説明

ディスクドライブ装置およびこれを用いた映像音響機器

【課題】 トレイの動作が安定しており、開口と蓋部材およびトレイとの間に隙間を有していても、駆動回路から漏れてくる回転騒音が小さいディスクドライブ装置およびこれを用いた映像音響機器を提供する。
【解決手段】 筐体がパネル部材の背面側に、トレイが通過する背面側開口を有して開口を覆うカバー部材と、パネル部材およびカバー部材を連結するスライド軸と、パネル部材の背面側にトレイが通過する内部開口とカバー部材に収容される外端縁部とを有して移動可能にスライド軸に軸支されるホルダー部材と、カバー部材とホルダー部材との間で弾性力を発揮する弾性部材と、ホルダー部材の内部開口の周囲に設けられてトレイの収容時に蓋部材とホルダー部材との間に狭持される第1シール部材と、ホルダー部材の外端縁部に設けられてトレイの収容時にカバー部材とホルダー部材との間に狭持される第2シール部材と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク等をローディング動作するトレイを備えるディスクドライブ装置であって、パネル部材に開口を有する筐体と、開口を閉鎖する蓋部材と、蓋部材に連結してローディング動作するトレイと、を備えるディスクドライブ装置およびこれを用いた映像音響機器に関する。
【背景技術】
【0002】
DVDプレーヤー等の映像音響機器を構成するディスクドライブ装置は、筐体を構成するパネル部材に開口を有し、この開口から光ディスク等をローディング動作するトレイをイジェクト動作/ローディング動作させて、光ディスクを駆動装置に記録・再生させる処理を行うものがある。ディスクドライブ装置では、トレイが移動する、ないし、突出停止するローディング動作時には、トレイが開口から突出する。一方、トレイの収容時には、開口からゴミ又は塵が筐体の内部に入らないようにする目的で、開口を閉鎖するようにトレイと連結する蓋部材を設け、あるいは、開口と蓋部材(又はトレイ)との隙間を塞ぐ防塵部材を設ける場合がある。
【0003】
筐体の内部に配置される駆動回路がディスクを高速で回転させる場合には、風切音を含む騒音を生じるので、トレイの収容時に開口と蓋部材もしくはトレイとの間に隙間ができると、この回転騒音が開口と蓋部材との隙間から漏れてきて、映像音響機器の使用者にとって耳障りになるという問題がある。ディスクドライブ装置のディスク回転数は、記録再生情報のビットレートが高くなると上昇するので、回転騒音も大きくなりやすい。開口と蓋部材(又はトレイ)との隙間が大きくなれば、漏れてくる回転騒音も大きくなる。そこで、開口と蓋部材との隙間を塞ぐように、弾性を有する部材からなる防塵部材を設けると、回転騒音の防止にも有効であり、様々な方法が提案されている。
【0004】
例えば、従来のディスクドライブ装置には、トレイフロントパネルの後面にスライドコアによりアンダーカット加工された複数の中空部を成形することにより、トレイフロントパネルをトレイ本体の前面にワンタッチで垂直状に組み付けることができるようにし、トレイフロントパネルの後面に一体成形したほぼコ字状のトレイ引き込み位置規制用リブによってディスクトレイのローディング完了状態での高精度の位置決めを行い、トレイフロントパネルの後面の下端縁に沿って接着した弾性部材でトレイ出入口の密封性を確保するものがある(特許文献1)。
【0005】
また、従来には、テレビジョン受像機や音響機器などと組み合わせたディスク再生装置のトレイ構造において、トレイの正面にはトレイパネルを取付けると共に該トレイパネルをトレイ正面側へ弾性力を付勢することが出来る弾性体を設け、そしてトレイパネルの背面両側には凹部を設け、一方トレイがスライドする為に通過するフロントパネルに設けた開口の底に平坦面を設けると共に開口両側には凸部を形成し、トレイが後退して収納された場合にトレイパネルの外周背面は平坦面に接し、上記凹部と凸部が互いに係合するディスク再生装置のトレイ構造がある(特許文献2)。
【0006】
