説明

ディーゼルパティキュレートフィルタおよび排ガス浄化装置

【課題】再生処理に供してもクラックが発生しないDPFを提供する。
【解決手段】本発明に係るDPFは、ハニカム構造を有する複数のセグメントが接合材によって接合されてなり、このセグメントの熱膨張係数Aと接合材の熱膨張係数Bとが式:1.0<B/A<1.4の関係を満たすものであるので、再生処理の際のセグメントおよび接合材の過剰な熱膨張を防止することができ、クラックの発生を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディーゼルパティキュレートフィルタおよび排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジン等の他のエンジンと比べて燃料の燃焼効率がよい(すなわち、燃費がよい)ため、種々の車両等に搭載されている。しかし、ディーゼルエンジンから排出される排ガスには、癌または呼吸器疾患等を引き起こし得る粒子状物質(PM、Particulate Matter)が含まれているため、排ガスの排出規制が日米欧において段階的に強化されている。かかる規制に適合させるため、この粒子状物質を排ガスから除去するためのフィルタ(ディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、「DPF」と称することがある。))が開発されている。現在、DPFとしては、主に、ハニカム構造を有するウォールフロータイプのものが用いられている。
【0003】
このようなウォールフロータイプのDPFは多孔性の隔壁を備えている。このDPFは、ディーゼルエンジンの排気通路に配置され、排ガスがこのDPFを通過する際に、排ガス中の粒子状物質がこの多孔性の隔壁に捕集される。これによって、排ガスから粒子状物質が除去される。
【0004】
DPFを使用し続けると、この隔壁に粒子状物質が堆積し、隔壁の孔が塞がれてしまう。その結果、排ガスの隔壁を介した拡散が低下し、排ガスの浄化効率が低下する。低下した排ガスの浄化効率を元に戻す(すなわち、DPFを再生する)ために、隔壁に堆積した粒子状物質を燃焼させて除去することが行われている。このような再生処理の際に、DPFが熱せられることによってDPFが熱膨張して熱変形または熱応力が発生する。この熱変形または熱応力によってDPFに加えられる負荷が一定値を超えると、DPFにクラックが発生してしまうという問題がある。
【0005】
従来、このようなクラックの発生を防止するために、複数のセグメントを、接合材を用いて接合することによってDPF(分割構造のDPF)を形成することが提案されている。そして、接合材の熱膨張係数がセグメントの熱膨張係数よりも小さいほど、上記再生処理の際に、セグメントの間に発生する熱応力または熱変形を抑制しやすくなると考えられている(特許文献1参照)。これは、接合材の熱膨張の程度がセグメントの熱膨張の程度以下になるため、セグメントの熱膨張を接合材が抑制せずに、この熱膨張に伴う熱応力または熱変形を接合材に吸収させるという考えに基づいている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/069674号パンフレット(2007年6月21日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来技術では、上記分割構造のDPFにおけるクラックの発生を十分に防止することができなかった。本発明は、この問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、再生処理に供してもクラックが発生しないDPFを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、分割構造のDPFにおいてクラックが発生する原因を調べたところ、セグメントの熱膨張の程度が接合材の熱膨張の程度よりも大きすぎると、セグメントの熱膨張を接合材が抑制することができなくなるため、セグメントが過度に熱膨張してしまい、クラックが発生してしまうことに気づいた。また、接合材の熱膨張の程度がセグメントの熱膨張の程度よりも大きすぎても、同様に、接合材が過剰に熱膨張してしまい、クラックが発生してしまうことに気づいた。
【0009】
そして、本発明者らは、接合材の厚みがセグメントの大きさよりも非常に薄いことに着目し、従来考えられていた接合材の熱膨張の程度をセグメントの熱膨張の程度以下にするのではなく、接合材の熱膨張の程度をセグメントの熱膨張の程度よりもやや大きくすれば、セグメントおよび接合材の上述した過剰な熱膨張を抑制することができ、クラックの発生を防止することができることを見出した。本発明者らは、鋭意研究の末、この技術思想を具現化する数値範囲を見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、ハニカム構造を有する複数のセグメントが接合材によって接合されてなるディーゼルパティキュレートフィルタであって、セグメントの熱膨張係数Aと接合材の熱膨張係数Bとが式:1.0<B/A<1.4の関係を満たすことを特徴としている。
【0011】
この構成によれば、接合材の熱膨張係数Bとセグメントの熱膨張係数Aとが上記関係を満たすことによって、セグメントおよび接合材の過剰な熱膨張を防止することができる。その結果、セグメントまたは接合材の熱膨張によってこれらの集合体であるDPFに対して発生する熱変形または熱応力を緩和することができる。本発明のディーゼルパティキュレートフィルタは、このようにして、クラックの発生を防止することができる。
【0012】
本発明のディーゼルパティキュレートフィルタは、再生処理を行っても、クラックが発生しないので、従来のフィルタよりも多く繰り返し使用することができる。
【0013】
本発明のディーゼルパティキュレートフィルタでは、接合材が、熱膨張係数Aよりも小さい熱膨張係数を有するセラミック(以下、「低熱膨張係数を有するセラミック」と称することがある。)と、熱膨張係数Aよりも大きい熱膨張係数を有するセラミック(以下、「高熱膨張係数を有するセラミック」と称することがある。)とを含んでいることが好ましい。接合材の熱膨張係数には、接合材の骨材の熱膨張係数が反映される。このため、接合材の骨材である「低熱膨張係数を有するセラミック」と「高熱膨張係数を有するセラミック」とを組み合わせることによって、接合材の熱膨張係数Bを調整することができ、上述した式(1)の関係を満たすディーゼルパティキュレートフィルタを容易に得ることができる。
【0014】
本発明のディーゼルパティキュレートフィルタでは、熱膨張係数Aよりも小さい熱膨張係数を有するセラミックが、コージェライトおよびチタン酸アルミニウムの少なくとも一種であることが好ましい。これらの物質を接合材に含有させることによって、ディーゼルパティキュレートフィルタの強度および耐熱衝撃性を向上させることができる。
【0015】
本発明のディーゼルパティキュレートフィルタでは、熱膨張係数Aよりも大きい熱膨張係数を有するセラミックが、アルミナ、フォルステライト、ジルコニアおよび酸化マグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらの物質を接合材に含有させることによって、ディーゼルパティキュレートフィルタの強度および耐熱衝撃性を向上させることができる。
【0016】
本発明のディーゼルパティキュレートフィルタでは、セグメントが、窒化ケイ素質のセグメントであることが好ましい。この窒化ケイ素質のセグメントは、炭化ケイ素質のセグメント等と比べて熱容量が小さいため、より少ない熱量での加熱によって再生を行うことができる。
【0017】
また、本発明に係る排ガス浄化装置は、本発明に係るディーゼルパティキュレートフィルタを備えていることを特徴としている。上述したように、このディーゼルパティキュレートフィルタは、再生処理を行うことによって、繰り返し使用することができる。よって、このようなフィルタを備える排ガス浄化装置も、繰り返し使用することができ、経済的に優れている。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るディーゼルパティキュレートフィルタは、以上のように、ハニカム構造を有する複数のセグメントが接合材によって接合されてなるディーゼルパティキュレートフィルタであって、セグメントの熱膨張係数Aと接合材の熱膨張係数Bとが式:1.0<B/A<1.4の関係を満たすものである。
