説明

テレメータ観測装置

【課題】局地豪雨のような突発的な大雨を早期に検知しつつ、消費電力を削減し得るテレメータ観測装置を提供することである。
【解決手段】実施形態のテレメータ観測装置は雨量計及び監視装置に接続しており、入力受付手段、時刻情報出力手段、時間間隔算出手段、雨量強度算出手段、設定手段、判定手段及び送信手段を備えている。前記雨量強度算出手段は、前記雨量計によって計測される雨量と、前記時間間隔算出手段によって算出された時間間隔とに基づいて、1時間毎の雨量を示す雨量強度を算出する。前記判定手段は、前記雨量強度算出手段によって算出された雨量強度が前記設定手段によって設定されたしきい値を超えたか否かを判定する。前記送信手段は、前記判定手段による判定の結果が超えた旨を示すとき、前記起動信号を前記監視装置に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、テレメータ観測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、予想をはるかに超える局地豪雨による局地豪雨被害が多発している。このため、局地豪雨に対して有効な観測装置が必要とされている。
【0003】
これに対し、一定量の雨量を計測する毎に1つのパルスを出力する雨量計と接続し、この雨量計から出力されたパルスにタイムスタンプを付与したパケット情報を監視装置(基地装置)に送信するテレメータ観測装置が知られている。監視装置は、一定量の雨量の計測時刻を示す各パケット情報の時間差に基づいて、雨量強度を演算する。これにより、局地豪雨が観測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−33262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、以上のようなテレメータ観測装置では、局地豪雨ではない場合でも、一定量の雨量が計測される毎に、パケット情報を監視装置に送信するため、消費電力が増加するという不都合がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、局地豪雨のような突発的な大雨を早期に検知しつつ、消費電力を削減し得るテレメータ観測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のテレメータ観測装置は、一定量の雨量を計測する毎に1つのパルスを出力する雨量計から出力された当該パルスに基づいて、雨量の変化を監視する監視装置に接続する。
【0008】
前記テレメータ観測装置は、入力受付手段、時刻情報出力手段、時間間隔算出手段、雨量強度算出手段、設定手段、判定手段及び送信手段を備えている。
【0009】
前記入力受付手段は、前記雨量計から出力されたパルスの入力を受け付ける。
【0010】
前記時刻情報出力手段は、前記入力受付手段によって前記パルスの入力を受け付ける毎に、当該パルスの入力を受け付けた時刻を示す受付時刻情報を出力する。
【0011】
前記時間間隔算出手段は、前記入力受付手段によって受け付けたパルスと、前記時刻情報出力手段によって出力された各受付時刻情報とに基づいて、1つのパルスの入力を受け付けてから次のパルスの入力を受け付けるまでの時間間隔を算出する。
【0012】
前記雨量強度算出手段は、前記雨量計によって計測される雨量と、前記時間間隔算出手段によって算出された時間間隔とに基づいて、1時間毎の雨量を示す雨量強度を算出する。
【0013】
前記設定手段は、前記監視装置を起動させるための起動信号を送出するか否かを判定するためのしきい値を設定する。
【0014】
前記判定手段は、前記雨量強度算出手段によって算出された雨量強度が前記設定手段によって設定されたしきい値を超えたか否かを判定する。
【0015】
前記送信手段は、前記判定手段による判定の結果が超えた旨を示すとき、前記起動信号を前記監視装置に送信する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施形態に係るテレメータ観測装置を含む雨量観測システムの構成例を示す模式図である。
【図2】同実施形態における雨量強度演算部に出力されるパルスと受付時刻情報との一例を示す模式図である。