また、従来には、筐体に開口を形成し、当該開口の周辺が段差状をなすステップ部が形成されてなるトレイ口と、該トレイ口からエジェクト/ローディング自在に設けられたトレイと、両側端に挿通部が設けられた内蓋と、該挿通部に挿通する係合部が設けられた外蓋とを備えて、前記トレイと共にローディングされることにより前記ステップ部に当接して前記トレイ口を閉塞する閉塞手段と、前記外蓋を内蓋方向に付勢する付勢部材と、前記内蓋の挿通部から挿出した前記係合部に係合して、前記外蓋と内蓋とを弾性連結し、かつ、前記付勢部材により前記外蓋を前記内蓋の方向に付勢させるストッパ部材と、を備えて、前記閉塞手段が前記トレイ口に当接して停止した後も前記トレイが継続してローディングされ、その際に生じる該閉塞手段とトレイとの相対距離の変化に応じた力で前記閉塞手段を前記トレイ口に当接させるように付勢して前記トレイの停止位置のバラツキを吸収しながら前記トレイ口の閉塞状態を保持する閉塞保持手段とを有する情報記録再生装置がある(特許文献3)。
【0007】
【特許文献1】特開2003−30915号公報 (第1図)
【特許文献2】特許第3803789号公報 (第1図〜第7図)
【特許文献2】特許第3017453号公報 (第1図〜第9図)
【0008】
しかしながら、ローディング動作するトレイを有するディスクドライブ装置では、開口と蓋部材との隙間を小さくするように設計されるが、隙間を小さく高精度にする場合にも機構設計上の限界がある。また、ローディング動作でトレイに連結して移動する蓋部材に、開口を隙間が無くなるように閉鎖する機構を直接取り付けると、蓋部材およびトレイが、隙間を付制する弾性体を介して取り付けられる部品を含んでしまうので、映像音響機器の使用者がトレイにディスクを載置しようとして蓋部材を手に持つと、グラグラ動いてトレイが不安定になるという問題がある。また、ディスクドライブ装置では、動作精度の高さをアピールするように、ローディング動作時に蓋部材およびトレイが、静かに動くのが好ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、光ディスク等をローディング動作するトレイを備えるディスクドライブ装置に関し、トレイの動作が安定しており、かつ、開口と蓋部材およびトレイとの間に隙間を有していても、駆動回路から漏れてくる回転騒音が小さいディスクドライブ装置およびこれを用いた映像音響機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のディスクドライブ装置は、パネル部材に開口を有する筐体と、開口を閉鎖する蓋部材と、蓋部材に連結してローディング動作するトレイと、を備えるディスクドライブ装置であって、筐体が、パネル部材の背面側に、トレイが通過する背面側開口を有して開口を覆うカバー部材と、パネル部材およびカバー部材を連結するスライド軸と、パネル部材の背面側にトレイが通過する内部開口とカバー部材に収容される外端縁部とを有して移動可能にスライド軸に軸支されるホルダー部材と、カバー部材とホルダー部材との間で弾性力を発揮する弾性部材と、ホルダー部材の内部開口の周囲に設けられてトレイの収容時に蓋部材とホルダー部材との間に狭持される第1シール部材と、ホルダー部材の外端縁部に設けられてトレイの収容時にカバー部材とホルダー部材との間に狭持される第2シール部材と、を備える。
【0011】
好ましくは、本発明のディスクドライブ装置は、トレイの移動時ないし突出停止時に、弾性部材の弾性力によりホルダー部材がパネル部材の側に移動し、ホルダー部材の内部開口の周囲に設けられる第1シール部材が、パネル部材の開口の背面側縁部とホルダー部材との間に狭持される。
【0012】
好ましくは、本発明のディスクドライブ装置は、弾性部材が、スライド軸がその中心を貫通するように配置されるバネ部材であり、バネ部材が、カバー部材とホルダー部材との間でこれらが離隔する方向に弾性力を発揮する。
【0013】
好ましくは、本発明のディスクドライブ装置は、蓋部材が、トレイの収容時にパネル部材の開口の内側に開口隙間を有して収容され、パネル部材と、蓋部材と、第1シール部材と、ホルダー部材と、カバー部材と、第2シール部材とが、パネル部材の背面側に開口隙間と連通する干渉空間を規定し、トレイの収容時に、干渉空間内の空気が、ディスクドライブ装置の駆動装置が配置される筐体の内部空間の空気と連通しないように遮断される。
【0014】
また、好ましくは、本発明の映像音響機器は、上記のいずれかのディスクドライブ装置を含む。
【0015】
以下、本発明の作用について説明する。
【0016】
