種後、ほぼ20日で発芽が認められるが、発芽直後から2001年3月下旬の移植時まで、植物育成用蛍光灯を用いて深夜4時間点灯し(午後10時〜午前2時)補光した。また、発芽後は、N:P:Kの比率を4:4:3の割合に調製した発酵油かす液肥を、週1回1000倍希釈濃度で潅水をかねて与えた。本交配について、交配花数、結さく数(結さく率)、種子数、播種数、発芽率を調査した。その結果を表19に示す。表19の交配日は2000年8月28日〜9月16日、結さく調査日は2000年12月上旬、採さく日は2000年12月21〜24日、播種日は2001年1月21日〜24日、発芽率調査日は2001年3月26日〜29日であった。
【0114】
【表19】
【0115】
表19に示す5つの組合わせの交配は、ほぼ60%から75%に及ぶ結さく率を示し、組合わせの如何による交配不和合は認められなかった。発芽率は、すべての交配組合わせで65%以上と高かった。
【実施例22】
【0116】
2000年8月下旬〜9月中旬にかけて、交配を行った5つの組合わせの、(1)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「大紫」(紫紅色、露地植え)(2)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「曙」(桃色、露地植え)(3)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「白妙」(白色、露地植え)(4)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「正之進」(朱赤色、露地植え)(5)キンモウツツジ(鉢植え)×久留米大輪ツツジ「御代の栄」(ヒラドツツジ「白妙」×アザレア「王冠」の雑種、淡桃色、露地植え)の、後代F1実生の生存率を調査した。実生は2001年3月下旬〜4月上旬にかけて第1回目の移植をプラントベッドに行い、2002年3月下旬に第2回目の移植を9cmのビニルポットに行った。2001年4月から2003年3月までのF1実生の生存率を表20に示す。表20の( )内の生存率は、2001年4月1日の移植数を100%として表示した。移植日は2001年3月29日〜4月3日に第1回目の移植を行い、2002年3月25日〜4月1日に第2回目の移植を行った。生存率調査日は表20に示す調査月のほぼ末日とした。
【0117】
【表20】
【0118】
表20に示す、第1回目の移植から1年後の第2回目の移植時の生存率は、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「白妙」の組合わせで49%と、50%に満たなかったが、他の組合わせでは、54%から59%を示した。2003年3月には、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「白妙」で32%と、さらに生存率は低下したが、他の組合わせでは、キンモウツツジ×久留米大輪ツツジ「御代の栄」で53%と、生存率を維持した組合わせと、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「曙」、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「大紫」、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「正之進」の41%から47%と、やや生存率の低下した組合わせがあった。
【実施例23】
【0119】
1997年8月下旬〜9月中旬にかけて、交配を行った5つの組合わせの、(1)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「大紫」(紫紅色、露地植え)(2)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「曙」(桃色、露地植え)(3)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「白妙」(白色、露地植え)(4)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「正之進」(朱赤色、露地植え)(5)キンモウツツジ(鉢植え)×久留米大輪ツツジ「御代の栄」(ヒラドツツジ「白妙」×アザレア「王冠」の雑種、淡桃色、露地植え)の、後代F1実生の秋咲きの開花性を調査した。