説明

ディスク・ドライブ

【課題】ヘッド・ディスク間放電を抑制する。
【解決手段】本発明の一実施形態において、アーム161の外周側領域615には、孔611a〜611cが形成されている。外周側領域は、これら孔611a〜611cの領域を含む。内周領域614には孔が形成されていない。最内周位置において、内周領域614と磁気ディスク単位面積当たりの容量は、外周側領域615と磁気ディスク101との間の単位面積当たりの容量よりも小さい。これにより、最内周位置から最外周位置までのアーム161と磁気ディスク101との間の容量変化を低減し、ヘッド・ディスク間放電を効果的に抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク・ドライブに関し、特に、ヘッド・スライダとディスクとの間の放電防止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク・ドライブ装置として、光ディスク、光磁気ディスク、あるいはフレキシブル磁気ディスクなどの様々な態様の記録ディスクを使用する装置が知られているが、その中で、ハードディスク・ドライブ(HDD)は、コンピュータの記憶装置として広く普及しているほか、動画像記録再生装置あるいはカーナビゲーション・システムなど、多くの電子機器で使用されている。
【0003】
HDDで使用される磁気ディスクは、複数のデータ・トラックと複数のサーボ・トラックとを有している。各データ・トラックには、ユーザ・データを含む一つもしくは複数のデータ・セクタが記録されている。各サーボ・トラックはアドレス情報を有する。サーボ・トラックは、円周方向において離間して配置された複数のサーボ・データによって構成されており、各サーボ・データの間に1もしくは複数のデータ・セクタが記録されている。ヘッド素子部がサーボ・データのアドレス情報に従って所望のデータ・セクタにアクセスすることによって、データ・セクタへのデータ書き込み及びデータ・セクタからのデータ読み出しを行うことができる。
【0004】
ヘッド素子部はスライダ上に形成されており、さらにそのスライダはアクチュエータのサスペンション上に固着されている。サスペンションとヘッド・スライダのアセンブリを、ヘッド・ジンバル・アセンブリ(HGA)と呼ぶ。また、アクチュエータとヘッド・スライダのアセンブリを、ヘッド・スタック・アセンブリ(HSA)と呼ぶ。
【0005】
磁気ディスクに対向するスライダ浮上面と回転している磁気ディスクとの間の空気の粘性による圧力が、サスペンションによって磁気ディスク方向に加えられる圧力とバランスすることによって、ヘッド・スライダは磁気ディスク上を浮上する。アクチュエータが回動軸を中心に回動することによって、ヘッド・スライダ(ヘッド素子部)を目的のトラックへ移動すると共に、そのトラック上に位置決めする。
【0006】
磁気ディスクはスピンドル・モータに固定されており、スピンドル・モータの回転により磁気ディスクが帯電する。磁気ディスクはスピンドル・モータを介してシステム・グランドに接続されているが、システム・グランドと磁気ディスクとの間の抵抗を小さくするには限度があり、磁気ディスクの電位を0Vにすることは困難である。特に、近年のスピンドル・モータは流体軸受構造を有している。流体軸受に使用されるオイルの導電率は低いため、磁気ディスクをシステム・グランドに接続することによる帯電除去はより難しいものとなっている。
【0007】
磁気ディスクが帯電していると、磁気ディスク上を飛行しているヘッド・スライダの表面に逆極性の電荷が誘起され、磁気ディスクとヘッド・スライダとの間に電位差が発生する。ヘッド・スライダと磁気ディスクとの間に大きな電位差が存在すると、磁気ディスクとヘッド・スライダとの間においてアーク放電が発生し、ヘッド素子部が破損する恐れがある。このため、たとえば、読み取り素子の駆動回路の基準電圧を磁気ディスク電位と同電位にする技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−250102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ヘッド・スライダを支持するアクチュエータは、回転する磁気ディスク上で回動することで、ヘッド・スライダを磁気ディスク上において、ディスク半径方向において移動させる。発明者らは、ヘッド・ディスク間放電の発生確率が、磁気ディスク上におけるヘッド・スライダ(アクチュエータ)の動作により変化することを見出した。具体的には、ヘッド・ディスク間放電は、ヘッド・スライダが磁気ディスク上で移動するとき、つまり、アクチュエータが磁気ディスク上で回動するときに発生しやすい。
