説明

テラヘルツ電磁波発生装置

【課題】 光伝導膜を有していても放射利得等のアンテナ性能を向上する。
【解決手段】 金属板33の上に第1基板31と第2基板32とが横方向に配列されて設けられている。第1基板の表面に光伝導層30が形成されており、第2基板の表面に第1エレメント34a、第2エレメント34bからなるダイポールアンテナ34が形成されている。ダイポールアンテナ34の給電点から引き出された第1ライン35aおよび第2ライン35bは、第2基板32の表面から第1基板31の光伝導層30上に形成されており、第1ライン35aの中途が切断されてバイアス電源Ecが印加されている。第1ライン35aの端部と第2ライン35bの端部とが対向する対向部35cにパルス状の光を照射することにより、ダイポールアンテナ34からテラヘルツ電磁波が放射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、テラヘルツ電磁波を効率的に発生することのできるテラヘルツ電磁波発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ電磁波は周波数が0.1〜10THz(波長が30μm〜3000μm)の電磁波とされており、波長が赤外〜遠赤外領域とほぼ一致する。テラヘルツ電磁波は、「光」と「ミリ波」に挟まれた周波数領域に存在しているため、テラヘルツ電磁波は、光と同様に高い空間分解能でものを見分ける能力と、ミリ波と同様の物質を透過する能力を併せ持っている。テラヘルツ波帯はこれまで未開拓電磁波であったが、この周波数帯の電磁波の特徴を生かした時間領域分光、イメージング及びトモグラフィーによる材料のキャラクタリゼーション、環境計測、生物や医学への応用などが検討されてきている。テラヘルツ電磁波の発生は、物質透過性と直進性を兼ね備えるためX線に替わる安全かつ革新的なイメージングや数100Gbps級の超高速無線通信が可能となる。特に半導体製作による光伝導アンテナは、製作が容易でテラヘルツ時間領域分光法などで既に多くの実績を有している。
【0003】
従来のテラヘルツ電磁波発生装置とされる光伝導アンテナ100の一構成例を図17に示す。
図17に示す光伝導アンテナ100は、GaAs(Gallium Arsenide)基板とされる第1基板111の一面に光伝導膜110とされる低温成長GaAs膜を形成し、光伝導膜110の上に平行伝送線路からなる導電性の第1ライン112aおよび第2ライン112bを蒸着等により形成している。GaAsは、Ga(ガリウム)とAs(砒素)の化合物からなる化合物半導体である。第1ライン112aおよび第2ライン112bのほぼ中央には、対向部112cで対向する導電性の第1エレメント113aおよび第2エレメント113bが形成されている。対向部112cの間隔は、例えば数μm程度とされる。このような構成の光伝導アンテナ100において、第1ライン112aと第2ライン112bとの間に直流のバイアス電圧Ecを印加する。この状態では、第1ライン112aと第2ライン112bとの間は対向部112cにより絶縁されているため電流は流れない。そこで、光源114から10-15秒程度のフェムト秒パルスレーザ光を対向部112cに照射する。パルスレーザ光を対向部112cに照射すると、対向部112cにおける光伝導膜110中に光導電効果により自由キャリアが生じ、この自由キャリアがバイアス電圧Ecにより加速されることにより、第1エレメント113aおよび第2エレメント113bを介して第1ライン112aと第2ライン112b間にサブピコ秒(10-12秒)程度のパルス状の電流が流れる。このパルス状の電流によって第1エレメント113aおよび第2エレメント113bが励振されて、テラヘルツ電磁波が第1エレメント113aおよび第2エレメント113bから放射される。なお、第1エレメント113aおよび第2エレメント113bはダイポールアンテナ113として作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−313803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図17に示す従来の光伝導アンテナ100では、テラヘルツ電磁波は光伝導膜110および第1基板111を介してz軸方向に放射される。そこで、従来の光伝導アンテナ100におけるy−z面(E面)とx−z面(H面)の放射指向特性を図18に示す。図18を参照すると、y−z面(E面)の放射指向特性においては、約±16°方向の放射界が高くされているが、z軸方向とされる0°方向(正面方向)のメインビームの放射界は小さくなっている。さらに、±180°方向にはほぼ放射されない。また、x−z面(H面)の放射指向特性においては、z軸方向とされる0°方向(正面方向)にメインビームが放射され,メインビームの両側とされる約±30°方向にサイドローブが放射されている。この場合のメインビームおよびサイドローブの最大放射界はほぼ同様とされているが、y−z面(E面)の最大放射界より小さくなっている。また、±180°方向にはほぼ放射されない。
【0006】
このように、従来の光伝導アンテナ100においては正面方向の放射利得が低下している。この原因は、低温成長GaAsを材料とする光伝導膜110の比誘電率εrが約13の高誘電率とされて、光伝導膜110で損失を受けていること、および、第1基板11および光伝導膜110の境界面において反射していることが原因と考えられる。しかしながら、光伝導膜110の材料としては、光源114からレーザ光が照射された際に生じる自由電子のキャリア寿命が短いと共にキャリア移動度が大きい材料とする必要があり、このような材料の比誘電率は、一般的に高いことが知られている。すると、光伝導膜を有することが必須の構成要件とされる光伝導アンテナでは、放射利得等のアンテナ性能を向上することができないという問題点があった。
