説明

デジタルカメラを用いた三次元計測方法に用いるカメラのカメラパラメータの算定用データのための指標点配置方法、三次元座標値測定方法、カメラパラメータの算定方法、並びに、デジタルカメラを用いた三次元計測方法及び該三次元計測方法における基準軸鉛直設定装置

【課題】デジタルカメラを用いた三次元計測方法を実現し提供する。
【解決手段】カメラパラメータが設定されたデジタルカメラCを用いて第1の撮影地点と、第2の撮影地点とで撮影対象を共通に含む複数の写真を撮影し、5個以上の固定点における写真上の位置とその間に実測距離から1組の写真上の座標を共通の座標系に座標変換を行うためのパラメータを算出し、これによって双方の写真内にある対象点の、第1の撮影地点を原点とする三次元座標系における位置を計測し、三次元座標系を客観的な座標系に変換して対象点の客観的な座標系における位置を計測するデジタルカメラを用いた三次元計測方法であって、鉛直性が確保される鉛直尺22と、この鉛直尺22とは別の位置に任意に配置した計測指標点Pxとを撮影対象に含め、写真に撮影される前記鉛直尺22、計測指標点Pxを基に客観的な座標系を定める過程を含む構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作の迅速性、簡便性と装置価格の低廉性を実現したうえで撮影対象についての所定の計測精度を確保し得るようなデジタルカメラを用いた三次元計測方法に用いるカメラのカメラパラメータの算定用データのための指標点配置方法、三次元座標値測定方法、カメラパラメータの算定方法、並びに、デジタルカメラを用いた三次元計測方法及び該三次元計測方法における基準軸鉛直設定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、交通事故現場における警察の実況見分作業においては、当該現場のステレオカメラ等による写真撮影、位置関係の計測、距離測定等を速やかに行い、実況見分調書に必要な現場見取り図を作成し、かつ、写真を利用して特定個所の位置関係等々を所定の精度で計測して見取り図に表示することが要請される。
【0003】
すなわち、このような交通事故現場においては、警察官等が行う実況見分の作業時間を短縮して、長時間にわたる通行止めを避け、また、実況見分に携わる担当者が走行車両に衝突されて死亡・受傷する等二次的な災害を回避する対策が必要となる。
【0004】
従来におけるステレオカメラによる三次元計測技術としては、例えば公知の測量用のステレオカメラにより現場の必要箇所を撮影し、撮影した写真を利用して三次元計測を行なう方法は、すでに昭和40年代半ばから行われているが、これには次の問題点がある。
【0005】
すなわち、ステレオカメラが専用機であり価格も高価であること、2台のカメラが正確に1200mmの間隔で取り付けられ、撮影時にはこれを完全に水平に保つ必要があること、ステレオカメラの重量は17.5kg程度もあり、専用の三脚に取り付け、専用の事故処理車に搭載するなどその操作性は簡略とはいい難く、更に図化のための装置が180cm(W)×150cm(D)×120cm(H)程度以上の大型で、その操作には熟練を要すること等である。
【0006】
また、三次元計測技術としては、市販のデジタルカメラを用いる三次元測量方法も知られている。
【0007】
例えば、三次元座標が既知である基準点を採用するデジタルカメラ三次元計測システムがある。
【0008】
しかし、上記の方法では、三次元座標値が既知である基準点が必要であり、交通事故現場等、処理の迅速性・簡便性が求められる場合には適用できない。
【0009】
また、ズーム機能や自動ピント合わせ機能を持つ通常市販のデジタルカメラでは、計算上計測は可能でも撮影ごとにカメラ定数が変化するため、計測目的にはなじまない。
【0010】
特許文献1には、基準棒を用いて1台のデジタルカメラまたは左右2台のデジタルカメラでステレオ画像を撮影し、パソコンにより両方の画像に基づくステレオモデル座標系を構築し、次に、現場では基準棒を用いて測定対象物を撮影し、このステレオ画像をパソコンが画面に表示し、画面で指定された求点の座標をモデル座標系に定義した後に、左カメラのカメラ座標系に変換して、2点の求点の離隔距離を求めるように構成した写真測量システムが提案されている。
【0011】
しかし、この特許文献1の場合は、デジタルカメラのカメラ定数による座標値修正を行っていないうえ、相互標定がそもそも不可能な写真対を用いているにもかかわらず、見かけ上の相互標定を行なっている点、計測上の問題を包含している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−97946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする問題点は、操作の迅速性、簡便性と装置価格の低廉性を実現した上で撮影対象についての所定の計測精度を確保し得るようなデジタルカメラを用いた三次元計測方法が従来存在しない点である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るデジタルカメラを用いた三次元計測方法は、パンフォーカス機能を具備し、カメラパラメータが設定されたデジタルカメラを用いて交通事故現場のような撮影対象領域における第1の撮影地点と、その光軸にほぼ直角方向に任意に隔たった第2の撮影地点とで事故車両等の撮影対象を共通に含む複数の写真を撮影し、5個以上の固定点の各写真上の位置から1組の写真上の座標を共通の座標系に座標変換を行うためのパラメータを算出し、これによって双方の写真内にある対象点の、第1の撮影地点を原点とする三次元座標系における位置を計測し、前記三次元座標系を客観的な座標系に変換して前記撮影対象領域の客観的な座標系における事故車両等の位置を計測するデジタルカメラを用いた三次元計測方法であって、前記撮影対象の撮影時に、ポール状で測定原点及びこの測定原点から既知の長さ離れた基準長指示マークが付され、鉛直性が確保される鉛直尺と、この鉛直尺とは別の位置に任意に配置した計測指標点とを撮影対象領域に含める過程と、写真に撮影される原点とする測定原点、この測定原点に対して鉛直線上にある基準長指示マークにより一軸を特定し、この一軸を含みデジタルカメラから見て奥行きの光軸方向の他の一軸を含む平面上にある計測指標点を特定して客観的な座標系を定める過程と、を含むことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、指標点の奥行き方向はランダムであり、正対方向からは正方格子状に見えるように配置する構成で、的確にカメラパラメータを算定し得る指標点配置を実現できるデジタルカメラを用いた三次元計測方法に用いるカメラのカメラパラメータの算定用データのための指標点配置方法を実現し提供することができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、指標点の奥行き方向はランダムであり、正対方向からは正方格子状に見えるように配置する指標点が、設計値どおりに配置することが困難である場合に、角度測定器一台を用いて、任意の2箇所から各指標点の極座標値の角度成分のみを測定して各指標点の三次元座標値を求めることにより、角度測定器一台のみによってデジタルカメラCの外部定数(指標点座標によるカメラ位置と回転角)とデジタルカメラCの内部定数(いわゆるカメラパラメータ)の双方を算定するためのデータを得ることができるデジタルカメラを用いた三次元計測方法に用いるカメラのカメラパラメータの算定用データのための三次元座標値測定方法を実現し提供することができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、デジタルカメラのレンズの歪係数を撮影画面上の位置における値ではなく、レンズの後ろ側主点から撮影画面方向に関する関数として捉えることにより、前記デジタルカメラの画面距離、レンズの歪係数、光学上の画面中心位置を同時に効率よく算定することができるデジタルカメラを用いた三次元計測方法に用いるカメラのカメラパラメータの算定方法を実現し提供することができる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、指標点の奥行き方向はランダムであり、正対方向からは正方格子状に見えるように配置した指標点を、前記デジタルカメラを横向き(正)、逆さ向き(天地逆転)、及び横向き(時計回り及び反時計回り)に構えて複数枚のデジタル写真を撮影し、各デジタル写真の画面上にある指標点の像位置の写真座標値を読み取り、読み取った写真座標値データと、角度測定器一台を用いて、任意の2箇所から各指標点の極座標値の角度成分のみを用いて求めた各指標点の三次元座標値のデータを関連付けてデジタルカメラの6つのパラメータを算定することにより、これら6つのパラメータの最適化を実現できるデジタルカメラを用いた三次元計測方法に用いるカメラのカメラパラメータの算定方法を実現し提供することができる。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、パンフォーカス機能を具備し、カメラパラメータが設定されたデジタルカメラを用いて第1の撮影地点と、その光軸からほぼ直角の方向に任意に隔たった第2の撮影地点とでカメラに近接した位置に配置した5個以上の固定点を撮影することにより写真上の座標を共通の座標系に座標変換を行うためのパラメータを算出し、これによって双方の写真内にある対象点の、第1の撮影地点を原点とする座標系における位置を計測し、また、その計測結果を、鉛直性が確保される鉛直尺と、この鉛直尺とは別の位置に任意に配置した計測指標点とを撮影対象に含め、写真に撮影される前記鉛直尺、計測指標点を基に客観的に定めた座標系に変換することによって、操作の迅速性、簡便性と装置価格の低廉性を実現したうえで撮影対象である交通事故現場等の位置を正確に計測・表現することができるデジタルカメラを用いた三次元計測方法を実現し提供することができる。
【0020】