【0010】
発明者らの検討によれば、これはアクチュエータの磁気ディスクに対する射影面積の変化に起因するものであることがわかった。図6Aと図6Bとは、それぞれ、異なるディスク半径位置にあるアクチュエータ61を示している。図6Aは、最内周位置にあるHSAを示し、図6Bは、アクチュエータ先端がランプ62に接しているアンロード直前の位置にあるアクチュエータ61を示している。図6A、6Bにおいて、磁気ディスク63とアクチュエータ61の重なり位置を明確にするため、磁気ディスク外周端を明示している。
【0011】
図6Aと図6Bとを比較して理解されるように、アクチュエータ61の磁気ディスク63への射影面積は、アクチュエータ61が外周側へ移動するほど小さくなる。このため、アクチュエータと磁気ディスクとの間の静電容量は、ディスク外周側に行くに従って小さくなる。図7は、従来のHDDにおける、磁気ディスクに対するアクチュエータ射影面積のディスク半径位置による変化とヘッド・ディスク間電圧のディスク半径位置による変化を示すグラフである。射影面積とヘッド・ディスク間電圧とは、共に、規格値である。図7に示すように、記録面上の最内周位置から最外周位置に移動するにつれて、射影面積が減少し、ヘッド・ディスク間電圧は増加している。
【0012】
静電容量の低下は、ヘッド・スライダと磁気ディスクとの間の電圧の増加を意味する。このように、外周側においてヘッド・ディスク間電圧が大きいことに加え、ヘッド・ディスク間電圧がディスク半径位置によって変化することが、ヘッド・ディスク間放電を引き起こす要因となっている。したがって、アクチュエータ(ヘッド・スライダ)の内周側と外周側との間での移動におけるヘッド・ディスク間放電の発生を効果的に抑制することができる技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様のディスク・ドライブは、データを格納するディスクと、前記ディスク上を浮上するヘッド・スライダと、前記ヘッド・スライダを支持し、回動軸において回動することで前記ヘッド・スライダを前記ディスクの半径方向において移動する、アクチュエータとを有する。前記アクチュエータは、前記ヘッド・スライダを支持するサスペンションと、前記サスペンションと前記回動軸との間にあって前記サスペンションを支持し、金属で形成されているアームとを有する。前記アームは、回転している前記ディスク上において前記ヘッド・スライダが浮上力で浮上している領域の最内周位置において前記ディスクと対向し、前記領域の最外周位置にあるときに前記ディスクの外側にある、外周側領域と、前記外周側領域の内周側であって、前記最内周位置から前記最外周位置の間において前記ディスクと対向する内周側領域とを有する。前記最内周位置における前記外周側領域と前記ディスクとの間の単位面積当たりの静電容量は、前記最内周位置における前記内周側領域と前記ディスクとの間の単位面積当たりの静電容量よりも小さい。この構成により、ヘッド・スライダとディスクとの間の放電の発生を抑制することができる。
【0014】
好ましい構成において、前記内周領域において、前記アームの前記ディスクに対向する面に誘電体シートが付着している。これにより、アーム形状に大きな変更を加えることなくアームの静電容量の調整を行うことができる。
前記誘電体シートは前記内周領域のみに付着していることが好ましい。これにより、効率的にアームの静電容量の調整を行うことができる。
【0015】
前記誘電体シートは9以上の比誘電率の材料で形成されていることが好ましい。これにより、誘電体シートの面積を小さくすることでダイナミクスへの影響を低減しつつ、アーム内周側領域の所望の静電容量を得ることができる。
【0016】
好ましい構成において、前記外周領域内に孔が形成されている。これにより、アーム外周側領域の単位面積当たりの静電容量を効果的に小さくすることができる。
さらに好ましい構成において、前記外周領域内に複数の孔が形成されている。これにより、アーム強度の低下を小さくすることができる。
【0017】
好ましい構成において、前記最内周位置から前記最外周位置への移動における前記外周側領域の静電容量の減少量は、前記最内周位置における前記内周側領域と前記外周側領域とを合わせた領域と前記ディスクとの間の静電容量の5%以下である。これにより、より効果的にヘッド・ディスク間放電を防止することができる。
【0018】
