説明

ディスクストッパーの製造方法

【課題】プライマリー層や接着工程を必要とすることなく、容易かつ効率的に製造することができ、しかも積層した層間の接着性に優れ、積層層間の界面剥離を生じることなく、信頼性、耐久性に優れるディスクストッパーの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】高静摩擦性シートと粘着層とを積層してなり、ターンテーブルに貼り付けてターンテーブル上に配置されたディスクのズレを防止するディスクストッパーの製造方法であって、オレフィン系熱可塑性エラストマーと、スチレン系熱可塑性エラストマー又はスチレン系熱可塑性エラストマーを含む組成物とを共押出し成形して、オレフィン系熱可塑性エラストマー層1とスチレン系熱可塑性エラストマー層2との積層シート3を形成し、該積層シートの上記オレフィン系熱可塑性エラストマー層1面に更に粘着層4を積層形成するディスクストッパーの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD、DVD、BDなどの光学記録ディスクを回転させるターンテーブルに貼り付けて、該ディスクのずれやスリップを防止するディスクストッパーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CD、DVD、BDなどの光学記録ディスクを回転させるドライブのターンテーブルには、高静摩擦性のゴムや熱可塑性エラストマーからなるシート状のディスクストッパーが貼り付けて、上記光学記録ディスクのズレやスリップを防止することが行われている。
【0003】
従来、このようなディスクストッパーとして、熱可塑性エラストマーの片面にプライマー層、接着層及び粘着層を順次積層したもの(特許文献1:特開2003−82136号公報)が知られており、またPPやPETの基材フィルムにスチレン系又はオレフィン系の動的架橋型熱可塑性エラストマーからなるシートを熱融着や接着剤接着により積層し、該基材フィルムの反対面に両面粘着シートを積層したもの(特許文献2:特開2005−63617号公報)も提案されている。
【0004】
しかしながら、これら従来のディスクストッパーは、必ずしも効率的に製造されておらず、以下のように、その層構造に起因する煩雑な積層、接着工程を要するものである。
【0005】
まず、前者(特許文献1)のディスクストッパーは、熱可塑性エラストマーに直接又は必要に応じて接着剤層を用いて粘着層を積層するものであるが、この場合熱可塑性エラストマーは接着性に乏しく、接着剤を用いても両面粘着テープ等の粘着層との接着が困難な場合が多く、このため熱可塑性エラストマーと粘着層又は接着剤層との間に、両層との接着性が良好な樹脂塗料などからなるプライマー層を設ける必要がある。この場合、このプライマー層の形成には、グラビアコート、スプレーコート等の塗布工程とその乾燥工程が必要となり、ディスクストッパーとしての機能に直接関与しないプライマー層の形成工程のために工程数が多くなってしまう。
【0006】
また、後者(特許文献2)のディスクストッパーは、熱可塑性エラストマーを例えば実施形態1のように押出成形によりフィルム状に成形し、熱可塑性エラストマーフィルムと基材フィルムとを熱融着や接着剤により接着するものであるが、このフィルム同士の接着工程は煩雑なものとなりやすく、また成形品に気泡やしわが生じる懸念もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−82136号公報
【特許文献2】特開2005−63617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、プライマリー層を設けたり、基材フィルムとの接着工程を必要とすることなく、容易かつ効率的に製造することができ、しかも積層した層間の接着性に優れ、積層層間が界面剥離するなどの不都合を生じることなく、信頼性、耐久性に優れるディスクストッパーを得ることができるディスクストッパーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するため、下記の製造方法を提供する。
請求項1:
高静摩擦性シートと粘着層とを積層してなり、ターンテーブルに貼り付けてターンテーブル上に配置されたディスクのズレを防止するディスクストッパーの製造方法であって、
オレフィン系熱可塑性エラストマーと、スチレン系熱可塑性エラストマー又はスチレン系熱可塑性エラストマーを含む組成物とを共押出し成形して、オレフィン系熱可塑性エラストマー層とスチレン系熱可塑性エラストマー層との積層シートを形成し、該積層シートの上記オレフィン系熱可塑性エラストマー層面に更に粘着層を積層形成することを特徴とするディスクストッパーの製造方法。
請求項2:
上記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)から選ばれたものである請求項1記載のディスクストッパーの製造方法。
請求項3:
