説明

テープ印字装置

【課題】クリーニング専用のカセットを用いることなく且つ印字動作を行うことなく、必要に応じて適時に十分なサーマルヘッドのクリーニングを行えるテープ印字装置を提供する。
【解決手段】インクリボンスプールを回転し、インクリボン23を印字方向とは逆方向にインクリボンスプールに巻き戻すことにより、印字方向とは逆方向に沿ってインクリボン23が第2所定量巻き戻される際、インクリボン23における研磨層23Aをサーマルヘッド13への当接状態にし、サーマルヘッド13のクリーニングを行うように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一面にインク層が塗布され、他面にクリーニング剤が塗布されたインクリボンを使用し、かかるインクリボンのクリーニング剤の塗布面をサーマルヘッドに当接させつつインクリボンの送り動作を行うことにより、サーマルヘッドのクリーニングを行うクリーニング制御手段を備えたテープ印字装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、サーマルヘッドを発熱させてインクリボンと被印字媒体をプラテンとの間に対して押圧し、サーマルヘッド及びインクリボンを介してその被印字媒体に印字を行う熱転写式の印字装置においては、サーマルヘッド及びプラテンに紙粉や埃等の異物が付着することに起因して、サーマルヘッドによる発熱が阻害されて被印字媒体に対してインクリボンのインクが転写されずに、印字結果に悪影響を及ぼすという不具合が発生していた。
【0003】
そこで、これを解消するために、サーマルヘッドに当接するインクリボンのサーマルヘッド側の表面にクリーニング剤が塗布されたインクリボンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、インクリボンにおけるインク層が形成された面と反対側の面であってクリーニング剤により被覆された面を、加熱されたサーマルヘッドに接触させ、クリーニング剤の熱可融性に基づく共溶性及び接着力によって、サーマルヘッドに付着したカスやゴミを除去する方法とそれに用いられるインクリボンが提案されている。
【特許文献1】特開平5−147324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここに、上述した特許文献1に使用されるインクリボンは、リボン基材の一面に熱転写剤層を塗布形成するとともに、リボン基材の他面に洗浄剤層を塗布形成することにより構成されており、印字時にはサーマルヘッドを洗浄剤層側に当接させて発熱駆動し、熱転写剤層を介して所望の印字が行われつつ、同時に洗浄剤層を介してサーマルヘッドのクリーニングが行われる(これをセルフクリーニングという)。しかし、印字しないときにはサーマルヘッドの掃除ができないという問題点がある。
また、長時間テープ印字装置を使用せず放置した後に再使用するとき、印字を始める前からサーマルヘッドにすでにゴミや埃が付着している場合がある。また、セルフクリーニング効果のないインクリボンを使用した後、セルフクリーニング効果のあるテープカセットに交換して印字する場合、すでにゴミや埃がサーマルヘッドに付着している場合がある。さらに、印字した長さがある程度に長くなると、例え、セルフクリーニング効果のあるカセットを用いていても、サーマルヘッドに粉塵や紙くずがたまる場合がある。
これらの場合、前記特許文献1に記載されたインクリボンを使用しても、サーマルヘッドのクリーニングは印字と同時にしかできないことから、完全にはサーマルヘッドの掃除ができない虞がある。これにより、印字品質が低下し、印字結果に悪影響を及ぼす問題点があった。
尚、クリーニング専用のカセットを用いてクリーニングするという方法もあるが、サーマルヘッドのクリーニングを行う度毎に、わざわざ印字用のカセットをクリーニング専用のカセットに交換しなければならず、非常に煩わしいという問題がある。
【0005】
本発明は前記従来における問題点を解消すべく、クリーニング専用のカセットを用いることなく、且つ印字動作を行うことなく、必要に応じて適時に十分なサーマルヘッドのクリーニングを行えるテープ印字装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため請求項1に係るテープ印字装置は、フィルムテープが巻回されるフィルムスプールと、一面にインク層が塗布されるとともに、他面にクリーニング剤が塗布されたインクリボンが巻回されるインクリボンスプールと、印字後のインクリボンを巻き取るインクリボン巻取スプールとを有し、テープ印字装置のカセット装着部に脱着可能なテープカセットと、前記インクリボンのインク層を介して、フィルムテープに文字等の印字を行うサーマルヘッドとを備えるテープ印字装置において、前記インクリボン巻取スプールを回転し、前記インクリボンを印字方向に沿ってインクリボン巻取スプールに巻き取る第1駆動手段と、前記インクリボンスプールを回転し、前記インクリボンを印字方向とは逆方向にインクリボンスプールに巻き戻す第2駆動手段と、前記第2駆動手段を介して、インクリボンスプールを回転させることにより印字方向とは逆方向に沿ってインクリボンをインクリボンスプールに巻き戻すクリーニング動作を制御するクリーニング制御手段とを備え、前記クリーニング制御手段によるクリーニング動作中において、前記印字方向とは逆方向に沿ってインクリボンが所定量巻き戻される際、前記クリーニング剤の塗布面がサーマルヘッドへの当接状態にあることにより、サーマルヘッドのクリーニングを行うことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係るテープ印字装置は、請求項1に記載のテープ印字装置において、前記サーマルヘッドと接離可能なプラテンローラとを備え、前記サーマルヘッドと前記プラテンローラが離間状態にある間に、前記サーマルヘッドのクリーニングが行われることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係るテープ印字装置は、請求項1に記載のテープ印字装置において、前記サーマルヘッドのクリーニングは、テープ印字装置の電源が投入される際に行われることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係るテープ印字装置は、請求項1に記載のテープ印字装置において、前記カセット装着部にテープカセットが装着されたことを検出するカセット検出手段と、前記カセット検出手段によりテープカセットが装着されたことが検出されたか否かを判断する第1判断