請求項6、7記載の発明によれば、下部に測定原点を付し、その上方に既知の長さ分離隔した位置に基準長指示マークを付した基準軸としての鉛直尺を嵌装支持するとともに、三脚に取り付けることで三脚の傾きの如何を問わず上記三次元計測方法における客観的な座標を定めるための鉛直軸を正確に鉛直に定め、撮影時間全体にわたって固定ができるデジタルカメラを用いた三次元計測方法における基準軸鉛直設定装置を実現し提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明の実施例1に係るデジタルカメラを用いた三次元計測方法に用いるカメラのカメラパラメータの算定用データのための指標点配置状態を示す説明図である。
【図2】図2は本実施例1に係る多数の指標点の位置を示す説明図である。
【図3】図3は本実施例1に係る多数の指標点を斜め側方から見た状態を示す説明図である。
【図4】図4は本実施例1においてデジタルカメラにより指標点を撮影した画像(横型)を示す図である。
【図5】図5は本実施例1においてデジタルカメラにより指標点を撮影した画像(縦型)を示す図である。
【図6】図6は本実施例1に係るカメラのカメラパラメータの算定方法を実施するためのコンピュータシステム構成を示すブロック図である。
【図7】図7は本実施例1においてセオドライトにより指標点の極座標を測定する状態を示す説明図である。
【図8】図8は本実施例1においてセオドライトを仮想カメラと見做した時の仮想写真像位置を示す説明図である。
【図9】図9は本実施例1に係るカメラパラメータの算定用データ設定方法における指標点の読み取り過程を示すフローチャートである。
【図10】図10は図9の(A)の処理過程を示すフローチャートである。
【図11】図11は本発明の実施例1に係るカメラパラメータの算定方法におけるデジタルカメラのレンズ歪みを表す曲線を示す図である。
【図12】図12は本実施例1に係るレンズの後ろ側主点以降の光線の進路を示す説明図である。
【図13】図13は本実施例1に係るカメラパラメータの算定方法の算定過程を示すフローチャートである。
【図14】図14は本実施例1に係るカメラパラメータの最適化までの変化を示す図である。
【図15−A】図15−Aは本実施例1に係る立体指標の場合のカメラパラメータの収束状況を示す説明図である。
【図15−B】図15−Bは、は本実施例1に係る立体指標の場合のカメラパラメータの収束状況を示す説明図であり7枚の写真を使った場合の指標点の歪み量とパラメータ値及び各写真の推計位置を示す説明図である。
【図16】図16は本発明の実施例2に係るデジタルカメラを用いた三次元計測方法を実現するための基準軸鉛直設定装置の概略斜視図である。
【図17】図17は本実施例2に係る基準軸鉛直設定装置における鉛直支持機構部の拡大斜視図である。
【図18】図18は本実施例2に係る基準軸鉛直設定装置における電磁石錘体、摺動円筒の分解斜視図である。
【図19】図19は本実施例2に係る基準軸鉛直設定装置における電磁石駆動用の電気回路(オフ状態)を示す回路図である。
【図20】図20は本実施例2に係る基準軸鉛直設定装置における電磁石駆動用の電気回路(オン状態)を示す回路図である。
【図21】図21は本発明の実施例2に係るデジタルカメラを用いた三次元計測方法における撮影対象の撮影状態を示す概略図である。
【図22】図22は本実施例2に係るデジタルカメラを用いた三次元計測方法における鉛直尺、計測指標点を含ませた撮影対象である道路の一部の撮影状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、操作の迅速性、簡便性と装置価格の低廉性を実現したうえで撮影対象についての所定の計測精度を確保し得るデジタルカメラを用いた三次元計測方法を実現し提供するという目的を、パンフォーカス機能を具備し、カメラパラメータが設定されたデジタルカメラを用いて第1の撮影地点と、その光軸にほぼ直角方向に任意に隔たった第2の撮影地点とで撮影対象を共通に含む複数の写真を撮影し、5個以上の固定点の各写真上の位置から1組の写真上の座標を共通の座標系に座標変換を行うためのパラメータを算出し、これによって、双方の写真内にある対象点の、第1の撮影地点を原点とする三次元座標系における位置を計測し、前記三次元座標系を客観的な座標系に変換して前記対象点の客観的な座標系における位置を計測するデジタルカメラを用いた三次元計測方法であって、前記撮影対象の撮影時に、ポール状で測定原点及びこの測定原点から既知の長さ離れた基準長指示マークが付され、鉛直性が確保される鉛直尺と、この鉛直尺とは別の位置に任意に配置した計測指標点とを撮影対象に含める過程と、写真に撮影される原点とする測定原点、この測定原点に対して鉛直線上にある基準長指示マークにより一軸を特定し、この一軸を含みデジタルカメラの光軸方向の他の一軸を含む平面上にある計測指標点を特定して客観的な座標系を定める過程と、を含む構成により実現した。
【実施例】
【0023】
以下に、本発明の実施例に係るデジタルカメラを用いた三次元計測方法に用いるカメラのカメラパラメータの算定用データのための指標点配置方法、三次元座標値測定方法、カメラパラメータの算定方法、並びに、デジタルカメラを用いた三次元計測方法及び該三次元計測方法における基準軸鉛直設定装置について詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1乃至図15−B参照して本発明の実施例1に係るデジタルカメラCを用いた三次元計測方法に用いるカメラのカメラパラメータの算定用データのための指標点配置方法、三次元座標値測定方法、カメラパラメータの算定方法について説明する。
【0025】
本実施例1において、後述する実施例2に係る三次元計測方法を実行する場合には、市販のデジタルカメラCで、固定焦点、すなわち、パンフォーカス機能のあるものを用いる。
【0026】
パンフォーカスモードのあるデジタルカメラCを対象物の計測目的に用いるためには当該カメラCのパンフォーカスモードにおける3種類のパラメータ、すなわち、画面距離、レンズの歪み、及び画面上の光軸位置が計測されている必要がある。
【0027】
以下に、その前提としてのカメラパラメータの算定用データのための指標点配置方法、三次元座標値測定方法につき図1乃至図10を参照して説明する。
【0028】
図6は、本発明に係る実施例1のカメラパラメータの算定用データ設定のための三次元座標値測定方法、カメラパラメータの算定方法を実現するためのコンピュータ装置1を示すものであり、このコンピュータ装置1は、デジタルカメラC及び後述するセオドライト(角度測定を行う測量器)2から写真画像データ、指標点Pの極座標の角度成分データを取り込み、これらを基にデジタルカメラCのカメラパラメータにおける算定用データの設定及びカメラパラメータの算定を行うように構成している。
【0029】
前記コンピュータ装置1は、全体の制御を行う制御部3と、詳細は後述するデジタルカメラCが撮影した写真の写真データ(写真画像データ)、セオドライト2で計測した指標点Pの座標値データの読み込み処理、指標座標系、写真座標系間の座標変換処理、回転角変換処理、公知のアフィン変換処理、指標点適合処理を行うカメラパラメータの算定用データ設定プログラムと、詳細は後述するカメラパラメータの算定プログラムとを格納したプログラムメモリ4と、写真画像データを記憶する写真画像ファイル5と、前記座標値データを記憶する座標値ファイル6と、前記各プログラムに基づきカメラパラメータの算定用データの設定、カメラパラメータの算定に関する各種の演算を実行する演算部7と、公知の表示部8及び入力部9と、各種処理データを記憶する記憶部10とを有している。
【0030】
次に、カメラパラメータの算定用データのための指標点配置方法、三次元座標値測定方法について具体的に説明する。
【0031】
(指標点Pの撮影)
まず、図1、図2に示すように、3m程度の正方形の平面に多数の指標点Pを奥行き方向はランダムで正対方向から撮影した場合に正方格子状に見えるように撮影されるように列設して指標点パターンPTを作成する。この場合、各指標点Pは平面上の図2に示す位置に図1に示す高さの直径1cm程度の棒状のものを立てて配置したパターンPTとするものである。パターンPTは斜め側方から見ると、図3に示すようになるが、これを正面から撮影して見ると図4(横型)及び図5(縦型)に示すようになる。
【0032】
なお、各指標点Pを設計通りに配置することは実際上難しいが、概ね設計どおりに配置し、これを後述する方法で三次元的に計測する。
【0033】
次に、指標点パターンPTの各指標点Pを、図1に示すように正面から使用するデジタルカメラCを用いて撮影する。
【0034】
本実施例1においては、デジタルカメラCを用いて指標点パターンPTを、図1に示すように、正面から撮影して図4、図5に示すような画像を取得して、これらを図6に示すコンピュータ装置1の写真画像ファイル5に記憶する。なお、デジタルカメラCの撮影態様としては、横向き(正)、逆さ向き(天地逆転)、及び縦向き(時計回り及び反時計回り)に構えて各々デジタル写真を撮影する態様があり、すべての態様で撮影する必要があるが、それぞれの写真は概ね正対させて撮影すればよい。精度を上げるためには、位置をずらせて様々な場所から撮影した写真も加えることが望ましく、全部で7枚の写真があれば良い結果が得られる。
【0035】
(指標点の三次元座標計測)
次に、前記指標点パターンPTにおける各指標点Pの座標値の三次元測量を行う。この三次元測量の方法は、以下の通りである。
【0036】
まず、セオドライト2を用意し、このセオドライト2を前記指標点パターンPTの前方の異なる二箇所に据え、それぞれの箇所から図7に示すように、各指標点Pの極座標値のうち角度成分(θ、κ)のみの測定を行う。このとき、セオドライト2を水平に設置・視準する等の特段の制約は存在しない。
【0037】
次に、図8に示すように、セオドライト座標系のX軸に垂直な仮想平面を想定し、その仮想平面を原点からfの距離に仮想的に設置する。
【0038】
このことは、上述したセオドライト2を仮想的なカメラと見做すことであり、仮想平面はその画像位置に相当する。この仮想平面とX軸から成る座標系をカメラ座標系とする。
【0039】
これにより、指標点Pの仮想写真像の位置が表現できる。すなわち、セオドライト座標系における各指標点Pの角度(θ、κ)から、下記数1でp点(指標点Pに対応する仮想点)の写真座標値p(x,y,z)が定まる。
【0040】
【数1】

