説明

デザート食品

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、デザート食品に関するものであって、特に、優れた食感と喉越し感を有する、細線状ゲルとシロップとを含むクズ切り風デザート食品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】寒天を原料とするゼリー、トコロテンなどの食品は、日本人に馴染みの深い季節的な食品であり、トコロテンに特有な臭いやトコロテン製造時に使用する酢の強い刺激臭など現代人の嗜好と合致しない欠点があったものの、最近ではこれらの欠点を改良し、寒天を使用した優れたデザート食品が開発されている(特開昭54‐129165号、特開昭55‐3751号、特開昭55‐3752号、特開昭64‐2561号、特開平 2‐39871 号及び特開平 2‐145160号)。しかし、嗜好が多様化しかつ高級化した今日ではさらに、現代人の要求する食感や喉越し感を十分に満たす美味しいデザート食品が求められている。一方、葛粉などの澱粉に砂糖を加えて熱湯で練り、きしめんのように細長く切った「クズ切り (登録商標) 」は、一般に馴染みの深い食品であり、そのつるりとして特有の食感と特有の風味により季節的な食品として、古くから人々に愛好されているが、クズ切りは、デザート食品としては形状が太くてコシがあり、澱粉特有の糊っぽさや風味が残っているので、現代人の要求する食感や喉越し感を十分に満たすものではなく、さらに改良する余地が残されていた。そこで、本発明者らは、このクズ切りの食感や喉越し感を改良することにより、現代人の要求する食感や喉越し感を十分に満たす美味しいデザート食品が得られるのではないかという点に注目し、研究を行った。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、優れた食感と喉越し感を有する、細線状ゲルとシロップとを含むデザート食品を提供することを目的とする。特に、細線状ゲルとシロップとを一体として喫食することができ、優れた食感と喉越し感を有するクズ切り風デザート食品を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らが、前記課題を解決するために研究を行った結果、特定の切り口を有する細線状ゲルと特定の粘度を有するシロップを組み合わせることにより、優れた食感と喉越し感を有する美味しいクズ切り風デザート食品が得られるという知見を得た。本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。したがって、本発明は、細線状ゲルとシロップとを含むクズ切り風デザート食品であって、細線状ゲルの切り口の厚みが2〜4 mm 、幅が3〜7 mm であり、25℃におけるシロップの粘度が100cp 以下であることを特徴とするデザート食品を提供するものである。
【0005】本発明の細線状ゲルは、ゲル化剤を水に分散し、加熱して溶解させ、冷却してゲル化した後、細線状に成形したものである。本発明で使用するゲル化剤は、優れた食感と喉越し感を有するゲルを形成するものであって、特に透明感のあるゲルを形成するものが好ましい。具体的に例を挙げると、カラギーナン、ファーセルラン、ゼラチン、ペクチン、寒天、澱粉、アルギン酸及びその塩、ローカストビーンガム、キサンタンガム、ジェランガムなどであって、特にローカストビーンガム、キサンタンガム及びジェランガムが好ましく、これらを単独で又は混合して使用する。これらのゲル化剤を、最終製品である細線状ゲル中の濃度が0.5〜1.4 重量%、特に0.7 〜1.1 重量%となるように使用して、細線状ゲルの破断力が15〜70g 、特に35〜65g となるように調製するのが好ましい。破断力が15gを下回ると細線状ゲルが切れ易くなって食べ難く、またゲルとしての存在感、食感を認識しにくくなり、一方、70gを上回ると堅くて食感、喉越し感が悪く、食べ難くなるからである。なお、従来のクズ切り製品の破断力は、ほぼ77〜345 gであって、かなり堅い細線状ゲルになっている。
【0006】また、このゲル化剤を用いてゲルを調製する際、必要に応じて、糖類、果汁、着色料、香料などを添加する。添加する糖類としては、砂糖、ぶどう糖、果糖、液糖、メイプルシロップ、蜂蜜などがあり、細線状ゲルの糖度が、後述する理由により、10〜20ブリックス、特に12〜16ブリックスとするのが好ましい。本発明で使用する果汁は、特に制限されないが、ぶどう、オレンジ、洋梨、白桃、りんご、メロン、パインなどがあり、その添加量はストレート果汁に換算した時、細線状ゲルの25重量%以下にするのが好ましい。また、使用する着色料は、食品添加物として許可されたものであれば特に制限されないが、例えば、メロンの場合はクチナシ青色素、ベニバナ黄色素、食用黄色4号、食用緑色1号、パインの場合はクチナシ黄色素、ベニバナ黄色素、食用黄色4号、オレンジの場合はアナトー色素、食用黄色5号、その他、カロチン、クロロフィルなども使用することができる。
