説明

デジタル土壌物理性計測装置

【課題】 自然状態における構造を保持したままの土壌試料に係る物理量を高精度に計測する装置を提供する。
【解決手段】 デジタル土壌物理性計測装置1は、計測に必要な項目を入力する操作パネル3と、操作手順および計測結果を表示する表示部5と、計測する試料を入れる試料室11と、計測に必要な電力の供給を受ける電源ソケット13と、供給された電力を通電または遮断する電源スイッチ9と、計測データをデジタル出力する出力コネクタ15と、計測制御プログラム115を入力する入力コネクタ17と、これらを取り付けた筐体7で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然状態における構造を保持したままの土壌試料を用いて、土壌の三相構造に係る物理量の計測をデジタルに変換して計測データを収集する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
土壌は、固相、液相および気相を構成成分とする三相系物質である。固相とは鉱物を主とする無機質と有機質から成り、液相および気相はそれぞれ土壌水分および土壌空気により構成されている。この固相・液相・気相のそれぞれが占める容積割合が土壌の三相分布である。土壌の肥沃度や作物の生育には、この土壌三相の適正な関係が決め手となり、三相分布状態を知ることが土壌診断の基本となっている。
【0003】
自然状態における構造を保持したままの土壌試料の計測法として実容積計測法が用いられている。土壌の全容積と土壌三相の固相・液相・気相それぞれの容積は次の式に表わすことができる。
【0004】
Vt=Vs+Vl+Va
(Vt=全容積、Vs=固相、Vl=液相、Va=気相)
【0005】
実容積計測法を用いて計測される実容積は土壌の固相容積と液相(水分)容積との和の容積量であり次の式に表わすことができる。
【0006】
V=Vs+Vl
=Vt−Va
(V=実容積、Vs=固相、Vl=液相、Vt=全容積、Va=気相)
【0007】
また、このとき、土壌の全重量と、土壌の三相の固相重量、液相(水分)重量、気相重量の関係は次の式に表わすことができる。
【0008】
W=S+M+Aw
(W=全重量、S=固相重量、M=液相(水分)重量、Aw=気相重量)
【0009】
しかし、気相重量Awは通常0とみなされるので、全重量は固相重量と液相(水分)重量との和となり次の式に表わすことができる。
【0010】
W=S+M
(W=全重量、S=固相重量、M=液相(水分重量))
【0011】
実容積計測法では、計測する土壌の全重量と、実容積の計測を終えた試料を乾熱させて水分を除去し、それによって失われる重量を液相(水分)重量とする。このとき土壌水分の密度は1g/cmとし、土壌液相(水分)重量と液相(水分)容積とは等しい数値をもつとしている。したがって、土壌の固相容積は、実容積から液相(水分)容積を減じた容積量となり次の式に表わすことができる。
【0012】
Vs=V−M
(Vs=固相容積、V=実容積、Vl=液相(水分)容積
【0013】
つまり実容積計測法では、容量が既知の土壌採取容器で採取した土壌の実容積を計測すると、気相容積が求められる。そして、実容積の計測を終えた試料を乾熱させて水分を除去することで、固相容積と液相(水分)容積をもとめるこができる。
【0014】
従来、土壌の三相(固相・液相・気相)それぞれの容積を計測しようとするときに、自然状態における土壌構造を保持したままの土壌試料の採取方法と、実容積を計測する計測方法が確立され広く用いられている。一般に農耕土壌の採取は100mlの金属製の円筒容器を用いて行われている。これは農業機械化研究所の考案に基づくもので、全容積100mlの大きさの容器を採用することは採取した土壌をそのまま実容積計測に用いることができるなど有利な点が多いからである。
【0015】
ボイル−シャルル(Boyle−Chareles)の法則によれば、温度が一定の場合にひとつの空気系において容積変化を生じたときに、それにともなう圧力変化について次の数式が成り立つ。
【0016】
【数1】

【0017】
この式は、はじめの圧力を一定(例えば大気圧)にし、さらに圧力変化量を一定にすれば、空気容積と容積変化量とが比例関係にあることを示している。土壌の実容積を求める計測器は、この原理を利用してはじめの圧力を一定にして、特定の目標圧力まで圧縮するときの容積変化量から実容積を求める方法を採用している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
