説明

デジタルカメラの絞り及びシャッタ速度の測定装置

【課題】 デジタルカメラ用の絞りとシャッタ速度の検査のための測定装置を、装置全体の構成を従来装置よりも簡潔にして使い勝手を良好にする一方、簡潔な構成であっても高い測定精度が得られるデジタルカメラ専用ともいえる絞りとシャッタ速度の検査用の測定装置を提供すること。
【解決手段】 デジタルカメラ本体CBの外部の被写体側からカメラ本体に向けて小点光状の光を放射する光放射手段10,11と、該手段によって放射される小点光状の光を前記カメラ本体CBが有するレンズLと絞り12,シャッタ13を通してCCDなどの撮像素子14の受光面14aに投射するコリメータレンズ20と、前記受光面14aが反射した反射光Bを前記レンズ20を通して当該カメラ本体CBの外部に導きその反射光Bを受光する受光手段16とを備え、該受光手段16に得られる電気信号を処理して前記デジタルカメラの絞りとシャッタ速度を測定するようにしたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタルカメラ(以下、単に「カメラ」ともいう)の絞り及びシャッタ速度の性能を測定するための測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラにおいてもレンズの絞りとシャッタ速度は撮影結果に大きな影響を与える機能要素である。そのため、デジタルカメラの製品検査においては、絞りとシャッタ速度が予め設定された通りに制御されるか否かをチェックしている。
【0003】
銀塩フィルムを使用するカメラの絞り及びシャッタ速度を検査する従来の方法は、被写体側からカメラに光を入射させ、フィルム面に受光素子を置いて、絞りおよびシャッタを通過した光を受光素子で検知することにより絞り及びシャッタを通過した光量を検知する方法であった。
【0004】
ここで、写真を撮るとき、絞りとシャッタを通過する光量は、受光面に対する絞りの開口度合いとシャッタの動作時間によって変動するが、シャッタが1回開閉動作したときの全光量は、そのシャッタが開閉している時間について積分したものとなる。そこで上記の測定方法では、フィルム面に置いた受光素子に絞りとシャッタを通った光を検出させることにより、所定の絞りとシャッタ速度に応じた受光量が前記受光素子に得られるか否かを検知して検査している。
【0005】
なお、上記の絞りとシャッタが規定値通りに制御されているか否かの検査方法は、絞りとシャッタを別体に設けた機種の場合も、絞りとシャッタを合体した形式のレンズシャッタの場合も同様である。因みに、レンズシャッタの場合、絞りによってシャッタ部分の開口面積が変動するからシャッタ速度と絞り値によって入射光量が変動する。
【0006】
しかし乍ら、上記のようにフィルム面に受光素子をセットして絞りとシャッタ速度を検査する場合は、カメラのフィルム面に、フィルムに代えて受光素子をセットしなければならないため、カメラ本体の裏蓋を開けてフィルム面の位置に検査用の受光素子をセットしなければならないという煩しさを指摘されている。
【0007】
このような問題点に関し、カメラ本体の裏蓋を開けてフィルム面位置に受光素子を配置する方法を採らず、カメラの絞り及びシャッタが所定の規格条件にしたがって制御されるか否かを好適に検査、測定することができるカメラの絞り及びシャッタ速度の測定装置が特許文献1として提案されている。
【0008】
特許文献1に開示されたカメラの絞りとシャッタ速度の測定装置は、カメラ本体の外部の被写体側からカメラ本体のレンズ系に向けて、略光軸と一致させて偏光させたスポットビーム光(平行光)を投射する光投射手段と、該光投射手段によって投射されたスポットビーム光がカメラ本体のフィルム面で拡散反射した反射光を前記レンズ系を介し平行光にしてカメラ本体の外部に導くとともに、該平行な反射光のうち前記光投射手段によって投射された偏光方向と同方向の偏光成分を除去した平行反射光を集光レンズを介してスポット状に受光する受光手段とを具備して構成されている。
【0009】
上記の測定装置では、スポットビーム光として直線偏光を使用し、前記受光手段では前記直線偏光と偏光方向を90・偏位させた配置で偏光フィルタを設置している。これは反射光中のスポットビーム光に起因するゴースト光を除去するためである。また、光源のスポットビーム光としては、絞りおよびシャッタの開口径よりも細径のビーム光束を使用している。
【0010】
しかし乍ら、上記測定装置では、光源に細径のスポットビーム光を用いるため、光源光をビーム光に形成するためのレンズ系を不可欠とするため光源装置が複雑になるほか、カメラ側の受光面がフィルム面であるため、光源のビーム光は受光面で乱反射してしまうから、この反射光を平行光に直すレンズ系が不可欠であるほか、光-電気変換検出部(受光素子)に対して前記平行光を受光素子の受光面に集束させるためのレンズ系も必要として、この測定装置の光学系の配置や構成が複雑にならざるを得ないという問題がある。