【0019】
それゆえ、本発明に係るディーゼルパティキュレートフィルタは、再生処理の際のセグメントおよび接合材の過剰な熱膨張を防止することができ、クラックの発生を防止することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態におけるDPFの例を示す斜視図である。
【図2】(a)は、図2に示すDPFに用いる多孔質セラミック部材を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示す多孔質セラミック部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態について、以下に詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施し得るものである。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0022】
(I)DPF
本実施形態のDPFは、ハニカム構造を有するセグメント(以下、「ハニカムセグメント」と称することがある。)が複数、接合材によって接合されてなるものであって、ハニカムセグメントの熱膨張係数Aと接合材の熱膨張係数Bとが、式:1.0<B/A<1.4の関係を満たすことを特徴としている。このように、本実施形態のDPFにおいて、接合材の熱膨張係数Bはハニカムセグメントの熱膨張係数Aよりもやや大きく規定されている。このような接合材の熱膨張係数とハニカムセグメントの熱膨張係数との関係は、上述した従来技術にて知られていないことはもちろん、従来技術にて考えられていた関係と真逆であるので、従来技術から容易に想到することはできない。
【0023】
本実施形態のDPFの構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態におけるDPFの一例(DPF10)を示す斜視図である。本明細書において、「長手方向」とは、「セルおよび壁部に沿う方向」を意味する。
【0024】
本実施形態のDPF10は、ハニカム構造を有するウォールフロータイプのフィルタである。このようなDPF10は、図1に示すように、複数のハニカムセグメント(多孔質セラミック部材)1が接合材2によって接合された構成である。具体的には、複数のハニカムセグメント1は、接合材2によって一体的に接合されてセラミックブロック3を構成している。さらに、このセラミックブロック3の周囲に従来公知の外塗り材4で被覆されていてもよい。
【0025】
DPF10の長手方向に垂直な断面の断面形状は、図1に示す円形に限定されず、例えば、楕円形、正方形、長方形または多角形であってもよい。DPF10の断面の大きさはエンジンの排気量によってその最適値が決定される。
【0026】
DPFの各部材、DPFの機能および熱膨張係数等を以下にて説明する。
【0027】
<ハニカムセグメント>
ハニカムセグメント1の構成について、図2を参照しながら説明する。図2の(a)は、図1に示すDPF10を構成するハニカムセグメント1を示す斜視図である。図2の(b)は、図2の(a)に示すハニカムセグメント1において、長手方向に沿う面で切断したときの断面図である。
【0028】
図2の(a)に示すように、ハニカムセグメント1は、例えば、複数のセル5、セル5の壁部6、および封孔部7を備えている。セル5は、2つの端面を連通しており、排ガスの流路として機能する。壁部6は、排ガスを通過させる細孔(図示しない)が設けられており、排ガス中の粒子状物質を捕集するためのフィルタとして機能する。封孔部7は、セル5の封鎖として用いられる従来公知のものである。
【0029】
このハニカムセグメント1では、複数のセル5が壁部6を隔てて長手方向に並設され、セル5のいずれか一方の端面が封孔部7によって封鎖され、セル5の一方から他方に向けて(図2の(b)における矢印の方向)排ガスを流し、かつ上記壁部6の細孔を通して隣接するセル5に排ガスを流す(図2(b)における矢印を参照)ように構成されている。
【0030】
より具体的には、複数のセル5は、排ガスの流れる方向に沿って規則的に並設されている。セル5は、壁部6によって仕切られることによって形成されている。セル5は、上流側(エンジン側)の端面または下流側(排気口側)の端面のいずれかの端面において封孔部7によって封鎖されており、隣り合うセル同士において封鎖された端面が異なっている。すなわち、あるセルの一方(例えば、エンジン側)の端面が開口し、他方(例えば、排気口側)の端面が封鎖されている場合、このセルと隣接するセルは、対応する一方(例えば、エンジン側)の端面が封鎖され、対応する他方(例えば、排気口側)の端面が開口している。このため、各端面において、封鎖されているセルは、図2の(a)に示すように市松模様を形成する。
【0031】
このようなハニカムセグメント1において、セル5の断面形状は、略正方形であることが好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではなく、他の形状であってもよい。壁部6の厚みは、例えば、0.2〜0.4mmである。単位面積中のセル数も特に限定されるものではないが、例えば、200〜300cpsiである。
【0032】
ハニカムセグメント1は、ハニカムセグメント1を構成する主要構成材と、従来公知の焼結助剤、従来公知の各種バインダー等を含んでいる組成物を焼結、または反応焼結等をすることによって形成されたものである。
【0033】
ハニカムセグメント1の主要構成材としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素および窒化チタン等の窒化物セラミック、窒化ケイ素、コーディエライト、アルミナ(Al)、シリカおよびムライト等の酸化物セラミック、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタルおよび炭化タングステン等の炭化物セラミック、などを挙げることができる。強度、耐熱性の観点から、窒化ケイ素が好ましい。なお、窒化ケイ素のケイ素と窒素の一部をそれぞれアルミニウムと酸素で置換したサイアロンも窒化ケイ素質に含まれる。
【0034】
主要構成材が窒化ケイ素であるハニカムセグメント1は、窒化ケイ素質のハニカムセグメントであるといえる。本明細書において、「主要構成材」とは、ハニカムセグメント中に、50重量%以上、より好ましくは80重量%以上含まれている材料を意味する。
【0035】
ハニカムセグメント1は、気孔率が40〜70%であることが好ましく、55〜65%であることがより好ましい。気孔率が40%以上であることにより、圧力損失が大きくなり過ぎないためフィルタとして好適である。また、気孔率が70%以下であることにより、十分な強度を維持できるため好ましい。なお、本明細書において、気孔率は、アルキメデス法によって測定された数値である。
【0036】
ハニカムセグメント1の大きさは、従来公知の大きさであり、例えば、20〜100mm(縦)×20〜100mm(横)×50〜500mm(高さ)であり、25〜70mm(縦)×25〜70mm(横)×100〜350mm(高さ)であることが好ましく、30〜60mm(縦)×30〜60mm(横)×100〜350mm(高さ)であることがより好ましい。なお、本明細書において、「縦の長さ」はハニカムセグメント1の長手方向の長さが意図される(図2の(a)にて「x」で示す。)。「横」は、長手方向に垂直な方向の長さが意図される(図2の(a)にて「y」で示す。)。「高さ」は、長手方向と長手方向に垂直な方向とによって形成された面に垂直な方向の長さが意図される(図2の(a)にて「z」で示す。)。
【0037】
<接合材>
接合材2は、接合材2を構成する骨材と必要に応じてその他の材料とを含んでいる接合材2用の組成物を硬化することによって形成されたものである。より具体的には、ハニカムセグメント1の外周面に塗布された接合材2用の組成物の層を硬化したものである。このような接合材2用の組成物は、例えば、接合材を構成する骨材の1つ以上と必要に応じてその他の材料とを混合し、ミキサーにて、所定時間の混練を行うことによって製造することができる。
【0038】
接合材を構成する骨材としては、例えば、コージェライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ(Al)、フォルステライト、ジルコニア(ZrO)および酸化マグネシウム(MgO)などのセラミックを挙げることができる。
