説明

テトラサイクリン誘導可能な転写制御配列

本発明は、遺伝子発現の調節のための、誘導可能な転写制御配列に関するものである。特に、それは、テトラサイクリン依存性転写レギュレーターの結合を可能にする少なくとも2つのtetオペレーター配列モチーフであって、該テトラサイクリン依存性転写レギュレーターの各々は、その隣接成分に関して、DNAヘリックスの対面に結合する当該少なくとも2つのtetオペレーター配列モチーフ、及びTATAボックスをその5’末端で一般的転写因子結合部位と結合して含む最小プロモーターを含む転写制御配列に関係する。更に、本発明は、該転写制御配列を含むベクター、宿主細胞、植物又は非ヒトトランスジェニック動物に関係する。本発明の転写制御配列に機能的に結合された核酸配列の発現を、宿主細胞、植物又は非ヒトトランスジェニック動物において調節する方法も又、意図される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子発現の調節のための誘導可能な転写制御配列に関するものである。特に、それは、テトラサイクリン依存性転写レギュレーターの結合を可能にする少なくとも2つのtetオペレーター配列モチーフ、及び最小プロモーターを含む転写制御配列に関するものであり、該テトラサイクリン依存性転写レギュレーターの各々は、隣接成分に関して、DNA二重らせんの向かい合った面(opposite face)に結合し、最小プロモーターは、その5’端で一般的転写因子結合部位に結合したTATAボックスを含んでいる。更に、本発明は、該転写制御配列を含むベクター、宿主細胞、植物又は非ヒトトランスジェニック動物に関係する。宿主細胞、植物又は非ヒトトランスジェニック動物において、本発明の転写制御配列に機能的に結合された核酸配列の発現を調節する方法も又、意図される。
【背景技術】
【0002】
ポリペプチドの組換えによる製造のため、並びに、イン・ビボでの遺伝子発現の制御のためには、その発現過程の外因的制御(即ち、発現のオン又はオフ)が、特に重要である。このコンテキストにおいて、通常、該外因的制御を達成するために、発現制御のための誘導可能なシステムが適用される。特に、ある種の核酸の発現は、外因的刺激によって支配されうる。かかる刺激は、物理的培養条件における変化たとえば熱ショック、又はある種の化合物の存在若しくは非存在(即ち、離脱withdrawal)であってよい。
【0003】
商業的及び科学的に重要な誘導可能な発現系は、いわゆる、「テトラサイクリン誘導可能なシステム」即ち「Tetシステム」である。それは、Bujardとその共同研究者によって、10年以上前に開発されている。Gossen 1992, Proc.Natl.Acad.Sci. 89: 5547-5551, US 5,888,981, US 5,814,618, US 6,004,941, US 5,814,618, US10/456,395, WO96/01313又はWO00/75347を参照されたい。
【0004】
簡単には、このTetシステムは、核酸発現の制御を、発現すべき核酸に機能的に結合されたtetオペレーター配列を含むプロモーターを利用することにより与える。該プロモーターは、テトラサイクリン依存性転写アクチベーターのtetオペレーター配列への結合に際して、核酸配列の転写を開始することができ、又はそれは、構成的に活性なプロモーターの転写を、テトラサイクリン依存性転写サイレンサーの結合によって抑制することができる。
【0005】
伝統的に、テトラサイクリン依存性レギュレーターは、テトラサイクリンの非存在下でtetオペレーター配列に結合し、存在下では結合しない。従って、発現は、テトラサイクリン又はテトラサイクリン類似体の、例えば発現に用いられる細胞系統の培養培地からの離脱により開始することができる(US5,464,758, US6,914,124, US5,789,156, US6,271,348, WO96/01313, 又はWO00/75347)。
【0006】
その後、反対(逆)の仕方での調節を可能にするテトラサイクリン依存性レギュレーターが開発された。かかるレギュレーターの使用により、発現を、テトラサイクリン又はその類似体の、例えば発現に用いられる細胞系統の培養培地への添加により開始することができる(US5,654,168, US6,136,954, US5,789,156, US6,271,348, US6,087,166, US6,271,341, US10/456,395, WO96/01313,又はWO00/75347)。
【0007】
Tetシステムの最近の改良は、テトラサイクリン依存性レギュレーターに集中した。特に、一層低い基礎活性を生じるが、高い誘導ポテンシャルを維持した改良されたレギュレーターが、開発された。こうして、誘導因子は、大いに改良された。その上、最大誘導が、一層低いテトラサイクリン又はテトラサイクリン類似体濃度で達成された。US10/456,395又はWO00/75347参照。
【0008】
位置を変えたtetオペレーターエレメントを含むテトラサイクリン依存性プロモーターも又、報告された。Agha-Mohammadi 2004, J Gene Medicine, 6: 817-828又はUS2003/0221203参照。この開示されたプロモーターは、短くされたCMV最小プロモーター及び、該最小プロモーターの上流の6〜8tetオペレーター配列モチーフを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願US10/456,395号
【特許文献2】国際公開WO00/75347号
【特許文献3】米国特許出願US2003/0221203号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Agha-Mohammadi 2004, J Gene Medicine, 6: 817-828
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、改良された厳格な信頼できる調節を可能にするテトラサイクリン依存性転写制御配列、即ち低い基礎活性を有するが依然として高い誘導ポテンシャルを保持した該制御配列は、従来技術では報告されておらず、依然として、大いに望ましいものである。
従って、本発明が対象とする技術的問題は、高い基礎活性及び不適当又は信頼できない誘導の欠点を回避することを可能にする誘導可能な遺伝子の調節を改良する手段及び方法の提供といえる。この技術的問題は、請求の範囲及び下記において特徴付けられる具体例によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一般に、本発明は、tetオペレーター配列及び最小プロモーターを含む転写制御配列に関係する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、
−該転写制御配列は、それに機能的に結合された核酸の発現の、少なくとも100倍の、少なくとも200倍の、少なくとも300倍の、少なくとも400倍の、少なくとも500倍の又は少なくとも1000倍の誘導を可能にし、そして
−この転写制御配列は、市販のPtet−14プロモーター(米国、Clontech Laboratories Inc.)の基礎的活性より有意に少ない基礎的遺伝子発現即ち非誘導状態での遺伝子発現を可能にする。前述の誘導及び/又は基礎的活性は、好ましくは、下記の実施例に記載されたようにして測定される。
図面は、下記を示している:
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】転写制御配列Ptet−T1、Ptet−T2、Ptet−T3、Ptet−T4、Ptet−T5、Ptet−T6及びPtet−T7の配列比較。調節ユニットPtet−T1〜T7中で用いられた最小プロモーターの配列アラインメント。hCMV最小プロモーターT1(=Ptet-1)の改変後のプロモーター配列の変種。元の配列の変異は、太字で示されており、欠失は、ダッシュで示した。植物ウイルスリーダー(TYMV)における類似の配列改変を青色で示し、欠失は、ダッシュで示した。すべてのコンストラクトに共通するものは、TATAボックスとhCMVイニシエーター配列(+1/+12、黄色)であり、転写開始部位をカバーしている。T2から、TFIIBコンセンサス結合部位が導入された。HindIII(5’)とSalI(3’)のクローニング部位(下線)も、やはり共通であった。T1〜T4プロモーターは、hCMV5’−UTR及びその変異体を含み、T5〜T7プロモーターは、TYMV5’−UTR及びその変異体を含む。用いられるTYMV−リーダーは、ウイルス配列の+2−90の配列を含む。これらの整列させた配列のSEQ ID NOは、これらの配列の後の括弧に示してある。
【図2】Ptet−T1 −> Ptet−T6の誘導状態及び非誘導状態におけるルシフェラーゼ誘導及び基礎的活性。
【図3】Ptet−T6、Ptet−T7、Ptet−14(Clontech Laboratories, Inc.(米国)から市販されている)Ptet−1(Gossen 1992, loc. cit.)及び構成的に発現されているレポーターコンストラクト(PhCMV)の誘導状態及び非誘導状態におけるルシフェラーゼ誘導及び基礎的活性を、同一条件下で分析した。
【図4】Ptet−T6の合成配列。Aは、Ptet−T6の合成の(CpGアイランドフリー)配列(Ptet−T6syn)を示しており、Ptet−T6と比較してのヌクレオチド変化は、小文字にし、下線を引いてあって、これらは、CpGジヌクレオチドを除くために導入され;Bは、二方向性のPtet−T6synを示している。TATAボックスも又、下線を引いてある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
用語「転写制御配列」は、ここで用いる場合、それに機能的に結合された他の核酸配列例えば関心ある遺伝子の発現を支配することのできる核酸配列を指す。この転写制御配列は、好ましくは、DNA配列即ちDNAポリヌクレオチドである。本発明による転写制御配列は、本書の他所で詳述してあるように、tetオペレーター配列モチーフ及び最小プロモーター配列を含む。本発明に従って言及される転写制御配列は、好ましくは、ポリペプチド即ち転写因子により認識されて結合される配列モチーフを含む。該転写因子は、結合に際して、RNAポリメラーゼを、好ましくはRNAポリメラーゼI、II又はIIIを、一層好ましくはRNAポリメラーゼII又はIIIを、最も好ましくはRNAポリメラーゼIIをリクルートする。それにより、この転写制御配列に機能的に結合された核酸の発現が開始される。発現すべき核酸の種類によって、本願で意味される発現は、DNA配列の(例えば、アンチセンスアプローチ、RNAiアプローチ又はリボザイムアプローチに適切な)RNAポリヌクレオチドへの転写を含むことができ又はDNA配列のRNAポリヌクレオチドへの転写とその後の該RNAポリヌクレオチドの(例えば、遺伝子発現及び組換えポリペプチド生成アプローチに適切な)ポリペプチドへの翻訳を含むことができるということは、理解されるべきである。核酸配列の発現を支配するために、この転写制御配列は、発現すべき核酸の直ぐ隣りに配置し、即ち、該核酸に、その5’末端で物理的に結合されてもよい。別法として、それは、物理的に近くに配置されてもよい。しかしながら、後者の場合には、この配列は、発現されるべき核酸との機能的相互作用が可能であるように配置されなければならない。