【0007】本発明の細線状ゲルの切り口は、厚みを2〜4 mm 、特に2〜3 mm 、幅を3〜7 mm 、特に3〜5 mm とするのが好ましい。厚みが2mmを下回るとゲルが切れ易くなって、ゲルとしての存在感が弱くなり、ゲルのなめらかな食感、喉越し感が得られなくなり、一方、4mmを上回ると細線状ゲルが厚すぎて噛まずに飲み込むことができず、なめらかな喉越し感が得られなくなる。同様に、幅が3mmを下回るとゲルが切れ易くなって、ゲルとしての存在感が弱くなり、ゲルのなめらかな食感、喉越し感が得られなくなり、一方、7mmを上回ると噛まずに飲み込むことができず、なめらかな喉越し感が得られなくなる。また、細線状ゲルの長さは特に限定する必要はないが、60〜200 mm にするのが好ましい。本発明の細線状ゲルは、一般に次のように製造する。まず、所定量のゲル化剤を糖類と混合後水に分散し、水を十分に吸収させた後、攪拌しながら徐々に加熱して、80〜85℃とし、この温度を維持しながらゾルを形成する。ゾルが均一に形成されたことを確認した後、その温度を保ったまま、果汁、必要に応じて着色料、香料などを添加する。ゲル化にカルシウム塩等を必要とするゲル化剤には、ここでカルシウム塩等を添加する。溶解したゾルを型に流し込んだ後、冷やしてゲル化させ、トコロテン押し出し器により所定の大きさに切断するか、又はコンベア上で薄層状にゲル化させ、これを切刃によって所定の切り口となるように細線状ゲルを調製する。
【0008】本発明のシロップは、25℃における粘度が100cp以下、好ましくは30〜70cpのものであれば、その他は特に制限なく使用することができる。なお、シロップの粘度が100cpを上回ると、シロップに粘りが感じられるようになり、味にしつこさがでて、なめらかな流動感がなくなり、喉越し感が悪くなる。本発明のシロップとして、例えば、ガムシロップ、フルーツシロップ、グレナデンシロップ、メープルシロップ、ゴールデンシロップなどに、必要に応じて果汁、コーヒーなどを適宜加えて、適当な濃度に希釈したものを用いることができる。また、本発明のシロップとして、ぶどう、オレンジ、洋梨、白桃、りんご、メロン、パインなどの果汁に、砂糖、果糖、液糖、蜂蜜などの甘味料を加え、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸など有機酸を混合し、必要に応じて着色料、香料などを加えて調製したものも使用することができる。なお、シロップの糖度は、後述する理由により、10〜20ブリックス、特に12〜16ブリックスにするのが好ましい。本発明において、清涼感のあるデザート食品を得ようとすれば、シロップのpHを3〜5とするのが好ましい。pHが3を下回ると保存中にゲルが弱くなって細線状ゲルが切れ易くなり、一方、5を上回ると適度の酸味がなくなるからである。さらに、シロップの糖度を10〜20ブリックス、特に12〜16ブリックスとし、同時に細線状ゲルの糖度を10〜20ブリックス、特に12〜16ブリックスとすると、上記の適度の酸味との調和がうまくとれ、優れた清涼感を有するデザート食品が得られる。なお、シロップの糖度と細線状ゲルの糖度は別々に調整してもよいが、保存中に両者の糖度は平衡状態となり、ほぼ等しくなるので、最終的に上記の範囲内となるように調整すればよい。
【0009】本発明においては、細線状ゲルとシロップを、重量比で1:0.4 〜1:2.3 、特に1:0.7 〜1:1.9 の割合で使用するのが好ましい。シロップの量を制限するのは、細線状ゲル1に対し0.4を下回ると細線状ゲルのみを食する感じになり、一方、2.3を上回るとシロップの味が強くなり過ぎ、細線状ゲルの味わいがなくなって、いずれの場合も、シロップと細線状ゲルとを一緒に食することにより、ゲルのなめらかな食感、喉越し感を楽しむという本発明本来の効果を発揮できなくなるからである。本発明においては、細線状ゲルとシロップに加えて、さらにぶどう、チェリー、オレンジ、洋梨、白桃、りんご、メロン、パインなどの果肉を加えることができる。果肉についてはパルプ状のもの、さのう状のものでもよい。果肉の量は、食品全体の重量に対して5〜20重量%、特に10〜15重量%が好ましい。なお、果肉を加える場合、果肉の種類と同じ果汁を含むシロップを用いるのが一般的である。また、固液混合物の上に、デコレーションとして、果肉やホイップクリームなどを飾ってもよい。
【0010】本発明は、細線状ゲル、又は細線状ゲルと果肉とをシロップとともに食するものであり、細線状ゲル等とシロップとを混合してカップ状容器等に充填して、販売してもよいが、細線状ゲル等をカップ状容器等に充填し、別途充填包装したシロップをカップ状容器等に添着してもよい。シロップをカップ状容器に添着した例を、図2によって説明すると、1は樹脂製、紙製又は金属製のカップ状容器であり、2はカップ状容器本体であり、3は蓋であって、本体2と密着しており、その内部にシロップ4を収納している。また、図1は、細線状ゲル、果肉及びシロップを混合してカップ状容器に充填した例である。なお、本発明で樹脂製のカップ状容器等を使用する場合、その材質はポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリスチレン等が例示され、必要に応じて、フォーク、はし、スプーンなどの喫食用の器具を備えるとよい。さらに、長期の保存性を得るためには、デザート食品を充填した後、加熱殺菌処理をすることが好ましく、その条件は70〜95℃で、20〜60分間とするのがよい。
【0011】
