説明

デジタルビデオ受信機、限定受信モジュール及び転送方法

【課題】 DVB受信機1とCASSモジュール2を仲介するコマンドデータ専用のコマンドライン5を介してリソース/アプリケーションデータを転送する場合、それらのデータ転送レートが高いとき、処理過程に支障が生ずる可能性があり、高いデータ転送レートの転送を実現する。
【解決手段】 DVB受信機1とCASSモジュール2を介するトランスポートストリームの転送用のTSライン3,4を介して、選択的にリソース/アプリケーションデータを上記装置間で送受信する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、デジタルビデオ受信機、限定受信モジュール及びそれらの間のデータの転送方法に関し、特に、制御されたデータの転送を速いレートで行うことを可能とする装置に関する。
【0002】
【従来の技術】デジタルビデオ放送(digital video broadcast:以下DVBという。)受信機を限定受信装置(conditional access sub-system:以下CASSという。)モジュールと接続することが提案されてきた。DVB受信機は、複数の放送局から送信された複数の仮想チャンネルを含む、放送信号を受信及び復調する。これらのチャンネル中の、特定の放送チャンネルのデータ又は特定の番組の放送データは、非契約者は受信できないようにスクランブルされている。CASSモジュールは、例えば放送データをデスクランブルする等して、放送データの受信を制御する。CASSモジュールは、サービス提供者によって、管理されているサービス契約情報をも有する。サービス提供者は、スクランブルされたデータをデスクランブルするための鍵情報とサービス管理情報を運ぶ暗号化されたメッセージを用いて、CASSモジュールにアクセスする。これにより、サービス提供者と、受信契約した者のみが、放送サービスを享受できる限定受信が可能となる。
【0003】CASSモジュールが、DVB受信機により受信されたMPEG等のトランスポートストリームのデータをデスクランブルするために、DVB受信機とCASSモジュールとの間にインターフェースが備えられる。インターフェースは、トランスポートストリームをCASSモジュールに送るためのラインと、トランスポートストリームをDVB受信機に送り返すためのラインを有する。
【0004】DVB受信機とCASSモジュールとの間にコマンドインターフェースを備える。コマンドインターフェースを介して、DVB受信機とCASSモジュールとの間で、リソースとアプリケーションとの間のリソース/アプリケーションデータを送受信することが可能となる。
【0005】コマンドインターフェースは、好ましくはオプションとして割り込みの機能を備えたポーリング方式を採用し、1バイト幅のラインを有する。DVB受信機は、CASSモジュールが送るデータを有するかを調べ、有する場合には、CASSモジュールからのデータを、1バイト単位で読み込む。また、DVB受信機が、送るべきデータを持っている場合には、自身のバッファのメモリに空きがあるかどうかを調べ、問題がなければ、CASSモジュールに1バイト単位のデータを送る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】したがって、インターフェースは、コマンドインターフェースを介して、一定の最大容量のパケットを送る。これらのパケットの最大容量は、DVB受信機のバッファの記憶容量又はCASSモジュールのバッファの記憶容量によって決まる。DVB受信機は、インターフェースを初期化するときに、CASSモジュールのバッファの記憶容量を読み込む。
【0007】したがって、コマンドインターフェースのデータ転送レートの最大値はかなり小さい。
【0008】CASSモジュールは、トランスポートストリームをデスクランブルすること以外の目的にも使用される。例えば、DVB受信機のリモートコントローラとの通信、DVB受信機のモデムとの通信、又はテレビジョン画面上にかなり複雑なグラフィックスを表示させることのような対話型のCASSモジュールの利用が考えられる。これらを実行した場合、コマンドインターフェースのデータ転送レートの制限のために、例えば、処理に望ましくない遅延が生じたり、画面上に断続的な動作が生じたりする可能性がある。
【0009】すなわち、本発明の目的は、DVB受信機とCASSモジュールとの間でデータ転送レートの高いリソース/アプリケーションデータのやりとりを、これらの装置の他の機能に支障なく円滑に行うことのできる手段を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明に係るデータの転送方法は、トランスポートストリームデータを送受信するためのトランスポートストリームライン(以下TSラインという。)と、リソース/アプリケーションデータを送受信するためのコマンドラインとを介して接続するソケットを備えたデジタルビデオ受信機が、TSラインを介してリソース/アプリケーションデータを選択的に転送することである。
