説明

ディスク駆動装置

【課題】ディスク駆動装置において、ディスクトレイのような可動部品に搭載された発熱部品の熱を筺体外まで確実に放熱する放熱経路を形成し、発熱部品や他の部品の温度上昇を抑える課題がある。
【解決手段】ディスクトレイ方式のディスク駆動装置において、ディスクトレイに搭載された発熱部品の下部に、熱伝導部材を介して発熱部品と密着しているカバー突起部を設ける。また、ボトムケースにはボトムケース突起部を設ける。それぞれの突起部はお互いに向き合う平坦部を有している。ディスクトレイがディスク記録再生位置にあるときに、カバー突起部の弾性を利用して各突起部の平坦部同士が面接触し、筺体外までの放熱経路を形成するような構造とする。またそのとき、接触面全域に付勢力が生じ、確実に面接触する構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライブIC等の発熱部品の熱を筐体側に放熱可能なディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク駆動装置は、スピンドルモータ、レーザ光源、電子部品等の発熱部品を有し、その発熱によって装置内部の温度が上昇する。
【0003】
さて、近年、光ディスク駆動装置によるディスクの記録密度及び記録速度が向上し、高倍速による高密度記録・再生が可能となっている。しかしながら、それによって記録・再生時の信号処理や機構制御を行う回路部品の消費電力が大幅に増加し、光ディスク駆動装置の内部の温度上昇が顕著になってしまうため電子部品の熱劣化や誤動作を引き起こすことが問題となっている。
【0004】
この問題に対応するために対流、熱伝導及び熱放射を利用して装置内部の高温部品から低温部品に伝熱させて放熱する方法がある。また、ファンやディスク回転流を利用して、内部空気の対流により高温部品の熱を低温部品まで輸送する方法がある。
【0005】
ノートPC等に搭載される厚さが12.7mm以下の薄型のディスク駆動装置においては、筐体内の部品実装密度が高いために放熱が困難である。特に、回路部品など内部空気の流路確保が困難な位置に搭載される部品を内部空気の対流で放熱することは難しい。
【0006】
このような発熱部品に対しては、熱伝導率の良好な部品によって低温部品までの熱伝達経路を確保し放熱することが有効である。発熱部品の一つに、ディスク駆動装置のディスクトレイ下面、すなわちディスク装着面と逆の面に搭載された発熱部品がある。
【0007】
ディスクトレイ下面に搭載された発熱部品の放熱方法として、特許文献1にはディスクトレイを熱伝導率の良好な材料で形成し、ディスクトレイと発熱部品を熱伝導部材で密着させることにより放熱を行う手法が開示されている。
また特許文献2には、ディスクトレイを筺体内部に収納した時に発熱部品が筺体部に設けた熱伝導部品と接触し、筺体までの放熱経路が形成される方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−190351号公報
【特許文献2】特願2006−543067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような従来の手法を用いると、ディスクトレイ下面に搭載された発熱部品の温度を低減できる利点がある。しかし、特許文献1の様に熱伝達経路が筺体内部で閉じられてしまっている場合、筺体内部の他の部品の温度上昇を引き起こすことが懸念される。また、熱容量の大きい筺体に熱を輸送して筺体外部へと放熱した方が、放熱効率が良いので放熱経路の終端は筺体であることが望ましい。
【0010】
筺体へ放熱する手法として特許文献2に開示されるような手法がある。この手法によれば、ディスクトレイを筺体内部に収納した時にディスクトレイに設置された発熱部品が筺体に設置された熱伝導部品と接触し、筺体までの放熱経路を形成することができる。
【0011】
しかしながら、放熱経路を形成する接触部の接触面積を確保することについては考慮されていない。放熱経路を最も効果的に形成するには、前記の接触面積が大きいほどよい。だが従来の方法では、ディスクトレイとボトムケースの相対位置が寸法誤差や組立誤差などにより変化してしまうと、放熱経路を形成する接触面が片当たり等により十分な接触面積が得られない。