【0041】
(三次元座標計測のための座標系の設定)
次に、三次元座標計測のための座標系の設定について説明する。写真測量の理論における「モデル座標系」、すなわち、「左右カメラをステレオカメラと見做した場合のステレオモデル座標系」における指標点の三次元座標値が求められるが、それを計測対象の座標系に変換する。
【0042】
これは直交座標系の変換であり、原点の移動と、移動後における三軸のまわりの回転変換を行う。そのための原点、Z軸が通る点及びYZ平面を定義する。
【0043】
図1に示す前記指標点パターンPTを使用する場合、指標点座標系の原点は、指標点Pの一つ(例えば中央の指標点P)とする。また、Z軸が通る点も定義する(図1における原点とされる指標点Pに対して左右方向の指標点Pの一つ)。更に、YZ平面は、原点を通り、平面上にあるとして定めたすべての指標点PのX座標値の二乗和が最小となるように定める。
【0044】
このようにして、セオドライト2のみを用いて各指標点Pの三次元座標値の計測を行なうことができる。精度向上のためには3個所から測定を行い、3対のデータを平均することが望ましい。下記表1は、シミュレーションによるセオドライトの読みの精度に対する計測精度を計測値の標準偏差を用いて示すものであるが、これによりセオドライトの読み取り精度が40秒の場合、計測結果の標準偏差は、0.2mm以下となる。計測結果は、図6に示すコンピュータ装置1の座標値ファイル6に記憶する。
三次元座標計測された指標点データは、デジタルカメラCの外部定数(指標点座標によるカメラ位置と回転角)とデジタルカメラCの内部定数(いわゆるカメラ定数)の双方を算定するためのデータとして用いられる。
【表1】