好ましい構成において、前記ディスクと対向し、前記ディスクの回転による気流を抑制するプレートをさらに有し、前記プレートは、金属部と、その金属部の前記ディスクに対向する面に形成されている誘電体部とを有する。これにより、ヘッド・ディスク間電圧の半径位置による変化を低減し、アクチュエータ・デザインにおいて要求される静電容量変化の低減量を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ヘッド・スライダとディスクとの間の放電の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態において、筐体のカバーを外したHDDの内部構造を示す平面図である。
【図2A】本実施形態において、アームに孔を有するアクチュエータが、磁気ディスク上における最内周位置に位置する状態を模式的に示す図である。
【図2B】本実施形態において、アームに孔を有するアクチュエータが、磁気ディスク上における最外周位置に位置する状態を模式的に示す図である。
【図3A】本実施形態において、アームに誘電体シートが付着したアクチュエータが、磁気ディスク上における最内周位置に位置する状態を模式的に示す図である。
【図3B】本実施形態において、アームに誘電体シートが付着したアクチュエータが、磁気ディスク上における最外周位置に位置する状態を模式的に示す図である。
【図4A】本実施形態において、アームに孔を有し、さらに、アームに付着した誘電体シートを有するアクチュエータが、磁気ディスク上における最内周位置に位置する状態を模式的に示す図である。
【図4B】本実施形態において、アームに孔を有し、さらに、アームに付着した誘電体シートを有するアクチュエータが、磁気ディスク上における最外周位置に位置する状態を模式的に示す図である。
【図5】本実施形態において、エア・スポイラの構造を模式的に示す断面図である。
【図6A】従来構造のHDDにおいて、内周側の半径位置にあるアクチュエータを模式的に示す図である。
【図6B】従来構造のHDDにおいて、外周側の半径位置にあるアクチュエータを模式的に示す図である。
【図7】従来のHDDにおける、磁気ディスクに対するアクチュエータ射影面積のディスク半径位置による変化とヘッド・ディスク間電圧のディスク半径位置よる変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略及び簡略化がなされている。又、各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略されている。本実施形態においては、ディスク・ドライブの一例として、ハードディスク・ドライブ(HDD)について説明する。
【0022】
本実施形態のHDDは、アクチュエータのデザインに特徴を有している。本形態のアクチュエータは、ディスク上の半径位置によるアームと磁気ディスクとの間に形成される静電容量変化が小さいように設計されている。これにより、ヘッド・スライダと磁気ディスクとの間の電圧変化を抑制し、ヘッド素子部の破損の原因となるヘッド・ディスク間放電の確率を低減する。
【0023】
図1は、本実施の形態に係るハードディスク・ドライブ(HDD)100の概略構成を示す図である。図1は、アクチュエータが磁気ディスク上にあるHDD100の状態を示している。図1においては、アクチュエータと磁気ディスクとの重なり位置を明確にするため、アクチュエータの下にある磁気ディスク外周端を明示している。この点は、以下に説明する他の図面において同様である。
【0024】
図1において、ベース102は、ガスケット(不図示)を介してベース102の上部開口を塞ぐカバー(不図示)を固定することによってディスク・エンクロージャを構成し、HDD100の構成要素を収容する。以下の説明においては、ベース側を下側、トップカバー側を上側と呼ぶ。HDD100は、データを格納するディスクである磁気ディスク101を有している。HDD100は、一枚もしくは複数枚の磁気ディスクを有し、図1はトップの磁気ディスク101を示している。
【0025】
クランプ103は、磁気ディスク101をスピンドル・モータ(SPM)104に固定する。SPM104はベース102の底面に固定されており、磁気ディスク101を所定の角速度で回転する。図1において、磁気ディスク101は反時計回りに回転する。HDD100の非動作時には、SPM104は静止している。磁気ディスクの記録領域にアクセス(リードもしくはライト)するヘッド・スライダ105は、スライダと、スライダ上に形成されているヘッド素子部とを有している。ヘッド素子部は、一般に、リード素子とライト素子とを有する。本発明は、リード素子とライト素子のいずれか一方のみを有するHDDに適用可能である。
