説明

ディスプレイ用カラーフィルタ

【課題】ネガ型フォトレジストを使用して形成した遮光膜と透明着色膜を有するカラーフィルタでありながら光洩れを防止することのできるカラーフィルタであって、しかも安価に製造できるカラーフィルタを提供すること。
【解決手段】透明基板の表面を多数の画素領域に区画する遮光膜と、画素領域に設けられた透明着色膜とを備え、前記遮光膜が遮光性着色剤を含有するネガ型フォトレジストを硬化したものから構成されているカラーフィルタで、遮光膜の光学密度が1μm当たり4.0以上とし、かつ、前記透明着色膜の膜厚を遮光膜の膜厚より0.5〜1.5μm厚く構成する。この膜厚の差のため、重なり部に突起が生じないか、あるいは実害のない程度の突起が生じているに過ぎず、光洩れが生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ用カラーフィルタに関する。例えば液晶ディスプレイに利用するカラーフィルタである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイは、2枚の基板の間に液晶を挟み、この液晶に画素ごとに電圧を印加して光の透過と非透過(遮断)とを制御して、この透過部分と遮断部分とで画面表示を行うディスプレイである。そして、2枚の前記基板のうち一方の基板に画素ごとに透明着色膜を設けて、その透過光を着色することにより、カラー表示を可能としている。
【0003】
この透明着色膜を設けた基板は一般にカラーフィルタと呼ばれるが、このカラーフィルタは、例えば、図2の断面説明図に示すような構造を有している。すなわち、カラーフィルタは、透明基板と、この透明基板の表面を多数の画素領域に区画する遮光膜と、前記画素領域に設けられた透明着色膜とを備えて構成されている。透明着色膜は画素領域ごとに異なる色彩を有しており、代表的には、赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)の三色の透明着色膜が利用される。これら三色は光の三原色であり、これら三原色及びその混合によって色彩のほぼ全てを表示することが可能となる。また、遮光膜は、特定の画素領域を透過する光と隣接する画素領域を透過する光との混合を防止するものである。例えば、赤色(R)画素に隣接して緑色(G)画素が存在する場合、この両者を透過する光同士の混合を防ぐことで鮮明なカラー画面の表示が可能となる。
【0004】
前記遮光膜としてはクロム等の金属の薄膜が知られている。この金属薄膜は、例えば真空蒸着やスパッタリングによって透明基板上に設けることができる。その厚みは1μm以下である。金属薄膜はその光遮断性が高いが、反面、光反射性が高く、表示画面の光反射が表示品質を低下させることがある。
【0005】
また、前記遮光膜として、合成樹脂に遮光性顔料を混合した被膜も知られている。例えば、特許文献1〜3では、ポリイミド樹脂に遮光性顔料を混合して透明基板に塗布して遮光性被膜を形成し、この被膜上にポジ型フォトレジストを塗布した後ポジ型フォトレジストを露光現像してパターニングし、このパターン状レジストをマスクとして前記遮光性被膜をエッチングして、前記遮光膜を形成する技術を開示している。遮光性顔料としては、例えば、カーボンブラックが好適に用いられる。
【0006】
他方、合成樹脂に遮光性顔料を混合した被膜から構成される遮光膜として、ネガ型フォトレジストに遮光性顔料を混合して透明基板に塗布した後、露光現像して前記遮光膜を形成する技術も知られている(特許文献4)。
【0007】
また、前記透明着色膜としては、一般に、合成樹脂に着色顔料を混合した被膜が利用されている。また、その製膜方法も遮光膜の形成方法と同様である。例えば、前記特許文献1〜3では、ポリイミド樹脂と着色顔料の混合物の被膜上にポジ型フォトレジストを塗布した後ポジ型フォトレジストを露光現像してパターニングし、このパターン状レジストをマスクとして前記被膜をエッチングして、前記透明着色膜を形成する。また、前記特許文献4では、ネガ型フォトレジストと着色顔料の混合物の被膜を露光現像して前記透明着色膜を形成する。遮光膜と透明着色膜とを同様の方法によって形成することにより、その製造設備が共通となって管理が容易となるばかりでなく、遮光膜と透明着色膜との密着性を高めることが可能となる。
【0008】
ところで、透明着色膜と遮光膜との厳密な位置合わせは困難である等の理由から、図3に示すように、前記透明着色膜は、その端部が遮光膜の端部に重ねられるように設けられる。しかしながら、こうして重ねられた部分は透明着色膜や遮光膜の膜厚より厚くなって突起状に盛り上がり、この結果、電圧を印加して液晶を制御しても、重なり部においてはその液晶分子の配向方向が乱れることになる。そして、この配向の乱れに起因して、透明着色膜と遮光膜との境界に沿って光の洩れが生じるのである。
【0009】
これを防ぐため、前記特許文献1〜3では、ポリイミド樹脂の厚みやポジ型フォトレジストの厚み、あるいは露光条件やエッチング条件を制御することにより、遮光膜の端部や透明着色膜の端部をテーパー状に薄くする技術を開示している。しかし、この技術をネガ型フォトレジストを使用する方法に適用することはできない。