【0045】
次に、写真座標の読み取りについて、図9、図10を参照して説明する。写真座標の読み取りは、カメラパラメータの算定用データ設定プログラムの動作で半自動により行う。このときのアルゴリズムは、図9、図10に示す通りである。
【0046】
まず、写真画像ファイル5から各指標点Pを撮影した写真を読み込む。続いて、任意の3個の指標点についての写真座標値を読む。
【0047】
次に、読み取った指標点の座標値の値と既定の写真座標の値から、カメラ座標の原点の指標点座標系による座標値ならびにカメラ座標系の指標点座標系からの各軸の回転角を求める。
【0048】
以上のような処理を原点から始めて渦巻き状に、順に指標点を自動的に選択して繰り返す。渦巻き上に順次読み取る理由は、上記カメラ座標の原点位置及び回転角が順調に修正されるためである。
【0049】
次に、選択された指標点の座標は既に読み込まれたものか否か判断し、読み込まれたものであれば次の点を選択する。また、読み込まれたものでなければ、詳細は後述する指標点座標の読み込みの処理を行なう(A)。
【0050】
次に、対象となる指標点をすべて読み取ったか否か判定し、すべて読み取っていなければ上述した処理を繰り返し、また、対象となる指標点をすべて読み取ると写真座標の読み取り処理は終わりとなる。
上述した指標点座標の読み込みの処理(A)の詳細内容について、図10を参照して以下に説明する。
【0051】
まず、コンピュータ装置1の表示部8に表示される画像上に現れるべき指標点のテンプレートを上述した各指標点を撮影した写真、写真座標値を用いてアフィン変換により作成する。
【0052】
次に、カメラパラメータの算定用データ設定プログラムに基づいて表示部8に表示される画像読み取り用の小画面に読み取り対象点の近辺の画像を拡大して表示する。
【0053】
次に、その小画面内でテンプレートを移動させ、画像と最も適合度が高い所を相関係数最大化法により探索する。
【0054】
次に、指標点のテンプレートの輪郭を画像に重ねて表示し、探索された結果の妥当性を表示部8上で視認する。
【0055】
そして、当該指標点に良く適合していると認めれば、適合点の座標値を採用する。また、当該指標点に適合していない、又は他の指標点に適合していると認めれば、手動で適合操作を行い、適合点の座標値を採用する。
【0056】
このような処理の後、既述したように対象となる指標点をすべて読み取ったか否か判定して、すべて読み取っていなければ上述した処理を繰り返し、また、対象となる指標点をすべて読み取ると写真座標の読み取り処理は終わりとなる。以上の処理による処理結果は、前記記憶部10に記憶保持される。
【0057】
本実施例1のカメラパラメータの算定用データのための三次元座標値測定方法によれば、パンフォーカス機能のあるデジタルカメラCを用い、指標点座標系を構成する特定の指標点Pを原点とする指標点パターンPTにおける格子状に配列された各指標点Pを異なる複数方向から撮影し記憶するとともに、指標点パターンPTにおける各指標点Pの座標値をセオドライト2にて測定して、各座標値を記憶するという斬新、かつ、簡略な過程を採用し、これらを基に三次元座標値を簡略な演算により高い精度で求めることができる。
【0058】
次に、図11乃至図15−B参照して本発明の実施例1に係るカメラパラメータの算定方法について詳述する。
【0059】
本実施例1のデジタルカメラCのカメラパラメータは、画面距離、レンズの歪み、及び画面上の光軸位置であるが、これらは以下のように定義される。
【0060】
a.画面距離
通常、画面距離はmmにより表わされるが、ここでは、写真座標を表現するのと同じ単位を用いる。その単位は、デジタル画像の素子数の100倍を1単位とするもので、セントピクセル(略称CP)とする。この単位は、個々のデジタルカメラCによってピクセルの大きさが異なっている場合でも、当該カメラについては同じ単位となり、不都合はない。1CPは約0.7mmである。
【0061】
b.当該デジタルカメラCのレンズの歪み
レンズ歪みは、図11のような曲線で表される。これは、横軸に画面上の光軸位置からの隔たりを、縦軸に歪みがない場合と比べてどれだけの差があるかを表したもので、単位はいずれもCPである。
【0062】
図11に示す曲線は、下記数2で表わされている。なお、以下の式中、乗算は「*」で、べき乗は「^」で表わすものとする。
【0063】
【数2】

【0064】
この式は、次の仮定に基づくものである。すなわち、レンズの後ろ側主点O以降の光の進路が、図12のようになっているとし、歪みのあるレンズの場合に、光線の進路が歪みのない場合(点線で示す)から、内側にΔθだけ折れ曲がる(実線で示す)と見做して、この量が光軸と光の進路とのなす角(図12中のθ)の関数として下記数3で表わされると仮定する。
【0065】
【数3】