その結果、F1交配実生は、2001年8月には開花樹齢に達し、9月には開花し始めた。2003年1月までに秋季〜冬期に亘って開花した個体は、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「大紫」交配実生で26個体中20個体(開花率77%)、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「曙」交配実生で32個体中24個体(開花率75%)、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「白妙」交配実生で14個体中13個体(開花率93%)、キンモウツツジ×ヒラドツツジ「正之進」交配実生で30個体中26個体(開花率87%)、キンモウツツジ×久留米大輪ツツジ「御代の栄」交配実生で73個体中60個体(開花率82%)であった。開花個体の実生個体群に占める割合(開花率)はそれぞれ75%以上と、高率で秋咲き性を示した。
【実施例24】
【0120】
1997年8月下旬〜9月中旬にかけて、交配を行った5つの組合わせの、(1)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「大紫」(紫紅色、露地植え)(2)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「曙」(桃色、露地植え)(3)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「白妙」(白色、露地植え)(4)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「正之進」(朱赤色、露地植え)(5)キンモウツツジ(鉢植え)×久留米大輪ツツジ「御代の栄」(ヒラドツツジ「白妙」×アザレア「王冠」の雑種、淡桃色、露地植え)の、後代F1実生の秋咲きの開花した株(個体)数を調査した(図11)。開花は2001年9月に始まり、11〜12月に最大数を数え、2002年3月にはいわゆる春期開花のピークを迎えた。一方、2002年は7月に開花し始め、10〜12月にかけて最大数を数えた。秋(冬)期開花のピークが前年よりやや早まる傾向を示した。この結果、キンモウツツジを種子親に用いた交配から、高率で夏期〜冬期開花性のF1後代の、四季咲き性のツツジを得ることができる。
【実施例25】
【0121】
1997年8月下旬〜9月中旬にかけて、交配を行った5つの組合わせの、(1)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「大紫」(紫紅色、露地植え)(2)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「曙」(桃色、露地植え)(3)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「白妙」(白色、露地植え)(4)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「正之進」(朱赤色、露地植え)(5)キンモウツツジ(鉢植え)×久留米大輪ツツジ「御代の栄」(ヒラドツツジ「白妙」×アザレア「王冠」の雑種、淡桃色、露地植え)の、後代F1実生の秋咲きの開花した株(個体)数を調査した(図12)。開花は2001年9月に始まり、11〜12月に最大数を数え、2002年と2003年は共に11月に最大数である103個体と116個体を数えた。2002年から毎年3月にはいわゆる春期開花のピークを迎えた。この結果、キンモウツツジを種子親に用いた交配から、高率で夏期〜冬期開花性のF1後代の、四季咲き性のツツジを得ることができ、かつ、これらの四季咲き性のツツジは毎年四季咲きすることがわかる。
【実施例26】
【0122】
1997年8月下旬〜9月中旬にかけて、交配を行った5つの組合わせの、(1)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「大紫」(紫紅色、露地植え)(2)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「曙」(桃色、露地植え)(3)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「白妙」(白色、露地植え)(4)キンモウツツジ(鉢植え)×ヒラドツツジ「正之進」(朱赤色、露地植え)