【0012】
本発明の目的は、寸法誤差や組立誤差があっても、ディスクトレイ等の可動部品に搭載された発熱部品から筺体への熱伝達経路において十分な面積を確保することが可能なディスク駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は、トップケースとボトムケースによって形成された筐体と、光ディスクの記録面の情報を記録・再生を行うピックアップと、このピックアップとスピンドルモータを搭載したディスクトレイと、このディスクトレイのボトムケース側に設置された集積回路等の発熱部品と、この発熱部品を覆うように前記ディスクトレイに設置されたカバーとを備えたディスク駆動装置において、前記ボトムケース方向に突出して前記発熱部品と熱接続するよう前記カバーに設けられたカバー突起部と、前記カバー方向に突出するよう前記ボトムケースに設けられたボトムケース突起部とを備え、前記ボトムケース突起部は平坦部による突起であり、前記カバー突起部は前記カバーの一部を折り曲げ加工によるばね性を持つ平坦部による突起であって、前記ディスクトレイがディスク記録再生位置では前記ボトムケース突起部と前記カバー突起部の平坦部が面接触することにより達成される。
【0014】
また上記目的は、前記前記カバー突起部は前記カバーの一部を切り欠いて形成した切り欠き片を折り曲げて形成したことにより達成される。
【0015】
また上記目的は、前記前記切り欠き片は前記カバーをコ字状やU字状に切り欠いて形成したことにより達成される。
【0016】
また上記目的は、前記前記切り欠きは前記カバー突起部より前記ピックアップに近い方向を囲む位置としたことにより達成される。
【0017】
また上記目的は、前記発熱部品と前記カバー突起部との間に熱伝導部材を介在させたことにより達成される。
【0018】
また上記目的は、前記ボトムケース突起部とカバー突起部との接触面は前記ディスクトレイ摺動方向に対して傾斜し、この傾斜は前記ディスクトレイが排出される方向に下り勾配であることにより達成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、寸法誤差や組立誤差があっても、ディスクトレイ等の可動部品に搭載された発熱部品から筺体への熱伝達経路において十分な面積を確保することが可能なディスク駆動装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例を備えたディスク駆動装置の分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施例を備えたディスク駆動装置のディスクトレイ下部に取り付けられた部品を示した分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施例を備えたディスク駆動装置のディスクトレイ各部品の位置関係を示す模式図である。
【図4】本発明の一実施例を備えたピックアップと切り欠きの位置関係を示した模式図である。
【図5】本発明の他の実施例を備えたディスク駆動装置のディスクトレイ各部品の位置関係を示す模式図である。
【図6】本発明の他の実施例を備えたディスク駆動装置のディスクトレイ各部品の位置関係を示す断面図である。
【図7】従来のディスク駆動装置のディスクトレイ各部品の位置関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施例を説明する前に従来のこの種の冷却構造図7(a),(b)を用いて説明する。
【0022】
図7(a),(b)は従来のディスク駆動装置のディスクトレイ各部品の位置関係を示す断面図である。
【0023】
図7(a)において、本図はディスクトレイ7が筺体の内部に搬入された状態におけるディスク駆動装置100を断面したものであり、発熱部品21は熱伝導部材22を介してカバー17に熱的に接触されている。発熱部品21が位置するカバー22と対応する位置のボトムケース14にボトムケース突起部31が接触するように設けられている。