手段とを備え、前記第1判断手段が、テープカセットが装着されたことが検出されたと判断した場合に、前記サーマルヘッドのクリーニングが行われることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係るテープ印字装置は、請求項1に記載のテープ印字装置において、フィルムテープに印字した長さを積算して累積印字長さを求める積算手段と、前記積算手段により求められた累積印字長さが所定長を超えたか否かを判断する第2判断手段とを備え、前記第2判断手段が、累積印字長さが所定長を超えたと判断した場合に、前記サーマルヘッドのクリーニングが行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係るテープ印字装置では、テープカセットとサーマルヘッドを備えるテープ印字装置において、第1駆動手段と、第2駆動手段と、クリーニング制御手段とを備え、クリーニング制御手段の制御により、印字方向とは逆方向に沿ってインクリボンが所定量巻き戻される際、クリーニング剤の塗布面をサーマルヘッドへの当接状態にし、サーマルヘッドのクリーニングを行うことができる。
このように、クリーニング制御手段の制御によって、印字方向とは逆方向に沿ってインクリボンが所定量巻き戻される際、サーマルヘッドのクリーニングを行うことにより、クリーニング専用のカセットを用いることなく且つ印字を行うことなく、必要に応じて適時に十分なサーマルヘッドのクリーニングを行うことができる。これにより、印字品質の低下を防止でき、印字結果に悪影響を及ぼす不具合を解決できる。
また、サーマルヘッドのクリーニング動作時に、第2駆動手段を介して、インクリボンを印字方向とは逆方向に沿って所定量インクリボンスプールに巻き戻すことにより、インクリボンを印字方向に送ってクリーニングを行う場合に比して、インクリボンの無駄使いを減らし、使用者のインクリボンの消費量を縮減することができる。
【0012】
また、請求項2に係るテープ印字装置では、サーマルヘッドと接離可能なプラテンローラとを備え、サーマルヘッドと前記プラテンローラが離間状態にある間に、サーマルヘッドのクリーニングを行うように構成されているので、サーマルヘッドのクリーニング時にインクリボンのみ搬送制御すればよく、従って、フィルムテープの搬送に影響を与えることはない。
【0013】
また、請求項3に係るテープ印字装置では、テープ印字装置の電源が投入される際にサーマルヘッドのクリーニングが行われるので、テープ印字装置を長時間使用せず放置した後に再使用するとき、あるいは、電源OFFの間にテープカセットが交換された後に使用するとき、印字処理が実行される前に、サーマルヘッドのクリーニングを行うことができる。これにより、サーマルヘッドに付着しているゴミや埃等の異物を除去でき、印字品質の低下を防止でき、印字結果に悪影響を及ぼす不具合を解決できる。
【0014】
また、請求項4に係るテープ印字装置では、第1判断手段を介してテープカセットが装着されたことが検出されたと判断された場合に、サーマルヘッドのクリーニングが行われるように構成されているので、新たなテープカセットが装着された場合、また、テープカセットが交換された場合において、サーマルヘッドのクリーニングを行うことができる。テープカセット交換時等には、外部から異物が混入し易いが、かかる場合でもサーマルヘッドをクリーニングするので、外部から混入する異物による影響を受けることなく、良好な印字を行うことができる。
【0015】
また、請求項5に係るテープ印字装置では、第2判断手段を介して、積算手段により積算された累積印字長さが所定長を超えたと判断された場合に、サーマルヘッドのクリーニングを行うように構成されているので、フィルムテープに印字した印字長さが所定長を越える毎に、サーマルヘッドのクリーニングを行うことができる。これにより、サーマルヘッドを長時間使用した後には、サーマルヘッドに付着した粉塵や埃が必ず除去されることとなり、印字品質の低下を防止でき、印字結果に悪影響を及ぼす不具合を解決できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明のテープ印字装置について実施形態に基づき図面を参照して説明する。図1は本実施形態に係るテープ印字装置を示す斜視図である。
テープ印字装置1の上面にはテープを収納したテープカセット20(図3参照)の着脱時に開閉する開閉カバー8が設けられている。開閉カバー8の側部には開閉カバー8を開くオープンスイッチ4が配置されている。
【0017】
テープ印字装置1の前面にはテープが排出されるテープ排出口9が設けられている。テープ排出口9の側部には電源キー5及び切断キー6を有する操作部7Aが配置されている。電源キー5はテープ印字装置1の装置本体の電源のオンオフを行う。切断キー6はテープ排出口9から排出されるテープを手動で切断する際に押圧される。また、切断キー6を通常の押し方で押すと、フィルムテープがフィードされ、2秒以上の長押しでは、フィルムテープがフィードされ且つ切断される。
【0018】
また、電源キー5の上側には、LED表示部7Bが設けられており、LED表示部7Bには1つの赤色LEDが配設されている。また、電源キー5には曇りガラス状のLED表示部が設けられており、赤色LEDと緑色LEDが配設されている。そして、LED表示部7Bにおける赤色LEDは、開閉カバー8が開くと点灯し、開閉カバー8が閉じると消灯する。
また、電源キー5においては、電源がON状態には、緑色LEDのみが点灯し、赤色LEDは消灯している。これにより電源キー5は緑色に光る。さらに、電源キー5は、印字を行う際のエラー表示に使用されている。具体的には、「カセットなしエラー」の時は、赤色LEDのみが点灯し、緑色LEDは消灯している。これにより、電源キー5は赤色に光る。また、「カセット不適合エラー」時は、赤色LEDが点滅し、緑色LEDは消灯している。これにより電源キー5は赤色点滅する。
【0019】
図2は本実施形態に係るテープ印字装置の電気的な構成を示すブロック図である。テープ印字装置1はネットワーク3を介してパーソナルコンピュータ2(入力装置)と接続されている。パーソナルコンピュータ2には印字データを入力するエディタがインストールされており、エディタの指示によってテープ印字装置1による印字が行われる。これによりテープ印字システムが構成されている。尚、ネットワーク3を介さずにテープ印字装置1とパーソナルコンピュータ2とを直接接続するローカル接続としてもよい。
【0020】
