ディスク回転安定化板および光学的情報記録再生装置
【課題】薄型光ディスクの記録再生動作を安定維持するためのディスク回転安定化板を装備し、この安定化板の劣化を抑制する。
【解決手段】光学的情報記録再生装置が備えている光ディスク1の情報記録再生面1Aに対向して配置されスペーサ4を介して光ディスク1に対して一体的に装着されるディスク回転安定化板5であって、光ディスク1よりも直径の大きい透明基材からなる安定化板本体5Aと、この安定化板本体5Aの両面に設けられた保護層6A,6Bとを含む構成とする。各保護層6A,6Bは光ディスク1に対する記録再生用のレーザ光を透過可能な少なくとも一層以上の保護層とする。
【解決手段】光学的情報記録再生装置が備えている光ディスク1の情報記録再生面1Aに対向して配置されスペーサ4を介して光ディスク1に対して一体的に装着されるディスク回転安定化板5であって、光ディスク1よりも直径の大きい透明基材からなる安定化板本体5Aと、この安定化板本体5Aの両面に設けられた保護層6A,6Bとを含む構成とする。各保護層6A,6Bは光ディスク1に対する記録再生用のレーザ光を透過可能な少なくとも一層以上の保護層とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光が照射されて情報が光学的に記録又は再生される光学的情報記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、相変化光ディスクなどの書き換え可能な光ディスクでは、記録膜にレーザ光を照射し、記録膜の光反射率及び光学的位相等の光学特性を変化させることにより、情報の記録・再生が行われる。このような光ディスクとしては、DVD−RW,DVD−RAMが一般的であり、さらに大容量化が可能な光ディスクとして、HD DVD−RAMやHD DVD−RWなどが普及しつつある。
【0003】
また、近年の急激な情報化社会の進展に伴い、莫大な量の情報の記録や再生が必須となり、このような要求を満足するための一つの手段として、上述した光ディスクをカートリッジの中に複数枚格納し、そのカートリッジを複数個備えた集合装置などが提案されている。しかしながら、これらの集合装置では光ディスク一枚当りの厚みが1.2〔mm〕と厚いため、これらのカートリッジを格納している装置自体の大きさがかなり大きくなるという不都合が生じている。
【0004】
これらの問題を解消するために、光ディスク一枚当りの厚みを0.3〔mm〕以下と薄くして、これらの光ディスクを格納するカートリッジや集合装置の大きさをコンパクトにまとめた薄型光ディスクの記録再生装置などが提案されている(参考文献1)。
【特許文献1】特開2006−164488
【0005】
上述した薄型光ディスクの記録再生装置は、薄型光ディスクと対向して配置された透明基材(基材)と薄型光ディスクに記録再生を行うための記録再生ヘッドを含む光学系を備えた記録再生装置であり、上述した光学系は透明な基材の薄型光ディスク裁置面とは反対側に記録再生用の光学ヘッドが設置され、記録再生用のレーザ光は、透明な基材を透過して薄型光ディスクの記録面に集光する構成となっている。そして、上述した透明基材には、ガラス基板や表面にハードコートを施したプラスチック基板等が用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記関連技術には、以下に示すような問題点がある。
即ち、透明基材としてガラス基板を用いた場合には、ガラス基板を形成する組成物の一般的な特徴としてアルカリ金属の酸化物が含まれており、このアルカリ成分が大気中のH2 OやCO2 と反応して、ガラス基板表面にCaCO3 やNaHCO3 等の析出物を形成する。このような析出物がガラス表面に形成されるとガラス基板の透過率が低下し、薄型光ディスクへの正常な情報記録や既に記録してある情報を正確に再生することが困難になるという問題点があった。
【0007】
又、透明基材として、表面にハードコートを施したプラスチック基板を用いた場合には、経年変化によりプラスチック基板自体に反りが生じたり、基板自体の剛性が高くないため、プラスチック基板を高速で回転させた場合には、プラスチック基板自体が面ブレを起こし、薄型光ディスク基板を安定に回転させることが困難となる等の不都合が確認されている。
【0008】
〔発明の目的〕
本発明は、上記関連技術の有する不都合を改善し、特に、大気中のH2 OやCO2 によって基材表面が変化や劣化を起こすことなく、薄型光ディスク媒体の記録再生動作の安定化を長期間維持し得るディスク回転安定化板および光学的情報記録再生装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明にかかるディスク回転安定化板は、光ディスクの情報記録再生面に対向して配置されスペーサを介して当該光ディスクに一体的に装着されるディスク回転安定化板であって、前記光ディスクよりも直径の大きい透明基材からなる安定化板本体と、この安定化板本体の両面に設けられた保護層とを含む構成とし、更に、各保護層を、前記光ディスクに対する記録再生用のレーザ光を透過可能な少なくとも一層以上の保護層としたことを特徴とする。
【0010】
又、上記目的を達成するため、本発明にかかる光学的情報記録再生装置は、光ディスクを回転させる回転駆動手段と前記光ディスクの情報記録再生面にレーザ光を集光する記録再生用光学ヘッドとを備えた光学的情報記録再生装置にあって、前記光ディスクの情報記録再生面に対向し且つスペーサを介して前記光ディスクに一体的にディスク回転安定化板を配設し、このディスク回転安定化板を、前記光ディスクよりも直径の大きい透明部材からなる安定化板本体と、この安定化板本体の両面に設けられた保護層とを含む構成とし、 前記各保護層をレーザ光を透過可能な少なくとも一層以上の保護層としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上述したように安定化板本体を構成する透明基材の両面に少なくとも一層以上の保護層を設けたので、大気中のH2 OやCO2 によって基材表面が変化や劣化を起こすことなく、薄型光ディスク媒体の記録再生動作の安定化を長期間維持し得るという従来にない優れたディスク回転安定化板および光学的情報記録再生装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面に従って説明する。
図1は、本実施形態にかかる光学的情報記録再生装置の回転軸近傍の構成を示す概略断面図である。この図1に示すように、本実施形態における光学的情報記録再生装置は、薄形光ディスクとしての光ディスク1を回転させる回転駆動手段としてのスピンドルモータ2と、前記光ディスク1の情報記録再生面1A(図1では下面側)にレーザ光を集光する記録再生用の光学ヘッド3とを備えている。
【0013】
光ディスク1の情報記録再生面1Aに対向し且つスペーサ4を介してディスク回転安定化板5が装備されている。このディスク回転安定化板5は、上記光ディスク1の図1における下面側に当該光ディスク1に近接して配置されている。又、前記スペーサ4は、円板状に形成され回転中心軸上にあって前記ディスク回転安定化板5と光ディスク1との間に設置されている。同時に、このスペーサ4を介してディスク回転安定化板5が、前記光ディスク1をその中心部で一体的に支持する構造となっている。
【0014】
そして、光ディスク1が回転駆動されると、ディスク回転安定化板5も光ディスク1に近接した状態で一体的に回転駆動され、これによって、前記光ディスク1の回転軸方向の変動がベルヌーイの法則に基づく空気流の圧力差によって安定化させられるようになっている。
【0015】