【0066】
ここで、r=f*tであるから、Δrは下記数4の式のように導出される。
【0067】
【数4】

【0068】
c.光軸位置(座標値(y0, z0))
レンズの光軸を通る光線が画面と交わる点を光軸位置とする。この位置が画面の中心からどの程度ずれているかを表す座標値(y0, z0)が光軸位置のカメラパラメータで、この単位はCPである。
【0069】
d.カメラパラメータの算定方法
上記a、b、cの3種類(6個)のパラメータを、既述した指標点Pの三次元座標計測の処理で求めた各指標点の三次元座標値と、既述したようにして読み取った写真座標値を用いて図12に示すカメラパラメータの算定プログラムのアルゴリズムで算定する。
【0070】
まず、各指標点の座標値を前記記憶部10から読み込む。
【0071】
次に、既述したようにして撮影した写真について、各指標点の写真座標値を前記記憶部10から読み込む。
【0072】
次に、画面距離を公称値とし、レンズ歪み係数と光軸位置(座標値(y0, z0))をゼロと仮定する(カメラパラメータの初期値)。
【0073】
次に、下記(E)の初期値として、ΔSを大きな値(例えば10^8)とする。
【0074】
次に、仮定ないし計算されたカメラパラメータの場合のカメラ座標の原点位置及び指標点座標系からの回転角を計算する(B)。
【0075】
次に、Bで仮定したカメラ位置で指標点を撮影した場合の各指標点の方向と、写真像をカメラパラメータで較正した場合の写真像(正規化写真像とする。)の方向ができる限り一致するようなカメラパラメータを算定する(C)。
【0076】
次に、Bで仮定したカメラ位置で指標点を撮影した場合の各指標点の写真像の位置を計算する(D)。
【0077】
次に、上記Dで計算した写真像位置と実際の写真像位置との隔たりΔSの平均値を計算する(E)。
【0078】
次に、前記隔たりΔSが一つ前のループで計算した値よりも大きいか否か判定し、大きくない場合はBの処理に戻って繰り返し計算を行い、ΔSの値に変化がなくなると終わりとなる。
【0079】
上述したB(カメラ座標の原点位置、回転角の計算)の計算方法について以下に具体的に説明する。
【0080】
指標点座標系によるカメラ位置をC(ベクトル)とすると、各指標点位置のカメラ座標値Xは、下記数5で表すことができる。
【0081】
【数5】

【0082】
正規化写真像のカメラ座標値は(f,yn, zn )である。ここで、fはカメラパラメータの一つである画面距離であり、yn, znは下記数6の式で写真座標値を正規化したものである。
【0083】
【数6】

【0084】
ここで、y、zは写真座標で、その座標系は画面中心を原点とし、単位はCPとしたものである。
、zは、カメラパラメータである光軸位置の座標値(座標系は写真座標系、単位はCP)、Cは既述した数2の値であり、カメラパラメータのc、c、cを含む。Cに含まれるtは、t=r/fであるが、rは下記数7で表わすことができ、光軸位置のパラメータy、zを含む。
【0085】
【数7】

【0086】
の成分を(X、Y、Z)とすると、各指標点の方向は、カメラ座標において下記数8で表される。
【0087】
【数8】

【0088】
すべての指標点においてこの条件を満たすことはできないので、これを近似的に満たすために次の数9の式を最小化する。
【0089】
【数9】

【0090】
数9の(a)式の最小化のためにHを各パラメータで偏微分し、それをゼロとする下記数10の6元の連立方程式を立てる。
【0091】
【数10】

【0092】
数10の6元連立方程式は、公知のニュートン法(方程式を数値計算によって解くための反復法による求根アルゴリズムの一つ)により解く。このための初期値は、写真座標の半自動読み取りにおいて算定されているのでそれを用いる。
【0093】
次に、上述したC(カメラパラメータの算定)の計算方法について説明する。Bの計算における数9の式(a)の最小化は、Cの計算においても共通である。
【0094】
数9の式(a)の最小化のためにHを各パラメータで偏微分し、それをゼロとする下記数11の6元の連立方程式を立てることは、Bと同様であるが、パラメータはカメラパラメータである。
【0095】
【数11】

