説明

テトラジン誘導体の製造方法

本発明は、式(I)のテトラジン誘導体、またはその医薬的に許容し得る塩の製造方法を提供するもので、式中のRは水素原子、直鎖もしくは分岐鎖C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基またはC〜Cアルキニル基を表し、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基およびC〜Cアルキニル基が未置換かまたはハロゲン原子、直鎖もしくは分岐鎖C〜Cアルコキシ基、C〜Cアルキルチオ基、C〜Cアルキルスルフィニル基、C〜Cアルキルスルホニル基およびフェニル基から選択される1、2もしくは3個の置換基で置換され、フェニル基が未置換かまたはC〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基およびニトロ基から選択される1つ以上の置換基で置換されるか;あるいはRはC〜Cシクロアルキル基を表し;Rは式−(C=O)NRを有する基を表し、ここでRおよびRは独立して水素原子、Cアルキル基、C〜Cアルケニル基およびC〜Cシクロアルキル基から選択され、当該方法がi)式(III):R−N=C=O(式中のRは上で定義したとおりである)の化合物を用意する工程と;ii)式(III)の化合物を溶媒に吸収させて式(III)の化合物の溶液を得る工程と;iii)こうして得た溶液に式(II)の化合物(式中のRは上で定義したとおりである)を添加して上述したような式(I)の化合物を得る工程と;iv)残留する任意過剰の式(III)の化合物を水の添加により分解する工程と;v)こうして得た化合物を医薬的に許容し得る酸または塩基で任意に加塩する工程とを備える。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2009年11月24日出願のインド仮特許出願第2475/MUM/2008号の優先権を主張し、その全開示をここに参照して援用する。
【0002】
本発明は、テトラジン誘導体の改善された製造方法に関する。とくに、本発明は、有害なイソシアネート、とくにMICを適当に選択した溶媒に吸収することにより安全に取り扱う産業上実現可能なテモゾロミドおよびその誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
テモゾロミド(TMZ)は、抗腫瘍活性を示すイミダゾテトラジン誘導体である。TMZの生体内活性は、その強力なメチル化活性に起因する。TMZは、商標TEMODARとして5mg、20mg、100mgまたは250mgのTMZを含有するカプセルの形態で市販されている。TMZは、難治性未分化星状細胞腫、ある形態の脳腫瘍、多形性膠芽腫および転移性悪性黒色腫の治療に適応とされる。
【0004】
TMZは、化学構造3,4−ジヒドロ−3−メチル−4−オキソイミダゾ[5,1−d]1,2,3,5−テトラジン−8−カルボキサミドまたは3−メチル−8−アミノカルボニル−イミダゾ[5,1−d]−1,2,3,5−テトラジン−4(3H)−オンを有する化合物の略称である。以下の構造を有する。
【化1】

