説明

ツルーイング装置及びツルーイング方法

【課題】 作業性が容易であり、また、効率よくツルーリングを行う。
【解決手段】 砥粒が固定された複数本のワイヤーWを並べて、ワイヤーWに張力を与えながら巻き取るワイヤー巻取手段10と、回転軸方向に作用面が向く回転工具Bを保持し、回転させながらワイヤー巻取手段10に回転工具Bを押し当てる工具保持回転押圧手段20と、を備え、ワイヤーWが1本からなり、回転工具Bが押し当てられる前後の位置にローラーLが設けられ、これらローラーLにワイヤーWを巻きつけて、回転工具Bが押し当てられる位置で当該ワイヤーWを複数本並べた状態としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転工具を修正するツルーイング装置及びツルーイング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被加工物の表面を機械的に加工する場合には、例えば、研削装置が用いられている。この研削装置では、被加工物の表面を削るのに回転工具が用いられている。回転工具は、例えば、回転軸芯の先端に設けられる円盤状のベース部の底面にダイヤモンドなどの砥粒をつけたものが知られている。このような回転工具は、砥粒が設けられた底面を前記被加工物の表面に押し当てて用いられる。また、回転工具は、穴空け加工にも用いられる。この場合の回転工具は、砥粒が底面の他に側面にも設けられている。
このような回転工具をツルーイングする場合、例えば、所定の形状の溝を有する砥石を用い、該砥石の溝に回転工具を通して回転工具を修正している(例えば、特許文献1参照)。
また、穴空け加工にも用いられる回転工具の場合、回転軸に向かうにつれて厚みが増すように形成される砥石を回転させ、これに回転工具を押し当てることで回転工具の修正を行っている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−062723号公報(段落0002〜0021、図2)
【特許文献2】特開平11−058231号公報(段落0002〜0018、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、砥石の溝に回転工具を通して回転工具を修正する場合、回転工具の作用面のエッジを出すまでに、その作用面を多く削らなければならず、工具寿命を短くしてしまうという問題がある。
また、このような回転する砥石に回転工具を押し当てる場合、回転工具を押し当てる位置の制御が煩雑となり、作業性が悪くなるという問題がある。つまり、押し当てる位置によって傾斜する面と接触する可能性があり、回転工具の取り付け位置の確認や、砥石の取り付け位置の確認や、回転工具が砥石に当接される位置の確認など、ツルーイングまでにかかる工程が多く、また、最良の位置での加工制御が煩雑になるという問題がある。
また、このような砥石を回転させて行うツルーイングにおいて、当該砥石の砥粒が設けられた作用面が磨耗により最良な状態となっているとは限らず、使用回数に応じて回転工具のツルーリングが効率よく行えなくなる恐れもある。
【0004】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、作業性が容易であり、また、効率よくツルーリングを行うツルーイング装置及びツルーイング方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明は、ツルーイング装置であって、砥粒が固定された複数本のワイヤーを並べて、前記ワイヤーに張力を与えながら巻き取るワイヤー巻取手段と、回転軸方向に作用面が向く回転工具を保持し、回転させながら前記ワイヤー巻取手段に前記回転工具を押し当てる工具保持回転押圧手段と、を備えて構成されることを特徴とする。
【0006】
また、本発明は、前記ワイヤーが1本からなり、前記回転工具が押し当てられる前後の位置にローラーが設けられ、これらローラーに前記ワイヤーを巻きつけることで、前記回転工具が押し当てられる位置で当該ワイヤーを複数本並べた状態としても良い。
【0007】
また、本発明は、ツルーイング方法であって、所定の張力で張られた砥粒が固定された複数本のワイヤーを巻き取りながら、回転工具を保持した状態で当該回転工具を回転させる第一の工程と、前記ワイヤーが巻き取られている状態で、回転されられている前記回転工具を該ワイヤーに押し当てる第二の工程と、を有して構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このようなツルーイング装置によれば、回転工具をワイヤーに接触すればよいため、緻密な回転工具の位置あわせを行う必要がなくなり、作業性を容易にすることができる。また、状態の良い砥粒が回転工具に接触するので、効率よく回転工具のツルーリングを行うことができる。
また、このようなツルーイング方法によれば、回転工具をワイヤーに接触すればよいため、緻密な回転工具の位置あわせを行う必要がなくなり、作業性を容易にすることができる。また、状態の良い砥粒が回転工具に接触するので、効率よく回転工具のツルーリングを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」という。)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1は本発明の実施形態に係るツルーイング装置の一例を示す模式図である。図2は、回転工具をワイヤーに押し当てた状態の一例を示す模式図である。図3はワイヤーをローラーに巻きつけた状態の一例を示す図である。図4(a)は修正が必要な回転工具の一例を示す図であり、(b)は修正後の回転工具の一例を示す図である。