【0096】
ここで、P=fであるから、k=1の場合は他のパラメータの場合と異なり、下記数12のようになる。
【0097】
【数12】

【0098】
また、k≠1の場合は下記数13の通りである。
【0099】
【数13】

【0100】
数11の式(b)の6元連立方程式は、Bの場合と同様ニュートン法により解く。
【0101】
次に、Dで計算した各指標点の写真像の位置の収束までの挙動について説明する。
【0102】
図14は、図13に示す処理ループ毎にそれぞれのパラメータが最適解に至るかを示す例である。この図で、約3000回目に見られる各グラフの不連続性は、ここまでが正面写真による初期値を求めるループ、これ以降が7枚すべての写真による推計計算であることを示す。これにより、光軸位置の最適化が最も遅く、最後まで変化していることが知られる。
【0103】
図13の処理ループにおけるカメラパラメータの収束状況については、レンズ歪み曲線の変化を処理ループ100回ごとに表すと図15−Aのようになり、各指標の歪み量は図15−Bのようになる。
また、図15−Aは、初期的な状態(点線)から最適解へ至る様子を示す。処理ループは数千回で収束し、最終的なΔSの値は、約0.007CP(0.7ピクセル)である。
【0104】
このように、本実施例1においては、指標点Pの理論上の写真座標がそれらの像位置とできるだけ一致するようにデジタルカメラCの各撮影位置と姿勢を調整し(外部標定)、次いで同じく実際の写真座標値と理論上の写真座標値ができるだけ一致するように6つのカメラパラメータを調節し(内部標定)、外部標定、内部標定を繰り返して、実際の写真座標値と理論上の写真座標値との差が減少から増加に移るまで繰り返し計算を行うものである。これにより、6つのカメラパラメータの最適化を実現できる。7枚の写真を用いる場合、この収束計算には計算速度が2GHzの計算機で約5分を要するが、これは長いほうの例であり、平均的には3分弱であり、平面指標を用いた場合の40〜50分に比べて実用性は高まっている。
【0105】
以上から、デジタルカメラCのカメラパラメータを、複数の指標点Pを撮影することにより求める方法については、以下のようにまとめることができる。
【0106】
すなわち、指標点Pを平面に配置する場合は正面、上方、下方から各1枚、ならびに左右方向からデジタルカメラCを光軸周りに左右各90度回転させて撮影した写真4枚、合計7枚の写真を用いる。
【0107】
また、指標点Pの位置の3次元計測は、角度測定器であるセオドライト2の1台のみで行うことができる。
更に、デジタルカメラCのレンズの歪係数を撮影画面上の位置における値ではなく、レンズの後ろ側主点から撮影画面方向に関する関数として捉えることにより、前記デジタルカメラのC画面距離、レンズの歪係数、光学上の画面中心位置を同時に算定することが可能となる。
【実施例2】
【0108】
次に、本発明の実施例2に係るデジタルカメラCを用いた三次元計測方法及び該三次元計測方法における基準軸鉛直設定装置21について図16乃至図23を参照して詳細に説明する。
【0109】
本実施例2に係るデジタルカメラCを用いた三次元計測方法は、1台のデジタルカメラCを用いて対象領域を異なる2か所から俯瞰的に撮影して対象領域の3次元位置計測を行なう方法である。
【0110】
この実施例2に係るデジタルカメラCを用いた三次元計測方法の説明に先立ち、デジタルカメラCによる計測の基準となる三次元座標系を設定するための基準軸である鉛直尺22を正確に鉛直に設定する基準軸鉛直設定装置21について、図16乃至図20を参照して説明する。
【0111】
本実施例2に係る基準軸鉛直設定装置21は、図16に示すように、直径数cm、長さ3m程度の長尺のポールにより形成されるとともに、下部に測定原点22aを付し、その上方に既知の長さ分離隔した位置に基準長指示マーク23を付した鉛直尺22と、前記鉛直尺22を嵌装支持するとともに、例えば三脚25に取り付けることで前記鉛直尺22を鉛直配置に支持する鉛直支持機構部24と、鉛直支持機構部24の下方から突出させた前記鉛直尺22の下部を貫通させる状態で取り付けた電磁石錘体26と、前記電磁石錘体26の下側に配置した摺動円筒27と、遠隔操作手段を構成する手動操作により操作信号(例えば超音波信号)を出力するリモートコントローラ39とを有している。
【0112】
前記摺動円筒27は、前記鉛直尺22の下部を摺動可能に内装するとともに、その上端部に設けた上端鍔部27aが電磁石錘体26の下面に接合、離脱可能に構成され、更に前記上端鍔部27aにN極、S極の磁極分布を図19のようにした4個の永久磁石28を埋設した構造としている。また、前記摺動円筒27の下端部は、先端が先鋭となるように円錐状に形成している。
【0113】
前記鉛直支持機構部24は、図17に示すように、鉛直尺22を通す中央筒31を中心部に鉛直方向に内装する矩形状の内部枠体32と、この内部枠体32の周りを、空間を隔てつつ囲むように配置する矩形状の外部枠体34と、を具備している。
【0114】
そして、中央筒31の外周部からX方向に各々突出させた一対の軸31aを、内部枠体32の対応する両側辺に設けた一対の軸受33により軸支し、中央筒31をX軸の周りで回動可能としている。
【0115】
また、内部枠体32の対向する両側辺からZ方向に各々突出させた一対の軸32aを、外部枠体34の対応する両側辺に設けた一対の軸受35により軸支し、内部枠体32をZ軸の周りで回動可能としている。
【0116】
このような構成により、前記鉛直支持機構部24を三脚25に取り付けた場合、三脚25の各脚がどの高さで設置されていても前記中央筒31、従って鉛直尺22は、常に鉛直に保たれるようになる。このとき、前記電磁石錘体26、摺動円筒27は、その重さにより鉛直尺22の錘として機能する。
【0117】
次に、前記電磁石錘体26について、図18乃至図20を参照して詳述する。
【0118】
前記電磁石錘体26は、図18に示すように、円筒状に構成され、その内部に上から下に順に電磁石38の駆動用の電源である所定の出力電圧を有する電池36、電磁石38の駆動用の電気回路37及び最下部の電磁石38を搭載している。
【0119】
前記電磁石38は、軟鉄を用いた2個のU字形のコアに4個のコイルを巻装し、これらを直列接続しており、その通電時には摺動円筒27の永久磁石28のN極、S極それぞれに対応する位置がN極、S極になるように配置されており、非通電時には、電磁石38のコアを構成する軟鉄の残留磁気と前記摺動円筒27にある永久磁石28の磁気との磁気作用で摺動円筒27を電磁石錘体26の下面に吸着保持するように構成している。
【0120】
すなわち、電磁石38に通電があると、摺動円筒27上端の永久磁石28と前記電磁石38との間に反発力が生じて、摺動円筒27が図16に示すように下方へ離脱する。
【0121】
前記摺動円筒27の下端は円錐状になっているので、落下した場所に塑性的なもの(砂等)があれば、鉛直支持機構部24の動作と相俟って鉛直尺22は鉛直配置に正確に固定されることになる。
【0122】
一方、前記電磁石38には大電流が流れるため、長時間の通電は電池36の消耗を早める。それを防ぐために、電磁石38への通電時間を、摺動円筒27を離脱するだけの短時間に限ることが必要である。
【0123】
このような要請を実現するための電気回路37について図19、図20を参照して以下に説明する。
【0124】
前記電気回路37は、図19に示すように、電池36に、コンデンサー(電解コンデンサー)43、第2リレー42及び電磁石38を並列接続している。