【0005】
米国特許第5,260,291号公報は、TMZおよびその誘導体を記載し、その全開示をここに参照して援用する。また、5−ジアゾ−5H−イミダゾール−4−カルボキサミド(および関連化合物)のイソシアネートでの縮合を含むTMZおよびその誘導体の製造方法が記載されている。しかしながら、記載された方法は最長3週間の反応時間を含めて非常に遅い。この方法はまた、イソシアネート、とくにメチルイソシアネート(MIC)を気体または液体状態のいずれかで取り扱うことを含むので、危険である。
【0006】
一般に、イソシアネートは動物に有害であり:有毒で、暴露するとヒトに喘息を引き起こすことが既知である。とくに、メチルイソシアネート(MIC)は構造CH−N=C=Oを有し、揮発性(Bp=39.1℃)で無色の液体である。MICは動物の生態に対して極めて毒性が強く、0.4ppmほどの低濃度でも吸入、接触および摂取により損傷を与え得る。
【0007】
その比較的低い沸点のため、MICは容易に気化し、この試薬の環境中への逃散をもたらし、動物の生態を損なう場合がある。液体状態のMICは発熱反応で容易に重合する。微量の酸、塩基または金属が存在する場合、重合は爆発的な方法で起こり得る。これらの要因が組み合わさって、イソシアネート、とくにMICを産業規模で特に安全に取り扱うことを非常に困難にする。
【0008】
米国特許出願公開第2007/0225496号公報は、N’−メチル−N,N−ジフェニルウレアを熱分解してMIC蒸気を形成し、MIC蒸気を5−ジアゾ−5H−イミダゾール−4−カルボキサミドのジメチルスルホキシド(DMSO)溶液の容器中にゆっくり凝縮することを備えるTMZの製造方法を記載し、その全開示をここに参照して援用する。68.6%の粗テモゾロミド収率が報告されている。この方法で生成した粗テモゾロミドのろ過中、過剰MIC蒸気が大気中に放出され得る。
【0009】
ここで驚くべきことに、米国特許第5,260,291号公報に記載の化合物を従来技術で直面した問題の多くを回避する本発明のもとで開発された新規方法により調製することができることが見出された。米国特許出願公開第2007/0225496号公報は、N’−メチル−N,N−ジフェニルウレアを熱分解してMIC蒸気を形成し、MIC蒸気を5−ジアゾ−5H−イミダゾール−4−カルボキサミドのジメチルスルホキシド(DMSO)溶液の容器中にゆっくり凝縮し、これにより過剰MIC蒸気を大気中に放出し得ることを備えたTMZの製造方法を記載する。本発明者らは、大気中のMIC蒸気を抑制することに取り組み、イソシアネート、とくにMICの溶媒溶液の容器を用い、その後5−ジアゾ−5H−イミダゾール−4−カルボキサミドまたはその誘導体を添加することによりTMZを調製する独自の方法を打ち出した。本方法により、MIC蒸気は大気中に放出されず、実際それらは溶媒中に吸収される。従って、本方法は、従来のTMZの調製方法と比べてより産業上実現可能であることが見出された。
【0010】
本発明の方法は高速反応、収率の向上および/または生成したTMZ誘導体の純度の向上を可能にする。さらに、本発明の方法は、あらゆる過剰のイソシアネートを水性酸によって現場で破壊し、よってイソシアネートの大気中への放出のリスクを最小化することを可能にする。
【発明の概要】
【0011】
従って、本発明は次式(I)のテトラジン誘導体またはその医薬的に許容し得る塩の製造方法を提供するもので、
【化2】

式中のRは水素原子、直鎖もしくは分岐鎖C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基またはC〜Cアルキニル基を表し、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基およびC〜Cアルキニル基は未置換かまたはハロゲン原子、直鎖もしくは分岐鎖C〜Cアルコキシ基、C〜Cアルキルチオ基、C〜Cアルキルスルフィニル基、C〜Cアルキルスルホニル基およびフェニル基から選択した1、2もしくは3個の置換基で置換され、フェニル基は未置換かまたはC〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基およびニトロ基から選択した1個以上の置換基で置換され;若しくはRがC〜Cシクロアルキル基を表し;
は式−(C=O)NRを有する基を表し、ここでRおよびRは独立して水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基およびC〜Cシクロアルキル基から選択され、該方法は
i)次式(III):
−N=C=O III
の化合物を用意し、式中のRは上で定義したとおりである工程と;
ii)前記式(III)の化合物を溶媒中に吸収して、式(III)の化合物の溶液を得る工程と;
iii)こうして得た溶液に次式(II)
【化3】

の化合物を添加して上述したような式(I)の化合物を得、式中のRは上で定義したとおりである工程と;
iv)残留する任意過剰の式(III)の化合物を水の添加により分解する工程と;
v)こうして得た化合物を医薬的に許容し得る酸または塩基で任意に加塩する工程と
を備える。
【0012】
本発明は、本発明の方法により得た式(I)の化合物をさらに提供する。
【0013】
本発明は、ここで定義するような溶媒に吸収されたここで定義するような式(III)の化合物を含む組成物のここで定義するような式(I)の化合物の合成への使用をさらに提供する。
【0014】
本発明の好適な実施形態では、工程(iii)で用いる溶媒はジオキサンである。ジオキサン溶媒の使用は、他の非極性溶媒および他の非プロトン性極性溶媒と比べてより高速のテトラジン誘導体形成をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下のスキームIは、式(I)の化合物がテモゾロミドである本発明の方法を示す。
【化4】