(5)キンモウツツジ(鉢植え)×久留米大輪ツツジ「御代の栄」(ヒラドツツジ「白妙」×アザレア「王冠」の雑種、淡桃色、露地植え)の、
開花した143個体の耐暑性のツツジの、花弁の花色を調査した。花弁を採集し、色彩計で測色し、L*、a*、b*値を求め、色相角(h)を算出した。
【0123】
キンモウツツジ×ヒラドツツジ「大紫」の交配実生について、まず交配親キンモウツツジの花弁は、a*値=54.1、b*値=25.3で、「大紫」の花弁は、a*値=55.8、b*値=−23.0である。交配実生は、a*値で48.1〜65.0、b*値で18.2〜−20.1の範囲に収まる個体分布を示し、花色を現わす色相角hは、交配親の色相角の範疇に入る分布を示した。また、交配実生の色度については、キンモウツツジと「大紫」のほぼ中間に広く分布し、F1雑種には、キンモウツツジに似た花色のもの、「大紫」に似た花色のもの、両者の中間の花色を示すものが出現した(図13)。
【0124】
キンモウツツジ×ヒラドツツジ「曙」の交配実生について、一方の交配親「曙」の花弁は、a*値=29.9、b*値=−8.3をである。交配実生は、a*値で47.7〜65.0、b*値で23.4〜−15.8の範囲に収まる個体分布を示し、花色を現わす色相角hは、交配親の色相角の範疇に入る分布を示した。また、交配実生の色度については、キンモウツツジから「曙」に及ぶ幅広い分布を示し、キンモウツツジに似た花色のもの、「曙」に似た花色のもの、両者の中間の花色を示すものが出現した(図14)。
【0125】
キンモウツツジ×ヒラドツツジ「白妙」の交配実生について、一方の交配親「白妙」の花弁は、a*値=−1.7、b*値=4.9である。交配実生は、a*値で44.8〜60.1、b*値で19.8〜−16.4の範囲に収まる個体分布を示し、花色を現わす色相角hは、交配親の色相角の範疇にまったく入らない分布を示した。また、交配実生の色度については、キンモウツツジに似た朱赤の花色のものから紫紅のものまでの、連続的な分布を示した(図15)。
【0126】
キンモウツツジ×ヒラドツツジ「正之進」の交配実生について、一方の交配親「正之進」の花弁は、a*値=58.0、b*値=18.4である。交配実生は、a*値で49.8〜58.1、b*値で10.8〜22.7の範囲に収まる個体分布を示し、花色を現わす色相角hは、交配親の色相角の範疇に入らないものが半数以上出現した。また、交配実生の色度については、「正之進」に分布は偏っており、F1雑種は「正之進」に似た花色を持つことがわかる(図16)。
【0127】
キンモウツツジ×久留米大輪ツツジ「御代の栄」の交配実生について、一方の交配親「御代の栄」の花弁は、a*値=37.2、b*値=−9.1である。交配実生は、a*値で0.1〜61.8、b*値で21.5〜−12.2の広大な範囲の個体分布を示した。この個体分布は、低a*値/低b*値、高a*値/高b*値、高a*値/低b*値の、おもに三つのグループに分かれ、他の交配組合わせに見られない特徴を示した。花色を現わす色相角hは、交配親の色相角の範疇にほぼ入る分布を示し、交配実生の色度については、キンモウツツジに偏るもの、「御代の栄」に偏るもの、両者から離れて白色域に偏るものの分布を示した(図17)。
【0128】
これらの実施例から、本発明のツツジの育種法が優れた、常緑性のツツジ、耐暑性のツツジ、四季咲き性のツツジ、を作出方法であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0129】
ミツバツツジ類は落葉性であったが、落葉させずに周年の間、葉を観賞することができるようになった。クルメツツジ類は不良環境には耐えることができなかったが、暑地における公園や行楽地、あるいは道路沿いのグリーンベルトに栽植しても、枯れずに周年開花できる。ツツジ類の鉢物に、日長処理や生長調節剤処理で分化・発達した花芽の休眠を打破することで開花を促進させなくても、露地植栽のツツジ類を四季咲きさせることができる。
【0130】