【図3】同実施形態におけるテレメータ観測装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、一実施形態に係るテレメータ観測装置を含む雨量観測システムの構成例を示す模式図である。雨量観測システム1は、雨量計10、テレメータ観測装置20及び監視装置30を含む。
【0018】
雨量計10は、一定量(例えば、0.5mm及び1.0mm等)の雨量を計測する毎に、1つのパルスをテレメータ観測装置20に出力する機能をもっている。具体的には、雨量計10は転倒ます雨量計であり、この転倒ます雨量計内の受水器が一定量の雨量を計測して1回転倒する毎に、転倒ます雨量計は1つのパルスをテレメータ観測装置20に出力する。
【0019】
ここで、テレメータ観測装置20は、パルス入力受付部21、時計部22、雨量強度演算部23、基本制御部24、イベント起動制御部25、異常値起動制御部26及び伝送制御部27を備えている。
【0020】
パルス入力受付部21は、雨量計10から出力されたパルスの入力を受け付ける機能をもっている。また、パルス入力受付部21は、当該受け付けたパルスに波形整形処理を実行した後に、このパルスを雨量強度演算部23に出力する機能をもっている。
【0021】
時計部22は、パルス入力受付部21が雨量計10から出力されたパルスの入力を受け付ける毎に、当該パルスの入力を受け付けた時刻を示す受付時刻情報を雨量強度演算部23に出力する機能をもっている。
【0022】
雨量強度演算部23は、パルス入力受付部21から出力されたパルスと、時計部22から出力された受付時刻情報とに基づいて、1つのパルスの入力を受け付けてから次のパルスの入力を受け付けるまでの時間間隔を算出する機能をもっている。また、雨量強度演算部23は、雨量計10により計測される雨量(すなわち、転倒ます雨量計内の受水器(升)が1回転倒することによって計測される雨量)と、当該算出された時間間隔とに基づいて、1時間毎の予測雨量を示す予測雨量強度を算出する機能をもっている。なお、「予測雨量」及び「予測雨量強度」の語は、単に「雨量」及び「雨量強度」と読み替えてもよい。また、雨量強度演算部23は、監視装置30からの指示にしたがって(すなわち、監視者の操作にしたがって)、監視装置30を起動させるための起動信号を送出するか否かを判定するためのしきい値を設定する機能をもっている。また、雨量強度演算部23は、当該算出された予測雨量強度が当該設定されたしきい値を超えたか否かを判定する判定機能をもっている。更に、雨量強度演算部23は、判定機能による判定の結果がしきい値を超えた旨を示すとき、起動信号を監視装置30に対して送出させるための信号送出要求を異常値起動制御部26に送信する機能をもっている。
【0023】
なお、雨量強度演算部23は、判定機能による判定の結果がしきい値を超えた旨を示すとき、基本制御部24におけるタイマ機能を作動させるための作動要求を基本制御部24に送信する機能を有していてもよい。また、雨量強度演算部23は、監視装置からの指示にしたがって、設定されたしきい値を所定の値に変更する変更機能を有していてもよい。
【0024】
なお、本実施形態では、雨量強度演算部23が信号送出要求を異常値起動制御部26に送信するとしたが、これに限定されず、例えば、雨量強度演算部23は、信号送出要求をイベント起動制御部25に送信してもよい。この場合、雨量強度演算部23は、監視装置30に起動信号を送出するか否かを判定するためのしきい値の他に、監視装置30に起動信号を送出するための条件(例えば、降雨検知やワイヤーセンサ断等)を示す条件情報をもち、現在の状況がこの条件情報により示される条件に一致するとき、信号送出要求をイベント起動制御部25に送信する。また同様に、雨量強度演算部23は、監視装置からの指示にしたがって、設定された条件情報を変更する機能を有していてもよい。
【0025】
基本制御部24は、雨量強度演算部23が起動信号を監視装置30に連続して送信できない時間を規定するタイマ機能を有していてもよい。このタイマ機能は、起動信号の送信後に作動し、予め規定された時間内には起動信号の送信を阻止するように各部23,25,26,27のいずれかを制御することにより、起動信号を監視装置30に連続して送信させない機能をもっている。また、基本制御部24は、雨量強度演算部23から送信された作動要求を受けると、タイマ機能を作動させる機能をもっている。
【0026】