【0011】また、本発明に係るDVB受信機は、トランスポートストリームデータの送信及び受信用のTSラインと、リソース/アプリケーションデータの送信及び受信用のコマンドラインとを介して限定受信モジュールと接続するためのソケットを備え、TSラインを介して選択的にリソース/アプリケーションデータを送受信する転送手段を備える。
【0012】本発明に係るCASSモジュールは、下記ラインを介してDVB受信機の複数のラインのソケットと接続し、トランスポートストリームデータを、デジタルビデオ受信機の対応するソケットへ送受信するTSラインと、リソース/アプリケーションデータを、デジタルビデオ受信機の対応するソケットへ送受信するコマンドラインを備え、TSラインを介して、リソース/アプリケーションデータを選択的に送受信する転送手段を備える。このTSライン上でのリソース/アプリケーションデータの転送は、1つ又は複数の要因に基づいて選択される。
【0013】CASSモジュールが、トランスポートストリームデータを処理する必要のないときは、DVB受信機又はCASSモジュールは、リソース/アプリケーションデータを選択的に送受信する転送手段を備える。
【0014】この手法により、CASSモジュールが、トランスポートストリームを処理していないときは、トランスポートストリームに単にCASSモジュールを通過させる代わりに、TSラインをリソース/アプリケーションデータのために利用することができる。
【0015】リソース/アプリケーションデータ転送のために必要なデータ転送レートが、コマンドラインの最大レートを超えるときにも、DVB受信機又はCASSモジュールは、TSラインを介して、選択的にリソース/アプリケーションデータの送受信を行う。
【0016】この手法により、リソース又はアプリケーションが非常に高いデータ転送レートを必要とするとき、TSラインを介して、このリソース又はアプリケーションを必要なデータ転送レートで駆動させることができる。
【0017】DVB受信機又はCASSモジュールは、トランスポートストリームの、CASSモジュールによって処理されていない仮想チャンネルのデータを選択して、その代わりにリソース/アプリケーションデータを送受信する手段を有する。
【0018】CASSモジュールがTSライン上のトランスポートストリームとして転送されている時間多重化された仮想チャンネルの一部分のデータだけを処理するために利用されているとき、この手法は特に有益である。CASSモジュールが、トランスポートストリームの仮想チャンネル中の必要なチャンネルのデータを処理する一方で、DVB受信機又はCASSモジュールが、高速で転送する必要のあるリソース/アプリケーションデータを、TSラインを介して、処理する必要のない仮想チャンネルのデータの代わりに転送するために、本発明を利用することができる。
【0019】DVB受信機は、TSラインを介してリソース/アプリケーションデータが転送されているときに、CASSモジュールに向けて転送されたトランスポートストリームの転送先を変更する手段を有する。
【0020】データの転送先の変更は、多くの手法で制御できる。例えば、利用者は、リソース/アプリケーションデータをTSライン上で流すことに対して、単に受信機を制御できるだけであるので、TSラインの利用は、進行中の処理に伴うロードの現在値によって自動的に、受信機内で選択することができる。また、各仮想チャンネルの代わりに、選択的にリソース/アプリケーションデータが転送される場合には、転送先の変更は、トランスポートストリームの多重化された仮想チャンネルのタイミングと用途、すなわちそのチャンネルがCASSモジュールで処理される必要があるか否かに基づいてなされる。
【0021】受信機内のマイクロプロセッサ又はリソースマネージャにかかるロードを減ずるために、受信機はさらに、リソースマネージャを介さずに、リソース/アプリケーションデータをTSラインを介して直接所望のリソースへ転送する手段を設けてもよい。
【0022】DVB受信機は、トランスポートストリームが、放送トランスポートストリームである、DVB受信機であることが好ましい。しかしながら、本発明は、広帯域入力データを伴う他の装置にも利用できる。例えば、インターネットや、デジタルビデオディスクプレーヤ又はデジタルビデオテープレコーダ(DVTR)等の蓄積装置などの情報源からの広帯域転送データの受信を伴う装置などである。
【0023】
【発明の実施の形態】以下本発明に係るデジタルビデオ受信機(以下DVB受信機という。)、限定受信装置(conditional access sub-system:以下CASSという。)モジュール及びそれらを仲介するインターフェースについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下では、デジタルビデオ放送の受信に関して記述するが、これらの記述は、任意の広帯域トランスポートストリーム入力源からの信号受信に適用できる。