自然状態における構造を保持したままの土壌試料に基づいて、土壌の三相に係る物理量の計測法として実容積計測法が広く用いられている。計測装置は土壌試料を入れる密閉容器に、エアーシリンダーを用いて目標圧力に達するまで圧縮操作をする。そのときのエアーシリンダーのピストン移動量から容積変化量を求めて実容積を計測している。このとき、エアーシリンダーで目標圧力まで圧縮操作するときに、土壌構造の特性から土壌粒子間にあるわずかな空気層、いわゆる土壌中の孔隙に加えられた圧力が定常状態になるまで密閉された容器の中で圧力変化に揺らぎが発生する。そのため、目標圧力に到達するまで一気に連続的に圧縮操作をすると計測精度に影響を与え正しい計測ができない。これを防ぐために、計測者は試料容器内の圧力計測値を見ながら、徐々に目標圧力に到達するまで圧縮操作をしなければならない。この一連の圧縮操作を手動で行っているため計測者による圧縮操作に個人差が生じて計測誤差の要因となっている。また、計測精度を高めるために同一試料を4〜5回程度計測してその平均値を求めて計測結果としているが、計測サンプル数が多くなると計測作業と計測値計算に多くの労力が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、このような従来の問題を解決しようとするためのもので、計測用試料室と前記試料室を加圧する加圧手段と前記試料室内の圧力を計測する圧力計測手段と、加圧に用いる空気の流量を計測する流量計測手段と前記加圧手段を駆動する加圧手段駆動装置と、前記試料室の内圧に基づいて前記加圧手段駆動装置を制御する制御装置を備え、試料室が目標圧力に達するまでの空気流量に基づいて試料室内の試料容積を計測する構造を備えたことを特徴とするデジタル土壌物理性計測装置である。
【0020】
前記制御装置は、加圧手段駆動装置を高速から低速に変化するように制御する加圧速度調整手段を備えたことを特徴とするデジタル土壌物理性計測装置である。
【0021】
前記加圧速度調整手段は、初期から一定の中間圧力までを加圧する第一速度と前記中間圧力から目標圧力までを加圧する第二速度で駆動装置を制御する手段を備えたことを特徴とするデジタル土壌物理性計測装置である。
【0022】
前記制御装置は、途中で一時的に加圧を中断する加圧中断手段を備えたことを特徴とするデジタル土壌物理性計測装置である。
【0023】
前記制御装置は、前記加圧中断中の圧力変化量に基づいて次への加圧に移行するか否かを判定する移行判定手段を備えたことを特徴とするデジタル土壌物理性計測装置である。
【0024】
前記移行判定手段は、圧力低下を検出した場合に計測を中止する手段を備えたことを特徴とするデジタル土壌物理性計測装置である。
【0025】
前記制御装置は、複数回の繰り返し計測の平均値を算出する平均値算出手段と計測値を保存する計測値保存手段を備えたことを特徴とするデジタル土壌物理性計測装置である。
【0026】
前記制御装置は、前回の計測値と今回の計測値を比較してその差が一定の範囲内となるまで計測を繰り返す反復手段を備えたことを特徴とするデジタル土壌物理性計測装置である。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、試料室内の圧力を計測しながら目標圧力に達するまで加圧する一連の計測作業を全て自動化して制御するため、計測者の操作方法に個人差による計測誤差を防ぐことが可能となり計測精度が向上する。
【0028】
また、試料室への加圧速度を自動制御することが可能である。これにより、試料容器内の圧力を計測しながら、目標圧力に到達する少し手前までは高速で加圧を行い、数秒間加圧を停止して圧力が定常状態になるのを確認してから徐々に目標圧力に到達するまで低速で圧縮を行うかあるいは、目標圧力に到達する少し手前までは高速で圧縮を行い、徐々に圧縮速度を減速させることで試料室内の圧力を定常状態近づけながら目標圧力に到達させることが可能である。この加圧速度の自動制御は計測精度の向上と計測時間の短縮につながる。
【0029】
さらに、試料室内の圧力変化量に基づいて次への加圧に移行するか否かを判定する移行判定手段を備えることにより、計測装置あるいは計測手段の異常を自動で検出することが可能となり、計測を中止あるいは計測者に異常を知らせることができる。
【0030】
また、自動で複数回の繰り返し計測をして、平均値を算出する平均値算出手段を備えることにより、計測値計算の時間を短縮することができる。さらに同一サンプルを複数回計測する時に、前回計測値と比較した値が一定範囲内であればさらなる計測を繰り返すことなく計測を自動判定して終了することで、計測精度を保ちながら計測時間を短縮することができる。
【0031】
また、計測値保存手段を備えることにより計測した計測値をデジタルデータとして保存するとともにコンピュータに出力することができる。これによりデータ入力作業が軽減されるとともにデータ解析が容易に行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
