説明

ツツジ科植物の植栽用土壌

【課題】水の供給が少なくとも生育を阻害しないツツジ科植物の植栽用土壌を提供すること。
【解決手段】土壌100質量部に対して吸水性樹脂を0.15〜0.25質量部含有することを特徴とするツツジ科植物の植栽用土壌。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はツツジ科植物の植栽用土壌に関する。
【背景技術】
【0002】
ツツジ科植物は、栽培が容易であり、花が美しく、あまり手間をかけなくても毎年花が咲く植物である。また環境適応力が比較的強いため、広範囲な地域で植栽が可能なほか、移植後の活着も容易な植物であり、しかも刈り込みによって容易に整形可能である。また古くから、自生している野生種から改良され、たくさんの品種が存在しているため、植え場所によって品種の選択も可能である。このような特徴を有するため、ツツジ科植物、特にツツジ属植物であるツツジ又はサツキは、道路脇や中央分離帯への植栽によく用いられる。
【0003】
しかしながら、道路脇や中央分離帯等へ植栽した場合、場所の関係上、植物に対する手間の減少、特に持続的な水分の供給が少なくなるという問題が生じ、結果として植物の萎凋や枯死が生じる。また、このような乾燥害を回避するための散水車等による灌水作業においては、多大な経費と労力を要するものでもある。
【0004】
このような灌水作業を減らす目的で、吸水性樹脂を土壌に混合した農園芸用保水剤が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−068026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の農園芸用保水剤では、ツツジ科植物においては、水不足の解消と共に水はけも必要となるために、吸水性樹脂を多く混合しても、水はけの低下や土壌の固化による通気性の低下等が生じ、萎凋や枯死を起こすという問題が生じる。
【0007】
したがって本発明の課題は、水の供給が少なくとも生育を阻害しないツツジ科植物の植栽用土壌を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明の要旨は、土壌100質量部に対して吸水性樹脂を0.15〜0.25質量部含有することを特徴とするツツジ科植物の植栽用土壌に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の植栽用土壌によって、ツツジ科植物を植栽した際に、水の供給が少なくとも、萎凋や枯死が起こらず、長く生育することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の植栽用土壌に植え付けられてから4週間後のサツキ苗の様子を写真撮影したものである。
【図2】比較例1の植栽用土壌に植え付けられてから4週間後のサツキ苗の様子を写真撮影したものである。
【図3】比較例3の植栽用土壌に植え付けられてから4週間後のサツキ苗の様子を写真撮影したものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明にかかるツツジ科植物としては、例えば、ツツジ、サツキ、シャクナゲ及びアザレア等のツツジ属植物、ドウダンツツジ等のドウダンツツジ属植物、カルミア等のカルミア属植物、エリカ等のエリカ属植物、アセビ等のアセビ属植物、ブルーベリー、クランベリー及びコケモモ等のスノキ属植物等が挙げられる。これらのツツジ科植物の中では、環境適応力の高さや刈り込みに対する強さの観点から、ツツジ属植物が好ましく、とりわけツツジ又はサツキがより好ましい。
【0012】
本発明にかかるツツジ科植物の植栽用土壌に用いられる土壌としては、ツツジ科植物の生育の観点から酸性の土壌が好ましい。例えば、赤玉土、真砂土、鹿沼土、黒ボク土等が挙げられる。
【0013】
本発明にかかるツツジ科植物の植栽用土壌に用いられる吸水性樹脂としては、例えば、アクリル酸塩重合体の架橋物、デンプン−アクリル酸塩グラフト共重合体の架橋物、ビニルアルコール−アクリル酸塩共重合体の架橋物、無水マレイン酸グラフトポリビニルアルコールの架橋物、架橋イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物等が挙げられる。これらの吸水性樹脂の中では、大量の水を吸収すると共に、多少の荷重をかけても吸収した水を分子内に保持し得ることから、アクリル酸塩重合体の架橋物が好ましい。