前記ディスク回転安定化板5は、前述したスピンドルモータ2の支軸2A部分に支持部材2Bによってその中心部が一体的に保持され、これによって、スピンドルモータ2の回転力が支持部材2Bを介して回転安定化板5および光ディスク1に伝達され当該回転安定化板5および光ディスク1が回転駆動されるようになっている。又、前述した光ディスク1とディスク回転安定化板5との間の空間スペース(間隙)Sは、上述したスペーサ4によって特定されるように構成されている。
【0016】
このディスク回転安定化板5は、透明部材からなり前述した光ディスク1よりも直径が大きく形成された安定化板本体5Aと、この安定化板本体5Aの両面に設けられた保護層6A,6Bとを備えて構成されている。そして、この各保護層6A,6Bは、前述した安定化板本体5Aの各面がH2 OやCO2 と反応してCaCO3 やHCO3 等の析出物が生成されないように、しかも後述するようにレーザ光の透過を可能とした少なくとも一層以上の保護膜(保護層)により構成されている。
【0017】
ここで、本実施形態にあって、前述した安定化板本体5Aは、透明基材により構成されている。この安定化板本体5Aは、具体的には、SiO2 を主成分としたガラス組成物からなる透明基材により構成されている。又、前述した各保護層6A,6Bは、透明なシートにより構成されている。この各保護層6A,6Bは、前記安定化板本体5A上にあっては、対向する前記光ディスク1の記録領域又は再生領域を覆うと共に、当該記録領域又は再生領域よりも広い範囲にわたって配設されている。
【0018】
前述した各保護層6A,6Bは、その材質としては、それぞれSiを主たる成分とし、更にHf,Cr,Zr,Y,Ta,Al,Tiの中から選択された少なくとも一つ以上の元素を含む複合酸化物、複合窒化物、又は複合酸窒化物を素材とする誘電体層で形成されている。
【0019】
ここで、詳細は後述するが、上記各保護層6A,6Bを、上記した誘電体層の上に透明なシートを積層して二層構造としてもよい。或いは、この各保護層6A,6Bについては、上気した透明なシートを下地層とし、その上に、上記複合酸化物、複合窒化物、又は複合酸窒化物を素材とする誘電体層を積層した二層構造としてもよい。又、このような構成の各保護層6A,6Bについては、その膜厚を30〔nm〕乃至195〔nm〕の範囲に設定したものであってもよい。
【0020】
そして、上述したように、本実施形態にあっては、光ディスク1とディスク回転安定化板5とを一体的に回転させるため、スピンドルモータ2の支軸2A上に保持部材2Bを一体的に装備し、この保持部材2B上に、ディスク回転安定化板5,スペーサ4及び光ディスク1がこの順に装備され、最後にマグネットチャック7等で固定されている。 一方、記録再生のための光学ヘッド6は、スピンドルモータ1と同じ側に設置され、透明なディスク回転安定化板5を透過してレーザ光が光ディスク1の情報記録再生面1Aに集光される。
【0021】
前述したディスク回転安定化板5については、レーザ光等に対しその透過率が98%以上に成るように、前述した各素材(特に保護層の素材)が選択設定されている。これにより、記録再生用のレーザ光の透過率を高め、効率的に記録又は再生が可能となる。
このように、本実施形態によると、安定化板本体5Aを構成する透明基材の両面に少なくとも一層以上の保護層6A,6Bを設けたので、大気中のH2 OやCO2 によって基材表面が変化や劣化を起こすことなく、光ディスクが薄型であっても、その記録再生動作の安定化を長期間維持することができる。
【0022】
次に、上記実施形態におけるディスク回転安定化板5について、その具体例を実施例1乃至3に例示して詳述する。
【実施例1】
【0023】
次に、本発明にかかる上記実施形態に基づいた第1実施例を具体的に説明する。
ここで、本第1実施例では、透明基材である安定化板本体5A(以下、基材5Aという)としてソーダ石灰ガラス(Na2 O−CaO−SiO2 )を用い、又、保護層としては、SiO2 −HfO2 (25〔mol%〕)を用いた場合を示す。
【0024】
一般に、ソーダ石灰ガラスにはアルカリ金属の酸化物が含まれており、大気中のH2 OやCO2 と反応して、CaCO3 やNaHCO3 等の析出物が生成される。この反応を防止するため、ガラス基板の表面、即ち、基材5Aの上下両面に保護層としてSiO2 −HfO2 (25〔mol%〕)を100〔nm〕積層したディスク回転安定化板5を作製した。
【0025】
ここで、基材5Aとして、その表面に上述した保護層を形成しないディスク回転安定化板(試料1)と基材5Aの上下両面に保護層として上述したSiO2 −HfO2 (25〔mol%〕)を100〔nm〕積層したディスク回転安定化板(試料2)を作製し、作製直後の初期状態での記録再生特性と、光学的情報記録再生装置からディスク回転安定化板のみを取り出し、80〔℃〕,90〔%〕,1000〔時間〕の環境試験に投入し、試験終了後、再度、各々のディスク回転安定化板を光学的情報記録再生装置に組み込み、記録再生特性を調べた。
記録再生特性評価に際しては、波長405〔nm〕で記録再生が可能なHD DVD−RW媒体を用いた。図2に、この試験前後での記録再生特性を比較評価した結果(図表化したもの)を示す。
【0026】
尚、この図2中、「archival」は環境試験前に記録したデータを再度1000〔時間〕後に再生した値であり、「shelf 」は環境試験後に未記録部にデータを記録し再生した値である。また、記号PRSNRは、光ディスク媒体の信号品質を示す性能指数を示す。
この性能指数を示すPRSNRについては、下記文献に開示されているもの(光ディスク媒体の信号品質を示す性能指数)を使用した。
[1]特開2004−213862、[2]Japanese Journal of Applied Physics Vol.43, No.7B, 2004, pp.4859-4862 "Signal-to-Noise Ratio in a PRML Detection" S.OHKUBO et al
【0027】
この図2より、基材5Aの表面に上述した保護層6A,6Bを備えていない場合は、80〔℃〕,90〔%〕,1000時間の環境試験後は、基材5Aの表面(即ちガラス基板表面)が変質し、正常な記録再生が実行できていなかった。
一方、基材5Aの上下両面に、保護層6A,6BとしてSiO2 −HfO2 (25〔mol%〕)を100〔nm〕積層したディスク回転安定化板5(試料2)を用いた場合は、環境試験後も特に問題なく、記録再生が実行できていることが明らかとなった。これは、基材5Aとして用いたガラス基板の表面にSiO2 −HfO2 膜を保護層6A,6Bとして積層したことで、ガラス基板表面にあるNaイオンやCaイオンと大気中のH2 OやCO2 との反応が抑制されたことは明らかである。
【0028】
以上のことから、基材5Aとして用いるガラス基板表面に保護層6A,6Bを形成することで、ガラス基板の劣化が抑制され、良好なデータの記録再生が可能となる。
従って、基材5Aとして用いるガラス基板の表面には、データが記録再生される領域は全て保護層6A,6Bで被覆することが必要となる。又、使用する基材5Aはその上にスペーサ4を介して設置される光ディスク1の外径よりも大きく形成することが好ましく、同時に、上述した保護層6A,6Bを、前述した光ディスク1の記録再生領域よりも広い領域に形成されていることが望ましいことが明らかとなった。
【0029】
ここで、図3及び図4に、透明な基材5A上に保護層6A,6Bを形成した一例を各々示す。
図3は、基材5A全面に保護層6A,6Bを被覆した場合であり、図4は、保護層6A,6Bを前述した光ディスク1の記録再生領域41よりも内側の半径から前記透明な基材5Aの外周端と一致する半径の領域にまで形成した場合を示す。
【0030】
次に、透明な基材5Aとしてソーダ石灰ガラス(Na2 O−CaO−SiO2 )を用い、保護層6A,6Bとしては、Siを主成分として、更に、Hf,Cr,Zr,Y,Ta,Al,Tiの中から選択された少なくとも一つ以上の元素を含むこれらの複合酸化物、複合窒化物、又は複合酸窒化物からなる誘電体層で形成し、膜組成を適宜調整することで各々の誘電体層(保護層6A,6B)の屈折率を変化させ、当該誘電体層の屈折率と、これに対応する透明な基材とその表面に形成された保護層からなるディスク回転安定化板5の表面での反射率との関係について説明する。