【0024】
これによりディスクトレイ7が挿入されると熱伝導部材22が位置するカバー17部分とボトムケース突起部31とが接触するので、発熱部品21の熱が外部に伝熱されて冷却される。
【0025】
ところが図7(b)に示すように、本来点線で示すようにボトムケース突起部31が面でカバー17に接触するよう設計している。しかしながら、ボトムケース突起部31成型時の寸法誤差によって実線で示すように傾斜して成型された場合には、カバー17に対してボトムケース突起部31が線接触となってしまうため十分な放熱ができないという問題がある。
【0026】
そこで本発明の発明者らはカバー17とボトムケース突起部31とが常に面接触できるように種々検討した結果、以下のごとき実施例を得た。
【0027】
以下、本発明の実施例を図にしたがって説明する。
【実施例1】
【0028】
図1は本発明の一実施例を備えたディスク駆動装置の分解斜視図である。
図2は本発明の一実施例を備えたディスク駆動装置のディスクトレイ下部に取り付けられた部品を示した分解斜視図である。
図3は本発明の一実施例を備えたディスク駆動装置のディスクトレイ各部品の位置関係を示す模式図である。
図4は本発明の一実施例を備えたピックアップと切り欠きの位置関係を示した模式図である。
なお、各図においてはディスクトレイ7が筐体16の内部から外部へ搬出される方向をx軸正方向、スピンドルモータ10の回転軸に並行でボトムケース14からトップケース15に向かう方向をz軸正方向として、座標を定義する。
【0029】
図1において、ディスク駆動装置100の基本的な構成を説明すると、薄板金属板をプレス成形したボトムケース14とトップケース15は結合されて筐体16が形成される。ディスクトレイ7は、ボトムケース14の内側に取り付けられているガイドレール3a,3bにラックスライド1a、1bを介して支持されており、ラックスライド1a、1b及びディスクトレイ7はガイドレール3a,3bのレール方向に摺動自在となっている。
【0030】
ディスクトレイ7には、光ディスクを装着して回転駆動するスピンドルモータ10と、光ディスク記録面の情報を再生又は記録面へ情報を記録するピックアップ9を搭載したユニットメカ8が3個のインシュレータ(図示せず)を介して取り付けられている。ディスクトレイ7前方にはディスクトレイ7が筐体16内部に収納されているときに筐体16前方の蓋となるベゼル12が取り付けられており、そのベセル12の前面にはスイッチ11が取り付けられている。
【0031】
ディスクトレイ7にはディスクトレイ押出機構13が取り付けられている。ディスクトレイ押出機構13は前方に押し込むことが可能で、押し込まれた際はディスクトレイ押出機構13内部の弾性体(図示せず)が自然長より収縮する構造になっている。
【0032】
光ディスクに記録された情報の再生および情報の記録はディスクトレイ7が筐体16内部の所定の搬入位置に収納されているときに行われ、その間はロック機構(図示せず)によってディスクトレイ7が筐体16外部に搬出されないようにロックされている。その際、ディスクトレイ押出機構13はボトムケース14によって押し込まれ、ディスクトレイ押出機構13内部の弾性体が収縮した状態のまま固定されている。
【0033】
光ディスクをスピンドルモータ10から脱着するためにディスクトレイ7を筐体16の外部に搬出する際には、スイッチ11が押されるか、若しくは外部接続機器(図示せず)からイジェクト命令が出された際の信号をCPU(Central Processing Unit)(図示せず)が検知してロック機構にロック解除の命令を行うことによりロックが解除される。
【0034】
これによりディスクトレイ押出機構13内部の弾性体が収縮した状態から自然長に戻る力でディスクトレイ7が筐体16の外部まで搬出される。逆にディスクトレイ7を筐体16の外部から内部に搬入する際は、ディスクトレイ7を筐体16内部の光ディスク記録再生位置まで手動で搬入するとラッチ機構(図示せず)によりロック機構が作動し、ディスクトレイ7の移動がロックされる構造になっている。ボトムケース14には、本実施例の特徴であるボトムケース突起部31が形成されている。ボトムケース突起部31の詳細ついては後述する。