【0024】図1に、DVB受信機1、CASSモジュール2及びその間のインターフェースの配置を示す。このインターフェースは、本来の利用目的によって、トランスポートストリームライン(以下TSラインという。)3,4及びコマンドライン5を有する。DVB受信機1は、トランスポートストリームを受信及び復調し、TSライン3を介して、これをCASSモジュール2に転送する。CASSモジュール2は、トランスポートストリームの任意の仮想チャンネルのデータを扱うよう設定されている場合、状況に応じてこれらの仮想チャンネルのデータを処理する。通常、この処理とは、例えば放送データをデスクランブルすることである。CASSモジュール2は、適切に処理された仮想チャンネルのトランスポートストリームを、TSライン4を介して、DVB受信機1へ送り返す。コマンドライン5は、DVB受信機1とCASSモジュール2との間の通信を制御するために、コマンドインターフェースとして備えられている。
【0025】DVB受信機1は、内部のビデオ/オーディオデコーダ6で、送り返されてきたトランスポートストリームのデータを処理する。利用者の選択に基づいて、DVB受信機1は、トランスポートストリームから必要なデータを選択するが、これは例えば、特定の仮想チャンネルを選択して、出力ライン7を介してビデオデータとオーディオデータを、テレビジョンのモニタに供給する。
【0026】CASSモジュール2は、DVB受信機1と分離した取り替え可能な独立した装置であることが好ましい。この場合において、DVB受信機1とCASSモジュール2との間のインターフェースの物理層は、例えばPCMCIA(personalcomputer memory card industry association)によって規定されているような、PCカードの規格に準拠している。このインターフェースは、標準的なPCカードインターフェースと、機械的に同一であり、電気的に類似しているが、これは、このインターフェースが、1バイト幅で規格されたMPEGトランスポートストリームの伝送路となるラインを提供するために、いくつかのピン及びラインを規格し直したものであることを意味する。このとき、コマンドライン5は、残りのピンに割り当てられる。
【0027】なお、DVB受信機1のインターフェースは、標準的なPCカードの規格に準拠しているので、DVB受信機1は、標準的なPCカードのインターフェースを、任意の新たに挿入されたカードに提供し、挿入されたカードが、CASSモジュール2と共有できるものであるときにのみ、DVB受信機1の上述したインターフェースのフォーマットに切り替えればよい。
【0028】DVB受信機1とCASSモジュール2は、内部にアプリケーションとリソースを備えている。以下では、リソースがすべてDVB受信機1内に備えられている場合を記述する。
【0029】図2に示すように、リソースは、メッセージやテレビジョン画像のようなグラフィックスを表示するためのスクリーン8,対話型のアプリケーションの使用などにより、送信及び受信データを扱い外部と通信するモデム9、DVB受信機1の機能を制御するリモートコントローラ10及び限定受信支援機11等である。実際には、DVB受信機1内のリソース自身は、単にこれらの装置のドライバ及びリカバリであってもかまわない。
【0030】アプリケーション12は、リソースのセッションを開くことによって、リソースにアクセスし、リソースとのすべての通信をそのセッション上で行い、リソースとアプリケーション12との間でリソース/アプリケーションデータをやりとりする。
【0031】アプリケーション12には、広範な機能を持たせることができる。例えば、送信データをスクランブルして、特定の視聴者だけ受信が可能なようにする受信方式、すなわち限定受信のためのアプリケーション12が考案されているが、このアプリケーション12により、番組管理情報を扱い、利用者に受信契約料の定期的な請求又は特定の有料番組を視聴したときの支払い請求(pay-per-view:以下ペイパービューという。)をすることができる。CASSモジュール2は、さらに受信料が必要であることを示すコードを受信する。CASSモジュール2内のアプリケーション12は、スクリーン8のセッションを解放し、受信料の請求を知らせるメッセージを表示させる。利用者は、それに対し、CASSモジュール2のアプリケーション12と通信するために、リモートコントローラ10を用いて受信契約の更新を希望する意志を示し、クレジットカードのカード番号等の必要な情報を伝えることができる。CASSモジュール2内のアプリケーション12は、モデム9にアクセスして、サービス提供者に受信契約更新の意志とクレジットカードに関する情報を送信する。同様な操作が、ペイパービューに対しても利用できる。
【0032】アプリケーション12の別の機能によって、CASSモジュール2は、スクリーン8を制御して、リモートコントローラ10によって制御される対話型ゲームのかなり複雑なグラフィックスを表示させる。
