説明

ティシュペーパー収納箱

【課題】引き出されたティシュペーパーを、最後まで十分な香りが付いたものとすることができるティシュペーパー収納箱とする。
【解決手段】ティシュペーパーTを重畳状態で収納することができ、上面を構成する部材11にティシュペーパーTの引出口12を形成しつつも、この引出口12は、ティシュペーパー引出用スリットの入ったシートで塞がない。そして、引出口12を囲む開口縁16に内方へ延出する延出片20を備え、この延出片20の内側面21に香料30を付与する。このようにして、ティシュペーパーTの引き出しが、延出片20を開口縁16が基端縁となるように傾斜させ、この傾斜させた延出片20の内側面21に擦られながら行われる、ように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティシュペーパーの収納箱に関するものである。より詳しくは、上面を構成する部材にティシュペーパーの引出口が形成されているが、この引出口は、ティシュペーパー引出用スリットの入ったフィルム等のシートで塞がれていない、いわゆるフィルムレス型のティシュペーパー収納箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のティシュペーパー収納箱は、ティシュペーパーが重畳状態で収納されて使用される。箱内に収納されたティシュペーパーは、家庭、オフィス、自動車内などのさまざまな生活空間において、箱内から引き出されて使用される。そして、現在、箱内から引き出されたティシュペーパーには、香り(匂い)が付けられていることがある。
ティシュペーパーに対する香りの付け方としては、香料が芯材とされたマイクロカプセルをティシュペーパーにあらかじめ転写しておく方法がある。しかしながら、この方法によると、輸送時などにおいて重畳状態のティシュペーパー同士が擦れてマイクロカプセルが壊れてしまい、使用に先立って香料が蒸散してしまうことがある。
この問題を解決する方法としては、収納箱の上面を構成する部材の内側面に香料を塗布しておく方法が考えられる(例えば、特許文献1参照。)。この方法によると、ティシュペーパーを引き出すに際して、ティシュペーパーと上面部材の内側面とが擦れることによって、香料がティシュペーパーに付与される。しかしながら、この方法によると、収納されているティシュペーパーが減るのにともなって、ティシュペーパーと上面部材の内側面とが擦れなくなり、香料がティシュペーパーに付与されなくなる可能性がある。
この問題を解決する方法としては、ティシュペーパー収納箱の形態として、ティシュペーパーの引出口がティシュペーパー引出用スリットの入ったシートで塞がれた形態(フィルム型)を採用し、このシートを、香料を含有するフィルムシートにする方法が考えられる(例えば、特許文献2参照。)。この方法によると、ティシュペーパーを引き出すに際して、ティシュペーパーとフィルムシートとが擦れることによって、香料がティシュペーパーに付与される。しかしながら、この方法によると、製造コストが増加するうえに、ティシュペーパーは、引き出しに際して、スリットを囲むシート端縁と線接触(あるいは著しく狭い面接触)するに過ぎないため、ティシュペーパーに香料が十分付与されない可能性がある。
【特許文献1】実開平5−49680号公報
【特許文献2】実開昭59−172184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする主たる課題は、引き出されたティシュペーパーを、最後まで十分な香りが付いたものとすることができるティシュペーパー収納箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
ティシュペーパーを重畳状態で収納し、上面を構成する部材に前記ティシュペーパーの引出口が形成され、この引出口がティシュペーパー引出用スリットの入ったシートで塞がれていないティシュペーパー収納箱であって、
前記引出口を囲む開口縁に内方へ延出する延出片が備えられ、この延出片の内側面に香料が付与され、
前記ティシュペーパーの引き出しは、前記延出片を前記開口縁が基端縁となるように傾斜させ、この傾斜させた延出片の内側面に擦られながら行われる、ように構成された、ことを特徴とするティシュペーパー収納箱。
【0005】
〔請求項2記載の発明〕
前記延出片が前記上面部材と同一の紙材で形成されており、この紙材が前記開口縁において折り曲げられることによって前記延出片が傾斜させられる、請求項1記載のティシュペーパー収納箱。
【0006】
〔請求項3記載の発明〕
前記香料を芯材とし、かつ前記ティシュペーパーと擦れると壊れるマイクロカプセルが、前記延出片の内側面に塗布されている、請求項1又は請求項2記載のティシュペーパー収納箱。
【0007】
〔請求項4記載の発明〕
前記ティシュペーパーが引き出されるときの、前記延出片の傾斜角が、30〜60°となる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のティシュペーパー収納箱。