【0010】
また、前記特許文献4は、透明基板上に遮光膜を形成した後、この遮光膜を被覆して全面に透明樹脂膜を形成することにより平坦化し、この平坦化によって前記突起を防止する技術を開示している。しかし、この技術によれば、平坦化のための透明樹脂膜を形成する工程が必要となり、また、その材料も要するため、その製造コストを押し上げるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平09−113721号公報
【特許文献2】特開平09−113722号公報
【特許文献3】特開平09−120063号公報
【特許文献4】特開平10−268119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、ネガ型フォトレジストを使用して形成した遮光膜と透明着色膜を有するカラーフィルタでありながら光洩れを防止することのできるカラーフィルタであって、しかも安価に製造できるカラーフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するため、本発明は、遮光膜の遮光性を高めてその膜厚を薄くし、他方、透明着色膜の膜厚を厚くすることによって、両者の重なり部の突起を小さくし、前記突起の高さを低くすることに成功したものである。
【0014】
すなわち、請求項1に記載の発明は透明基板と、この透明基板の表面を多数の画素領域に区画する遮光膜と、前記画素領域に設けられた透明着色膜とを備え、前記画素領域ごとに透過光を着色するディスプレイ用カラーフィルタであって、前記遮光膜が遮光性着色剤を含有するネガ型フォトレジストを硬化したものから構成され、他方、前記透明着色膜が透明着色剤を含有するネガ型フォトレジストを硬化したものから構成されているカラーフィルタにおいて、
前記遮光膜の光学密度が1μm当たり4.0以上であり、かつ、前記透明着色膜の膜厚が遮光膜の膜厚より0.5〜1.5μm厚く構成されていることを特徴とするディスプレイ用カラーフィルタである。
【0015】
後述する実施例から分かるように、遮光膜の光学密度が1μm当たり4.0に満たない場合、その遮光性が不十分で、この遮光膜の部位から光洩れが生じることがある。これに対し、光学密度が4.0以上であれば遮光性は十分である。
【0016】
また、これも後述する実施例から明らかなように、透明着色膜の膜厚が遮光膜の膜厚より大きく、その差が0.5μm以上の場合には、前記重なり部からの光洩れが生じない。この重なり部に突起が生じないか、あるいは実害のない程度の突起が生じているに過ぎないのである。
【0017】
なお、透明着色膜の膜厚と遮光膜の膜厚の差が1.5μmを超える場合には、透明着色膜が厚くなってその正確なパターニングが困難となる。
【0018】
次に、請求項2に記載の発明は、前記遮光膜の膜厚を特定したものである。遮光膜は遮光性着色剤を含有するネガ型フォトレジストを硬化したものから構成され、しかも、その遮光性を高めているから、その膜厚が厚い場合には正確なパターニングが困難である。他方、膜厚が薄い場合には遮光性が不足する。請求項2に記載の発明は、このような理由から遮光膜の適正な膜厚を特定したものである。
【0019】
すなわち、請求項2に記載の発明は、前記遮光膜の膜厚が0.9〜1.8μmであることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ用カラーフィルタである。
【0020】
次に、請求項3及び4は、前記遮光膜の端部と透明着色膜の端部とを重ねることにより、両者の間に隙間が生じることを防止したことを明らかにしたものである。
【0021】
すなわち、請求項3に記載の発明は、前記透明着色膜の端部が遮光膜の端部に重なっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のディスプレイ用カラーフィルタであり、他方、請求項4に記載の発明は、前記透明着色膜の端部が遮光膜の端部の上に重なっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のディスプレイ用カラーフィルタである。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、ネガ型フォトレジストを使用して形成した遮光膜と透明着色膜を有するカラーフィルタでありながら両者の重なり部からの光洩れを防止することができる。また、その光学密度と厚みを制御するだけなので、別異の工程や材料を要することがなく、その製造コストも安価である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るカラーフィルタの要部を説明するための断面説明図
【図2】カラーフィルタの断面説明図
【図3】従来のカラーフィルタの要部を説明するための断面説明図