【0016】
ここで用いる「MIC」とはメチルイソシアネートを指す。
【0017】
ここで用いる「TMZ」とは、そのすべての多形体、溶媒和物、エステルおよび塩を含むテモゾロミドを指す。
【0018】
ここで用いるハロゲン原子の語は、塩素、フッ素、臭素またはヨウ素原子、一般的にはフッ素、塩素または臭素原子、もっとも好適には塩素またはフッ素を指す。ハロの語は、接頭辞として用いる場合、同じ意味を有する。
【0019】
ここで用いるC〜Cアルキルの語は、飽和直鎖および分岐鎖の両方のアルキル基を含む。C〜Cアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチルおよびヘキシルが挙げられる。好適にはC〜Cアルキル基はCアルキル基であり、より好適にはCアルキル基である。
【0020】
ここで用いるC〜Cアルコキシ基は、酸素原子に結合した前記C〜Cアルキル基、例えばC〜Cアルキル基である。好適には、前記C〜Cアルコキシ基はメトキシ基である。
【0021】
ここで用いるC〜Cアルキルチオ基は、硫黄原子に結合した前記C〜Cアルキル基、例えばC〜Cアルキル基である。
【0022】
ここで用いるC〜Cアルキルスルフィニル基は、S(=O)基に結合した前記C〜Cアルキル基、例えばC〜Cアルキル基である。
【0023】
ここで用いるC〜Cアルキルスルホニル基は、S(=O)基に結合した前記C〜Cアルキル基、例えばC〜Cアルキル基である。
【0024】
ここで用いるC〜Cシクロアルキル基の語は飽和または不飽和基を示す。好適には、C〜Cシクロアルキル基は飽和している。C〜Cシクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロへキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルが挙げられる。好適には、C〜Cシクロアルキル基はシクロへキシル基である。
【0025】
ここで用いるC〜Cアルケニルの語は、1個以上の炭素−炭素二重結合を含有する基を指し、その基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。好適には、C〜Cアルケニル基はC〜Cアルケニル基である。より好適には、C〜Cアルケニル基はビニル、アリルまたはクロチル基であり、もっとも好適にはアリル基である。
【0026】
ここで用いるC〜Cアルキニルの語は、1個以上の炭素−炭素三重結合を含有する基を指し、その基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。
【0027】
好適には、Rは直鎖または分岐鎖C〜Cアルキル基またはC〜Cアルケニル基を表し、C〜CアルキルまたはC〜Cアルケニル基は未置換かまたはハロゲン(好適には塩素、フッ素および臭素)原子、C〜Cアルコキシ基、好適にはメトキシ基、およびフェニル基から選択した1個もしくは2個の置換基で置換され、フェニル基は未置換かまたはC〜Cアルコキシ基、好適にはメトキシ基から選択した1個もしくは2個の置換基で置換され;あるいはまたRはシクロへキシル基を表す。
【0028】
より好適には、Rは直鎖または分岐鎖C〜C、好ましくはC〜Cアルキル基を表し、該アルキル基は未置換かまたはハロゲン(好適には塩素またはフッ素)原子により置換される。
【0029】
さらにより好適には、Rはメチルまたは2−ハロアルキル、例えば2−フルオロエチルまたは2−クロロエチルを表す。
【0030】
もっとも好適には、Rはメチルである。従って、式(III)の化合物は一般にメチルイソシアネート(MIC)である。
【0031】
好適には、RおよびRは同じかまたは異なり、水素原子およびC〜Cアルキル基から選択される。
【0032】
より好適には、RおよびRの片方または両方は水素である。
【0033】
一般に、RおよびRは同じで、両方とも水素原子である。従って、式(II)の化合物は一般に5−ジアゾ−5H−イミダゾール−4−カルボキサミドである。
【0034】
好適には、Rはメチルであり、RおよびRは同じで、両方とも水素原子である。従って、式(I)の化合物は好適にはテモゾロミド(TMZ)である。
【0035】
一般に、本発明の方法に用いる溶媒は有機溶媒である。当業者であれば適当な有機溶媒を容易に選択することができる。好適には、用いる溶媒がアセトニトリル、トルエン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフランまたはジオキサンである。より好適には、用いる溶媒がトルエン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフランまたはジオキサンである。さらにより好適には、用いる溶媒がテトラヒドロフランまたはジオキサンである。
【0036】
本発明の好適な実施形態において、用いる溶媒はジオキサン、例えば1,2−ジオキサン、1,3−ジオキサンまたは1,4−ジオキサンである。もっとも好適には、用いる溶媒は1,4−ジオキサンである。
【0037】
通常、用いる溶媒はほぼ水を含まない。溶媒から水を除去する方法は当業者に周知であり、例えば蒸留または分子ふるいでの処理を含む。
【0038】
一般に、工程i)は(a)式(III)の化合物を気体形態、好適には蒸気形態で用意し、(b)式(III)の化合物を凝縮することを備える。従って、工程i)およびii)はともに一般に(a)式(III)の化合物を気体形態、好適には蒸気形態で用意し、(b)式(III)の化合物を溶媒に凝縮することを備える。式(III)の化合物は一般に凝縮蒸気として用意する。
【0039】