【0039】
その他の材料としては、例えば、セラミック繊維、無機バインダー、有機バインダー、および水が挙げられる。
【0040】
無機バインダーには、例えば、コロイダルシリカおよびコロイダルアルミナの少なくとも一種を用いることができる。コロイダルシリカ(例えば、日産化学社製、商品名:「スノーテックス30」)とは、SiOがコロイド状になったものであり、水70%およびシリカ30%の比率を有している。コロイダルアルミナとは、Alがコロイド状になったものであり、水70%およびアルミナ30%の比率を有している。有機バインダーには、例えば、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびポリビニルアルコールの少なくとも一種を用いることができる。
【0041】
なお、セラミック繊維は、強度の向上に寄与する。
【0042】
接合材の厚み(ハニカムセグメント1の外周面に塗布された接合材2用の組成物の層の厚み)は、従来公知の厚みであり、例えば、0.5〜10mmであり、1〜5mmであることが好ましく、1〜3mmであることが好ましい。本明細書において、「接合材の厚み」は、この接合材が接合する2つのハニカムセグメントの間の接合材の長さが意図される。
【0043】
<DPFの機能>
本実施形態のDPFは、上述した構造のハニカムセグメント1が複数、接合材2によって接合された構成である。このような構成のDPFをディーゼルエンジンの排気通路に配置した場合、図2の(b)にて矢印で示すように、エンジンからの排ガスは、エンジン側の端面が開口しているセル(流入セル)に流入する。流入セルの排気口側の端面は封鎖されているので、流入セル内に流入した排ガスは、流入セルから排出されることができず、壁部6の細孔を通り流入セルに隣接したセル(流出セル)に拡散する。この流出セルでは、エンジン側の端面が封鎖されているが、排気口側の端面は開口している。このため、流出セル内に拡散した排ガスは、流出セルから排気口へ流出する。
【0044】
このように、排ガスがDPFを通過する際に、壁部6を通過し、このとき排ガス中の粒子状物質がこの壁部6に捕集される。DPFは、このようなメカニズムによって、排ガスを浄化することができる。
【0045】
<熱膨張係数>
本実施形態のDPFは、ハニカムセグメント1の熱膨張係数Aと接合材2の熱膨張係数Bとが、式:1.0<B/A<1.4の関係を満たすものであり、より好ましくはさらなる式:1.09≦B/A≦1.38の関係を満たすものである。「B/A」が1.0以下の場合、接合材がセグメントの熱膨張を抑えることができず、セグメントの過剰な熱膨張が引き起こされ、クラックが発生する。特に、「B/A」が小さくなるほど、セグメントの過剰な熱膨張がさらに増大し、より大きいクラックが発生する。また、「B/A」が1.4以上の場合、セグメントが接合材の熱膨張を抑えることができず、接合材の過剰な熱膨張が引き起こされ、クラックが発生する。
【0046】
「B/A」が1.0よりも大きく1.4よりも小さい場合、セグメントおよび接合材の過剰な熱膨張を防止して、クラックの発生を防止することができる。
【0047】
また、熱膨張係数Aと熱膨張係数Bとの関係は、セグメントの大きさと接合材の厚みとを考慮して変更することができる。
【0048】
本明細書にて用いる場合、「熱膨張係数」は、JIS R1618に準じて測定した値が意図される。
【0049】
本明細書にて用いる場合、「ハニカムセグメント1の熱膨張係数A」は、ハニカムセグメント用の組成物の熱膨張係数ではなく、この組成物を焼成することによって形成されたハニカムセグメントの熱膨張係数が意図される。「接合材2の熱膨張係数B」は、接合材2用の組成物の熱膨張係数ではなく、この組成物を硬化することによって形成された接合材2の熱膨張係数が意図される。本明細書において、「硬化」には、「焼結」および「焼成」が包含される。
【0050】
ハニカムセグメントの熱膨張係数Aは、上述したハニカムセグメント用の組成物を硬化した後に、上述した方法で測定することによって算出することができる。なお、ハニカムセグメントの熱膨張係数Aには、上述したハニカムセグメントの基材となる主要構成材の熱膨張係数が反映される。例えば、ハニカムセグメントの主要構成材が窒化ケイ素(Si)である場合、熱膨張係数Aは、窒化ケイ素(Si)の熱膨張係数である3.12×10−6/Kとなる。
【0051】
また、接合材の熱膨張係数Bは、上述した接合材2用の組成物を硬化した後に、上述した方法で測定することによって算出することができる。なお、接合材の熱膨張係数Bには、上述した接合材を構成する骨材の熱膨張係数が反映される。よって、熱膨張係数Bは、接合材を構成する骨材に用いる物質を選択することによって、当業者が適宜設定することができる。
【0052】
以下に、ハニカムセグメントを構成する骨材または接合材を構成する骨材の熱膨張係数の一例を示す。
【0053】
・窒化ケイ素 :3.12×10−6/K
・コーディエライト:0.1×10−6/K
・チタン酸アルミ :0.8〜1×10−6/K
・アルミナ :8×10−6/K
・フォルステライト:12×10−6/K
・ジルコニア :11×10−6/K
・酸化マグネシウム:13.3×10−6/K。
【0054】
上述した熱膨張係数の関係を満たすために、ハニカムセグメントの熱膨張係数Aを決定した後に、接合材の熱膨張係数Bを決定する。
【0055】
例えば、ハニカムセグメントの熱膨張係数Aが決定されている場合、骨材として熱膨張係数Aよりも小さい熱膨張係数を有するセラミック(低熱膨張係数のセラミック)と熱膨張係数Aよりも大きい熱膨張係数を有するセラミック(高熱膨張係数のセラミック)とを組み合わせることによって、上記式を満たすための熱膨張係数Bを有する接合材を得ることができる。具体的には、骨材として低熱膨張係数のセラミックと高熱膨張係数のセラミックとを混合して上記接合材2用の組成物を作製すればよい。当業者は、低熱膨張係数のセラミックと高熱膨張係数のセラミックとの組合せおよびそれらの混合比を適宜設定することができる。
【0056】
低熱膨張係数のセラミックおよび高熱膨張係数のセラミックは、熱膨張係数Aによって変更される。熱膨張係数Aが3.12×10−6/Kの場合(すなわち、ハニカムセグメント主要構成材が窒化ケイ素である場合)、低熱膨張係数のセラミックとして、例えば、コージェライトおよびチタン酸アルミニウムの少なくとも一種を用いることができ、高熱膨張係数のセラミックとして、例えば、アルミナ(Al)、フォルステライト、ジルコニア(ZrO)および酸化マグネシウム(MgO)からなる群より選択される少なくとも一種を用いることができる。
【0057】
具体的には、熱膨張係数Aが3.12×10−6/K(窒化ケイ素)の場合、骨材として上述した低熱膨張係数のセラミック5〜40質量%(好ましくは15〜30質量%)と上述した高熱膨張性のセラミック5〜30質量%(好ましくは10〜25質量%)とを少なくとも含んでいる接合材2用の組成物を作製すればよい。接合材2用の組成物が上述したその他の材料を含んでいる場合、接合材2用の組成物中のその他の材料の含有量は、30〜90質量%(好ましくは45〜75質量%)である。
【0058】
また、熱膨張係数Aが4.1×10−6/K(炭化ケイ素)の場合、上述した低熱膨張係数のセラミック5〜40質量%(好ましくは5〜20質量%)と上述した高熱膨張性のセラミック5〜30質量%(好ましくは5〜20質量%)とを少なくとも含んでいる組成物を作製すればよい。接合材2用の組成物が上述したその他の材料を含んでいる場合、接合材2用の組成物中のその他の材料の含有量は、30〜90質量%(好ましくは60〜90質量%)である。
【0059】
本実施形態におけるDPFは、上述した構成に限定されるものではなく、DPFの長手方向に垂直な断面の断面形状、DPFの長手方向に垂直な断面の断面積、DPFの長手方向の長さ等は、DPFの用途、設置場所等に応じて適宜選択すればよい。また、本実施形態におけるハニカムセグメントは、上述したハニカム構造を有することが好ましいが、ハニカム構造の構成は必ずしもこれに限定されるものではなく、セルの断面形状、壁部の厚み、単位面積中のセル数等は、セグメントが形成するDPFの用途、設置場所等に応じて適宜選択すればよい。
【0060】
(II)DPFの製造方法
本実施形態のDPFは、一例として次のようにして製造することができる。
【0061】