【0031】
ここで、本実施例1では、前記基材5Aの上下両面に保護層としての誘電体層を同じ膜厚だけ積層した場合について示す。
まず、図5に、保護層としての誘電体層を、Siを主成分として、更にHf,Cr,Zr,Y,Ta,Al,Tiの中から選択された少なくとも一つ以上の元素を含むこれらの複合酸化物、複合窒化物又は複合酸窒化物により形成した場合、その各誘電体層の膜組成と屈折率との関係について示す。
【0032】
次に、図6に、前述した図5に示した各々の誘電体層を用いた場合の、誘電体の屈折率に対するディスク回転安定化板5の透過率の関係の測定結果を示す。
この図6及び図5より、SiO2 が主成分の誘電体膜を用いた場合には、屈折率が1.65〜1.85と比較的低いため、これらの誘電体膜を保護層6A,6Bとして用いたディスク回転安定化板5の透過率は98〔%〕以上となり(図6参照)、従って、レーザ光はこのディスク回転安定化板5を有効に透過し、記録再生動作が安定して実行されることとなる。
【0033】
一方、誘電体中のSiO2 の含有量が50〔%〕を下回り、他の元素の酸化物が占める割合が大きくなると、誘電体の屈折率が1.95〜2.05と比較的大きくなる。
このような屈折率を有する誘電体膜を保護層6A,6Bとして基材5A上に設けたディスク回転安定化板5の透過率は98〔%〕を下回る(図6参照)。このため、透過率の低下に伴い、ディスク回転安定化板5を透過して記録再生動作を安定に行うことが、徐々に困難となる。従って、保護層6A,6Bとして用いる誘電体層は、SiO2 が主成分を占める屈折率が比較的小さい組成の誘電体層を用いることが望ましい。
【0034】
上述したディスク回転安定化板5の透過率と誘電体の屈折率の関係は、ディスク回転安定化板5の基材5Aであるガラス基板の屈折率とその表面に設けた誘電体膜の屈折率の差が徐々に大きくなるとディスク回転安定化板5での反射率が徐々に大きくなり、従って、ディスク回転安定化板5の透過率が低下するものである。
尚、上述したディスク回転安定化板5の基材5Aであるガラス基板の屈折率とその表面に設けた誘電体膜の屈折率の差とディスク回転安定化板5の透過率や反射率の関係は、基材5A及びその上に設けた保護層6A,6Bの各々の膜厚,屈折率及び消衰係数と、マックスウエル(Maxwell)の方程式から導かれる特性マトリクスを利用して計算により求めることができる。
【0035】
この場合、上述した各々の誘電体層の膜厚については、30〔nm〕〜195〔nm〕の範囲が望ましい。これは、膜厚が195〔nm〕より厚くなると膜の内部応力が大きくなるため、誘電体層が基材表面から剥離するという不具合が生じるためである。又、膜厚が30〔nm〕より薄い場合には、大気中のH2 OやCO2 を遮断する効果が急激に薄れてしまうためである。
【0036】
尚、図5(元表2)に示した複合酸化物、複合窒化物及び複合酸窒化物の組み合わせ以外の複合酸化物、複合窒化物及び複合酸窒化物の組み合わせであっても、透過率は98〔%〕を越える可能性のある所望の屈折率及び基材との屈折率差が得られるものであれば、保護層6A,6Bとして適用可能であり、既に同様の効果を確認済みである。
【実施例2】
【0037】
次に、上記実施形態に基づく第2の実施例について説明する。
ここで、本第2の実施例では、透明基材5Aとしてソーダ石灰ガラス(Na2 O−CaO−SiO2 )を用い、保護層として、厚さ0.1〔mm〕のポリカーボネイト製シート、及び厚さ100〔nm〕のSiO2 −HfO2 (25〔mol%〕)の誘電体層を各々保護層として用いた場合のディスク回転安定化板5の透過率とその経時変化について、保護層を設けない基材5Aとの比較を行った結果を開示する。
【0038】
図7〜図10に、ディスク回転安定化板5の透過率とその経時変化について測定した場合の透明基材5Aに対する各々の保護層の配置状態を示す。ここで、透明基材5Aについては、図7〜図10の何れもソーダ石灰ガラス製を使用し、保護層の素材の違いによる透過率の変化を計測した。
【0039】
まず、図7では、ソーダ石灰ガラス製の透明基材5Aの両面に、図1で特定した保護層6A,6Bに代えて、厚さ0.1〔mm〕のポリカーボネイト製シートを、保護層51A,51Bとして付し、ディスク回転安定化板5とした場合を示す。この場合のディスク回転安定化板5を、基材T−1とする。
【0040】
次に、図8では、前述した図7の保護層51A,51Bに代えて、厚さ100〔nm〕のSiO2 −HfO2 (25〔mol%〕)の誘電体層を保護層52A,52Bとして付し、ディスク回転安定化板5とした場合を示す。この場合のディスク回転安定化板5を、基材T−2とする。
【0041】
又、図9では、前述した図7の保護層51A,51Bに代えて、厚さ100〔nm〕のSiO2 −HfO2 (25〔mol%〕)の誘電体層を下層保護層53Aa,53Baとし、その上に厚さ0.1〔mm〕のポリカーボネイト製シートを上層保護層53Ab,53Bbとし、これによって各層とも同一素材による二層構造の保護層53A,53Bとした点に特徴を備えている。この場合に形成されるディスク回転安定化板5を、基材T−3とする。
【0042】
更に、図10では、前述した図7の保護層51A,51Bに代えて、厚さ0.1〔mm〕のポリカーボネイト製シートを下層保護層54Aa,54Baとし、その上に厚さ100〔nm〕のSiO2 −HfO2 (25〔mol%〕)の誘電体層を上層保護層54Ab,54Bbとし、これによって各層とも同一素材による二層構造の保護層54A,54Bとした点に特徴を備えている。
この図10における二層構造の保護層54A,54Bは、その上層と下層の各素材の積層位置を、前述した図9における二層構造の素材の積層位置とはを逆に設定した点に特徴を有する。この場合に形成されるディスク回転安定化板5を、基材T−4とする。
【0043】
そして、これら図7乃至図10に示した各ディスク回転安定化板5の透過率とその経時変化について測定した結果を図11に示す。
より具体的には、上述した図7乃至図10に示した各ディスク回転安定化板5について、80〔℃〕,90〔%〕,1000〔時間〕試験投入後に測定した透過率の値を、図11にまとめて示す。ここで、図11には、比較のため、保護層を設けていないソーダガラス自体(保護層なし)の結果も併せて示す。
尚、この第2実施例では、透明基材5Aにかかる透明基材(T−1乃至T−4,及びT−0)としては、上述したように、いずれもソーダ石灰ガラス(Na2 O−CaO−SiO2 )を使用した。
【0044】
この図11で明らかのように、いずれかの保護層6A,6Bを基材5Aの表面に設けることで、80〔℃〕,90〔%〕,1000〔時間〕後の透過率に大きな低下もなく、保護層付きの基材(ディスク回転安定化板5)を介して安定した情報の記録再生が可能であることが明らかとなった。
一方、保護層6A,6Bを設けない基材5Aは、試験後の透過率が著しく減少し、前述した図2にも示したように、環境試験後には情報の記録再生が明らかに不可能となっている。
【実施例3】
【0045】
次に、上記実施形態に基づく第3の実施例について説明する。
この第3の実施例では、透明基材5Aとして、アルカリ成分を含まないシリカガラスを用い、保護層6A,6Bとしては、前述した第2実施例の場合と同一の素材およびその組合せをそのまま採用した。
ここで、この第3の実施例で形成される実験用の5種類のディスク回転安定化板5については、前述した第2実施例の基材T−1乃至T−4およびT−0に対応して、基材T−5乃至T−8およびT−9とする。
【0046】
そして、これら基材T−5乃至T−8およびT−9にて特定した各ディスク回転安定化板5の透過率とその経時変化について測定した結果を、図11に示す。