特定の実施形態では、式(III)の化合物を気体形態、好適には蒸気形態で用意することができる。一般に、前記蒸気は気体形態の式(III)の化合物、およびある量の液体形態(すなわち液滴)の式(III)の化合物を含む。
【0040】
好適には、工程i)はN’−メチル−N,N−ジフェニルウレアを熱分解することを備える。より好適には、工程i)において、メチルイソシアネートの凝縮蒸気がN'−メチル−N,N−ジフェニルウレアを熱分解し、生成したMIC蒸気を凝縮することにより得られる。
【0041】
一般に、工程(i)は、当業界で既知の処理、例えば米国特許第4141913号公報、同第4207251号公報、同第4255350号公報、日本特許公開第56/100751号公報、米国特許第4391758号公報、同第4620030号公報または同第4082787号公報に記載されるようなものを用いて行い、その全開示をここに参照して援用する。
【0042】
通常、N'−メチル−N,N−ジフェニルウレアの熱分解を200〜300℃、好適には260〜280℃の温度で行う。
【0043】
通常、N'−メチル−N,N−ジフェニルウレアの熱分解を1〜5時間、好適には1.5〜2.5時間、より好適には2時間かけて行う。
【0044】
一般に、発生した式(III)の化合物の蒸気を凝縮し、適切な溶媒に吸収させる。
【0045】
N'−メチル−N,N−ジフェニルウレアは市販され、または当業界で周知の方法、例えば塩化ジフェニルカルバモイルを水性モノメチルアミンと反応させることにより調製することができる。塩化ジフェニルカルバモイルおよび水性モノメチルアミンは市販され、または当業界で周知の方法により調製することができる。
【0046】
当業者であれば、本明細書に示す式(II)の化合物がすべての互変異性形態を包含することを理解するだろう。
【0047】
一般に、式(II)の化合物の添加後、工程iii)において、混合物を35〜90℃、好適には40〜60℃の温度で、より好適には6〜24時間、好適には6〜20時間、より好適には15〜18時間維持する。通常、この混合物を撹拌する。
【0048】
一般に、式(II)の化合物の添加後、工程iii)において、HPLC分析により測定して反応混合物中に存在する式(II)の化合物の量が<0.5%になるまで反応を進めることができる。
【0049】
通常、式(III)の化合物の式(II)の化合物に対するモル比は一般的には1.8:1〜5:1、好適には2:1〜2.4:1である。
【0050】
通常、式(III)の化合物を溶解する溶媒の式(II)の化合物に対する比は2:1〜10:1、より好適には4:1〜6:1である。
【0051】
一般に、式(II)の化合物に比べて過剰の式(III)の化合物を用いる。
【0052】
通常、工程(ii)と(iii)との間で、溶媒中に存在する式(III)の化合物の含有量を既知の方法、例えばAnalyst、1999、vol.124、(9)、1327〜1330に記載される方法を用いて計算する。
【0053】
本発明に用いる式(II)の化合物は、例えばJournal of Organic Chemistry(1961)、26、2396に記載されるような既知の方法の適用または適応により調製することができる。上記文献に記載されるような反応は、通常亜硝酸の供給源を含む水性または有機溶液中で行う。上記文献に記載されるような反応は、通常水中またはテトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチルもしくはアセトンのような有機溶媒中で行う。かかる反応は、亜硝酸の有機供給源、例えば亜硝酸t−ブチルまたはイソペンチルと低アルカンC1〜6酸、例えば酢酸のようなカルボン酸とで行うこともできる。
【0054】
一般に、本発明の方法は閉鎖系において行う。これは環境への暴露/放出のリスクを最小化する。
【0055】
通常、工程iv)において、反応がほぼ完了した後に残留する任意過剰の化合物(III)を酸水溶液で処理することにより分解する。これは、あらゆる残留イソシアネート、例えばMICの安全な廃棄を可能にする。
【0056】
好適な実施形態において、工程iv)は酸水溶液で処理して過剰化合物(III)を分解することを備え、加塩(すなわち塩調製)工程v)をさらに含む。
【0057】
医薬的に許容し得る酸は、塩酸、硫酸、リン酸、二リン酸、臭化水素酸または硝酸のような無機酸およびクエン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、酒石酸、安息香酸、酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸のような有機酸の両方を含む。
【0058】
医薬的に許容し得る塩基は、一般に金属水酸化物、好適にはアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウムまたはカリウムである。
【0059】
好適には、工程v)はこうして得た化合物を医薬的に許容し得る酸で加塩することを備える。
【0060】
通常、工程v)の後で式(I)の化合物を単離する。一般に、式(I)の化合物の単離は、酢酸エチルを反応混合物に添加し、ろ過によって粗生成物を除去することにより行われる。ろ過生成物を通常酢酸エチルで洗浄する。
【0061】
次いで、粗生成物は通常アセトンまたはアセトン−水(3:1)中でろ過により除去した式(I)の粗化合物をスラリーにすることにより精製される。アセトン−水混合物に用いる水のpHを通常酢酸で4〜4.5に調節する。
【0062】
式(I)の化合物がテモゾロミドである場合、粗生成物の全収率は一般的に50〜86%である。得られた粗TMZは一般的に98〜99.5%、好適には99%より大きい(例えば99.2〜99.5%)純度を有する。
【0063】