【0035】
次に、図2を用いてディスクトレイ7下部の構成を説明する。
図2において、ディスクトレイ7の下部には電子基板18が設置され、この電子基板18を覆うようにカバー17が設置されている。電子基板18の下部には発熱部品21が取り付けられている。発熱部品21とは、例えばピックアップ9に搭載されたレンズアクチュエータのフォーカスサーボやスピンドルモータ10等の機構部の制御を行う信号処理LSIである。
【0036】
カバー17の一部にはコの字型に切り欠きが設けられ、その切り欠きの内側をボトムケース14側に折り曲げて片持ちの板ばね構造としたカバー突起部32が形成されている。このカバー突起部32は電子基板18に取り付けられた発熱部品21の位置と一致し、この発熱部品21がカバー突起部32の内部に挿入される位置関係となっている。カバー突起部32と発熱部品21との間には、熱伝導部材22が設置されている。
【0037】
つまり、電子基板18とカバー17とはディスクトレイ7にネジ止めされるので、発熱部品21はカバー突起部32のバネ性によって熱伝導部材22に圧接状態となる。
【0038】
ボトムケース14の一部にはプレス加工による絞り構造でカバー17側に突出させたボトムケース突起部31が形成されている。このボトムケース突起部31とカバー突起部32とは、それぞれの方向に向き合った面が平坦部となっている。
【0039】
次に、図3を用いて本実施例における発熱部品21の放熱構造について説明する。
図3(a)及び図3(b)はディスクトレイ7が筺体の外部に搬出される途中における各部品の位置を示している。
図3(b)において、発熱部品21、熱伝導部材22、カバー突起部32はz方向に並列して配置されている。ここで、熱伝導部材22は弾性を持つ材料で形成されているため、電子基板18とカバー17がディスクトレイ7に固定された状態では自然状態より収縮した状態にある。その熱伝導部材22の弾性力によって発熱部品21に密着するとともに、カバー突起部32を自然状態より下部に押し曲げている。
【0040】
図3(c)はディスクトレイ7が筺体の内部に搬入された状態における各部品の位置を示している。
この位置はディスクトレイ7が図3(b)の矢印で示す方向に押し込まれ、ディスクの記録再生を行うときの位置、すなわち発熱部品21が発熱するときの位置である。この位置において、カバー突起部32とボトムケース突起部31はz方向に並列している。また、熱伝導部材22が図3(b)に示す状態の時と比較して更に収縮した状態となるように各部品が配置されている。その熱伝導部材22の弾性力によってカバー突起部32とボトムケース突起部31が付勢されことになり、それぞれの平坦部が面接触で密着することになる。
【0041】
この構造により、発熱部品21から発生した熱は熱伝導部材22に輸送され、更にカバー突起部32を介してボトムケース突起部31へ輸送される放熱経路を形成することができる。この放熱経路は、カバー突起部32とボトムケース突起部31の接触面積が大きいほど効率が良い。しかしながら、上述したように従来の構造では接触面積を大きく確実に確保することが考慮されていない。
【0042】
つまり、図7(a)に示したように、ディスクトレイ7が筺体の内部に搬入されたとき、ボトムケース突起部31がその弾性によってカバー17に接触し、押しつけられる。その接触部の直上には熱伝導部材22及び発熱部品21が密着して設置されており、発熱部品21からボトムケース突起部31までの放熱経路が形成される。
【0043】
しかしこの従来構造では寸法誤差や組立誤差等によりカバー17とボトムケース突起部31の距離が少しでも変化すると、図7(b)のようにボトムケース突起部31とカバー17が片当たり(線接触)してしまう。すなわち、接触面積が著しく低下し、放熱効率も低下してしまう。
【0044】
これに対して本実施例では、カバー突起部32は熱伝導部材22の弾性力によってボトムケース突起部31との接触面全域が付勢されている。そのため、熱伝導部材22の弾性力が働く範囲であればカバー突起部32とボトムケース突起部31の距離が変化しても同様に付勢力が働く。したがって、多少の組立誤差や寸法誤差があっても従来の様に片当たり接触(線接触)を生じることなく確実に平面接触させることができる。すなわち、この構造によって効率の良い放熱経路を確実に実現できる。