【0016】
用語「tetオペレーター配列モチーフ」、「tetオペレーター」、又は「tetO」は、ここで用いる場合、すべてのクラスのtetオペレーター配列を包含することを意図している。好ましくは、それは、tetO(A)、tetO(B)、tetO(C)、tetO(D)、tetO(E)、tetO(G)、tetO(H)、tetO(J)及びtetO(Z)に関する。これらのA、B、C、D、E、G、H、J及びZクラスのTetリプレッサーのメンバーのヌクレオチド配列、及びそれらの対応するtetオペレーター配列は、当分野で周知であり、例えば、Waters 1983, Nucl. Acids Res 11:6089-6105, Hillen 1983, Nucl. Acids Res. 11:525-539, Postle 1984, Nucl. Acids Res. 12:4849-4863, Unger 1984, Gene 31: 103-108, Unger 1984, Nucl Acids Res. 12:7693-7703及びTovar 1988, Mol. Gen. Genet. 215:76-80を参照されたい(これらを、特に、開示されたtetオペレーター配列に関して、参考として、そっくりそのまま、本明細書中に援用する)。tetオペレーター配列は又、US5,464,758にも開示されている。本発明による好適なtetオペレーター配列モチーフは、SEQ ID No:1に示された核酸配列を有する。
【0017】
用語「最小プロモーター」は、本発明の意味において、転写開始複合体の形成に関与するDNA結合性の一般的転写因子によって特異的に認識される核酸配列モチーフを含むプロモーターに関係する。しかしながら、最小プロモーターにより駆動される核酸配列の有意の転写の開始、従って発現の有意の開始は、更なるシグナル例えばエンハンサーエレメントから与えられるシグナルを必要とする。従って、ここで言及する場合、最小プロモーターは、単独では、それに機能的に結合された核酸の転写を有意な程度で可能にしない。しかしながら、該最小プロモーターと適当な制御エレメント、例えばここで言及されるtetオペレーター配列モチーフとの組合わせによって、その結果生成した転写制御配列は、tetオペレーター結合性転写因子例えば本書の他所で言及されるテトラサイクリン依存性転写レギュレーターの誘導/活性化により、核酸の転写を可能にする。
【0018】
本発明によれば、該最小プロモーターは、好ましくは、TATAボックス配列モチーフ及び少なくとも一つの(更なる)一般的転写因子結合部位を含む。好ましくは、ここで言及されるTATAボックスは、核酸配列モチーフ「TATAAAA」(SEQ ID No:4)よりなる。この一般的転写因子結合部位は、好ましくは、TATAボックスの近くに位置し、一層好ましくは、TATAボックス配列の5’末端に直接隣接して配置される。最小プロモーターは、CMV最小プロモーターの場合のように、既にTATAボックスを含んでいるのが好ましいということは理解されるべきである。一般的転写因子結合部位は、天然には、最小プロモーター中に存在しえない。従って、そのような場合、該一般的転写因子結合部位は、好ましくは、人工的に、最小プロモーター中に、例えば位置指定突然変異誘発アプローチによって導入される。用語「更なる一般的転写因子結合部位」は、一般的転写因子と結合することのできるTATAボックス以外の核酸配列モチーフを指す。一般的転写因子は、転写を開始するためにRNAポリメラーゼ好ましくはRNAポリメラーゼII又はIIIをプロモーターにリクルートするのに必要とされる転写因子である。一般的転写因子並びにそれらにより認識されて結合される核酸配列モチーフは、当分野で周知である。好ましくは、一般的転写因子結合部位は、本発明の意味において、RNAポリメラーゼとのプレ開始複合体の形成に関与し、コアプロモーター領域と相互作用することのできる転写因子(即ち、DNA結合性タンパク質である)のための結合部位である。一層好ましくは、本発明により言及される更なる一般的転写因子結合部位は、TFIIB結合部位(SEQ ID No:3)である。
【0019】
様々な十分に特性決定された最小プロモーターが、当分野では公知であり、例えば、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)又はヒトサイトメガロウイルスIE(hCMV)の最小プロモーター又は非ウイルス性最小プロモーターが知られている。かかる最小プロモーターは、必要であれば、本発明により、TATAボックス及び更なる一般的転写因子結合部位を含むように、当業者によって更に骨を折ることなく、改変することができる。
【0020】
好ましくは、ここで言及される最小プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)最小プロモーターに由来するものであってよく、一層好ましくは、ヒトCMV(hCMV)に由来するもの例えばGossen及びBujard 1992, loc. Cit.に記載されたようなhCMV最初期プロモーター由来の最小プロモーターであってよい。一層好ましくは、該hCMV最小プロモーターは、SEQ ID No:2に示された核酸配列を有する。かかるhCMV最小プロモーターの変異体も又、使用することができる。かかる変異体は、SEQ ID No:2に示された配列に関して、少なくとも一のヌクレオチドの欠失、置換及び/又は付加を含む。従って、変異体は、好ましくは、SEQ ID No:2に示された配列に対して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一である核酸配列を有する。種々の配列を比較するために、当業者は、様々なアルゴリズムに基づく一連のプログラムを利用することができる。このコンテキストにおいて、Needleman及びWunsch又はSmith及びWatermanのアルゴリズムは、特に信頼できる結果を与える。これらの配列アルゴリズムを実行するためには、プログラムPileUp(J. Mol. Evolution. 1987, 25, 351-360,及びHiggins 1989, CABIOS, 5: 151-153)又はプログラムGap及びBestFit(Needleman 1970, J. Mol. Biol. 48; 443-453及びSmith 1981, Adv. Appl. Math. 2; 482-489)(これらは、GCGソフトウェアパッケージ(Genetics Computer Group, 米国、ウィスコンシン、53711, Madison, Science Drive, 575, バージョン1991)の部分である)を使うべきである。上記の配列の同一性のパーセント値(%)は、好ましくは、全配列にわたって、プログラムGAPを用いて、次のセッティングにて決定すべきである:ギャップ重み:50、長さ重み:3、平均マッチ:10.000及び平均ミスマッチ:0.000(これらは、別途特定されない限り、配列アルゴリズムに関して、標準セッティングとして常に用いられる)。変異体は又、前述の特異的核酸配列と好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることのできる核酸配列をも包含する。これらのストリンジェントな条件は、当業者には公知であり、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1-6.3.6中に見出すことができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好適な例は、約45℃の6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(=SSC)でのハイブリダイゼーションとその後の50〜65℃の0.2×SSC、0.1%SDSでの一回以上の洗浄というものである。当業者は、例えば有機溶媒が存在する場合、これらのハイブリダイゼーション条件が核酸の種類によって、緩衝液の温度及び濃度に関して異なることを知っている。例えば、「標準的ハイブリダイゼーション条件」下で、これらの温度は、0.1〜5×SSC濃度の水性緩衝液(pH7.2)中で、核酸の種類によって、42〜58℃で異なる。もし有機溶媒が前述の緩衝液中に存在するならば(例えば、50%のホルムアミド)、標準的条件下での温度は、約42℃である。DNA:DNAハイブリッドのためのハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、例えば、0.1×SSC及び20〜45℃、好ましくは、30〜45℃である。DNA:RNAハイブリッドのためのハイブリダイゼーション条件は、例えば、0.1×SSC及び30〜55℃、好ましくは45〜55℃である。前述のハイブリダイゼーション温度は、ホルムアミドの非存在下で、例えば約100bp(=塩基対)長でG+C含量が50%の核酸について決定される。当業者は、必要なハイブリダイゼーション条件を如何にして決定するかを、上記のような又は次のような教本を参照することにより知る:Sambrook等、「Molecular Cloning」、Cold Spring Harbor Laboratory, 1989; Hames及びHiggins (編) 1985, 「Nucleic Acids Hybridization: A Practical Approach」、IRL Press at Oxford University Press, Oxford; Brown (編) 1991, 「Essential Molecular Biology: A Practical Approach」、IRL Press, Oxford University Press, Oxford。
【0021】
TATAボックス及び更なる一般的転写因子結合部位即ちTFIIB結合部位を有するhCMV最小プロモーターに由来する好適な最小プロモーターを、SEQ ID No:5に示してある。かかる最小プロモーターを有する転写制御配列は、Ptet−T2である。SEQ ID No:5に示した配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一である核酸配列を有するSEQ ID No:5に示した該最小プロモーターの変異体又はそれに好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする変異体も又、本発明により意図される(但し、これらの変異体は、上記の最小プロモーターの特性を保持し、上記のTATAボックス及び更なる一般的転写因子結合部位を含む)ということは理解される。
【0022】