テープ印字装置1は各部を制御する制御部11を有している。制御部11には、表示部7C、駆動部12、サーマルヘッド13、通信部14、記憶部15、操作部7A、カセット検出部16、カバー検出部(カバー検出手段)17が接続されている。駆動部12は一または複数のモータを有し、プラテンローラ39とテープ送りローラ40の移動、可動カッタ52の駆動、駆動ギヤ32、巻戻しギヤ36等の回転(図4参照)を行う。
表示部7Cは、3つのLEDから構成されている。LED表示部7Bには、赤色LED1つが内蔵されおり、また電源キー5には2つのLED(赤色LEDと緑色LED)が内蔵されている。
【0021】
サーマルヘッド13はテープ幅方向に配列された複数の発熱素子を有し、発熱素子の発熱によってインクリボンのインクをフィルムテープに融着する。通信部14は印字データ等の受信を行う受信部と、印字結果やテープカセット20の装着状態等の信号を送信する送信部とから成っている。
【0022】
記憶部15は動作プログラムや設定条件、後述する累積印字長さ等が格納される不揮発性メモリと、印字データの一時記憶を行う印字バッファ、後述するカセット有りフラグ、カセット交換フラグ等を有する揮発性メモリとから成っている。カセット検出部16はカセットが装着されたか否かを検知する。カバー検出部17は開閉カバー8(図1参照)の開閉状態を検知する。
【0023】
次に、テープ印字装置1の内部構造について図3及び図4に基づき説明する。図3は本実施形態に係るテープ印字装置内部の内部ユニットを示す斜視図であり、図4は本実施形態に係るテープ印字装置の内部ユニットを示す平面図である。
【0024】
テープ印字装置1の内部ユニット18は、テープカセット20を収納するカセット収納部10と、フィルムテープ21(図5を参照)に印字を行う印字機構19と、印字機構19により印字されたフィルムテープ21を切断する切断機構29と、切断機構29により切断されたフィルムテープ21をテープ排出口9より強制的に排出するテープ排出機構30(図4を参照)とから基本的に構成されている。
【0025】
テープカセット20はテープ印字装置1に脱着可能になっており、テープ印字装置1の上方からカセット収納部10に装着される。また、カセット収納部10には、テープ排出口9から排出されるフィルムテープ21の幅方向の向きが、垂直方向となるようにテープカセット20を収納する。
【0026】
以下、フィルムテープ21に印字を行う印字機構19について図3及び図4に基づき説明する。
【0027】
印字機構19において、サーマルヘッド13は、カセット収納部10に立設されており、テープカセット20をテープ印字装置1に装着した状態で、テープカセット20に形成されたヘッド開口部20Aに挿入される。このサーマルヘッド13には、ローラホルダ38に回転可能に支持されたプラテンローラ39が圧接可能な位置に対向し配置されている。かかるサーマルヘッド13は多数の発熱素子を有しており、フィルムテープ21に文字等の印字を行うものである。
【0028】
図3、図4に示すように、テープカセット20の前方(図3中、右側)には、ローラホルダ38が配置される。ローラホルダ38は軸部38Aで回動可能に支持されている。
【0029】
ローラホルダ38の自由端側にはプラテンローラ39及びテープ送りローラ40が設けられている。また、プラテンローラ39及びテープ送りローラ40は後述するテープ送りモータ31(図4を参照)の駆動により回転できるようになっている。
【0030】
カセット収納部10において、ローラホルダ38は後述するリリース機構45(図5を参照)により印字位置とリリース位置とに切換可能とされている(図3は印字位置に切り換えられた状態を示す)。図3に示すように、かかるリリース機構45は、主に後述するリリースロッド37と、ローラ駆動モータ43(図5を参照)と、減速ギヤ列35と、リリースギヤ41とから構成されている。
【0031】
また、ローラホルダ38が印字位置に切り換えられたときに、プラテンローラ39がサーマルヘッド13に対し圧接され、フィルムテープ21に文字等の印字を行うことができる。ローラホルダ38がリリース位置に切り換えられたときに、プラテンローラ39がサーマルヘッド13から離間される。
【0032】
次に、印字されたフィルムテープ21を切断する切断機構29とテープ排出機構30について、図3及び図4に基づいて説明する。
【0033】
図3に示すように、テープ印字装置1の切断機構29は可動カッタ52及び固定カッタ53から構成されている。可動カッタ52は、カッタモータ(不図示)の駆動により回転するカッタギヤ51のボス51Aが可動カッタ52の孔部52Aに係合して、軸部52Bを中心に回動する。これにより、テープカセット20から送出される印字済みのフィルムテープ21を切断できるようになっている。
【0034】
図4において、テープカセット20の奥側の下方(図4中、右側)にはテープ送りモータ31が配置される。テープ送りモータ31には駆動ギヤ32、テープ送りギヤ33と巻戻しギヤ36が連動して回転するように連結されている。駆動ギヤ32及びテープ送りギヤ33と、巻戻しギヤ36とは、切換機構(図示せず)により、いずれか一方がテープ送りモータに接続される。本実施形態では、駆動部12において、テープ送りモータ31の正回転により、駆動ギヤ32が駆動される際は、巻戻しギヤ36が切換機構により駆動されない状態にある。また、テープ送りモータ31の逆回転により、巻戻しギヤ36が駆動される際は、駆動ギヤ32が切換機構により駆動されない状態にある。
【0035】
また、図4に示すように、テープ駆動ローラ28はテープ送りギヤ33と噛合するとともに、インクリボン巻取スプール24は駆動ギヤ32に噛合している。また、テープ送りローラ40はテープ送りギヤ33に噛合可能なサブテープ送りギヤ(不図示)を同軸に有し、テープ送りモータ31の駆動により回転できるようになっている。そして、インクリボンスプール25は、巻戻しギヤ36に噛合している。
【0036】
テープ送りモータ31が正回転すると、駆動ギヤ32が駆動されることにより、インクリボン巻取スプール24を回転させる。これにより、インクリボン23は、印字方向に沿ってインクリボンスプール25から引き出される。
【0037】
一方、テープ送りモータ31が逆回転すると、巻戻しギヤ36が駆動されることにより、インクリボンスプール25が回転される。これにより、インクリボン23は、印字方向とは逆方向に沿って、インクリボンスプール25に巻き戻される。
【0038】
また、テープ排出機構30は、図4に示すように、テープ送りモータ31と、テープ送りローラ40とテープ駆動ローラ28とから構成されている。フィルムテープ21は、テープ排出機構30において、テープ駆動ローラ28とテープ送りローラ40の押圧により、テープ印字装置1から送り出される。