【0026】
アクチュエータ106は、ヘッド・スライダ105を支持し、回動軸107を中心に回動することで、ヘッド・スライダ105をディスク半径方向において移動する移動機構である。アクチュエータ106はVCM(ボイス・コイル・モータ)109に結合し、VCM109の駆動力がアクチュエータ106を回動させる。VCM109はマグネットとコイルを有し、コイルはアクチュエータ106に固定されている。回動軸107を挟んでVCM109の反対に、アクチュエータ106はアーム161を有している。さらに、アーム161の先に、サスペンションン162を有する。サスペンション162と回動軸107との間にアーム161が存在している。
【0027】
アクチュエータ109は、典型的には、複数のアーム及びサスペンションを有する。図1は、トップのアーム161とトップのサスペンション162を示している。記録面に一つのサスペンションが対応し、各サスペンションはその記録面にアクセスするヘッド・スライダを支持する。トップ及びボトムのアームは、トップの磁気ディスク101とボトムの磁気ディスクに対応するサスペンションを支持し、磁気ディスク間のアームは、その両面においてサスペンションを支持する。
【0028】
アーム161は金属で形成されており、典型的には、アルミニウム合金あるいはステンレス鋼によって形成されている。他のアームも同様である。アーム161の磁気ディスク101と対向する側の表面上に、サスペンション162を固定する。同様に、サスペンション162も金属で形成されており、典型的には、ステンレス鋼によって形成されている。一般に、サスペンション162は、ロード・ビームやジンバルといった複数部品で構成されている。本発明が適用可能なHDDにおいて、サスペンションの構造は特に限定されない。
【0029】
HDD100は、磁気ディスク外周端近傍に、ランプ115を有している。図1は模式図であり、ランプ115が磁気ディスク外周端から離間しているが、典型的なランプ115は、その一部が磁気ディスクの外周端及びその近傍領域と重なっている。パワー・セーブ・モードあるいは電源OFF時、アクチュータ106はランプ115上で待機している。
【0030】
アクチュエータ106が待機位置にあるとき、ヘッド・スライダ105は磁気ディスク101上にはなく、その外側にある。一般に、サスペンション162は、ランプ115上を摺動するタブを有している。図1においては、このタブを省略している。アクチュエータ106がランプ115上にあるとき、タブがランプ115により支持されている。アクチュエータ106の回動により、タブがランプ115の面上を摺動する。
【0031】
アクチュエータ106は、回動軸107を中心として回動し、磁気ディスク101の記録面上でヘッド・スライダ105を移動し、さらに、磁気ディスク101の記録面とランプ115との間を移動する。アクチュエータ106が回動することによって、ヘッド・スライダ105が磁気ディスク101の記録面の半径方向に沿って移動し、ヘッド・スライダ105が所望のトラックにアクセスすることができる。磁気ディスク101に対向するスライダの浮上面と回転している磁気ディスク101との間の空気の粘性による圧力が、サスペンション162によって磁気ディスク101方向に加えられる圧力とバランスすることによって、ヘッド・スライダ105は磁気ディスク101上を浮上する。
【0032】
図2Aは、アクチュエータ106が磁気ディスク101上の最内周位置にある状態を示している。最内周位置は、アクチュエータ106が機構的に位置することができる最内周の位置であり、典型的には、アクチュエータ106は内周クラッシュ・ストップに当接している。最内周位置において、ヘッド・スライダ105は、その浮上力により磁気ディスク101上を浮上している。したがって、図2Aは、ヘッド・スライダ105がその浮上力で浮上する領域における最内周位置である。
【0033】
アクチュエータ106が外周側に回動すると、アクチュエータ106(のタブ)がランプ115に接触し、さらに、アクチュエータ106がランプ115上を外周側に移動する。図2Bは、外側に回動するアクチュエータ106がランプ115に接触したときの状態を示している。この後、アクチュエータ106はランプ115上に乗り上げ、さらに、その上を外周側に移動する。アクチュエータ106がランプ115にのるとき、アクチュエータに106はヘッド・スライダ105を引き上げる。したがって、図2Bに示すアクチュエータ106は、ヘッド・スライダがその浮上力により磁気ディスク101上を浮上する領域の最外周位置にある。