その上、最小プロモーターは、好ましくは、通常CMV最小プロモーター中に存在するDSEエレメント(Ghazal 1991, J. Virol. 65: 2299-2307)の欠失又は不活性化により改変される。特に、hCMVの5’−UTR(即ち、SEQ ID No:5のヌクレオチド位置+1/75)を、SEQ ID No:5のヌクレオチド位置+33/50に位置するDSEエレメントの部分及びこのエレメントの3’側配列を欠失させるために切り詰めることができる。かかる最小プロモーターを有する転写制御配列は、Ptet−T3(SEQ ID No:13)である。その上、SEQ ID No:5のヌクレオチド位置+1/12のイニシエーター配列エレメントの3’側に存在するCMV最小プロモーターの5’UTRも又、好ましくは、完全に欠失される。かかる最小プロモーターを有する転写制御配列は、Ptet−T4(SEQ ID No:14)である。従って、本発明による転写制御配列に用いるべき好適な最小プロモーターは、SEQ ID No:10に示した核酸配列を有する。SEQ ID No:10に示した配列に対して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一である核酸配列を有するSEQ ID No:10に示した該最小プロモーターの変異体又はそれに好ましくはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする変異体も又、本発明により意図される(但し、これらの変異体は、上記の最小プロモーターの特性を保持し、上記のTATAボックス及び更なる一般的転写因子結合部位及び前述の更なる改変を含む)ということは、当然、理解されよう。
【0023】
好ましくは、ここで言及される最小プロモーターは、例えば、Loew等、2006, loc. cit.に記載されたように、マウス乳癌ウイルス(MMTV)最小プロモーターに由来してよい。一層好ましくは、該MMTV最小プロモーターは、SEQ ID No:18に示された核酸配列を有する。かかるMMTV最小プロモーターの変異体も又、使用することができる。かかる変異体は、SEQ ID No:18に示した配列に関して、少なくとも一ヌクレオチドの欠失、置換及び/又は付加を含む。従って、変異体は、好ましくは、SEQ ID No:18に示した配列に対して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一である核酸配列又はそれに対して好ましくはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列を有する。かかるMMTV最小プロモーターを有する転写制御配列は、SEQ ID No:19に示した核酸配列を有するPtet−T8である。
【0024】
その上、この最小プロモーターは、好ましくは、上流の転写因子結合部位NF1、FoxA1及びOct−1(OTF−1)の欠失又は不活性化によって改変される。これらは、通常、MMTV最小プロモーター中に存在する(Cato 1988, J. Cell Biol., 106: 2119-2125; Xu 1994, Virus Res., 33: 167-178; Holmqvist 2005, Exp. Cell Res., 304:593-603; Belikov 2004, J. Biol. Chem., 279, 49857-49867)。特に、SEQ ID No:18中の、MMTVのTATAボックスの5’側領域(即ち、ヌクレオチド位置−75/−62(NF−1、SEQ ID No:21)、−56/−45(FoxA11、SEQ ID No:22)、−44/−34(FoxA12、SEQ ID No:22)、−56/−49(Oct11、SEQ ID No:20)及び−44/−37(Oct12、SEQ ID No:20))を、このシスエレメントを最小プロモーターから除去するために、欠失させることができる。かかる最小プロモーターを有する転写制御配列は、Ptet−T9(SEQ ID No:23)である。SEQ ID No:23に示した配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一である核酸配列を有するSEQ ID No:23に示した該最小プロモーターの変異体又はそれに好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする変異体も又、本発明により意図される(但し、これらの変異体は、上記の最小プロモーターの特性を保持し、上記のTATAボックス及び更なる一般的転写因子結合部位及び前述の更なる改変を含む)ということは、当然、理解されよう。
【0025】
TATAボックス及び更なる一般的転写因子結合部位即ちTFIIB結合部位を有するMMTV最小プロモーターに由来する更なる好適な最小プロモーターを、SEQ ID No:3及びSEQ ID No:4に示してある。かかる最小プロモーターを有する転写制御配列は、SEQ ID No:24に示したPtet−T10である。SEQ ID No:24に示した配列に対して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一である核酸配列を有する該転写制御配列の変異体又はそれに好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする変異体も又、本発明により意図される(但し、これらの変異体は、上記の最小プロモーターの特性を保持し、上記のTATAボックス及び更なる一般的転写因子結合部位を含む)ということは理解されよう。
【0026】
用語「機能的に結合された」は、ここで用いる場合、原則として、2つの核酸が、物理的に結合され又は機能的に結合され、それで、これらの核酸の少なくとも一方が他方の核酸に対して作用することができることを意味する。本発明の転写制御配列及び発現すべき核酸配列例えば関心ある遺伝子は、もしその核酸配列の発現を該転写制御配列により支配することができるならば、機能的に結合される。従って、この転写制御配列及び発現すべき核酸配列は、互いに物理的に結合することが、例えば、転写制御配列を発現すべき核酸配列の5’末端に挿入することによってできる。別法として、この転写制御配列と発現すべき核酸を、単に、物理的に近くに配置させ、それで、転写制御配列が発現すべき核酸配列に機能的に結合させることができる。この転写制御配列及び発現すべき核酸は、好ましくは、1,500bp、500bp、300bp、100bp、80bp、60bp、40bp、20bp、10bp又は5bp以内で離れている。
【0027】
本発明の転写制御配列に機能的に結合された核酸の発現は、テトラサイクリン依存性転写レギュレーターを含む宿主細胞、非ヒトトランスジェニック動物又は植物をこの詳細な説明の他所で特定されるテトラサイクリン又はその類似体と接触させることにより誘導されうるということは理解される。
【0028】
好ましくは、本発明により言及される転写制御配列の誘導倍率(fold induction)を測定するために、テトラサイクリン依存性転写レギュレーターを発現する宿主細胞を作成することができる。該細胞系統は、更に、発現すべき核酸配列好ましくはレポーター遺伝子例えばホタルのルシフェラーゼに機能的に結合された転写制御配列を含む。この転写制御配列は、細胞系統に、当分野で公知の安定に細胞をトランスフェクトするための技術によって導入することができる。誘導倍率を測定するために、核酸配列の発現を、非誘導状態と誘導後に測定する。誘導は、テトラサイクリン又はその類似体の存在下でtetオペレーターに結合するテトラサイクリン依存性レギュレーターの場合には、宿主細胞をテトラサイクリン又はその類似体と接触させることにより達成することができるということは理解されるべきである。テトラサイクリン又はその類似体の非存在下でtetオペレーターに結合するテトラサイクリン依存性レギュレーターの場合には、誘導は、細胞系統の細胞を予めテトラサイクリン又はその類似体に接触させた後で、該テトラサイクリン又はその類似体の離脱により達成される。誘導された転写活性及び基礎的(即ち、未誘導での)転写活性を、レポーター遺伝子活性(好ましくは、ルシフェラーゼ)の量を、エフェクター分子即ちテトラサイクリン又はその類似体の添加又は離脱の24時間後に測定することにより測定する。かかる測定のために、好ましくは、レポーター遺伝子を、転写されるべき核酸として利用し、転写物の量を、レポーター遺伝子の遺伝子産物の量及びその活性を測定することにより測定する。適当なレポーター遺伝子は、例えば、ルシフェラーゼ又はクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼを包含する。これらのテトラサイクリン依存性転写レギュレーターを利用する遺伝子発現の真正の及び逆向きの調節の原理は、当分野で周知であり、US5,888,981, US5,814,618, US6,004,941, US5,814,618, US10/456,395, WO96/01313,又はWO00/75347に詳細に記載されている。相対的誘導倍率を、誘導された状態における核酸発現の、非誘導状態における核酸発現に対する比として計算することができる。一層詳細には、この転写制御配列の誘導倍率は、実施例に詳細に記載したようにして測定することができる。転写制御配列の基礎的転写は、非誘導状態での発現されるべき核酸の転写物の量を、参照用プロモーター好ましくはPtet−14(Clontech Laboratories, Inc., 米国)からの非誘導状態で転写された発現されるべき当該核酸の転写物の量と比較することにより決定することができる。
【0029】
ここで用いる場合、「テトラサイクリン類似体」は、構造的にテトラサイクリンと関連し、Tetリプレッサー又はテトラサイクリン依存性転写レギュレーター(以下、本明細書中で言及)に約10-6MのKaで結合する化合物を包含することを意図している。好ましくは、このテトラサイクリン類似体は、約10-9M以上の親和性で結合する。好ましくは、テトラサイクリン類似体は、アンヒドロテトラサイクリン(atc)、ドキシサイクリン(dox)、クロロテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、又はデオキシテトラサイクリンである。更なる類似体は、Hlavka及びBoothe「The Tetracyclines」(Handbook of Experimental Pharmacology 78, R.K. Blackwood等(編)、Springer-Verlag, Berlin, N.Y., 1995中); Mitscher, 「The Chemistry of the Tetracycline Antibiotics」、Medicinal Research 9, Dekker, N.Y., 1978; Noyee Development Corporation, 「Tetracycline Manufacturing Processes」Chemical Process Reviews, Park Ridge, N.J., 第二巻、1969;Evans,「The Technology of the Tetracyclines」Biochemical Reference Series 1, Quadrangle Press, New York, 1968; 及び Dowling,「Tetracycline」Antibiotic Monographs, no. 3, Medical Encyclopedia, New York, 1955 に開示されている。加えて、テトラサイクリン類似体は、WO2007/133797及びWO2007/133798に開示されたものを包含する。