【0014】
なお、前記吸水性樹脂の製造方法には特に限定がなく、その製造方法の例としては逆相懸濁重合法、水溶液重合法等が挙げられる。
【0015】
前記吸水性樹脂の能力は、生理食塩水保水能として評価される。吸水性樹脂の生理食塩水保水能は、20〜60g/gが好ましく、30〜50g/gがより好ましく、35〜45g/gがさらに好ましい。土壌の水不足を解消する観点から20g/g以上が好ましく、土壌の水はけを確保する観点から60g/g以下が好ましい。なお、吸水性樹脂の生理食塩水保水能は、後述の実施例に記載の測定方法により得られる値である。
【0016】
前記吸水性樹脂の250μm未満の粒子割合は、該吸水性樹脂の20質量%以上であることが好ましく、20〜60質量%がより好ましく、25〜50質量%がさらに好ましい。吸水性樹脂と土壌との混合を良くし、また水はけをよくする観点から、20質量%以上が好ましい。なお、吸水性樹脂の250μm未満の粒子割合は、後述の実施例に記載の測定方法により得られる値である。
【0017】
前記吸水性樹脂の使用割合は、土壌100質量部に対して、0.15〜0.25質量部である。土壌の保水性を保ち、灌水作業の省力化の効果を得る観点から、0.15質量部以上であり、水分過多や通気性低下による根腐れ等のツツジ科植物の生育阻害を防止する観点から、0.25質量部以下である。ツツジ科植物においては、水不足の解消と共に土壌の水はけも必要となるために、吸水性樹脂の量のバランスを考慮する必要がある。
【0018】
前記土壌と吸水性樹脂を混合する方法としては、特に限定されず、土壌と吸水性樹脂が均一に混合できる方法であればよい。
【0019】
本発明にかかるツツジ科植物の植栽用土壌には、本発明の効果を阻害しない範囲で、肥料、発根促進剤、中量要素、微量要素又は菌根菌等を添加することができる。
【実施例】
【0020】
以下に、本発明を実施例及び比較例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0021】
<吸水性樹脂の生理食塩水保水能>
吸水性樹脂の生理食塩水保水能を以下の方法により測定、評価した。
吸水性樹脂2.0gを、綿袋(メンブロード60番、横100mm×縦200mm)中に計り取り、500mL容のビーカーに入れた。綿袋に生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水溶液、以下同様)500gを一度に注ぎ込み、吸水性樹脂のママコが発生しないように生理食塩水を分散させた。綿袋の上部を輪ゴムで縛り、1時間放置して、吸水性樹脂を十分に膨潤させた。遠心力が167Gとなるよう設定した脱水機(国産遠心機株式会社製、品番:H−122)を用いて綿袋を1分間脱水し、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wa(g)を測定した。吸水性樹脂を用いずに同様の操作を行い、綿袋の湿潤時空質量Wb(g)を測定し、次式により吸水性樹脂の生理食塩水保水能を求めた。
【0022】
吸水性樹脂の生理食塩水保水能(g/g)=[Wa−Wb](g)/吸水性樹脂の質量(g)
【0023】
<吸水性樹脂の250μm未満の粒子割合>
吸水性樹脂の250μm未満の粒子割合を以下の方法により測定、評価した。
吸水性樹脂50gに、滑剤として、0.25gの非晶質シリカ(デグサジャパン(株)、Sipernat200)を混合した。
【0024】
JIS標準篩を上から、目開き250μmの篩と受け皿の順に組み合わせ、組み合わせた篩に、前記吸水性樹脂を入れ、ロータップ式振とう器を用いて20分間振とうさせて分級した。分級後、受け皿に残った吸水性樹脂の質量を全量に対する質量百分率として計算し、その値を250μm未満の粒子の割合とした。
【0025】
[実施例1及び比較例1〜3]
土壌として含水率10%の真砂土(山根建材有限会社製)3.6kgを量り取り、プラスチック容器内で、吸水性樹脂としてアクリル酸塩重合体の架橋物であるアクアキープSA60N TYPEII(住友精化株式会社製、生理食塩水保水能:41g/g、粒度分布(250μm未満の粒子割合):32質量%)を表1に示す割合で混合し、さらに移植ごてで攪拌して植栽用土壌を調製した。次いで、1/5000アールのワグネルポット(藤本科学株式会社製)に充填し、ツツジ科植物としてサツキ苗(グンゼグリーン株式会社製)を植え付けてサンプルとした。植え付け時に800g/ポットの灌水を行った。一種類の植栽用土壌あたり5サンプルを作製した。