本発明のディスクドライブ装置は、パネル部材に開口を有する筐体と、開口を閉鎖する蓋部材と、蓋部材に連結してローディング動作するトレイと、を備えるディスクドライブ装置である。蓋部材は、開口の大きさよりも若干小さくされているので、ローディング動作するトレイが、この開口に収容される時には、パネル部材の開口の内側に開口隙間が形成される。
【0017】
ディスクドライブ装置の筐体は、パネル部材の背面側に、トレイが通過する背面側開口を有して開口を覆うカバー部材と、パネル部材およびカバー部材を連結するスライド軸と、パネル部材の背面側にトレイが通過する内部開口とカバー部材に収容される外端縁部とを有して移動可能にスライド軸に軸支されるホルダー部材と、スライド軸が貫通するように配置されてカバー部材とホルダー部材との間でこれらが離隔する方向に弾性力を発揮する弾性部材と、を備える。弾性部材は、好ましくは、スライド軸がその中心を貫通するように配置されるバネ部材である。そして、ホルダー部材の内部開口の周囲には、トレイの収容時に蓋部材とホルダー部材との間に狭持される第1シール部材と、ホルダー部材の外端縁部にトレイの収容時にカバー部材とホルダー部材との間に狭持される第2シール部材と、が設けられる。
【0018】
バネ部材は、カバー部材とホルダー部材との間でこれらが離隔する方向に弾性力を発揮し、その結果、第1シール部材および第2シール部材は、パネル部材の背面側において、開口隙間を流通する空気を遮断する。トレイの収容時には、蓋部材が、パネル部材の開口の内側に開口隙間を有して収容され、パネル部材と、蓋部材と、第1シール部材と、ホルダー部材と、カバー部材と、第2シール部材とが、パネル部材の背面側に開口隙間と連通する干渉空間を規定する。すなわち、トレイの収容時には、干渉空間内の空気が、ディスクドライブ装置の駆動装置が配置される筐体の内部空間の空気と連通しないように遮断される。つまり、ディスクドライブ装置の筐体の外側が、騒音を発する駆動装置が配置される筐体の内部空間と、筐体の内部空間と連通しない干渉空間を間に挟んで分離される。
【0019】
したがって、本発明のディスクドライブ装置では、トレイの収容時に筐体の内部に配置される駆動回路がディスクを高速で回転させる場合にも、開口と蓋部材もしくはトレイとの間の開口隙間から漏れてくる風切音を含む騒音を少なくすることができる。その結果、本発明のディスクドライブ装置は、映像音響機器の使用者にとって静かで、快適な映像音響機器を実現することができる。従来と同程度の騒音が容認できる場合には、ディスクドライブ装置のディスク回転数をさらに上げて、記録再生情報のビットレートを高くすることができる。
【0020】
また、トレイの移動時ないし突出停止時には、本発明のディスクドライブ装置は、バネ部材の弾性力によりホルダー部材がパネル部材の側に移動し、ホルダー部材の内部開口の周囲に設けられる第1シール部材が、パネル部材の開口の背面側縁部とホルダー部材との間に狭持される。このように、本発明のディスクドライブ装置では、開口を隙間が無くなるように閉鎖する機構が、ローディング動作で移動するトレイおよび蓋部材に取り付けられているのではなく、ディスクドライブ装置の筐体に取り付けられている。したがって、映像音響機器の使用者がトレイにディスクを載置しようとして蓋部材を手に持つと、トレイが不安定に動くといった問題を生じない。また、ローディング動作時に蓋部材およびトレイが静かに動くので、本発明のディスクドライブ装置では、動作精度の高さをアピールすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のディスクドライブ装置およびこれを用いた映像音響機器は、トレイの動作が安定して動作精度の高さをアピールすることができ、また、開口と蓋部材およびトレイとの間に隙間を有していても、駆動回路から漏れてくる回転騒音を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明のディスクドライブ装置は、トレイの動作が安定しており、かつ、開口と蓋部材およびトレイとの間に隙間を有していても、駆動回路から漏れてくる回転騒音が小さいディスクドライブ装置を提供するという目的を、パネル部材に開口を有する筐体と、開口を閉鎖する蓋部材と、蓋部材に連結してローディング動作するトレイと、を備えるディスクドライブ装置であって、筐体が、パネル部材の背面側に、トレイが通過する背面側開口を有して開口を覆うカバー部材と、パネル部材およびカバー部材を連結するスライド軸と、パネル部材の背面側にトレイが通過する内部開口とカバー部材に収容される外端縁部とを有して移動可能にスライド軸に軸支されるホルダー部材と、スライド軸が貫通するように配置されてカバー部材とホルダー部材との間で弾性力を発揮するバネ部材と、ホルダー部材の内部開口の周囲に設けられてトレイの収容時に蓋部材とホルダー部材との間に狭持される第1シール部材と、ホルダー部材の外端縁部に設けられてトレイの収容時にカバー部材とホルダー部材との間に狭持される第2シール部材と、を備えるようにすることにより、実現した。