【0030】
上記に照らして、本発明は、一層特には、下記を含む転写制御配列に関する:
a)テトラサイクリン依存性転写レギュレーターの結合を可能にする少なくとも2つのtetオペレーター配列モチーフ(該テトラサイクリン依存性転写レギュレーターの各々は、その隣接成分に関して、DNAらせんの向かい合った面に結合する);及び
b)その5’末端で更なる一般的転写因子結合部位に機能的に結合したTATAボックスを含む最小プロモーター。
【0031】
用語「少なくとも2つ」は、ここで用いる場合、好ましくは、2つ又はそれより多く、即ち、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ又は少なくとも8つを意味する。本発明の転写制御配列に含まれるべきオペレーター配列モチーフの特に好適な数は、7である。
【0032】
前記のテトラサイクリン依存性レギュレーターは、隣接したtetオペレーター配列モチーフにトランス配向で結合する、即ちDNAらせんの向かい合った面(又は表面:opposing faces or surfaces)と相互作用するということが考えられる。従って、少なくとも2つの隣接するtetオペレーターの中央のヌクレオチド(SEQ ID No:1の中央のG)は、互いに36ヌクレオチド離れている(3.5らせん回転に等しい)。従って、スペーサーは、好ましくは、17連続ヌクレオチド長である。かかるスペーサーは、テトラサイクリン依存性転写アクチベーターの、tetオペレーター配列モチーフに結合した際の、最適の配置を可能にするということが、本発明により見出された。一層好ましくは、該スペーサーは、シス調節用エレメント、パリンドローム配列及び/又はスプライス部位を含まない。該スペーサーは、好ましくは、核酸合成により得ることができる。その上、潜在的なシス調節用エレメントを、当分野で周知の核酸配列分析用のアルゴリズム(好ましくは、Matys 2003, Nucleic Acids Res 31: 374-378に詳細に記載されている)によって同定することができる。好ましくは、Biological Database GmbH(ドイツ国)の商業的に利用可能なTRANSFACデータベース(リリース7.0)が利用される。この発明によるシス調節用エレメントを有しない配列を生成するために、一般に、シス調節用エレメントは、例えばそれらの共通配列中に突然変異を導入することにより欠失されうるか又は不活性化されうる。その上、一つより多くのスペーサーが必要とされるならば(即ち、3つ以上のtetオペレーター配列モチーフが用いられる場合)、該tetオペレーターを隔てるこれらのスペーサー核酸配列は、異なる核酸配列を有するのが好ましい。再び、かかるスペーサーは、核酸合成により、容易に得ることができる。
【0033】
本発明の転写制御配列の好適具体例において、該最小プロモーターは、その3’末端で、カブ黄斑モザイク・ウイルス(TYMV)の5’UTRに結合される。該TYMVの5’UTRは、SEQ ID No:11に示した核酸配列又は該配列に関して少なくとも一ヌクレオチドの欠失、置換及び/又は付加を含む変異体を有する。かかる変異体は、好ましくは、SEQ ID No:11に示した核酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一であるか又はそれと好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸配列を有する。この配列同一性は、上記のアルゴリズム及び技術により測定することができる。かかるTYMVを有する転写制御配列は、Ptet−T5(SEQ ID No:15)である。好ましくは、TYMVの該5’UTRは、本書の他所に記したように、シス調節用エレメントを含まない。一層好ましくは、TYMV5’UTRは、RFX−1結合部位(SEQ ID No:6)、AP4結合部位(SEQ ID No:7)、HP−1結合部位(SEQ ID No:8)、及び/又はHP−2結合部位(SEQ ID No:9)を含まない。前述の転写因子結合部位の核酸配列モチーフも又、当分野で周知である(Transfac Database参照)。該シス調節用エレメントを有しないTYMVを有する転写制御配列は、Ptet−T6(SEQ ID No:16)及びPtet−T11(SEQ ID No:25)である。それ故、本発明による転写制御配列で用いるのに特に好ましい5’UTRは、SEQ ID No:12に示した核酸配列を有する。SEQ ID No:12に示した配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%同一である核酸配列を有する該5’UTRの変異体又はそれと好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする変異体も又、シス調節用エレメントを有さず、5’UTRとして役立ちうるということは理解されよう。
【0034】
本発明による好適な転写制御配列は、SEQ ID No:13〜17、24若しくは25の何れか一つに示した核酸配列又はそれらの変異体を含むものであり、該変異体は、SEQ ID No:13〜17、24若しくは25に示した配列に関して、少なくとも一ヌクレオチドの欠失、置換又は付加を含みうる。従って、変異体は、好ましくは、SEQ ID No:13〜17、24若しくは25の何れか一つに示した配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%同一である核酸配列又は、本書の他所に記したように、該特異的配列に好ましくはストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることのできる核酸を有する。上記の配列同一性は、好ましくは、上記のアルゴリズム及び技術によって測定される。しかしながら、本発明による変異型転写制御配列は、依然として、少なくとも2つのtetオペレーター配列モチーフ及び最小プロモーターを含み、これは、TATAボックス及び更なる一般的転写因子結合部位を含み、それにより、該転写制御配列は、それに機能的に結合された核酸の発現の少なくとも100倍の誘導を可能にし、且つ市販のPtet−14プロモーター(Clontech Laboratories Inc., 米国)の基礎的活性より有意に低い基礎的遺伝子発現(即ち、非誘導状態での遺伝子発現)を可能にする。前述のSEQ ID No:13(Ptet−T3)、14(Ptet−T4)、15(Ptet−T5)、16(Ptet−T6)及び17(Ptet−T7)の好適な転写制御配列も又、下記の図1に示してある。
【0035】
最も好ましくは、本発明の転写制御配列は、SEQ ID No:16(Ptet−T6)に示した核酸配列又はその変異型配列である。
【0036】
その上、本発明の転写制御配列の他の好適具体例において、該配列は、CpG島、即ち、CGジヌクレオチドが涸渇している。かかる最適化された転写制御配列は、好ましくは、それに機能的に結合された核酸の発現を、ゲノムインプリンティング機構及び他の潜在的に干渉性の後成的現象と無関係に支配することができる。
【0037】
有利には、少なくとも2つのtetオペレーター配列モチーフ、一般的転写因子結合部位及びTATAボックスを含む転写制御配列は、上記の優れた特性、即ち増大した誘導レベル及び減少した基礎的活性を有するということが本発明により見出されている。特に好適な転写制御配列は、下記のエレメントを5’から3’の順序で含むことが見出された:
a)テトラサイクリン依存性転写レギュレーターの結合を可能にする少なくとも2つのtetオペレーター配列モチーフ(該テトラサイクリン依存性転写レギュレーターの各々は、その隣接成分に関して、DNAらせんの向かい合った面に結合する);
b)一般的転写因子結合部位、好ましくは、TFIIB(これは、その3’末端でTATAボックスに機能的に結合される)を含む最小プロモーター;
c)5’末端でTATAボックスに結合された、好ましくはhCMVプロモーターに由来する、イニシエーター配列エレメントである非翻訳(5’UTR)領域;及び
d)5’末端でイニシエーター配列に機能的に結合され、好ましくは、無関係の転写レギュレーターと相互作用するシス調節用エレメントを含まない非翻訳リーダー領域(5’UTR)。
本発明の転写制御配列は、厳格な調節が可能であるので、特に、組換えポリペプチド生成、アンチセンスアプローチ、RNAiアプローチ又はリボザイムアプローチに有用であることが見出されている。その上、有意に減少した基礎的活性のために、本発明の転写制御配列は、更に、遺伝子治療における利用に適している。
【0038】
本発明は、基本的に、下記を含む転写制御配列をも意図している:
a)テトラサイクリン依存性転写レギュレーターの結合を可能にする少なくとも2つのtetオペレーター配列モチーフ(該テトラサイクリン依存性転写レギュレーターの各々は、その隣接成分に関して、DNAらせんの向かい合った面に結合する);
b)最小プロモーター;及び
c)TYMVの5’UTR。
【0039】
特に、本発明の転写制御配列の優れた特性は、一般に、植物ウイルス5’UTR即ちTYMV5’UTRと、tetオペレーター配列により支配される最小プロモーターとの組合せによっても与えられるということが見出されている。好適なかかる転写制御配列は、上記のようなPtet−T8(SEQ ID No:19)及びPtet−T9(SEQ ID No:23)又はそれらの変異体である。
【0040】
本発明は又、本発明の転写制御配列を含むベクターにも関係する。
用語「ベクター」は、好ましくは、ファージ、プラスミド、ウイルス性又はレトロウイルスベクター、並びに人工染色体例えば細菌又は酵母の人工染色体を包含する。その上、この用語は又、ターゲティング用コンストラクトのゲノムDNAへのランダムな又は位置指定した組込みを可能にするターゲティング用コンストラクトにも関係する。かかるターゲティング用コンストラクトは、好ましくは、以下に詳述するように、相同組換え又は異種組込みに十分な長さのDNAを含む。本発明の転写制御配列を包含するベクターは、好ましくは、更に、宿主における増殖及び/又は選択のための選択マーカーを包含する。このベクターは、当分野で周知の様々な技術によって、宿主細胞に取り込まれうる。例えば、プラスミドベクターは、沈澱物、例えば沈澱リン酸カルシウム若しくは沈澱塩化ルビジウムに、又は帯電脂質との複合体に又は炭素ベースのクラスター例えばフラーレンに導入することができる。別法として、プラスミドベクターは、熱ショック又はエレクトロポレーション技術によって導入することができる。ベクターがウイルスであるならば、それを、宿主細胞への投与前に、イン・ビトロで適当なパッケージング細胞系統を用いてパッケージ化することができる。レトロウイルスベクターは、複製能を有するものであっても欠損したものであってもよい。後者の場合には、ウイルスの増殖は、一般に、補足性宿主細胞においてのみ起こる。