【0045】
ボトムケース14は内部部品の保護や外形の寸法規格を考慮すると、一部が変形するような構造は望ましくない。これを踏まえて本実施例では、従来の様にボトムケース14やそれに取り付けられた弾性体の弾性を利用するのではなく、カバー突起部32及びそれに取り付けられた熱伝導部材22の弾性を利用して放熱経路を形成するようにしたものである。
【0046】
このとき、ボトムケース14の弾性を利用する必要はなく、十分な剛性の材料を使用することができる。また、ボトムケース14に別部材の弾性体を取り付ける必要もない。この構造によって、ボトムケース14の剛性を十分に確保したディスク駆動装置を提供することができる。
【0047】
次に、図4を用いてカバー突起部32を形成するための切り欠き41の位置について説明する。
ピックアップ9にはレーザを発生させるレーザダイオードや、レーザダイオードを動作させるレーザダイオードドライバなど、発熱量の大きい部品が搭載されている。これらは、発熱部品21と同様に保証温度を超過した環境で仕様すると性能劣化や破損が発生する可能性がある。よって、他の発熱部品からピックアップ9近傍まで輸送される熱量は出来るだけ小さいことが好ましい。
【0048】
図4において、切り欠き41はカバー突起部32よりピックアップ9に近い方向からカバー突起部32を囲むようにコの字型に形成されている。このとき、発熱部品21から熱伝導部材22を介してカバー突起部32に輸送された熱は、第二の熱伝達経路52や第三の熱伝達経路53を通りピックアップ9近傍へと移動する。この構造により、点線で示す第一の熱伝達経路51のようにカバー突起部32からボトムケース突起部31へ最短距離で向かう放熱経路が切り欠き41によって遮断され、発熱部品21からピックアップ9への熱伝達経路の距離が長くなっている。
【0049】
したがって、熱伝達経路が長くなることにより、その経路を熱が輸送される間の空気中への伝導・対流や放射により、ピックアップ9近傍へ到達する熱量が減少することができる。すなわち、この切り欠き41の構造によりピックアップ9近傍の温度上昇を低減することができるものである。
【0050】
なお、切り欠き41の形状はコの字型の他にU字型など、カバー突起部32を囲みこむ構造であればよい。また、切り欠き41の終端がカバー17端部まで達してもよい。
【0051】
また、カバー突起部32とボトムケース突起部31の接触面に熱伝導率の良好なグリース等を塗布すると接触面を摩擦から保護できる上、熱伝導効率も向上するので好ましい。
【実施例2】
【0052】
本発明の実施例2を図5を用いて説明する。
図5は本実施例におけるディスク駆動装置100のディスクトレイ7の各部品の位置関係を示す模式図である。
図5(a)はディスクトレイ7が筐体16の外部に搬出される途中におけるディスク駆動装置100の断面図である。
図5(b)はディスクトレイ7が筺体の内部に搬入された状態における断面図である。これらの断面は、図3(a)のA−A断面と同様の位置である。
【0053】
図5において、ディスクトレイ7が図1示したディスクトレイ押出機構13によって押し出され、筺体外部に排出されるにあたり、ディスクトレイ7及びそれに搭載された部品と筺体に搭載された部品に接触・摩擦が生じた場合、その摩擦力がディスクトレイ摺動の抵抗力となる。この場合、ディスクトレイ7がうまく排出されないことが懸念される。
【0054】
本実施例はこの問題を解決する構造を説明している。
カバー17はその一部にコの字型に切り欠きが設けられ、その切り欠きの内側をボトムケース14側に折り曲げて片持ちの板ばね構造としたカバー突起部32を持つ。発熱部品21とカバー突起部32との間には、熱伝導部材22が設置されている。またボトムケース14には、その一部をプレス加工による絞り加工でカバー17側に突起させたボトムケース突起部31が形成されている。カバー突起部32及びボトムケース突起部31は、それぞれの方向に向き合った面が平坦部を有しおり、このお互の平坦部が対面するように傾斜した構造となっている。