【0034】
図2A及び図2Bを比較して理解されるように、アクチュエータ106が最外周位置にあるとき、アーム161の一部が磁気ディスク101の外側にある。アーム161の磁気ディスク101への投影面積の変化により、アーム161と磁気ディスク101との間の静電容量が変化する。これにより、ヘッド・スライダ105と磁気ディスク101との間の電圧(ヘッド・ディスク間電圧)が大きく変化する。投影面積の低下は、ヘッド・ディスク間電圧の増加となり、ヘッド・ディスク間放電によるヘッド素子部の破損の可能性が高くなる。
【0035】
図2A、図2Bに示す好ましい構成において、アーム161は、その外周側領域に孔を有している。図2A、図2Bの例において、アーム161は、三つの孔611a〜611cを有している。このように、外周側の領域に孔を有することで、アクチュエータ位置によるアーム161と磁気ディスク101との間の静電容量変化を低減し、ヘッド・ディスク間放電の発生確率を小さくすることができる。
【0036】
図2A、図2Bに示すように、アーム161は、回動軸107とサスペンション162とを結ぶ方向において延びている内周側端612と外周側端613とを有している。図2A、図2Bに示すようにディスク法線方向(スライダ浮上方向)において見たとき、内周側端612は曲線状であり、外周側端613は直線状である。本発明において、内周側端612と外周側端613の形状は特に限定しない。
【0037】
一般に、外周側端613は、直線状である。サスペンション162は、回動軸107に向かって延出するテイル部(図3Aにおけるテイル部621を参照)を有しており、そのテイル部が直線状の外周側端613に固定される。テイル部上にはヘッド・スライダの105の信号伝送線がレイアウトされている。
【0038】
アーム161は、外周側端613と内周側端612との間において、内周側領域614と外周側領域615とを有している。内周側領域614は、アーム161の最内周位置と最外周位置との間におけるいずれの位置においても、磁気ディスク101と対向している領域である。つまり、ディスク法線方向において見て、内周側領域614と磁気ディスク101とは重なっている。外周側領域615は、最内周位置において磁気ディスク101にディスク法線方向において対向しており、最外周位置において磁気ディスク外周端211よりも外側にあって、磁気ディスク101と対向していない領域である。
【0039】
図2A、図2Bに示すように、外周側領域615には、孔611a〜611cが形成されている。外周側領域は、これら孔611a〜611cの領域を含む。内周領域614には孔が形成されていない。このため、最内周位置において、外周側領域615と磁気ディスク101との間の単位面積当たりの静電容量は、内周領域614と磁気ディスクとの間の単位面積当たりの静電容量よりも小さい。これにより、最内周位置から最外周位置までのアーム161と磁気ディスク101との間の静電容量変化を低減し、ヘッド・ディスク間放電を効果的に抑制することができる。
【0040】
好ましい構成において、最内周位置と最外周位置との間における外周側領域615の静電容量の変化量は、最内周位置における内周側領域614と外周側領域615の静電容量全体の5%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。最内周位置から最外周位置までの容量変化がこの範囲にあることで、ヘッド・ディスク間放電をより効果的に抑制することができる。この点は、下に説明する誘電体シートを有するアーム及び誘電体シートと外周側領域における孔を有するアームについて同様である。
【0041】
アーム161の射影面積について考えると、最内周位置と最外周位置との間における外周側領域615の磁気ディスク101への射影面積の変化量は、最内周位置における内周側領域614と外周側領域615の射影面積合計の5%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1%以下である。射影面積はアーム161において磁気ディスク101と対向する金属部分の面積である。したがって、最内周位置における外周側領域615領域の射影面積は、外周側領域615領域から孔611a〜611cを除いた金属部分の面積である。
【0042】