実施形態の、デジタル土壌物理性計測装置1について図1から図3で説明する。デジタル土壌物理性計測装置1は、計測に必要な項目を入力する操作パネル3と、操作手順および計測結果を表示する表示部5と、計測する試料を入れる試料室11と、計測に必要な電力の供給を受ける電源ソケット13と、供給された電力を通電または遮断する電源スイッチ9と、計測データをデジタル出力する出力コネクタ15と、計測制御プログラム115(図示省略)を入力する入力コネクタ17と、これらを取り付けた筐体7で構成されている。
【0033】
次に、デジタル土壌物理性計測装置1の筐体7の内部機構と接続状態について図4で説明する。筐体7の内部は、エアー出口29を備えたエアーシリンダー23と、エアーシリンダー23内のエアー25を加圧するピストン27と、ピストン27に取り付けたギヤ33と、ギヤ33を駆動する歯車35を取り付けたモータ37と、ピストン27の初期位置を検知する原点センサ39と、エアー25の圧力を計測する圧力センサ31と、エアーシリンダー23と試料室11へのエアー25の出入りを開閉する電磁弁41と、エアーシリンダー23のエアー出口29と試料室11と圧力センサ31と電磁弁41とを接続する配管43と、配管43を分岐接続する継ぎ手45と、モータ37と原点センサ39と圧力センサ31と電磁弁41と操作パネル3と表示部5と電源ソケット13が配線47で接続されている制御装置21と、制御に必要な電力の供給を受ける電源ソケット13と、供給する電力の電圧を制御装置21用に変換するアダプター55と、アダプター55に接続する電源ケーブル57とで構成されている。尚、制御に必要な電力の供給は制御装置21の仕様に合致していれば何を用いても良いわけであり、例えば蓄電池59を使用することもできる。さらに、制御装置21はマイクロプロセッサ(CPU)49と、計測制御プログラム115と計測データを有する記憶部(ROM)51と、設定した日付および時刻を電源が切られていても現在時刻を刻み続ける機能を有したリアルタイムクロック53と、計測データを外部コンピュータ61にデジタル出力する出力ケーブル62を接続する出力コネクタ15と、上位コンピュータ63から計測制御プログラム115を入力する入力ケーブル64接続する入力コネクタ17を備えている。
【0034】
次に、デジタル土壌物理性計測装置1の機能について図5で説明する。デジタル土壌物理性計測装置1は、計測用の試料室11と、前記試料室11を加圧す加圧手段65と、前記試料室11内の圧力を計測する圧力計測手段67と、加圧に用いる空気の流量を計測する流量計測手段69と、前記加圧手段65を駆動する加圧手段駆動装置71と、前記試料室11の内圧に基づいて前記加圧手段駆動装置71を制御する制御装置21を備えている。
【0035】
前記制御装置21は、加圧手段駆動装置71を高速から低速に変化するように制御する加圧速度調整手段101を備えている。
【0036】
前記加圧速度調整手段101は、試料を入れた試料室11を初期(大気圧)から一定の中間圧力(例えば30kPa)までを加圧する第一速度と、前記中間圧力から目標圧力(例えば36kPa)までを加圧する第二速度で駆動装置を制御する手段を備えている。第一速度に対して、第二速度は遅くなるように設定されている。
【0037】
前記制御装置21は、試料室11内が初期から中間圧力に至る途中で一時的に加圧を中断する加圧中断手段103を備えている。
【0038】
前記制御装置21は、前記加圧中断中の試料室11内の圧力変化量に基づいて次への加圧(中間圧力から目標圧力)に移行するか否かを判定する移行判定手段105を備えている。
【0039】
前記移行判定手段105は、一定量以上の圧力低下を検出した場合に計測を中止する手段を備えている。また、一定量以上の圧力低下を検出しない場合、試料室11内への加圧を再開する。具体的には、加圧手段65により、試料室11内を中間圧力から目標圧力まで加圧するように、加圧速度調整手段101により第二速度で加圧手段駆動装置71を制御する。
【0040】
前記制御装置21は、試料室11内の圧力が目標圧力に到達後、試料室11内の圧力を複数回(例えば3回)繰り返して計測し、複数回の計測値から平均値を算出する平均値算出手段107と、個々の計測値をRAM(図示省略)の所定の記憶領域に保存する計測値保存手段113を備えている。つまり、制御装置21のマイクロプロセッサ49は、計測値保存手段113によりRAMに記憶されている複数回の測定値を呼び出して、平均値算出手段107により平均値(例えば、3回測定の平均値)を算出するように制御を行う。
【0041】
前記制御装置21は、前回の計測値と今回の計測値を比較してその差が一定の範囲内となるまで計測を繰り返す反復手段109を備えている。なお、反復手段109により、3回測定分の各々前後を比較し、各測定値の差が一定の範囲内にない場合には、表示部5にエラー表示等を行い、処理を終了する。
【0042】