【0039】
このように、前記印字機構19により印字されたフィルムテープ21はカッタ駆動ボタン6の操作により、切断機構29(図3参照)によって切断される。切断されたフィルムテープ21は、テープ排出機構30によって開閉カバー8の側壁に形成されたテープ排出口9から排出される。
【0040】
次に、プラテンローラ39をサーマルヘッド13に対して、圧接または離間することを制御するリリース機構45について図5に基づき説明する。図5は、本実施形態のテープ印字装置におけるリリース機構を示す側面図である。
【0041】
リリース機構45は、主に後述するリリースロッド37と、ローラ駆動モータ43と、減速ギヤ列35と、リリースギヤ41とから構成されている。図4に示すように、ローラホルダ38におけるサーマルヘッドと反対側には、リリースローラ37Aを介してローラホルダ38に当接するリリースロッド37が配置される。リリースロッド37は、図5に示すように、減速ギヤ列35を介してローラ駆動モータ43に連結されるリリースギヤ41のカム(不図示)と係合している。
【0042】
ローラ駆動モータ43の駆動によって回転するリリースギヤ41とのカム係合によりリリースロッド37が前後方向(図5における左右方向)にスライド移動できるようになっている。尚、テープ送りモータ31にカムギヤ等を介してリリースギヤ41を連結し、ローラ駆動モータ43を省くこともできる。
【0043】
リリースロッド37が前方(図5中の左方向)にスライド移動すると、図3、図4に示すようにローラホルダ38がテープカセット20に接近する。その結果、プラテンローラ39はフィルムテープ21及びインクリボン23を介してサーマルヘッド13に押圧される。また、テープ送りローラ40はフィルムテープ21を介してテープ駆動ローラ28に押圧される。
【0044】
従って、プラテンローラ39及びテープ送りローラ40はフィルムテープ21を圧着する圧着位置に配置される。これにより、テープ送りモータ31の駆動によってプラテンローラ39が回転し、プラテンローラ39とサーマルヘッド13に挟まれたフィルムテープ21及びインクリボン23の送りが行われる。また、テープ駆動ローラ28及びテープ送りローラ40が回転し、この間に挟まれたフィルムテープ21の送りが行われる。
【0045】
リリースロッド37が後方(図5中、右方向)にスライド移動すると、ローラホルダ38は付勢力によりテープカセット20から離れる。従って、プラテンローラ39及びテープ送りローラ40はフィルムテープ21から離れたリリース位置に配置される。これにより、テープカセット20の着脱または後述するサーマルヘッドのクリーニングが可能になる。
【0046】
次に、本実施形態に係るテープカセットの内部構成を図6に基づき説明する。図6は本実施形態に係るテープカセットの内部構成を示す平面図である。
【0047】
図6に示すように、本実施形態におけるテープカセット20には、印字が行われる透明のフィルムテープ21と、インクリボン23と剥離紙付きの両面粘着テープ26が収納されている。フィルムテープ21はフィルムテープスプール22に巻回され、また、インクリボン23はインクリボンスプール25に巻回されている。さらに、かかるテープカセット20には、剥離紙付きの両面粘着テープ26は粘着テープスプール27に巻回されている。
【0048】
インクリボン23は、テープ送りモータ31の駆動によって駆動されるインク巻取リボンスプール24により印字方向に沿って引き出される。また、フィルムテープ21はテープ案内コロ44等により、テープ印字装置1のサーマルヘッド13とプラテンローラ39の間の印字位置まで送り出される。そして、印字済みのインクリボン23は、駆動ギヤ32に噛合するインクリボン巻取スプール24により巻き取られる。また、剥離紙付きの両面粘着テープ26において、両面粘着テープ26Aの両面は粘着面になっており、一面に剥離紙26Bが付されるとともに、他面が透明なフィルムテープ21の印字面に接着されるようになっている。剥離紙付きの両面粘着テープ26は、テープ送りモータ31により駆動されるテープ駆動ローラ28によって送り出される。
【0049】
次に、本実施形態に係るインクリボンを用いて、サーマルヘッドのクリーニングを行う過程及び印字をする過程について、図7及び図8に基づき説明する。
【0050】
図7は本実施形態における文字等の印字前におけるインクリボンを用いてサーマルヘッドのクリーニングを行う過程を模式的に示す説明図である。図8は本実施形態におけるインクリボンを用いて文字等の印字過程を模式的に示す説明図である。
【0051】
図7に示すように、インクリボン23は、基材23Cの一面にインクが塗布されたインク層23Bが形成されるとともに、基材23Cの他面にサーマルヘッド13をクリーニングするための研磨剤が塗布された研磨層23Aが形成されている。例えば、研磨層23Aは、研磨剤として酸化アルミニウムなどの砥粒と熱硬化性高分子接着剤とを混練して生成された材料を塗布することにより形成される。インクリボン23は、研磨層23Aがサーマルヘッド13に対向するように、研磨層23Aが外側に向くようにリボンスプール25に巻回されている(図6を参照)。
【0052】
また、本実施形態におけるサーマルヘッド13のクリーニングは、リリース機構45の制御により、プラテンローラ39がサーマルヘッド13とインクリボン23から離間する状態で行っている。つまり、リリースロッド37を後方(図5中、右方向)にスライド移動させることにより、ローラホルダ38が付勢力によりテープカセット20から離れた状態でサーマルヘッド13のクリーニングが行われる。
【0053】
このとき、インクリボン23は、駆動ギヤ32に噛合しているインクリボン巻取スプール24の巻き取りにより、インクリボンスプール25から印字方向に沿って所定量引き出される。インクリボン23の引き出される量は、周知のエンコーダと光センサを用いて検出することができる。例えば、インクリボンスプール25の軸にエンコーダを付けることにより、インクリボン23の引き出す量を検出する。
【0054】
また、インクリボンスプール25から引き出されるインクリボン23は、図7に示すように、研磨層23Aはサーマルヘッド13に当接しながら、サーマルヘッド13に付着している異物が研磨層23Aにより研磨される。これにより、サーマルヘッド13の表面に異物がない状態にクリーニングされる。
【0055】