【0011】
上記の問題点の原因は、第一に測定対象がいわゆる銀塩フィルムを使用するカメラであるため、そのフィルム面を受光面とする測定では、当該受光面が光を乱反射するフィルムであることにより、光源にスポットビーム光を用いる必要があることによる。第二に、フィルム面での反射光は入射光がビーム光であっても乱反射するため、これを平行光にするレンズ系が不可欠であることによる。さらには、レンズ系で平行光にされた反射光はそのままの平行光では受光素子に入射しても集中した効率的な光電効果を受光素子に生起させることができないため受光素子面に集光するためのレンズ系を不可欠とすることにもよる。
【0012】
本発明の発明者は、デジタルカメラの絞りとシャッタ速度の測定を、上記の銀塩フィルム用カメラの測定装置で実施することを検討したが、デジタルカメラはフィルムが使用されず、当該フィルムに相当する部位にCCDなどの撮像素子が用いられていること、また、当該撮像素子の受光面は、ほぼ鏡面であることに鑑みると、上述した従来の測定装置では使用し難いことが判明した。
【特許文献1】特開平9−90532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで本発明では、デジタルカメラ用の絞りとシャッタ速度の検査のための測定装置を、装置全体の構成を従来装置よりも簡潔にして使い勝手を良好にする一方、簡潔な構成であっても高い測定精度が得られるデジタルカメラ専用ともいえる絞りとシャッタ速度の検査用の測定装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明測定装置の構成は、デジタルカメラ本体の外部の被写体側からカメラ本体に向けて小点光状の光を放射する光放射手段と、該手段によって放射される小点光状の光を前記カメラ本体が有するレンズと絞り,シャッタを通してCCDなどの撮像素子の受光面に投射するコリメータレンズと、前記受光面が反射した反射光を前記レンズを通して当該カメラ本体の外部に導きその反射光を受光する受光手段とを備え、該受光手段に得られる電気信号を処理して前記デジタルカメラの絞りとシャッタ速度を測定するようにしたことを特徴とするものである。
本発明において小点光状の光は、LEDを用いると消費電力や寿命の点で有利になるが、ハロゲンランプ等の光をピンホールを通して形成することもできる。また、受光手段の手前には絞りを設置し、撮像素子からの反射光を受光手段へ導く際のゴースト光を除去するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明はフィルム面にCCDなどの撮像素子を有するデジタルカメラの絞りとシャッタ速度を検査するための測定装置を、デジタルカメラ本体の外部の被写体側からカメラ本体に向けて小点光状の光を放射する光放射手段と、該手段によって放射される小点光状の光を、前記カメラ本体が有するレンズと絞り,シャッタを通してCCDなどの撮像素子の受光面に集光投射するコリメータレンズと、前記受光面が反射した反射光を前記レンズを通して当該カメラ本体の外部に導きその反射光を受光する受光手段とを備え、該受光手段に得られる電気信号を処理して前記デジタルカメラの絞りとシャッタ速度を測定する構成としたので、装置全体の構成を簡潔にできるほか、簡潔な構造であっても高い測定精度を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明に係る絞り及びシャッタ速度の測定装置の実施形態の一例を示す説明図である。
【0017】
図1に示した本発明によるデジタルカメラの絞り及びシャッタ速度の測定装置の例では、光源の小点光状の光Aをコリメータレンズ20を通して平行光に変えカメラ本体CBに向けて投射し、当該カメラ本体CBの対物レンズLを通して絞り12,シャッタ13を通過させてからこのカメラの撮像素子14の受光面14aに導き、この受光面14aで反射された光を前記カメラのレンズLやコリメータレンズ20を介してカメラ本体CBの外部に導き、導かれた反射光Bを受光手段16によって光-電気的に検出することにより、前記絞り12とシャッタ13の性能を測定することができる。
【0018】
測定においては、カメラ本体CBの被写体側から当該カメラ本体CBの対物レンズLの手前に位置したコリメータレンズ20に、光源の一例として用いたLED10の発光光をピンホール11を通過させた小点光状の光A(入射光Aともいう)として投射する。この投射は、光源の光Aを図1に示すように、コリメータレンズ20の光軸に略一致させ後述するハーフミラー15を透して当該コリメータレンズ20に入射することによりなされる。コリメータレンズ20を通過した平行光は、当該カメラのレンズL、絞り12、シャッタ13を通過し、このカメラの撮像素子14の受光面14aに焦点を結んで入射する。これにより受光面14aに入射光Aを反射させると、この反射光Bによって絞り12とシャッタ13の開閉作用を確実に検知できる。