上述したハニカムセグメントを構成する骨材の1種以上と必要に応じてその他の材料とを混合して、可塑性の坏土(ハニカムセグメント用の組成物)を作製する(ハニカムセグメント用の組成物の作製工程)。この坏土を上述したハニカム構造の形状となるように押出成形する(成形工程)。成形したハニカムセグメントを乾燥し(乾燥工程)、封孔部7によってセルを封鎖する(封孔工程)。次いで、ハニカムセグメントを焼結する(焼結工程)。
【0062】
このようにして、ハニカムセグメント1を作製した後、ハニカムセグメント1の外周面に、上述した接合材2用の組成物を塗布し、接合材2用の組成物の層を形成する。そして、所定の立体形状(ハニカム構造体の全体構造)となるように複数のハニカムセグメント1を組み付け、この組み付けた状態で加熱乾燥する。この加熱乾燥によって、接合材2用の組成物が硬化して接合材を形成し、ハニカムセグメント1同士を接合させる(接合工程)。
【0063】
このようにして、複数のハニカムセグメント1が接合材2によって一体的に接合されたセラミックブロック3が作製される。その後、このセラミックブロック3を図1に示す形状に研削加工し、外周面を外塗り材4によって被覆し、加熱乾燥する(加工工程)。このようにして、図1に示すDPF10を製造する。
【0064】
封孔工程は、封鎖をしないセルをマスキングした状態で、ハニカムセグメント1の端面をスラリー状の封孔部に浸漬して、開口しているセルに封孔部7を充填することによって行うことができる。なお、封孔部7の充填は、焼結工程前に行っても、焼結工程後に行ってもよい。
【0065】
このように、本実施形態のDPFは、(1)ハニカムセグメント用の組成物の作製工程、(2)成形工程、(3)乾燥工程、(4)封孔工程、(5)焼結工程、(6)接合工程、(7)加工工程、を包含している製造方法を用いて製造することができる。また、この製造方法は、(4)封孔工程と(5)焼結工程との間に、従来公知の脱脂工程をさらに含んでいてもよい。
【0066】
(III)本実施形態における排ガス浄化装置
本実施形態の排ガス浄化装置は、本実施形態のDPFを備えているものである。本実施形態における排ガス浄化装置において、上記DPF以外の構成は特に限定されず、従来公知の構成を用いることができる。
【0067】
本実施形態における排ガス浄化装置は、例えば、本実施形態における排ガス浄化フィルタ用の上記DPFと、排気通路におけるその上流側(エンジン側)に設けられた酸化触媒とを含んでいる。かかる酸化触媒は、PM中の可溶性有機成分、HC(炭化水素)およびCOを除去するために設けられる。かかる酸化触媒は、特に限定されるものではなく、DOC(Diesel Oxidation Catalyst)として用いられている酸化触媒であればどのようなものであってもよい。
【0068】
また、本実施形態における排ガス浄化装置は、必要に応じて、排気通路において、本実施形態におけるDPFの下流側(排気口側)に設けられたNOx還元システムを含んでいてもよい。NOx還元システムは、排ガス中のNOxを還元するシステムであれば特に限定されるものではなく、例えば、ディーゼルエンジンのNOx還元システムとして用いられているNOx選択還元システム(SCR(Selective Catalytic Reduction for NOX))、NOx吸蔵システム(NSR(NOX Storage Reduction))等であればどのようなものであってもよい。
【0069】
(IV)その他の実施形態
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0070】
以下に実施例を示し、本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0071】
〔実施例1〕
(ハニカムセグメントの作製)
主要構成材を窒化ケイ素(Si)とした、35mm×35mm×150mmのハニカムセグメントを作製した。
【0072】
なお、このハニカムセグメントの熱膨張係数は3.12×10−6/Kである。
【0073】
(接合材用の組成物1の作製)
25.0質量%のコーディエライト、15.0質量%のAl、25.0質量%のセラミック繊維、25.0質量%のコロイダルシリカ、0.5質量%のメチルセルロース、および9.5質量%のイオン交換水を混合することによって、接合材用の組成物1を作製した。
【0074】
なお、この接合材用の組成物1を焼結するとイオン交換水およびメチルセルロースが消失する。焼結後の接合材用の組成物1(すなわち、接合材1)の組成は以下のとおりである:34.5質量%のコーディエライト、20.7質量%のAl、34.5質量%のセラミック繊維、および10.3質量%のコロイダルシリカ。
【0075】
接合材1の熱膨張係数をJIS R1618に準じて測定した。その結果、接合材1の熱膨張係数は3.39×10−6/Kであった。
【0076】
(DPF1の作製)
上述のようにして作製したハニカムセグメント9個を、接合材用の組成物1を用いて接合し、セラミックブロックを作製した。作製したセラミックブロックを650℃の炉内にて二時間放置し、乾燥および固化を行った。次いで、炉から取り出し、放冷した。
次いで、セラミックブロックを加工してφ90mm×150mmのDPF1を作製した。このDPF1において、ハニカムセグメントの熱膨張係数に対する接合材1の熱膨張係数の比率(3.39×10−6/3.12×10−6)は、1.09であった。
【0077】
(DPF1の耐熱衝撃性)
接合材用の組成物1を用いて作製したDPFの耐熱衝撃性を以下のようにして評価した。
【0078】
作製したDPF1を800℃の炉内に二時間放置した。その後、DPF1を炉から取り出し、放冷した。放冷後に、DPF1の端面にクラックが生じているか否かを目視にて確認した。その結果、DPF1の端面には、クラックが生じていなかった(表3にて○で示す。)。
【0079】
(DPF1の接合強度)
この接合材用の組成物1を用いて作製したDPFの接合強度を以下のようにして測定した。
【0080】
17mm×17mm(10セル×10セル)×10mmのハニカムセグメントを上記「ハニカムセグメントの作製」と同様にして二個作製した。一方のハニカムセグメントの側面(17mm×10mmの面)全体に接合材用の組成物1を塗布した。塗布された接合材用の組成物1に他方のハニカムセグメントの側面(17mm×10mm)を付着させて、ハニカムセグメント同士を接合した。接合後の接合材用の組成物1の層の高さは2mmであった。
【0081】
作製したハニカムセグメントのセラミックブロックを650℃の炉内にて二時間放置し、乾燥および固化を行った。次いで、炉から取り出し、放冷した。そして、この接合体に対して曲げ試験(スパン40mm)を行うことによって、接合強度を測定した。曲げ試験は、JIS R 1601 ファインセラミックの曲げ強さ試験方法(1981.1995)を参考に行った。その結果、接合強度は1.20MPaであった。
【0082】
〔実施例2〕
(ハニカムセグメントの作製)
実施例1の「ハニカムセグメントの作製」と同様の操作を行い、ハニカムセグメントを作製した。
【0083】
(接合材用の組成物2の作製)
20.0質量%のコーディエライトおよび20.0質量%のAlを用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、接合材用の組成物2を作製した。
【0084】
なお、焼結後の接合材用の組成物2(すなわち、接合材2)の組成は以下のとおりである:27.6質量%のコーディエライト、27.6質量%のAl、34.5質量%のセラミック繊維、および10.3質量%のコロイダルシリカ。
【0085】
接合材2の熱膨張係数を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、この接合材2の熱膨張係数は3.45×10−6/Kであった。
【0086】
(DPF2の作製)
接合材用の組成物1の代わりに接合材用の組成物2を用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、DPF2を作製した。このDPF2において、ハニカムセグメントの熱膨張係数に対する接合材2の熱膨張係数の比率(3.45×10−6/3.12×10−6)は、1.11であった。
【0087】
(DPF2の耐熱衝撃性)
作製したDPF2の耐熱衝撃性を実施例1と同様の方法で試験した。その結果、DPF2の端面には、クラックが生じていなかった(表3にて○で示す。)。