また、消費されたインクリボン23は、巻戻しギヤ36に噛合しているインクリボンスプール25により、印字方向とは逆方向に沿って巻き戻される。インクリボン23は、インクリボンスプール25により巻き戻される場合においても、研磨層23Aをサーマルヘッド13に当接させてサーマルヘッド13のクリーニングを行うことができる。
【0056】
このとき、インクリボンスプール25により、インクリボン23を印字方向と逆方向に沿って巻き戻すリボントルクは、インクリボン巻取スプール24からインクリボン23を印字方向に沿って巻き取るリボントルクと同等に設定されている。
【0057】
駆動ギヤ32により、インクリボン巻取スプール24を回転させ、インクリボン23を印字方向に送り出すときに、インクリボンスプール25側のエンコーダで回転量を検出する。また、巻戻しギヤ36により、インクリボンスプール25を回転させ、インクリボン23を印字方向と逆方向に沿って、エンコーダで検出した前記の回転量分を巻き戻す。
【0058】
一方、印字を行う際、インクリボン23は、インク巻取リボンスプール24により印字方向に沿って引き出される。また、フィルムテープ21はテープ案内コロ44等により、テープ印字装置1のサーマルヘッド13とプラテンローラ39の間の印字位置まで送り出される。図8に示すように、フィルムテープ21は、かかる印字位置にて、インクリボン23と重ね合わされる。
【0059】
また、この際、図8に示すように、ローラホルダ38に回転支持されているプラテンローラ39がフィルムテープ21側からサーマルヘッド13に対し圧接される。これにより、インク層23Bは、研磨層23A及び基材23Cを介して、サーマルヘッド13の発熱素子の加熱により、インクリボン23のインク層23Bのうち加熱された部分がフィルムテープ21に転写され、フィルムテープ21に文字等の印字を行う。
【0060】
また、印字済みのインクリボン23は、インクリボン巻取りスプール24により巻き取られる。その後、剥離紙付きの両面粘着テープ26は、テープ駆動ローラ28により、粘着テープスプール27から引き出され、印字済みのフィルムテープ21に対してラミネートをする。この際、図8に示すように、剥離紙付きの両面粘着テープ26は、インク層23Bが転写されたフィルムテープ21に対してラミネーティングを行い、ラミネートテープ100を作成する。
【0061】
本実施形態においては、印字面を保護するための両面粘着テープを含むラミネートタイプのテープカセットを用いて説明したが、もちろん、フィルムテープとインクリボンのみを収容し、ラミネートによる印字面の保護をしないレセプタタイプのカセットを使用しても良い。
【0062】
次に、テープ印字装置1に行われる各種処理について、図9乃至図14を参照して説明する。図9はメイン処理を示すフローチャートであり、図10は初期化処理を示すフローチャートである。図11はカバー開状態処理のフローチャートであり、図12は印字処理のフローチャートである。また、図13はフィード処理のフローチャートであり、図14はクリーニング処理1のフローチャートであり、図15はクリーニング処理2のフローチャートである。
以下の処理は、すべてテープ印字装置1の制御部11によって実行される。
【0063】
まず、図9のメイン処理について説明する。この処理はテープ印字装置1が電源OFF状態にあり、その間に電源キー5が押下された時に実行される処理である。図9に示すように、ステップ(以下、Sと略記する)1において、初期化処理が実行される。ここでは、図10のフローチャートに示すような処理が実行される。この初期化処理については、また後で詳細に説明する。
【0064】
S2では、テープ印字装置1の開閉カバー8が開状態にあるか否かが判断される。テープ印字装置1の開閉カバー8が開いていると判断された場合(S2:YES)は、S3に移行し、後述するカバー開状態処理が実行される。一方、テープ印字装置1の開閉カバー8が開いていないと判断された場合(S2:NO)は、S4に移行する。
【0065】
S4では、入力受付が実行される。ここでは、使用者からの入力の受付が実行される。例えば、使用者の印字フィード操作、終了操作などの処理を受け付ける。また、ここでは、ネットワーク3を介してパーソナルコンピュータ2から送られる各種コマンドによる指示も受け付けられる。その後S5に移行する。
【0066】
S5では、テープ印字装置1の電源キーが押されたか否かが判断される。電源キーが使用者によって押されたと判断された場合(S5:YES)は、メイン処理を終了する。電源キーが使用者によって押されなかったと判断された場合(S5:NO)は、S6に移行する。
【0067】
このS6では、テープ印字装置1において、印字処理が実行されるか否かが判断される。ここでは、印字データが受信された否かについて判断される。印字データの受信があった場合、つまり、印字処理が実行されると判断された場合(S6:YES)は、後述するS7の印字処理に移行する。また、印字データの受信がなかった場合、つまり、印字処理が実行されないと判断された場合(S6:NO)は、S8に移行する。
【0068】
S8では、テープ印字装置1において、フィード処理が実行されるか否かが判断される。ここでは、使用者のフィード操作が行われたか否かについて判断される。フィード操作とは、使用者の要望により、フィルムテープのみを送り出す操作を指している。使用者は、切断キー6を押すことによって、フィード操作を行うことができる。
使用者のフィード操作があった場合、つまり、フィード処理が実行されると判断された場合(S8:YES)は、後述するS9のフィード処理に移行する。また、使用者のフィード操作がなかった場合、つまり、フィード処理が実行されないと判断された場合(S8:NO)は、S10に移行し、その他の処理が実行される。その後、S2に移行し、S2以降を繰り返す。尚、その他の処理としては、切断キー6を2秒以上押下することにより、フィルムテープ21のフィード&カットを行う処理等がある。
【0069】
続いて、前述したS1の初期化処理、S3のカバー開状態処理、S7の印字処理及びS9のフィード処理について、フローチャートを用いて詳細に説明する。
【0070】
まず、S1の初期化処理について説明する。図10に示すように、S20において、テープ印字装置1において、プランテンホルダ38のリリースが行われる。このリリースはキャリブレーションとも呼ばれる。この処理では、前述したように、プラテンローラ39は、リリース機構45におけるリリースロッド37の後方(図5中、右方向)へのスライド移動により、サーマルヘッド13から離れる。S20の処理が実行された後、S21に移行する。
【0071】
