説明

ディスク記憶装置のヘッドアンプ装置

【課題】ライトヘッドの帯磁状態を検出するテストモードを自動的に実行する帯磁テスト機能を実現できるディスク記憶装置を提供することにある。
【解決手段】垂直磁気記録方式のディスクドライブにおいて、ヘッドアンプ回路6に搭載されているデガウス制御回路62及びデガウス回路63を利用して、HDC9はライトヘッドの帯磁状態を検出する帯磁テストモードを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録方式のディスク記憶装置に適用するヘッドアンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、垂直磁気記録方式のディスク記憶装置(以下、ディスクドライブと表記する)では、ライトヘッド(記録ヘッド)として、垂直磁気記録に適合する単磁極型ヘッド(SPT : single pole type head)が使用されている。
【0003】
このようなディスクドライブおいて、ライトヘッドにより、ディスク媒体上にデータ信号が垂直磁気記録された後に、当該ライトヘッドに印加する記録電流を零にしても、当該ライトヘッドは磁化が残留して帯磁状態となる。
【0004】
このライトヘッドの残留磁化を要因として、ライト動作(データ記録)の終了後に、ディスク媒体上のデータセクタの記録データや、サーボセクタ上に記録されたサーボデータが誤って消去されるという問題がある。なお、このような問題は、長手磁気記録方式のディスクドライブでは発生しない。
【0005】
このような問題を解決する先行技術として、磁気ヘッドの残留磁化を除去する帯磁除去回路(消磁回路またはデガウス回路とも呼ばれる)を有するデータ書き込み回路が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この帯磁除去回路は、ライトゲートが閉じた後に書き込み電流(記録電流)を一定の時定数でデータの立下りに合わせて減衰消去させていく回路である。また、デガウス回路を含むリード/ライトチャネルを備えたディスクドライブが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平5−84564号公報
【特許文献2】特開平7−134804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ライトヘッドの残留磁化を除去するデガウス回路と共に、ディスクドライブでは、製造時または製品として出荷後の動作時に、搭載されたライトヘッドの帯磁状態を検出するテストモードを自動的に実行する機能(帯磁テスト機能)が有用である。このような機能を、ディスクドライブの自己故障診断機能、例えばSMART(Self-Monitoring Analysis and Reporting Technology System)機能の一つとして組み込むことにより、ホストシステムは、ライトヘッドの帯磁状態を把握することができる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、帯磁テスト機能を実現できるディスク記憶装置に適用するヘッドアンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の観点に従ったヘッドアンプ装置は、ディスク媒体上にライトデータを記録するための垂直磁気記録を行なうライトヘッドを含む磁気ヘッドを有するディスク記憶装置に適用するヘッドアンプ装置であって、前記ライトヘッドの残留磁化を除去する消磁動作を実行するためのデガウス信号を生成するデガウス回路と、ライトデータまたは前記デガウス信号に対応する記録電流を前記ライトヘッドに供給するライトドライバ手段と、前記デガウス回路からの前記デガウス信号の出力を制御し、かつ前記ライトドライバ手段からの記録電流の出力を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、外部からのデータ記録の指示に応じて、ライトデータ及び前記デガウス信号に対応する記録電流を前記ライトドライバ手段から出力させるように制御し、外部からの帯磁テストの指示に応じて、ライトデータ及び前記デガウス信号のそれぞれの無効及び有効のタイミングを設定するテスト用ライトシーケンスに従った記録電流を前記ライトドライバ手段から出力させるように制御するように構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、帯磁テスト機能を実現できるディスク記憶装置に適用するヘッドアンプ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の各実施形態に関する垂直磁気記録方式のディスクドライブの要部を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態に関するデガウス制御回路の構成を示すブロック図。