【0023】
以下、本発明の好ましい実施形態によるディスクドライブ装置およびこれを用いた映像音響機器について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるディスクドライブ装置1について説明する図である。具体的には、図1(a)は、ディスクドライブ装置1のローディング動作を説明する斜視図であり、図1(b)は、トレイを収容したディスクドライブ装置1の正面図である。例えば、ディスクドライブ装置1は、光ディスク8をローディング動作するトレイ6を備えるディスクドライブ装置であって、筐体2に取り付けられてDVDプレーヤー等の映像音響機器を構成する。
【0025】
ディスクドライブ装置1の筐体2は、フロントパネル3に矩形状の開口4を有し、この開口4を閉鎖する蓋部材5は、ローディング動作するトレイ6に連結している。ユーザーが、イジェクト動作/ローディング動作を制御するマイコンに指示を与える操作ボタン7を押すと、蓋部材5およびトレイ6が前後に移動する。ユーザーは、光ディスク8をトレイ6に載置して、ローディング動作させてトレイ6を収容すると、光ディスク8を(図示しない)駆動装置に記録・再生させる処理を行うことができる。
【0026】
蓋部材5は、樹脂で成形される部材、あるいは、アルミ押出で成形される部材であって、トレイ6に(図示しない)フック構造で固定されている。前面視される蓋部材5は、トレイ6の意匠を改善する飾りの部材であり、また、トレイ6の収容時に、フロントパネル3の開口4を閉鎖して、筐体2の内部にゴミ又は塵が入らないようにする部材である。図示するように、蓋部材5は、矩形状の開口4の大きさよりも一回り小さい矩形状であるので、トレイ6の収容時には、フロントパネル3の開口4の内側に開口隙間9を有して収容される。すなわち、開口隙間9は、フロントパネル3の開口4に収まった蓋部材5の周囲に約1.0mm〜約2.0mm程度の幅で設けられる空間であり、外観上では、できるだけ狭く、均等の幅(約1.5mm)を有するのが好ましい。
【0027】
図2は、本実施例のディスクドライブ装置1の動作を説明するA−A’断面図である。すなわち、図2(a)は、蓋部材5およびトレイ6が移動する、ないし、突出停止するローディング動作時の「Open」の状態を示す一部拡大の断面図であって、一方、図2(b)は、蓋部材5およびトレイ6が収容されて停止するローディング動作時の「Close」の状態を示す一部拡大の断面図である。なお、動作の説明に不要なディスクドライブ装置1の筐体2の詳細な構成については、図示並びに説明を省略する。
【0028】
ディスクドライブ装置1の筐体2は、フロントパネル3の背面側に、トレイ6が通過する背面側開口12を有して開口4を覆うカバー部材11と、フロントパネル3およびカバー部材11を連結するスライド軸13および14と、フロントパネル3背面側にトレイ6が通過する内部開口16とカバー部材11に収容される外端縁部17とを有して移動可能にスライド軸に軸支されるホルダー部材15と、を備える。なお、カバー部材11ならびにホルダー部材15と、スライド軸13および14とは、それぞれ樹脂で形成されている。
【0029】
カバー部材11は、背面側開口12を有する凹状の部材であって、フロントパネル3の背面側に固定されている。また、ホルダー部材15は、内部開口16と外端縁部17とを有する凹状の部材であって、フロントパネル3とカバー部材11との間に設けられる2つのスライド軸13および14によって軸支されているので、蓋部材5およびトレイ6が移動する前後方向に移動することができる。また、カバー部材11とホルダー部材15との間には、スライド軸13および14がホルダー部材15を貫通するように配置されて、カバー部材11およびホルダー部材15が相対的に離隔する方向に弾性力を発揮するバネ18および19が、設けられている。