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示すように、本発明は、透明基板上に遮光膜と透明着色膜とを設けて構成されるカラーフィルタである。透明着色膜は表示画面の画素領域に設けられ、表示光を着色してカラー表示を可能とする。また、遮光膜は画素領域の画素領域との間の部位に設けられ、画素領域を区画する。遮光膜は一般にストライプ状又はマトリクス状に設けられることから、ブラックストライプ又はブラックマトリクスと呼ばれることがある。そして、この遮光膜は光の透過を防止して、隣接する画素を透過する表示光同士の混合を防止する役割を果たす。
【0025】
これら遮光膜と透明着色膜とは、いずれも、着色剤を含有するネガ型フォトレジストを露光現像して硬化させたものから構成される。遮光膜に含まれる着色剤は、例えばカーボンブラック等の遮光性着色剤である。また、透明着色膜に含まれる着色剤は、透過光を着色するもので、画素によって色彩の異なる着色剤を使用する。透明着色膜に含まれる代表的な着色剤は、それぞれ、赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)を示す着色剤である

【0026】
そして、遮光膜はその遮光性が高いものであることが必要である。すなわち、その光学密度が1μm当たり4.0以上である必要がある。このような遮光性の高い遮光膜は、例えば、カーボンブラック等の黒色顔料を高濃度に含有するネガ型フォトレジストを0.9μm以上の膜厚に塗布することで形成することができる。もっとも、その着色剤の種類に応じて必要な含有量及び膜厚は異なる。なお、後述する実験例から分かるように、遮光膜は75%以上の黒色顔料を含むことが望ましい。すなわち、ネガ型フォトレジストの固形分に対して75%以上の黒色顔料を含むことが望ましい。また、後述する実験例から分かるように、塗布前のネガ型フォトレジスト(溶剤分を含む)は55重量%の黒色顔料を含むことができる。なお、遮光膜の膜厚は0.9〜1.8μmの範囲にあることが望ましい。
【0027】
また、透明着色膜の膜厚は遮光膜の膜厚より0.5〜1.5μm厚いことを要する。透明着色膜の膜厚と遮光膜の膜厚の差が0.5μmに満たない場合、透明着色膜と遮光膜の境界部位から光洩れが生じることがある。また、1.5μmを越える場合、透明着色膜の正確なパターニングが困難である。
【0028】
次に、本発明に係るカラーフィルタを構成する材料及び製造方法について説明する。
【0029】
本発明に係る透明基板としては、その代表例として、ガラス基板を例示することができる。このほか、透明な合成樹脂基板を使用することもできる。例えば、アクリル樹脂基板である。
【0030】
次に、遮光膜及び透明着色膜は、それぞれ、着色剤を含有するネガ型フォトレジストを塗布硬化して得られた被膜で構成される。このフォトレジストは、前記着色剤の他、バインダー樹脂、光重合開始剤の作用により硬化するモノマー、光重合開始剤、有機溶剤を混合して製造することができる。なお、これらを混合するに当たっては、まず、着色剤として顔料を使用して、この顔料をバインダー樹脂溶液に混合し微分散させて顔料分散体を製造した後、この顔料分散体に前記モノマーと光重合開始剤とを混合して感光性を付与して製造することが望ましい。なお、モノマーと光重合開始剤とを混合する際、併せて、バインダー樹脂と有機溶剤とを追加することもできる。
【0031】
前記バインダー樹脂としては塗膜形成能を有する高分子化合物であれば特に制限は無く、具体的な例としては例えば下記の化合物が挙げられる。
【0032】
1)ポリオレフィン系ポリマー
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン等
2)ジエン系ポリマー
ポリブタジエン、ポリイソプレン等
3)共役ポリエン構造を有するポリマー
ポリアセチレン系ポリマー、ポリフェニレン系ポリマー等
4)ビニルポリマー
ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルフェノール等
5)ポリエーテル
ポリフェニレンエーテル、ポリオキシラン、ポリオキセタン、ポリテトラヒドロフラン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール等
6)フェノール樹脂
ノボラック樹脂、レゾール樹脂等
7)ポリエステル
ポリエチレンテレフタレート、ポリフェノールフタレインテレフタレート、ポリカーボネート、アルキッド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等
8)ポリアミド
ナイロン−6、ナイロン66、水溶性ナイロン、ポリフェニレンアミド等
9)ポリペプチド
ゼラチン、カゼイン等
10)エポキシ樹脂およびその変性物
ノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールエポキシ樹脂、ノボラックエポキシアクリレートおよび酸無水物により変性樹脂等
11)その他
ポリウレタン、ポリイミド、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイミダゾール、ポリオキサゾール、ポリピロール、ポリアニリン、ポリスルフィド、ポリスルホン、セルロース類等