【図3】第1の実施形態に関する通常のデータ記録/再生モードでのヘッドアンプ回路の動作を説明するためのタイミングチャート。
【図4】第1の実施形態に関する帯磁テストモードでのヘッドアンプ回路の動作を説明するためのタイミングチャート。
【図5】第2の実施形態に関するデガウス制御回路の構成を示すブロック図。
【図6】第2の実施形態に関するヘッドアンプ回路の動作を説明するためのタイミングチャート。
【図7】第3の実施形態に関するデガウス制御回路の構成を示すブロック図。
【図8】第3の実施形態に関するヘッドアンプ回路の動作を説明するためのタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0013】
(ディスクドライブの構成)
図1は、各実施形態に関する垂直磁気記録方式のディスクドライブの要部を示すブロック図である。
【0014】
本実施形態のディスクドライブは、図1に示すように、ディスク媒体1と、磁気ヘッド2と、当該ディスク媒体1を回転させるスピンドルモータ(SPM)3と、磁気ヘッド2を搭載するアクチュエータとを有するドライブ機構、及び制御・信号処理回路系を有する。
【0015】
ディスク媒体1は、垂直磁気記録可能な記録媒体であり、後述するように、最外周または最内周に帯磁テストモード用のトラック(テスト用記録領域)を含む多数のトラック100が設けられている。磁気ヘッド2は、垂直磁気記録を行うための単磁極ヘッド(SPTヘッド)からなるライトヘッドと、ディスク媒体1から記録データ信号を再生するためのリードヘッドとを有する。
【0016】
アクチュエータは、磁気ヘッド2を搭載しているアーム(サスペンションを含む)4と、駆動力を発生するボイスコイルモータ(VCM)5とからなる。アクチュエータは、マイクロプロセッサ(CPU)10のサーボ制御により、磁気ヘッド2をディスク媒体1上の半径方向に移動させて、目標位置(目標トラック)に位置決めする。
【0017】
制御・信号処理回路系は大別して、ヘッドアンプ回路6と、モータドライバ7と、リード/ライトチャネル8と、ディスクコントローラ(HDC)9と、CPU10と、メモリ11とを有する。
【0018】
モータドライバ7は、CPU9の制御に従って、SPM3に駆動電流を供給するSPMドライバ70と、VCM5に駆動電流を供給するVCMドライバ71とを有する。リード/ライトチャネル8は、リード/ライト信号処理回路であり、ヘッドアンプ回路6にライトデータ信号WD28を出力し、またヘッドアンプ回路6からのリードデータ信号(再生信号)RS29を入力する。
【0019】
HDC9は、ディスクドライブとホストシステム(パーソナルコンピュータやディジタル機器)とのインタフェースを構成し、ホストシステムとの間でユーザデータのリード/ライト転送制御を実行する。
【0020】
HDC9は、バスI/Fからなる双方向制御信号線RC22を介して、リード/ライトチャネル8のリード/ライト動作を制御する。また、HDC9は、所定のフォーマットを持つライトデータ及びリードデータ(WD/RD25)を、ライトゲートWG23及びリードゲートRG24に同期して、リード/ライトチャネル8との間で送受信する。
【0021】
さらに、HDC9は、シリアルI/Fからなる双方向制御信号線AC20を介して、ヘッドアンプ回路6のリード/ライト動作を制御すると共に、ライトゲートWGA21をヘッドアンプ回路6に送出する。
【0022】
ここで、ライトゲートWGA21は、ライトゲートWG23と同時に送出されるもので、リード/ライトチャネル8から送出されるライトデータ信号WD28に応じてタイミング調整されたゲート信号である。リード/ライトチャネル8は、HDC9からのライトゲートWG23及びライトデータWD25に従って、所定のフォーマットで一定のタイミング遅延を持ってライトデータ信号WD28(ライトデータWD25の符号化信号)をヘッドアンプ回路6に送出する。
【0023】
さらにまた、HDC9は、リード/ライトチャネル8に対してサーボゲートSG26を送出し、再生信号RS29から復号化されたヘッド位置決めのためのサーボデータSD27を受け取る。
【0024】
CPU10は、ディスクドライブのメイン制御装置であり、磁気ヘッド2の位置決め制御(サーボ制御)を実行するためのサーボシステムのメイン要素である。CPU10は、HDC9を介して受け取るサーボデータSD27に従って、シーク動作及びトラック追従動作を制御する。具体的には、CPU10は、VCMドライバ71の入力値(制御電圧値)を制御することにより、アクチュエータのVCM5を駆動制御する。また、CPU10は、本実施形態の帯磁テストモードを、HDC9を制御して実行させる。