次いで、得られた式(I)の粗化合物を通常アセトン−水から再結晶化することによりさらに精製される。用いるアセトン−水は、一般的には1:0.3〜1:5、好適には1:0.3〜1:3のアセトン水体積比を有する。
【0064】
式(I)の化合物がテモゾロミドである場合、再結晶生成物の全収率は一般的に35〜63%である。再結晶生成物の純度は一般的に99.8〜99.9%であるか、または例えば99.9%より高くすることができる。一般に、不純物レベルは、従来技術の方法で達成された0.15%に比べて0.1%未満である。
【0065】
式(I)の化合物がテモゾロミドである場合、上記方法で得た再結晶生成物は99.9%以上の純度を有し、0.1%未満の5−ジアゾ−5H−イミダゾール−4−カルボキサミドまたは5−アミノイミダゾール−4−カルボキサミドを含有する。
【0066】
上述したように、本発明の好適な実施形態では、溶媒がジオキサンである。MIC−ジオキサン混合物がもっとも適切であるということが本発明の知見である。従って、MICをテトラヒドロフラン(THF)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、トルエン、アセトニトリルおよびDMSO等のような各種溶媒に吸収させた。反応を調製した溶液と5−ジアゾ−5H−イミダゾール−4−カルボキサミドとの間で行った。反応が完了まで6〜20時間進むと、MIC−ジオキサン混合物がもっとも適切であることを見出した。大部分の他の溶媒では、反応は起こらないか、完了まで行かなかった。また、水混和性溶媒であるため、MICの下流処理は他の従来の溶媒と比べてジオキサンのほうがより容易である。
【0067】
本発明は、凝縮MIC蒸気を適切な溶媒中に吸収させる効率的なMICの取り扱い方法を提供する。MICに伴う暴露の危険は、従来技術に記載された方法と比べて大幅に低減することができる。
【0068】
本発明は、5−ジアゾ−5H−イミダゾール−4−カルボキサミドのメチルイソシアネートとの高速反応を提供する。反応速度は、MICが適当な溶媒に存在すると増進され、さらに、過剰蒸気への暴露が最小化される。さらに、反応後の溶液中の過剰MICを次に酸性水を用いて破壊する。これらすべての反応工程は、通常閉鎖条件において行われ、よってMICへの暴露を回避する。
【0069】
本発明の方法は、安全で費用効率が高く、ロバストで産業用途によく適したより良い調製技術を用いて高収率および純度でテモゾロミドを製造する便利な方法である。該方法は、単純で、効率的で、産業上実現可能で、環境に優しい。
【実施例】
【0070】
以下の実施例は本発明の好適な実施形態を示すために含む。当業者であれば、以下の実施例で開示する技術が本発明者らにより本発明の実施において十分に機能すると見出された技術を表し、よってその実施にとって好適な形態を構成するとみなすことができることを理解すべきである。しかしながら、当業者であれば、本開示を踏まえ、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示する特定の実施形態において多くの変更を行うことができ、さらに同様または類似の結果を得ることができることを理解すべきである。
【実施例1】
【0071】
5−ジアゾ−5H−イミダゾール−4−カルボキサミドの調製
47gの亜硝酸ナトリウムを1.2リットルの水に溶解し、溶液を0℃まで冷却した。100gの5−アミノイミダゾール−4−カルボキサミドを塩酸の溶液(720mlの水中に80mlの36%HCl)に撹拌しながら溶解し、得られた5−アミノイミダゾール−4−カルボキサミド塩酸溶液を緩徐に20〜30分かけて0〜5℃で滴下した。
【0072】
添加完了後、反応混合物を10分間撹拌し、ろ過した。得られた固体を400mlのMD水に懸濁させ、15分間撹拌した。懸濁液をろ過し、15分間真空乾燥した。得られた固体を500mlのTHFに懸濁させ、15分間撹拌した。懸濁液をろ過し、15分間真空乾燥した。最後に、固体を45℃で乾燥して、掲題の化合物60gを得た。HPLCによる純度:96.4%。
【実施例2】
【0073】
MICの調製
60gのN'−メチル−N,N−ジフェニルウレアを、凝縮器および60mlの1,4−ジオキサンを入れた受液器を備える清潔で乾燥した丸底フラスコ中に入れた。N'−メチル−N,N−ジフェニルウレアを含有する丸底フラスコを260〜280℃まで2時間加熱し、メチルイソシアネートを含む凝縮蒸気を、ジオキサンを含有する受液器中に吸収させた。MIC含有量の概算を、Analyst、1999、vol 124、(9)、1327〜1330に記載される方法のとおり行った。MIC含有量は16質量/質量%だった。
【実施例3】
【0074】
TMZの調製
15gの5−ジアゾ−5H−イミダゾール−4−カルボキサミドを、実施例2で得たジオキサン中に吸収されたメチルイソシアネートを含有するフラスコに添加した。次いで、反応塊を50℃まで加熱し、HPLCが出発材料を消費したことを示すまでこの温度を15〜18時間維持した。次に、反応混合物を30℃まで冷却し、8mlの酸性水を添加した。
【0075】
反応混合物を30分間撹拌した。60mlの酢酸エチルを添加した。反応混合物を60分間撹拌し、ろ過した。得られた固体を15mlの酢酸エチルで洗浄し、15分間真空乾燥した。固体を45mlのアセトン中に懸濁させ、30分間撹拌した。固体をろ過し、15分間真空乾燥した。収率は含水率1%で18gだった。補正収率は純度99.74%で16.5g(78.5%)である。
【実施例4】
【0076】
各種溶媒を用いる反応速度の研究
実験を各種溶媒および温度を用いて実施例3におけるように行った。テモゾロミドの収率および残留未反応ジアゾ化合物の量を以下の表に示す。
【表1】