【0033】上述したように、物理層がPCカードの規格に準拠しているために、コマンドインターフェースは、ポーリング方式を採用し、1バイト幅のコマンドライン5を有する。DVB受信機1のホストプロセッサは、コマンドライン5のローレベルの物理層を制御する。ホストプロセッサは、CASSモジュール2が送るべきデータを有するかを調べ、CASSモジュール2から1バイト単位のデータを読み取る。ホストプロセッサが、送るべき情報を有する場合、ホストバッファに空きがあるかを調べ、CASSモジュール2に1バイト単位のデータを送る。さらに、コマンドインターフェースは、オプションとして割り込みの機能を備えていてもよい。この場合、CASSモジュール2内のプロセッサが、DVB受信機1にアクセスすることができる。
【0034】インターフェースの最下層の1つであるリンク層は、一定の最大のパケットをインターフェースを介して送るという役割を果たす。これらのパケットの最大値は、DVB受信機1のバッファの記憶容量又は、CASSモジュール2のバッファの記憶容量によって決まる。DVB受信機1は、インターフェースを初期化するときに、CASSモジュール2のバッファの記憶容量を読み取る。CASSモジュール2のバッファの記憶容量の最小値は、16バイトであり、DVB受信機1のバッファの記憶容量の最小値は、256バイトである。DVB受信機1及びCASSモジュール2のバッファの記憶容量の最大値は、65536バイトである。コマンドライン5上でのデータ転送レートの最大値は、DVB受信機1又はCASSモジュール2のバッファの記憶容量の小さい方と、ポーリングレートによって決まる。
【0035】したがって、コマンドライン5のデータ転送レートは、CASSモジュール2のバッファの記憶容量の最小値及びDVB受信機1のバッファの記憶容量の最小値と、ホストプロセッサによって決まっている物理層のポーリングレートによって決まっている。DVB受信機1のバッファの最小記憶容量を256バイトとし、ポーリングレートを、妥当とされる10msとすると、データ転送レートは、以下のようになる。
1/10ms×256×8=204.8kbit/s送信及び受信に、別々のバッファを用いる場合、このデータ転送レートは、同時に各送信及び受信に対して適用される。
【0036】上記のデータ転送レートは、単純なアプリケーションを用いるとき、CASSモジュール2とDVB受信機1との間のコマンドインターフェースのデータ転送レートとして、十分であった。実際、コマンドライン5は、上述したリソース/アプリケーションデータを転送するために利用される。しかしながら、コマンドライン5のデータ転送レートの制限により、進歩したアプリケーションを利用するときに、問題が生ずる。
【0037】アプリケーション12は、利用者との通信のためにDVB受信機1のスクリーン8にアクセスする。他の装置によるものと同様、グラフィックスの表示は、解像度、色彩及び処理速度に関して妥当な質が期待される。204.8kbit/sというデータ転送レートの制限を伴うコマンドライン5を介してグラフィックスを表示させた場合、上述の質を維持するのが困難である。
【0038】DVB受信機1及びCASSモジュール2のバッファの記憶容量を増加させることによって、データ転送レートを改善することが可能である。これによりコマンドライン5のデータ転送レートが高まるが、別の要因を考慮する必要がある。DVB受信機1は、多くのソフトウェアのタスクをリアルタイムで処理する装置である。これらのタスクは規則的に実行される必要があるので、タスクスケジューリングが必要である。
【0039】256バイトのバッファの記憶容量を利用しきって、コマンドライン5を最大のデータ転送レートで利用する場合、256回のアクセスが必要となる。これらのアクセスは、各約100nsかかるので、合計で25.6μsのアクセス時間を要する。この時間に、さらにCPUとバッファ間のアクセス指令伝達時間を加算しなければならないが、この時間は、DVB受信機1に備えられたCPUによって決まる。ダイレクトメモリアクセス(direct memory access:以下DMAと略記)制御方式を用いて、アクセス指令伝達時間を取り除くことができるが、アクセス時間は、アクセスに際しCPUを介さなくても存在し、処理時間がかかることになる。
【0040】コマンドライン5は、別のリソース/アプリケーションデータの転送によっても、すなわち別のリソースを起動させるアプリケーションデータの転送によっても、利用される。特に、コマンドライン5を大きなデータ量で利用するあるアプリケーションは、別のアプリケーションの動作に有害な影響を与え、利用者にそのアプリケーションの実行に際して不都合を感じさせる。逆に、利用者が転送データ量の多いアプリケーションを使用した場合、別のアプリケーションの転送によりその実行が妨害される可能性がある。
