説明

テンションリール

【課題】リール本体の径方向への移動を1系統の動力で行いながらも、巻き取られた板をリール本体から巻き取ることが不可能となることを防止可能としたテンションリールを提供する。
【解決手段】テンションリールは、径方向に拡縮可能な複数のセグメント63,63と、これら複数のセグメント63,64の拡縮に連動して昇降すると共に複数のセグメントのうち一のセグメント63−1との間で鋼板1を挟持可能なグリッパー65とを有するリール本体を備える。セグメント63−1は、グリッパー65との間に挟持された鋼板1の先端に当接する当接面63−1dを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板などの板を巻き取り可能なテンションリールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、リール本体の外周部に、リール本体の径方向に移動可能に設けられた複数のセグメント及び複数のグリッパーを有するテンションリールが知られている。この種のテンションリールには、セグメントとグリッパーとの間に鋼板の先端部を挿入可能な隙間が形成されている。そして、各セグメント及び各グリッパーを上記径方向に移動させて上記隙間を拡縮させることにより、鋼板の先端部を固定又は解放させることが可能である。より具体的には、(1)鋼板の巻き取り開始前の初期状態において、各セグメント及び各グリッパーを、リール本体の径内側方向に移動させる、(2)セグメントとグリッパーとの間に鋼板の先端部分付近を挟んで固定する、(3)各セグメント及び各グリッパーを、リール本体の径外側方向に移動させ、鋼板をグリッパーで固定した状態で鋼板の巻き取りを開始する、(4)鋼板の巻き取り後において、該鋼板をリール本体から抜き取る際、各セグメント及び各グリッパーを、リール本体の径内側方向に移動させる、などのように、それぞれの状況に応じた操作がなされる(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
ここで、各セグメントをリール本体の径方向に移動させるために用いられる油圧系統と、各グリッパーをリール本体の径方向に移動させるために用いられる油圧系統と、からなる油圧2系統によりリール本体の径を拡縮可能としたテンションリールが知られている。この種のテンションリールの場合、各セグメントを移動させるための油圧系統と、各グリッパーを移動させるための油圧系統とを、独立して設ける必要があるため、構造が複雑化するという問題がある。
【0004】
これに対し、各セグメントと各グリッパーとを連動してリール本体の径方向に移動させるといった、油圧1系統のみの動力でリール本体の径を拡縮可能としたテンションリールであれば、テンションリールの構造を簡素化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平04?033409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、油圧1系統の動力で構成されたテンションリールの場合、セグメントとグリッパーとの間に鋼板の先端部分付近を挟んで固定する部分の奥部にできた隙間に、鋼板の先端部分が挟まって引っ掛かってしまい、各セグメント及び各グリッパーが動作不能(すなわちリール本体が拡縮動作不能)に陥ることがある。この場合、巻き取られた鋼板を、リール本体から抜き取ることができなくなり、ひいては長時間にわたって設備を稼働できなくなってしまうという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、リール本体の径方向への移動を上記1系統の動力で行いながらも、巻き取られた板をリール本体から巻き取ることが不可能となることを防止可能としたテンションリールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決する本発明に係る第1のテンションリールは、径方向に拡縮可能な複数のセグメントと、該複数のセグメントの拡縮に連動して昇降すると共に該複数のセグメントのうちいずれか一のセグメントとの間で鋼板を挟持可能なグリッパーと、を有するリール本体に鋼板が巻き取られるテンションリールであって、少なくとも前記一のセグメントが、前記グリッパーとの間に挟持された前記板の先端に当接する当接面を有することを特徴とする。
【0009】
上記(1)の構成によれば、複数のセグメントのうち少なくとも一のセグメントに、この一のセグメントとグリッパーとの間において挟持される板の先端に当接する当接面を設けることにより、この一のセグメントとグリッパーとの間に挟持された板の先端が当接面よりも板の挿入方向奥部に入り込むことを防止することができる。従って、複数のセグメントとグリッパーとを1系統の動力(例えば油圧1系統又は空気圧1系統などの流体を用いた動力)で連動するように構成されたテンションリールにあっても、複数のセグメントの縮径時及びグリッパーの下降時において巻き取り後の板をリール本体から抜き取る際に、該板の先端部が上記奥部において上記一のセグメントとグリッパーとの間の隙間に引っ掛かってしまうということ(従来の欠点)を防止できる。その結果として、巻き取り後の板をリール本体から容易に抜き取ることができる。