イベント起動制御部25は、雨量強度演算部23から送信された信号送出要求を受けると、監視装置30を起動させるための起動信号を伝送制御部27に送出する機能をもっている。
【0027】
異常値起動制御部26は、雨量強度演算部23から送信された信号送出要求を受けると、監視装置30を起動させるための起動信号を伝送制御部27に送出する機能をもっている。
【0028】
伝送制御部27は、イベント起動制御部25または異常値起動制御部26から送出された起動信号を監視装置30に送信する機能をもっている。また、伝送制御部27は、監視装置30からテレメータ観測装置20に送信される各種指示を受信する機能をもっている。
【0029】
監視装置30は、テレメータ観測装置20内の伝送制御部27から送信された起動信号を受けると、監視装置30内の電源をオン状態にする機能をもっている。また、監視装置30は、監視者の操作にしたがって、監視装置30に起動信号を送出するか否かを判定するためのしきい値や条件情報を変更する指示(変更要求)をテレメータ観測装置20に送信する機能をもっている。
【0030】
次に、以上のように構成されたテレメータ観測装置の動作の一例について、図2の模式図と、図3のフローチャートとを参照しながら説明する。但し、雨量計10は、1mm型転倒ます雨量計であると仮定する。また、テレメータ観測装置20において予め設定されたしきい値が「10[mm/h]」であると仮定する。
【0031】
始めに、パルス入力受付部21は、雨量計10から出力されたパルスの入力を受け付ける(ステップS101)。
【0032】
続いて、パルス入力受付部21は、当該受け付けたパルスに波形整形処理を実行した後に、図2(a)に示す如き、このパルスを雨量強度演算部23に出力する(ステップS102)。
【0033】
次に、時計部22は、ステップS101においてパルスを受け付けた時刻を示す受付時刻情報を雨量強度演算部23に出力する(ステップS103)。ここでは、時計部22は、図2(d)に一例を示すように、時刻「9:25」を示す受付時刻情報を雨量強度演算部23に出力する。
【0034】
続いて、雨量強度演算部23は、パルス入力受付部21から出力されたパルスと、時計部22から出力された受付時刻情報とに基づいて、1つのパルスの入力を受け付けてから次のパルスの入力を受け付けるまでの時間間隔を算出する(ステップS104)。ここでは、雨量強度演算部23は、図2(a)、図2(c)及び図2(d)に一例を示すように、3回目のパルスの入力を受け付けた時刻「9:20」と4回目のパルスの入力を受け付けた時刻「9:25」とから、時間間隔「Δt3=5[分]」を算出する。
【0035】
次に、雨量強度演算部23は、雨量計10(1mm型転倒ます雨量計)が1回転倒することによって計測される雨量(以下、「転倒量」と呼ぶ)と、当該算出された時間間隔とに基づいて、1時間毎の予測雨量を示す予測雨量強度を計算する(ステップS105)。ここでは、雨量強度演算部23は、転倒量「1[mm]」と、時間間隔「Δt3=5[分]」とに基づいて、予測雨量強度を計算する。
【0036】
なお、予測雨量強度は、以下の式(1)に基づいて計算される。
【0037】
予測雨量強度=転倒量/時間間隔×60 …(1)
すなわち、予測雨量強度は、式(1)に基づいて、「12(=1/5×60)[mm/h]」を示す。
【0038】
続いて、雨量強度演算部23は、当該計算された予測雨量強度「12[mm/h]」が予め設定されたしきい値「10[mm/h]」を超えたか否かを判定する(ステップS106)。なお、ステップS106の判定の結果が否を示す場合(ステップS106:「No」)には、ステップS101の処理に戻る。
【0039】
ステップS106の判定の結果が超えた旨を示す場合(ステップS106:「Yes」)には、雨量強度演算部23は、基本制御部24内のタイマ機能を作動させるための作動要求を基本制御部24に送信し、かつ、起動信号を監視装置30に対して送出させるための信号送出要求を異常値起動制御部26に送信する(ステップS107)。基本制御部24は、作動要求に応じてタイマ機能を作動させ、予め規定された時間内には起動信号を連続して送信させないように各部23,25〜27を制御する。
【0040】
しかる後に、異常値起動制御部26は、図2(b)に示すように、監視装置30を起動させるための起動信号を、伝送制御部27を介して監視装置30に送出し(ステップS108)、ステップS101の処理に戻る。