より具体的には、上述した基材T−5乃至T−8およびT−9にて特定した各ディスク回転安定化板5について、80〔℃〕,90〔%〕,1000〔時間〕試験投入後に測定した透過率の値を、図12にまとめて示す。ここで、図12には、比較のため、保護層を設けていないシリカガラス自体(保護層なし:T−9)の結果も併せて示す。
【0047】
この図12より、いずれかの保護層を基材表面に設けることで80〔℃〕,90〔%〕,1000〔時間〕後の透過率には、大きな低下もなく、保護層付きの基材(ディスク回転安定化板5)を介して安定した情報の記録再生が可能であることが判る。
【0048】
一方、基材5Aとして、保護層を設けないシリカガラスを用いた場合には、試験後の透過率の低下はソーダガラスに比べると少ないが、反射率の低下量が2〔%〕を超えているため、保護層をつけたほうが望ましいことは明らかである。
この場合、保護層を設けないシリカガラスの透過率が環境試験後に低下する要因は、シリカガラス作製時の研磨剤成分の残渣等が大気中のH2 Oと反応したことによるものと考察することができる。
【0049】
尚、本実施例3では、保護層としてポリカーボネイトからなるシートや、Siを主成分として、更にはHf,Cr,Zr,Y,Ta,Al,Tiの中から選択された少なくとも一つ以上の元素を含むこれらの複合酸化物、複合窒化物又は複合酸窒化物からなる誘電体層を用いた例を示したが、これらに限定されるものではない。例えば、保護層6A,6Bとして、紫外線硬化タイプのUV樹脂を用い、基材5A上にスピン塗布して形成する方法や、UV樹脂にディッピングしたあと樹脂中から引き上げ、スピン展開により樹脂を塗布し、紫外線硬化した保護層を用いたものでも、同様の効果が得られることを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
ディスク回転安定化板の性能維持は重要課題であり、薄型光ディスクの動作を長期間安定化させるために不可欠のものであり、薄型光ディスクの開発強化に伴って、本発明の重要性は高まる傾向にある。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態における光学的情報記録再生装置を示す概略構成図である。
【図2】(元表1) 図1に開示した一実施形態にかかる第1実施例におけるディスク回転安定化板の環境試験の結果を示す図表である。
【図3】(元図2) 本発明の一実施形態にかかる第1実施例におけるディスク回転安定化板の例を示す説明図である。
【図4】(元図3) 本発明の一実施形態にかかる第1実施例におけるディスク回転安定化板の他の例を示す説明図である。
【図5】(元表2) 図2乃至図4に開示した第1実施例における保護層を、複合酸化物,複合窒化物,又は複合酸窒化物により形成した場合の当該各誘電体層の膜組成と屈折率との関係を示す説明図である。
【図6】(元図4) 本発明の第1実施例の保護層として種々の誘電体層を用いた場合の当該誘電体層の屈折率に対するディスク回転安定化板の透過率の関係の測定結果を示す線図である。
【図7】(元図5(a)) 本発明の第2実施例におけるディスク回転安定化板における保護層を一層構造とした場合の例(T−1)を示す説明図である。
【図8】(元図5(b)) 本発明の第2実施例におけるディスク回転安定化板における保護層を他の一層構造とした場合の例(T−2)を示す説明図である。
【図9】(元図5(c)) 本発明の第2実施例におけるディスク回転安定化板における保護層を二層構造とした場合の例(T−3)を示す説明図である。
【図10】(元図5(d)) 本発明の第2実施例におけるディスク回転安定化板における保護層を他の二層構造とした場合の例(T−4)を示す説明図である。
【図11】(元表3) 本発明の第2実施例におけるディスク回転安定化板(T−1)〜(T−4)について80〔℃〕90〔%〕1000〔時間〕試験投入後に測定した透過率の測定値を示す図表である。
【図12】(元表4) 本発明の第3実施例におけるディスク回転安定化板(T−5)〜(T−8)について80〔℃〕90〔%〕1000〔時間〕試験投入後に測定した透過率の測定値を示す図表である。
【符号の説明】
【0052】
1 光ディスク(薄型光ディスク)
2 スピンドルモータ
3 光学ヘッド
4 スペーサ
5 ディスク回転安定化板
5A 基材(透明基材)
6A,6B,51A,51B,52A,52B,53A,53B,54A,54B 保護層
41 記録再生領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光が照射されて情報が光学的に記録又は再生される光学的情報記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、相変化光ディスクなどの書き換え可能な光ディスクでは、記録膜にレーザ光を照射し、記録膜の光反射率及び光学的位相等の光学特性を変化させることにより、情報の記録・再生が行われる。このような光ディスクとしては、DVD−RW,DVD−RAMが一般的であり、さらに大容量化が可能な光ディスクとして、HD DVD−RAMやHD DVD−RWなどが普及しつつある。
【0003】
また、近年の急激な情報化社会の進展に伴い、莫大な量の情報の記録や再生が必須となり、このような要求を満足するための一つの手段として、上述した光ディスクをカートリッジの中に複数枚格納し、そのカートリッジを複数個備えた集合装置などが提案されている。しかしながら、これらの集合装置では光ディスク一枚当りの厚みが1.2〔mm〕と厚いため、これらのカートリッジを格納している装置自体の大きさがかなり大きくなるという不都合が生じている。
【0004】
これらの問題を解消するために、光ディスク一枚当りの厚みを0.3〔mm〕以下と薄くして、これらの光ディスクを格納するカートリッジや集合装置の大きさをコンパクトにまとめた薄型光ディスクの記録再生装置などが提案されている(参考文献1)。
【特許文献1】特開2006−164488
【0005】
上述した薄型光ディスクの記録再生装置は、薄型光ディスクと対向して配置された透明基材(基材)と薄型光ディスクに記録再生を行うための記録再生ヘッドを含む光学系を備えた記録再生装置であり、上述した光学系は透明な基材の薄型光ディスク裁置面とは反対側に記録再生用の光学ヘッドが設置され、記録再生用のレーザ光は、透明な基材を透過して薄型光ディスクの記録面に集光する構成となっている。そして、上述した透明基材には、ガラス基板や表面にハードコートを施したプラスチック基板等が用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記関連技術には、以下に示すような問題点がある。
即ち、透明基材としてガラス基板を用いた場合には、ガラス基板を形成する組成物の一般的な特徴としてアルカリ金属の酸化物が含まれており、このアルカリ成分が大気中のH2 OやCO2 と反応して、ガラス基板表面にCaCO3 やNaHCO3 等の析出物を形成する。このような析出物がガラス表面に形成されるとガラス基板の透過率が低下し、薄型光ディスクへの正常な情報記録や既に記録してある情報を正確に再生することが困難になるという問題点があった。
【0007】
又、透明基材として、表面にハードコートを施したプラスチック基板を用いた場合には、経年変化によりプラスチック基板自体に反りが生じたり、基板自体の剛性が高くないため、プラスチック基板を高速で回転させた場合には、プラスチック基板自体が面ブレを起こし、薄型光ディスク基板を安定に回転させることが困難となる等の不都合が確認されている。
【0008】
〔発明の目的〕