結果は明らかに、テモゾロミドのもっとも良好な収率および純度はジオキサン溶媒および50℃の温度を用いて得ることができることを示す。
【実施例5】
【0077】
テモゾロミドの精製
900mlのアセトン−水(体積でそれぞれ3:1)の混合物を丸底フラスコに入れた。上記実施例3(水分1%、LOD9%)で得た粗生成物の湿潤ケーキを添加し、塊を50℃まで加熱してテモゾロミドを溶解した。完全溶解後、1.5gの酸性炭を添加し、混合物を30分間撹拌した。混合物をセライトベッドでろ過し、30mlのアセトンで洗浄した。溶液を徐々に0℃まで冷却し、その温度で60分間維持した。得られた懸濁液をろ過し、固体スラリーを60mlのアセトンで洗浄した。固体をろ過し、15分間真空乾燥した。次いで、湿潤ケーキを真空乾燥し、12g(57%)のテモゾロミドを得た。HPLCによる純度:99.9%。
【0078】
HPLCによる不純物および収率の分析
Inertsil ODS、3.0V(250X4.6mm)、5.0μカラムを用いる勾配法を用いてHPLC分析を行った。詳細は以下の表に示す。
HPLCによる関連物質:
【表2】

【表3】

【表4】

【0079】
テモゾロミドの試料および予想される不純物を、上記方法および示した保持時間を用いてHPLCにより分析した。相対保持時間を計算した。試験した5つの試料の不純物、保持時間および相対保持時間を以下の表に詳しく示す。
【表5】