そこで、本発明は、光伝導膜を有していてもアンテナ性能を向上することができるテラヘルツ電磁波発生装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のテラヘルツ電磁波発生装置は、金属板と、該金属板上に配置され、光が照射された際に自由電子が生じる比誘電率εr1の光伝導層が表面に形成された絶縁性の第1基板と、前記金属板上に前記第1基板の横に隣接して密着するよう配置された比誘電率εr2の絶縁性の第2基板と、該第2基板の表面に形成された導電性のダイポール素子と、該ダイポール素子の給電点から引き出され、前記第2基板の表面から前記第1基板における前記光伝導層上にわたって形成された第1ラインおよび第2ラインと、前記光伝導層上に形成されている前記第1ラインと前記第2ラインの端部が所定の間隔で対向している対向部と、該対向部にパルス状の光を照射する光源と、前記第1ラインと前記第2ラインとの間に電源を印加するバイアス電源とを備え、比誘電率εr1>比誘電率εr2とされていることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、パルス状の光が照射される光伝導層上に形成されている対向部が、第2基板上に形成されているダイポール素子の給電部として作用するようになり、対向部から給電されたダイポール素子からテラヘルツ電磁波が放射されるようになる。この場合、対向部が形成されている光伝導層は比誘電率が高くされるが、ダイポール素子が形成されている第2基板の比誘電率を低くすることができる。これにより、放射利得等のアンテナ性能を向上することができるテラヘルツ電磁波発生装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のテラヘルツ電磁波発生装置の第1実施例にかかる光伝導アンテナの構成を一部破断して示す斜視図である。
【図2】本発明のテラヘルツ電磁波発生装置の第1実施例にかかる光伝導アンテナの構成を断面図で示す側面図である。
【図3】本発明のテラヘルツ電磁波発生装置の第1実施例にかかる光伝導アンテナのx−z面の放射特性を示す図である。
【図4】本発明のテラヘルツ電磁波発生装置の第1実施例にかかる光伝導アンテナのy−z面の放射特性を示す図である。
【図5】本発明のテラヘルツ電磁波発生装置にかかる光伝導アンテナの解析モデルの構成を示す斜視図である。
【図6】本発明のテラヘルツ電磁波発生装置にかかる光伝導アンテナの解析モデルの構成を示す側面図である。
【図7】本発明のテラヘルツ電磁波発生装置にかかる光伝導アンテナの解析モデルの入力インピーダンスの周波数特性を示す図である。
【図8】本発明のテラヘルツ電磁波発生装置にかかる光伝導アンテナの解析モデルの反射損失の周波数特性を示す図である。
【図9】本発明のテラヘルツ電磁波発生装置にかかる光伝導アンテナの他の解析モデルの入力インピーダンスの周波数特性を示す図である。
【図10】本発明のテラヘルツ電磁波発生装置にかかる光伝導アンテナの他の解析モデルの反射損失の周波数特性を示す図である。
【図11】本発明のテラヘルツ電磁波発生装置にかかる光伝導アンテナの解析モデルのx−z面の放射特性を示す図である。
【図12】本発明のテラヘルツ電磁波発生装置にかかる光伝導アンテナの解析モデルのy−z面の放射特性を示す図である。
【図13】本発明のテラヘルツ電磁波発生装置にかかる光伝導アンテナの解析モデルの高さを変えた際の入力インピーダンス特性を示す図である。
【図14】本発明のテラヘルツ電磁波発生装置の第2実施例にかかる光伝導アンテナの構成を一部破断して示す斜視図である。
【図15】本発明のテラヘルツ電磁波発生装置の第3実施例にかかる光伝導アンテナの構成を示す斜視図である。
【図16】本発明のテラヘルツ電磁波発生装置の第4実施例にかかる光伝導アンテナの構成を示す斜視図である。
【図17】従来の光伝導アンテナの構成を示す斜視図である。
【図18】従来の光伝導アンテナのy−z面およびx−z面の放射特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のテラヘルツ電磁波発生装置の第1実施例にかかる光伝導アンテナの構成を一部破断して示す斜視図を図1に示し、その光伝導アンテナの構成を断面図で示す側面図を図2に示す。
これらの図に示す第1実施例の光伝導アンテナ1は、絶縁性あるいは半絶縁性の所定厚みの第1基板11の一面に光伝導層10が形成され、第1基板11の他面に金属層12が蒸着等により形成されている。第1基板11は、例えばGaAs(Gallium Arsenide)基板とされ、光伝導層10の材料は、例えば低温成長GaAs(比誘電率εr1は約13)とされ、金属層12の材料は金、銀、アルミニウムや銅等とされる。GaAsは、Ga(ガリウム)とAs(砒素)の化合物からなる化合物半導体である。金属層12の上面には所定厚みの絶縁性の第2基板13が貼着されて一体化されている。第2基板13の材料は、例えばフッ素樹脂(比誘電率εr2は約3)とされる。この第2基板13の上面に、第1エレメント15aおよび第2エレメント15bからなるダイポールアンテナ15が蒸着等により形成されている。第1エレメント15aと第2エレメント15bとが対向する給電点となる端部から、第1ライン16aおよび第2ライン16bがそれぞれ内部に向かってほぼ平行に引き出されて、第2基板13、金属層12、第1基板11および光伝導層10を貫通して光伝導層10の外表面上にわたり形成されている。このように、第1ライン16aおよび第2ライン16bはL字状に屈曲されて形成されている。そして、光伝導層10上に形成されている第2ライン16bには切欠部16cが形成されている。この場合、金属層12と第1ライン16aおよび第2ライン16bとが短絡しないように、金属層12にはライン16a、16bの外形寸法より大きな寸法の孔部が形成される。また、切欠部16cの間隔は、例えば数μm程度とされると共に、第1ライン16aおよび第2ライン16bとでコプレーナラインを形成することができる。第1エレメント15aおよび第2エレメント15bからなるダイポールアンテナ15が形成されている第2基板13の上面には、レンズ14が貼着されている。