本発明は、上記関連技術の有する不都合を改善し、特に、大気中のH2 OやCO2 によって基材表面が変化や劣化を起こすことなく、薄型光ディスク媒体の記録再生動作の安定化を長期間維持し得るディスク回転安定化板および光学的情報記録再生装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明にかかるディスク回転安定化板は、光ディスクの情報記録再生面に対向して配置されスペーサを介して当該光ディスクに一体的に装着されるディスク回転安定化板であって、前記光ディスクよりも直径の大きい透明基材からなる安定化板本体と、この安定化板本体の両面に設けられた保護層とを含む構成とし、更に、各保護層を、前記光ディスクに対する記録再生用のレーザ光を透過可能な少なくとも一層以上の保護層としたことを特徴とする。
【0010】
又、上記目的を達成するため、本発明にかかる光学的情報記録再生装置は、光ディスクを回転させる回転駆動手段と前記光ディスクの情報記録再生面にレーザ光を集光する記録再生用光学ヘッドとを備えた光学的情報記録再生装置にあって、前記光ディスクの情報記録再生面に対向し且つスペーサを介して前記光ディスクに一体的にディスク回転安定化板を配設し、このディスク回転安定化板を、前記光ディスクよりも直径の大きい透明部材からなる安定化板本体と、この安定化板本体の両面に設けられた保護層とを含む構成とし、 前記各保護層をレーザ光を透過可能な少なくとも一層以上の保護層としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上述したように安定化板本体を構成する透明基材の両面に少なくとも一層以上の保護層を設けたので、大気中のH2 OやCO2 によって基材表面が変化や劣化を起こすことなく、薄型光ディスク媒体の記録再生動作の安定化を長期間維持し得るという従来にない優れたディスク回転安定化板および光学的情報記録再生装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面に従って説明する。
図1は、本実施形態にかかる光学的情報記録再生装置の回転軸近傍の構成を示す概略断面図である。この図1に示すように、本実施形態における光学的情報記録再生装置は、薄形光ディスクとしての光ディスク1を回転させる回転駆動手段としてのスピンドルモータ2と、前記光ディスク1の情報記録再生面1A(図1では下面側)にレーザ光を集光する記録再生用の光学ヘッド3とを備えている。
【0013】
光ディスク1の情報記録再生面1Aに対向し且つスペーサ4を介してディスク回転安定化板5が装備されている。このディスク回転安定化板5は、上記光ディスク1の図1における下面側に当該光ディスク1に近接して配置されている。又、前記スペーサ4は、円板状に形成され回転中心軸上にあって前記ディスク回転安定化板5と光ディスク1との間に設置されている。同時に、このスペーサ4を介してディスク回転安定化板5が、前記光ディスク1をその中心部で一体的に支持する構造となっている。
【0014】
そして、光ディスク1が回転駆動されると、ディスク回転安定化板5も光ディスク1に近接した状態で一体的に回転駆動され、これによって、前記光ディスク1の回転軸方向の変動がベルヌーイの法則に基づく空気流の圧力差によって安定化させられるようになっている。
【0015】
前記ディスク回転安定化板5は、前述したスピンドルモータ2の支軸2A部分に支持部材2Bによってその中心部が一体的に保持され、これによって、スピンドルモータ2の回転力が支持部材2Bを介して回転安定化板5および光ディスク1に伝達され当該回転安定化板5および光ディスク1が回転駆動されるようになっている。又、前述した光ディスク1とディスク回転安定化板5との間の空間スペース(間隙)Sは、上述したスペーサ4によって特定されるように構成されている。
【0016】
このディスク回転安定化板5は、透明部材からなり前述した光ディスク1よりも直径が大きく形成された安定化板本体5Aと、この安定化板本体5Aの両面に設けられた保護層6A,6Bとを備えて構成されている。そして、この各保護層6A,6Bは、前述した安定化板本体5Aの各面がH2 OやCO2 と反応してCaCO3 やHCO3 等の析出物が生成されないように、しかも後述するようにレーザ光の透過を可能とした少なくとも一層以上の保護膜(保護層)により構成されている。
【0017】
ここで、本実施形態にあって、前述した安定化板本体5Aは、透明基材により構成されている。この安定化板本体5Aは、具体的には、SiO2 を主成分としたガラス組成物からなる透明基材により構成されている。又、前述した各保護層6A,6Bは、透明なシートにより構成されている。この各保護層6A,6Bは、前記安定化板本体5A上にあっては、対向する前記光ディスク1の記録領域又は再生領域を覆うと共に、当該記録領域又は再生領域よりも広い範囲にわたって配設されている。
【0018】
前述した各保護層6A,6Bは、その材質としては、それぞれSiを主たる成分とし、更にHf,Cr,Zr,Y,Ta,Al,Tiの中から選択された少なくとも一つ以上の元素を含む複合酸化物、複合窒化物、又は複合酸窒化物を素材とする誘電体層で形成されている。
【0019】
ここで、詳細は後述するが、上記各保護層6A,6Bを、上記した誘電体層の上に透明なシートを積層して二層構造としてもよい。或いは、この各保護層6A,6Bについては、上気した透明なシートを下地層とし、その上に、上記複合酸化物、複合窒化物、又は複合酸窒化物を素材とする誘電体層を積層した二層構造としてもよい。又、このような構成の各保護層6A,6Bについては、その膜厚を30〔nm〕乃至195〔nm〕の範囲に設定したものであってもよい。
【0020】
そして、上述したように、本実施形態にあっては、光ディスク1とディスク回転安定化板5とを一体的に回転させるため、スピンドルモータ2の支軸2A上に保持部材2Bを一体的に装備し、この保持部材2B上に、ディスク回転安定化板5,スペーサ4及び光ディスク1がこの順に装備され、最後にマグネットチャック7等で固定されている。 一方、記録再生のための光学ヘッド6は、スピンドルモータ1と同じ側に設置され、透明なディスク回転安定化板5を透過してレーザ光が光ディスク1の情報記録再生面1Aに集光される。
【0021】
前述したディスク回転安定化板5については、レーザ光等に対しその透過率が98%以上に成るように、前述した各素材(特に保護層の素材)が選択設定されている。これにより、記録再生用のレーザ光の透過率を高め、効率的に記録又は再生が可能となる。
このように、本実施形態によると、安定化板本体5Aを構成する透明基材の両面に少なくとも一層以上の保護層6A,6Bを設けたので、大気中のH2 OやCO2 によって基材表面が変化や劣化を起こすことなく、光ディスクが薄型であっても、その記録再生動作の安定化を長期間維持することができる。
【0022】
次に、上記実施形態におけるディスク回転安定化板5について、その具体例を実施例1乃至3に例示して詳述する。
【実施例1】
【0023】
次に、本発明にかかる上記実施形態に基づいた第1実施例を具体的に説明する。
ここで、本第1実施例では、透明基材である安定化板本体5A(以下、基材5Aという)としてソーダ石灰ガラス(Na2 O−CaO−SiO2 )を用い、又、保護層としては、SiO2 −HfO2 (25〔mol%〕)を用いた場合を示す。
【0024】
一般に、ソーダ石灰ガラスにはアルカリ金属の酸化物が含まれており、大気中のH2 OやCO2 と反応して、CaCO3 やNaHCO3 等の析出物が生成される。この反応を防止するため、ガラス基板の表面、即ち、基材5Aの上下両面に保護層としてSiO2 −HfO2 (25〔mol%〕)を100〔nm〕積層したディスク回転安定化板5を作製した。
【0025】
ここで、基材5Aとして、その表面に上述した保護層を形成しないディスク回転安定化板(試料1)と基材5Aの上下両面に保護層として上述したSiO2 −HfO2 (25〔mol%〕)を100〔nm〕積層したディスク回転安定化板(試料2)を作製し、作製直後の初期状態での記録再生特性と、光学的情報記録再生装置からディスク回転安定化板のみを取り出し、80〔℃〕,90〔%〕,1000〔時間〕の環境試験に投入し、試験終了後、再度、各々のディスク回転安定化板を光学的情報記録再生装置に組み込み、記録再生特性を調べた。