【0008】
〔請求項5記載の発明〕
相互に対向する開口縁からそれぞれ前記延出片が延出しており、これら延出片が傾斜していないときおける、これら延出片間の距離が、10〜30mmとされている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のティシュペーパー収納箱。
【0009】
〔請求項6記載の発明〕
前記延出片の基端縁から先端縁までの長さが、5〜20mmとされている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のティシュペーパー収納箱。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、引き出されたティシュペーパーを、最後まで十分な香りが付いたものとすることができるティシュペーパー収納箱となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
図1及び図2に示すように、本形態のティシュペーパー収納箱10は、ティシュペーパーT,T…を重畳状態で収納し、上面を構成する部材11にティシュペーパーT,T…の引出口12が形成されている。
【0012】
この引出口12の平面形状は、特に限定されない。本形態では、相互に対向する直線状の開口縁16,16及びこれら開口縁16,16の両端をそれぞれ結ぶ円弧状の開口縁14,14に囲まれて形成されている。
【0013】
本形態において、引出口12は、ティシュペーパー引出用スリットの入ったフィルム等のシートで塞がれていない(フィルムレス型)。しかしながら、引出口12を囲む開口縁16,16に、それぞれ内方へ延出する延出片20,20が備えられている。そして、ティシュペーパーT,T…の引き出しは、この延出片20,20を開口縁16,16が基端縁となるように傾斜させ、この傾斜させた延出片20,20の内側面21,21に擦られながら行われる、ように構成されている。しかも、図3に示すように、この延出片20,20の内側面(裏面)21には、香料30が付与されている。したがって、本形態によると、ティシュペーパーT,T…に対する香りの付き方(香料30の付与量)が、延出片20,20の幅(基端縁(開口縁16)から先端縁15までの長さ)M(図1参照)によって決定されることになるため、引き出されたティシュペーパーT,T…を、十分な香りが付いたものとすることができる。また、本形態のティシュペーパー収納箱10は、フィルムレス型なので、ティシュペーパーT,T…の引き出しに際する延出片20,20との擦れが、ティシュペーパー引出用スリットを囲むシート端縁との線接触によって阻害されるおそれもない。したがって、引き出されたティシュペーパーT,T…を十分な香りが付いたものとすることができるとの効果は、確実に得られる。さらに、ティシュペーパーT,T…と延出片20,20との擦れは、ティシュペーパーT,T…の残量による影響を受けないので、ティシュペーパーT,T…が減るのにともなって、かかる効果が得られなくなるおそれもない。つまり、引き出されたティシュペーパーT,T…を最後まで十分な香りが付いたものとすることができる。しかも、本形態のティシュペーパー収納箱10は、香料30を、素材に含有させるものではなく、延出片20,20の内側面21に付与するものに過ぎないため、製造コストの増加を抑えることができる。
【0014】
本形態において、延出片20,20がどのような素材からなり、どのようにして形成されているかは、特に限定されない。ただし、延出片20,20は、上面部材11と同一の紙材で形成されており、図3に示すように、この紙材が開口縁16において折り曲げられることによって延出片20が傾斜させられるのが好ましい。この形態によると、従来の収納箱の引出口形状を変形させるのみで足りるため、製造コストの増加を抑えることができる。
【0015】
ここで、上面部材11及び延出片20,20を形成する紙材の原料となるパルプの種類は、特に限定されない。例えば、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、合成パルプ、古紙パルプ、などから、より具体的には、砕木パルプ(GP)、ストーングランドパルプ(SGP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ブリーチケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)等の機械パルプ(MP)、化学的機械パルプ(CGP)、半化学的パルプ(SCP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等のクラフトパルプ(KP)、ソーダパルプ(AP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)等の化学的パルプ(CP)、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)等を原料とする合成パルプ、脱墨パルプ(DIP)、ウエストパルプ(WP)等の古紙パルプ、かすパルプ(TP)、木綿、アマ、麻、黄麻、マニラ麻、ラミー等を原料とするぼろパルプ、わらパルプ、エスパルトパルプ、バガスパルプ、竹パルプ、ケナフパルプ等の茎稈パルプ、靭皮パルプ等の補助パルプなどから、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。