本発明は、市場が要請するこれまでには無かった常緑性のミツバツツジ類、不良環境適応性を有したクルメツツジ類、四季咲き性のヒラドツツジ類を作出できることを見出した上で、落葉性のツツジに常緑性に関わる遺伝子を導入することのできるツツジの生態型育種法、非耐暑性のツツジに耐暑性に関わる遺伝子を導入することのできるツツジの生態型育種法、一季咲き性のツツジに四季咲き性に関わる遺伝子を導入することのできるツツジの生態型育種法を提供できる。本発明によって、常緑性のミツバツツジ類、耐暑性のクルメツツジ類、四季咲き性のヒラドツツジ類を提供できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
落葉性のツツジを常緑性のツツジに変換して育成する常緑性のツツジの育種方法であって、落葉性のツツジと常緑性のツツジとを交配して、前記落葉性のツツジに常緑性に関わる遺伝子を導入することを特徴とするツツジの育種法。
【請求項2】
前記遺伝子の導入が、常緑性のツツジを花粉親または種子親として交配する請求項1記載のツツジの育種法。
【請求項3】
前記落葉性のツツジがコバノミツバツツジ(Rhododendron reticulatum)、ハヤトミツバツツジ(Rhododendron satsumense)、又はオンツツジ(Rhododendron weyrichii)であり、前記常緑性のツツジがサクラツツジ(Rhododendron tashiroi)である請求項1に記載ツツジの育種法。
【請求項4】
交配が、相互交配である請求項1に記載のツツジの育種法。
【請求項5】
落葉性のオンツツジ(Rhododendron weyrichii)と、落葉性のハヤトミツバツツジ(Rhododendron satsumense)を交配し、前記常緑性に関わる遺伝子を導入する請求項1に記載のツツジの育種法。
【請求項6】
非耐暑性のツツジを耐暑性のツツジに変換して育成する耐暑性のツツジの育種方法であって非耐暑性のツツジと耐暑性のツツジとを交配して、前記非耐暑性のツツジに耐暑性に関わる遺伝子を導入することを特徴とするツツジの育種法。
【請求項7】
前記遺伝子の導入が、耐暑性のツツジを花粉親または種子親として交配する請求項6に記載のツツジの育種法。
【請求項8】
前記耐暑性のツツジが、マルバサツキ(Rhododendron eriocarpum)であり、前記非耐暑性のツツジがクルメツツジ(Kurume Azalea Hybrids)である請求項6に記載の耐暑性のツツジの育種法。
【請求項9】
前記非耐暑性のツツジが落葉性のツツジ又は常緑性のツツジであって、前記耐暑性のツツジが常緑性のツツジ又は落葉性のツツジであって、更に前記落葉性のツツジに常緑性に関わる遺伝子を導入して育種したツツジに常緑性を付与することを特徴とする請求項6に記載のツツジの育種法。
【請求項10】
一季咲き性のツツジを四季性のツツジに変換して育成する四季咲き性のツツジの育種方法であって一季咲き性のツツジと四季咲き性のツツジとを交配して、前記一季咲き性のツツジに四季咲き性に関わる遺伝子を導入することを特徴とするツツジの育種法。
【請求項11】
一季咲き性のツツジに毎年四季咲き性を繰り返すことのできる遺伝子を導入する請求項10に記載の四季咲き性のツツジの育種法。
【請求項12】
前記遺伝子の導入が、四季咲き性のツツジを花粉親または種子親として交配する請求項10に記載のツツジの育種法。
【請求項13】
四季咲き性のツツジがキンモウツツジ(Rhododendron oldhamii)であって、一季咲き性のツツジがヒラドツツジ(Hirado Azalea Hybrids)である請求項10に記載のツツジの育種法。
【請求項14】
前記一季咲き性のツツジが落葉性のツツジ又は常緑性のツツジであって、前記四季咲き性のツツジが常緑性のツツジ又は落葉性のツツジであって、更に前記一季咲き性のツツジに常緑性に関わる遺伝子を導入して育種したツツジに常緑性を付与することを特徴とする請求項10に記載のツツジの育種法。
【請求項15】
前記一季咲き性のツツジが落葉性のツツジ又は常緑性のツツジであって、前記四季咲き性のツツジが常緑性のツツジ又は落葉性のツツジであって、更に前記一季咲き性のツツジに常緑性に関わる遺伝子を導入して育種したツツジに常緑性を付与することを特徴とする請求項11に記載のツツジの育種法。
【請求項16】