記録再生特性評価に際しては、波長405〔nm〕で記録再生が可能なHD DVD−RW媒体を用いた。図2に、この試験前後での記録再生特性を比較評価した結果(図表化したもの)を示す。
【0026】
尚、この図2中、「archival」は環境試験前に記録したデータを再度1000〔時間〕後に再生した値であり、「shelf 」は環境試験後に未記録部にデータを記録し再生した値である。また、記号PRSNRは、光ディスク媒体の信号品質を示す性能指数を示す。
この性能指数を示すPRSNRについては、下記文献に開示されているもの(光ディスク媒体の信号品質を示す性能指数)を使用した。
[1]特開2004−213862、[2]Japanese Journal of Applied Physics Vol.43, No.7B, 2004, pp.4859-4862 "Signal-to-Noise Ratio in a PRML Detection" S.OHKUBO et al
【0027】
この図2より、基材5Aの表面に上述した保護層6A,6Bを備えていない場合は、80〔℃〕,90〔%〕,1000時間の環境試験後は、基材5Aの表面(即ちガラス基板表面)が変質し、正常な記録再生が実行できていなかった。
一方、基材5Aの上下両面に、保護層6A,6BとしてSiO2 −HfO2 (25〔mol%〕)を100〔nm〕積層したディスク回転安定化板5(試料2)を用いた場合は、環境試験後も特に問題なく、記録再生が実行できていることが明らかとなった。これは、基材5Aとして用いたガラス基板の表面にSiO2 −HfO2 膜を保護層6A,6Bとして積層したことで、ガラス基板表面にあるNaイオンやCaイオンと大気中のH2 OやCO2 との反応が抑制されたことは明らかである。
【0028】
以上のことから、基材5Aとして用いるガラス基板表面に保護層6A,6Bを形成することで、ガラス基板の劣化が抑制され、良好なデータの記録再生が可能となる。
従って、基材5Aとして用いるガラス基板の表面には、データが記録再生される領域は全て保護層6A,6Bで被覆することが必要となる。又、使用する基材5Aはその上にスペーサ4を介して設置される光ディスク1の外径よりも大きく形成することが好ましく、同時に、上述した保護層6A,6Bを、前述した光ディスク1の記録再生領域よりも広い領域に形成されていることが望ましいことが明らかとなった。
【0029】
ここで、図3及び図4に、透明な基材5A上に保護層6A,6Bを形成した一例を各々示す。
図3は、基材5A全面に保護層6A,6Bを被覆した場合であり、図4は、保護層6A,6Bを前述した光ディスク1の記録再生領域41よりも内側の半径から前記透明な基材5Aの外周端と一致する半径の領域にまで形成した場合を示す。
【0030】
次に、透明な基材5Aとしてソーダ石灰ガラス(Na2 O−CaO−SiO2 )を用い、保護層6A,6Bとしては、Siを主成分として、更に、Hf,Cr,Zr,Y,Ta,Al,Tiの中から選択された少なくとも一つ以上の元素を含むこれらの複合酸化物、複合窒化物、又は複合酸窒化物からなる誘電体層で形成し、膜組成を適宜調整することで各々の誘電体層(保護層6A,6B)の屈折率を変化させ、当該誘電体層の屈折率と、これに対応する透明な基材とその表面に形成された保護層からなるディスク回転安定化板5の表面での反射率との関係について説明する。
【0031】
ここで、本実施例1では、前記基材5Aの上下両面に保護層としての誘電体層を同じ膜厚だけ積層した場合について示す。
まず、図5に、保護層としての誘電体層を、Siを主成分として、更にHf,Cr,Zr,Y,Ta,Al,Tiの中から選択された少なくとも一つ以上の元素を含むこれらの複合酸化物、複合窒化物又は複合酸窒化物により形成した場合、その各誘電体層の膜組成と屈折率との関係について示す。
【0032】
次に、図6に、前述した図5に示した各々の誘電体層を用いた場合の、誘電体の屈折率に対するディスク回転安定化板5の透過率の関係の測定結果を示す。
この図6及び図5より、SiO2 が主成分の誘電体膜を用いた場合には、屈折率が1.65〜1.85と比較的低いため、これらの誘電体膜を保護層6A,6Bとして用いたディスク回転安定化板5の透過率は98〔%〕以上となり(図6参照)、従って、レーザ光はこのディスク回転安定化板5を有効に透過し、記録再生動作が安定して実行されることとなる。
【0033】
一方、誘電体中のSiO2 の含有量が50〔%〕を下回り、他の元素の酸化物が占める割合が大きくなると、誘電体の屈折率が1.95〜2.05と比較的大きくなる。
このような屈折率を有する誘電体膜を保護層6A,6Bとして基材5A上に設けたディスク回転安定化板5の透過率は98〔%〕を下回る(図6参照)。このため、透過率の低下に伴い、ディスク回転安定化板5を透過して記録再生動作を安定に行うことが、徐々に困難となる。従って、保護層6A,6Bとして用いる誘電体層は、SiO2 が主成分を占める屈折率が比較的小さい組成の誘電体層を用いることが望ましい。
【0034】
上述したディスク回転安定化板5の透過率と誘電体の屈折率の関係は、ディスク回転安定化板5の基材5Aであるガラス基板の屈折率とその表面に設けた誘電体膜の屈折率の差が徐々に大きくなるとディスク回転安定化板5での反射率が徐々に大きくなり、従って、ディスク回転安定化板5の透過率が低下するものである。
尚、上述したディスク回転安定化板5の基材5Aであるガラス基板の屈折率とその表面に設けた誘電体膜の屈折率の差とディスク回転安定化板5の透過率や反射率の関係は、基材5A及びその上に設けた保護層6A,6Bの各々の膜厚,屈折率及び消衰係数と、マックスウエル(Maxwell)の方程式から導かれる特性マトリクスを利用して計算により求めることができる。
【0035】
この場合、上述した各々の誘電体層の膜厚については、30〔nm〕〜195〔nm〕の範囲が望ましい。これは、膜厚が195〔nm〕より厚くなると膜の内部応力が大きくなるため、誘電体層が基材表面から剥離するという不具合が生じるためである。又、膜厚が30〔nm〕より薄い場合には、大気中のH2 OやCO2 を遮断する効果が急激に薄れてしまうためである。
【0036】
尚、図5(元表2)に示した複合酸化物、複合窒化物及び複合酸窒化物の組み合わせ以外の複合酸化物、複合窒化物及び複合酸窒化物の組み合わせであっても、透過率は98〔%〕を越える可能性のある所望の屈折率及び基材との屈折率差が得られるものであれば、保護層6A,6Bとして適用可能であり、既に同様の効果を確認済みである。
【実施例2】
【0037】
次に、上記実施形態に基づく第2の実施例について説明する。
ここで、本第2の実施例では、透明基材5Aとしてソーダ石灰ガラス(Na2 O−CaO−SiO2 )を用い、保護層として、厚さ0.1〔mm〕のポリカーボネイト製シート、及び厚さ100〔nm〕のSiO2 −HfO2 (25〔mol%〕)の誘電体層を各々保護層として用いた場合のディスク回転安定化板5の透過率とその経時変化について、保護層を設けない基材5Aとの比較を行った結果を開示する。
【0038】
図7〜図10に、ディスク回転安定化板5の透過率とその経時変化について測定した場合の透明基材5Aに対する各々の保護層の配置状態を示す。ここで、透明基材5Aについては、図7〜図10の何れもソーダ石灰ガラス製を使用し、保護層の素材の違いによる透過率の変化を計測した。
【0039】
まず、図7では、ソーダ石灰ガラス製の透明基材5Aの両面に、図1で特定した保護層6A,6Bに代えて、厚さ0.1〔mm〕のポリカーボネイト製シートを、保護層51A,51Bとして付し、ディスク回転安定化板5とした場合を示す。この場合のディスク回転安定化板5を、基材T−1とする。
【0040】