上記スチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−ブロック共重合体(SEPS)、ポリブタジエンとブタジエン−スチレンランダム共重合体とのブロック共重合体を水添して得られる結晶性ポリエチレンとエチレン/ブチレン−スチレンランダム共重合体とのブロック共重合体、ポリブタジエン又はエチレン−ブタジエンランダム共重合体とポリスチレンとのブロック共重合体を水添して得られる結晶性ポリエチレンとポリスチレンとのジブロック共重合体から選ばれたものである請求項1又は2記載のディスクストッパーの製造方法。
請求項4:
上記スチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−ブロック共重合体(SEPS)から選ばれたものである請求項3記載のディスクストッパーの製造方法。
請求項5:
上記スチレン系熱可塑性エラストマー中のスチレンブロックの含有量が10〜70質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載のディスクストッパーの製造方法。
請求項6:
上記積層シートを構成するスチレン系熱可塑性エラストマー層が、スチレン系熱可塑性エラストマーとポリオレフィン樹脂又はポリスチレン樹脂とを含有するエラストマー組成物で形成されたものである請求項1〜5のいずれか1項に記載のディスクストッパーの製造方法。
請求項7:
上記エラストマー組成物が、スチレン系熱可塑性エラストマーと、ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、プロピレンと他の少量のα−オレフィンとの共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリブテン−1、ポリスチレンから選ばれた1種又は2種以上の樹脂とを含有するものである請求項6記載のディスクストッパーの製造方法
請求項8:
ポリプロピレン(PP)と、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)及びアイソタクティックポリプロピレンを含む組成物とを共押出し成形して上記積層シートを形成する請求項7記載のディスクストッパーの製造方法。
請求項9:
上記粘着層がアクリル系両面粘着テープである請求項1〜8のいずれか1項に記載のディスクストッパーの製造方法。
請求項10:
上記粘着層を形成した後、所定形状に打ち抜いてディスクストッパーとする請求項1〜9のいずれか1項に記載のディスクストッパーの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
即ち、本発明の製造方法によれば、静摩擦性に優れるスチレン系熱可塑性エラストマー又はその組成物と接着性に優れるオレフィン系熱可塑性エラストマーとを共押出しによってシート状に積層成形したことにより、スチレン系熱可塑性エラストマー層によりディスクストッパーとして良好な性能を発揮すると共に、オレフィン系熱可塑性エラストマー層に両面粘着テープ等の粘着層を良好に接着することができ、プライマー層の形成を要することなく少ない工程数で製造することができる。
【0011】
しかも、スチレン系熱可塑性エラストマー層とオレフィン系熱可塑性エラストマー層とは、共押出し成形により完全に融着一体化したものとなり、層間での界面剥離による不都合を生じることなく、また積層操作による皺や気泡の発生もなく、安定した品質の製品を確実に得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の製造方法により得られるディスクストッパーの一例を示す概略断面図である。
【図2】実施例で行なった180°ピーリング試験を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のディスクストッパーの製造方法は、上記のように、オレフィン系熱可塑性エラストマーとスチレン系熱可塑性エラストマー又はその組成物とを共押出し成形して、例えば図1に示したように、オレフィン系熱可塑性エラストマー層1とスチレン系熱可塑性エラストマー層2との積層シート3を形成し、更に該積層シート3の上記オレフィン系熱可塑性エラストマー面に粘着層4を積層形成したものである。
【0014】
上記オレフィン系熱可塑性エラストマー層1を形成するオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、上記粘着層4を構成する両面粘着テープなどとの接着性に優れ、かつ上記スチレン系熱可塑性エラストマー層2との良好な熱接着性を有するものであればよい。具体的にはポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などが例示され、特に上記スチレン系熱可塑性エラストマー層2との熱接着性の観点からポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)が好ましく用いられる。
【0015】