【0125】
また、前記第1リレー41と前記リモートコントローラ39からの操作信号の受信によりオンする動作スイッチ44との直列回路も電池36に並列接続している(図19に示すA,E点)。
【0126】
前記第1リレー41は、a接点構造の第1接点41aと、b接点構造の第2接点41bとの2連構造で、第1接点41aを前記コンデンサー43の一端と第2リレー42の一端との間に接続し、第2接点41bを前記コンデンサー43と電池36の陽極との間に接続している。
【0127】
また、前記第2リレー42は、a接点構造の単一の接点42aを具備し、この接点42aを前記電池36の陽極と電磁石38の一端との間に接続している。
【0128】
前記電気回路37の動作について説明すると、図19はリモートコントローラ39が操作されず電磁石38は非通電の状態を示すものである。すなわち、前記動作スイッチ44及び前記第1リレー41の第1接点41aはオフの状態、前記第2接点41bはオンの状態となっている。
【0129】
また、前記第2リレー42の接点42aはオフの状態で、電磁石38へ通電されていない。一方、前記第2接点41bがオンであるため、コンデンサー43には電池36からの通電によりその容量分の電荷が蓄電される。
【0130】
次に、図20に示すように、手動操作により前記リモートコントローラ39からの操作信号が動作スイッチ44に入力されると、この動作スイッチ44がオンとなり、第1リレー41が励磁されて第1接点41aがオンとなり、第2リレー42が励磁され、その接点42aがオンとなる。また、第1リレー41の第2接点41bはオフとなる。
【0131】
これにより、電池36から第2リレー42の接点42aを介して電磁石38に通電されるが、他方、第1リレー41の第2接点41bがオフとなるため、電池36からコンデンサー43への通電は断たれる。
【0132】
この結果、電磁石38は通電状態となるものの、その時間はコンデンサー43に蓄電された電荷による電流が第2リレー42へ流れるだけの短時間であり、それが流れ終わると第2リレー42は非励磁状態に戻りその接点42aはオフとなるため、電磁石38への通電は断たれる。
【0133】
このようにして、電磁石38へ短時間だけ通電し、これにより、電磁石38と永久磁石28との間に反発力を作用させることにより、摺動円筒27を下方に離脱させ、同時に前記鉛直支持機構部24の動作を利用して鉛直尺22を地面上に正確な鉛直配置で起立させることができる。
【0134】
前記動作スイッチ44のオンの状態が続いても、第2リレー42に電流が流れ切った後はその接点42aはオフとなっている。
【0135】
前記リモートコントローラ39を操作して前記動作スイッチ44をオフにすると、図19に示す初期の状態に戻り、コンデンサー43への蓄電がなされる。
【0136】
この後、仮に再び前記リモートコントローラ39を操作して前記動作スイッチ44をオンにし、電磁石38を作動させても、摺動円筒27はすでに下方に落下しており、機能上は何も起こらない。
【0137】
次に、本発明の実施例2に係るデジタルカメラCを用いた三次元計測方法について図21、図22を参照して説明する。
【0138】
本実施例2におけるデジタルカメラCを用いた三次元計測方法は、図21に示すように、カメラパラメータが設定されたデジタルカメラCを用いて交通事故現場等の第1の撮影地点と、その光軸に概ね直角方向の第2の撮影地点との2箇所で撮影対象61を撮影する。
【0139】
本実施例2に係る三次元計測方法においては、従来のように三次元位置が既知である基準点等でなく、既述したような測定原点22a及び基準長指示マーク23が付され、前記基準軸鉛直設定装置21により正確に鉛直性が確保される前記鉛直尺22と、奥行き方向の軸方向を定めるための指標点Pxを地面に置くなどして、それを計測対象に含めることで計測時の客観的な座標系を定め、実施例1で述べたようにカメラパラメータが設定された2つのデジタルカメラCを用いて撮影対象61を撮影することで、客観的な座標系を取得するものである。
【0140】
さらに具体的に説明すると、図22に示すように、撮影対象としての道路70の道路軸Lの方向に向けて、高所(地上高3〜4m程度)からのデジタル写真を、前記基準軸鉛直設定装置21の鉛直尺22と奥行き軸を決める前記計測指標点Pxを配置し、2個のデジタルカメラCにより俯瞰的に撮影する。
【0141】
また、前記基準軸鉛直設定装置21の道路軸Lに対して直交する方向の両側には、5点以上の固定点が既存物として存在しない場合に、複数を設定するための多数の固定点指標72を分散配置した2個の三脚71が配置される。
【0142】
このような態様でデジタルカメラCを用いて前記道路70の領域を撮影することで、ステレオのデジタル写真が前記コンピュータ装置1内に取り込まれる。
【0143】
このようにして、デジタル写真に撮影される原点とする測定原点22a、この測定原点22aに対して鉛直線上にある基準長指示マーク23により一軸を特定し、奥行き軸L1を定めるための計測指標点Pxを特定して客観的な座標系を定め、前記道路70の領域を撮影し、撮影現場での三次元計測を行うものである。
【0144】
なお、図22に示す点線は、客観的座標系を設定した様子を示すものであり、奥行き軸L1が計測指標点Pxの鉛直上を通っている様子を示すものである。奥行き軸L1は、前記鉛直尺22が鉛直なら、水平となる。
【0145】
このような正確に鉛直性が確保される前記鉛直尺22、ポール51の頂部に配置した計測指標点Pxを撮影対象61内に含めることで、写真に撮影された原点とするべき点(測定原点22a)、いずれか一軸(例えばY軸)上にあるべき点(基準長指示マーク23)、及びこの一軸に垂直な平面(例えばXY平面)の一軸を決めるための点(計測指標点Px)の3点を特定して、客観的な座標系を求めることができる。
【0146】
このようにして本実施例2に係る三次元計測方法によれば、カメラパラメータが設定されたデジタルカメラCを使用し、かつ、鉛直性が確保される前記鉛直尺22、計測指標点Pxを撮影対象61に含めての撮影により得た写真によって客観的な座標系を取得することで、従来のように三次元位置が既知である基準点を採用することや高価なステレオカメラを使用することを不要としつつ撮影対象61における各要素に関する位置関係の計測、距離測定を撮影した写真を基に的確に把握できる三次元計測方法を実現できる。
【0147】
また、本実施例2に係る三次元計測方法によれば、例えばこれを交通事故現場での衝突車両、自転車、怪我人等に関する実況見分の際の現場撮影に適用した場合、交通事故現場での実況見分作業時間が短縮され、実況見分に携わる警察官の殉職や受傷事故の減少を図ることができ、更に、交通渋滞による国民経済的な損失が多いに緩和される効果を発揮する。
【0148】
また、従来の三次元計測方法で用いられていたステレオカメラや自動追尾の測量機器は、きわめて高価な機器であり、国や地方公共団体の財政に負担が大きかったが、本実施例2によれば市販のデジタルカメラCを活用することができ、撮影機器、付帯設備等に関する価格の大幅な低廉化を図ることができる。
【0149】
更に、本実施例2に係る三次元計測方法によれば、撮影対象61についての必要な現場見取り図を簡便に作成し、かつ、特定個所の位置関係を所定の精度で写真から計測して見取り図に正確に表示することが容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明のデジタルカメラを用いた三次元計測方法は、交通事故現場での実況見分に採用することができる他、自動車関連、建築物関連、土木構築物関連、鉄道関係、送電鉄塔等の電力関連、船舶関連、航空機関連等、極めて広範囲にわたる三次元の撮影対象の計測に好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0151】
