説明

ティンパノグラムの表示方法

【課題】 ティンパノグラムが見易く、診断を行う際の読み間違いを防止することができるティンパノグラムの表示方法を提供する。
【解決手段】 ティンパノメトリ検査で得られるティンパノグラムの表示方法であって、ティンパノメトリ検査で求めたティンパノグラムからスタティックコンプライアンスを読み取る読取工程と、この読取工程で読み取ったスタティックコンプライアンスのピークに合わせたスタティックコンプライアンスのレンジを決定するレンジ決定工程と、このレンジ決定工程で決定したスタティックコンプライアンスのレンジによりティンパノグラムを表示する表示工程と、この表示工程で表示したティンパノグラムに目安となるラインを描画する目安ライン描画工程を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インピーダンスオージオメータで鼓膜や耳小骨の可動性や中耳の状態などを検査するティンパノメトリ検査で得られるティンパノグラムの表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ティンパノメトリ検査で得られるティンパノグラムの表示方法としては、特許文献1や特許文献2に記載のように、診断をする際に重要な情報となるティンパノグラムの形状やピーク値(スタティックコンプライアンス)が被検者により相違する場合でも、予め決められている縦軸(スタティックコンプライアンス)のレンジ(0〜1ml)により、ティンパノグラムを表示することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2001−149347号公報(図5)
【特許文献2】特開平04−367652号公報(図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1や特許文献2に記載のティンパノグラムの表示方法においては、スタティックコンプライアンスのレンジが固定であるため、スタティックコンプライアンスが表示レンジを超えるような値の場合には、ティンパノグラムのピーク部分が切れてしまう。逆に、スタティックコンプライアンスが表示レンジに比して極端に小さい場合には、ティンパノグラムの波形がつぶれてピーク部分の状態が分かり難い表示になってしまう。
【0005】
そこで、ティンパノグラムを見易くするには、測定された波形のピークに合わせて縦軸(スタティックコンプライアンス)のレンジを切り替えることが有効である。
【0006】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ティンパノグラムが見易く、診断を行う際の読み間違いを防止することができるティンパノグラムの表示方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、ティンパノメトリ検査で得られるティンパノグラムの表示方法であって、ティンパノメトリ検査で求めたティンパノグラムからスタティックコンプライアンスを読み取る読取工程と、この読取工程で読み取ったスタティックコンプライアンスのピークに合わせたスタティックコンプライアンスのレンジを決定するレンジ決定工程と、このレンジ決定工程で決定したスタティックコンプライアンスのレンジによりティンパノグラムを表示する表示工程と、この表示工程で表示したティンパノグラムに目安となるラインを描く目安ライン描画工程を備えたものである。
【0008】
前記目安ライン描画工程で描く目安となるラインを、スタティックコンプライアンス(1.0mL)とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、ティンパノグラムをスタティックコンプライアンスに合わせた見易いサイズにすることができる。また、測定された波形のピークに合わせてスタティックコンプライアンスのレンジが自動で切り替わるので、常に見易いティンパノグラムを自動で表示すると共に、目安となるラインにより読み取り間違いを防止することができる。
【0010】
診断の目安となるラインを、スタティックコンプライアンス(1.0mL)とすれば、ティンパノグラムの波形やピーク値の読み取りが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ティンパノグラムの説明図
【図2】本発明に係るティンパノグラムの表示方法を実施する測定装置のブロック構成図
【図3】本発明に係るティンパノグラムの表示方法の手順を示すフローチャート
【図4】本発明に係るティンパノグラムの表示方法によるティンパノグラム
【発明を実施するための形態】
【0012】
ティンパノグラムは、図1に示すように、横軸が圧力(daPa)、縦軸がスタティックコンプライアンス(mL)で表示される。ここで、daPa(デカパスカル)は、圧力の国際単位Pa(パスカル:1N/m)の10倍を表わしている。等価容積(コンプライアンス)(CMP)は、音響インピーダンス法により外耳道容積を含めた鼓膜(中耳を含む)の可動性をコンプライアンスとして測定し、それを等価容積値(mL)で表記したものである。
【0013】
また、スタティックコンプライアンス(S.C.)は、ティンパノグラムの最大値からPVTを引いた値である。PVTは、物理的容積試験(Physical Volume Test)により得られた値で、外耳道に+200daPaの圧力を掛けた時の容積をいう。この状態では、鼓膜の可動性が殆どなくなっていると考えられるため、+200daPaの圧力を掛けた時の等価容積値(コンプライアンス)(mL)は、後述するイヤプローブ3で閉じられた外耳道の容積をほぼ示している。