【0041】
監視装置30は、起動信号を受けると、電源をオン状態にして起動する。以下、監視装置30は、例えば、図示しない計測装置から雨量データを収集して、雨量の変化を監視する。また、監視装置30は、適宜、監視者の操作にしたがって、しきい値や条件情報を変更する指示をテレメータ観測装置20に送信する。テレメータ観測装置20は、この指示にしたがって、例えば、設定されたしきい値を所定の値に変更する。
【0042】
以上説明したように本実施形態によれば、予測雨量強度を計算し、当該計算された予測雨量強度が予め設定されたしきい値を超えたときに起動信号を送出させる雨量強度演算部23を備えた構成により、局地豪雨のような突発的な大雨を早期に検知しつつ、テレメータ観測装置20と監視装置30との間の通信回数を減らすことで、消費電力を削減することができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、基本制御部24のタイマ機能により、起動信号を連続して送信させないため、より一層、消費電力を削減することができる。
【0044】
さらに、本実施形態によれば、雨量強度演算部23が、監視装置30からの指示にしたがって、設定されたしきい値を所定の値に変更するので、河川の増水や地震による崖崩れ等、降雨に弱い状況の場合にはしきい値を下げるというように、現状に応じた降雨観測を支援することができる。
【0045】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1…雨量観測システム、10…雨量計、20…テレメータ観測装置、21…パルス入力受付部、22…時計部、23…雨量強度演算部、24…基本制御部、25…イベント起動制御部、26…異常値起動制御部、27…伝送制御部、30…監視装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定量の雨量を計測する毎に1つのパルスを出力する雨量計から出力された当該パルスに基づいて、雨量の変化を監視する監視装置に接続するテレメータ観測装置であって、
前記雨量計から出力されたパルスの入力を受け付ける入力受付手段と、
前記入力受付手段によって前記パルスの入力を受け付ける毎に、当該パルスの入力を受け付けた時刻を示す受付時刻情報を出力する時刻情報出力手段と、
前記入力受付手段によって受け付けたパルスと、前記時刻情報出力手段によって出力された各受付時刻情報とに基づいて、1つのパルスの入力を受け付けてから次のパルスの入力を受け付けるまでの時間間隔を算出する時間間隔算出手段と、
前記雨量計によって計測される雨量と、前記時間間隔算出手段によって算出された時間間隔とに基づいて、1時間毎の雨量を示す雨量強度を算出する雨量強度算出手段と、
前記監視装置を起動させるための起動信号を送出するか否かを判定するためのしきい値を設定する設定手段と、
前記雨量強度算出手段によって算出された雨量強度が前記設定手段によって設定されたしきい値を超えたか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段による判定の結果が超えた旨を示すとき、前記起動信号を前記監視装置に送信する送信手段と
を備えたことを特徴とするテレメータ観測装置。
【請求項2】
請求項1に記載のテレメータ観測装置において、
前記判定手段による判定の結果が超えた旨を示すとき、タイマ機能を作動させる作動手段を更に備え、
前記タイマ機能は、予め規定された時間内には起動信号の送信を阻止するように前記送信手段を制御することにより、前記起動信号を前記監視装置に連続して送信させないことを特徴とするテレメータ観測装置。
【請求項3】
請求項1に記載のテレメータ観測装置において、
前記監視装置からの指示にしたがって、前記設定されたしきい値を所定の値に変更する変更手段を更に備えたことを特徴とするテレメータ観測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−57644(P2013−57644A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197593(P2011−197593)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)