これらの樹脂の中では樹脂側鎖または主鎖にカルボキシル基あるはいフェノール性水酸基等を有する樹脂を含有すると、レジスト組成物がアルカリ現像可能なため、公害防止の観点から好ましい。特にカルボキシル基を有する樹脂、例えば、アクリル酸(共)重合体、スチレン/無水マレイン酸樹脂、ノボラックエポキシアクリレートの酸無水物変性樹脂等は高アルカリ現像性なので好ましい。さらに、アクリル系樹脂は現像性に優れているので好ましく、様々なモノマーを選択して種々の共重合体を得ることが可能なため、性能および製造制御の観点からより好ましい。
【0033】
より具体的にはカルボキシル基を含有するアクリル樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、等のカルボキシル基を有するモノマーとスチレン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、エチルアクリル酸グリシジル、クロトン酸グリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸クロライド、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メタクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、等のコモノマーを共重合させたポリマーが挙げられる。
【0034】
次に、前記モノマーとしては、光重合開始剤の発生するラジカルの作用によりラジカル重合するモノマーおよび光重合開始剤から発生する酸の作用で付加縮合するモノマー等公知のいずれのものも用い得る。前者の代表的例としては、エチレン性二重結合を有するモノマーが挙げられ、より具体的には、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、セチルアクリレート、ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボニルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフリルアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、モルホリノエチルメタクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロドデシルアクリレート、トリメチルシロキシエチルメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、ビスフェノールA、エチレンオキサイド付加物ジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加トリアクリレート、グリセリンプロピレンオキサイド付加トリアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチレンフォスフェート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ノボラックエポキシのアクリル酸変性物、ノボラックエポキシのアクリル酸および酸無水物の変性物、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリル化イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ウレタンアクリレート、不飽和ポリエステルアクリレート等が挙げられる。これらのモノマーのなかではアクリルモノマー、特に3個以上のエチレン性二重結合を有するアクリルモノマーが好ましい。これらのモノマーは単独または複数組み合わせて使用される。
【0035】
一方、光重合開始剤から発生する酸の作用で付加縮合するモノマーとしては、メラミン、ベンゾグアナミン,グリコールウリルもしくは尿素にホルムアルデヒドを作用させた化合物またはそれらのアルキル変性化合物、エポキシ化合物およびレゾール化合物等の架橋作用を有する化合物が挙げられる。具体的には、三井サイアナミド社のサイメル(登録商標)300、301、303、350、736、738、370、771、325、327、703、701、266、267、285、232、235、238、1141、272、254、202、1156、1158は、メラミンにホルムアルデヒドを作用させた化合物またはそのアルキル変性物の例である。サイメル(登録商標)1123、1125、1128は、ベンゾグアナミンにホルムアルデヒドを作用させた化合物またはそのアルキル変性物の例である。サイメル(登録商標)1170、1171、1174、1172はグリコールウリルにホルムアルデヒドを作用させた化合物またはそのアルキル変性物の例である。尿素にホルムアルデヒドを作用させた化合物またはそのアルキル変性物の例として三井サイアナミド社のUFR(登録商標)65、300を挙げることができる。