【0088】
(DPF2の接合強度)
接合材用の組成物2を用いて作製したDPFの接合強度を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合強度は0.82MPaであった。
【0089】
〔実施例3〕
(ハニカムセグメントの作製)
実施例1の「ハニカムセグメントの作製」と同様の操作を行い、ハニカムセグメントを作製した。
【0090】
(接合材用の組成物3の作製)
15.0質量%のコーディエライトおよび25.0質量%のAlを用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、接合材用の組成物3を作製した。
【0091】
なお、焼結後の接合材用の組成物3(すなわち、接合材3)の組成は以下のとおりである:20.7質量%のコーディエライト、34.5質量%のAl、34.5質量%のセラミック繊維、および10.3質量%のコロイダルシリカ。
【0092】
接合材3の熱膨張係数を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合材3の熱膨張係数は3.77×10−6/Kであった。
【0093】
(DPF3の作製)
接合材用の組成物1の代わりに接合材用の組成物3を用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、DPF3を作製した。このDPF3において、ハニカムセグメントの熱膨張係数に対する接合材3の熱膨張係数の比率(3.77×10−6/3.12×10−6)は、1.21であった。
【0094】
(DPF3の耐熱衝撃性)
作製したDPF3の耐熱衝撃性を実施例1と同様の方法で試験した。その結果、DPF3の端面には、クラックが生じていなかった(表3にて○で示す。)。
【0095】
(DPF3の接合強度)
接合材用の組成物3を用いて作製したDPFの接合強度を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合強度は0.65MPaであった。
【0096】
〔実施例4〕
(ハニカムセグメントの作製)
実施例1の「ハニカムセグメントの作製」と同様の操作を行い、ハニカムセグメントを作製した。
【0097】
(接合材用の組成物4の作製)
Alの代わりに15質量%のフィルステライトを用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、接合材用の組成物4を作製した。
【0098】
なお、焼結後の接合材用の組成物4(すなわち、接合材4)の組成は以下のとおりである:34.5質量%のコーディエライト、20.7質量%のフォルステライト、34.5質量%のセラミック繊維、および10.3質量%のコロイダルシリカ。
【0099】
接合材4の熱膨張係数を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合材4の熱膨張係数は3.88×10−6/Kであった。
【0100】
(DPF4の作製)
接合材用の組成物1の代わりに接合材用の組成物4を用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、DPF4を作製した。このDPF4において、ハニカムセグメントの熱膨張係数に対する接合材4の熱膨張係数の比率(3.88×10−6/3.12×10−6)は、1.24であった。
【0101】
(DPF4の耐熱衝撃性)
作製したDPF4の耐熱衝撃性を実施例1と同様の方法で試験した。その結果、DPF4の端面には、クラックが生じていなかった(表3にて○で示す。)。
【0102】
(DPF4の接合強度)
接合材用の組成物4を用いて作製したDPFの接合強度を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合強度は0.95MPaであった。
【0103】
〔実施例5〕
(ハニカムセグメントの作製)
実施例1の「ハニカムセグメントの作製」と同様の操作を行い、ハニカムセグメントを作製した。
【0104】
(接合材用の組成物5の作製)
15.0質量%のコーディエライトを用い、Alの代わりに25質量%のフィルステライトを用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、接合材用の組成物5を作製した。
【0105】
なお、焼結後の接合材用の組成物5(すなわち、接合材5)の組成は以下のとおりである:20.7質量%のコーディエライト、34.5質量%のフィルステライト、34.5質量%のセラミック繊維、および10.3質量%のコロイダルシリカ。
【0106】
接合材5の熱膨張係数を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合材5の熱膨張係数は4.25×10−6/Kであった。
【0107】
(DPF5の作製)
接合材用の組成物1の代わりに接合材用の組成物5を用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、DPF5を作製した。このDPF5において、ハニカムセグメントの熱膨張係数に対する接合材5の熱膨張係数の比率(4.25×10−6/3.12×10−6)は、1.36であった。
【0108】
(DPF5の耐熱衝撃性)
作製したDPF5の耐熱衝撃性を実施例1と同様の方法で試験した。その結果、DPF5の端面には、クラックが生じていなかった(表3にて○で示す。)。
【0109】
(DPF5の接合強度)
接合材用の組成物5を用いて作製したDPFの接合強度を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合強度は0.88MPaであった。
【0110】
〔実施例6〕
(ハニカムセグメントの作製)
実施例1の「ハニカムセグメントの作製」と同様の操作を行い、ハニカムセグメントを作製した。
【0111】
(接合材用の組成物6の作製)
Alの代わりに15質量%のZrOを用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、接合材用の組成物6を作製した。
【0112】
なお、焼結後の接合材用の組成物6(すなわち、接合材6)の組成は以下のとおりである:34.5質量%のコーディエライト、20.7質量%のZrO、34.5質量%のセラミック繊維、および10.3質量%のコロイダルシリカ。
【0113】
接合材6の熱膨張係数を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合材6の熱膨張係数は3.52×10−6/Kであった。
【0114】
(DPF6の作製)
接合材用の組成物1の代わりに接合材用の組成物6を用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、DPF6を作製した。このDPF6において、ハニカムセグメントの熱膨張係数に対する接合材6の熱膨張係数の比率(3.52×10−6/3.12×10−6)は、1.13であった。
【0115】
(DPF6の耐熱衝撃性)
作製したDPF6の耐熱衝撃性を実施例1と同様の方法で試験した。その結果、DPF6の端面には、クラックが生じていなかった(表3にて○で示す。)。
【0116】
(DPF6の接合強度)
接合材用の組成物6を用いて作製したDPFの接合強度を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合強度は1.01MPaであった。
【0117】
〔実施例7〕
(ハニカムセグメントの作製)
実施例1の「ハニカムセグメントの作製」と同様の操作を行い、ハニカムセグメントを作製した。
【0118】
(接合材用の組成物7の作製)
15.0質量%のコーディエライトを用い、Alの代わりに25質量%のZrOを用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、接合材用の組成物7を作製した。
【0119】
なお、焼結後の接合材用の組成物7(すなわち、接合材7)の組成は以下のとおりである:20.7質量%のコーディエライト、34.5質量%のZrO、34.5質量%のセラミック繊維、および10.3質量%のコロイダルシリカ。
【0120】
接合材7の熱膨張係数を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合材7の熱膨張係数は4.12×10−6/Kであった。