また、これらの原料パルプは、例えば、公知の抄紙工程、具体的には、ワイヤパート、プレスパート、ドライヤパート、サイズプレス、カレンダパート等を経るなどして、紙材とすることができる。この抄紙に際しては、例えば、分散剤、苛性ソーダ、アンモニア水等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、蛍光染料、離型剤、耐水化剤、流動変性剤、歩留まり向上剤などの適宜の薬品を添加することができる。さらに、この紙材は、1層であっても、2層、3層、4層又はそれ以上の多層であってもよい。一般的には、紙材を、多層の板紙にするものと考えられる。
【0016】
また、本形態において、延出片20,20の内側面21,21に対する香料30の付与方法は、特に限定されない。ただし、香料30を芯材とし、かつティシュペーパーT,T…と擦れると壊れるマイクロカプセルを、延出片20,20の内側面21,21に塗布することによって、付与するのが好ましい。香料30をマイクロカプセルで包み込んでおくことにより、香料30の蒸散が著しくおさえられる。また、ティシュペーパーT,T…と擦れると壊れるマイクロカプセルを用いると、ティシュペーパーT,T…の引き出しに際して、ティシュペーパーT,T…と延出片20,20の内側面21,21とが擦れる本形態では、香料30を芯材とするマイクロカプセルも壊れることになる。したがって、ティシュペーパーT,T…に香料30が確実に付与されることになる。そして、ティシュペーパーT,T…と延出片20,20の内側面21,21とは、輸送時などにおいて擦れる可能性が低いため、ティシュペーパーT,T…と擦れると壊れるマイクロカプセルを用いても、使用に先立って香料30が蒸散してしまうおそれが少ない。
【0017】
マイクロカプセルの壁材の種類は、特に限定されない。例えば、ゼラチン、寒天、各種天然ゲル化剤、グリセリン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどを例示することができる。また、マイクロカプセルの構造も特に限定されず、例えば、単純単核のものを例示することができる。さらに、マイクロカプセルの平均粒子径も特に限定されず、例えば、5〜15μm、好ましくは8〜10μmとすることができる。ただし、マイクロカプセルの平均粒子径が小さすぎると、必要かつ十分な香料30を含ませることができなくなる。他方、マイクロカプセルの平均粒子径が大きすぎると、塗布液中における混合時や乾燥時などにおいて、カプセル(壁材)が壊れて、香料30が流出してしまうおそれがある。このほか、マイクロカプセルの膜厚も特に限定されず、例えば、0.1〜1.0μm、好ましくは0.1〜0.5μmとすることができる。ただし、膜厚が薄すぎると、塗布液中における混合時や乾燥時などにおいて、カプセル(壁材)が壊れて、香料30が流出してしまうおそれがある。他方、膜厚が厚すぎると、壁材が壊れにくくなり、香料30がティシュペーパーT,T…に十分付与されなくなってしまうおそれがある。
【0018】
マイクロカプセルの芯材(香料)の割合は、通常70〜90質量%、好ましくは75〜85質量%であるが、香り(昇華性)の強弱に合わせて調整することができる。
【0019】
マイクロカプセルの粒子径や膜厚は、高分子物質を単独又は2種以上混合して、芯材及び壁材の配合成分や配合割合、ゲル化時間などの条件を変更することによって、変更することができる。
【0020】
また、異なる粒子径や膜厚のマイクロカプセルを2種以上混合することによって、香料のティシュペーパーT,T…に対する付与量を制御することもできる。これは、膜厚が薄いと容易に壊れるため、香料の付与が迅速になされ、他方、膜厚が厚いと容易に壊れないため、香料の付与が迅速になされない、という原理などを利用するものである。
【0021】
ところで、ティシュペーパーT,T…が引き出されるときの、延出片20,20の傾斜角θ(図3参照)は、通常、0°<θ<90°、好ましくは30°<=θ<=60°、より好ましくは40°<=θ<=50°である。傾斜角θが小さすぎると、ティシュペーパーT,T…が、延出片20,20の先端縁15,15と線接触してしまうおそれがある。他方、傾斜角θが大きすぎると、ティシュペーパーT,T…が、延出片20,20の基端縁(開口縁16)と線接触してしまうおそれがある。
【0022】
延出片20,20の傾斜角θは、例えば、延出片20,20の幅Mや厚み、素材、破断強度、曲げ強度などをファクターとして、調節することができる。
【0023】