次に、図8では、前述した図7の保護層51A,51Bに代えて、厚さ100〔nm〕のSiO2 −HfO2 (25〔mol%〕)の誘電体層を保護層52A,52Bとして付し、ディスク回転安定化板5とした場合を示す。この場合のディスク回転安定化板5を、基材T−2とする。
【0041】
又、図9では、前述した図7の保護層51A,51Bに代えて、厚さ100〔nm〕のSiO2 −HfO2 (25〔mol%〕)の誘電体層を下層保護層53Aa,53Baとし、その上に厚さ0.1〔mm〕のポリカーボネイト製シートを上層保護層53Ab,53Bbとし、これによって各層とも同一素材による二層構造の保護層53A,53Bとした点に特徴を備えている。この場合に形成されるディスク回転安定化板5を、基材T−3とする。
【0042】
更に、図10では、前述した図7の保護層51A,51Bに代えて、厚さ0.1〔mm〕のポリカーボネイト製シートを下層保護層54Aa,54Baとし、その上に厚さ100〔nm〕のSiO2 −HfO2 (25〔mol%〕)の誘電体層を上層保護層54Ab,54Bbとし、これによって各層とも同一素材による二層構造の保護層54A,54Bとした点に特徴を備えている。
この図10における二層構造の保護層54A,54Bは、その上層と下層の各素材の積層位置を、前述した図9における二層構造の素材の積層位置とはを逆に設定した点に特徴を有する。この場合に形成されるディスク回転安定化板5を、基材T−4とする。
【0043】
そして、これら図7乃至図10に示した各ディスク回転安定化板5の透過率とその経時変化について測定した結果を図11に示す。
より具体的には、上述した図7乃至図10に示した各ディスク回転安定化板5について、80〔℃〕,90〔%〕,1000〔時間〕試験投入後に測定した透過率の値を、図11にまとめて示す。ここで、図11には、比較のため、保護層を設けていないソーダガラス自体(保護層なし)の結果も併せて示す。
尚、この第2実施例では、透明基材5Aにかかる透明基材(T−1乃至T−4,及びT−0)としては、上述したように、いずれもソーダ石灰ガラス(Na2 O−CaO−SiO2 )を使用した。
【0044】
この図11で明らかのように、いずれかの保護層6A,6Bを基材5Aの表面に設けることで、80〔℃〕,90〔%〕,1000〔時間〕後の透過率に大きな低下もなく、保護層付きの基材(ディスク回転安定化板5)を介して安定した情報の記録再生が可能であることが明らかとなった。
一方、保護層6A,6Bを設けない基材5Aは、試験後の透過率が著しく減少し、前述した図2にも示したように、環境試験後には情報の記録再生が明らかに不可能となっている。
【実施例3】
【0045】
次に、上記実施形態に基づく第3の実施例について説明する。
この第3の実施例では、透明基材5Aとして、アルカリ成分を含まないシリカガラスを用い、保護層6A,6Bとしては、前述した第2実施例の場合と同一の素材およびその組合せをそのまま採用した。
ここで、この第3の実施例で形成される実験用の5種類のディスク回転安定化板5については、前述した第2実施例の基材T−1乃至T−4およびT−0に対応して、基材T−5乃至T−8およびT−9とする。
【0046】
そして、これら基材T−5乃至T−8およびT−9にて特定した各ディスク回転安定化板5の透過率とその経時変化について測定した結果を、図11に示す。
より具体的には、上述した基材T−5乃至T−8およびT−9にて特定した各ディスク回転安定化板5について、80〔℃〕,90〔%〕,1000〔時間〕試験投入後に測定した透過率の値を、図12にまとめて示す。ここで、図12には、比較のため、保護層を設けていないシリカガラス自体(保護層なし:T−9)の結果も併せて示す。
【0047】
この図12より、いずれかの保護層を基材表面に設けることで80〔℃〕,90〔%〕,1000〔時間〕後の透過率には、大きな低下もなく、保護層付きの基材(ディスク回転安定化板5)を介して安定した情報の記録再生が可能であることが判る。
【0048】
一方、基材5Aとして、保護層を設けないシリカガラスを用いた場合には、試験後の透過率の低下はソーダガラスに比べると少ないが、反射率の低下量が2〔%〕を超えているため、保護層をつけたほうが望ましいことは明らかである。
この場合、保護層を設けないシリカガラスの透過率が環境試験後に低下する要因は、シリカガラス作製時の研磨剤成分の残渣等が大気中のH2 Oと反応したことによるものと考察することができる。
【0049】
尚、本実施例3では、保護層としてポリカーボネイトからなるシートや、Siを主成分として、更にはHf,Cr,Zr,Y,Ta,Al,Tiの中から選択された少なくとも一つ以上の元素を含むこれらの複合酸化物、複合窒化物又は複合酸窒化物からなる誘電体層を用いた例を示したが、これらに限定されるものではない。例えば、保護層6A,6Bとして、紫外線硬化タイプのUV樹脂を用い、基材5A上にスピン塗布して形成する方法や、UV樹脂にディッピングしたあと樹脂中から引き上げ、スピン展開により樹脂を塗布し、紫外線硬化した保護層を用いたものでも、同様の効果が得られることを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
ディスク回転安定化板の性能維持は重要課題であり、薄型光ディスクの動作を長期間安定化させるために不可欠のものであり、薄型光ディスクの開発強化に伴って、本発明の重要性は高まる傾向にある。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態における光学的情報記録再生装置を示す概略構成図である。
【図2】(元表1) 図1に開示した一実施形態にかかる第1実施例におけるディスク回転安定化板の環境試験の結果を示す図表である。
【図3】(元図2) 本発明の一実施形態にかかる第1実施例におけるディスク回転安定化板の例を示す説明図である。
【図4】(元図3) 本発明の一実施形態にかかる第1実施例におけるディスク回転安定化板の他の例を示す説明図である。
【図5】(元表2) 図2乃至図4に開示した第1実施例における保護層を、複合酸化物,複合窒化物,又は複合酸窒化物により形成した場合の当該各誘電体層の膜組成と屈折率との関係を示す説明図である。
【図6】(元図4) 本発明の第1実施例の保護層として種々の誘電体層を用いた場合の当該誘電体層の屈折率に対するディスク回転安定化板の透過率の関係の測定結果を示す線図である。
【図7】(元図5(a)) 本発明の第2実施例におけるディスク回転安定化板における保護層を一層構造とした場合の例(T−1)を示す説明図である。
【図8】(元図5(b)) 本発明の第2実施例におけるディスク回転安定化板における保護層を他の一層構造とした場合の例(T−2)を示す説明図である。
【図9】(元図5(c)) 本発明の第2実施例におけるディスク回転安定化板における保護層を二層構造とした場合の例(T−3)を示す説明図である。
【図10】(元図5(d)) 本発明の第2実施例におけるディスク回転安定化板における保護層を他の二層構造とした場合の例(T−4)を示す説明図である。
【図11】(元表3) 本発明の第2実施例におけるディスク回転安定化板(T−1)〜(T−4)について80〔℃〕90〔%〕1000〔時間〕試験投入後に測定した透過率の測定値を示す図表である。
【図12】(元表4) 本発明の第3実施例におけるディスク回転安定化板(T−5)〜(T−8)について80〔℃〕90〔%〕1000〔時間〕試験投入後に測定した透過率の測定値を示す図表である。
【符号の説明】
【0052】
1 光ディスク(薄型光ディスク)
2 スピンドルモータ
3 光学ヘッド
4 スペーサ
5 ディスク回転安定化板
5A 基材(透明基材)
6A,6B,51A,51B,52A,52B,53A,53B,54A,54B 保護層