【0121】
(DPF7の作製)
接合材用の組成物1の代わりに接合材用の組成物7を用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、DPF7を作製した。このDPF7において、ハニカムセグメントの熱膨張係数に対する接合材7の熱膨張係数の比率(4.12×10−6/3.12×10−6)は、1.32であった。
【0122】
(DPF7の耐熱衝撃性)
作製したDPF7の耐熱衝撃性を実施例1と同様の方法で試験した。その結果、DPF7の端面には、クラックが生じていなかった(表3にて○で示す。)。
【0123】
(DPF7の接合強度)
接合材用の組成物7を用いて作製したDPFの接合強度を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合強度は1.22MPaであった。
【0124】
〔実施例8〕
(ハニカムセグメントの作製)
実施例1の「ハニカムセグメントの作製」と同様の操作を行い、ハニカムセグメントを作製した。
【0125】
(接合材用の組成物8の作製)
Alの代わりに15質量%のMgOを用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、接合材用の組成物8を作製した。
【0126】
なお、焼結後の接合材用の組成物8(すなわち、接合材8)の組成は以下のとおりである:34.5質量%のコーディエライト、20.7質量%のMgO、34.5質量%のセラミック繊維、および10.3質量%のコロイダルシリカ。
【0127】
接合材8の熱膨張係数を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合材8の熱膨張係数は3.79×10−6/Kであった。
【0128】
(DPF8の作製)
接合材用の組成物1の代わりに接合材用の組成物8を用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、DPF8を作製した。このDPF8において、ハニカムセグメントの熱膨張係数に対する接合材8の熱膨張係数の比率(3.79×10−6/3.12×10−6)は、1.21であった。
【0129】
(DPF8の耐熱衝撃性)
作製したDPF8の耐熱衝撃性を実施例1と同様の方法で試験した。その結果、DPF8の端面には、クラックが生じていなかった(表3にて○で示す。)。
【0130】
(DPF8の接合強度)
接合材用の組成物8を用いて作製したDPFの接合強度を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合強度は0.79MPaであった。
【0131】
〔実施例9〕
(ハニカムセグメントの作製)
実施例1の「ハニカムセグメントの作製」と同様の操作を行い、ハニカムセグメントを作製した。
【0132】
(接合材用の組成物9の作製)
15.0質量%のコーディエライトを用い、Alの代わりに25質量%のMgOを用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、接合材用の組成物9を作製した。
【0133】
なお、焼結後の接合材用の組成物9(すなわち、接合材9)の組成は以下のとおりである:20.7質量%のコーディエライト、34.5質量%のMgO、34.5質量%のセラミック繊維、および10.3質量%のコロイダルシリカ。
【0134】
接合材9の熱膨張係数を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合材9の熱膨張係数は4.12×10−6/Kであった。
【0135】
(DPF9の作製)
接合材用の組成物1の代わりに接合材用の組成物9を用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、DPF9を作製した。このDPF9において、ハニカムセグメントの熱膨張係数に対する接合材9の熱膨張係数の比率(4.12×10−6/3.12×10−6)は、1.32であった。
【0136】
(DPF9の耐熱衝撃性)
作製したDPF9の耐熱衝撃性を実施例1と同様の方法で試験した。その結果、DPF9の端面には、クラックが生じていなかった(表3にて○で示す。)。
【0137】
(DPF9の接合強度)
接合材用の組成物9を用いて作製したDPFの接合強度を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合強度は0.85MPaであった。
【0138】
〔実施例10〕
(ハニカムセグメントの作製)
実施例1の「ハニカムセグメントの作製」と同様の操作を行い、ハニカムセグメントを作製した。
【0139】
(接合材用の組成物10の作製)
コーディエライトの代わりに24質量%のチタン酸アルミを用い、16質量%のAlを用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、接合材用の組成物10を作製した。
【0140】
なお、焼結後の接合材用の組成物10(すなわち、接合材10)の組成は以下のとおりである:33.1質量%のチタン酸アルミ、22.1質量%のAl、34.5質量%のセラミック繊維、および10.3質量%のコロイダルシリカ。
【0141】
接合材10の熱膨張係数を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合材10の熱膨張係数は3.40×10−6/Kであった。
【0142】
(DPF10の作製)
接合材用の組成物1の代わりに接合材用の組成物10を用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、DPF10を作製した。このDPF10において、ハニカムセグメントの熱膨張係数に対する接合材10の熱膨張係数の比率(3.40×10−6/3.12×10−6)は、1.09であった。
【0143】
(DPF10の耐熱衝撃性)
作製したDPF10の耐熱衝撃性を実施例1と同様の方法で試験した。その結果、DPF10の端面には、クラックが生じていなかった(表3にて○で示す。)。
【0144】
(DPF10の接合強度)
接合材用の組成物10を用いて作製したDPFの接合強度を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合強度は1.11MPaであった。
【0145】
〔実施例11〕
(ハニカムセグメントの作製)
実施例1の「ハニカムセグメントの作製」と同様の操作を行い、ハニカムセグメントを作製した。
【0146】
(接合材用の組成物11の作製)
コーディエライトの代わりに20質量%のチタン酸アルミを用い、20質量%のAlを用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、接合材用の組成物11を作製した。
【0147】
なお、焼結後の接合材用の組成物11(すなわち、接合材11)の組成は以下のとおりである:27.6質量%のチタン酸アルミ、27.6質量%のAl、34.5質量%のセラミック繊維、および10.3質量%のコロイダルシリカ。
【0148】
接合材11の熱膨張係数を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合材11の熱膨張係数は3.80×10−6/Kであった。
【0149】
(DPF11の作製)
接合材用の組成物1の代わりに接合材用の組成物11を用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、DPF11を作製した。このDPF11において、ハニカムセグメントの熱膨張係数に対する接合材11の熱膨張係数の比率(3.80×10−6/3.12×10−6)は、1.22であった。
【0150】
(DPF11の耐熱衝撃性)
作製したDPF11の耐熱衝撃性を実施例1と同様の方法で試験した。その結果、DPF11の端面には、クラックが生じていなかった(表3にて○で示す。)。
【0151】
(DPF11の接合強度)
接合材用の組成物11を用いて作製したDPFの接合強度を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合強度は1.21MPaであった。
【0152】
〔実施例12〕
(ハニカムセグメントの作製)
実施例1の「ハニカムセグメントの作製」と同様の操作を行い、ハニカムセグメントを作製した。