一方、本形態のように、相互に対向する開口縁16,16からそれぞれ延出片20が延出している場合においては、これら延出片20,20が傾斜していないときにおける延出片20,20間の距離L(図1参照)が、10〜30mmとされているのが好ましく、 10〜15mmとされているのがより好ましい。距離Lが長すぎると、ティシュペーパーT,T…が、延出片20,20の内側面21,21の基端部側において擦れなくなってしまうおそれや、引き出したティシュペーパーTの次に引き出すティシュペーパーTが、収納箱10内に落ち込んでしまうおそれがある。
【0024】
また、延出片20,20の基端縁(開口縁16,16)から先端縁15,15までの長さMは、5〜20mmとされているのが好ましく、7.5〜15mmとされているのがより好ましい。長さMが短すぎると、引き出したティシュペーパーT,T…に十分な香りが付かないおそれがある。他方、長さMが長すぎると、ティシュペーパーT,T…と延出片20,20の内側面21,21とが一部接触しなくなり、香りの付き方が頭打ちになるばかりか、ティシュペーパーT,T…を取り出しにくくなるおそれがある。
【0025】
〔その他〕
(1)収納箱10の立体形状は、特に限定されない。例えば、立法体状、直方体状等の六面体状などとすることができる。
【0026】
(2)引出口12の形成方法は、特に限定されない。通常は、上面部材11に、延出片20,20の先端縁15,15及び開口縁14,14に沿って環状にミシン目を形成しておき、このミシン目を裂開することによって、引出口12が形成されることになる。
【0027】
(3)香料30の種類は、特に限定されない。例えば、カーネーション、キンモクセイ、バラ等の花系、カモミール、シナモン、ローズマリー等のハーブ系、オレンジ、レモン、チェリー等の果物系、ヒノキ、松、モミの木等の森林系、さらにはカレー、コーヒー、 チョコレート等の食品系等の中から一種又は数種を選んで用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、家庭、オフィス、自動車内などのさまざまな生活空間において使用することができるティシュペーパー収納箱(ティシュカートン)として、適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ティシュペーパー収納箱の平面図である。
【図2】図1のA−A線断面模式図である。
【図3】延出片部分の拡大図である。
【符号の説明】
【0030】
10…ティシュペーパー収納箱、11…上面部材、12…取出口、14…開口縁、15…先端縁、16…開口縁(基端縁)、20…延出片、21…内側面、30…香料(マイクロカプセル)、T…ティシュペーパー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ティシュペーパーを重畳状態で収納し、上面を構成する部材に前記ティシュペーパーの引出口が形成され、この引出口がティシュペーパー引出用スリットの入ったシートで塞がれていないティシュペーパー収納箱であって、
前記引出口を囲む開口縁に内方へ延出する延出片が備えられ、この延出片の内側面に香料が付与され、
前記ティシュペーパーの引き出しは、前記延出片を前記開口縁が基端縁となるように傾斜させ、この傾斜させた延出片の内側面に擦られながら行われる、ように構成された、ことを特徴とするティシュペーパー収納箱。
【請求項2】
前記延出片が前記上面部材と同一の紙材で形成されており、この紙材が前記開口縁において折り曲げられることによって前記延出片が傾斜させられる、請求項1記載のティシュペーパー収納箱。
【請求項3】
前記香料を芯材とし、かつ前記ティシュペーパーと擦れると壊れるマイクロカプセルが、前記延出片の内側面に塗布されている、請求項1又は請求項2記載のティシュペーパー収納箱。
【請求項4】
前記ティシュペーパーが引き出されるときの、前記延出片の傾斜角が、30〜60°となる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のティシュペーパー収納箱。
【請求項5】
相互に対向する開口縁からそれぞれ前記延出片が延出しており、これら延出片が傾斜していないときおける、これら延出片間の距離が、10〜30mmとされている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のティシュペーパー収納箱。
【請求項6】
前記延出片の基端縁から先端縁までの長さが、5〜20mmとされている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のティシュペーパー収納箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−182248(P2007−182248A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2655(P2006−2655)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】