【0026】
[実施例2]
実施例1において、使用する吸水性樹脂としてアクリル酸塩重合体の架橋物を、アクアキープSA60S(住友精化株式会社製、生理食塩水保水能:42g/g、粒度分布(250μm未満の粒子割合):15質量%)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、サンプルを作成した。
【0027】
各サンプルを兵庫県宍粟市内のガラス温室内に配置した。植え付け時以降は無灌水とし、栽培期間を通してガラス温室に雨水が降り込むことはなかった。平成22年の5月〜6月の間、サツキ苗の萎凋を目視により確認した。
【0028】
萎凋の判定基準は次の通りとした。
当年枝の「曲がり」、若しくは、当年葉の「反り返り」、「縮れ」、または、「変色(黄色化、褐色化)」のいずれかが生じた時点で、萎凋と判断した(図2及び図3参照)。
【0029】
萎凋が確認された個体の割合(%)を表1に示す。表中の吸水性樹脂の使用割合は、真砂土100質量部に対する使用割合(質量部)である。
【0030】
【表1】

【0031】
表1から明らかなように、実施例の土壌を用いた場合、サツキ苗を植栽した後の水の供給が無くとも、萎凋や枯死が長期間にわたって起こらず、サツキ苗を長く生育させることが可能となった。特に、250μm未満の粒子割合が20質量%以上の吸水性樹脂を用いた実施例1では、該粒子割合が20質量%未満のものを用いた実施例2よりも、生育状態が良好であった。図1は、実施例1の植栽用土壌に植え付けられてから4週間後のサツキ苗の様子を写真撮影したものである。
【0032】
一方、吸水性樹脂を使用しなかった場合又は使用量が少なかった場合(比較例1、2)、多くのサツキ苗が萎凋した。これは土壌中の水分量が少なくなったことによるものと思われる。また、吸水性樹脂の使用量が多かった場合も(比較例3)、多くのサツキ苗が萎凋した。これは土壌中の水分過多や通気性の低下によるものと思われる。図2は、比較例1の植栽用土壌に植え付けられてから4週間後のサツキ苗の様子を写真撮影したものであり、当年枝の「曲がり」、当年葉の「反り返り」「縮れ」「変色」が生じていることがわかる。また、図3は、比較例3の植栽用土壌に植え付けられてから4週間後のサツキ苗の様子を写真撮影したものであり、図3左上方サンプルは当年枝の「曲がり」、当年葉の「変色」が生じていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の植栽用土壌は、水の供給が少なくとも長期間にわたってツツジ科植物の生育を可能とさせるものであり、道路脇や中央分離帯等への植栽用の土壌として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌100質量部に対して吸水性樹脂を0.15〜0.25質量部含有することを特徴とするツツジ科植物の植栽用土壌。
【請求項2】
ツツジ科植物がツツジ属植物である、請求項1に記載の植栽用土壌。
【請求項3】
ツツジ科植物がツツジ又はサツキである、請求項1又は2に記載の植栽用土壌。
【請求項4】
吸水性樹脂がアクリル酸塩重合体の架橋物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の植栽用土壌。
【請求項5】
吸水性樹脂の生理食塩水保水能が20〜60g/gである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の植栽用土壌。
【請求項6】
吸水性樹脂の250μm未満の粒子割合が該吸水性樹脂の20質量%以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の植栽用土壌。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−44947(P2012−44947A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191456(P2010−191456)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【出願人】(592216384)兵庫県 (258)
【Fターム(参考)】