【0036】
また、光重合開始剤としては、公知のいずれのものも用いることができ、紫外線によりエチレン性不飽和基を重合させるラジカルを発生させることのできる化合物および紫外線により酸を発生させる化合物が挙げられる。具体的には2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシカルボニルナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、等のハロメチル化トリアジン誘導体、ハロメチル化オキサジアゾール誘導体、2−(2′−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(2′−クロロフェニル)−4,5−ビス(3′−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(2′−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(2′−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、(4′−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体等のイミダゾール誘導体、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル類、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン誘導体、ベンズアンスロン誘導体、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチル−(4′−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン等のアセトフェノン誘導体、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2、4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体、9−フェニルアクリジン、9−(p−メトキシフェニル)アクリジン等のアクリジン誘導体、9,10−ジメチルベンズフェナジン等のフェナジン誘導体、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,4−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジ−フルオロ−3−(ピル−1−イル)−フェニ−1−イル等のチタノセン誘導体、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等のα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤が挙げられる。
【0037】
また、溶剤としては具体的に、ジイソプロピルエーテル、ミネラルスピリット、n−ペンタン、アミルエーテル、エチルカプリレート、n−ヘキサン、ジエチルエーテル、イソプレン、エチルイソブチルエーテル、ブチルステアレート、n−オクタン、バルソル#2、アプコ#18ソルベント、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、アプコシンナー、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキセン、メチルノニルケトン、プロピルエーテル、ドデカン、Socal solvent No.1およびNo.2、アミルホルメート、ジヘキシルエーテル、ジイソプロピルケトン、ソルベッソ#150、酢酸ブチル(n、sec、t)、ヘキセン、シェル TS28 ソルベント、ブチルクロライド、エチルアミルケトン、エチルベンゾネート、アミルクロライド、エチレングリコールジエチルエーテル、エチルオルソホルメート、メトキシメチルペンタノン、メチルブチルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルイソブチレート、ベンゾニトリル、エチルプロピオネート、メチルセロソルブアセテート、メチルイソアミルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピルアセテート、アミルアセテート、アミルホルメート、ビシクロヘキシル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジペンテン、メトキシメチルペンタノール、メチルアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、プロピルプロピオネート、プロピレングリコール−t−ブチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、カルビトール、シクロヘキサノン、酢酸エチル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸、3−エトキシプロピオン酸、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライム、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールアセテート、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール−t−ブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等の有機溶剤が挙げられる。