また、上記スチレン系熱可塑性エラストマー層2を形成するスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、静摩擦性に優れるものが好適に用いられ、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−ブロック共重合体(SEPS)、ポリブタジエンとブタジエン−スチレンランダム共重合体とのブロック共重合体を水添して得られる結晶性ポリエチレンとエチレン/ブチレン−スチレンランダム共重合体とのブロック共重合体、ポリブタジエン又はエチレン−ブタジエンランダム共重合体とポリスチレンとのブロック共重合体を水添して得られる、例えば、結晶性ポリエチレンとポリスチレンとのジブロック共重合体などが例示される。なお、これらのスチレン系熱可塑性エラストマー中のスチレンブロックの含有量は、10〜70質量%であることが好ましく、さらには20〜40質量%の範囲が好ましい。
【0016】
これらの中では、特に制限されるものではないが、機械的強度、耐熱安定性、耐候性、耐薬品性、柔軟性、加工性などの点から、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、及びスチレン−エチレン/プロピレン−ブロック共重合体(SEPS)が好ましく用いられる。
【0017】
このスチレン系熱可塑性エラストマーの硬度は、特に制限されるものではないが、JIS−A規格で80度以下が好ましい。硬度が80度以下であると、ディスクストッパーととしての良好な柔軟性が得られる。以上の点から、硬度がJIS−A規格で70度以下がさらに好ましく、60度以下が特に好ましい。なお、硬度の下限は、JIS−A規格で4度以上とすることが好ましい。
【0018】
また、上記スチレン系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量については特に制限はないが、ディスクストッパーとしての機械的特性や成形性などの面から、40,000〜120,000の範囲であることが好ましく、さらには60,000〜100,000の範囲が好ましい。
【0019】
また、上記スチレン系熱可塑性エラストマー層2は、上記スチレン系熱可塑性エラストマーを含む組成物(以下「エラストマー組成物」と称することがある。)で形成することもできる。
【0020】
このエラストマー組成物中の上記スチレン系熱可塑性エラストマー以外の成分としては、種々のものを配合することができるが、該エラストマー組成物の加工性、耐熱性等の向上を図る点から、ポリオレフィン樹脂やポリスチレン樹脂などの樹脂成分を配合することができる。
【0021】
上記エラストマー組成物中に配合されるポリオレフィン樹脂としては特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、プロピレンと他の少量のα−オレフィンとの共重合体(例えば、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン/4−メチル−1−ペンテン共重合体)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリブテン−1などを挙げることができる。ポリオレフィン樹脂としてアイソタクティックポリプロピレン又はその共重合体を用いる場合、そのMFR(JIS K7210)が0.1〜50g/10分、特に0.5〜30g/10分の範囲のものが好適に使用できる。なお、エラストマー組成物中に含まれる熱可塑性エラストマーは、一種単独で、また二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
次に、上記エラストマー組成物中に配合されるポリスチレン樹脂としては、従来公知の製造方法で得られたもの、例えば、ラジカル重合法、イオン重合法のいずれで得られたものも好適に使用できる。ここで、使用するポリスチレン樹脂の数平均分子量は、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜200,000の範囲から選択でき、分子量分布は5以下のものが好ましい。
【0023】
ポリスチレン樹脂として具体的には、例えば、ポリスチレン、スチレン単位含有量60質量%以上のスチレン−ブタジエンブロック共重合体、ゴム補強ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン、ポリp−t−ブチルスチレンなどが挙げられ、これらの一種または二種以上を併用してもよい。更に、これらポリマーを構成するモノマーの混合物を重合して得られる共重合体も用いることができる。
【0024】
また、上記エラストマー組成物には、上記ポリオレフィン樹脂とポリスチレン樹脂とを併用して配合することもできる。この場合、ポリオレフィン樹脂単独を添加する場合に比較してポリスチレン樹脂を併用すると、得られる成形体の硬度が高くなる傾向にある。従って、これらの配合比率を選択することにより、スチレン系熱可塑性エラストマー層2の硬度を調整することもできる。なお、ポリオレフィン樹脂/ポリスチレン樹脂の配合比率は95/5〜5/95(質量比)の範囲から選択することが好ましい。
【0025】
エラストマー組成物中の上記樹脂成分の配合量は、上記スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、特にポリオレフィン樹脂の場合には0.1〜50質量部がより好ましい。なお、樹脂成分の配合量が100質量部を超えると、スチレン系熱可塑性エラストマー層2の硬度が高くなりすぎる場合がある。