【0014】
本発明に係るティンパノグラムの表示方法を実施する測定装置1は、図2に示すように、装置本体2と、装置本体2に接続されるイヤホン及びマイクロホンなどを備えたイヤプローブ3から構成される。
【0015】
装置本体2は、音響インピーダンスを測定するためのインピーダンス測定部4、外耳道圧力をコントロールするための圧力部5、測定結果などを表示する表示部6、全体をコントロールする制御部7、操作ボタン8などからなる。9は圧力系配管、10はプローブ端子、11はエアチューブ端子である。
【0016】
また、インピーダンス測定部4は、マイクロホンの出力信号を増幅する増幅器12、イヤホンへの入力信号を増幅する増幅器13、信号変換部14、信号生成部15、信号制御部16などからなる。圧力部5は、圧力トランスジューサ17、電磁ポンプ18、圧力制御部19、圧力保護装置20などからなる。表示部6は、液晶表示器22、プリンタ23などからなる。
【0017】
ティンパノメトリ検査は、イヤプローブ3を外耳道入口に押し当てて行われる。また、ティンパノメトリ検査は、イヤプローブ3により密閉された外耳道に226Hz、85dB の音を入れ、その時の外耳道内の音をマイクロホンで受ける。更に、外耳道内の圧力を加圧から減圧まで連続的に変化させることにより、鼓膜の可動性を変化させ、その時の音響インピーダンスを測定する。
【0018】
音響インピーダンスは、等価容積(コンプライアンス)で表示される。この等価容積により、鼓膜や耳小骨の可動性や中耳の状態を知ることができる。測定結果は、液晶表示器22に表示される。ティンパノグラムの表示のほか、等価外耳道容積(PVT)、スタティックコンプライアンス(S.C.)とその圧力値(PEAK)が数字で表示される。
【0019】
以上のように構成された測定装置を用いた本発明に係るティンパノグラムの表示方法について説明する。図3に示すように、ステップSP1において、測定装置1を用いて被検者に対してティンパノメトリ検査を行う(検査工程)。
【0020】
次いで、ステップSP2において、検査工程で求めたティンパノグラムからスタティックコンプライアンス(S.C.)を読み取る(読取工程)。次いで、ステップSP3において、読取工程で読み取ったスタティックコンプライアンス(S.C.)のピークに合わせたスタティックコンプライアンスのレンジを決定する(レンジ決定工程)。
【0021】
次いで、ステップSP4において、レンジ決定工程で決定したスタティックコンプライアンスのレンジによりティンパノグラムを表示する(表示工程)。次いで、ステップSP5において、表示工程で表示したティンパノグラムに目安となるラインを描く(目安ライン描画工程)。
【0022】
以上の工程を経て、図4に示すようなティンパノグラム30が得られ、液晶表示器22により表示される。ここでは、PVTが2.4mL、スタティックコンプライアンス(S.C.)が1.7mL、ピークにおける圧力が0daPaの場合である。そして、目安となるライン31として、スタティックコンプライアンス(1.0mL)が描かれている。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、測定された波形のピークに合わせてスタティックコンプライアンスのレンジが自動で切り替わるので、常に見易いティンパノグラムを自動で表示すると共に、目安となるラインにより読み取り間違いを防止するティンパノグラムの表示方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0024】
1…測定装置、2…装置本体、3…イヤプローブ、4…インピーダンス測定部、5…圧力部、6…表示部、7…制御部、8…操作ボタン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ティンパノメトリ検査で得られるティンパノグラムの表示方法であって、ティンパノメトリ検査で求めたティンパノグラムからスタティックコンプライアンスを読み取る読取工程と、この読取工程で読み取ったスタティックコンプライアンスのピークに合わせたスタティックコンプライアンスのレンジを決定するレンジ決定工程と、このレンジ決定工程で決定したスタティックコンプライアンスのレンジによりティンパノグラムを表示する表示工程と、この表示工程で表示したティンパノグラムに目安となるラインを描く目安ライン描画工程を備えたことを特徴とするティンパノグラムの表示方法。
【請求項2】
請求項1に記載のティンパノグラムの表示方法において、前記目安ライン描画工程で描く目安となるラインが、スタティックコンプライアンス(1.0mL)であることを特徴とするティンパノグラムの表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−90764(P2012−90764A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240564(P2010−240564)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000115636)リオン株式会社 (128)
【Fターム(参考)】