【0080】
次に、本発明の方法により調製したテモゾロミドの試料を同様の方法を用いてHPLCにより分析した。次いで、既知および未知の不純物の量を以下に詳しく記載する式を用いて計算した。
既知の不純物%=AK×DS×P
AS×DT×RRF
未知の不純物%=AU×DS×P
AS×DT×RRF
総不純物=既知の不純物+未知の不純物
AK=試料溶液のクロマトグラムにおける既知の不純物の領域
AS=参照溶液のクロマトグラムにおけるテモゾロミドの平均領域
AU=試料溶液のクロマトグラムにおける未知の不純物の領域
DU=試料溶液における既知の不純物の希釈要因
【0081】
試験したテモゾロミドの試料について得た結果を以下の表に示す。
【表6】

よって、本発明に従って調製したテモゾロミドは極めて高いレベルの純度(99.9%)を有することがわかる。
【比較例1】
【0082】
本発明の方法と米国特許出願公開第2007/0225496号公報に記載された方法の比較(収率について)を行った。結果を以下の表に示す。
【表7】

【0083】
このように、本発明者らは本発明の基本的な新規機序について記載したが、本発明の精神から逸脱することなく各種省略および置換ならびに形態および詳細の変更が可能であり得ることが理解されるだろう。例えば、ほぼ同様の機能をほぼ同様の方法で行い、同様の結果を達成する、それら要素および/または方法工程のすべての組み合わせが本発明の範囲内であることをとくに意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I):
【化1】

(式中のRは水素原子、直鎖もしくは分岐鎖C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基またはC〜Cアルキニル基を表し、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基およびC〜Cアルキニル基が未置換かまたはハロゲン原子、直鎖もしくは分岐鎖C〜Cアルコキシ基、C〜Cアルキルチオ基、C〜Cアルキルスルフィニル基、C〜Cアルキルスルホニル基およびフェニル基から選択される1、2もしくは3個の置換基で置換され、フェニル基が未置換かまたはC〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基およびニトロ基から選択される1個以上の置換基で置換されるか;あるいはRはC〜Cシクロアルキル基を表し;
は式−(C=O)NRを有する基を表し、式中のRおよびRは独立して水素原子、Cアルキル基、C〜Cアルケニル基およびC〜Cシクロアルキル基から選択される)のテトラジン誘導体、またはその医薬的に許容し得る塩を製造する方法であり、
i)次式(III):
−N=C=O III
(式中のRは上で定義したとおりである)の化合物を用意する工程と;
ii)前記式(III)の化合物を溶媒に吸収させて式(III)の化合物の溶液を得る工程と;
iii)こうして得た溶液に次式(II):
【化2】

(式中のRは上で定義したとおりである)の化合物を添加して上述したような式(I)の化合物を得る工程と;
iv)残留する任意過剰の式(III)の化合物を水の添加により分解する工程と;
v)こうして得た化合物を医薬的に許容し得る酸または塩基で任意に加塩する工程と
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記Rがメチル基であり、RおよびRが同じでともに水素原子である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒がジオキサンである請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程i)が、N’−メチル−N,N−ジフェニルウレアを熱分解することを備える前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記N’−メチル−N,N−ジフェニルウレアの熱分解を1〜5時間行う請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記N’−メチル−N,N−ジフェニルウレアの熱分解を200〜300℃の温度で行う請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(iii)で得た反応混合物を35〜90℃で6〜24時間維持する前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記式(III)の化合物の式(II)の化合物に対するモル比が1.8:1〜5:1である前記前請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記式(III)の化合物を溶解する溶媒の式(II)の化合物に対する比が2:1〜10:1である前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記請求項のいずれか1項に記載の方法により得た式(I)の化合物。
【請求項11】
98〜99.5%の純度を有する請求項10に記載のテモゾロミド。
【請求項12】
前記請求項のいずれか1項に定義するような溶媒に吸収させた前記請求項のいずれか1項に定義するような式(III)の化合物を含む組成物の前記請求項のいずれか1項に定義するような式(I)化合物の合成への使用。
【請求項13】
本明細書で実質的に実施例および図表で例示した上記のようなテトラジン誘導体の製造方法。

【公表番号】特表2012−509868(P2012−509868A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537015(P2011−537015)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【国際出願番号】PCT/IN2009/000681
【国際公開番号】WO2010/058430
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(511126280)
【氏名又は名称原語表記】RELIANCE LIFE SCIENCES PVT. LTD.
【Fターム(参考)】