【0153】
(接合材用の組成物12の作製)
Alの代わりに15質量%のMgOを用い、コロイダルシリカの代わりに25質量%のコロイダルアルミナを用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、接合材用の組成物12を作製した。
【0154】
なお、焼結後の接合材用の組成物12(すなわち、接合材12)の組成は以下のとおりである:34.5質量%のコーディエライト、20.7質量%のMgO、34.5質量%のセラミック繊維、および10.3質量%のコロイダルシリカ。
【0155】
接合材12の熱膨張係数を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合材12の熱膨張係数は4.00×10−6/Kであった。
【0156】
(DPF12の作製)
接合材用の組成物1の代わりに接合材用の組成物12を用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、DPF12を作製した。このDPF12において、ハニカムセグメントの熱膨張係数に対する接合材12の熱膨張係数の比率(4.00×10−6/3.12×10−6)は、1.28であった。
【0157】
(DPF12の耐熱衝撃性)
作製したDPF12の耐熱衝撃性を実施例1と同様の方法で試験した。その結果、DPF12の端面には、クラックが生じていなかった(表3にて○で示す。)。
【0158】
(DPF12の接合強度)
接合材用の組成物12を用いて作製したDPFの接合強度を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合強度は1.20MPaであった。
【0159】
〔実施例13〕
(ハニカムセグメントの作製)
実施例1の「ハニカムセグメントの作製」と同様の操作を行い、ハニカムセグメントを作製した。
【0160】
(接合材用の組成物13の作製)
15質量%のコーディエライトを用い、Alの代わりに25質量%のMgOを用い、コロイダルシリカの代わりに25質量%のコロイダルアルミナ(ナノ粒子)を用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、接合材用の組成物13を作製した。
【0161】
なお、焼結後の接合材用の組成物13(すなわち、接合材13)の組成は以下のとおりである:20.7質量%のコーディエライト、34.5質量%のMgO、34.5質量%のセラミック繊維、および10.3質量%のコロイダルシリカ。
【0162】
接合材13の熱膨張係数を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合材13の熱膨張係数は4.30×10−6/Kであった。
【0163】
(DPF13の作製)
接合材用の組成物1の代わりに接合材用の組成物13を用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、DPF13を作製した。このDPF13において、ハニカムセグメントの熱膨張係数に対する接合材13の熱膨張係数の比率(4.30×10−6/3.12×10−6)は、1.38であった。
【0164】
(DPF13の耐熱衝撃性)
作製したDPF13の耐熱衝撃性を実施例1と同様の方法で試験した。その結果、DPF13の端面には、クラックが生じていなかった(表3にて○で示す。)。
【0165】
(DPF13の接合強度)
接合材13を用いて作製したDPFの接合強度を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合強度は1.50MPaであった。
【0166】
〔比較例1〕
(ハニカムセグメントの作製)
実施例1の「ハニカムセグメントの作製」と同様の操作を行い、ハニカムセグメントを作製した。
【0167】
(接合材用の組成物14の作製)
40.0質量%の窒化ケイ素、25.0質量%のセラミック繊維、25.0質量%のコロイダルシリカ、0.5質量%のメチルセルロース、および9.5質量%のイオン交換水を混合することによって、接合材用の組成物14を作製した。
【0168】
なお、焼結後の接合材用の組成物14(すなわち、接合材14)の組成は以下のとおりである:55.2質量%の窒化ケイ素、34.5質量%のセラミック繊維、および10.3質量%のコロイダルシリカ。
【0169】
接合材14の熱膨張係数を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合材14の熱膨張係数は2.84×10−6/Kであった。
【0170】
(DPF14の作製)
接合材用の組成物1の代わりに接合材用の組成物14を用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、DPF14を作製した。このDPF14において、ハニカムセグメントの熱膨張係数に対する接合材14の熱膨張係数の比率(2.84×10−6/3.12×10−6)は、0.9であった。
【0171】
(DPF14の耐熱衝撃性)
作製したDPF14の耐熱衝撃性を実施例1と同様の方法で試験した。その結果、DPF14の端面には、クラックが生じていた(表3にて×で示す。)。
【0172】
(DPF14の接合強度)
接合材用の組成物14を用いて作製したDPFの接合強度を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合強度は1.00MPaであった。
【0173】
〔比較例2〕
(ハニカムセグメントの作製)
実施例1の「ハニカムセグメントの作製」と同様の操作を行い、ハニカムセグメントを作製した。
【0174】
(接合材用の組成物15の作製)
窒化ケイ素の代わりに40.0質量%のAlを用いたことを除いて、比較例1と同様の操作を行い、接合材用の組成物15を作製した。
【0175】
なお、焼結後の接合材用の組成物15(すなわち、接合材15)の組成は以下のとおりである:55.2質量%のAl、34.5質量%のセラミック繊維、および10.3質量%のコロイダルシリカ。
【0176】
接合材15の熱膨張係数を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合材15の熱膨張係数は5.20×10−6/Kであった。
【0177】
(DPF15の作製)
接合材用の組成物1の代わりに接合材用の組成物15を用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、DPF15を作製した。このDPF15において、ハニカムセグメントの熱膨張係数に対する接合材15の熱膨張係数の比率(5.20×10−6/3.12×10−6)は、1.7であった。
【0178】
(DPF15の耐熱衝撃性)
作製したDPF15の耐熱衝撃性を実施例1と同様の方法で試験した。その結果、DPF15の端面には、クラックが生じていた(表3にて×で示す。)。
【0179】
(DPF15の接合強度)
接合材用の組成物15を用いて作製したDPFの接合強度を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合強度は1.22MPaであった。
【0180】
〔比較例3〕
(ハニカムセグメントの作製)
実施例1の「ハニカムセグメントの作製」と同様の操作を行い、ハニカムセグメントを作製した。
【0181】
(接合材用の組成物16の作製)
窒化ケイ素の代わりに3.0質量%のコーディエライトと37.0質量%のAlとを用いたことを除いて、比較例1と同様の操作を行い、接合材用の組成物16を作製した。
【0182】
なお、焼結後の接合材用の組成物16(すなわち、接合材16)の組成は以下のとおりである:4.1質量%のコーディエライト、51質量%のAl、34.5質量%のセラミック繊維、および10.3質量%のコロイダルシリカ。
【0183】
接合材16の熱膨張係数を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合材16の熱膨張係数は4.90×10−6/Kであった。
【0184】
(DPF16の作製)
接合材用の組成物1の代わりに接合材用の組成物16を用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、DPF16を作製した。このDPF16において、ハニカムセグメントの熱膨張係数に対する接合材16の熱膨張係数の比率(4.90×10−6/3.12×10−6)は、1.6であった。