【0011】
このような構成の第1実施例の光伝導アンテナ1において、第1ライン16aの端部と第2ライン16bの端部との間に直流のバイアス電圧Ecを印加する。この状態では、第2ライン16bは切欠部16cにより絶縁されている。ここで、光源17から10-15秒程度のフェムト秒パルスレーザ光を第2ライン16bにおける切欠部16cに照射する。パルスレーザ光を切欠部16cに照射すると、切欠部16cにおける光伝導層10中に光導電効果により自由キャリアが生じ、この自由キャリアがバイアス電圧Ecにより加速されることにより、切欠部16cにサブピコ秒(10-12秒)程度のパルス状の電流が流れる。このパルス状の電流は第1ライン16aおよび第2ライン16bを介して第1エレメント15aおよび第2エレメント15bに供給されて、テラヘルツ電磁波が第1エレメント15aおよび第2エレメント15bから放射される。このように、切欠部16cが第1エレメント15aおよび第2エレメント15bからなるダイポールアンテナ15の給電部となる。この場合、第2基板13の下面に配置された金属層12の作用により、ダイポールアンテナ15から放射されたテラヘルツ電磁波が反射され、z軸方向に放射されたテラヘルツ電磁波と合成されることによりz軸方向へ強く放射される。合成されたテラヘルツ電磁波は、レンズ14により収束されて放射されるようになる。なお、ダイポールアンテナ15の電気長は、放射されるテラヘルツ電磁波の波長をλとした際に約λ/2の長さとされる。また、第2基板13の厚さは約λ/4の電気長に相当する厚さとするのが好適とされる。さらに、レンズ14は、例えばシリコンレンズとされ、図2に示すようにレンズ14の上部形状が凸状の膨出部14aを備える形状とされて、テラヘルツ電磁波を収束している。なお、レンズ14を省略しても良い。
【0012】
第1実施例の光伝導アンテナ1におけるx−z面の放射特性を図3に示し、y−z面の放射特性を図4に示す。放射されるテラヘルツ電磁波の周波数は約500GHzとされている。ただし、図3および図4に示す放射特性は第2基板13の誘電体損(tanδ)がないものとした時の放射特性である。
図3を参照すると、光伝導アンテナ1の放射方向とされるx−z面の0°方向(z軸方向)にB点で示す約5.6dBiの高い放射利得のビームが放射されている。また、光伝導アンテナ1の下面方向には非常に小さいサイドローブしか放射されていないことが分かる。また、図4を参照すると光伝導アンテナ1の放射方向とされるy−z面の0°方向(z軸方向)にB点で示す約5.6dBiの高い放射利得のビームが放射されている。また、光伝導アンテナ1の下面方向にはわずかしか放射されていないことが分かる。このように、本発明の第1実施例の光伝導アンテナ1において、高い放射利得が得られるのは、図17に示す従来の光伝導アンテナ100のようにテラヘルツ電磁波が比誘電率が高く損失の多い光伝導膜110を透過することなく直接自由空間に放射される構成とされると共に、比誘電率εr2が約3と低く損失の少ない第2基板13を透過して金属層12で反射された反射波が、直接波にほぼ同相で合成されるからと考えられる。
【0013】
次に、本発明の第1実施例にかかる光伝導アンテナ1の解析モデルを図5および図6に示す。図5は光伝導アンテナ1の解析モデル1’の構成を示す斜視図であり、図6は光伝導アンテナ1の解析モデル1’の構成を示す側面図である。
本発明の第1実施例にかかる光伝導アンテナ1においては、テラヘルツ電磁波は金属層12で反射されて金属層12より下方へは放射されないため、第2基板13の上面に第1エレメント15aおよび第2エレメント15bが形成され、下面に金属層12が配置された図5,図6に示す構成を解析モデル1’の構成とすることができる。この図5,図6に示す解析モデル1’において、設計周波数fを500GHzとし、その自由空間の波長をλで表すとλは約0.6mmとなる。そして、解析モデル1’において設計した寸法を波長λを用いて表すと、第2基板13の長さL1と幅L2とは約1.41λとされ、第2基板13の高さHは約0.17λとされ、ダイポールアンテナ15の長さELの電気長は約0.5λとされ、第1エレメント15aと第2エレメント15bとが対向する給電点の間隔Dは約0.03λとされる。なお、第2基板13の比誘電率εr2は約3.0とされている。
【0014】
この寸法条件により時間領域差分法シミュレータによりシミュレーションした解析モデル1’の入力インピーダンスの周波数特性を図7に、反射損失の周波数特性を図8に示す。300GHzから500GHzまで周波数をスキャンさせた際の入力インピーダンスが図7に示されており、図7を参照すると、入力インピーダンスの実部は周波数が300GHzの時に約20Ωとなり、周波数が高くなるにつれて次第に上昇していき、周波数が385GHzにおいて約49.6Ωとなり、周波数が500GHzにおいては約170Ωとなる。また、入力インピーダンスの虚部は周波数が300GHzの時に約−100Ωとなり、周波数が高くなるにつれて次第に上昇していき、周波数が385GHzにおいて約0Ωとなり、その後飽和して下降していき周波数が500GHzにおいては約51Ωとなる。また、300GHzから500GHzまで周波数をスキャンさせた際の反射損失が図8に示されており、図8を参照すると、反射損失は周波数が300GHzの時には約−1dBしか得られていないが、周波数が高くなるにつれて次第に減衰していき、周波数が385GHzにおいて共振して−30dB以下の良好な反射損失が得られている。そして、周波数が385GHzを超えていくと共振から外れて減衰量が少なくなっていき、周波数が500GHzにおいては約−5dBの減衰量となっている。