図2A、図2Bの構成例において、外周側領域615は、外周端613の一部を含む外周端部616、三つの孔611a〜611c、梁617、618で構成されている。梁617は、外周端部616と梁618とを結ぶ。外周側領域615が一つの孔ではなく複数の孔を有することで、外周側領域615の射影面積(孔611a〜611c以外の部分における磁気ディスク101に対向する面積)の変化(外周側領域615と磁気ディスク101との間の静電容量変化)を低減しつつ、アーム161の強度の低下を小さくすることができる。設計によっては、外周側領域615における孔は一つのみでもよい。
【0043】
孔611b、611cは、孔612aの回動軸側にあり、孔611a、611cは、孔612bの内周側にある。図2Aに示すように、孔611b、611cの回動軸側端は、最内周位置において磁気ディスク外周端211とディスク法線方向において一致している。これにより、アーム106の金属部分の面積を確保しつつ、外周側領域615の金属部分の面積をより小さくすることができる。外周領域の孔はこのような形状を有することが好ましいが、これらと異なる形状を有していてもよい。
【0044】
また、図2Bに示すように、アーム161が最外周位置にあるとき、孔611a、611cの内周側端(図2Aを参照)は、磁気ディスク外周端211とディスク法線方向において一致している。これにより、アーム106の金属部分の面積を確保しつつ、外周側領域615の金属部分の面積をより小さくすることができる。外周領域の孔はこのような形状を有することが好ましいが、これらと異なる形状を有していてもよい。
【0045】
好ましくは、本構成例のように、内周側領域614は孔を有しておらず、連続する金属部で構成されている。これにより、内周側領域614の磁気ディスク101への射影面積(対向面積)を大きくすることができ、アクチュエータ106の回動によるアーム161と磁気ディスク101との間の静電容量変化を低減することができる。設計によっては、内周側領域614が孔を有していてもよい。
【0046】
ヘッド・ディスク間放電を防止するためには、外周側領域の静電容量変化が、外周側領域と内周側領域の静電容量に対して小さいことが重要である。上記構成は、外周側領域に孔を形成して磁気ディスク101への射影面積(金属面積)を小さくすることで、外周側領域の単位面積当たりの容量を小さくする。これにより、外周側領域と内周側領域の静電容量に対する外周側領域の静電容量変化を小さくすることがきる。これと異なり、内周側領域の単位面積の静電容量を外周側領域の単位面積当たりの静電容量より大きくすることで、外周側領域の相対的静電容量変化を小さくすることができる。
【0047】
図3A、図3Bに示すHDDにおいて、アーム161の内周側領域614に、誘電体シート301が付着されている。図3Aは最内周位置にあるアクチュエータ106を示し、図3Bは最外周位置にあるアクチュエータ106を示している。誘電体シート301は、アーム161の磁気ディスク対向面上に付着されている。誘電体シート301により、内周側領域614と磁気ディスク101との間の静電容量が大きくなり、また、内周側領域614の単位面積当たりの静電容量も高くなる。これにより、外周側領域の相対的静電容量変化を小さくし、ヘッド・ディスク間放電の効果的に抑制する。
【0048】
図3A、図3Bの構成において、外周側領域615は、図2A、図2Bの構成と異なり、孔を有しておらず、外周領域615の全てが連続する金属で形成されている。したがって、本構成例において、内周側領域614と外周側領域615との間における単位面積当たりの静電容量の相違は、誘電体シート301による。
【0049】
図3A、図3Bにおいて誘電体シート301は円形であるが、誘電体シート301はどのような形状を有していてもよい。内周側領域614の全面を覆うことで、誘電率の小さい誘電体材料でも、効率的に内周側領域614の容量を大きくすることができる。静電容量を大きくするためには、誘電体シートの比誘電率は高いことが好ましい。好ましくは、誘電体シート301を構成する誘電体材料の比誘電率は9以上であり、さらに好ましくは30以上である。
【0050】
外周側領域615の容量変化を小さくするため、誘電体シート301は外周側領域615の外側にあり、外周側領域615内に誘電体シート301の一部も存在していないことが好ましい。内周側領域614には、複数の誘電体シートが付着されていてもよい。また、それらが異なる誘電体材料で構成されていてもよい。いずれの構成においても、外周側領域615内には、内周側領域614内に付着されている誘電体シートと同一材料の誘電体シートが付着されていないことが好ましい。
【0051】