【0041】上述したように、DVB受信機1とCASSモジュール2との間のインターフェースは、2つの部分に分けられる。すなわち、TSライン3,4とコマンドライン5である。TSライン3,4により、2つのトランスポートストリームを最大58Mbit/sでCASSモジュール2への送信及び受信の2方向で処理することが可能である。本発明の一部として、リソースとアプリケーションとの間のデータの転送に、TSライン3,4を利用することが提案されている。特に、MPEGトランスポートストリームなどのトランスポートストリームは、コマンドライン5にデータを転送することなく、特定のリソースを起動させるためのアプリケーションデータを適切なフォーマットで運ぶことができる。
【0042】図2に示すように、通常の放送信号の受信において、放送トランスポートストリームは、TSライン3を介してCASSモジュール2に転送され、そこでそのデータが適切に処理された後、その放送トランスポートストリームは、TSライン4を介してDVB受信機1に送り返される。このトランスポートストリームのデータは、ビデオ/オーディオデコーダ6などでさらに処理される。しかしながら、図2に示したように、TSライン3,4は、リソースマネージャ13にも接続している。したがって、放送トランスポートストリームを、TSライン3,4を介して転送する代わりに、リソースマネージャ13とアプリケーション12との間のリソース/アプリケーションデータを、TSライン3,4を介して転送することが可能である。
【0043】当然、TSライン3,4を、リソースマネージャ13とアプリケーション12との間のリソース/アプリケーションデータの転送に利用した場合、ビデオデータ及びオーディオデータを含むトランスポートストリームは、中断される。しかしながら、これは2つの理由により大きな問題ではない。
【0044】第1に、グラフィックスの操作などの、アプリケーション12がTSライン3,4を利用する必要があるほど大量のデータを用いる場合、それと同時に、放送データを画面表示する必要が生ずる可能性は小さい。
【0045】第2に、放送トランスポートストリームは、そのデータをデスクランブリングなどの何らかの処理を必要とする場合においてのみ、CASSモジュール2に転送される必要がある。トランスポートストリームに含まれる放送データは、デスクランブルする必要がないことがよくある。このような場合を考慮して、DVB受信機1の内部に、切り替え回路を設けることができる。この切り替え回路により、インターフェース上の放送トランスポートストリームは転送先を変更され、ビデオ/オーディオデコーダ6に直接送られる。この手法により、DVB受信機1は、放送画像を表示することができるが、このときTSライン3,4は、リソースマネージャ13とアプリケーション12との間のリソース/アプリケーションデータの転送に利用されている。適切な切り替えの仕組みを図3に示す。
【0046】この切り替え回路は、通常は、受信したトランスポートストリームをCASSモジュール2へ転送させる。
【0047】切り替え回路は、リソースマネージャ13と2点で接続している。これにより、切り替え回路は、CASSモジュール2から供給された高速で転送する必要のあるリソース/アプリケーションデータを、TSライン3,4を介してリソースマネージャ13へと転送することが可能となる。切り替え回路により、リソースマネージャ13は、TSライン3,4を介してCASSモジュール2へ、リソース/アプリケーションデータを転送することが可能となった。この切り替え回路を用いることによって、CASSモジュール2が放送トランスポートストリームのデータを処理する必要がないとき、放送トランスポートストリームは、DVB受信機1の別の部分でそのデータを処理するように、直接例えばビデオ/オーディオデコーダ6に転送される。図4は、図2において切り替え回路の配置の1例を明示したものである。
【0048】上述の切り替え回路は、図5に示したTS処理ユニット14,15を備える。TS処理ユニット14は、広帯域トランスポートストリーム入力源及びリソースマネージャ13からの入力データと、アプリケーション12とTS処理ユニット15への出力データを扱うことを目的とし、TS処理ユニット15は、TS処理ユニット14とアプリケーション12からの入力データと、リソースマネージャ13とビデオ/オーディオデコーダ6への出力データを扱うことを目的とする。
【0049】図5(a)に、TS処理ユニット14を示す。これは、それぞれ広帯域トランスポートストリーム入力源及びリソースマネージャ13と接続する入力端子14A,14Bと、CASSモジュール2及びTS処理ユニット15と接続する出力端子14X、14Yを備える。
【0050】この実施の形態において,TS処理ユニット14は、DVB受信機1のプロセッサによって制御され、DVB受信機1内に備えられているが、配置又は制御法はこれ以外であってもよい。この装置は、入力端子14A又は入力端子14Bから供給されたデータを出力端子14Xにおいて出力し、入力端子14Aから供給されたトランスポートストリームを出力端子14Yにおいて出力する。この手法により、リソースマネージャ13がTSライン3を介してCASSモジュール2にリソース/アプリケーションデータを転送しているときに、TS処理ユニット14は、CASSモジュール2に向けて転送されてきたトランスポートストリームの転送先を変更して、TS処理ユニット15に転送し直すことができる。