【0041】
本発明のベクターの好適具体例において、該ベクターは、発現ベクターである。一層好ましくは、この発明のベクターにおいて、転写制御配列は、発現すべき核酸配列に機能的に結合されている。かかる機能的結合は、好ましくは、該核酸配列の真核細胞又は単離されたその画分における発現を与える。原則として、真核細胞好ましくは哺乳動物細胞における発現を確実にする調節エレメントは、当分野で周知である。それらは、好ましくは、本発明の転写制御配列からなるような転写の開始を確実にする調節用配列並びに転写の終結及び転写物の安定化を確実にするポリAシグナルを含む。このベクターには、更なる調節用エレメント例えば転写のための並びに翻訳のためのエンハンサーを含むことができる。このコンテキストにおいて、適当な発現ベクターは、当分野で公知であり、例えば、レンチウイルスを含むレトロウイルス、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、アデノ随伴ウイルス、麻疹ウイルス、ワクシニアウイルス、又はウシパピローマウイルスに由来するベクターを、この発明のベクターの標的細胞集団への送達に利用することができる。当業者に周知の方法を用いて、組換えウイルスベクターを構築することができる;例えば、Sambrook, Molecular Cloning - A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1989) N.Y.及びAusubel, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y. (1994)を参照されたい。
【0042】
本発明のベクターの更なる好適具体例において、該ベクターは、更に、ポリアデニル化シグナルを含む。一層好ましくは、該ポリアデニル化シグナルは、SV40ポリA、β−グロビンポリA、LTRポリA又は成長ホルモンポリAである。
【0043】
その上、本発明は、本発明の転写制御配列又はベクターを含む宿主細胞に関係する。
ここで用いる場合、「宿主細胞」は、異種DNAの導入により改変することのできる任意の培養可能な細胞を包含する。好ましくは、宿主細胞は、転写調節用タンパク質が安定に発現され、翻訳後修飾され、適当な細胞内区画に局在化され、適当な転写装置に参加させられうるものである。適当な宿主細胞の選択は又、検出シグナルの選択によっても影響される。例えば、上記のようなレポーターコンストラクトは、転写調節用タンパク質に応じて、遺伝子転写の活性化又は抑制に際して、選択可能な又はスクリーニング可能な特徴を与えることができ;最適な選択又はスクリーニングを達成するために、宿主細胞の表現型が考慮される。本発明の宿主細胞は、原核細胞及び真核細胞を包含する。原核生物は、グラム陰性又は陽性微生物例えば大腸菌又はバチルス細菌を包含する。原核細胞は、好ましくは、本発明のポリヌクレオチドを含む転写制御配列又はベクターの増殖のために用いられるということは理解されるべきである。トランスフォーメーションのための適当な原核宿主細胞は、例えば、大腸菌、枯草菌、ネズミチフス菌、及びシュードモナス属、ストレプトミセス属及びブドウ球菌属を包含する。真核細胞は、酵母細胞、植物細胞、真菌細胞、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス)、哺乳動物細胞、及び寄生性生物例えばトリパノゾーマを包含するが、これらに限られない。ここで用いる場合、酵母は、厳密な分類学的意味での酵母即ち単細胞生物だけでなく、糸状菌の酵母様多細胞性真菌をも包含する。典型的種は、クルイベライ・ラクティス、シゾサッカロミセス・ポンベ、及びトウモロコシ黒穂菌(Ustilago maydis)を包含するが、サッカロミセス・セビシエが好ましい。本発明の実施において使用することのできる他の酵母は、アカパンカビ、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・ニデュランス、ピキア・ パストリス、カンジダ・トロピカリス、及びハンセヌラ・ポリモルファである。哺乳動物宿主細胞培養系は、樹立された細胞系統例えばCOS細胞、L細胞、3T3細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、胚性幹細胞を包含するが、BHK、HeK又はHeLa細胞が好ましい。真核細胞は、好ましくは、本発明の転写制御配列又は発現ベクターを適用することにより、組換え遺伝子発現に用いられる。
【0044】
更に、本発明は、本発明の転写制御配列又はベクターを含む非ヒトトランスジェニック動物に関係する。
本発明の転写制御配列を含む、好ましくは発現すべき核酸(即ち、トランス遺伝子)に機能的に結合されたポリヌクレオチド又はベクターを、非ヒト動物の受精卵母細胞にトランスファーして、非ヒトトランスジェニック動物を創出することができる。前記の非ヒトトランスジェニック動物は、該核酸を、一種以上の細胞型又は組織で発現することができる(但し、これらの細胞又は組織は、テトラサイクリン依存性転写レギュレーターを同時発現し、テトラサイクリン又はその類似体と接触される)。ここで意味するトランスジェニック非ヒト動物は、トランス遺伝子を含む細胞を有し、該トランス遺伝子は、非ヒト動物又は該非ヒト動物の先祖に出生前に例えば胎児期に導入された。トランス遺伝子は、トランスジェニック非ヒト動物が発生する細胞のゲノムに組み込まれるDNAであり、それは、成熟非ヒト動物のゲノム中にとどまり、それにより、コードされる遺伝子産物の、トランスジェニック非ヒト動物の一種以上の細胞型又は組織での発現を指示する。好適な非ヒトトランスジェニック動物は、哺乳動物、特に、ゲッ歯類、マウス及びラット、大規模なタンパク質生産に有用なヤギ、ヒツジ、ブタ、ウシ及びウマを含む家畜(いわゆる「遺伝子農業(gene farming)」)及び昆虫である。昆虫は、いわゆる無菌昆虫制御アプローチに利用することができる。トランスジェニック非ヒト動物は、例えば、トランス遺伝子を、受精卵母細胞の雄性前核に、例えばマイクロインジェクションにより導入して、その卵母細胞を偽妊娠雌養育動物にて発生させることにより創出することができる。トランスジェニック動物特にマウスなどの動物の生成のための方法は、当分野では、慣用的なものとなっており、例えば、米国特許第4,736,866号及び4,870,009号及びHogan 1986, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York, Cold Spring Harbor Laboratoryに記載されている。トランスジェニック創出動物を用いて、そのトランス遺伝子を有する更なる動物を繁殖させることができる。本発明によるトランス遺伝子を有するトランスジェニック動物を、更に、別のトランス遺伝子を有する別のトランスジェニック動物と例えばテトラサイクリン依存性転写レギュレーターをコードするポリヌクレオチドを発現するトランスジェニック動物と交配させることができる(以下で、一層詳細に検討する)。この発明は又、上記の、本発明のベクター又は転写制御配列を、好ましくはトランス遺伝子の形態で、含む相同組換え非ヒト動物をも提供する。かかる非ヒト相同組換え動物において、該核酸は、ゲノムの特異的部位に導入されている(即ち、該核酸分子は、ゲノムの内因性遺伝子又は他の部分と相同組換えされている)。該場合には、動物は、好ましくはマウスである。かかる相同組換え動物を創出するために、好ましくは、導入すべき核酸をコードするDNAを、その5’及び3’末端で、相同組換えが起きる遺伝子又はゲノムの部分の更なる核酸と隣接して含むベクターを調製する。この隣接する更なる核酸は、融合タンパク質をコードしており、真核遺伝子との上首尾の相同組換えに十分な長さのものである。典型的には、数キロベースのフランキングDNA(5’及び3’末端の両方で)が、このベクターに含まれる(例えば、相同組換え用ベクターの説明は、Thomas, 1987, Cell 51:503 を参照されたい)。このベクターは、胚性幹細胞系統に導入され(例えば、エレクトロポレーションによって)、導入されたDNAが内因性DNAと相同組換えされた細胞を選択する(例えば、Li 1992, Cell 69:915を参照されたい)。これらの選択した細胞を、次いで、動物(例えば、マウス)の胚盤胞に注入して、凝集キメラを形成させる(例えば、Bradley, A., Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, E.J. Robertson編(IRL, Oxford, 1987)pp. 113-152を参照されたい)。キメラ胚を、次いで、適当な偽妊娠雌養育動物に移植して、該胚を出産予定日までもたらすことができる。この相同組換えされたDNAを生殖細胞中に有する子孫を用いて、全細胞が該相同組換えされたDNAを含む動物を繁殖させることができる。これらの「生殖細胞系列伝達」動物を、更に、テトラサイクリン依存性転写レギュレーターをコードする遺伝子を有する動物と交配させることができる。上記の相同組換えアプローチに加えて、酵素補助された位置指定組込み系が、当分野で公知であり、この発明の調節系の成分に適用して、DNA分子を、第二の標的DNA分子中の予め決めた位置に統合することができる。かかる酵素補助された統合システムの例は、Creレコンビナーゼ−lox標的システム(例えば、Baubonis 1993, Nucl. Acids Res. 21:2025-2029;及びFukushige 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:7905-7909に記載されたもの)及びFLPレコンビナーゼ−FRT標的システム(例えば、Dang 1992, Dev. Genet. 13:367-375;及びFiering 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:8469-8473に記載されたもの)を包含する。
【0045】
本発明は又、本発明の転写制御配列又はベクターを含むトランスジェニック植物にも関係する。