【0015】
上記した寸法では、約385GHzにおいて共振しており、この際に入力インピーダンスの虚部が約0Ωになると共に実部が約49.6Ωとなって、50Ωの特性インピーダンスに整合されるようになる。このように、約385GHzにおいて共振するのは第2基板13が誘電体とされて、その比誘電率εr2に基づいて波長が短縮されるからである。比誘電率εr2が3.0の場合は、波長短縮率は約71%になる。そこで、約385GHzにおいて共振している上記した寸法をスケーリングすることにより約500GHzに共振するように設計する。すなわち、解析モデル1’における各部の寸法を、385/500=0.77倍する。スケーリング後の解析モデル1’の寸法は、第2基板13の長さL1と幅L2とは約1.07λ(約0.64mm)とされ、第2基板13の高さHは約0.13λ(約0.078mm)とされ、ダイポールアンテナ15の長さELの電気長は約0.27λとされる。ただし、第1エレメント15aと第2エレメント15bとが対向する給電点の間隔Dは共振周波数に影響を与えないことからスケーリングされず約0.03λ(約0.018mm)とされる。
【0016】
上記したようにスケーリングした寸法の解析モデル1’における入力インピーダンスの周波数特性を図9に、反射損失の周波数特性を図10に示す。400GHzから600GHzまで周波数をスキャンさせた際の入力インピーダンスが図9に示されており、図9を参照すると、入力インピーダンスの実部は周波数が400GHzの時に約20Ωとなり、周波数が高くなるにつれて次第に上昇していき、周波数が500GHzにおいて約47.3Ωとなり、周波数が600GHzにおいては約123Ωとなる。また、入力インピーダンスの虚部は周波数が400GHzの時に約−85Ωとなり、周波数が高くなるにつれて次第に上昇していき、周波数が500GHzにおいて約0Ωとなり、その後飽和するよう上昇していき周波数が600GHzにおいては約62Ωとなる。
【0017】
また、400GHzから600GHzまで周波数をスキャンさせた際の反射損失が図10に示されており、図10を参照すると、反射損失は周波数が400GHzの時には約−1dBしか得られていないが、周波数が高くなるにつれて次第に減衰していき、周波数が500GHzにおいて共振して−20dB以下の良好な反射損失が得られている。そして、周波数が500GHzを超えていくと共振から外れて減衰量が少なくなっていき、周波数が600GHzにおいては約−6dBの減衰量となる。
このようにスケーリングすることにより、解析モデル1’を500GHzで共振するよう設計することができる。このことから、スケーリングをすることにより、400GHzや600GHzなどの周波数に共振するよう設計することができるようになる。
【0018】
次に、図5,図6に示す解析モデル1’におけるy−z面の放射特性を図11に示し、x−z面の放射特性を図12に示す。この場合、解析モデル1’の寸法は上記したように500GHzにスケーリングした寸法とされ、周波数は約500GHzとされている。
図11を参照すると、解析モデル1’の放射方向とされるy−z面の0°方向(z軸方向)にC点で示す約5.8dBiの高い放射利得のビームが放射されている。また、解析モデル1’の下面方向には非常に小さいサイドローブしか放射されていないことが分かる。また、図12を参照すると解析モデル1’の放射方向とされるx−z面の0°方向(z軸方向)にC点で示す約5.8dBiの高い放射利得のビームが放射されている。また、解析モデル1’の下面方向にはわずかしか放射されていないことが分かる。また、周波数を490GHzにした場合は、解析モデル1’におけるy−z面およびx−z面の放射特性はほぼ同様となり、0°方向(z軸方向)の放射利得として若干増加した約5.9dBiが得られ、反射損失としては約−19.3dBが得られる。さらに、周波数を510GHzとした場合は、解析モデル1’におけるy−z面およびx−z面の放射特性はほぼ同様となり、0°方向(z軸方向)の放射利得として若干低下した約5.7dBiが得られ、反射損失としては約−20.8dBが得られる。
【0019】
次に、解析モデル1’において第2基板13の高さHをパラメータとした際の入力インピーダンス特性を図13に示す。
第2基板13の高さHを0.1λから0.2λまで変化した際の入力インピーダンスの実部と虚部の変化が図13に示されている。図13を参照すると、入力インピーダンスの実部は高さHが0.1λの時に約30Ωとなり、高さHが0.125λ、0.15λと高くなるにつれて次第に上昇していく。そして、高さHが0.15λを超えると緩やかに上昇していき、高さHが0.2λとなると約68Ωになる。また、入力インピーダンスの虚部は高さHが0.1λの時に約0Ωとなり、高さHが0.125λを超えるまではほぼ0オームとなる。高さHが0.125λを超えていくと次第に虚部の絶対値が大きくなっていき、高さHが0.2λになると約−35Ωとなる。図13を参照すると、高さHを約0.13λとすることにより、50Ωの特性インピーダンスに整合することのできる入力インピーダンスが得られることが分かる。
【0020】
このように、解析モデル1’において、高い放射利得が得られるのは、図17に示す従来の光伝導アンテナ100のようにテラヘルツ電磁波が比誘電率が高く損失の多い光伝導膜110を透過することなく直接自由空間に放射される構成とされると共に、比誘電率εr2が約3と低く損失の少ない第2基板13を透過して金属層12で反射された反射波が、直接波にほぼ同相で合成されるからと考えられる。そして、上述した解析モデル1’に基づいて、図1,図2に示す第1実施例の光伝導アンテナ1が具現化されており、光伝導アンテナ1の各部の寸法は解析モデル1’における各部の寸法と同様とされている。