【0010】
なお、本発明中の「拡縮」とは、セグメントをリール本体の径方向に拡径と縮径とが連続して作動することのみならず、拡径と縮径とのうちいずれか一のみが行われることが含まれる。同様に「昇降」とは、グリッパーをリール本体の径方向に上昇と下降とが連続して作動することのみならず、上昇と下降とのうちいずれか一のみが行われることが含まれる。
【0011】
(2)上記(1)のテンションリールにおいては、前記リール本体の径方向への前記複数のセグメントの拡縮に伴って前記グリッパーが前記リール本体の径方向に昇降可能となるように、前記一のセグメントと前記グリッパーとが相互に接触する接触面をそれぞれ有しており、前記接触面が、前記当接面の前記リール本体の中心に近い側で、前記板の挿入方向に関して前記当接面よりも奥部に向かって前記当接面から連続して形成されることが好ましい。
【0012】
上記(2)の構成によれば、板を一のセグメントとグリッパーとの間に挟持する際に、板の先端をセグメントとグリッパーとの接触面に接触させることなく、確実に当接部に当接させることができる。これにより、一のセグメントとグリッパーとの接触面に板の先端部が接触することによる該接触面の摩耗を防ぐことができ、従来よりもセグメント及びグリッパーの高寿命化を図ることができる。
【0013】
(3)上記(2)のテンションリールにおいては、前記接触面が、前記当接面から遠ざかるにつれて、前記リール本体の中心との距離が小さくなるものであって、前記グリッパーの昇降方向と、前記当接面と前記接触面との連続点を前記リール本体の中心と同心の仮想円の接点とする接線との間の領域のうち、前記グリッパーの昇降方向と前記接線とのなす角度が鋭角となる側の領域で傾斜する傾斜面として形成されていることが好ましい。
【0014】
上記(3)の構成によれば、複数のセグメントの拡縮動作及びグリッパーの昇降動作に追随して、グリッパーと一のセグメントとがお互いに摺動可能であるため、拡縮動作及び昇降動作を行っている際でもグリッパーと一のセグメントとの接触状態を維持することができる。したがって、セグメントの拡縮動作及びグリッパーの昇降動作を可能としつつも、板の先端部が上記奥部に入り込むことを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、テンションリールを1系統の動力で構成していても、セグメントに、セグメントとグリッパーとの間に挟持された板の先端に当接する当接面を設けることにより、セグメントとグリッパーとの間に挟持された板の先端が当接面よりも奥部に入り込むことを防止することが可能となる。すなわち、セグメント及びグリッパーの縮径時において巻き取り後の板をリール本体から抜き取る際、セグメントとグリッパーとで板の先端部分付近を挟んで固定した場合であっても、本発明においては、該固定する部分の板の挿入方向奥部において、該板が挟まり引っ掛かってしまうことがなく、巻き取り後の板をリール本体から容易に抜き取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係るテンションリール6を適用した巻き取り装置100の概略構成図である。
【図2】リール本体60の構造を示す断面図であって、(a)は、各セグメント63,64が拡径するとともに、各グリッパー65が上昇した状態を示し、(b)は、各セグメント63,64が縮径するとともに、各グリッパー65が下降した状態を示している。
【図3】(a)は、図2(a)中のセグメント63−1の周辺を拡大した図を示し、(b)は、図2(b)中のセグメント63−1の周辺を拡大した図であって、セグメント63−1及びグリッパー65の間において鋼板1が挟持された状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1〜図3を参照しながら、本発明の一実施形態に係るテンションリールについて説明する。
【0018】
[巻き取り装置の全体構成]
以下では、図1及び図2を参照しつつ、本実施形態に係るテンションリールを適用した巻き取り装置100の全体構成について説明する。
【0019】
図1に示すように、巻き取り装置100において、鋼板1は、ブライドルロール2を経た後、デフロール4とタッチロール5との間を経て、カローゼル式のテンションリール6によって巻き取られる。
【0020】
[テンションリールの構成]
テンションリール6は、リール本体60と、このリール本体を回転させたり拡縮させたりするための駆動装置(図示せず)とを備えている。リール本体60は、後述するセグメント63及びグリッパー65によって鋼板の先端を挟持したのちに、巻き取り軸61を中心として鋼板1を巻き取り可能なものである。