【発明の効果】本発明により、細線状ゲルとシロップとを一体として喫食することができ、優れた食感と喉越し感を有するクズ切り風デザート食品を得ることができた。次に、実施例により本発明を説明する。
【0012】
【実施例】
〔実施例1〕ジェランガム2.2g、ローカストビーンガム5.8g、キサンタンガム2.9g、グラニュー糖150gおよびクエン酸ナトリウム0.5gに、水738.6gを加えて混合し、さらに攪拌しながら85℃まで加熱して溶解させた。次に、乳酸カルシウム2%水溶液100gを添加して均一に攪拌混合した後、角型容器に流し込んでから冷却させ、ゲル化させた。次いで、ゲル化したものをところてん突きで突きだし、切り口の厚みが3mm、幅が5mm、長さ150mmの細線状ゲルを得た。得られた細線状ゲルの破断力は50g であり、その糖度は15ブリックスであった。グラニュー糖125g、クエン酸3.5g、クエン酸ナトリウム0.7g、乳酸カルシウム2%水溶液100g、チェリーシロップ150g、チェリー香料3.0gおよび着色料1.5gに、水616.3gを加えて均一に攪拌混合して、シロップを得た。得られたシロップの粘度は、5cpであり、糖度は、15ブリックスであった。得られた細線状ゲルおよびシロップを、それぞれ90gずつと、別に用意したチェリー20gとを、カップ状容器に充填密封し、85℃で30分間の湯殺菌を行った。最終的なシロップの粘度は50cpとなった。なお、シロップの粘度は東京機械株式会社製B型粘度計・ロータNo.1(30rpm )を用いて測定した。また、細線状ゲルの破断力は、不動工業株式会社製レオメーターと歯形押棒Aタイププランジャーを使用し、上から押して切断するまでの抵抗の最大値として求めた。
【0013】〔比較例1〕細線状ゲルの切り口の厚みを1.5mmとした他は、実施例1と同じ方法でデザート食品を得た。
〔比較例2〕グラニュー糖125g、クエン酸3.5g、キサンタンガム2g、クエン酸ナトリウム0.7g、乳酸カルシウム2%水溶液100g、チェリーシロップ150g、チェリー香料3.0gおよび着色料1.5gに、水614.3gを加えて均一に攪拌混合して、シロップを得た。得られたシロップの粘度は、120 cp であり、糖度は、15ブリックスであった。細線状ゲルは、実施例1と同じ方法で調製した。得られた細線状ゲルおよびシロップを、それぞれ90gずつと、別に用意したチェリー20gとを、カップ状容器に充填した。得られた表1のデザート食品を、評価し、その結果を表2に示した。
【0014】
【表1】
表 1 ─────────────────────────────────── 細線状ゲル 糖 度 細線状ゲルと シロップ (ブリックス) シロップとの 粘度(cp)
厚み 幅 長さ 割合(重量比) 実施例1 3 5 150 15 1:1 50比較例1 1.5 5 150 15 1:1 50比較例2 3 5 150 15 1:1 120 ────────────────────────────────────
【0015】
【表2】
表 2──────────────────────────────────── 評 価 ─────────────────────────────────── 実施例1 細線状ゲルとシロップが良くマッチしている。
比較例1 細線状ゲルが薄くて切れ易い。
比較例2 シロップにねばりが感じられ、なめらかな流動感がない。
───────────────────────────────────
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、細線状ゲル、果肉及びシロップを混合してカップ状容器に充填した例を図示したものである。
【図2】図2は、シロップをカップ状容器に添着した例を図示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 細線状ゲルとシロップとを含むデザート食品であって、細線状ゲルの切り口の厚みが2〜4mm、幅が3〜7mmであり、25℃におけるシロップの粘度が100cp以下であって、前記細線状ゲルとシロップの重量比が1:0.7〜1:1.9であることを特徴とするデザート食品。
【請求項2】 細線状ゲルの破断力が15〜70gである請求項1記載のデザート食品。
【請求項3】 細線状ゲルの糖度が10〜20ブリックスであり、シロップの糖度が10〜20ブリックスであり、シロップのpHが3〜5である請求項1記載のデザート食品。

【図1】
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【図2】
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【特許番号】第2785088号
【登録日】平成10年(1998)5月29日
【発行日】平成10年(1998)8月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−228373
【出願日】平成4年(1992)8月27日
【公開番号】特開平6−70703
【公開日】平成6年(1994)3月15日
【審査請求日】平成8年(1996)7月10日
【出願人】(000111487)ハウス食品株式会社 (262)
【参考文献】
【文献】特開 平3−277259(JP,A)
【文献】特開 平2−312558(JP,A)