なお、上記説明した図7ないし図13の特性は、第2基板13の誘電体損(tanδ)がないものとした時の特性である。
【0021】
次に、本発明のテラヘルツ電磁波発生装置の第2実施例にかかる光伝導アンテナの構成を一部破断して示す斜視図を図14に示す。
図14に示す第2実施例の光伝導アンテナ2は、絶縁性あるいは半絶縁性の所定厚みの第1基板21の一面に光伝導層20が形成され、第1基板21の他面に金属層22が蒸着等により形成されている。第1基板21は、例えばGaAs基板とされ、光伝導層20の材料は、例えば低温成長GaAs(比誘電率εr1は約13)とされ、金属層22の材料は金、銀、アルミニウムや銅等とされる。金属層22の上面には所定厚みの絶縁性の第2基板23が貼着されている。第2基板23の材料は、例えばフッ素樹脂(比誘電率εr2は約3)とされる。この第2基板23の上面に、第1エレメント25a1および第2エレメント25b1からなる第1ダイポールアンテナ25−1と、第1エレメント25a2および第2エレメント25b2からなる第2ダイポールアンテナ25−2と、第1エレメント25a3および第2エレメント25b3からなる第3ダイポールアンテナ25−3の3つのダイポールアンテナが蒸着等により形成されている。
【0022】
3つの第1エレメント25a1〜25a3と3つの第2エレメント25b1〜25b3とが対向する第1ダイポールアンテナ25−1〜第3ダイポールアンテナ25−3の給電点から、3本の第1ライン26a1,26a2,26a3および3本の第2ライン26b1,26b2,26b3がそれぞれ内部に向かってほぼ平行に引き出されている。第1ライン26a1〜26a3および第2ライン26b1〜26b3は、第2基板23、金属層22、第1基板21および光伝導層20を貫通して、光伝導層20の外表面上に引き出されており、光伝導層20の外表面上に沿って第1共通ライン26dおよび第2共通ライン26eが形成されている。そして、第1ライン26a1〜26a3および第2ライン26b1〜26b3がそれぞれ第1共通ライン26dおよび第2共通ライン26eに接続されている。光伝導層20上に形成されている第2共通ライン26eには切欠部26cが形成されている。この場合、金属層22と第1ライン26a1〜26a3および第2ライン26b1〜26b3とが短絡しないように、金属層22には第1ライン26a1〜26a3および第2ライン26b1〜26b3の外形寸法より大きな寸法の孔部が形成される。また、切欠部26cの間隔は、例えば数μm程度とされると共に、第1共通ライン26dおよび第2共通ライン26eとでコプレーナラインを形成することができる。第1ダイポールアンテナ25−1〜第3ダイポールアンテナ25−3が形成されている第2基板23の上面には、レンズ24が貼着されている。
【0023】
このような構成の第2実施例の光伝導アンテナ2において、第1共通ライン26dおよび第2共通ライン26eの端部との間に直流のバイアス電圧Ecを印加する。この状態では、第2共通ライン26eは切欠部26cにより絶縁されており、第1共通ライン26dおよび第2共通ライン26eに電流は流れない。ここで、光源27から10-15秒程度のフェムト秒パルスレーザ光を第2共通ライン26eにおける切欠部26cに照射する。パルスレーザ光を切欠部26cに照射すると、切欠部26cにおける光伝導層20中に光導電効果により自由キャリアが生じ、この自由キャリアがバイアス電圧Ecにより加速されることにより、切欠部26cにサブピコ秒(10-12秒)程度のパルス状の電流が流れる。このパルス状の電流は第1共通ライン26dおよび第2共通ライン26eと、第1ライン26a1〜26a3および第2ライン26b1〜26b3とを介して第1ダイポールアンテナ25−1〜第3ダイポールアンテナ25−3に同相に供給されて、テラヘルツ電磁波が第1ダイポールアンテナ25−1〜第3ダイポールアンテナ25−3からそれぞれ放射される。なお、第1ダイポールアンテナ25−1、第2ダイポールアンテナ25−2、第3ダイポールアンテナ25−3に同相で給電されるように、給電線路の長さの違いはnλとされている。ただし、nは整数、λは使用する周波数の波長である。これにより、第1ダイポールアンテナ25−1ないし第3ダイポールアンテナ25−3から放射されるテラヘルツ電磁波の位相が同相となる。
【0024】
このように、切欠部26cが3組の第1ダイポールアンテナ25−1〜第3ダイポールアンテナ25−3の給電部となる。この場合、第2基板23の下面に配置された金属層22の作用により、第1ダイポールアンテナ25−1〜第3ダイポールアンテナ25−3から放射されたテラヘルツ電磁波が反射され、この反射波がz軸方向に同相で放射されたテラヘルツ電磁波とほぼ同相で合成されることによりz軸方向へ強く放射される。合成されたテラヘルツ電磁波は、レンズ24により収束されるようになる。この場合、光伝導アンテナ4は3つのダイポールアンテナ25−1〜25−3から同相でテラヘルツ電磁波が放射されるアレーアンテナとされていることから、z軸方向により強く電磁波が放射される。なお、第1ダイポールアンテナ25−1〜第3ダイポールアンテナ25−3の電気長は、放射されるテラヘルツ電磁波の波長をλとした際に約λ/2の長さとされる。また、第2基板23の厚さは、放射されるテラヘルツ電磁波の波長をλとした際に約λ/4の電気長が得られる厚さとされるのが好適である。さらに、レンズ24は、例えばシリコンレンズとされ、レンズ24の上部形状が凸状の膨出部を備える形状とされて、テラヘルツ電磁波を収束している。なお、レンズ24を省略しても良い。