【0051】図5(b)に、TS処理ユニット15を示す。これは、それぞれCASSモジュール2及びTS処理ユニット14と接続する入力端子15A,15Bと、リソースマネージャ13及びビデオ/オーディオデコーダ6と接続する出力端子15X、15Yを備える。
【0052】この実施の形態において、TS処理ユニット15は、DVB受信機1のプロセッサによって制御され、DVB受信機1内に備えられているが、配置又は制御法はこれ以外であってもよい。この装置は、入力端子15Aから供給されたデータを出力端子15Xにおいて出力し、入力端子15A又は入力端子15Bから供給されたデータを、出力端子15Yにおいて出力する。この手法により、リソースマネージャ13に、TSライン4を介して、CASSモジュール2からのデータが供給されているとき、TS処理ユニット15は、TS処理ユニット14から供給されたトランスポートストリームを、ビデオ/オーディオデコーダ6に転送することができる。
【0053】当然、ここで重要なことは、TS処理ユニット14,15の機能であり、それらは図2に示されているのとは異なった配置にすることが、例えば2つの装置を1つの装置として配置することが可能である。実際、実用化に際しては、これらの2つの装置の機能を、DVB受信機1のシリコン回路の一部に集積することが、もっとも実施しやすい。
【0054】DVB受信機1に供給されたTSライン3,4上のリソース/アプリケーションデータを、図2R>2,3に示されているように、リソースマネージャ13に転送することができる。リソースマネージャ13は、リソース/アプリケーションデータを、コマンドライン5上及びTSライン3,4上のどちらを利用しても扱える。したがって、通常のテレビジョン放送信号の受信に際しては、利用されるリソース/アプリケーションデータのレートは低いので、リソース/アプリケーションデータは、コマンドライン5を介して転送され、放送トランスポートストリームは、TSライン3,4を介して転送される。高速で転送する必要のあるリソース/アプリケーションデータが用いられているときは、リソース/アプリケーションデータは、TSライン3,4を介してリソースマネージャ13に転送され、放送トランスポートストリームは、CASSモジュール2に転送されることなく、ビデオ/オーディオデコーダ6に転送先を変更される。
【0055】いくつかの高速で転送される必要のあるデータを有するアプリケーションを扱う場合には、リソースマネージャ13自体が、データ転送の速度を落とす。リソースマネージャ13すなわちその内部のCPUによってリソース/アプリケーションデータを直接扱うこと又は、DMA制御方式を用いて間接的に扱うことの欠点は、それぞれCPUに直接ロードがかかること又は、プロセッサのバスバンド幅が占有されてしまうことである。したがって、図6に示すように、TSライン3,4上のリソース/アプリケーションデータを、高レートリソース16に直接転送してもよい。特に、アプリケーション12は、通常の方法で高レートリソース16のセッションを解放する。高レートリソース16は、例えば、トランスポートストリームグラフィックスデータ入力などの特別に設計されたリソースである。この高レートリソース16のセッションが解放されると、リソース/アプリケーションデータをグラッフィック表示装置、すなわち高レートリソース16に転送するために、アプリケーション12がTSライン3,4を利用する。コマンドライン5は、制御データ又はステータスデータ等の、データ転送レートの低いリソース/アプリケーションデータを扱うために用いられ、リソース/アプリケーションデータは、TSライン3,4を介して転送される。
【0056】図2に示すように、図3の切り替え回路の機能により、放送トランスポートストリームを、転送先を変更して直接ビデオ/オーディオデコーダ6に転送し、TSライン3,4が、アプリケーション12と高レートリソース16を仲介することが可能となる。同様に、TS処理ユニット14,15を図7のように配置することも可能である。
【0057】図6,7に示すように、DVB受信機1は、リソース/アプリケーションデータを供給され、専用のハードウェア又はDMA制御方式を用いて、グラフィックス表示装置などの高レートリソース16へ、そのデータを転送する。グラフィックス表示装置は、カスタマイズされた専用のハードウェア又はAPIを有するが、これによりDVB受信機1のホストマイクロプロセッサによって保持されているグラフィックスルーチンのライブラリにアクセスできる。
【0058】以上の説明は、TSライン3,4が、放送トランスポートストリーム又はリソース/アプリケーションデータのどちらか一方のみを扱う装置に関する。しかしながら、周知のように、トランスポートストリームは、複数の仮想チャンネルを伝送するために時間多重化されていることが多い。