【0025】
メモリ11は、RAM、ROM及びフラッシュEEPROMを含み、CPU10の制御プログラム及び各種制御データを格納する。
【0026】
ヘッドアンプ回路6は、ライトドライバ61と、リードアンプ60と、デガウス(degaussing)制御回路62と、デガウス信号発生回路(以下単にデガウス回路と呼ぶ)63と、切替器64とを有する。
【0027】
ライトドライバ61は、磁気ヘッド2に含まれるライトヘッドに対して、ライトデータ信号WD28またはデガウス信号DS31に従った記録電流WS34を供給する。リードアンプ60は、磁気ヘッド2に含まれるリードヘッドからのリードデータ信号33を増幅して、再生信号RS29としてリード/ライトチャネル8に送出する。
【0028】
デガウス回路63は、例えば直線的や指数関数で信号振幅が減衰する一定周波数を持つデガウス(消磁または帯磁除去)信号DS31を発生する。切替器64は、HDC9からのライトゲートWGA21に従って、当該デガウス信号DS31またはライトデータ信号WD28の一方をライトドライバ61に転送する。
【0029】
デガウス制御回路62は、デガウス回路63のデガウス信号DS31の発生を制御するためのゲート信号DG30を出力すると共に、ライトドライバ61に対してライトヘッドへの記録電流信号WS34の出力を制御するためのゲート信号WGB32を出力する。
【0030】
また、ヘッドアンプ回路6は、通常のデータ記録/再生モードと、ライトヘッドの帯磁テストモードを有し、HDC9からアンプ制御信号AC20を介して転送されるモード切替指示により当該各モードの切替えが行われる。
【0031】
デガウス制御回路62は、具体的には図2に示すように、フリップフロップ(F/F)621、インバータ622、アンドゲート回路623,624、及びオアゲート回路625を有する。
【0032】
デガウス制御回路62は、図4を参照して後述するように、帯磁テストモードを実行するためのライトシーケンスを実現するゲートタイミング制御および信号制御を実行する。
【0033】
具体的には、フリップフロップ621は、HDC9からAC20を介してヘッドアンプ回路6に帯磁テストモードへの切替え命令が実行されると、CLR信号45によりイニシャライズされて、ライトシーケンス動作の可能状態に切替えられる。その後に、ヘッドアンプ回路6は、HDC9から送出されるライトゲートWGA21に応じて、帯磁テストモードのライトシーケンス動作を実行する。
【0034】
(通常のデータ記録/再生モード)
以下図3のタイミングチャートを参照して、通常のデータ記録/再生モードでのヘッドアンプ回路6の動作を説明する。
【0035】
まず、図3(A)に示すように、トラック100は、周方向に一定の間隔でサーボデータが記録されているサーボセクタ110、及び当該サーボセクタ110間に複数のデータセクタ(ユーザデータの記録領域)120が設けられている。
【0036】
通常のデータ記録/再生モードでは、図3(C),(E)に示すように、ライトデータWD28の終了直後に、デガウス信号DS31が常にライトドライバ61に印加される。
【0037】
具体的には、ヘッドアンプ回路6では、HDC9からのライトゲートWGA21(WG23)の立下りに同期して、デガウス制御回路62は、所定の時間幅を有するデガウス信号発生の制御ゲート信号DG30をデガウス回路63に出力する。デガウス回路63は、当該制御ゲート信号DG30に応じてデガウス信号DS31を生成して、切替器64に出力する(図3(B),(D),(E)を参照)。
【0038】
切替器64は、ライトゲートWGA21に同期して、ライトデータWD28からデガウス信号DS31に切替えてライトドライバ61に出力する。ライトドライバ61は、デガウス制御回路62から出力されるゲート信号WGB32に同期して、ライトデータWD28とデガウス信号DS31とからなる記録電流信号WS34を、ライトヘッドに供給する(図3(C),(E),(F),(G)を参照)。
【0039】
(帯磁テストモード)
次に、本実施形態に関する帯磁テストモードの動作を説明する。
【0040】
ライトヘッドの帯磁テストは、ライトヘッドの帯磁状態の検出、すなわち残留磁化が許容範囲を超えて存在していることを検出するためのテストである。原理的には、デガウス回路63のデガウス機能(消磁機能)を有効(オン)にした場合には、ライトヘッドによるデータ記録後に、それに続くデータの消去可能性が極めて低くなる。一方、デガウス機能が無効(オフ)でデータ記録がなされた場合には、それに続くデータの消去可能性が高くなることを利用している。
【0041】
具体的には、本実施形態のディスク媒体1には、最外周または最内周に帯磁テストモード用トラック(テスト用記録領域)が設けられている。このトラックは、図4(A)に示すように、通常の記録領域(図3(A)を参照)と同様に、サーボセクタ110間に複数のデータセクタ120が設けられている。なお、各データセクタ120には、予めテスト用データが記録されている。