【0025】
第2実施例の光伝導アンテナ2は、3組の第1ダイポールアンテナ25−1〜第3ダイポールアンテナ25−3からなるアレーアンテナを備え、z軸方向へ同相で放射されることからビームが鋭くなり放射利得を第1実施例の光伝導アンテナ1より向上することができる。なお、本発明の第2実施例の光伝導アンテナ2においても、テラヘルツ電磁波が比誘電率が高く損失の多い光伝導膜を透過することなく直接自由空間に放射される構成とされると共に、比誘電率εr2が約3と低く損失の少ない第2基板23を透過して金属層22で反射された反射波が、直接波にほぼ同相で合成されることから、高い放射利得を得ることができる。
【0026】
次に、本発明のテラヘルツ電磁波発生装置の第3実施例にかかる光伝導アンテナの構成を示す斜視図を図15に示す。
図15に示す第3実施例の光伝導アンテナ3は、金属板33の上に絶縁性あるいは半絶縁性の所定厚みの第1基板31と、所定厚みの絶縁性の第2基板32とが横方向に密着するよう接着されて一体になるよう配置されている。第1基板31の表面には光伝導層30が形成されている。第1基板31は、例えばGaAs基板とされ、光伝導層30の材料は、例えば低温成長GaAs(比誘電率εr1は約13)とされ、第2基板32の材料は、例えばフッ素樹脂(比誘電率εr2は約3)とされ金属板33の材料は金、銀、アルミニウムや銅等とされる。この第2基板32の表面に、第1エレメント34aおよび第2エレメント34bからなるダイポールアンテナ34が蒸着等により形成されている。第1エレメント34aと第2エレメント34bとが対向するダイポールアンテナ34の給電点から、第1ライン35aおよび第2ライン35bがほぼ平行に第2基板32の表面に形成されている。
【0027】
この第1ライン35aおよび第2ライン35bは第1基板31側へ延伸されて、第1基板31の表面の光伝導層30上にも形成されている。光伝導層30上に形成されている第1ライン35aの中途は切断されてL字状に折曲されて外部へ引き出されるように形成されている。また、第1ライン35aおよび第2ライン35bの先端部は対向部35cを介して対向するように形成されている。この場合、対向部35cの間隔は、例えば数μm程度とされると共に、第1ライン35aおよび第2ライン35bは金属板33がグランドプレーンとされてマイクロストリップラインを形成することができる。また、ダイポールアンテナ34が形成されている第2基板32の上面にレンズを設けるようにしてもよい。
このような構成の第3実施例の光伝導アンテナ3において、第1ライン35aの中途に形成されたL字状に折曲された端部間に直流のバイアス電圧Ecを印加する。この状態では、第1ライン35aおよび第2ライン35bの間は対向部35cにより絶縁されて電流は流れず、第1エレメント34aおよび第2エレメント34bからなるダイポールアンテナ34からの放射はない。
【0028】
ここで、光源36から10-15秒程度のフェムト秒パルスレーザ光を第1ライン35aにおける対向部35cに照射する。パルスレーザ光が対向部35cに照射されると、対向部35cにおける光伝導層30中に光導電効果により自由キャリアが生じ、この自由キャリアがバイアス電圧Ecにより加速されることにより、対向部35cにサブピコ秒(10-12秒)程度のパルス状の電流が流れる。このパルス状の電流により、第1ライン35aおよび第2ライン35bを介してダイポールアンテナ34が励振されて、テラヘルツ電磁波が第1エレメント34aおよび第2エレメント34bからなるダイポールアンテナ34から放射される。このように、対向部35cがダイポールアンテナ34の給電部となる。この場合、第2基板32の下面に配置された金属板33の作用により、ダイポールアンテナ34から下方へ放射されたテラヘルツ電磁波が反射され、この反射波はz軸方向に放射されたテラヘルツ電磁波とほぼ同相で合成されることによりz軸方向に強く放射される。なお、ダイポールアンテナ34の電気長は、放射されるテラヘルツ電磁波の波長をλとした際に約λ/2の長さとされる。また、第2基板32の厚さは、放射されるテラヘルツ電磁波の波長をλとした際に約λ/4の電気長が得られる厚さとされるのが好適とされる。また、第2基板32の上面にレンズを設けると、テラヘルツ電磁波を収束することができる。
第3実施例の光伝導アンテナ3は、テラヘルツ電磁波が比誘電率が高く損失の多い光伝導膜を透過することなく直接自由空間に放射される構成とされると共に、比誘電率εr2が約3と低く損失の少ない第2基板32を透過して金属板33で反射された反射波が、直接波にほぼ同相で合成されることから、高い放射利得を得ることができる。
【0029】
次に、本発明のテラヘルツ電磁波発生装置の第4実施例にかかる光伝導アンテナの構成を示す斜視図を図16に示す。
図16に示す第4実施例の光伝導アンテナ4は、金属板43の上に絶縁性あるいは半絶縁性の所定厚みの第1基板41と、所定厚みの絶縁性の第2基板42とが横方向に密着するよう接着されて一体になるよう配置されている。第1基板41の表面には光伝導層40が形成されている。第1基板41は、例えばGaAs基板とされ、光伝導層40の材料は、例えば低温成長GaAs(比誘電率εr1は約13)とされ、第2基板42の材料は、例えばフッ素樹脂(比誘電率εr2は約3)とされ金属板43の材料は金、銀、アルミニウムや銅等とされる。この第2基板42の表面に、第1エレメント44a1および第2エレメント44b1からなる第1ダイポールアンテナ44−1と、第1エレメント44a2および第2エレメント44b2からなる第2ダイポールアンテナ44−2と、第1エレメント44a3および第2エレメント44b3からなる第3ダイポールアンテナ44−3の3つのダイポールアンテナが蒸着等により形成されている。
【0030】