【0019】
ここで、小点光状の光は、ピンホール11を通った光束の径が例えば0.50〜1.00mm程度であるが、光源パワーやコリメータレンズ20の焦点距離、或は、後述する受光素子16の受光感度によっては、前記光束の径よりも小さい径でもよい場合と大きい径でもよい場合がある。そして、小点光状の光、すなわち光源の位置は、コリメータレンズ20の焦点の位置に設定される。
【0020】
コリメータレンズ20の手前には、図1に示すように、ハーフミラー15を設置し、コリメータレンズ20の後方に、レンズL、絞り12、シャッタ13、撮像素子14の受光面14aを備えたカメラ本体CBが配置される。なお、コリメータレンズ20は、図では簡略表示している。
【0021】
ハーフミラー15は、ピンホール11を通った光源光Aを透過させてコリメータレンズ20に入射させる一方、受光面14aで反射されてから前記レンズ20を透過した反射光Bを後述する受光手段としての受光素子16に導く。受光素子16は、ハーフミラー15を介してコリメータレンズ20の焦点乃至その近傍に位置付けることを原則とする。実際には、受光素子16の受光面に、撮像素子14の受光面14aからの反射像が所要の面積を有して投影され、これによる当該素子16の受光光量が後の回路で処理できる電気量であれば足りるので、受光素子16の設置位置はある選択幅を持っている。
【0022】
すなわち、ハーフミラー15の受光手段側には、このハーフミラー15で光路が変更された反射光Bの光軸上に、受光素子16、増幅器17、A/D変換機18、CPU19が配置されている。この実施例での受光素子16には、一例としてホトダイオードを使用するが、ホトダイオード以外の光-電気変換素子を用いることもある。また、受光素子16の手前には、反射光Bのゴースト光を除くための絞り30を配置することがある。以上により、本発明によるデジタルカメラ用の絞りとシャッタ速度の測定装置の一例を構成する。
【0023】
上記構成の本発明測定装置によれば、絞り及びシャッタ速度が所定の規格条件に従って制御されているか否かを検査することができる。すなわち、カメラ本体CBの外部からコリメータレンズ20に向けてその光軸に一致して小点光状の光Aが入射される。コリメータレンズ20を通って平行光となり、カメラ本体CBのレンズLを通って絞り12を通った前記光Aはシャッタ13が開くことによってそのシャッタ13を通過し、シャッタ背面の撮像素子14の受光面14aに投射される。
【0024】
カメラのレンズLで集束されて撮像素子14の受光面14aに焦点を結ぶように到達した光源の光Aは、当該受光面14aで反射され、シャッタ13を通して絞り12の方向に反射される。反射光Bは、シャッタ13が開いている間にそのシャッタ13および絞り12を通過するが、レンズLに対し受光面14aが焦点位置にあることから、レンズLを通った反射光Bは平行光となる。平行光になった反射光Bがコリメータレンズ20を通過するとシャッタ13と絞り12による光束の形となり、ハーフミラー15により反射されて受光素子16の方向に光路が変更され、受光素子16の受光面に焦点を結んで受光される。このようにして反射光Bを受光した受光素子16の受光信号は増幅器17によって増幅され、A/D変換器18を通ってデジタル受光信号としてCPU19に向けて出力される。
【0025】
撮像素子14の受光面14aはほぼ鏡面と見做せるので、受光面14aでの反射光Bは、コリメータレンズ20を通過してハーフミラー15で光路が変更されて受光素子16の受光面に焦点を結ぶ。従って、受光素子16の受光面で検知される反射光Bの光量は、シャッタ13が開いたときの面積(フォルカプレーンシャッタの場合、レンズシャッタでは開口径〔面積〕)と絞り12のシャッタ幕の開き幅、レンズシャッタでは絞りの開口径を反映したものとなる。
【0026】
すなわち、受光素子16での反射光Bの検知信号は、シャッタ13の開閉動作、つまり、絞りとシャッタ速度に応じた出力データとして得ることができる。そして、この出力データをCPU19で積分処理することにより、設定した絞りにおける1回のシャッタ開閉操作における受光量を測定することができることとなるから、この測定データをあらかじめ規格条件として設定したデータと比較することによりデジタルカメラの絞りとシャッタ速度の良否を判断することができる。
【0027】