【0021】
[リール本体の構成]
以下では、図2及び図3を参照しつつ、リール本体60の構成について説明する。なお、図2(b)中に示す仮想線(破線)は、各セグメント63−1〜63−4,64及び各グリッパー65の拡径時において、各セグメント63−1〜63−4,64の外周面63−1a〜63−4a,64bを結んだ線を示している。また、図3(b)において、図を分かり易くするために、セグメント63−1及びグリッパー65の間に挟持された鋼板1を斜線で示している。
【0022】
図2(a)に示すように、リール本体60は、巻き取り軸61を中心としてリール本体60の周方向に沿って所定の間隔をおいて配置された4つのセグメント63−1〜63−4及び2つの補助セグメント64と、各セグメント63−1〜63−4,64よりもリール本体60の径方向内側に配置されるとともに、巻き取り軸61を中心としてリール本体60に対称配置された2つのグリッパー65と、リール本体60の周方向に沿って所定の間隔をおいて配置された4つのウェッジ66及び2つの補助ウェッジ67と、巻き取り軸61を取り囲む位置に配置されたドラム68と、を備えている。
【0023】
図2(b)に示すように、複数のセグメント63は、リール本体60の径方向に拡縮可能に構成されている。また、複数のセグメント63の拡縮に連動して、グリッパー65がリール本体60の径方向に昇降可能に構成されている。これら複数のセグメント63のうち特定のセグメント63−1,63−4は、グリッパー65との間において鋼板1を挟持可能に構成されている。なお、以下では、各セグメント63−1〜63−4を区別しないで説明するときは、単にセグメント63と表記する。また、上記の「特定のセグメント63−1,63−4」は、本発明の「一のセグメント」に相当する。
【0024】
各セグメント63,64は、巻き取り軸61を長手方向(図2の紙面前後方向)に移動させることに伴って、テ―パ状に形成された各ウェッジ66,67、及び、ドラム68が上記長手方向に移動することによって、リール本体60の径方向への各グリッパー65の昇降と連動してリール本体60の径方向に拡縮可能に構成されている。図2(a)に示すように、各セグメント63,64は、外周面63−1a〜63−4a,64aにおいて鋼板1をコイル状に巻き付け可能であって、内周面63b,64bに隣接するように形成された凹状の溝63c,64cを有している。
【0025】
なお、各セグメント63,64の拡縮方向及び各グリッパー65の昇降方向は、いずれも、リール本体60の径方向への移動である点で同じであるが、本明細書では、各セグメント63,64のリール本体60の径方向への移動を拡縮と称し、各グリッパー65のリール本体60の径方向への移動を昇降と称する。ここで、各グリッパー65の昇降について、リール本体60の径外側に向けた移動を上昇、リール本体60の径内側に向けた移動を下降とする。
【0026】
以下では、上記特定のセグメント63−1,63−4のうち、セグメント63−1とグリッパー65との間に鋼板1を挟持する例について、図3を参照しつつ説明する。図3(b)に示すように、セグメント63−1は、(1)内周面63−1bの一部として形成され、セグメント63−1とグリッパー65との間に挟持された鋼板1の先端1aを当接することが可能な当接面63−1dと、(2)当接面63−1dよりもリール本体60の中心P(巻き取り軸61の中心P、図2参照)に近い側で、鋼板1の挿入方向に関して当接面63−1dよりも奥部に向かって当接面63−1dから連続して形成されるとともに、グリッパー65の接触面65bと接触する接触面63−1eと、を有している。
【0027】
この接触面63−1eは、当接面63−1dから遠ざかるにつれて、リール本体60の中心P(巻き取り軸61の中心P)との距離が小さくなる傾斜面であって、グリッパー65の昇降方向Xと、当接面63−1dと接触面63−1eとの連続点を、リール本体60の中心P(巻き取り軸61の中心P)と同心の仮想円C(図3(b)中の二点鎖線)の接点PCとする接線L(図3(b)中の一点鎖線)との間の第1の領域WAと第2の領域WBとのうち、グリッパー65の昇降方向と接線Lとのなす角度が鋭角となる側の第1の領域WAで傾斜する傾斜面として形成されている。すなわち、接触面63−1eは、図3(b)でいえば、グリッパー65の昇降方向Xから時計方向に接線Lまでの間(これが第1の領域WAに相当する)において、当接面63−1dから遠ざかるにつれて、リール本体60の中心P(巻き取り軸61の中心P)との距離が小さくなるように傾斜する傾斜面である。より詳しくは、接触面63−1eの傾斜角は、セグメント63−1の拡縮とグリッパー65の昇降とが連動して行うことができる角度(グリッパー65の昇降方向Xに対して図3の上から下に向けて紙面左下方向に傾斜する角度)であって、且つ、リール本体60が拡径時及び縮径時のいずれにあってもセグメント63−1とグリッパー65との間に隙間ができないようにこれらが接触を維持できる角度(上記接線Lに対して図3の紙面下方に傾斜する角度)となるように構成されている。