次に、S21において、テープ印字装置1の開閉カバー8は開状態にあるか否かについて判断される。テープ印字装置1の開閉カバー8が開いていると判断された場合(S21:YES)は、S22に移行し、LED表示部7Bにおける赤色LEDが赤点灯する。その後、またS21に戻り、再度カバーは開状態にあるか否かが判断される。一方、テープ印字装置1の開閉カバー8が開いていないと判断された場合(S21:NO)は、S23に移行する。
【0072】
S23では、テープ印字装置1において、テープカセット20が有るか否かについて判断される。このとき、テープカセット20が有ると判断された場合(S23:YES)は、S24に移行し、後述するクリーニング処理1が行われる。この後S25に移行する。また、テープ印字装置1において、テープカセット20がないと判断された場合(S23:NO)は、直ちにS25に移行する。S25では、その他の初期化処理が行われる。その他の初期化処理には電源キーの緑点灯等の処理が含まれている。S25のその他の初期化処理終了後、また図9に示すメイン処理に戻る。
【0073】
即ち、初期化処理では、テープ印字装置1において、開閉カバー8は開状態になく、且つ、テープカセット20が有ると判断された場合、クリーニング処理1が行われる。つまり、テープ印字装置1に新たに電源が投入される場合に、サーマルヘッド13のクリーニングが行われる。
【0074】
次に、S3のカバー開状態処理について、図11のフローチャートを用いて説明する。
このカバー開状態処理では、図11に示すように、まず、S30において、カセット交換フラグをOFFにする。
【0075】
その後、S31では、テープ印字装置1において、テープカセット20が有るか否かが判断される。テープ印字装置1において、テープカセット20が有ると判断された場合(S31:YES)は、S32に移行し、カセット有りフラグをONにした後S34に移行する。また、テープ印字装置1において、テープカセット20がないと判断された場合(S31:NO)は、S33に移行し、カセット有りフラグをOFFにした後S34に移行する。
【0076】
S34においては、開閉カバー8が開状態にあるかどうかが判断される。ここでは、開閉カバー8の開状態に変化があったか否かについて判断される。S34において、開閉カバー8が開いていると判断された場合(S34:YES)は、S35に移行する。一方、開閉カバー8が開いていないと判断された場合(S34:NO)は、S39に移行する。
【0077】
S35では、LED表示部7Bにおける赤色LEDが赤色点灯し、続いて、S36では、テープカセット20が有るか否かが判断される。テープカセット20がないと判断された場合(S36:NO)、S37にてカセット有りフラグがOFFされるとともに、S38にてカセット交換フラグがONされる。この後、S34に戻って前記各処理が繰り返される。
【0078】
一方、S36において、テープカセット20が有ると判断された場合(S36:YES)S41に移行し、S41にてカセット有りフラグがOFFであるかどうか判断される。カセット有りフラグがOFFである場合(S41:YES)には、S42にてカセット交換フラグをONにするとともに、S43にてカセット有りフラグをONにする。この後S34に戻って前記各処理が繰り返される。
これに対して、カセット有りフラグがONである場合(S41:NO)には、直ちにS43に移行し、S43にてカセット有りフラグをONにした後、S34に戻る。
【0079】
すなわち、前記S34乃至S38、S41乃至S43の各処理は、開閉カバー8が開放された状態で、カセット有りフラグのON・OFF状態及びカセット交換フラグのON・OFF状態に基づいて、テープカセット20の交換が行われたかどうかを判断するための処理であり、開閉カバー8が開放されている限り行われる。
【0080】
前記S34において、開閉カバー8が開状態にない、即ち、開閉カバー8が閉じられたと判断された場合(S34:NO)、LED表示部7Bにおける赤色LEDが消灯された後、S39に移行し、S39にてカセット交換フラグがONされているかどうか判断される。
カセット交換フラグがONされている場合(S39:YES)、S40にて後述するクリーニング処理1が行われる。この後メイン処理に戻る。一方、カセット交換フラグがONされていない場合(S39:NO)には、直ちにメイン処理に戻る。
【0081】
前記S34、S39、S40の処理は、開閉カバー8が閉じられた際に、カセット交換フラグのON・OFF状態に基づきテープカセット20の交換が行われたかどうかを判断し、テープカセット20の交換が行われている場合には、クリーニング処理1を行うための処理である。
【0082】
次に、テープ印字装置1にて行われる印字処理を図12に基づき説明する。図12に示すように、まず、S50において、テープ印字装置1に対応するテープカセット20が装着されているか否かが判断される。テープ印字装置1に対応するテープカセット20が装着されていると判断された場合(S50:YES)は、S51に移行する。また、テープ印字装置1に対応するテープカセット20が装着されていないと判断された場合(S50:NO)は、S52に移行し、電源キー5における赤色LEDが赤色点滅する。その後、メイン処理に戻る。
【0083】
また、S51において、印字しようとするイメージデータが印字バッファに展開される。その後、S53においては、ローラホルダ38が回動され、プラテンローラ39がサーマルヘッド13に圧接される。
この後S54では、サーマルヘッド13の発熱素子群の発熱駆動が行われ、インクリボン23を介してフィルムテープ21上に文字等の印字が行われるとともに、その印字面に対して剥離紙付き両面粘着テープ26が貼り合わされ、この後、切断キー6が押下されて前記のように剥離紙付き両面粘着テープ26が貼り合わされたフィルムテープ21のフィード及び切断が行われる。
【0084】
S55では、ローラホルダ38がリリース機構45を介して前記とは逆の方向に回動され、これによりプラテンローラ39がサーマルヘッド13からリリースされる。
【0085】
次に、S56では、累積印字長さに印字長さ分増加させる処理が実行される。ここでは、フィルムテープに印字した長さを積算して求めた累積印字長さに対して、さらに、前記S54においてフィルムテープ21に行われた文字等の印字長さを加えることにより、新たな累積印字長さが積算される。
【0086】
S57では、累積印字長さが、予め設定された第1所定長さ以上になったかどうかが判断される。累積印字長さが第1所定長さ以上であると判断された場合(S57:YES)には、S58にて後述するクリーニング処理1が行われる。この後メイン処理に戻る。