【0059】CASSモジュール2は、通常これらの仮想チャンネルのいくつかを選択して扱う。したがって、本発明の実施の形態として、CASSモジュール2で処理されていない仮想チャンネルを利用してもよい。
【0060】TSライン3,4を介して、CASSモジュール2又はDVB受信機1に供給されたデータは、初めに放送データに関するものか、リソース/アプリケーションデータに関するものか調べられる。この手法により、放送データに関するパケットは、適切に転送され、リソース/アプリケーションデータに関するものは、アプリケーション12に転送又は、リソースマネージャ13を介して又は直接リソースに転送される。
【0061】TS処理ユニット14,15によって、上述の操作が可能である。実際、上述の時間多重化のために、TS処理ユニット14において、出力端子14Xが、広帯域トランスポートストリーム及び、リソースマネージャ13又は高レートリソース16からの、パケットを束ねたトランスポートストリームを出力し、出力端子14Yが、広帯域トランスポートストリームから供給されたトランスポートストリームのみを出力することが可能である。
【0062】TSライン3,4を利用することにより、リソース/アプリケーションデータを、最高58Mbit/sのレートで転送することが可能である。このレートは、コマンドライン5を介して行われる転送レートより高く、DVB受信機1及びCASSモジュール2内のバッファの記憶容量やDVB受信機1のポーリングレートによって制限されない。
【0063】コマンドライン5は、CASSモジュール2からの読み込み及び書き込みのために8ビットのバスを提供できるに過ぎないが、TSライン3,4を利用することにより、コマンドライン5ではうまく扱えないDVB受信機1へ送受信される専用データを扱うことができる。
【0064】上述したように、DVB受信機1は、DVB受信機1のホストマイクロプロセッサを介するか専用のハードウェアを用いることによって、リソース/アプリケーションデータのために専用のパスを割り振ることができる。これにより、他のデータ転送のためにバス幅を占有されているコマンドライン5にロードをかけずに、DVB受信機1が、リソース/アプリケーションデータを扱うことが可能となる。
【0065】専用ハードウェアを利用することの利点は、DVB受信機1のマイクロプロセッサが、リソース/アプリケーションデータを扱うことをさけられる点である。TS処理ユニット14,15は、任意のパケットとして、トランスポートストリームを直接専用のハードウェアのポートに転送するために利用される。これにより、DVB受信機1のホストマイクロプロセッサが、他のタスクの処理能力を上げることができる。
【0066】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明では、DVB受信機1とCASSモジュール2を仲介するインターフェース内の、本来放送データの転送のために用いられるTSライン3,4を、状況に応じてリソース/アプリケーションデータを転送するために用いることによって、DVB受信機1及びCASSモジュール2のバッファ記憶容量や、DVB受信機1のポーリングレートによる制限をうけずに、非常に高いデータ転送レートでリソース/アプリケーションデータを転送することができる。さらに、高いデータ転送レートを必要とするリソース/アプリケーションデータの転送に際し、DVB受信機1内のCPUを介さず専用のハードウェアを用いることにより、このデータ転送中に、DVB受信機1のCPUが他のタスクを円滑に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】CASSモジュールを伴うDVB受信機のブロック図である。
【図2】CASSモジュールと接続したDVB受信機に備えられたリソースのブロック図である。
【図3】図2の切り替えの仕組みを示す図である。
【図4】図2に示す実施の形態の切り替えの仕組みを詳述したブロック図である。
【図5】TS処理ユニットの図である。
【図6】CASSモジュールが、DVB受信機内の高レートリソースと直接アクセスしている実施の形態を示すブロック図である。
【図7】図6の実施の形態の変形を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 DVB受信機、2 CASSモジュール、3 TSライン,4 TSライン,5 コマンドライン、6 ビデオ/オーディオデコーダ、8 スクリーン、9 モデム、10 リモートコントローラ、11 限定受信支援機、12 アプリケーション、13 リソースマネージャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 トランスポートストリームの送信及び受信用のトランスポートストリームラインと、リソースとアプリケーションとの間でやりとりするデータであるリソース/アプリケーションデータの送信及び受信用のコマンドラインとを仲介して限定受信モジュールと接続するためのソケットを備え、上記トランスポートストリームラインを介して選択的に上記リソース/アプリケーションデータを送受信するデジタルビデオ受信機。