溶剤は沸点が100〜200℃の範囲のものを選択するのが好ましい。より好ましくは120〜170℃の沸点をもつものである。これらの溶剤は単独もしくは混合して使用される。
【0038】
次に、遮光性着色剤に適する顔料としては、カーボンブラック、黒鉛、アニリンブラック、シアニンブラックなどの有機顔料、もしくはミロリブルー、酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、アルミナ、コバルト系、マンガン系、タルク、クロム酸塩、フェロシアン化物、各種金属硫酸塩、硫化物、セレン化物、リン酸塩群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、ビリジアン、エメラルドグリーン、コバルトグリーン等の無機顔料が使用できる。また、これらの顔料は複数を混合して使用するか、さらには無機顔料、有顔料機、染料の赤、青、緑色などを混色させることも可能である。
【0039】
これら遮光性顔料の中で、遮光性、表面平滑性、分散安定性、樹脂との相溶性の面から、カーボンブラックが好ましい。具体的には、例えば、三菱化学社製 商品名「MA7」、「MA8」、「MA11」、「MA100」、「MA220」、「MA230」、「#52」、「#50」、「#47」、「#45」、「#2700」、「#2650」、「#2200」、「#1000」、「#990」、及び「#900」等、テグサ社製 商品名「Printex95」、「Printex90」、「Printex85」、「Printex75」、「Printex55」、「Printex45」、「Printex40」、「Printex30」、「Printex3」、「PrintexA」、「PrintexG」、「SpecialBlack550」、「SpecialBlack350」、「SpecialBlack250」、及び「SpecialBlack100」等、キャボット社製 商品名「Monarch460」、「Monarch430」、「Monarch280」、「Monarch120」、「Monarch800」、「Monarch4630」、「REGAL99」、「REGAL99R」、「REGAL415」、「REGAL415R」、「REGAL250」、「REGAL250R」、「REGAL330」、「BLACK PEARLS480」、及び「BLACK PEARLS130」等、コロンビアンカーボン社製 商品名「RAVEN11、「RAVEN15」、「RAVEN30」、「RAVEN35」、「RAVEN40」、「RAVEN410」、「RAVEN420」、「RAVEN450」、「RAVEN500」、「RAVEN780」、「RAVEN850」、「RAVEN890H」、「RAVEN1000」、「RAVENl020」、「RAVEN1040」等が挙げられる。これらの顔料は単独で、あるいは複数を混合して用いることができる。
【0040】
また、透明着色層に適用される着色顔料としては、アゾレーキ系、不溶性アゾ系、縮合アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、アントラキノン系、ペリノン系、チオインジコ系、ジケトピロロピロール系、ペリレン系あるいはこれらの顔料の混合物が例示できる。
【実施例】
【0041】
次に、具体的な実験データによって本発明を説明する。説明する実験データは、遮光膜の光学密度とその膜厚、及び透明着色膜の膜厚を互いに異なるように製造した7種類のカラーフィルタ(実験例1〜7)に関するものである。なお、これら実験例1〜7のカラーフィルタに使用された材料及びその製造工程は共通である。
【0042】
そこで、まず、これらカラーフィルタの材料及び製造工程を説明する。製造工程は、バ
インダー樹脂の合成、顔料分散体の製造、フォトレジストの製造、カラーフィルタの製造の各工程に分かれている。これら各工程ごとにその材料と製造方法を説明する。
【0043】
(バインダー樹脂の合成)
反応容器にシクロヘキサノン370重量部を収容し、この容器に窒素ガスを注入しながら80℃に加熱して、この温度に維持しながら、メタクリル酸20.0重量部、メチルメタクリレート10.0重量部、n−ブチルメタクリレート55.0重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート15.0重量部及び2−2’−アゾビスイソブチロニトリル4.0重量部の混合物を1時間かけて滴下し、重合反応を行った。