一方、累積印字長さが第1所定長さ以上でないと判断された場合(S57:NO)には、直ちにメイン処理に戻る。
尚、第1所定長さは、テープ印字装置1に使われるテープの種類に応じて設定されても良く、また、使用者が任意に設定しても良い。
【0087】
つまり、フィルムテープ21に印字した印字長さを積算して得られた累積印字長さが第1所定長さ以上になった時点で、サーマルヘッド13のクリーニング処理が実行されるものである。
【0088】
次に、フィード処理について図13に基づき説明する。フィード処理では、印字せずに、フィルムテープ21とインクリボン23だけを送り出す処理が行われる。ここで、まず、S60において、テープカセット20が有るか否かが判断される。テープカセット20が有ると判断された場合(S60:YES)は、S61に移行する。一方、テープカセット21はないと判断された場合(S60:NO)は、S62に移行し、電源キー5の赤色LEDが赤色点灯する。電源キー5の緑色LEDは消灯する。その後、メイン処理に戻る。
【0089】
S61においては、ローラホルダ38を回動させてプラテンローラ39をサーマルヘッド13に圧接させた後、S63に移行する。
【0090】
S63では、第2所定長さのフィルムテープ21とインクリボン23がフィードされる。このフィード処理では、印字を行うことなく、フィルムテープ21とインクリボン23だけを送り出す処理が行われる。また、第2所定長さについては、使用者が任意で決定することができる。その後、S64に移行する。
【0091】
次に、S64では、プラテンローラ39をリリースする処理が行われる。このステップでは、前記S55におけると同様、プラテンローラ39は、前述したリリース機構45により、サーマルヘッド13からリリースされ、離間状態にされる。その後、S65に移行する。
【0092】
S65では、後述するクリーニング処理2が実行される。また、クリーニング処理2が終わった後、メイン処理に戻る。
【0093】
以下、前述したクリーニング処理1及びクリーニング処理2について図14及び図15に基づき説明する。
【0094】
クリーニング処理1は、累積印字長さが第1所定長さよりも大きいか又は等しくなった場合に行われる処理であり、図14に示すように、まず、S70にて第2所定長さのインクリボン送りが実行される。ここでは、インクリボン23は、インクリボン巻取りスプール24が回転されることにより、印字方向に沿って、インクリボンスプール25から第2所定長さを送り出される。その後、S71に移行する。
【0095】
S71では、第2所定長さのインクリボン巻戻しが実行される。このとき、インクリボン23は、インクリボンスプール25が回転されることにより、印字方向とは逆方向に沿って、第2所定長さが巻き戻される。その後、S72に移行する。
【0096】
ここに、インクリボン23の送り動作が行われる際及び/又はインクリボン23の巻戻し動作が行われる際に、サーマルヘッド13のクリーニングが行われる。この際、図7で示すように、インクリボン23は、その研磨層23Aをサーマルヘッド13に当接しながら送り動作及び/又は巻戻し動作がされ、この結果、研磨層23Aがサーマルヘッド13に付着した埃等を除去してサーマルヘッド13のクリーニングが行われる。
【0097】
S72では、累積印字長さをゼロにする。このように、インクリボン23の研磨層23Aを介してサーマルヘッド13のクリーニングが行われた後に、累積印字長さをゼロにリセットし、次のクリーニングに備える。その後、メイン処理に戻る。
【0098】
次に、前記フィード処理において行われるクリーニング処理2について説明する。クリーニング処理2においては、図15に示すように、まず、S80にて、第2所定長さのリボン巻戻しが実行される。ここでは、インクリボン23は、インクリボンスプール25が回転されることにより、印字方向とは逆方向に沿って、第2所定長さが巻き戻される。尚、S80にてインクリボン23の巻戻しが行われるのは、インクリボン23は前記S63にて既に第2所定長さフィードされていることに基づく。
ここに、インクリボン23の巻戻し動作が行われる際に、サーマルヘッド13のクリーニングが行われる。この際、図7に示すように、インクリボン23は、その研磨層23Aをサーマルヘッド13に当接しながら巻戻し動作がされ、この結果、研磨層23Aがサーマルヘッド13に付着した埃等を除去してサーマルヘッド13のクリーニングが行われる。その後、S81に移行する。
【0099】
S81では、S72と同様に、累積印字長さをゼロにする。このように、インクリボン23の研磨層23Aを介してサーマルヘッド13のクリーニングが行われた後に、累積印字長さをゼロにリセットし、次のクリーニングに備える。その後、メイン処理に戻る。
【0100】
以上詳細に説明した通り本実施形態に係るテープ印字装置1では、インクリボンスプール25を回転し、インクリボン23を印字方向とは逆方向にインクリボンスプール25に巻き戻すことにより、印字方向とは逆方向に沿ってインクリボン23が第2所定量巻き戻される際、インクリボン23における研磨層23Aをサーマルヘッド13への当接状態にし、サーマルヘッド13のクリーニングを行うことができる。
このように、印字方向とは逆方向に沿ってインクリボン23が第2所定量巻き戻される際、サーマルヘッド13のクリーニングを行うことにより、クリーニング専用のカセットを用いることなく且つ印字を行うことなく、必要に応じて適時に十分なサーマルヘッド13のクリーニングを行うことができる。これにより、印字品質の低下を防止でき、印字結果に悪影響を及ぼす不具合を解決できる。
また、サーマルヘッド13のクリーニング動作時に、インクリボン23を印字方向とは逆方向に沿って第2所定量インクリボンスプール25に巻き戻すことにより、インクリボン23を印字方向に送ってクリーニングを行う場合に比して、インクリボン23の無駄使いを減らし、使用者のインクリボン23の消費量を縮減することができる。
【0101】
また、サーマルヘッド13とプラテンローラ39が離間状態にある間に、サーマルヘッド13のクリーニングを行うように構成されているので、サーマルヘッド13のクリーニング時にインクリボン23のみ搬送制御すればよく、従って、フィルムテープ21の搬送に影響を与えることはない。
【0102】
また、テープ印字装置1の電源が投入された際における初期化処理(S1)にて、サーマルヘッド13のクリーニングが行われるので、テープ印字装置1を長時間使用せず放置した後に再使用するとき、あるいは、電源OFFの間にテープカセット20が交換された後に使用するとき、印字処理が実行される前に、サーマルヘッド13のクリーニングを行うことができる。これにより、サーマルヘッド13に付着しているゴミや埃等の異物を除去でき、印字品質の低下を防止でき、印字結果に悪影響を及ぼす不具合を解決できる。