用語「植物」は、ここで用いる場合、植物及び藻類を包含する。好ましくは、この用語は、多細胞の陸生植物を指す。一層好ましくは、これらの多細胞の陸生植物は、高等植物例えば、トウモロコシ、菜種、大豆、米、マンジュギク、アブラナ属各種蔬菜、トリシウム(tricium)又はグリシンを含む作物。原則として、トランスジェニック植物は、Becker 1992, Plant Mol. Biol. 20:1195-1197, Bevan 1984, Nucleic Acids Res. 12:8711-8721,及び「Vector for Gene Transfer in Higher Plants」: Transgenic Plants, Vol.1, Engineering and Utilization,編:Kung und R. Wu, Academic Press, 1993, p. 15-38に記載されたようにして得ることができる。好ましくは、植物細胞のトランスフォーメーション、即ちトランスジェニック植物の生成は、アグロバクテリウム媒介のトランスフォーメーションにより又は物理的力を適用すること(例えば、「遺伝子銃」)により達成される。
【0046】
加えて、本発明は、宿主細胞、植物又は非ヒトトランスジェニック動物中の本発明の転写制御配列に機能的に結合された核酸配列の発現を調節する方法であって、下記を含む当該方法に関係する:
a)前記の宿主細胞、植物又は非ヒトトランスジェニック動物における、テトラサイクリン依存性転写レギュレーターをコードするポリヌクレオチドの発現;及び
b)該宿主細胞、植物又は非ヒトトランスジェニック動物におけるテトラサイクリン又はその類似体の濃度の調節。
【0047】
テトラサイクリン依存性転写レギュレーターをコードするポリヌクレオチドを、宿主細胞、植物又は動物において、そのポリヌクレオチドからのテトラサイクリン依存性転写レギュレーターの発現を与える任意の手段によって発現させることができる。この発現の結果として、テトラサイクリン依存性転写レギュレーターポリペプチドが、宿主細胞、植物又は非ヒトトランスジェニック動物中に、転写制御配列に結合された核酸配列の発現を支配するのに十分な量で存在するということは理解されるべきである。テトラサイクリン依存性転写レギュレーターをコードするポリヌクレオチドは、この目的のために、一時的に又は安定に、宿主細胞、植物又は動物に、当分野で周知の技術及び例えばUS5,888,981, US5,814,618, US6,004,941, US5,814,618, US5,854,310, US5,866,755, US5,912,411, US5,866,755, US6,252,136, US6,242,667, US10/456,395, WO96/01313,又はWO00/75347に記載された技術によって導入することができる。その上、それは、植物又は動物の場合に、交雑育種により導入することができ、宿主細胞の場合には、細胞融合により導入することができる。別法として、テトラサイクリン依存性転写レギュレーターをコードするポリヌクレオチドを、例えばウイルスベクターによって導入することができる。
【0048】
本発明の方法により言及されるテトラサイクリン依存性転写レギュレーターは、ポリペプチドであり、好ましくは、tetオペレーター配列モチーフを特異的に認識することのできるドメインを含む融合ポリペプチドである。その上、このテトラサイクリン依存性転写レギュレーターは、更に、核酸配列の発現を支配するドメイン、即ち、トランス活性化ドメイン又はサイレンシングドメインを包含する。テトラサイクリン依存性転写レギュレーターのtetオペレーターへの結合は、更に、ある量のテトラサイクリン又はその類似体の存否に依存している。最初に細菌で特性決定されたTetリプレッサーは、tetオペレーター結合性ドメインを含む。その上、そのtetオペレーターへの結合は、テトラサイクリン又はその類似体に依存している。特に、テトラサイクリン又はその類似体の存在下では、結合は起きず(いわゆる「Tetリプレッサー」)、テトラサイクリン又はその類似体の非存在下では、Tetリプレッサーのtetオペレーターへの親和性が増大して結合が起きる。Tetリプレッサーの様々な変異体が生成されている。特に、テトラサイクリンの存在下でtetオペレーターに結合するが非存在下では結合しない、変異体の一種が記載されている(いわゆる「逆Tetリプレッサー」)。真核生物における発現の制御のためには、前述のTetリプレッサー変異体は、例えばVP−16トランスアクチベーターのトランス活性化ドメインに融合され(例えば、US6,087,166又はUS6,271,341参照)、又は例えばkruppel関連転写因子のサイレンシングドメインに融合される。Tetリプレッサー又はその変異体についての詳細は、US5,464,758, US6,914,124, US5,789,156, US6,271,348, US5,654,168, US6,136,954, US5,789,156, US6,271,348, US6,087,166, US6,271,341, US10/456,395, WO96/01313又はWO00/75347を参照されたい。
【0049】
本発明の方法の好適具体例において、前記のテトラサイクリン依存性転写レギュレーターは、テトラサイクリン又はその類似体の非存在下で、tetオペレーターに結合する(いわゆる「真正テトラサイクリン依存性転写アクチベーター」又は「tTA」)。該特性を有する好適なテトラサイクリン依存性転写レギュレーターは、US5,464,758, US6,914,124, US5,789,156, US6,271,348, WO96/01313又はWO00/75347に開示されており、それらを、本明細書中に参考として援用する。
【0050】
本発明の方法の他の好適具体例において、該テトラサイクリン依存性転写レギュレーターは、tetオペレーターにテトラサイクリン又はその類似体の存在下で結合する(いわゆる、「逆テトラサイクリン依存性転写アクチベーター」即ち「rtTA」)。該特性を有する好適なテトラサイクリン依存性転写レギュレーターは、US5,654,168、US6,136,954、US5,789,156、US6,271,348、US6,087,166、US6,271,341、US10/456,395、WO96/01313又はWO00/75347(これらを、参考として、本明細書中に援用する)に記載されている。
【0051】
一層好ましくは、前述のテトラサイクリン依存性転写レギュレーターは、核酸配列の発現を、活性化し(US5,464,758、US6,914,124、US5,654,168、US6,136,954、US6,087,166、US6,271,341、US10/456,395、WO96/01313又はWO00/75347(これらを、参考として、本明細書中に援用する)参照)又は抑制する(US5,789,156、US6,271,348、US5,789,156、US6,271,348、US10/456,395、WO96/01313又はWO00/75347(これらを、参考として、本明細書中に援用する)参照)。
【0052】
用語「テトラサイクリン又はその類似体の濃度の調節」は、ここで用いる場合、テトラサイクリン又はその類似体の濃度を変えることを意味する。特に、テトラサイクリン又はその類似体の存在下でtetオペレーターに結合するテトラサイクリン依存性転写レギュレーターを本発明の方法で使用するならば、発現すべき核酸の発現は、ある量のテトラサイクリンを新たに加えるか又は宿主細胞、植物又は非ヒトトランスジェニック動物中に存在するテトラサイクリンの量を増すことにより達成することができる。逆に、もしもテトラサイクリン又はその類似体の非存在下でtetオペレーターに結合するテトラサイクリン依存性転写レギュレーターを使用するならば、宿主細胞、植物又は非ヒトトランスジェニック動物中に存在するテトラサイクリンの量を低下させ又はテトラサイクリンを完全に離脱することができる。テトラサイクリン又はその類似体を、好ましくは宿主細胞を含む培養培地を介して宿主細胞に送達することができる。植物の場合、テトラサイクリン又はその類似体は、植物又は非ヒトトランスジェニック動物の個々の細胞に、水若しくは栄養分の供給により又は注入により送達することができる。これらの技術は、当業者に周知であり、更に困難なく、個々の条件に適合させることができる。
【0053】
上記のように、この転写制御配列は、ヒト又は非ヒトの様々な病気又は障害の遺伝子治療のために用いることができる。それ故、本発明は又、本発明の転写制御配列、ベクター又は宿主細胞と、好ましくは製薬上許容しうるキャリアーとを含む医薬組成物をも包含する。一層好ましくは、本発明の転写制御配列は、発現に際して治療効果を生じる核酸配列に機能的に結合される。従って、上記の医薬組成物は、この転写制御配列に機能的に結合され、治療上有効なポリペプチドをコードする核酸、又はアンチセンスRNA又はRNAi等の治療上有効なポリヌクレオチドとして発現されうる核酸を更に含む。
【0054】
これらの医薬組成物は、好ましくは、局所投与され又は全身投与される。薬物投与に慣用的に用いられる投与経路は、経口投与経路、静脈内投与経路、又は非経口投与経路並びに吸入法である。しかしながら、化合物の性質及び作用様式によって、これらの医薬組成物は、他の経路によっても投与することができる。これらのポリヌクレオチド即ち本発明の転写制御配列又はベクターは、遺伝子治療アプローチにおいて、ウイルスベクター、ウイルス又はリポソームを用いることにより投与することができる。宿主細胞は、手術により又は点滴によって移植することができる。
【0055】
これらの化合物は、好ましくは、薬物を標準的な製薬用キャリアーと、慣用手順によって合わせることにより調製される慣用の投薬形態で投与する。これらの手順は、成分を、所望の製剤となるように、適宜、混合し、粒状化しそして圧縮し又は溶解させることを含みうる。製薬上許容しうるキャリアー又は希釈剤の形態及び特性は、それが合わせられる活性成分の量、投与経路及び他の周知の可変要素によって規定されるということは認められよう。
【0056】
好ましくは、この医薬組成物は、治療上有効な投与量の成分を与える。治療上有効な投与量は、治療されるべき病気又は状態に伴う症状を改善し又は治療する成分の量を指す。かかる化合物の治療的効力と毒性は、標準的な製薬手順により、細胞培養物又は実験用動物において測定することができる(例えば、ED50(集団の50%に治療効果のある投与量)及びLD50(集団の50%に致死的である投与量))。治療効果と毒性効果との間の投与量比は、治療インデックスであり、それは、比LD50/ED50と表すことができる。この場合の治療上有効な薬剤は、発現されるべき核酸であるということは理解されよう。しかしながら、該核酸の発現は、本発明の転写制御配列により厳密に制御されるので、該転写制御配列は、治療上許容しうる量であって且つ有効でもある量で与えられることを必要とする。
【0057】
投薬養生法は、担当医及び他の医療因子によって決定され;好ましくは、上記の方法の何れか一つによる。医療分野では周知であるが、如何なる患者に対する投薬量も、患者の大きさ、体表面積、年齢、投与すべき特定の化合物、性別、投与の時間及び経路、一般的健康状態、及び同時に投与される他の薬物を含む多くの因子に依存する。経過は、周期的評価によってモニターすることができる。
【0058】