前記一季咲き性の非耐暑性のツツジ又は耐暑性のツツジであって、前記四季咲き性のツツジが耐暑性のツツジ又は非耐暑性のツツジであって、更に前記一季咲き性のツツジに耐暑性に関わる遺伝子を導入して育種したツツジに耐暑性を付与することを特徴とする請求項10に記載のツツジの育種法。
【請求項17】
前記一季咲き性の非耐暑性のツツジ又は耐暑性のツツジであって、前記四季咲き性のツツジが耐暑性のツツジ又は非耐暑性のツツジであって、更に前記一季咲き性のツツジに耐暑性に関わる遺伝子を導入して育種したツツジに耐暑性を付与することを特徴とする請求項11に記載のツツジの育種法。
【請求項18】
前記一季咲き性の非耐暑性のツツジ又は耐暑性のツツジであって、前記四季咲き性のツツジが耐暑性のツツジ又は非耐暑性のツツジであって、更に前記一季咲き性のツツジに耐暑性に関わる遺伝子を導入して育種したツツジに耐暑性を付与することを特徴とする請求項14に記載のツツジの育種法。
【請求項19】
前記一季咲き性の非耐暑性のツツジ又は耐暑性のツツジであって、前記四季咲き性のツツジが耐暑性のツツジ又は非耐暑性のツツジであって、更に前記一季咲き性のツツジに耐暑性に関わる遺伝子を導入して育種したツツジに耐暑性を付与することを特徴とする請求項15に記載のツツジの育種法。
【請求項20】
前記交配する2種類の異なるツツジの選択を花きの花色発現に関わる主要アントシアニジン色素のペラルゴニジン(Pgn)、シアニジン(Cyn)、デルフィニジン(Dpn)の遺伝であって、遺伝子型HXHX・Pg/pg・Cy/cy・Dp/dpを用いて行うことを特徴とする請求項1、請求項6、請求項9から請求項11および請求項14から19のいずれか1項に記載のツツジの育種法。
【請求項21】
請求項1、請求項6、請求項9から請求項11および請求項14から19のいずれか1項に記載のツツジの育種法により作出された新規ツツジ。
【請求項1】
落葉性のツツジを常緑性のツツジに変換して育成する常緑性のツツジの育種方法であって、落葉性のツツジと常緑性のツツジとを交配して、前記落葉性のツツジに常緑性に関わる遺伝子を導入することを特徴とするツツジの育種法。
【請求項2】
前記遺伝子の導入が、常緑性のツツジを花粉親または種子親として交配する請求項1記載のツツジの育種法。
【請求項3】
前記落葉性のツツジがコバノミツバツツジ(Rhododendron reticulatum)、ハヤトミツバツツジ(Rhododendron satsumense)、又はオンツツジ(Rhododendron weyrichii)であり、前記常緑性のツツジがサクラツツジ(Rhododendron tashiroi)である請求項1に記載ツツジの育種法。
【請求項4】
交配が、相互交配である請求項1に記載のツツジの育種法。
【請求項5】
落葉性のオンツツジ(Rhododendron weyrichii)と、落葉性のハヤトミツバツツジ(Rhododendron satsumense)を交配し、前記常緑性に関わる遺伝子を導入する請求項1に記載のツツジの育種法。
【請求項6】
非耐暑性のツツジを耐暑性のツツジに変換して育成する耐暑性のツツジの育種方法であって非耐暑性のツツジと耐暑性のツツジとを交配して、前記非耐暑性のツツジに耐暑性に関わる遺伝子を導入することを特徴とするツツジの育種法。
【請求項7】
前記遺伝子の導入が、耐暑性のツツジを花粉親または種子親として交配する請求項6に記載のツツジの育種法。
【請求項8】
前記耐暑性のツツジが、マルバサツキ(Rhododendron eriocarpum)であり、前記非耐暑性のツツジがクルメツツジ(Kurume Azalea Hybrids)である請求項6に記載の耐暑性のツツジの育種法。
【請求項9】
前記非耐暑性のツツジが落葉性のツツジ又は常緑性のツツジであって、前記耐暑性のツツジが常緑性のツツジ又は落葉性のツツジであって、更に前記落葉性のツツジに常緑性に関わる遺伝子を導入して育種したツツジに常緑性を付与することを特徴とする請求項6に記載のツツジの育種法。
【請求項10】
一季咲き性のツツジを四季性のツツジに変換して育成する四季咲き性のツツジの育種方法であって一季咲き性のツツジと四季咲き性のツツジとを交配して、前記一季咲き性のツツジに四季咲き性に関わる遺伝子を導入することを特徴とするツツジの育種法。
【請求項11】
一季咲き性のツツジに毎年四季咲き性を繰り返すことのできる遺伝子を導入する請求項10に記載の四季咲き性のツツジの育種法。