【0055】
図5(a)のボトムケース突起部31は、ディスクトレイ7の摺動方向に対して傾斜しており、その傾斜はディスクトレイ7が排出される方向に下り勾配となる構造となっている。ディスクトレイ7が矢印で示す方向(筺体内部方向)に搬入されたとき、図5(b)に示すようにカバー突起部32とボトムケース突起部31の接触面がボトムケース突起部31に沿って傾斜する。
【0056】
このとき、カバー突起部32がボトムケース突起部31から反力61を受ける。この状態からディスクトレイ7が搬出されるとき、カバー突起部32には反力61に比例した摩擦力62が生じる。この摩擦力62がディスクトレイ7摺動の抵抗力となる。ここで、カバー突起部32とボトムケース突起部31の接触面の傾斜により、ディスクトレイ7が排出方向に移動するに従い反力61の大きさは小さくなる。それに比例して摩擦力62も小さくなることとなる。
【0057】
すなわち、ディスクトレイ7が排出を開始すると速やかに摩擦力62が小さくなる。この構造によりディスクトレイ7搬出時の抵抗を小さくし、動作の信頼性を高めることが可能となっている。
【0058】
本構造において、カバー突起部32とボトムケース突起部31の接触面に熱伝導率の良好なグリース等を塗布すると、接触面を摩擦から保護できる上、熱伝導効率も向上するので好ましい。
【実施例3】
【0059】
本発明の実施例3を図6を用いて説明する。
図6は本実施例におけるディスク駆動装置100のディスクトレイ7の各部品の位置関係を示す模式図である。
図6(a)はディスクトレイ7が筐体16の外部に搬出される途中におけるディスク駆動装置100の断面図である。
図6(b)はディスクトレイ7が筺体の内部に搬入された状態における断面図である。これらの断面は、図3(a)のA−A断面と同様の位置である。
【0060】
図6(a)において、カバー17はその一部にコの字型に切り欠きが設けられ、その切り欠きの内側をボトムケース14側に折り曲げてなる片持ちの板ばね構造となったカバー突起部32が形成されている。このカバー突起部32はその先端を更に発熱部品21側に折り返した構造となっている。またボトムケース14には、その一部をプレス加工によりカバー17側に突起させて形成したボトムケース突起部31を持つ。カバー突起部32及びボトムケース突起部31は、それぞれの方向に向き合った平坦部を有する構造となっている。
【0061】
図6(a)に示す状態のとき、カバー突起部32はボトムケース突起部31と接触しない。ディスクトレイ7が図6(a)に示した矢印方向(筺体内部方向)に搬入された状態(図6(b)状態)においては、カバー突起部32の平坦部はボトムケース突起部31の平坦部と面接触する。このとき、カバー突起部32は発熱部品21とボトムケース突起部31ではさみこまれる形となり、この折り曲げ部は図6(a)のときよりも更に折れ曲がった状態となる。
【0062】
すなわち、折り曲げ部が開こうとするモーメントが発生している。このモーメントにより、発熱部品21とカバー突起部31が接触する平坦部全域が付勢されている。カバー突起部32の折り曲げ部が開こうとするモーメントが働く範囲であればカバー突起部32とボトムケース突起部31の距離が変化しても同様に付勢力が働く。そのため、組み立て誤差等、多少の寸法誤差がある場合にも片当たり接触を生じることなく確実に平面接触させることができる。
【0063】
この実施例による構造を用いれば、実施例1及び実施例2における熱伝導部材22を使用せずに上記の効果を得ることができる。すなわち部品点数の増加なく放熱効率の高い放熱経路を形成することが可能となる。
【0064】
この構造において、ディスクトレイ7が筺体の外部から内部に搬入されるとき、カバー突起部32とボトムケース突起部31には摩擦が生じる。しかしこの摺動中、発熱部品21はカバー突起部32からz方向の力を受けるのみであり、発熱部品21の表面に摩擦が生じることは無い。つまり、ディスクトレイ7搬入によって発熱部品21に摩擦による損傷が生じることはない。このことは、ディスクトレイ7を筺体内部から外部に搬出するときも同様である。