【0042】
HDC9は、AC20を介してヘッドアンプ回路6に対して、通常のデータ記録/再生モードから帯磁テストモードへの切替え指示を出力する。更に、HDC9は、帯磁テストモードを実行するときに、サーボセクタ110間で連続するL個のデータセクタ120をアクセス(記録動作)するためのライトゲートWGA21を発行する(図4(B)を参照)。
【0043】
ここで、Lは、「L=M+N+1」で、「MはM≧1の整数、NはN≧0の整数」を意味する。HDC9は、帯磁テストモードの実行時に、M(≧1)個のデータセクタ120には、デガウス回路63のデガウス動作を無効にして、テスト用データを記録する。さらに、それに続くN(≧0)個のデータセクタ120には、データ記録及びデガウス動作のいずれも実行しない。さらに、それに続く最後の1個のデータセクタ120には、デガウス動作(またはデータ記録とデガウス動作の両方)を実行する。
【0044】
なお、前記のデータ記録を行わない(N+1)個あるいはN個のデータセクタには、テスト動作の初期時に、通常のデータ記録/再生モードでかつデガウス動作を有効にして、テスト用データを記録しておく。また、デガウス制御回路62は、制御ゲート信号DG30により、デガウス回路63のデガウス動作の有効または無効を制御する(図4(I),(J)を参照)。
【0045】
テスト用ライト動作(記録動作)の終了後に、HDC9は、リードゲートRG24を出力して、テストモード用トラックのデータセクタ120から、リードヘッドにより記録データ信号を再生する。具体的には、デガウス動作を無効にしてデータ記録を行ったM個のデータセクタに続く、データ記録を行わなかった(N+1)個あるいはN個のデータセクタから記録データ信号を再生する。
【0046】
CPU10は、HDC9から転送される再生信号の振幅値あるいはエラーレートに基づいて、ライトヘッドの帯磁状態を検出する。すなわち、再生信号の振幅値あるいはエラーレートが許容範囲より低下している場合には、ライトヘッドの帯磁状態は許容範囲を超えていると判定する。
【0047】
なお、HDC9は、当該帯磁テストモードでの再生信号の振幅値あるいはエラーレートを、ライトヘッドの帯磁状態を検出するための情報としてホストシステムに転送してもよい。ホストシステムは、当該情報に基づいて、ライトヘッドの帯磁状態が許容範囲を超えているか否かを判定する。
【0048】
ここで、HDC9は、サーボセクタ110間で記録動作が実行される最後のデータセクタにおいて、必ずデガウス動作が有効となるように、サーボセクタ間でP(Lの倍数)個のWGA21を発行するようにライトゲート制御を実行する。
【0049】
以下、図4のタイミングチャートを参照して、ディスクドライブでの帯磁テストモードにおいて、本実施形態のヘッドアンプ回路6の動作、すなわちテストライトシーケンスを説明する。
【0050】
ここで、本実施形態は、L=2,M=1,N=0の帯磁テストモードの場合である。図4は、HDC9によってサーボセクタ間でP(2の倍数)個のライトゲートWGA21を発行される場合に、ヘッドアンプ回路6及びデガウス制御回路62の各種ゲートおよび信号のタイミングチャートである。
【0051】
すなわち、HDC9は、L=2として、連続してライトゲートWGA21を発行して、2個のデータセクタ120を単位としたテストを実行する。最初のデータセクタには、デガウス動作を無効にした状態で、データを記録する(図4(K),(L)を参照)。
【0052】
即ち、HDC9は、ライトゲートWGA21及びライトデータWD28を出力する(図4(B),(C)を参照)。デガウス制御回路62は、図2に示すアンドゲート624のゲート制御信号DGA41をオフして、制御ゲート信号DG30をオフさせる(図4(D),(I)を参照)。これにより、デガウス回路63のデガウス動作は無効となり、デガウス信号DS31は出力されない(図4(J)を参照)。
【0053】
さらに、HDC9は、それに続く2個目のデータセクタにはデータ記録を実行せずに、デガウス動作のみを実行させる。即ち、デガウス制御回路62は、ゲート制御信号DGA41、制御ゲート信号DG30、ゲート信号WGB32をオンさせる(図4(D),(I)(J),(K)を参照)。これにより、デガウス回路63のデガウス動作は有効となり、デガウス信号DS31が出力されて、記録電流WS34としてライトドライバ61に供給される(図4(L)を参照)。
【0054】
そして、HDC9は、データ記録を行わなかった当該2個目のデータセクタの記録データ信号(予めテスト用データとして記録されている)を再生する。CPU10は、HDC9から転送される再生信号の振幅値あるいはエラーレートに基づいて、ライトヘッドの帯磁状態を検出する。