【0103】
また、テープカセットが装着されたことが検出されたと判断された場合(S50:YES)に、サーマルヘッド13のクリーニングを行う(S58)ように構成されているので、新たなテープカセット20が装着された場合、また、テープカセット20が交換された場合において、サーマルヘッド13のクリーニングを行うことができる。これにより、外部から混入した異物によって、印字結果に悪影響を及ぼす不具合を解決でき、印字品質を向上することができる。
【0104】
また、S56にて積算された累積印字長さが第1所定長を超えたと判断された場合(S57:YES)に、サーマルヘッド13のクリーニングを行うように構成されているので、フィルムテープ21に印字した印字長さが第1所定長を越える毎に、サーマルヘッド13のクリーニングを行うことができる。これにより、サーマルヘッド13を長時間使用した後には、サーマルヘッド13に付着した粉塵や埃が必ず除去されることとなり、印字品質の低下を防止して印字結果に悪影響を及ぼす不具合を解決できる。
【0105】
なお、本実施形態の説明において示したテープ印字装置、テープカセット、の形状は単なる一例であり、本発明はこれらの形状に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本実施形態に係るテープ印字装置を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係るテープ印字装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態に係るテープ印字装置の内部ユニットを示す斜視図である。
【図4】本実施形態に係るテープ印字装置の内部ユニットを示す平面図である。
【図5】本実施形態のテープ印字装置におけるリリース機構を示す側面図である。
【図6】本実施形態に係るテープカセットの内部構成を示す平面図である。
【図7】本実施形態における文字等の印字前におけるインクリボンを用いてサーマルヘッドのクリーニングを行う過程を模式的に示す説明図である。
【図8】本実施形態におけるインクリボンを用いて文字等の印字過程を模式的に示す説明図である。
【図9】本実施形態に係るテープ印字装置のメイン処理を示すフローチャートである。
【図10】本実施形態に係るテープ印字装置の初期化処理を示すフローチャートである。
【図11】本実施形態に係るテープ印字装置のカバー開状態処理のフローチャートである。
【図12】本実施形態に係るテープ印字装置の印字処理のフローチャートである。
【図13】本実施形態に係るテープ印字装置のフィード処理を示すフローチャートである。
【図14】本実施形態に係るテープ印字装置のクリーニング処理1のフローチャートである。
【図15】本実施形態に係るテープ印字装置のクリーニング処理2のフローチャートである。
【符号の説明】
【0107】
1 テープ印字装置
10 カセット装着部
12 駆動部
13 サーマルヘッド
14 カッタユニット
15 貼り合わせローラ
20 テープカセット
21 フィルムテープ
22 フィルムスプール
23 インクリボン
23A 研磨層
23B インク層
24 インクリボン巻取スプール
25 インクリボンスプール
31 テープ送りモータ
32 駆動ギヤ
36 巻戻しギヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムテープが巻回されるフィルムスプールと、一面にインク層が塗布されるとともに、他面にクリーニング剤が塗布されたインクリボンが巻回されるインクリボンスプールと、印字後のインクリボンを巻き取るインクリボン巻取スプールとを有し、テープ印字装置のカセット装着部に脱着可能なテープカセットと、
前記インクリボンのインク層を介して、フィルムテープに文字等の印字を行うサーマルヘッドとを備えるテープ印字装置において、
前記インクリボン巻取スプールを回転し、前記インクリボンを印字方向に沿ってインクリボン巻取スプールに巻き取る第1駆動手段と、
前記インクリボンスプールを回転し、前記インクリボンを印字方向とは逆方向にインクリボンスプールに巻き戻す第2駆動手段と、
前記第2駆動手段を介して、インクリボンスプールを回転させることにより印字方向とは逆方向に沿ってインクリボンをインクリボンスプールに巻き戻すクリーニング動作を制御するクリーニング制御手段とを備え、
前記クリーニング制御手段によるクリーニング動作中において、前記印字方向とは逆方向に沿ってインクリボンが所定量巻き戻される際、前記クリーニング剤の塗布面がサーマルヘッドへの当接状態にあることにより、サーマルヘッドのクリーニングを行うことを特徴とするテープ印字装置。
【請求項2】
前記サーマルヘッドと接離可能なプラテンローラとを備え、前記サーマルヘッドと前記プラテンローラが離間状態にある間に、前記サーマルヘッドのクリーニングが行われることを特徴とする請求項1に記載のテープ印字装置。
【請求項3】
前記サーマルヘッドのクリーニングは、テープ印字装置の電源が投入される際に行われることを特徴とする請求項1に記載のテープ印字装置。
【請求項4】
前記カセット装着部にテープカセットが装着されたことを検出するカセット検出手段と、
前記カセット検出手段によりテープカセットが装着されたことが検出されたか否かを判断する第1判断手段とを備え、
前記第1判断手段が、テープカセットが装着されたことが検出されたと判断した場合に、前記サーマルヘッドのクリーニングが行われることを特徴とする請求項1に記載のテープ印字装置。
【請求項5】
フィルムテープに印字した長さを積算して累積印字長さを求める積算手段と、
前記積算手段により求められた累積印字長さが所定長を超えたか否かを判断する第2判断手段とを備え、
前記第2判断手段が、累積印字長さが所定長を超えたと判断した場合に、前記サーマルヘッドのクリーニングが行われることを特徴とする請求項1に記載のテープ印字装置。





【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2009−220348(P2009−220348A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66063(P2008−66063)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】