【0065】
本構造において、カバー突起部32とボトムケース突起部31の接触面に熱伝導率の良好なグリース等を塗布すると接触面を摩擦から保護できる上、熱伝導効率も向上するので好ましい。
【0066】
以上のごとく、本発明によれば、ディスクトレイのような可動部品に搭載されている発熱部品に対して、従来より高効率に筺体外部まで放熱できるディスク駆動装置を提供することができる。また、ディスクトレイのような可動部品の位置に寸法誤差や組立誤差が生じても確実に高効率な放熱が行うことができる。
【0067】
さらに、筺体の変形がないような剛性を十分に確保することができる。また、ディスクトレイを搬入・搬出する際の抵抗が少ない光ディスク装置を提供することができる。また、放熱する対象の発熱部品以外の部品の温度上昇を従来より低減することができる。
【符号の説明】
【0068】
1・・・ラックスライド、3・・・ガイドレール、7・・・ディスクトレイ、8・・・ユニットメカ、9・・・ピックアップ、10・・・スピンドルモータ、11・・・スイッチ、12・・・ベゼル、13・・・ディスクトレイ押出機構、14・・・ボトムケース、15・・・トップケース、16・・・筐体、17・・・カバー、18・・・電子基板、21・・・発熱部品、22・・・熱伝導部材、31・・・ボトムケース突起部、32・・・カバー突起部、41・・・切り欠き、51・・・第一の熱伝達経路、52・・・第二の熱伝達経路、53・・・第三の熱伝達経路、61・・・反力、62・・・摩擦力、100・・・ディスク駆動装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップケースとボトムケースによって形成された筐体と、光ディスクの記録面の情報を記録・再生を行うピックアップと、このピックアップとスピンドルモータを搭載したディスクトレイと、このディスクトレイのボトムケース側に設置された集積回路等の発熱部品と、この発熱部品を覆うように前記ディスクトレイに設置されたカバーとを備えたディスク駆動装置において、
前記ボトムケース方向に突出して前記発熱部品と熱接続するよう前記カバーに設けられたカバー突起部と、前記カバー方向に突出するよう前記ボトムケースに設けられたボトムケース突起部とを備え、
前記ボトムケース突起部は平坦部による突起であり、前記カバー突起部は前記カバーの一部を折り曲げ加工によるばね性を持つ平坦部による突起であって、
前記ディスクトレイがディスク記録再生位置では前記ボトムケース突起部と前記カバー突起部の平坦部が面接触することを特徴とするディスク駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載のディスク駆動装置において、
前記前記カバー突起部は前記カバーの一部を切り欠いて形成した切り欠き片を折り曲げて形成したことを特徴とするディスク駆動装置。
【請求項3】
請求項2記載のディスク駆動装置において、
前記前記切り欠き片は前記カバーをコ字状やU字状に切り欠いて形成したことを特徴とするディスク駆動装置。
【請求項4】
請求項1記載のディスク駆動装置において、
前記前記切り欠きは前記カバー突起部より前記ピックアップに近い方向を囲む位置としたことを特徴とするディスク駆動装置。
【請求項5】
請求項1記載のディスク駆動装置において、
前記発熱部品と前記カバー突起部との間に熱伝導部材を介在させたことを特徴とするディスク駆動装置。
【請求項6】
請求項1記載のディスク駆動装置において、
前記ボトムケース突起部とカバー突起部との接触面は前記ディスクトレイ摺動方向に対して傾斜し、この傾斜は前記ディスクトレイが排出される方向に下り勾配であることを特徴とするディスク駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−48783(P2012−48783A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189511(P2010−189511)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)