【0185】
(DPF16の耐熱衝撃性)
作製したDPF16の耐熱衝撃性を実施例1と同様の方法で試験した。その結果、DPF16の端面には、クラックが生じていた(表3にて×で示す。)。
【0186】
(DPF16の接合強度)
接合材用の組成物16を用いて作製したDPFの接合強度を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合強度は0.98MPaであった。
【0187】
〔比較例4〕
(ハニカムセグメントの作製)
実施例1の「ハニカムセグメントの作製」と同様の操作を行い、ハニカムセグメントを作製した。
【0188】
(接合材用の組成物17の作製)
窒化ケイ素の代わりに35.0質量%のコーディエライトと5.0質量%のAlとを用いたことを除いて、比較例1の「接合材用の組成物14の作製」と同様の操作を行い、接合材用の組成物17を作製した。
【0189】
なお、焼結後の接合材用の組成物17(すなわち、接合材17)の組成は以下のとおりである:48.3質量%のコーディエライト、6.9質量%のAl、34.5質量%のセラミック繊維、および10.3質量%のコロイダルシリカ。
【0190】
接合材17の熱膨張係数を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合材17の熱膨張係数は2.50×10−6/Kであった。
【0191】
(DPF17の作製)
接合材用の組成物1の代わりに接合材用の組成物17を用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、DPF17を作製した。このDPF17において、ハニカムセグメントの熱膨張係数に対する接合材17の熱膨張係数の比率(2.50×10−6/3.12×10−6)は、0.8であった。
【0192】
(DPF17の耐熱衝撃性)
作製したDPF17の耐熱衝撃性を実施例1と同様の方法で試験した。その結果、DPF17の端面には、クラックが生じていた(表3にて×で示す。)。
【0193】
(DPF17の接合強度)
接合材用の組成物17を用いて作製したDPFの接合強度を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合強度は0.98MPaであった。
【0194】
〔比較例5〕
(ハニカムセグメントの作製)
実施例1の「ハニカムセグメントの作製」と同様の操作を行い、ハニカムセグメントを作製した。
【0195】
(接合材用の組成物18の作製)
窒化ケイ素の代わりに40.0質量%のコーディエライトを用いたことを除いて、比較例1と同様の操作を行い、接合材用の組成物18を作製した。
【0196】
なお、焼結後の接合材用の組成物18(すなわち、接合材18)の組成は以下のとおりである:55.2質量%のコーディエライト、34.5質量%のセラミック繊維、および10.3質量%のコロイダルシリカ。
【0197】
接合材18の熱膨張係数を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合材18の熱膨張係数は1.90×10−6/Kであった。
【0198】
(DPF18の作製)
接合材用の組成物1の代わりに接合材用の組成物18を用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行い、DPF18を作製した。このDPF18において、ハニカムセグメントの熱膨張係数に対する接合材18の熱膨張係数の比率(1.90×10−6/3.12×10−6)は、0.6であった。
【0199】
(DPF18の耐熱衝撃性)
作製したDPF18の耐熱衝撃性を実施例1と同様の方法で試験した。その結果、DPF18の端面には、クラックが生じていた(表3にて×で示す。)。
【0200】
(DPF18の接合強度)
接合材用の組成物18を用いて作製したDPFの接合強度を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、接合強度は0.98MPaであった。
【0201】
実施例1〜13および比較例1〜5に関して、焼結前の接合材用の組成物の組成を表1に示し、焼結後の接合材用の組成物(接合材)の組成を表2に示し、接合材の熱膨張係数、熱膨張係数の比率、クラックの有無および接合強度を表3に示す。
【0202】
【表1】

【0203】
【表2】

【0204】
【表3】

【0205】
〔実施例と比較例との対比〕
ハニカムセグメントの熱膨張係数に対する接合材の熱膨張係数の比率は、表3に示すように、実施例1〜13において1よりも大きく、1.4よりも小さい範囲に含まれているのに対して、比較例1〜5において0.9以下または1.6以上の範囲に含まれている。また、接合強度は、表3に示すように、実施例1〜13において0.65〜1.50の範囲に含まれているのに対して、比較例1〜5において0.98〜1.22の範囲に含まれている。このように、実施例1〜13と比較例1〜5とでは、上記比率に関して差異があり、接合強度に関して差異がない。
【0206】
クラックの発生に関しては、表3に示すように、実施例1〜13においてDPFにクラックが生じなかったのに対して、比較例1〜5において、DPFにクラックが生じた。よって、クラックの発生は、上述したハニカムセグメントの熱膨張係数に対する接合材の熱膨張係数の比率に依存し、接合強度には依存しないといえる。
【0207】
以上の結果から、ハニカムセグメントの熱膨張係数に対する接合材の熱膨張係数の比率が1よりも大きく、1.4よりも小さい範囲に含まれていれば、DPFを再生する際のクラックの発生を防止できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0208】
本発明は、ディーゼルエンジンの排ガスに含まれる粒子状物質を捕集するためのDPFとして好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0209】
1 ハニカムセグメント
2 接合材
3 セラミックブロック
4 外塗り材
5 セル
6 壁部
7 封孔部
10 DPF

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカム構造を有する複数のセグメントが接合材によって接合されてなるディーゼルパティキュレートフィルタであって、
該セグメントの熱膨張係数Aと該接合材の熱膨張係数Bとが、
式:1.0<B/A<1.4
の関係を満たすことを特徴とするディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項2】
前記接合材が、熱膨張係数Aよりも小さい熱膨張係数を有するセラミックと、熱膨張係数Aよりも大きい熱膨張係数を有するセラミックとを含んでいることを特徴とする請求項1に記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項3】
前記熱膨張係数Aよりも小さい熱膨張係数を有するセラミックが、コージェライトおよびチタン酸アルミニウムの少なくとも一種であることを特徴とする請求項2に記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項4】
前記熱膨張係数Aよりも大きい熱膨張係数を有するセラミックが、アルミナ、フォルステライト、ジルコニアおよび酸化マグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項2または3に記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項5】
前記セグメントが、窒化ケイ素質のセグメントであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のディーゼルパティキュレートフィルタを備えていることを特徴とする排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−215102(P2012−215102A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80314(P2011−80314)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】