【0030】
また、ホルダー部材15の内部開口16の周囲には、トレイ6の収容時に蓋部材5とホルダー部材15との間に狭持される第1シール部材21が設けられる。さらに、ホルダー部材15の外端縁部17には、トレイ6の収容時にカバー部材11とホルダー部材15との間に狭持される第2シール部材22が設けられる。第1シール部材21および第2シール部材22は、例えば、発泡した厚さ2〜3mmの発泡ネオプレンゴムを材料とするクッション材であって、ホルダー部材15の内部開口16ならびに外端縁部17のそれぞれ全周に渡って取り付けられている。また、バネ18および19は、カバー部材11とホルダー部材15との間でこれらが離隔する方向に弾性力を発揮する。なお、第1シール部材21および第2シール部材22は、発泡ネオプレンゴムを材料とする場合には、耐久性を向上させるために、その表面に樹脂フィルムを貼り付けるのが好ましい。
【0031】
図2(a)に示すように、蓋部材5およびトレイ6の移動時ないし突出停止時には、ホルダー部材15は、バネ18および19の弾性力によりフロントパネル3の側に移動し、その結果、ホルダー部材15の内部開口16の周囲に設けられる第1シール部材21が、フロントパネル3の開口4の背面側縁部とホルダー部材15との間に狭持される。
【0032】
一方、図2(b)に示すように、トレイ6の収容時には、第1シール部材21および第2シール部材22は、フロントパネル3の背面側において、開口隙間9を流通する空気を遮断する。すなわち、トレイ6の収容時には、蓋部材5が、フロントパネル3の開口4の内側に開口隙間9を有して収容され、フロントパネル3と、蓋部材5と、第1シール部材21と、ホルダー部材15と、カバー部材11と、第2シール部材22とが、フロントパネル3の背面側に開口隙間9と連通する干渉空間20を規定する。つまり、ディスクドライブ装置1の筐体2の外側のユーザーが居る空間と、騒音を発するディスクドライブの(図示しない)駆動装置が配置される筐体2の内部空間と、が、この干渉空間20を間に挟んで分離される。
【0033】
もちろん、本実施例のディスクドライブ装置1は、上記のような構成を採用するので、蓋部材5およびトレイ6の収容時に、フロントパネル3の開口4を閉鎖して、筐体2の内部にゴミ又は塵が入りにくくするようにできる。加えて、駆動回路が光ディスク8を高速で回転させる場合にも、開口4と蓋部材5もしくはトレイ6との間の開口隙間9から漏れてくる風切音を含む騒音を、可能な限り少なくすることができる。トレイ6の収容時には、干渉空間20内の空気が、ディスクドライブ装置1の駆動装置が配置される筐体2の内部空間の空気と連通しないように遮断されるからである。ディスクドライブ装置1は、映像音響機器のユーザーにとって静かになるので、従来と同程度の騒音が容認できる場合には、光ディスク8のディスク回転数をさらに上げて、記録再生情報のビットレートを高くすることができる。
【0034】
例えば、幅が約1.5mmの開口隙間9を有する本実施例のディスクドライブ装置1では、フロントパネル3の前方20cmの距離で、騒音計を用いて騒音レベルを測定したところ、CD再生時に約20.0dB(A)、DVD再生時に約20.2dB(A)、となり、騒音レベルが低く静かになる。一方、比較例として、蓋部材5がトレイ6に取り付けられている点のみが共通で、他のカバー部材11、ホルダー部材15、等を備えない場合の騒音レベルを測定すると、CD再生時に約30.2dB(A)、DVD再生時に約31.0dB(A)、となり、騒音レベルが高く非常にうるさくなる。
【0035】
また、本実施例のディスクドライブ装置1では、蓋部材5およびトレイ6の収容時に開口隙間9が実質的に無くなるように閉鎖する機構が、ローディング動作で移動する蓋部材5およびトレイ6に取り付けられているのではなく、ディスクドライブ装置1の筐体2を構成するフロントパネル3の背面側に取り付けられている。したがって、ユーザーがトレイ6に光ディスク8を載置しようとして蓋部材5を手に持っても、トレイ6が不安定に動くといった問題を生じず、また、ローディング動作時に蓋部材5およびトレイ6が静かに動いて、動作精度の高い映像音響機器を実現できる。
【0036】