第2基板42の表面に第1ライン45aおよび第2ライン45bがほぼ平行に形成されており、3つの第1エレメント44a1〜44a3の給電点が第1ライン45aにそれぞれ接続されており、3つの第2エレメント44b1〜44b3の給電点が第2ライン45bにそれぞれ接続されている。この場合、第1ライン45aおよび第2ライン45bに接続される第1ダイポールアンテナ44−1ないし第3ダイポールアンテナ44−3の給電点の間の電気長は約nλとされている。ただし、nは整数、λは使用する周波数の波長である。これにより、第1ダイポールアンテナ44−1ないし第3ダイポールアンテナ44−3から放射されるテラヘルツ電磁波の位相が同相となる。
第1ライン45aおよび第2ライン45bは第1基板41側へ延伸されて、第1基板41の表面の光伝導層40上にも形成されている。光伝導層40上に形成されている第1ライン45aの中途は切断されてL字状に折曲されて外部へ引き出されるように形成されている。また、第1ライン45aおよび第2ライン45bの先端部は対向部45cを介して対向するように形成されている。この場合、対向部45cの間隔は、例えば数μm程度とされると共に、第1ライン45aおよび第2ライン45bは金属板43がグランドプレーンとされてマイクロストリップラインを形成することができる。また、3つのダイポールアンテナ44−1〜44−3が形成されている第2基板42の上面にレンズを設けるようにしてもよい。
【0031】
このような構成の第4実施例の光伝導アンテナ4において、第1ライン45aの中途に形成されたL字状に折曲された端部間に直流のバイアス電圧Ecを印加する。この状態では、第1ライン45aおよび第2ライン45bの間は対向部45cにより絶縁されて電流は流れず、第1エレメント44a1〜44a3および第2エレメント44b1〜44b3からなる3つのダイポールアンテナ44−1〜44−3からの放射はない。ここで、光源46から10-15秒程度のフェムト秒パルスレーザ光を第1ライン45aと第2ライン45bとの間に形成された対向部45cに照射する。パルスレーザ光が対向部45cに照射されると、対向部45cにおける光伝導層40中に光導電効果により自由キャリアが生じ、この自由キャリアがバイアス電圧Ecにより加速されることにより、対向部45cにサブピコ秒(10-12秒)程度のパルス状の電流が流れる。このパルス状の電流により、第1ライン45aおよび第2ライン45bを介して3つのダイポールアンテナ44−1〜44−3が励振されて、テラヘルツ電磁波が第1エレメント44a1〜44a3および第2エレメント44b1〜44b3からなる3つのダイポールアンテナ44−1〜44−3から放射される。このように、対向部45cが3つのダイポールアンテナ44−1〜44−3の給電部となる。
【0032】
この場合、第2基板42の下面に配置された金属板43の作用により、3つのダイポールアンテナ44−1〜44−3から下方へ放射されたテラヘルツ電磁波が反射され、この反射波はz軸方向に同相で放射されたテラヘルツ電磁波とほぼ同相で合成されることによりz軸方向に強く放射される。この場合、光伝導アンテナ4は3つのダイポールアンテナ44−1〜44−3から同相でテラヘルツ電磁波が放射されるアレーアンテナとされていることから、z軸方向により強く電磁波が放射される。なお、ダイポールアンテナ44−1〜44−3の電気長は、放射されるテラヘルツ電磁波の波長をλとした際に約λ/2の長さとされる。また、第2基板42の厚さは、放射されるテラヘルツ電磁波の波長をλとした際に約λ/4の電気長が得られる厚さとされるのが好適とされる。また、第2基板42の上面にレンズを設けると、テラヘルツ電磁波を収束することができる。
第4実施例の光伝導アンテナ4は、テラヘルツ電磁波が比誘電率が高く損失の多い光伝導膜を透過することなく直接自由空間に放射される構成とされると共に、比誘電率εr2が約3と低く損失の少ない第2基板42を透過して金属板43で反射された反射波が、直接波にほぼ同相で合成されると共にアレーアンテナとされていることから、高い放射利得を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上説明した本発明の光伝導アンテナにおいて、光伝導層の材料は低温成長GaAsに限らず、イオン注入InP(Indium Phosphide)、イオン注入シリコン、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition )CdTe( Cadmium Telluride)、イオン注入ゲルマニウム等のキャリア寿命が短く、移動度が大きい材料を用いることができる。また、上記した光伝導アンテナの寸法は一例であって、この寸法に限ることはない。
ここで、本発明の第1実施例の光伝導アンテナ1の製造方法の概略を説明すると、GaAsの第1基板11の一面にGaAsを低温成長させることにより光伝導層10を作成する。次いで、第1基板11の他面に金属層12を蒸着等により形成する。フッ素樹脂からなる第2基板13の上面に金属層を蒸着等により形成し、次いで、金属層をエッチングすることにより第1エレメント15aおよび第2エレメント15bからなるダイポールアンテナ15を形成する。光伝導層10の上面に金属層を蒸着等により形成して、金属層をエッチングすることにより第1ライン16aと、切欠部16cを備える第2ライン16bとを形成する。ここで、第1基板11の金属層12の上面に第2基板13の下面を貼着することにより、第1基板11上に第2基板13を一体化する。そして、ダイポールアンテナ15の給電点の位置からエッチングすることにより、第2基板13と金属層12と第1基板11と光伝導層10までスルーホールを形成する。次いで、スルーホール内を金属メッキしてスルーホールと第1ライン16aおよび第2ライン16bとに電気的に接続する。これにより、第1実施例の光伝導アンテナ1を製造することができる。