1 コンピュータ装置
2 セオドライト
3 制御部
4 プログラムメモリ
5 写真画像ファイル
6 座標値ファイル
7 演算部
8 表示部
9 入力部
10 記憶部
21 基準軸鉛直設定装置
22 鉛直尺
22a 測定原点
23 基準長指示マーク
24 鉛直支持機構部
25 三脚
26 電磁石錘体
27 摺動円筒
27a 上端鍔部
28 永久磁石
31 中央筒
31a 軸
32 内部枠体
32a 軸
33 軸受
34 外部枠体
35 軸受
36 電池
37 電気回路
38 電磁石
39 リモートコントローラ
41 第1リレー
41a 第1接点
41b 第2接点
42 第2リレー
42a 接点
43 コンデンサー
44 動作スイッチ
61 撮影対象
70 道路
71 三脚
72 固定点指標
PT 指標点パターン
C デジタルカメラ
P 指標点
Px 計測指標点
L 道路軸L
L1 奥行き軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルカメラを用いた三次元計測方法に用いるカメラのカメラパラメータの算定用データのための指標点配置方法であって、
指標点の奥行き方向はランダムであり、正対方向からは正方格子状に見えるように配置するようにしたことを特徴とするデジタルカメラを用いた三次元計測方法に用いるカメラのカメラパラメータの算定用データのための指標点配置方法。
【請求項2】
デジタルカメラを用いた三次元計測方法に用いるカメラのカメラパラメータの算定用データのための三次元座標値測定方法であって、
指標点の奥行き方向はランダムであり、正対方向からは正方格子状に見えるように配置する指標点が、設計値どおりに配置することが困難である場合に、角度測定器一台を用いて、任意の2箇所から各指標点の極座標値の角度成分のみを測定して各指標点の三次元座標値を求めるようにしたことを特徴とするデジタルカメラを用いた三次元計測方法に用いるカメラのカメラパラメータの算定用データのための三次元座標値測定方法。
【請求項3】
デジタルカメラを用いた三次元計測方法に用いるカメラのカメラパラメータの算定方法であって、
デジタルカメラのレンズの歪係数を撮影画面上の位置における値ではなく、レンズの後ろ側主点から撮影画面方向に関する関数として捉えることにより、前記デジタルカメラの画面距離、レンズの歪係数、光学上の画面中心位置を同時に算定し得るようにしたことを特徴とするデジタルカメラを用いた三次元計測方法に用いるカメラのカメラパラメータの算定方法。
【請求項4】
デジタルカメラを用いた三次元計測方法に用いるカメラのカメラパラメータの算定方法であって、
指標点の奥行き方向はランダムであり、正対方向からは正方格子状に見えるように配置した指標点を、前記デジタルカメラを横向き、天地逆転した逆さ向き、時計回り及び反時計回の横向きに構えて複数枚のデジタル写真を撮影し、各デジタル写真の画面上にある指標点の像位置の写真座標値を読み取り、読み取った写真座標値データと、角度測定器一台を用いて、任意の2箇所から各指標点の極座標値角度成分のみを測定して求めた各指標点の三次元座標値のデータを関連付けてデジタルカメラの6つのパラメータを算定するようにしたことを特徴とするデジタルカメラを用いた三次元計測方法に用いるカメラのカメラパラメータの算定方法。
【請求項5】
パンフォーカス機能を具備し、カメラパラメータが設定されたデジタルカメラを用いて交通事故現場のような撮影対象領域における第1の撮影地点と、その右方向に任意に隔たった第2の撮影地点とで事故車両等の撮影対象を共通に含む複数の写真を撮影し、5個以上の固定点の各写真上の位置から1組の写真上の座標を共通の座標系に座標変換を行うためのパラメータを算出し、これによって双方の写真内にある対象点の、第1の撮影地点を原点とする三次元座標系における位置を計測し、前記三次元座標系を客観的な座標系に変換して前記撮影対象領域の客観的な座標系における事故車両等の位置を計測するデジタルカメラを用いた三次元計測方法であって、
前記撮影対象の撮影時に、ポール状で測定原点及びこの測定原点から既知の長さ離れた基準長指示マークが付され、鉛直性が確保される鉛直尺と、この鉛直尺とは別の位置に任意に配置した計測指標点とを撮影対象領域に含める過程と、
写真に撮影される原点とする測定原点、この測定原点に対して鉛直線上にある基準長指示マークにより一軸を特定し、この一軸に垂直な平面上の他の一軸を決めるため奥行き方向の平面上にある計測指標点を特定して客観的な座標系を定める過程と、
を含むことを特徴とするデジタルカメラを用いた三次元計測方法。
【請求項6】
長尺のポールにより形成されるとともに、下部に測定原点を付し、その上方に既知の長さ分離隔した位置に基準長指示マークを付した基準軸としての鉛直尺を、鉛直に設定するデジタルカメラを用いた三次元計測方法における基準軸鉛直設定装置であって、
前記鉛直尺を貫通させる中央筒と、中央筒の外側に配置され中央筒の外周部からX方向に各々突出させた一対の軸を、対応する両側辺に設けた一対の軸受により回動可能に軸支する矩形状の内部枠体と、内部枠体の外側に配置され、内部枠体の対向する両側辺からZ方向に各々突出させた一対の軸を対応する両側辺に設けた一対の軸受により回動可能に軸支する軸支する矩形状の外部枠体とを備え、三脚に取り付けることで三脚の傾きの如何を問わず前記鉛直尺を鉛直配置に支持する鉛直支持機構部と、
前記鉛直支持機構部の下方から突出させる前記鉛直尺の下部を貫通させる状態で取り付けるとともに、下面側に電磁石を内装した電磁石錘体と、
前記電磁石錘体の下面に、永久磁石を配置した上端面を接合、離脱可能に配置し、下端側の先鋭部分を地面に臨ませるとともに、上端面から内方下部にわたって前記鉛直尺の下部を摺動可能に内装した摺動円筒と、
を有し、
前記電磁石の非励磁状態で、この電磁石の残留磁気と前記永久磁石との吸着作用により前記摺動円筒の上端面を前記電磁石錘体の下面に接合状態に保持し、前記電磁石の励磁状態でこの電磁石と前記永久磁石との反発力により前記摺動円筒を地面に落下させて下端側の先鋭部分を地面に突き立て、前記鉛直尺を鉛直配置に設定支持するようにしたことを特徴とするデジタルカメラを用いた三次元計測方法における基準軸鉛直設定装置。
【請求項7】
手動操作により操作信号を出力するリモートコントローラと、
前記電磁石錘体に内装され前記リモートコントローラからの操作信号により前記電磁石を短時間のみ励磁して前記永久磁石との間に反発力を作用させ前記摺動円筒を地面に落下させるリレー、コンデンサーを用いた電気回路と、
を更に備えることを特徴とする請求項6記載のデジタルカメラを用いた三次元計測方法における基準軸鉛直設定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15−A】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図14】
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【図15−B】
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