【請求項12】
前記遺伝子の導入が、四季咲き性のツツジを花粉親または種子親として交配する請求項10に記載のツツジの育種法。
【請求項13】
四季咲き性のツツジがキンモウツツジ(Rhododendron oldhamii)であって、一季咲き性のツツジがヒラドツツジ(Hirado Azalea Hybrids)である請求項10に記載のツツジの育種法。
【請求項14】
前記一季咲き性のツツジが落葉性のツツジ又は常緑性のツツジであって、前記四季咲き性のツツジが常緑性のツツジ又は落葉性のツツジであって、更に前記一季咲き性のツツジに常緑性に関わる遺伝子を導入して育種したツツジに常緑性を付与することを特徴とする請求項10に記載のツツジの育種法。
【請求項15】
前記一季咲き性のツツジが落葉性のツツジ又は常緑性のツツジであって、前記四季咲き性のツツジが常緑性のツツジ又は落葉性のツツジであって、更に前記一季咲き性のツツジに常緑性に関わる遺伝子を導入して育種したツツジに常緑性を付与することを特徴とする請求項11に記載のツツジの育種法。
【請求項16】
前記一季咲き性の非耐暑性のツツジ又は耐暑性のツツジであって、前記四季咲き性のツツジが耐暑性のツツジ又は非耐暑性のツツジであって、更に前記一季咲き性のツツジに耐暑性に関わる遺伝子を導入して育種したツツジに耐暑性を付与することを特徴とする請求項10に記載のツツジの育種法。
【請求項17】
前記一季咲き性の非耐暑性のツツジ又は耐暑性のツツジであって、前記四季咲き性のツツジが耐暑性のツツジ又は非耐暑性のツツジであって、更に前記一季咲き性のツツジに耐暑性に関わる遺伝子を導入して育種したツツジに耐暑性を付与することを特徴とする請求項11に記載のツツジの育種法。
【請求項18】
前記一季咲き性の非耐暑性のツツジ又は耐暑性のツツジであって、前記四季咲き性のツツジが耐暑性のツツジ又は非耐暑性のツツジであって、更に前記一季咲き性のツツジに耐暑性に関わる遺伝子を導入して育種したツツジに耐暑性を付与することを特徴とする請求項14に記載のツツジの育種法。
【請求項19】
前記一季咲き性の非耐暑性のツツジ又は耐暑性のツツジであって、前記四季咲き性のツツジが耐暑性のツツジ又は非耐暑性のツツジであって、更に前記一季咲き性のツツジに耐暑性に関わる遺伝子を導入して育種したツツジに耐暑性を付与することを特徴とする請求項15に記載のツツジの育種法。
【請求項20】
前記交配する2種類の異なるツツジの選択を花きの花色発現に関わる主要アントシアニジン色素のペラルゴニジン(Pgn)、シアニジン(Cyn)、デルフィニジン(Dpn)の遺伝であって、遺伝子型HXHX・Pg/pg・Cy/cy・Dp/dpを用いて行うことを特徴とする請求項1、請求項6、請求項9から請求項11および請求項14から19のいずれか1項に記載のツツジの育種法。
【請求項21】
請求項1、請求項6、請求項9から請求項11および請求項14から19のいずれか1項に記載のツツジの育種法により作出された新規ツツジ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【国際公開番号】WO2005/009116
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【発行日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512055(P2005−512055)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010651
【国際出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(803000089)株式会社 鹿児島TLO (8)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【発行日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2004/010651
【国際出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(803000089)株式会社 鹿児島TLO (8)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]