41 記録再生領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的情報記録再生装置が備えている光ディスクの情報記録再生面に対向して配置されスペーサを介して前記光ディスクに対して一体的に装着されるディスク回転安定化板であって、
前記光ディスクよりも直径の大きい透明基材からなる安定化板本体と、この安定化板本体の両面に設けられた保護層とを含む構成とし、
前記各保護層を、前記光ディスクに対する記録再生用のレーザ光を透過可能な少なくとも一層以上の保護層としたことを特徴とするディスク回転安定化板。
【請求項2】
前記請求項1に記載のディスク回転安定化板において、
前記安定化板本体を構成する透明基材は、SiO2 を主成分としたガラス組成物からなることを特徴とするディスク回転安定化板。
【請求項3】
前記請求項1に記載のディスク回転安定化板において、
前記保護層を透明なシートにより構成したことを特徴とするディスク回転安定化板。
【請求項4】
前記請求項1に記載のディスク回転安定化板において、
前記保護層は、前記安定化板本体上にあって、対応する前記光ディスクの記録領域又は再生領域を覆うと共に当該記録領域又は再生領域よりも広い範囲にわたって設定されていることを特徴とするディスク回転安定化板。
【請求項5】
前記請求項1に記載のディスク回転安定化板において、
前記安定化板本体と前記保護層とを共通に透過するレーザ光の透過率が98〔%〕以上であることを特徴とするディスク回転安定化板。
【請求項6】
前記請求項1,2,3,4又は5に記載のディスク回転安定化板において、
前記保護層を、Siを主成分とし、更にHf,Cr,Zr,Y,Ta,Al,Tiの中から選択された少なくとも一つ以上の元素を含む複合酸化物、複合窒化物、又は複合酸窒化物を素材とする誘電体層で形成したことを特徴とするディスク回転安定化板。
【請求項7】
前記請求項1,2,3,4,又は5に記載のディスク回転安定化板において、
前記保護層を、Siを主成分とし、更にHf,Cr,Zr,Y,Ta,Al,Tiの中から選択された少なくとも一つ以上の元素を含むこれらの複合酸化物、複合窒化物又は複合酸窒化物からなる誘電体層で形成し、その上に、透明なシートを積層して形成したことを特徴とするディスク回転安定化板。
【請求項8】
前記請求項1,2,3,4,又は5に記載のディスク回転安定化板において、
前記保護層を、透明なシートで形成すると共に、この透明シート上に、Siを主成分とし更にHf,Cr,Zr,Y,Ta,Al,Tiの中から選択された少なくとも一つ以上の元素を含むこれらの複合酸化物、複合窒化物又は複合酸窒化物からなる誘電体層が積層されて成ることを特徴としたディスク回転安定化板。
【請求項9】
前記請求項1,2,3,4又は5に記載のディスク回転安定化板において、
前記保護層を、Siを主成分として、更にHf,Cr,Zr,Y,Ta,Al,Tiの中から選択された少なくとも一つ以上の元素を含むこれらの複合酸化物、複合窒化物又は複合酸窒化物からなる誘電体層で形成すると共に、この保護層の膜厚を30〔nm〕乃至195〔nm〕の範囲に設定したことを特徴とするのディスク回転安定化板。
【請求項10】
光ディスクを回転させる回転駆動手段と前記光ディスクの情報記録再生面にレーザ光を集光する記録再生用光学ヘッドとを備えた光学的情報記録再生装置において、
前記光ディスクの情報記録再生面に対向し且つスペーサを介して前記光ディスクに一体的にディスク回転安定化板を配設し、
このディスク回転安定化板を、前記光ディスクよりも直径の大きい透明部材からなる安定化板本体と、この安定化板本体の両面に設けられた保護層とを含む構成とし、
前記各保護層をレーザ光を透過可能な少なくとも一層以上の保護層としたことを特徴とする光学的情報記録再生装置。
【請求項1】
光学的情報記録再生装置が備えている光ディスクの情報記録再生面に対向して配置されスペーサを介して前記光ディスクに対して一体的に装着されるディスク回転安定化板であって、
前記光ディスクよりも直径の大きい透明基材からなる安定化板本体と、この安定化板本体の両面に設けられた保護層とを含む構成とし、
前記各保護層を、前記光ディスクに対する記録再生用のレーザ光を透過可能な少なくとも一層以上の保護層としたことを特徴とするディスク回転安定化板。
【請求項2】
前記請求項1に記載のディスク回転安定化板において、
前記安定化板本体を構成する透明基材は、SiO2 を主成分としたガラス組成物からなることを特徴とするディスク回転安定化板。
【請求項3】
前記請求項1に記載のディスク回転安定化板において、
前記保護層を透明なシートにより構成したことを特徴とするディスク回転安定化板。
【請求項4】
前記請求項1に記載のディスク回転安定化板において、
前記保護層は、前記安定化板本体上にあって、対応する前記光ディスクの記録領域又は再生領域を覆うと共に当該記録領域又は再生領域よりも広い範囲にわたって設定されていることを特徴とするディスク回転安定化板。
【請求項5】
前記請求項1に記載のディスク回転安定化板において、
前記安定化板本体と前記保護層とを共通に透過するレーザ光の透過率が98〔%〕以上であることを特徴とするディスク回転安定化板。
【請求項6】
前記請求項1,2,3,4又は5に記載のディスク回転安定化板において、
前記保護層を、Siを主成分とし、更にHf,Cr,Zr,Y,Ta,Al,Tiの中から選択された少なくとも一つ以上の元素を含む複合酸化物、複合窒化物、又は複合酸窒化物を素材とする誘電体層で形成したことを特徴とするディスク回転安定化板。
【請求項7】
前記請求項1,2,3,4,又は5に記載のディスク回転安定化板において、
前記保護層を、Siを主成分とし、更にHf,Cr,Zr,Y,Ta,Al,Tiの中から選択された少なくとも一つ以上の元素を含むこれらの複合酸化物、複合窒化物又は複合酸窒化物からなる誘電体層で形成し、その上に、透明なシートを積層して形成したことを特徴とするディスク回転安定化板。
【請求項8】
前記請求項1,2,3,4,又は5に記載のディスク回転安定化板において、
前記保護層を、透明なシートで形成すると共に、この透明シート上に、Siを主成分とし更にHf,Cr,Zr,Y,Ta,Al,Tiの中から選択された少なくとも一つ以上の元素を含むこれらの複合酸化物、複合窒化物又は複合酸窒化物からなる誘電体層が積層されて成ることを特徴としたディスク回転安定化板。
【請求項9】
前記請求項1,2,3,4又は5に記載のディスク回転安定化板において、
前記保護層を、Siを主成分として、更にHf,Cr,Zr,Y,Ta,Al,Tiの中から選択された少なくとも一つ以上の元素を含むこれらの複合酸化物、複合窒化物又は複合酸窒化物からなる誘電体層で形成すると共に、この保護層の膜厚を30〔nm〕乃至195〔nm〕の範囲に設定したことを特徴とするのディスク回転安定化板。
【請求項10】
光ディスクを回転させる回転駆動手段と前記光ディスクの情報記録再生面にレーザ光を集光する記録再生用光学ヘッドとを備えた光学的情報記録再生装置において、
前記光ディスクの情報記録再生面に対向し且つスペーサを介して前記光ディスクに一体的にディスク回転安定化板を配設し、
このディスク回転安定化板を、前記光ディスクよりも直径の大きい透明部材からなる安定化板本体と、この安定化板本体の両面に設けられた保護層とを含む構成とし、
前記各保護層をレーザ光を透過可能な少なくとも一層以上の保護層としたことを特徴とする光学的情報記録再生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−99216(P2009−99216A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270625(P2007−270625)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
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