説明

ディスク欠陥検査方法

【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
この発明は、ディスク欠陥検査方法に関し、詳しくは磁気ディスクの素材のサブストレート円板を対象とし、そのピット欠陥を比較検出するコンパレータに対して適切な基準値を設定する方法に関する。
[従来の技術]
情報記録媒体として使用されているハード磁気ディスクは、アルミニュームに例えば、ニッケル・燐合金(Ni−P)のメッキを施してサブストレート円板を素材とし、その表面を研磨した後、磁性体を塗布するかまたはメッキして磁性膜が形成され、製造される。
第2図(a),(b)はサブストレート円板1の(Ni−P)メッキに存在する各種の欠陥を示すもので、孤立した突起または異物(イ)の凸部、線状の疵(ロ)や凸部(ハ)がランダムに分布しており、(Ni−P)メッキの研磨においては、凸部や疵を削り取り、凹部を除くためにその深さに相当する分だけ全面が研磨される。しかし、研磨によっても凸部や疵はすべて削り取られず、また凹部は深さは浅いが直径が30〜50μm程度のピット欠陥とよばれる皿状となって残存することが多い。これらの凸部、疵やピット欠陥が残存するときは、磁性体の塗布が満足に行われず磁気ディスクの品質が低下するので、研磨中または研磨後に検査が行われる。
第3図(a)〜(b)により、上記の凸部、疵やピット欠陥の検査方法を説明する。図(a)において、光源3よりのレーザビームLTを投光レンズ3により集束し、被検査のサブストレート円板1の表面に対して適当な入射角θで投光してスポットSpを形成する。その正反射光LRは集光レンズ4を通ってミラー5により直角方法に反射され、ピンホール6を通して第1の受光器7に受光される。そこで表面に欠陥がないときは、受光器7の受光信号が実質的に一定のレベルになる。円板1は図示しない回転機構により回転し、スポットSpを半径方向に移動して走査され、表面に凸部や疵があるとスポットSpが広い角度方向に散乱し、散乱光は集光レンズ4により集光され、受光レンズ8を通して第2の受光器9により受光されてそれぞれ検出される。ピット欠陥の場合は、その断面が浅い皿状のために散乱光は比較的少ないので、第2の受光器9によっては検出できない。これに対して、ピット欠陥は図(b)に示すように凹面鏡の作用をなして正反射光の方向がLRからLR′に変化し、ピンホール6を通過する光量が低下するので、第1の受光器7の受光信号Srがピット欠陥に対応して低下する。この受光信号Srは、図(c)に示す検出回路に入力してアンプ10により適当に増略され、コンパレータ11において一定の基準値SL(閾値)と比較される。その結果としてピット欠陥が検出され、コンパレータ11から欠陥信号Sdが出力される。図(d)は増幅された受光信号Srのピット欠陥による低下と、一定の基準値SLおよび欠陥信号Sdを示す。
[解決しようとする課題]
さて、上記の(Ni−P)メッキの研磨においては、第4図(a),(b)に斜線で示す内周部1aと外周部1bには、表面が微小な角度δθi,δθoでそれぞれ内方および外方に傾斜(ダレと呼ばれる)が生じ、このダレは研磨作業上避けられないとされている。このようなダレがあると、前記したレーザビームLTの正反射光LRの方向が微小に変化するために第1の受光器7の受光量が低下する。したがって、図(c)のように受光信号SrのレベルがSr′に低下し、一定の基準値SLの相対的なレベル関係により、ピット欠陥が検出できないか、またはすべてが欠陥信号となる。このような低下した受光信号Sr′に対して、基準値SLをSL′まで低下すればピト欠陥を検出することができる。しかし、基準値をつねにSL′とすると受光信号Srに対して不適当な値となってピット欠陥が検出されない。しかも、ダレは、研磨の仕方に応じて発生するので、ディスク1枚、1枚異なり、固定的なものではない。
なお、第4図(a),(b)に斜線で示す内周部1aと外周部1bの傾斜部分は、サブストレート円板を表面を研磨した後、磁性体を塗布するかまたはメッキして磁性膜が形成した後も影響し、傾斜部分として残るので、磁性体形成後も同様な問題がある。
この発明は以上に鑑みてなされたもので、ディスクの欠陥検査において、基準値SLを可変とし、内周と外周の中間の水平部に対してSLを、また傾斜部に対してSL′を設定することで、水平部と、内周および外周の傾斜部のそれぞれに対して、適切な基準値で検査することができるディスク欠陥検査方法を提供することを目的とするものである。
[課題を解決するための手段]