図3A、図3Bは、トップのアーム161を示しており、磁気ディスク101に対向する面にのみ誘電体シート301を有している。磁気ディスク間に挿入されるアームは、その両面に誘電体シートを有することが好ましい。磁気ディスク間のアームの両面が、それぞれ、磁気ディスクに対向しており、その静電容量変化がヘッド・ディスク間放電を引き起こしうるからである。
【0052】
アクチュエータ106が、図2A、図2Bに示す外周側領域615の形状と図3A、図3Bに示す誘電体シート301をあわせ持つことで、ディスク半径位置による静電容量変化をより効果的に低減することができる。図4A、図4Bは、このような構成を有するアクチュエータ106を示している。図4Aは最内周位置にあるアクチュエータ106を示し、図4Bは最外周位置にあるアクチュエータ106を示している。図4A、図4Bに示す外周側領域615の形状は、図2A、図2Bに示す形状と同一である。本構成に対しては、図2A、図2Bを参照して行なった説明及び図3A、図3Bを参照して行なった説明を適用することができる。
【0053】
孔が形成されている外周側領域615と誘電体シート301とを合わせて使用することで、孔あるいは誘電体シートの面積を小さくする、もしくは、低い誘電率の材料を使用することができる。外周側領域615に孔を形成することがアーム161強度の低下を招く場合、誘電体シート301を内周側領域に付着することで、外周側領域615の孔を小さくし、アーム161の強度を上げることができる。また、低い誘電率材料を使用することができることで、使用可能な誘電体材料の幅が広がり、設計をより容易なものとすることができる。
【0054】
次に、磁気ディスク回転による気流を抑制するプレート構造について説明する。HDD100においては、磁気ディスクの回転によって発生する気流が問題とされる。磁気ディスクの回転に伴う気流によってアクチュエータが揺れ、ヘッドの正確なポジショニングを妨げられる。そのため、この気流を抑制するため、磁気ディスク記録面と対向するプレートを配置する技術が知られている。
【0055】
このようなプレートを有する部品として、ダンパ・プレートやエア・スポイラが知られている。これらプレートは、アクチュエータの上流もしくは下流に配置され、磁気ディスク回転に伴う気流を減らし、ヘッド・ポジショニングを改善する。一般に、ダンパ・プレートは大きな面積を有するプレートであり、各プレートが個別にベースに固定される。一方、エア・スポイラは、一般に、ディスク記録面に対向するプレートが一体的に形成された部品であり、そのプレートの面積はダンパ・プレートに比較すると小さい。
【0056】
このような気流抑制プレートは、磁気ディスク記録面と対向しているため、金属で形成されている場合に、磁気ディスクとの間において容量を構成する。磁気ディスクと気流抑制プレートとの間の容量の増加は、ヘッド・スライダと磁気ディスクとの間の電圧を小さくする。そこで、好ましい構成において、HDD100は、気流抑制プレートを有し、さらに、その気流抑制プレートは、金属部と、その金属部のディスク対向面に形成された誘電体とを有する。
【0057】
図5は、エア・スポイラ51の構造を模式的に示す断面図である。図5の構成例において、HDDはスピンドル・モータ104に固定された3枚の磁気ディスク101a〜101cを有している。エア・スポイラ51は、4枚のプレート511a〜511dを有しており、2段目と3段目のプレート511b、511cは、2枚の磁気ディスク間にある。トップ及びボトムのプレート511a、511dは、それぞれ、トップ及びボトムの磁気ディスク101a、101cのみに対向する。
【0058】
プレート511a〜511dは、同様の構造を有している。プレート511aについて詳細に説明する。図5に示すように、プレート511aは、内部の金属部512と、その上下両面に形成されている誘電体部513a、513bとで構成されている。金属部512は、エア・スポイラ51の支持部を介してベース102に電気的に接続されている。ベース102は、グランドと見なすことができる。
【0059】
誘電体部513a、513b材料は、例えば、誘電体シート301と同じ材料である。このように、金属部と磁気ディスクとの間に誘電体部を有することで、プレート511aと磁気ディスクとの間の静電容量を効果的に増加させることができ、それにより、ヘッド・ディスク間電圧を低減することができる。
【0060】