【0011】
図1に示すように、本発明の第一の実施形態に係るツルーイング装置100は、回転工具Bを修正する役割を果たし、ワイヤーWを有するワイヤー巻取手段10と工具保持回転押圧手段20とから主に構成されている。
【0012】
回転工具Bは、回転軸を中心軸とする回転軸芯部B1と、回転軸芯部の一方の端部に設けられ、回転軸の方向を法線とする作用面を有する作用部B2とを備え、この作用面及び側面に砥粒が設けられた構成となっている。この回転工具Bは、繰り返し被加工物(図示せず)を研削したことでエッジが丸められた状態となっている(図4(a)参照)。
【0013】
ワイヤーWは、その表面に所定の粒径を有する砥粒(図示せず)がレジンボンドや電着等により固定されており、被加工物を削る役割を果たす。
なお、このワイヤーWにおいて、未使用の状態の場合をワイヤーWM、使用済みの状態の場合をワイヤーWSとする。
【0014】
ワイヤー巻取手段10は、未使用状態のワイヤーWMを巻きつけたリールR1と使用済みのワイヤーWSを巻きつけるリールR2と、このリールR1とリールR2との間に設けられる2つのローラーL,Lと、各ローラーL,Lに設けられる回動モータMとから主に構成されている。
ここで、リールR1とリールR2と2つのローラーL,Lとの位置関係は、リールR1とリールR2とが所定の間隔で離れた位置に配置されており、このリールR1とリールR2との間に2つのローラーL,Lを所定の間隔をあけ、かつ、リールR1とリールR2より上方に配置されている。なお、このローラーL,Lの間に回転工具Bが位置することとなる。
【0015】
ワイヤーWは、リールR1から引き出され、2つのローラーL,Lを介してリールR2に巻き取られる。このとき、リールR1から引き出されたワイヤーWは、2つのローラーL,Lを掛け渡すように巻かれており、この2つのローラーL,Lの間において複数のワイヤーWが並んで配置された状態となっている(図3参照)。
なお、このようにワイヤーWを巻いた状態で2つのローラーL,Lの間を広げることでローラーL,Lの間に位置するワイヤーWに張力を与えることができる。
【0016】
また、回動モータM,Mを駆動させることで、ワイヤーWをリールR1側からリールR2側へ送り出すことができる。また、未使用状態のワイヤーWMを巻きつけたリールR1側の回動モータMをワイヤーWを巻き取る方向に駆動した後に、使用済みのワイヤーWSを巻きつけるリールR2側の回動モータMをワイヤーWを巻き取る方向の駆動させる場合、リールR2側への巻き取り量を多くすることでワイヤーWを巻き取りながら遥動させることができる。このようにワイヤーWを遥動させながら巻き取ることで、回転している回転工具Bの作用面を効率よくツルーイングすることができる。
【0017】
工具保持回転押圧手段20は、回転工具Bを保持する工具保持部21と、この回転工具Bを工具保持部21ごと回転させる工具回転部22と、回転した状態の回転工具BをワイヤーWに押し当てる工具押圧部23とから構成され、回転工具Bを回転した状態でワイヤーWに押し当てる役割を果たす。
【0018】
工具保持部21は、回転工具Bの回転軸芯部B2の先端部を把持して固定する役割を果たし、回転工具Bを回転させてもはずれることがなく、把持した状態を維持することができる。
【0019】
工具回転部22は、回転工具Bを回転させる役割を果たす。
この工具回転部22は、シリンダー部22Aと工具回転用モータ22Bとから構成され、シリンダー部の内部に工具回転用モータ22Bを備え、この工具回転用モータ22Bの回転動力を工具保持部21に伝達させる。これにより、工具保持部21が回転するとともに工具保持部21が把持する回転工具Bも回転する。
【0020】
工具押圧部23は、回転している回転工具BをワイヤーWに押し当てる役割を果たす。
この工具押圧部23は、工具回転部22のシリンダー部22Aを支持する支持部23Aと、このシリンダー部22AをワイヤーWの方向へ移動させる工具移動部23Bとを備えており、工具移動部23BをワイヤーWの方向へ移動させることで、回転工具Bを回転した状態のままワイヤーWに押し当てることができる。
【0021】
例えば、所定の張力で張られたワイヤーWと直交する方向にガイドレールGを設け、このガイドレールGに沿って移動可能に工具移動部23Bを構成する。この工具移動部23Bと支持部23Aとを一体に構成すれば、工具移動部23BがワイヤーWの方向へ移動することにより、回転工具BもワイヤーWの方向へ移動させることができる。
この工具移動部23Bを所定の位置で止めることで、回転工具BをワイヤーWに所定の圧力で押し当てることができる。
【0022】
このように、本発明の実施形態に係るツルーイング装置100を構成したので、緻密な回転工具Bの位置あわせを行う必要がなくなり、ツルーイングの作業性を容易にすることができる。また、状態の良い砥粒が回転工具Bに接触するので、効率よく回転工具Bのツルーリングを行うことができる。
【0023】
次に、本発明の実施形態に係るツルーイング装置100の使用方法について説明するとともに本発明のツルーイング方法について説明する。
【0024】
まず、ワイヤー巻取手段10のリールR1からワイヤーW(WM)をローラーL,Lを介してリールR2に接続する。このとき、図3に示すように、ワイヤーWを2つのローラーL,Lに掛け渡ように巻きつけ、ローラーL,Lの間隔を広げてワイヤーWに張力を与える。