本明細書で言及される医薬組成物及び医薬配合物は、この明細書に列挙された病気又は状態を治療し又は改善し又は予防するために、少なくとも一回投与される。しかしながら、該医薬組成物は、一回より多く、例えば1日1〜4回、無制限の日数にわたって投与することができる。
【0059】
本発明の転写制御配列は、テトラサイクリン誘導システムにおける核酸の発現に必要とされる他の成分と一緒に、本発明の方法を実施するために採用されるキットとして与えることができる。キットの他の成分は、好ましくは、テトラサイクリン又はその類似体、テトラサイクリン依存性転写レギュレーター又はそれをコードするポリヌクレオチド(例えば、発現ベクターの形態)、及び/又は発現に用いられる宿主細胞である。
【0060】
用語「キット」は、ここで用いる場合、本発明の、前述の化合物、手段又は試薬の集合を指し、これらは、一緒にパッケージ化されていてもいなくてもよい。このキットの成分は、別々の薬瓶に入れられてもよいし(即ち、別々の部分のキット)、又は単一の薬瓶にて与えてもよい。その上、本発明のキットは、上記の方法を実施するために用いられるべきであるということは理解されるべきである。好ましくは、すべての成分は、上記の方法を実施するためにすぐ使用できる仕方で与えられるとういうことが構想される。更に、このキットは、好ましくは、該方法を実施するための指示書を含む。この指示書は、紙のユーザーズマニュアルにより又は電子形式で与えることができる。例えば、このマニュアルは、本発明のキットを用いて前述の方法を実施したときに得られる結果の解釈のための指示を含むことができる。
【0061】
上記の配列同定番号(SEQ ID NO)についての説明を、下記のように与える:
SEQ ID No:説明
1:tetオペレーター
2:hCMV最小プロモーター
3:TFIIB結合部位
4:TFIID結合部位、TATAボックス
5:Ptet−T2からの最小プロモーター
6:RFX−1結合部位
7:AP4結合部位
8:HP−1結合部位
9:HP−2結合部位
10:Ptet−T4からの改変された最小プロモーター
11:TYMV5’UTR
12:Ptet−T6からの改変されたTYMV5’UTR
13:Ptet−T3
14:Ptet−T4
15:Ptet−T5
16:Ptet−T6
17:Ptet−T7
18:MMTV最小プロモーター
19:Ptet−T8
20:Oct−11 Oct12(OTF−1)結合部位
21:NF1結合部位
22:FOXA1結合部位
23:Ptet−T9
24:Ptet−T10
25:Ptet−T11
【0062】
この明細書中で引用されたすべての参考文献は、それらの全開示内容及びこの明細書において特に言及された開示内容を、参考として本明細書中に援用する。
【0063】
下記の実施例は、単に、この発明を説明するためのものである。それらは、何であれ、この発明の範囲を制限するものと解するべきではない。
【実施例】
【0064】
実施例1:一層低い基礎的活性及び一層優れた誘導ポテンシャルを有するテトラサイクリン依存性転写制御配列の生成
I)tet−オペレーター7量体の合成及び最小プロモーターへの結合
オリゴヌクレオチドを合成して、対(TOH−1〜TOH−6、下記の表1参照)をアニーリングにより形成させた。dsオリゴTOH−1〜TOH−6をPAGEで精製して連結した。最小プロモーター(T3)の一つを含む完全なオペレーター7量体の初期合成を以下に示す。
【0065】
この合成は、TOH−2/TOH−3及びTOH−4/TOH−5の連結で開始される。連結した対をPAGE精製し、その結果生成したDNA断片TOH−2.3とTOH−4.5を連結した。その結果生成したDNA断片(TOH−2.3.4.5)を再びPAGE精製してTOH−1に連結し(TOH−1.2.3.4.5)、精製後、TOH−6に連結した。この最後の連結は、TO7断片を生じ(その後、Ptet−T3と呼ばれる)、これは、SK−eGFPプラスミドへの直接的挿入のための5’側XhoI制限部位及び3’側NcoI制限部位を与える(下記参照)。
【0066】
【表1】

【0067】
この合成のTO7 PCR断片を、XhoI/NcoI制限酵素で消化した。それを、同様に消化したSK−eGFPプラスミド(pBluescriptSKII+ベース)に挿入する。このプラスミドは、既に、PCR増幅された増強されたグリーン蛍光タンパク質(eGFP)のオープンリーディングフレーム(orf)を含んだものであり、調節ユニットの該orfの5’側への直接的導入のためのXhoI/NcoI制限部位を与える。その結果生成したプラスミドは、SK−TO7.gと呼ばれた。このプラスミドは、すべての最小プロモーター変異体の挿入{HindIII/SalI(T1及びT2)断片としての、アニールしたds−オリゴ(T4)としての、又はEx部位突然変異導入による(T3、T5、T6及びT7)、新規なtetオペレーターの3’側(HindIII)で且つeGFPレポーター遺伝子の5’側(SalI)での挿入}のための基礎として役立った。
【0068】
最小プロモーター変異体のSK−TO7.gへの挿入により生じた新規な調節ユニットは、それらが新たにデザインされたtetオペレーター7量体に融合されたという事実を示すために、Ptet−T1〜Ptet−T7と呼ばれた。
【0069】
tet−T1プロモーターは、以前に記載された(Gossen及びBujard, 1992loc. cit.)ようにCMV最小プロモーター(−53/+75)を含み、HindIII/SalIとしてサブクローンから放出されて、同様の消化を受けたSK−TO7.gプラスミドに導入された。
【0070】
tet−T2プロモーターは、SK−Ptet−T1.gの位置指定突然変異導入によって、造られた。TATAボックスの上流のジヌクレオチド「ag」を「c」で置き換えた突然変異オリゴヌクレオチドをデザインし、TFIIB結合部位を造り、そしてTATAボックスコンセンサス配列を造るために、−25位の「t」を「a」に交換した。
【0071】
tet−T3プロモーターは、PCRにて、Ex部位突然変異により、重複するオリゴヌクレオチド(下記の表2に列記)及びSK−TO7.gプラスミド(テンプレート)を用いて生成された。
【0072】
tet−T4プロモーターは、二本鎖オリゴヌクレオチドとして造られ(下記の表2に列記)、これは、HindIII及びSalIオーバーハングを与え、それは、HindIII/SalI消化されたSK−TO7.gプラスミドに挿入された。
【0073】
tet−T5、Ptet−T6及びPtet−T7プロモーターは、PCRにて、Ex部位突然変異導入により、重複するオリゴヌクレオチド(下記の表2に列記)及びSK−TO7.gプラスミド(テンプレート)を用いて生成された。PCR反応及びプラスミドの再結合の後に、更なるクローニング工程は、必要なかった。
【0074】
【表2−1】

【0075】
【表2−2】

【0076】
【表2−3】

【0077】
tet−T8最小プロモーターの合成を、MMTV−5’(−89)及びMMTV−3’オリゴ(s.表2)及びpΔMtetO−luc(Hofmann 1977, Nucleic acids Res., 25, 1078-1079)をテンプレートとして用いて行なった。最小プロモーター(−88/+122)をpBluescriptSKII+プラスミド中にサブクローン化して、配列決定した。tet調節されるプロモーターのコンテキストにおけるこの最小プロモーターの機能は、既に、公表されている(Loew 2006, loc cit.)。この最小プロモーターは、SK−TO7.gプラスミド中の新たなtetオペレーターに、HindIII/SalI断片として同様の消化を受けたプラスミドへの挿入により融合された。その結果生成したプラスミドは、SK−TO7.5と呼ばれる。Ptet−T8プロモーターの放出は、(5’)XhoI/SalI又はNcoI(3’)断片として可能である。
【0078】
tet−T9プロモーターは、PCRにおいて、MMTV−5’(−37)及びMMTV−3’オリゴ(s.表2)及びSK−MMTV(−88/+122)(テンプレート)を用いる全プロモーターの増幅により生成された。この最小プロモーター(−37/+122)を、pBluescriptSKII+プラスミド中にサブクローン化して配列決定した。Ptet−T9最小プロモーターの、SK−TO7.gプラスミド中の新規なtetオペレーターへの融合は、HindIII/SalI断片として同様の消化を受けたプラスミドへの挿入によりなされた。その結果生成したプラスミドは、SK−TO7.6と呼ばれる。Ptet−T9プロモーターの放出は、(5’)XhoI/SalI又はNcoI(3’)断片として可能である。
【0079】
tet−T10最小プロモーターの合成を、TO7.7s及びTO7.as(s.表2)オリゴヌクレオチド並びにSK−MMTV(−37/+122)プラスミド(テンプレート)を用いるPCRにより行った。TFIIB及びTATAコンセンサス配列を、5’−オリゴにより、HindIII制限部位と一緒に導入した。同様に、SalI及びNcoI制限部位を、3’オリゴにより導入した。その結果生成した増幅したプロモーター断片(−41/+122)を「T10」と呼ぶ。この最小プロモーターをHindIII及びSalIで消化してSK−TO7.gに直接挿入して配列決定した。従って、Ptet-T10最小プロモーターの、SK−TO7.gプラスミド中の新規なtetオペレーターへの融合を、HindIII/SalI断片を同様の消化を受けたプラスミドに挿入することにより行った。その結果生成したプラスミドは、SK−TO7.7と呼ばれる。Ptet-T10プロモーターの放出は、(5’)XhoI/SalI又はNcoI(3’)断片として可能である。
【0080】
tet−T11最小プロモーターの合成は、テンプレートなしのPCRにおいて、重複するオリゴを用いて行われる。最終的なPtet−T11最小プロモーター中では、CMVプロモーター起源のPtet−T6最小プロモーターの配列は、MMTV配列により置き換えられた。しかしながら、この測定によって、Oct−12及び重複するFoxA12認識部位が最小プロモーターに再導入されたことは注意されるべきである。この改変は、オリゴヌクレオチドベースの合成によって実施された。TO7.8−s1及びTO7.8−as1オリゴをアニールさせて、3’末端をT4ポリメラーゼによるDNA合成によって鈍端化し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離し、その後、二本鎖オリゴの精製を行なった。同様に、TO7.8−s2及びTO7.8−as2オリゴをアニールさせて、鈍端化して、精製した。最後に、これら2つのdsオリゴヌクレオチドを、等モル比(各1pモル)で混合して、PCR増幅を行なった。その結果生成した増幅されたプロモーター断片は、「T11」と呼ばれる。この最小プロモーターをHindIII及びSalIで消化し、SK−TO7.gに直接挿入して、配列決定した。それ故、Ptet−T11最小プロモーターの、SK−TO7.gプラスミド中の新たなtetオペレーターへの融合は、HindIII/SalI断片の同様に消化されたプラスミドへの挿入により為された。その結果生成したプラスミドは、SK−TO7.8と呼ばれる。Ptet−T11プロモーターの放出は、(5’)XhoI/SalI又はNcoI(3’)断片として可能である。