これにより、セグメント63−1の拡縮とグリッパー65の昇降とが連動して行われるに際して、グリッパー65とセグメント63−1とは、上記傾斜面を介して互いに摺動し、セグメント63−1の拡縮及びグリッパー65の昇降があった場合でも、接触面63−1e,65bにおける接触状態を維持することが可能となる。なお、上記第1の領域WAに位置する上記接触面63−1eの好ましい傾斜角は、グリッパー65の昇降方向にXに対して30〜31度であり、最適角度は30.4度である。
【0028】
図3(a)に示すように、セグメント63−1には、グリッパー65の付勢機構80(詳細については後述する)と嵌合可能な嵌合部材70が内蔵されている。なお、図3では、図示を省略したが、セグメント63−4(図2参照)についても、同様の付勢機構80が内蔵されている。
【0029】
図2(a)に示すように、各グリッパー65は、油圧シリンダ(不図示)からの作動油の供給によって、各セグメント63,64と連動して昇降可能に構成されている。また、図3(b)に示すように、各グリッパー65は、セグメント63−1の内周面63−1bとの間で鋼板1を挟持可能な先端面65aと、該先端面65aの一部として形成され、セグメント63−1の接触面63−1eに平行な面であって、該接触面63−1eと相互に接触する接触面65bと、を有している。
【0030】
図3(a)に示すように、グリッパー65には、セグメント63−1の拡径時及びグリッパー65の上昇時において、セグメント63−1とグリッパー65との間に鋼板1が挿入されていない状態で、セグメント63−1の嵌合部材70と嵌合する付勢機構80が内蔵されている。該付勢機構80は、鋼板1の挿入方向に対して略垂直な方向であって、外部からの操作によってセグメント63−1の内周面63−1bに向かう方向に付勢力を付与可能なバネ部材80aと、該バネ部材80aの付勢力を調整するためのボルト部材80bと、を有している。
【0031】
図2(a)に示すように、各ウェッジ66,67は、先端部分66a,67aを有している。また、各グリッパー65の根元部分65c及び各ウェッジ66,67の根元部分66b,67bは、ドラム68に形成された溝68aに嵌合されている。
【0032】
図2(a)に示すように、リール本体60(図1参照)において、各セグメント63,64の拡径時及び各グリッパー65の上昇時には、各セグメント63,64の外周面63a,64aを結んだ形状が、略真円状となっている。
【0033】
[テンションリールによる巻き取り動作]
以下では、図2及び図3を参照しつつ、テンションリール6による鋼板1の巻き取り動作について説明する。
【0034】
まず、図2(b)に示すように、リール本体60において、各セグメント63,64及び各グリッパー65が連動してそれぞれが縮径及び下降した初期状態では、各セグメント63,64の溝63c,64cの内面と各ウェッジ66,67の先端部分66a,67aとが接触している。このとき、各セグメント63とドラム68との間において所定間隔の隙間が形成されているとともに、セグメント63−1の内周面63−1b(図3(b)参照)とグリッパー65の先端面65aとの間において鋼板1を挿入可能な隙間が形成されている。
【0035】
次に、図3(b)に示すように、セグメント63−1の内周面63−1bとグリッパー65の先端面65aとの間に挿入された鋼板1は、セグメント63−1とグリッパー65とによって挟持される。この状態では、鋼板1の先端1aがセグメント63−1の当接面63−1dと当接しているとともに、鋼板1には、付勢機構80によって鋼板1の挿入方向に対して略垂直な方向に付勢力が付与されている。これにより、セグメント63−1とグリッパー65との間において鋼板1を確実にグリップすることができ、セグメント63−1とグリッパー65との間から鋼板1が抜けることを防止することができる。
【0036】
続いて、リール本体60において、セグメント63−1とグリッパー65との間に鋼板1を挿入した状態で、各セグメント63,64及び各グリッパー65が連動して拡径する。
【0037】
続いて、巻き取り軸61を中心としてリール本体60が回転し、各セグメント63,64の外周面63a,64aにおいて鋼板1がコイル状に巻き付けられる。
【0038】
鋼板1の巻き付け終了後、リール本体60において、各セグメント63,64が縮径するとともに、各グリッパー65が下降する。
【0039】
最後に、付勢機構80によって鋼板1の挿入方向に対して略垂直な方向に付与されていた付勢力がなくなるように付勢機構80の操作をした後、各セグメント63,64の外周面63a,64aに巻き付けられた状態にあるコイル状の鋼板1を、リール本体60の軸方向に沿って、リール本体60から抜き取ることによって、テンションリール6からの鋼板1の巻き取り動作が完了する。