【0026】
上記エラストマー組成物中には、さらに軟化剤を添加することができる。軟化剤としては、通常、室温で液体又は液状のものが好適に用いられる。このような性状を有する軟化剤としては、例えば、鉱物油系,合成系などの各種ゴム用又は樹脂用軟化剤の中から適宜選択することができる。
【0027】
鉱物油系の軟化剤としては、ナフテン系、パラフィン系などのプロセス油が挙げられ、特に、非芳香族系オイル、特に鉱物油系のパラフィン系オイル、ナフテン系オイル又は合成系のポリイソブチレン系オイルから選択される1種又は2種以上であって、その数平均分子量が450〜5,000であるものが好ましく用いられる。なお、これらの軟化剤は一種を単独で用いてもよく、互いの相溶性が良好であれば二種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
軟化剤の配合量は、特に制限はないが、熱可塑性エラストマー100質量部に対し、通常1〜1,000質量部、好ましくは1〜500質量部とすることができる。配合量が、1質量部未満であると効果的に低硬度化することができない場合があり、一方1,000質量部を超えるとであると軟化剤のブリードが発生したり、十分な機械的強度が得られなくなる場合がある。なお、この軟化剤の配合量は、スチレン系熱可塑性エラストマーの分子量及び該スチレン系熱可塑性エラストマーに添加される他の成分の種類に応じて、上記範囲で適宜選定することができる。
【0029】
また、上記エラストマー組成物には、スチレン系熱可塑性エラストマー層2の圧縮永久歪みを改善するなどの目的で、所望によりポリフェニレンエーテル樹脂を配合することができる。ポリフェニレンエーテル樹脂としては、公知のものを用いることができ、具体的には、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)などが例示され、また2,6−ジメチルフェノールと1価のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)との共重合体の如きポリフェニレンエーテル共重合体も用いることができる。
【0030】
これらのなかでは、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)や2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、更に、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が好まし用いられる。
【0031】
ポリフェニレンエーテル樹脂の配合量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して10〜250質量部の範囲で好適に選択することができる。配合量が250質量部を超えると、スチレン系熱可塑性エラストマー層2の硬度が高くなりすぎる場合があり、10質量部未満であると十分な圧縮永久歪みの改善効果が得られない場合がある。
【0032】
また、上記エラストマー組成物には、クレー、珪藻土、シリカ、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、金属酸化物、マイカ、グラファイト、水酸化アルミニウムなどのりん片状無機系添加剤、各種の金属粉、ガラス粉、セラミックス粉、粒状あるいは粉末ポリマー等の粒状あるいは粉末状固体充填剤、各種の天然または人工の短繊維、長繊維(各種のポリマーファイバー等)、中空フィラー、例えば、ガラスバルーン、シリカバルーンなどの無機中空フィラー、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン共重合体などからなる有機中空フィラーなどを配合することもできる。
【0033】
更に、このエラストマー組成物には、他の添加剤として、難燃剤、抗菌剤、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、シリコーンオイル、シリコーンポリマー、クマロン樹脂、クマロン−インデン樹脂、フェノールテルペン樹脂、石油系炭化水素、ロジン誘導体などの各種粘着付与剤(タッキファイヤー)、レオストマーB(商品名:リケンテクノス(株)製)などの各種接着性エラストマー、ハイブラー(商品名:(株)クラレ製、ビニル−ポリイソプレンブロックの両末端にポリスチレンブロックが連結したブロック共重合体)、ノーレックス(商品名:日本ゼオン(株)製、ノルボルネンを開環重合して得られるポリノルボルネン)などの他の熱可塑性エラストマー又は樹脂などを、必要に応じて併用することができる。
【0034】
本発明では、上記オレフィン系熱可塑性エラストマーとスチレン系熱可塑性エラストマー又はスチレン系熱可塑性エラストマーを含む上記エラストマー組成物とを共押出し成形して、オレフィン系熱可塑性エラストマー層1とスチレン系熱可塑性エラストマー層2からなる二層構造の積層シート3を成形する。この場合、共押出しの方法は公知の方法を採用することができ、例えば通常の押出し機を2台用意して、それぞれオレフィン系熱可塑性エラストマー1及びスチレン系熱可塑性エラストマー2をフィルム状に押出すと同時に両フィルムを積層一体化させる方法を採用することができる。この場合、ダイ温度、バレル温度、引取速度、樹脂圧等の押出成形条件は、選択した材料やシートの大きさ等に応じて通常の条件とすればよい。