このような目的を達成するためのこの発明のディスク欠陥検査方法の特徴は、ディスクの内周と外周の中間の水平部と内周傾斜部とを区分けする半径位置データと水平部と外周傾斜部とを区分けする半径位置データと内周傾斜部と外周の傾斜部の傾斜角とをそれぞれ計測し、それぞれの半径位置データと傾斜角に対応するそれぞれの基準値とをメモリに記憶し、レーザスポットの走査位置が水平部または傾斜部にあることを現在のレーザスポットの半径方向の走査位置とメモリに記憶した半径位置データとの関係において検出し、この検出の結果、水平部に走査位置があるときにはメモリから水平部に対応する基準値を読出してコンパレータに設定し、傾斜部に走査位置があるときにはメモリから傾斜部に対応する基準値を読出してコンパレータに設定するものである。
また、前記方法において、さらにマイクロプロセッサと回転機構に設けられたディスクの回転基準を検出して回転基準信号を発生する検出器とを有し、回転基準信号をカウントして、レーザスポットの現在の走査位置を得て、マイクロプロセッサが現在の走査位置と半径位置データとに応じて水平部および傾斜部のそれぞれに応じた基準値をメモリから読出すものである。
[作用]
以上の基準値設定方法は、被検査のディスクの、内周と外周の中間の水平部、および内周と外周の傾斜部のそれぞれの半径位置データと、水平部と傾斜部に対するそれぞれの基準値が、予め計測されてメモリに記憶され、例えば、ディスク回転角度検出器より得られる回転基準信号に応じてレーザスポットの現在の走査位置を得て、この走査位置に応じて水平部と傾斜部それぞれに対する基準値がメモリから読出されてコンパレータに設定されるもので、傾斜部における正反射光レベルの低下に拘らず、欠陥が安定に検出できる。
[実施例]
第1図は、この発明によるディスク欠陥検査方法を適用したディスク欠陥検査装置の実施例のブロック構成を示す。
欠陥検査に先立ってディスクの水平部と傾斜部に対する半径位置と傾斜角が計測され、計測された半径位置データとそれぞれに対する、計測された傾斜角に応じたコンパレータ11に対する各基準値データが前記半径位置データに対応してマイクロプロセッサ(MPU)12の内部のRAMに記憶される。なお、傾斜角に応じた基準値は、欠陥検査において経験的、実験的に得られたものである。
MPU12に半径位置データと、これに対応して基準値データが入力されると、それを内部のRAMに記憶し、制御信号[T]を発生して基準値設定回路13のトライステートアンプ13aに送出する。これを通してRAMに記憶されたデータに基づいて半径位置に対するRAM13bのアドレス信号が生成され、RAM13bの対応したアドレスを選択し、半径位置に対応してそれぞれの基準値が書込み信号[W]によりデータとしてアンプ13cを通してRAM13bに記憶される。これにより、ディスク1の半径位置が外側傾斜部のところではこれに対応するRAM13bのアドレスに外側傾斜部の基準値、ディスク1の半径位置が水平部のところではこれに対応するRAM13bのアドレスに水平部の基準値、そしてディスク1の半径位置が内側傾斜部のところではこれに対応するRAM13bのアドレスに内側傾斜部の基準値がそれぞれ記憶される。
光学系は前記した第3図(a)と同様であるので省略する。ディスク欠陥検査においては、第1の受光器7より出力される正反射光の受光信号はアンプ10によりSrに増幅されてコンパレータ11に入力する。一方、検査装置に設けられたディスク回転角度検出器14より出力される回転基準信号が、Rカウンタ13dによりカウントされて1回転ごとのカウントが行われる。1回転の半径方向の移動量に対応してそのカウント値がレーザスポットSpの現在の半径方向の走査位置を与える。したがって、Rカウンタ13dにより現在の走査位置に対応する半径位置が検出される。このRカウンタ13dの現在の走査位置に対応する半径位置データは、MPU12に入力され、ここで、半径位置データから水平部または傾斜部に対するRAM13bのアドレス信号が生成される。すなわち、ディスク1の半径位置が外側傾斜部のところではこれに対応するRAM13bのアドレスが得られ、ディスク1の半径位置が水平部のところではこれに対応するRAM13bのアドレスが得られ、そして、ディスク1の半径位置が内側傾斜部のところではこれに対応するRAM13bのアドレスが得られる。
そして、制御信号[T]の反転により、アンプ13eが動作して生成された前記のアドレス信号がRAM13bに与えられてアドレスが選択され、読出し信号[R]により水平部、傾斜部に対応する基準値データが読出されてD/A変換器13fによりアナログ化され、コンパレータ11に設定される。この設定により、受光信号Srが識別されて欠陥信号Sdが出力される。
なお、この実施例では、半径位置データと基準値データとをMPUのRAMとRAM13bとに分けて記憶しているが、これは、検査動作に対応してコンパレータに高速に基準値を出力するために過ぎない。これらRAMがこの発明の半径位置データと基準値データとを記憶するメモリであり、分離されていても一体的なものがあってもよい。