【0034】
また、本発明の第2実施例の光伝導アンテナ2は、第1実施例の光伝導アンテナ1とほぼ同様の製造方法により製造することができる。さらに、本発明の第3実施例の光伝導アンテナ3は、第1基板31の表面にGaAsを低温成長させることにより光伝導層30を形成する。次いで、金属板33の上にGaAsの第1基板31と、フッ素樹脂からなる第2基板32とを横方向に密着させて接着する。第1基板31と第2基板32とは一側辺同士が接着される。そして、第1基板31および第2基板32の表面の全面に金属層を蒸着等により形成し、次いで、金属層をエッチングすることにより第1エレメント34aおよび第2エレメント34bからなるダイポールアンテナ34と、第1ライン35aおよび第2ライン35bを形成する。この際に、対向部35cも形成される。これにより、第3実施例の光伝導アンテナ3を製造することができる。本発明の第4実施例の光伝導アンテナ4は、第3実施例の光伝導アンテナ3とほぼ同様の製造方法により製造することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 光伝導アンテナ、2 光伝導アンテナ、3 光伝導アンテナ、10 光伝導層、11 第1基板、12 金属層、13 第2基板、14 レンズ、14a 膨出部、15 ダイポールアンテナ、15a 第1エレメント、15b 第2エレメント、16a 第1ライン、16b 第2ライン、16c 切欠部、17 光源、20 光伝導層、21 第1基板、22 金属層、23 第2基板、24 レンズ、25 ダイポールアンテナ、25−1 第1ダイポールアンテナ、25−2 第2ダイポールアンテナ、25−3 第3ダイポールアンテナ、25a1,25a2,25a3 第1エレメント、25b1,25b2,25b3 第2エレメント、26a1,26a2,26a3 第1ライン、26b1,26b2,26b3 第2ライン、26c 切欠部、26d 第1共通ライン、26e 第2共通ライン、27 光源、30 光伝導層、31 第1基板、32 第2基板、33 金属板、34 ダイポールアンテナ、34a 第1エレメント、34b 第2エレメント、35a 第1ライン、35b 第2ライン、35c 対向部、36 光源、44−1 第1ダイポールアンテナ、44−2 第2ダイポールアンテナ、44−3 第3ダイポールアンテナ、44a1,44a2,44a3 第1エレメント、44b1,44b2,44b3 第2エレメント、45a 第1ライン、45b 第2ライン、45c 対向部、46 光源、100 光伝導アンテナ、110 光伝導膜、111 第1基板、112a 第1ライン、112b 第2ライン、112c 対向部、113 ダイポールアンテナ、113a 第1エレメント、113b 第2エレメント、114 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と、
該金属板上に配置され、光が照射された際に自由電子が生じる比誘電率εr1の光伝導層が表面に形成された絶縁性の第1基板と、
前記金属板上に前記第1基板の横に隣接して密着するよう配置された比誘電率εr2の絶縁性の第2基板と、
該第2基板の表面に形成された導電性のダイポール素子と、
該ダイポール素子の給電点から引き出され、前記第2基板の表面から前記第1基板における前記光伝導層上にわたって形成された第1ラインおよび第2ラインと、
前記光伝導層上に形成されている前記第1ラインと前記第2ラインの端部が所定の間隔で対向している対向部と、
該対向部にパルス状の光を照射する光源と、
前記第1ラインと前記第2ラインとの間に電源を印加するバイアス電源とを備え、
比誘電率εr1>比誘電率εr2とされていることを特徴とするテラヘルツ電磁波発生装置。
【請求項2】
光が照射された際に自由電子が生じる光伝導層が一面に形成され、他面に金属層が形成された比誘電率εr1の絶縁性の第1基板と、
前記金属層上に配置された比誘電率εr2の絶縁性の第2基板と、
該第2基板の表面に形成された導電性のダイポール素子と、
該ダイポール素子の給電点から引き出され、前記第2の基板、前記金属層、前記第1の基板および前記光伝導層を貫通して、前記光伝導層上に形成された第1ラインおよび第2ラインと、
前記光伝導層上に形成されている前記第2ラインに形成された切欠部と、
該切欠部にパルス状の光を照射する光源と、
前記第1ラインの端部と、前記第2ラインの端部との間に印加されたバイアス電源とを備え、
比誘電率εr1>比誘電率εr2とされていることを特徴とするテラヘルツ電磁波発生装置。
【請求項3】
前記ダイポール素子が形成されている前記第2基板の表面に、前記ダイポール素子から発生されたテラヘルツ電磁波を収束するレンズが設けられていることを特徴とする請求項1または2記載のテラヘルツ電磁波発生装置。
【請求項4】
前記第2基板の表面に複数のダイポール素子が配列されて形成され、各ダイポール素子の給電点が前記第1ラインおよび前記第2ラインに並列に接続されていることを特徴とする請求項1または2記載のテラヘルツ電磁波発生装置。
【請求項5】
前記第1基板における比誘電率εr1と前記第2基板における比誘電率εr2との比であるεr1/εr2が、約4以上とされていることを特徴とする請求項1または2記載のテラヘルツ電磁波発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−228572(P2011−228572A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98684(P2010−98684)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(504203572)国立大学法人茨城大学 (99)