【0055】
ここで、テストモードでデータ記録を行わなかったデータセクタを含む全てのデータセクタを再生し、そのエラーレート低下を測定することで、ライトヘッドの帯磁状態の検出を実行しても良い。
【0056】
以上のように本実施形態によれば、ディスクドライブの製品出荷後に、ホストシステムからの指示または所定のときに、ヘッドアンプ回路6のデガウス制御回路62及びデガウス回路63を使用して、ライトヘッドの帯磁状態を検出する帯磁テストモードを実行する。従って、ディスクドライブまたはホストシステムは、ライトヘッドの帯磁状態を監視し、垂直磁気記録において発生しやすいライトヘッドの残留磁化を要因とするデータ消去の発生を未然に回避することが可能となる。換言すれば、本実施形態のディスクドライブは、ドライブの自己故障診断機能、例えばSMART(Self-Monitoring Analysis and Reporting Technology System)機能の一つとして、当該ライトヘッドの帯磁状態を監視する機能を実現することができる。
【0057】
なお、本実施形態のディスクドライブは、ホストシステムからの指示以外では、例えばデータ再生エラーによる故障診断機能を実行するとき、あるいはドライブの一定動作時間経過毎に、帯磁テストモードを実行する。
【0058】
また、ディスクドライブの製造時に、当該帯磁テストモードを実行する場合には、ディスク媒体1上のテスト用記録領域を設ける必要はなく、ディスク媒体1上の任意の記録領域を使用してもよい。
【0059】
(第2の実施形態)
図5及び図6は、第2の実施形態を説明するための図である。
【0060】
本実施形態は、L=3,M=1,N=1の帯磁テストモードの実行時に、HDC9がサーボセクタ間でP(3の倍数)個のライトゲートWGA21を発行するようにライトゲート制御を実行する構成である。
【0061】
本実施形態のデガウス制御回路62は、具体的には図5に示すように、フリップフロップ621A,621B、インバータ622,627,628、アンドゲート回路623,624,626、ナンドゲート回路629及びオアゲート回路625を有する。
【0062】
以下、図6のタイミングチャートを参照して、ディスクドライブでの帯磁テストモードにおいて、本実施形態のヘッドアンプ回路6の動作、すなわちテストライトシーケンスを説明する。
【0063】
HDC9からAC20を介して、ヘッドアンプ回路6に帯磁テストモードへの切替え指示が実行されると、デガウス制御回路62では、フリップフロップ621Aは、CLR信号56によりイニシャライズされて、ライトシーケンス動作の可能状態に切替えられる。その後に、ヘッドアンプ回路6は、HDC9から送出されるライトゲートWGA21に応じて、帯磁テストモードのライトシーケンス動作を実行する。
【0064】
HDC9は、L=3として、連続してライトゲートWGA21を発行して、3個のデータセクタ120を単位としたテストを実行する。最初のデータセクタには、デガウス動作を無効にした状態で、データを記録する(図6(K),(L)を参照)。
【0065】
即ち、HDC9は、ライトゲートWGA21及びライトデータWD28を出力する(図6(B),(C)を参照)。デガウス制御回路62は、図5に示すアンドゲート624のゲート制御信号DGA52をオフして、制御ゲート信号DG30をオフさせる(図6(D),(I)を参照)。これにより、デガウス回路63のデガウス動作は無効となり、デガウス信号DS31は出力されない(図6(J)を参照)。
【0066】
さらに、HDC9は、それに続く2個目のデータセクタにはデータ記録を実行せずに、デガウス動作のみを実行させる。即ち、デガウス制御回路62は、ゲート制御信号DGA52、制御ゲート信号DG30、ゲート信号WGB32をオンさせる(図6(D),(I)(J),(K)を参照)。これにより、デガウス回路63のデガウス動作は有効となり、デガウス信号DS31が出力されて、記録電流WS34としてライトドライバ61に供給される(図6(L)を参照)。
【0067】
テスト用ライト動作(記録動作)の終了後に、HDC9は、リードゲートRG24を出力して、テストモード用トラックのデータセクタ120から、リードヘッドにより記録データ信号を再生する。具体的には、データ記録を行わなかった2個目および3個目のデータセクタから記録データ信号(予めテスト用データとして記録されている)を再生する。
【0068】
CPU10は、HDC9から転送される再生信号の振幅値あるいはエラーレートに基づいて、ライトヘッドの帯磁状態を検出する。または、HDC9は、当該帯磁テストモードでの再生信号の振幅値あるいはエラーレートを、ライトヘッドの帯磁状態を検出するための情報としてホストシステムに転送してもよい。ホストシステムは、当該情報に基づいて、ライトヘッドの帯磁状態が許容範囲を超えているか否かを判定する。