【0044】
滴下終了後、2−2’−アゾビスイソブチロニトリル1.0重量部をシクロヘキサノン50重量部に溶解させた溶液を添加し、さらに80℃で1時間反応を続けて、アクリル樹脂共重合体溶液を製造した。
【0045】
このアクリル樹脂共重合体溶液を室温まで冷却した後、このアクリル樹脂共重合体溶液2gをサンプリングして、180℃で20分間加熱乾燥して不揮発分を測定した。この測定結果に基づき、前記アクリル樹脂共重合体溶液にシクロヘキサノンを追加して、不揮発分20重量%のアクリル樹脂共重合体溶液を製造した。なお、このアクリル樹脂の重量平均分子量は40,000であった。
【0046】
(顔料分散体の製造)
下記表1に示す組成の混合物を均一に撹拌混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて5時間分散した後、5μmのフィルタで濾過し、赤色顔料分散体R−1,緑色顔料分散体G−1,青色顔料分散体B−1及び黒色顔料分散体BM−1を製造した。
【0047】
【表1】

なお、表1中、PR254はジケトピロロピロール系赤色顔料(C.I.Pigment Red 254)、PR177はアントラキノン系赤色顔料(C.I.Pigment Red 177)、PG36はハロゲン化銅フタロシアニン系緑色顔料(C.I.Pigment Green 36)、PB15:6はε型銅フタロシアニン系青色顔料(C.I.Pigment Blue 15:6)、PY150はニッケルアゾ錯体系黄色顔料(C.I.Pigment Yellow 150)、CBはカーボンブラック(C.I.Pigment Black 7)を示している。また、顔料分散剤としては日本ルーブリゾール社製「ソルスパース20000」を使用した。溶剤はシクロヘキサノンである。また、表1中、組成はすべて重量部で表示している。
【0048】
(フォトレジストの製造)
次に、前記顔料分散体R−1,G−1,B−1及びBM−1を使用して、赤色フォトレジストR1,緑色フォトレジストG1,青色フォトレジストB1,黒色フォトレジストBM1、黒色フォトレジストBM2及び黒色フォトレジストBM3を製造した。その組成は表3のとおりである。なお、各フォトレジストは、それぞれ、表2に示す材料を撹拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して製造した。
【0049】
【表2】

なお、表2中、アクリル樹脂溶液は先に製造したアクリル樹脂共重合体溶液である。また、モノマーとしては字ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−402」)、光重合開始剤としては、α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)を使用した。溶剤はシクロヘキサノンである。また、表2中、組成はすべて重量部で表示している。
【0050】
(カラーフィルタの製造)
透明基板として10cm×10cmのガラス基板を使用して、表1に示すカラーフィルタ(実験例1〜7)を製造した。このガラス基板上に、黒色フォトレジストBM1、黒色フォトレジストBM2及び黒色フォトレジストBM3のいずれかをスピンコーターで塗布し、70℃のオーブン内に15分間静置し、余剰の溶剤を除去乾燥した。この後、フォトレジストの塗膜から150μmの間隔をあけて、20μmのパターンを有するフォトマスクを用い、光源として超高圧水銀灯ランプを用いて200mJ/cmの照射エネルギーとなるように露光し、2.5%炭酸ナトリウム水溶液で60秒間現像し、水洗し、さらに乾燥後、230℃で60分間加熱処理して遮光膜を形成した。
【0051】
次に、遮光膜を形成した前記ガラス基板上に、赤色フォトレジストR1を、スピンコーターで塗布し、70℃のオーブン内に15分間静置し、余剰の溶剤を除去乾燥した。この後、フォトレジストの塗膜から150μmの間隔をあけて、100のストライプパターンを有するフォトマスクを用い、光源として超高圧水銀灯ランプを用いて200mJ/cmの照射エネルギーとなるように露光し、2.5%炭酸ナトリウム水溶液で60秒間現像し、水洗し、さらに乾燥後、230℃で60分間加熱処理して赤色透明着色膜を形成した。この後、同様に緑色透明着色膜と青色透明着色膜を形成して、表3に示す7種類のカラーフィルタ(実験例1〜7)を製造した。
【0052】
(評価及び考察)
これら7種類のカラーフィルタ(実験例1〜7)について、遮光膜と透明着色膜との境界部からの光漏れの有無、遮光膜(BM)からの光漏れの有無、遮光膜及び透明着色膜のパターニング性について評価し、これらの評価結果に基づいて総合判定した。その結果を表3に示す。なお、表3中、光学密度は遮光膜(BM)の1μm当たりの光学密度を意味する。
【0053】
【表3】


このデータから読み取れる要点は次のとおりである。
【0054】
(1)まず遮光膜(BM)の光学密度に着目すると、実験例7の光学密度は3.4であり、遮光膜(BM)から光漏れが生じている。これに対し、その他の実験例ではすべて4.0〜4.8であり、遮光膜(BM)から光漏れが生じていないか、あるいは光漏れが生じていてもごくわずかであることが分かる。