【0040】
[テンションリールの特徴について]
本実施形態のテンションリール6の代表的な特徴を以下に列記する。
【0041】
本実施形態では、セグメント63,64の拡縮とグリッパー65の昇降とが連動して行われる油圧1系統のテンションリール6において、セグメント63−1とグリッパー65との間に挟持された鋼板1の先端1aに当接する当接面63−1dを設けるとともに、この当接面63−1dから遠ざかるにつれてリール本体60の中心P(巻き取り軸61の中心P)との距離が小さくなるテーパ状の傾斜面(接触面63−1e)が形成されている。これにより、セグメント63−1の拡縮動作及びグリッパー65の昇降動作に追随して、グリッパー65とセグメント63−1とが互いに摺動するので、リール本体60が拡径時及び縮径時のいずれにあるかにかかわらず、セグメント63−1とグリッパー65との間に隙間ができないように、セグメント63−1とグリッパー65との接触状態を維持することができる。すなわち、セグメント63−1の拡縮とグリッパー65の昇降とが連動して行われる油圧1系統とすることで複雑な構造とすることなく、鋼板1の先端部がセグメント63−1及びグリッパー65の奥部に入り込むことを確実に防止することができ、ひいては、リール本体60に巻き取られた鋼板1をリール本体60から抜き取ることができなることを防止することができる
【0042】
しかも、セグメント63−1とグリッパー65との間に鋼板1を挟持する際に、鋼板1の先端1aが衝突するのは、セグメント63−1とグリッパー65とが接触する接触面63−1eとは別に形成された当接面63−1dであるから、セグメント63とグリッパー65との接触面63−1e,65bに鋼板1の先端1aが接触することによる該接触面63−1e,65bの摩耗を防ぐことができ、セグメント63−1及びグリッパー65の高寿命化を図ることができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0044】
なお、上述した実施形態においては、付勢機構80にバネ部材80aを用いたが、これ以外にも、エアシリンダ及び油圧シリンダ等の流体アクチュエータ、または、ソレノイド及びコイル等を用いた電磁アクチュエータを使用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 鋼板
1a 先端
2 ブライドルロール
4 デフロール
5 タッチロール
6 テンションリール
60 リール本体
61 巻き取り軸
63、63−1〜63−4 セグメント
63a 外周面
63b、63−1b 内周面
63c 溝
63−1d 当接面
63−1e 接触面
64 補助セグメント
64a 外周面
64b 内周面
64c 溝
65 グリッパー
65a 先端面
65b 接触面
65c 根元部分
66 ウェッジ
66a 先端部分
66b 根元部分
67 補助ウェッジ
67a 先端部分
67b 根元部分
68 ドラム
68a 溝
70 嵌合部材
80 付勢機構
80a バネ部材
80b ボルト部材
100 巻き取り装置
C 仮想円
L 接線
P 中心
PC 接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向に拡縮可能な複数のセグメントと、該複数のセグメントの拡縮に連動して昇降すると共に該複数のセグメントのうちいずれか一のセグメントとの間で鋼板を挟持可能なグリッパーと、を有するリール本体に鋼板が巻き取られるテンションリールであって、
少なくとも前記一のセグメントが、
前記グリッパーとの間に挟持された前記板の先端に当接する当接面を有する
ことを特徴とするテンションリール。
【請求項2】
前記リール本体の径方向への前記複数のセグメントの拡縮に伴って前記グリッパーが前記リール本体の径方向に昇降可能となるように、前記一のセグメントと前記グリッパーとが相互に接触する接触面をそれぞれ有しており、
前記一のセグメントの接触面が、
前記当接面の前記リール本体の中心に近い側で、前記板の挿入方向に関して前記当接面から奥部に向かって前記当接面から連続して形成されている
請求項1に記載のテンションリール。
【請求項3】
前記接触面が、
前記当接面から遠ざかるにつれて、前記リール本体の中心との距離が小さくなるものであって、
前記グリッパーの昇降方向と、前記当接面と前記接触面との連続点を前記リール本体の中心と同心の仮想円の接点とする接線との間の領域のうち、前記グリッパーの昇降方向と前記接線とのなす角度が鋭角となる側の領域で傾斜する傾斜面として形成されている
請求項2に記載のテンションリール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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