なお、本発明は上記実施例に限定されない。ディスクドライブ装置1は、DVDプレーヤー等の映像音響機器に限られない。上記のディスクドライブ装置1では、カバー部材11とホルダー部材15との間で弾性力を発揮するバネ18および19を使用しているが、弾性力を有する板バネ、ゴム、エラストマー、等の他の弾性体であってもよい。スライド軸13および14は、ホルダー部材15がカバー部材11の内部で移動可能な構造であれば、溝とこれに係合するリブ等からなる他のスライド構造であってもよい。また、第1シール部材21および第2シール部材22は、発泡ネオプレンゴムに限らず、シリコンゴム、あるいは、フェルトであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のディスクドライブ装置は、映像音響機器のみならず、ローディング動作するトレイを有するパーソナルコンピューター等の電子計算機にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるディスクドライブ装置1について説明する図である。(実施例1)
【図2】本発明の好ましい実施形態によるディスクドライブ装置1の動作を説明する断面図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0039】
1 ディスクドライブ装置
2 筐体
3 フロントパネル
4 開口
5 蓋部材
6 トレイ
7 操作ボタン
8 光ディスク
9 開口隙間
11 カバー部材
12 背面側開口
13、14 スライド軸
15 カバー部材
16 内部開口
17 外端縁部
18、19 バネ
20 干渉空間
21 第1シール部材
22 第2シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル部材に開口を有する筐体と、該開口を閉鎖する蓋部材と、該蓋部材に連結してローディング動作するトレイと、を備えるディスクドライブ装置であって、
該筐体が、該パネル部材の背面側に、
該トレイが通過する背面側開口を有して該開口を覆うカバー部材と、
該パネル部材および該カバー部材を連結するスライド軸と、
該パネル部材の背面側に該トレイが通過する内部開口と該カバー部材に収容される外端縁部とを有して移動可能に該スライド軸に軸支されるホルダー部材と、
該カバー部材と該ホルダー部材との間で弾性力を発揮する弾性部材と、
該ホルダー部材の該内部開口の周囲に設けられて該トレイの収容時に該蓋部材と該ホルダー部材との間に狭持される第1シール部材と、
該ホルダー部材の該外端縁部に設けられて該トレイの収容時に該カバー部材と該ホルダー部材との間に狭持される第2シール部材と、
を備える、ディスクドライブ装置。
【請求項2】
前記トレイの移動時ないし突出停止時に、前記弾性部材の弾性力により前記ホルダー部材が前記パネル部材の側に移動し、前記ホルダー部材の前記内部開口の周囲に設けられる前記第1シール部材が、前記パネル部材の前記開口の背面側縁部と前記ホルダー部材との間に狭持される、
請求項1にディスクドライブ装置。
【請求項3】
前記弾性部材が、前記スライド軸がその中心を貫通するように配置されるバネ部材であり、該バネ部材が、前記カバー部材と前記ホルダー部材との間でこれらが離隔する方向に弾性力を発揮する、
請求項1または2に記載のディスクドライブ装置。
【請求項4】
前記蓋部材が、前記トレイの収容時に前記パネル部材の前記開口の内側に開口隙間を有して収容され、
該パネル部材と、該蓋部材と、前記第1シール部材と、前記ホルダー部材と、前記カバー部材と、前記第2シール部材とが、該パネル部材の背面側に該開口隙間と連通する干渉空間を規定し、
該トレイの収容時に、該干渉空間内の空気が、前記ディスクドライブ装置の駆動装置が配置される前記筐体の内部空間の空気と連通しないように遮断される、
請求項1から3のいずれかに記載のディスクドライブ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のディスクドライブ装置を含む、映像音響機器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−113785(P2010−113785A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287720(P2008−287720)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】