【0025】
次に、ワイヤーWから離れた位置において、修正が必要な回転工具B(図4(a)参照)を工具保持回転押圧手段20の工具保持部21に保持させる。なお、回転工具Bは、ワイヤーWとは接触していない。
【0026】
回転工具Bを工具保持部21が保持した状態で、ワイヤー巻取手段10のローラーL,Lに設けられた回動モータM,Mを駆動させながらワイヤーWを遥動させてリールR1から未使用のワイヤーWMを引き出し、かつ、リールR2に巻き取らせつつ、工具保持回転押圧手段20の工具回転部22によって回転工具Bを保持した工具保持部21を所定の回転数で回転させて(図1参照)、当該回転工具Bを回転させる(第一の工程)。
【0027】
図2に示すように、回転工具Bを保持した状態の工具保持部21を回転させている工具回転部22を工具押圧部23によってワイヤーWの方向に移動させ、回転している回転工具Bを、巻き取られているワイヤーWに押し当てる(第二の工程)。
工具回転部22を支持する工具押圧部23の支持部23Aが取り付けられた工具移動部23BをワイヤーWの方向へ移動させる。これにより、回転工具Bを保持した状態の工具保持部21を回転させている工具回転部22がワイヤーWの方向へ移動するとともに工具保持部21もワイヤーWの方向へ移動し、さらに、工具保持部21に保持されている回転工具BもワイヤーWの方向へ移動する。この回転工具Bは回転した状態のままワイヤーWに押し当てられる。
【0028】
このとき、回転する回転工具Bは、未使用の状態のワイヤーWMと接触しつつ、ローラーL,Lに巻きつけられた回数に対応して使用されたワイヤーWと接触する。これにより、回転工具Bは、必ず未使用の状態のワイヤーWM又は未使用に近い状態のワイヤーWと接触するので、効率よくツルーリングされる。
このようにしてツルーリングされる回転工具Bの作用面は、ワイヤーWの直線方向の遥動運動と、回転工具Bの回転運動とで研削され、所定の時間で研削することで作用面が修正された回転工具Bとすることができる(図4(b)参照)。
【0029】
このようにツルーイング方法を構成したので、回転工具BをワイヤーWに接触させればよいため、緻密な回転工具の位置あわせを行う必要がなくなり、作業性を容易にすることができる。また、状態の良い砥粒が回転工具に接触するので、効率よく回転工具Bのツルーリングを行うことができる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態には限定されない。例えば、ワイヤーWは、砥粒を固定したものの他に、ワイヤーW自体に突起する凹凸を設け、この凹凸を砥粒の代わりに用いても良い。また、ワイヤーWに代えて、帯状体を用い、この帯の一面に砥粒を設けても本発明の実施形態と同様の効果を奏する。
また、回転工具は、ダイシングソー、ブレード、カップホイール等を用いることができる。このような回転工具でも修正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係るツルーイング装置の一例を示す模式図である。
【図2】回転工具をワイヤーに押し当てた状態の一例を示す模式図である。
【図3】ワイヤーをローラーに巻きつけた状態の一例を示す図である。
【図4】(a)は修正が必要な回転工具の一例を示す図であり、(b)は修正後の回転工具の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
100 ツルーイング装置
10 ワイヤー巻取手段
20 工具保持回転押圧手段
21 工具保持部
22 工具回転部
22A シリンダー部
22B 工具回転用モータ
23 工具押圧部
23A 支持部
23B 工具移動部
B 回転工具
B1 回転軸芯部
B2 作用部
G ガイドレール
L ローラー
M 回動モータ
R1 リール
R2 リール
W ワイヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒が固定された複数本のワイヤーを並べて、前記ワイヤーに張力を与えながら巻き取るワイヤー巻取手段と、
回転軸方向に作用面が向く回転工具を保持し、回転させながら前記ワイヤー巻取手段に前記回転工具を押し当てる工具保持回転押圧手段と、
を備えて構成されることを特徴とするツルーイング装置。
【請求項2】
前記ワイヤーが1本からなり、前記回転工具が押し当てられる前後の位置にローラーが設けられ、これらローラーに前記ワイヤーを巻きつけることで、前記回転工具が押し当てられる位置で当該ワイヤーを複数本並べた状態としたことを特徴とする請求項1に記載のツルーイング装置。
【請求項3】
所定の張力で張られた砥粒が固定された複数本のワイヤーを巻き取りながら、回転工具を保持した状態で当該回転工具を回転させる第一の工程と、
前記ワイヤーが巻き取られている状態で、回転されられている前記回転工具を該ワイヤーに押し当てる第二の工程と、
を有して構成されることを特徴とするツルーイング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−6569(P2008−6569A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−182340(P2006−182340)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】