【0035】
本発明では、上記オレフィン系熱可塑性エラストマー1とスチレン系熱可塑性エラストマー層2とからなる積層シート3を成形するが、これら両層1,2の厚さに制限はなく、ディスクストッパーとして用いる際のターンテーブルやドライブの構造などに応じて適宜設定されるが、通常オレフィン系熱可塑性エラストマー層1の厚さは10〜1,000μm、特に50〜500μm、スチレン系熱可塑性エラストマー層2の厚さは10〜1,000μm、特に50〜500μmとされる。また、積層シート3の厚さは、10〜1,000μm、50〜500μmとすることができる。
【0036】
次に、上記粘着層4は、適宜な粘着剤を上記積層シート3のオレフィン系熱可塑性エラストマー層1側の面に、シリコーン系粘着剤などの適宜な粘着剤を塗布して形成することもできるが、公知の両面粘着テープを貼着して粘着層4とすることが好ましい。この両面粘着テープとしては、市販のテープを使用することができ、具体的には、(株)寺岡製作所「No.773」、「No.777」、「No.7783」;住友スリーエム(株)「Y4914」、「Y4920」;日東電工(株)「TW−Y01」、「No.5000N(C)」、「No.5000NS」、「No.5015」;ソニーケミカル&インフォメーションデバイス(株)「G4000」、「G9000」、「G9900」;(株)スリオンテック「5686」;積水化学工業(株)「575」、「5754」、「5760LS(E)」、「5782LSV」;テサテープ(株)「5197」;DIC(株)「8810TD」、「8408TD」などを例示することができる。
【0037】
本発明のディスクストッパーは、通常CD、DVD、BDなどの光学記録ディスクを回転させるターンテーブルに貼り付けて用いられる。ターンテーブルの形状やドライブ機構などに応じた適宜な形状に切断して用いることができ、例えばターンテーブルに合わせた適宜な大きさのリング状に打ち抜いて用いることができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例,比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0039】
[実施例1]
スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)[(株)クラレ製「SEPS 4099」]と100質量部、プロセスオイル[出光興産(株)製「ダイナプロセスオイル PW380」]50質量部、アイソタクティックポリプロピレン[(株)プライムポリマー製「プライムポリプロ F113G」]10質量部を含有するエラストマー組成物と、(株)プライムポリマー製のポリプロピレン(PP);商品名「プライムポリプロ F−704NP」とを、下記装置を用い下記条件で共押出し成形して、図1と同様に、スチレン系熱可塑性エラストマー層2(厚さ100μm)とオレフィン系熱可塑性エラストマー(PP)層1(厚さ400μm)とが積層一体化した積層シートを得た。
【0040】
[使用装置]
・Tダイ:ダイス幅300mm、リップ幅0.20mm
・押出し機(単軸を2台):
コア側(スチレン系熱可塑性エラストマー層)口径φ30mm、L/D=38、フルフライトスクリュー
スキン層側(オレフィン系熱可塑性エラストマー層)口径φ25mm、L/D=25、フルフライトスクリュー
[成形条件]
・引取速度:0.8m/min
・引取りロール温度:100℃
・樹脂圧:12MPa
・温度条件:コア層(エアー層側)ダイ温度200℃、バレル温度(ダイ側 200℃、180℃、120℃、60℃ ホッパー側)、
スキン層(ロール層側)ダイ温度200℃、バレル温度(ダイ側 200℃、200℃、190℃ ホッパー側)
【0041】
得られた積層シートにつき、下記方法に従って180°ピーリング試験を行ったところ、スチレン系熱可塑性エラストマー層2側の材料破壊となり、スチレン系熱可塑性エラストマー層2とオレフィン系熱可塑性エラストマー(PP)層1とが強固に融着一体化していることが確認された。
【0042】
[ピーリング試験]
図2に示したように、ステンレススチール板(SUS板)にシアノアクリレート系の瞬間接着剤でスチレン系熱可塑性エラストマー層2側を接着して貼り付け、オレフィン系熱可塑性エラストマー(PP)層1を引き剥がす方向に180°折り曲げて引張って、引き剥がし速度30mm/minでオレフィン系熱可塑性エラストマー(PP)層1を引き剥がし、剥離面を観察した。なお、試験温度は23℃とした。
【0043】
次に、この積層シート3のオレフィン系熱可塑性エラストマー(PP)層1側の面にソニーケミカル&インフォメーションデバイス(株)製の両面粘着テープ「G9900」を貼り付けて粘着層4を形成し、ディスクストッパーとした。粘着層4の両面粘着テープは強固に積層シート3と接着した。
【0044】
[実施例2]
ポリプロピレン(PP)として、上記「プライムポリプロF−704NP」に代えて日本ポリプロ(株)製の商品名「ノバテックFY4」を用いたこと以外は実施例1と同様にして図1と同様の積層シート3を作成した。