上記のように、本発明測定装置ではデジタルカメラにおける絞り12を所定の絞り値に設定したときの、シャッタ速度による受光量を測定できるので、検査対象のデジタルカメラが規定された条件に合致しているか否かを判断できる。
なお、本発明測定装置は、上記のように絞り12とシャッタ13とを別体で有するデジタルカメラの他に、レンズシャッタのように、絞り兼用のシャッタを備えたデジタルカメラにも同様に適用できる。この場合も、撮像素子14の受光面14aで反射される光がシャッタの開閉にともない受光素子16での受光量として検知され、1回のシャッタの開閉動作による絞りとシャッタ速度を正確に測定検知することができる。
【0028】
上記例において、光源光Aがカメラ本体CBのレンズL、絞り12およびシャッタ13を通過して撮像素子14の受光面14aに焦点を結ぶ(結像する)ようにするには、実施例のLED10とピンホール11による光源の位置をコリメータレンズ20の焦点に位置付ければよい。
【0029】
図1に示す実施形態では、図示しないが、受光素子16の手前に絞り12の画像を認識する位置検出センサを設け、この位置検出センサの出力によって受光面14aにおける入射光の受光位置にずれがあるか否かを検出することができる。この位置検出センサの光学的配置は、図示しないが受光素子16の手前にハーフミラーを設け、絞り12の画像を焦点位置で認識できるようにすればよい。位置検出センサによって絞り12の画像が受光面14aの正規位置からずれていることが検出された場合は、光源光Aを投射する光源(実施例ではLED10とピンホール11の位置)を調節し、光源光Aの投射位置が正規位置にくるように補正する。この場合、光源を調節するかわりに被検査体のカメラ本体CBの位置を調節して補正してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は以上の通りであって、デジタルカメラ専用の絞りとシャッタ速度の測定装置を、デジタルカメラ本体の外部の被写体側からカメラ本体に向けて小点光状の光を放射する光放射手段と、該手段によって放射される小点光状の光を前記カメラ本体が有するレンズと絞り,シャッタを通してCCDなどの撮像素子の受光面に投射するコリメータレンズと、前記受光面が反射した反射光を前記レンズを通して当該カメラ本体の外部に導きその反射光を受光する受光手段とを備え、該受光手段に得られる電気信号を処理して前記デジタルカメラの絞りとシャッタ速度を測定する構成としたので、至って簡単な構成で、それ故に低コストでデジタルカメラ専用の絞りとシャッタ速度の測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明によるデジタルカメラの絞りとシャッタ速度の測定装置の一例の構成を示す説明図。
【符号の説明】
【0032】
10 LED
11 ピンホール
CB カメラ本体
L カメラ本体のレンズ
12 絞り
13 シャッタ
14 撮像素子
14a 撮像素子の受光面
15 ハーフミラー
16 受光素子
17 増幅器
18 A/D変換器
19 CPU
20 コリメータレンズ
A 光源光(入射光)
B 反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルカメラ本体の外部の被写体側からカメラ本体に向けて小点光状の光を放射する光放射手段と、該手段によって放射される小点光状の光を前記カメラ本体が有するレンズと絞り,シャッタを通してCCDなどの撮像素子の受光面に投射するコリメータレンズと、前記受光面が反射した反射光を前記レンズを通して当該カメラ本体の外部に導きその反射光を受光する受光手段とを備え、該受光手段に得られる電気信号を処理して前記デジタルカメラの絞りとシャッタ速度を測定するようにしたことを特徴とするデジタルカメラの絞りとシャッタ速度を測定装置。
【請求項2】
小点光状の光は、LEDを用いた請求項1の測定装置。
【請求項3】
小点光状の光は、ハロゲンランプ等の光をピンホールを通して形成する請求項1の測定装置。
【請求項4】
受光手段の手前に絞りを設置し撮像素子からの反射光を受光手段へ入射させるようにした請求項1〜3のいずれかの測定装置。
【請求項5】
撮像素子の受光面で反射された反射光の光路を受光手段側に変更するためのハーフミラーを配置した請求項1〜4のいずれかの測定装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−282195(P2009−282195A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132889(P2008−132889)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(596147851)京立電機株式会社 (5)