【0055】
なお、実験例5と実験例1とを比較すると、両者の遮光膜(BM)の光学密度は共に4であるが、実験例5は遮光膜(BM)の膜厚が0.8μmと薄いためにわずかに遮光膜(BM)から光漏れが生じているのに対し、実験例1の遮光膜(BM)の膜厚は1.0μmであり、遮光膜(BM)からの光漏れは生じていない。
【0056】
この結果、遮光膜(BM)からの光漏れを防止するためにはその光学密度が4以上であればよいこと、望ましくは遮光膜(BM)の膜厚が0.9μm以上であることが分かる。る。
【0057】
(2)次に、透明着色膜と遮光膜(BM)との膜厚差に着目すると、実験例4の膜厚差が0.3μmであって、その境界部からの光漏れが生じているのに対し、その他の実験例ではいずれも膜厚差が0.5μm以上であり、境界部からの光漏れは生じていない。この結果、境界部からの光漏れを防止するためには膜厚差が0.5μm以上であればよいことが分かる。
【0058】
なお、実験例5及び実験例6の膜厚差は2.0μmであるが、このような大きな膜厚差を得るために、透明着色膜の膜厚を、それぞれ、2.8μm、3.0μmと大きくしており、このため、そのパターニング性が劣り、正確なパターニングが困難であることが分かる。また、この実験例5と実験例6との比較から、透明着色膜の膜厚が大きいほど正確なパターニングが一層困難となることが分かる。
【0059】
この結果から、境界部からの光漏れを防いでしかも正確なパターンを形成するためには、透明着色膜と遮光膜(BM)との膜厚差が0.5〜1.5μmの範囲にある必要があることが分かる。
【0060】
(3)次に、遮光膜(BM)の膜厚に着目する。前記(1)に記載のように、遮光膜(BM)からの光漏れを防止するため、遮光膜(BM)の膜厚は0.9μm以上であることが望ましい。他方、その上限値について検討すると、実験例3の遮光膜(BM)の膜厚は2.0μmであり、そのパターニング性が劣り、正確なパターン形成が困難であることが分かる。これに対し、実験例2の遮光膜(BM)の膜厚は1.8μmであり、パターニング性に優れている。この結果、遮光膜(BM)の正確なパターン形成のため、望ましくはその膜厚が1.8μm以下であることが分かる。
【0061】
(4)次に、遮光膜の中の黒色顔料の濃度に着目して検討する。遮光膜はフォトレジストの固形分から構成されており、したがって、遮光膜の中の黒色顔料の濃度はフォトレジストの固形分に対する黒色顔料の濃度で表現できるから、実験例7の黒色顔料濃度は、40.0/(40.0+12.5+1.30+4.00+42.2)×100=約69%であり、その光学密度は3.4である。これに対し、実験例1〜6の黒色顔料濃度は約75%であり、その光学密度は4.0である。この結果、光学密度を4.0以上とするためには、黒色顔料濃度を約75%以上とすればよいことが分かる。
【0062】
なお、実験例8は、フォトレジストBM3中の黒色顔料が55.0重量%であるにも拘らず、パターニング性にもすぐれていることから、溶剤分を含む塗布前のフォトレジストは、この程度の高濃度の黒色顔料を含有することができることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、この透明基板の表面を多数の画素領域に区画する遮光膜と、前記画素領域に設けられた透明着色膜とを備え、前記画素領域ごとに透過光を着色するディスプレイ用カラーフィルタであって、前記遮光膜が遮光性着色剤を含有するネガ型フォトレジストを硬化したものから構成され、他方、前記透明着色膜が透明着色剤を含有するネガ型フォトレジストを硬化したものから構成されているカラーフィルタにおいて、
前記遮光膜の光学密度が1μm当たり4.0以上であり、かつ、前記透明着色膜の膜厚が遮光膜の膜厚より0.5〜1.5μm厚く構成されていることを特徴とするディスプレイ用カラーフィルタ。
【請求項2】
前記遮光膜の膜厚が0.9〜1.8μmであることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ用カラーフィルタ。
【請求項3】
前記透明着色膜の端部が遮光膜の端部に重なっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のディスプレイ用カラーフィルタ。
【請求項4】
前記透明着色膜の端部が遮光膜の端部の上に重なっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のディスプレイ用カラーフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−286580(P2010−286580A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138960(P2009−138960)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】