【0045】
得られた積層シートにつき、実施例1と同様にピーリング試験を行ったところ、スチレン系熱可塑性エラストマー層2側の材料破壊となり、スチレン系熱可塑性エラストマー層2とオレフィン系熱可塑性エラストマー(PP)層1とが強固に融着一体化していることが確認された。
【0046】
次に、この積層シート3のオレフィン系熱可塑性エラストマー(PP)層1側の面に実施例1と同様の両面粘着テープを貼り付けて粘着層4を形成し、ディスクストッパーとした。粘着層4の両面粘着テープは強固に積層シート3と接着した。
【0047】
[比較例]
実施例1で用いたものと同様のエラストマー組成物をポリプロピレンフィルム(厚さ100μm)上に下記条件で押出成形して厚さ200μmのスチレン系熱可塑性エラストマー層を形成し、ポリプロピレンフィルム上にスチレン系熱可塑性エラストマー層がラミネートされた積層シートを得た。
【0048】
得られた積層シートにつき、実施例1と同様にピーリング試験を行ったところ、スチレン系熱可塑性エラストマー層とポリプロピレンフィルムとの間で界面剥離となり、スチレン系熱可塑性エラストマー層とポリプロピレンフィルム(オレフィン系熱可塑性エラストマー層)との接着強度が不十分であることが認められた。
【符号の説明】
【0049】
1 オレフィン系熱可塑性エラストマー層
2 スチレン系熱可塑性エラストマー層
3 積層シート
4 粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高静摩擦性シートと粘着層とを積層してなり、ターンテーブルに貼り付けてターンテーブル上に配置されたディスクのズレを防止するディスクストッパーの製造方法であって、
オレフィン系熱可塑性エラストマーと、スチレン系熱可塑性エラストマー又はスチレン系熱可塑性エラストマーを含む組成物とを共押出し成形して、オレフィン系熱可塑性エラストマー層とスチレン系熱可塑性エラストマー層との積層シートを形成し、該積層シートの上記オレフィン系熱可塑性エラストマー層面に更に粘着層を積層形成することを特徴とするディスクストッパーの製造方法。
【請求項2】
上記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)から選ばれたものである請求項1記載のディスクストッパーの製造方法。
【請求項3】
上記スチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−ブロック共重合体(SEPS)、ポリブタジエンとブタジエン−スチレンランダム共重合体とのブロック共重合体を水添して得られる結晶性ポリエチレンとエチレン/ブチレン−スチレンランダム共重合体とのブロック共重合体、ポリブタジエン又はエチレン−ブタジエンランダム共重合体とポリスチレンとのブロック共重合体を水添して得られる結晶性ポリエチレンとポリスチレンとのジブロック共重合体から選ばれたものである請求項1又は2記載のディスクストッパーの製造方法。
【請求項4】
上記スチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−ブロック共重合体(SEPS)から選ばれたものである請求項3記載のディスクストッパーの製造方法。
【請求項5】
上記スチレン系熱可塑性エラストマー中のスチレンブロックの含有量が10〜70質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載のディスクストッパーの製造方法。
【請求項6】
上記積層シートを構成するスチレン系熱可塑性エラストマー層が、スチレン系熱可塑性エラストマーとポリオレフィン樹脂又はポリスチレン樹脂とを含有するエラストマー組成物で形成されたものである請求項1〜5のいずれか1項に記載のディスクストッパーの製造方法。
【請求項7】
上記エラストマー組成物が、スチレン系熱可塑性エラストマーと、ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、プロピレンと他の少量のα−オレフィンとの共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリブテン−1、ポリスチレンから選ばれた1種又は2種以上の樹脂とを含有するものである請求項6記載のディスクストッパーの製造方法。
【請求項8】
ポリプロピレン(PP)と、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)及びアイソタクティックポリプロピレンを含む組成物とを共押出し成形して上記積層シートを形成する請求項7記載のディスクストッパーの製造方法。
【請求項9】
上記粘着層がアクリル系両面粘着テープである請求項1〜8のいずれか1項に記載のディスクストッパーの製造方法。
【請求項10】
上記粘着層を形成した後、所定形状に打ち抜いてディスクストッパーとする請求項1〜9のいずれか1項に記載のディスクストッパーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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