【請求項2】 少なくとも1つのリソースと該リソースを管理するリソースマネージャとを備え、上記リソース/アプリケーションデータは、上記リソースのために用いられ、上記リソースマネージャは、上記リソース/アプリケーションデータを、必要に応じて上記リソースに提供又は上記リソースから転送することを特徴とする請求項1記載のデジタルビデオ受信機。
【請求項3】 上記トランスポートストリームラインを介して供給された上記リソース/アプリケーションデータを、上記リソースマネージャを介さず、直接所望の上記リソースに転送する直接転送手段を備えることを特徴とする請求項2記載のデジタルビデオ受信機。
【請求項4】 上記トランスポートストリームラインを介して上記リソース/アプリケーションデータが転送されているときに、上記限定受信モジュールヘ向けて転送された上記トランスポートストリームの転送先を変更する変更手段を備える請求項1乃至3いずれか1項記載のデジタルビデオ受信機。
【請求項5】 上記変更手段は、使用者の1つ又は複数の選択、上記デジタルビデオ受信機でのデータ処理及び/又は、上記トランスポートストリームの多重化された仮想チャンネルのタイミングと用途に基づいて制御されることを特徴とする請求項4記載のデジタルビデオ受信機。
【請求項6】 上記限定受信モジュールが上記トランスポートストリームのデータを処理する必要のないときに上記トランスポートストリームラインを介して、選択的に上記リソース/アプリケーションデータを送受信する転送手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項記載のデジタルビデオ受信機。
【請求項7】 上記リソース/アプリケーションデータのデータ転送レートが上記コマンドラインの最大許容レートを越えるときに、上記トランスポートストリームラインを介して選択的に上記リソース/アプリケーションデータを送受信する転送手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項記載のデジタルビデオ受信機。
【請求項8】 上記限定受信モジュールによって処理されていない上記トランスポートストリームの仮想チャンネル上で、選択的に上記リソース/アプリケーションデータを送受信する転送手段を備えることを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項記載のデジタルビデオ受信機。
【請求項9】 トランスポートストリームを、デジタルビデオ受信機の対応するソケットへ送受信するトランスポートストリームラインと、リソース/アプリケーションデータを、上記デジタルビデオ受信機の対応するソケットへ送受信するコマンドラインとを備え、上記トランスポートストリームラインを介して、上記リソース/アプリケーションデータを選択的に送受信する上記ソケットを介して上記デジタルビデオ受信機と接続する限定受信モジュール。
【請求項10】 トランスポートストリームデータを処理する必要のないときに上記トランスポートストリームラインを介して、選択的に上記リソース/アプリケーションデータを送受信する転送手段を備えることを特徴とする請求項9記載の限定受信モジュール。
【請求項11】 上記リソース/アプリケーションデータのデータ転送レートは、上記コマンドラインの最大許容レートを越えるときに、上記トランスポートストリームラインを介して選択的に上記リソース/アプリケーションデータを送受信する転送手段を備えることを特徴とする請求項9記載の限定受信モジュール。
【請求項12】 上記限定受信モジュールによって処理されていない上記トランスポートストリームの仮想チャンネル上で、選択的に上記リソース/アプリケーションデータを送受信する転送手段を備えることを特徴とする請求項9記載の限定受信モジュール。
【請求項13】 トランスポートストリームデータを送受信するためのトランスポートストリームラインと、リソース/アプリケーションデータを送受信するためのコマンドラインを介して限定受信モジュールに接続するソケットとを備えたデジタルビデオ受信機を用いたデータの転送方法であって、上記トランスポートストリームラインを介して上記リソース/アプリケーションデータを選択的に転送するステップを有する転送方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開平11−331801
【公開日】平成11年(1999)11月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−349046
【出願日】平成10年(1998)12月8日
【出願人】(593081408)ソニー・ユナイテッド・キングダム・リミテッド (93)
【氏名又は名称原語表記】Sony United Kingdom Limited