図5の例において、プレート511aは、磁気ディスクと対向していない上面にも誘電体部513bを有するが、これを省略してもよい。同様のことは、ボトムのプレート511dにも当てはまる。ディスク間のプレート511b、511cの上下面の双方が磁気ディスク記録面に対向するため、それらは両ディスク対向面に誘電体部を有する。図5は、エア・スポイラのプレートの構造を示しているが、同様の構造を有するダンパ・プレートも、ヘッド・ディスク間電圧を効果的に低下させることができる。
【0061】
以上、本発明を好ましい実施形態を例として説明したが、本発明が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。例えば、本発明はHDDに特に有用であるが、それ以外のディスク・ドライブ装置に適用してもよい。外周領域の単位面積当たりの静電容量を内周側領域に対して相対的に小さくするため、外周側領域と磁気ディスクとの間の距離の平均値を、内周側領域と磁気ディスクとの間の距離の平均値よりも大きくしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
51 エア・スポイラ、61 アクチュエータ、62 ランプ、63 磁気ディスク
100 ハードディスク・ドライブ、101、101a〜101c 磁気ディスク
102 ベース、103 クランプ、104 スピンドル・モータ
105 ヘッド・スライダ、106 アクチュエータ、107 回動軸、115 ランプ
161 アーム、162 サスペンション、211 磁気ディスク外周端
301 誘電体シート、511a〜511d プレート、512 内部金属
513a、513b 誘電体、611a〜611c 孔、612 内周側端
613 外周側端、614 内周側領域、615 外周側領域、616 外周端部
617、618 梁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを格納するディスクと、
前記ディスク上を浮上するヘッド・スライダと、
前記ヘッド・スライダを支持し、回動軸において回動することで前記ヘッド・スライダを前記ディスクの半径方向において移動する、アクチュエータと、を有し、
前記アクチュエータは、
前記ヘッド・スライダを支持するサスペンションと、
前記サスペンションと前記回動軸との間にあって、前記サスペンションを支持し、金属で形成されているアームと、を有し、
前記アームは、
回転している前記ディスク上において前記ヘッド・スライダが浮上力で浮上している領域の最内周位置において前記ディスクと対向し、前記領域の最外周位置にあるときに前記ディスクの外側にある、外周側領域と、
前記外周側領域の内周側であって、前記最内周位置から前記最外周位置の間において前記ディスクと対向する内周側領域と、を有し、
前記最内周位置における前記外周側領域と前記ディスクとの間の単位面積当たりの静電容量は、前記最内周位置における前記内周側領域と前記ディスクとの間の単位面積当たりの静電容量よりも小さい、
ディスク・ドライブ。
【請求項2】
前記内周領域において、前記アームの前記ディスクに対向する面に誘電体シートが付着している、
請求項1に記載のディスク・ドライブ。
【請求項3】
前記外周領域内に孔が形成されている、
請求項2に記載のディスク・ドライブ。
【請求項4】
前記誘電体シートは前記内周領域にのみ付着している、
請求項2に記載のディスク・ドライブ。
【請求項5】
前記誘電体シートは9以上の比誘電率の材料で形成されている、
請求項2に記載のディスク・ドライブ。
【請求項6】
前記外周領域内に孔が形成されている、
請求項1に記載のディスク・ドライブ。
【請求項7】
前記外周領域内に複数の孔が形成されている、
請求項6に記載のディスク・ドライブ。
【請求項8】
前記最内周位置から前記最外周位置への移動における前記外周側領域の静電容量の減少量は、前記最内周位置における前記内周側領域と前記外周側領域とを合わせた領域と前記ディスクとの間の静電容量の5%以下である、
請求項1に記載のディスク・ドライブ。
【請求項9】
前記ディスクと対向し、前記ディスクの回転による気流を抑制するプレートをさらに有し、
前記プレートは、金属部と、その金属部の前記ディスクに対向する面に形成されている誘電体部と、を有する、
請求項1に記載のディスク・ドライブ。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−129223(P2011−129223A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288967(P2009−288967)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】