【0069】
ここで、テストモードでデータ記録を行わなかったデータセクタを含む全てのデータセクタを再生し、そのエラーレート低下を測定することで、ライトヘッドの帯磁状態の検出を実行しても良い。
【0070】
以上の本実施形態においても、前述の第1の実施形態と同様に、ディスクドライブの製品出荷後に、ホストシステムからの指示または所定のときに、ヘッドアンプ回路6のデガウス制御回路62及びデガウス回路63を使用して、ライトヘッドの帯磁状態を検出する帯磁テストモードを実行する。従って、ディスクドライブまたはホストシステムは、ライトヘッドの帯磁状態を監視し、垂直磁気記録において発生しやすいライトヘッドの残留磁化を要因とするデータ消去の発生を未然に回避することが可能となる。換言すれば、本実施形態のディスクドライブは、ドライブの自己故障診断機能、例えばSMART(Self-Monitoring Analysis and Reporting Technology System)機能の一つとして、当該ライトヘッドの帯磁状態を監視する機能を実現することができる。
【0071】
なお、本実施形態のディスクドライブは、ホストシステムからの指示以外では、例えばデータ再生エラーによる故障診断機能を実行するとき、あるいはドライブの一定動作時間経過毎に、帯磁テストモードを実行する。
【0072】
また、ディスクドライブの製造時に、当該帯磁テストモードを実行する場合には、ディスク媒体1上のテスト用記録領域を設ける必要はなく、ディスク媒体1上の任意の記録領域を使用してもよい。
【0073】
(第3の実施形態)
図7及び図8は、第3の実施形態を説明するための図である。
【0074】
本実施形態は、前述の第2の実施形態と同様に、L=3,M=1,N=1の帯磁テストモードの実行時に、HDC9がサーボセクタ間でP(3の倍数)個のライトゲートWGA21を発行するようにライトゲート制御を実行する構成である。
【0075】
以下、第2の実施形態と比較して、主として異なる事項をついて説明する。
【0076】
本実施形態のデガウス制御回路62は、図7に示すように、フリップフロップ621A,621B、インバータ622,627,628、アンドゲート回路623,624,626、ナンドゲート回路629及びオアゲート回路625を有する。図5に示すデガウス制御回路62とは、アンドゲート回路623の入力の構成が異なっている。
【0077】
HDC9は、ライトゲートWGA21及びライトデータWD28を出力する(図8(B),(C)を参照)。デガウス制御回路62は、図7に示すアンドゲート624のゲート制御信号DGA62をオフして、制御ゲート信号DG30をオフさせる(図8(D),(I)を参照)。これにより、デガウス回路63のデガウス動作は無効となり、デガウス信号DS31は出力されない(図8(J)を参照)。
【0078】
さらに、HDC9は、それに続く2個目のデータセクタには、データ記録及びデガウス動作のいずれも実行しない。即ち、デガウス制御回路62は、ゲート制御信号DGA62、制御ゲート信号DG30、ゲート信号WGB32をオフさせる(図8(D),(I)(J),(K)を参照)。これにより、デガウス回路63のデガウス動作は無効となり、ライトドライバ61には記録電流が供給されない(図8(L)を参照)。
【0079】
さらに、HDC9は、それに続く3個目のデータセクタにはデータ記録およびデガウス動作を実行する。即ち、デガウス制御回路62は、ゲート制御信号DGA62、制御ゲート信号DG30、ゲート信号WGB32をオンさせる(図8(D),(I)(J),(K)を参照)。これにより、データ記録終了後に、デガウス回路63のデガウス動作は有効となり、デガウス信号DS31が出力されて、記録電流WS34としてライトドライバ61に供給される(図8(L)を参照)。
【0080】
そして、テスト用ライト動作(記録動作)の終了後に、HDC9は、リードゲートRG24を出力して、テストモード用トラックのデータセクタ120から、リードヘッドにより記録データ信号を再生する。具体的には、データ記録を行わなかった2個目のデータセクタから記録データ信号(予めテスト用データとして記録されている)を再生する。
【0081】
以上の本実施形態においても、前述の第2の実施形態と同様に、ディスクドライブの製品出荷後に、ホストシステムからの指示または所定のときに、ヘッドアンプ回路6のデガウス制御回路62及びデガウス回路63を使用して、ライトヘッドの帯磁状態を検出する帯磁テストモードを実行する。従って、ディスクドライブまたはホストシステムは、ライトヘッドの帯磁状態を監視し、垂直磁気記録において発生しやすいライトヘッドの残留磁化を要因とするデータ消去の発生を未然に回避することが可能となる。換言すれば、本実施形態のディスクドライブは、ドライブの自己故障診断機能、例えばSMART(Self-Monitoring Analysis and Reporting Technology System)機能の一つとして、当該ライトヘッドの帯磁状態を監視する機能を実現することができる。