[発明の効果]
以上の説明により明らかなように、この発明にあっては、被検査のディスクの、水平部と傾斜部のそれぞれの半径位置と、それぞれに対する基準値が、予め計測されてメモリに記憶され、例えば、ディスク回転角度検出器よりえられる基準回転位置信号の1回転に応じて、これをマイクロプロセッサで受けて水平部と傾斜部の半径位置を検出して、それぞれに対する基準値がマイクロプロセッサにより読出されてコンパレータに設定され、傾斜部における正反射光の低下に拘らず、ピット欠陥が安定に検出されるもので、ディスク欠陥検査装置に寄与する効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
第1図は、この発明によるディスク欠陥検出方法を適用したディスク欠陥検査装置の実施例のブロック構成図、第2図(a)および(b)は、磁気ディスクのサブストレート円板に存在する各種の欠陥の説明図、第3図(a),(b),(c)および(d)は、ディスク欠陥検査装置の光学系の構成図と、ピット欠陥の検出方法の説明図、第4図(a),(b)および(c)は、サブストレート円板の研磨により生ずる内周と外周の傾斜部と、ピット欠陥検出に対する問題点の説明図である。
1……サブストレート円板、1a……内周部、
1b……外周部、2……光源、
3……集束レンズ、4……集光レンズ、
5……ミラー、6……ピンホール、
7……第1の受光器、8……集束レンズ、
9……第2の受光器、10……アンプ、
11……コンパレータ、
12……マイクロプロセッサ(MPU),
13……基準値設定回路、
13a,13c,13e……トライステートアンプ、
13b……RAM、13d……Rカウンタ、
13f……D/A変換器、14……回転角度検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】ディスクを回転機構により回転させて前記ディスクに対して適当な入射角で投光されたレーザビームのスポットを、相対的に半径方向に移動して前記ディスクを走査し、前記ディスクの欠陥を検出するディスク欠陥検査方法において、前記ディスクの内周と外周の中間の水平部と内周傾斜部とを区分けする半径位置データと前記水平部と外周傾斜部とを区分けする半径位置データと前記内周傾斜部と前記外周の傾斜部の傾斜角とをそれぞれ計測し、前記それぞれの半径位置データと前記傾斜角に対応するそれぞれの基準値とをメモリに記憶し、前記スポットの走査位置が前記水平部または前記傾斜部にあることを現在の前記スポットの半径方向の走査位置と前記メモリに記憶した半径位置データとの関係において検出し、この検出の結果、前記水平部に前記走査位置があるときには前記メモリから前記水平部に対応する基準値を読出して前記コンパレータに設定し、前記傾斜部に前記走査位置があるときには前記メモリから前記傾斜部に対応する基準値を読出して前記コンパレータに設定するディスク欠陥検査方法。
【請求項2】さらにマイクロプロセッサと前記回転機構に設けられたディスクの回転基準を検出して回転基準信号を発生する検出器とを有し、前記回転基準信号をカウントして、前記スポットの前記現在の走査位置を得て、前記マイクロプロセッサが前記現在の走査位置と前記半径位置データとに応じて前記水平部および前記傾斜部のそれぞれに応じた前記基準値を前記メモリから読出す請求項1記載のディスク欠陥検査方法。

【第1図】
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【第2図】
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【第3図】
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【第4図】
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【特許番号】第2927515号
【登録日】平成11年(1999)5月14日
【発行日】平成11年(1999)7月28日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−184884
【出願日】平成2年(1990)7月12日
【公開番号】特開平4−70552
【公開日】平成4年(1992)3月5日
【審査請求日】平成9年(1997)7月9日
【出願人】(999999999)日立電子エンジニアリング株式会社
【参考文献】
【文献】特開 平1−13741(JP,A)
【文献】特開 昭62−228148(JP,A)
【文献】特開 平2−74851(JP,A)
【文献】特開 平2−184708(JP,A)
【文献】特開 平3−242540(JP,A)
【文献】特開 平3−4149(JP,A)