【0081】
II)発現用プラスミドの構築及び標的細胞のトランスフェクション
プロモーターT1〜T11は、Xho及びNcoIにより、直接、pUHC131−1プラスミド(Bonin 1994、Gene 141:75-77)に導入された。Ptet−1の参照プラスミドを、XhoI及びSacIにより、Ptet−1を、T2プロモーターを含むpUHC131−1プラスミドに導入することによって生成した。Ptet−1の参照プラスミドは、pTRE−Tightプラスミド(Clontech Laboratories, Inc., 米国)からのPtet−14を、XhoI及びSacIにより、T4プロモーターを含むpUHC131−1プラスミド中に導入することにより生成された。すべてのコンストラクトのヌクレオチド配列を、配列決定により確認した。
【0082】
実施例2:転写制御配列の機能分析
これらの新規なプロモーターシリーズの性能を、現在使用可能なテトラサイクリン依存性プロモーターと、HeLaM2細胞への一時的トランスフェクション後に、ドキシサイクリン(Dox)を伴って(+)又は伴わないで(−)比較した。
【0083】
逆テトラサイクリン依存性トランスアクチベーターを安定に発現しているHeLaM2細胞を、0.5μgの様々なプロモーターの制御下のレポーターコンストラクト(ルシフェラーゼ)で、非誘導条件下で、一時的にトランスフェクトした。非調節時の活性(−Dox)の測定は、Ptet−T1が、測定可能な活性がPtet−T1〜Ptet−T6で徐々に減少する最大バックグラウンドを与えることを示した(図2参照)。
【0084】
誘導状態及び非誘導状態におけるレポーター活性の比較のために、Ptet−T6、Ptet−T7、Ptet−14、Ptet−1及び構成的に発現されるレポーターコンストラクト(PhCMV)を、同じ条件下で分析した(図3)。これらの実験から、誘導条件下(+Dox)ではレポーター活性がPtet−T6、Ptet−T7、Ptet−14のトランスフェクション後と同レベル(PhCMVと比較して約2倍増)に達するが、有意の差異が、非誘導条件下で見られることは明らかである。ここで、Ptet−1のトランスフェクションは、PhCMV駆動されるコンストラクトの活性の約1000倍低い最大活性を与える。Ptet−T14、Ptet−T7、Ptet−6からのルシフェラーゼ活性は、徐々に減少するが、Ptet−1(Gossen 1992loc. cit.)より100倍低いバックグラウンド活性を与える。
【0085】
分析したプロモーターの内で、Ptet−T6が、最適のtet応答性プロモーターであり、一時的発現実験において、そのバックグラウンド活性は、Ptet−1(Gossen 1992,loc. cit.)の活性より100倍低く、Ptet−14(Clontech Laboratories, Inc.,米国から市販されている)より10倍低かった。
【0086】
実施例3:CpG−Ptet変異体の定量
Hela−M2細胞を、標準的条件下で、下記の表3に列挙した発現用コンストラクトによりリポフェクションにより、トランスフェクトした。発現の定量をP/Rlucアッセイにより行なった。この表には、ホタルルシフェラーゼに結合された示したプロモーターコンストラクトの活性が、標準化のためのTK−Rluc(レニラ)内部対照と共に示されている。与えられたRlu値は、+dox条件(誘導時)に対するものである。如何なる場合にも、−dox値は、アッセイ系のバックグラウンド読みと同じであったので、定量されなかった。最小調節因子は、有効バックグラウンドが機器のブランク読みの10%より低いと仮定して評価された。
【0087】
他の(一時的)実験において、CpGフリーPtet−T6synの活性は、繰り返して、元のT6より3〜6倍低かったが、CpGフリーの二方向性T6synは、常に、有意に一層活性であった。
【0088】
【表3】

【0089】
実施例4:MMTVベースのPtetプロモーターのHEK293細胞における一時的トランスフェクション
MMTVベースのPtetプロモーターをHEK293細胞にて試験して、pTRE−Tightプラスミド(Clontech Laboratories, Inc., 米国)由来のPtet−14及び上記のPtet−T6と比較した。HEK293細胞は、バックグラウンド効果に関して重要であると記されてきているので選択した。培養、トランスフェクション及び活性測定は、実施例2又は3においてHeLa細胞について記載したように行なった。HEK293細胞は、rtTA発現プラスミド(Tet−O−Advanced,Clontech, 米国)で、一時的に、同時トランスフェクトされた。結果は、下記の表4に示してある。すべてのMMTVベースのPtetプロモーターが、市販のPtet−14プロモーター(tight)より有意に低い基礎的活性を示すということは明らかである。その上、これらのプロモーターは、T6プロモーターより低い基礎的活性さえ示す。
【0090】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記を含む転写制御配列:
a)テトラサイクリン依存性転写レギュレーターの結合を可能にする少なくとも2つのtetオペレーター配列モチーフであって、該テトラサイクリン依存性転写レギュレーターの各々は、その隣接成分に関して、DNAヘリックスの向かい合った面に結合する当該少なくとも2つのtetオペレーター配列モチーフ;及び
b)その5’末端で更なる一般的転写因子結合部位に機能的に結合するTATAボックスを含む最小プロモーター。
【請求項2】
前記の一般的転写転写因子結合部位がTFIIB転写因子結合部位である、請求項1に記載の転写制御配列。
【請求項3】
少なくとも2つのtetオペレーター配列モチーフが、17の連続(contiguous)ヌクレオチドよりなるスペーサーにより分離されている、請求項1又は2に記載の転写制御配列。
【請求項4】
前記のスペーサーが、シス調節エレメントを含まない、請求項3に記載の転写制御配列。
【請求項5】
前記の最小プロモーターが、hCMV最小プロモーターに由来する、請求項1〜4の何れか一つに記載の転写制御配列。
【請求項6】
前記の最小プロモーターが、SEQ ID No:5又は10に示した核酸配列を含む、請求項5に記載の転写制御配列。
【請求項7】
最小プロモーターが、DSEエレメントを含まず、5’UTR配列が欠失している、請求項6に記載の転写制御配列。
【請求項8】
前記の最小プロモーターが、その3’末端で、カブ黄斑モザイク・ウイルス(TYMV)の5’UTRに結合している、請求項1〜7の何れか一つに記載の転写制御配列。
【請求項9】
下記を含む転写制御配列:
a)テトラサイクリン依存性転写レギュレーターの結合を可能にする少なくとも2つのtetオペレーター配列モチーフであって、該テトラサイクリン依存性転写レギュレーターの各々は、その隣接成分に関して、DNAヘリックスの向かい合った面に結合する当該少なくとも2つのtetオペレーター配列モチーフ;
b)最小プロモーター;及び
c)TYMVの5’UTR。
【請求項10】
前記のTYMVの5’UTRが、RFX−1結合部位、AP4結合部位、HP1結合部位及び/又はHP2結合部位を含まない、請求項8又は9に記載の転写制御配列。
【請求項11】
前記のTYMVの5’UTRが、SEQ ID No:11に示した核酸配列を有する、請求項8〜10の何れか一つに記載の転写制御配列
【請求項12】
SEQ ID No:13〜17の何れか一つに示された核酸配列を含む、好ましくは請求項1〜11の何れか一つに記載された、転写制御配列。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか一つの転写制御配列を含むベクター。
【請求項14】
前記のベクターが、発現ベクターである、請求項13に記載のベクター。
【請求項15】
前記の転写制御配列が、発現すべき核酸配列に機能的に結合された、請求項14に記載のベクター。
【請求項16】
請求項1〜11の何れか一つに記載の転写制御配列又は請求項12〜14の何れか一つに記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項17】
請求項1〜12の何れか一つに記載の転写制御配列又は請求項13〜15の何れか一つに記載のベクターを含む非ヒトトランスジェニック動物。
【請求項18】
請求項1〜12の何れか一つに記載の転写制御配列又は請求項13〜15の何れか一つに記載のベクターを含むトランスジェニック植物。
【請求項19】
請求項1〜12の何れか一つの転写制御配列に機能的に結合された核酸配列の発現を、宿主細胞において調節する方法であって、下記を含む当該方法:
a)該宿主細胞中で、テトラサイクリン依存性転写レギュレーターをコードするポリヌクレオチドを発現させること;及び
b)該宿主細胞中のテトラサイクリン又はその類似体の濃度を調節すること。
【請求項20】
請求項1〜12の何れか一つに記載の転写制御配列に機能的に結合された核酸配列の発現を、植物において調節する方法であって、下記を含む当該方法:
a)該植物において、テトラサイクリン依存性転写レギュレーターをコードするポリヌクレオチドを発現させること;及び
b)該宿主細胞中のテトラサイクリン又はその類似体の濃度を調節すること。
【請求項21】
前記のテトラサイクリン依存性転写レギュレーターが、tetオペレーターに、テトラサイクリン又はその類似体の非存在下で結合する、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記のテトラサイクリン依存性転写レギュレーターが、核酸配列の発現を活性化し又は阻害する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記のテトラサイクリン依存性転写レギュレーターが、tetオペレーターに、テトラサイクリン又はその類似体の存在下で結合する、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項24】
前記のテトラサイクリン依存性転写レギュレーターが、核酸配列の発現を活性化し又は阻害する、請求項23に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【公表番号】特表2012−504395(P2012−504395A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529493(P2011−529493)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060728
【国際公開番号】WO2010/037593
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(505156329)テット・システムズ・ゲーエムベーハー・ウント・カンパニー・カーゲー (3)
【Fターム(参考)】