【0082】
なお、第1から第3の各実施形態において、ヘッドアンプ回路6は、内部のデガウス制御回路62によりデガウス回路63のデガウス機能を有効または無効を制御するため、外部から当該制御を実行するための制御信号線は不要である。
【0083】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…ディスク媒体、2…磁気ヘッド(ライトヘッドとリードヘッド)、
3…スピンドルモータ(SPM)、4…アーム、5…ボイスコイルモータ(VCM)、
6…ヘッドアンプ回路、7…モータドライバ、8…リード/ライトチャネル、
9…ディスクコントローラ(HDC)、10…マイクロプロセッサ(CPU)、
11…メモリ、60…リードアンプ、61…ライトドライバ、
62…デガウス制御回路、63…デガウス信号発生回路(デガウス回路)
64…切替器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク媒体上にライトデータを記録するための垂直磁気記録を行なうライトヘッドを含む磁気ヘッドを有するディスク記憶装置に適用するヘッドアンプ装置であって、
前記ライトヘッドの残留磁化を除去する消磁動作を実行するためのデガウス信号を生成するデガウス回路と、
ライトデータまたは前記デガウス信号に対応する記録電流を前記ライトヘッドに供給するライトドライバ手段と、
前記デガウス回路からの前記デガウス信号の出力を制御し、かつ前記ライトドライバ手段からの記録電流の出力を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、
外部からのデータ記録の指示に応じて、ライトデータ及び前記デガウス信号に対応する記録電流を前記ライトドライバ手段から出力させるように制御し、
外部からの帯磁テストの指示に応じて、ライトデータ及び前記デガウス信号のそれぞれの無効及び有効のタイミングを設定するテスト用ライトシーケンスに従った記録電流を前記ライトドライバ手段から出力させるように制御することを特徴とするヘッドアンプ装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記帯磁テストの指示に応じてライトデータの記録動作のタイミングを設定するライトゲート信号を受信し、
前記ライトゲート信号に応じて前記デガウス回路からの前記デガウス信号の出力を制御し、
前記ライトゲート信号に応じて前記テスト用ライトシーケンスに従った有効なライトデータまたは有効な前記デガウス信号に対応する記録電流を、前記ライトドライバ手段から出力させるように制御することを特徴とする請求項1に記載のヘッドアンプ装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記帯磁テストの指示に応じてライトデータの記録動作のタイミングを設定するライトゲート信号を受信し、当該ライトゲート信号に応じてライトデータまたは前記デガウス信号の一方を選択して前記ライトドライバ手段に供給するための切替手段と、
前記ライトゲート信号に応じて前記デガウス回路から前記切替手段への前記デガウス信号の出力を制御し、
前記ライトゲート信号に応じて前記テスト用ライトシーケンスに従った有効なライトデータまたは有効な前記デガウス信号に対応する記録電流を、前記ライトドライバ手段から出力させるように制御することを特徴とする請求項2に記載のヘッドアンプ装置。
【請求項4】
前記磁気ヘッドは前記ディスク媒体上からデータを再生するリードヘッドを含み、
前記帯磁テストの指示に応じて、前記リードヘッドにより前記ディスク媒体上から再生したデータを送出するためのリードアンプを有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のヘッドアンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−176840(P2010−176840A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83106(P2010−83106)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【分割の表示】特願2004−252349(P2004−252349)の分割
【原出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】