なお、計測に必要な手段(前述した加圧速度調整手段101〜測定値保存手段113)として機能するコンピュータプログラムは、予め入力コネクタ17を介して制御装置21に備えられた記憶部(ROM)51に記憶されている。前記記憶部(ROM)51に記憶されたプログラムは前記制御装置21に備えられたマイクロプロセッサ49で入出力信号を演算しながら実行される。記憶部(ROM)51に記憶された前記プログラムは電源の供給が停止しても記憶部(ROM)51から消去されることはない。つまり、前記転送操作を一度行った以降は、前記プログラムを転送する必要がなく前記プログラムを実行することが可能となる。さらに、入力コネクタ17は筐体7の背面にあり前記プログラムの修正が必要となった場合に、筐体7を分解することなく短時間で制御装置21に修正したプログラムを転送することができる。また、前記制御装置21は、前記プログラムの指令に基づき、表示部5に操作手順と計測結果を表示する機能を備えている。
【0043】
前記制御装置21は、さらに、計測値保存手段113によってRAMに保存された前記計測値(以下、計測データとも言う)を、出力コネクタ15を介して外部の上位コンピュータに出力する出力手段111を備えている。
【0044】
次に、図4と図5の対応関係について説明する。図5の加圧手段65は、図4の23エアーシリンダーと、エアー25と、ピストン27と、エアー出口29に相当する。図5の圧力計測手段67は、図4の圧力センサ31と配線47に相当する。図5の流量計測手段69と加圧手段駆動装置71は、図4のギヤ33と、歯車35と、モータ37と、原点センサ39と、配線47に相当する。図5の加圧速度調整手段101と、加圧中断手段103と、移行判定手段105と、平均値算出手段107と、反復手段109と、出力手段111と、計測値保存手段113は、図4の記憶部(ROM)51に記憶されたプログラムをマイクロプロセッサ49で実行することで実現する、デジタル土壌物理性計測装置1を動作制御する機能である。
【0045】
次に、デジタル土壌物理性計測装置1の計測手順について、図4で説明する。まず、デジタル土壌物理性計測装置1の駆動に必要な電源を供給するために電源ソケット13に電源ケーブル57と、商用電源の場合は電圧変換用のアダプターを接続する。商用電源のない場所で計測する場合は、蓄電池59を接続する。次に、電源スイッチ9(図3参照)をONにして前記デジタル土壌物理性計測装置1に通電する。
【0046】
次に、デジタル土壌物理性計測装置1は、土壌を計測する前に試料室11に既知の体積を持った校正用の円柱を用いて校正作業をする。前記の校正作業は、前記試料室11に前記校正用の円柱を入れて密閉し表示部5を見ながら操作パネル3で前記校正用の円柱の体積を入力して校正を開始する。前記校正は制御装置21の記憶部(ROM)51にある前記プログラムにより校正が自動的に行われる。前記の自動的な校正を具体的に説明すると、まず、図4に示される、原点センサ39の電気信号に基づいてモータ37を駆動させることにより前記モータ37に取り付けられた歯車35が、ピストン27に取り付けられたギヤ33を特定の開始点に移動させて停止する。次に、電磁弁41を開きエアーシリンダー23内のエアー25と大気の圧力が等しくなることを圧力センサ31が計測して確認する。つまり圧力センサ31がエアーシリンダー23内のエアー25と電磁弁41と配管43と継ぎ手45とエアー出口29で接続されたひとつの空気系の圧力を計測した電気信号が配線47を介して前記制御装置21に備えられたマイクロプロセッサ49に送られて演算処理され、エアー25と大気に圧力差があるか否かを確認する。もし、このときエアー25と大気の圧力にある一定以上の圧力差がある場合は、前記の空気系のどこかに詰り等の問題があるか、もしくは圧力センサ31、原点センサ39、モータ37、ピストン27、ギヤ33、歯車35、制御装置21に故障がある可能性があることになる。すなわち、エアー25と大気の圧力に一定以上の圧力差がある場合は、エラーメッセージを表示部5に表示する。
【0047】
既知の体積を持った校正用の円柱は計測範囲内以下の体積を持つものであればよい。しかし、圧縮や温度変化に対して体積変化のない材質のものがよいので通常は金属製の円柱状のものを使用するが、他の形状・材質のものを使用してもよい。
【0048】
次に、エアー25と大気の圧力に圧力差がないことがマイクロプロセッサ49で確認された後、前記電磁弁41を閉め目標圧力に到達するまで前記空気系の空気を圧縮する。前記圧縮は、前記圧力センサ31からの電気信号を前記マイクロプロセッサ49で演算しながら目標圧力に到達するまで前記モータ37を駆動させる。このとき前記ピストン27と前記ギヤ33が前記エアーシリンダー23内の前記エアー25を前記試料室11に送る方向に動くように、前記モータ37に取り付けられた前記歯車35を回転させる。このとき前記空気系は密閉されているので、前記ピストン27により前記空気系の空気は圧縮され圧力が上昇することになる。前記空気系を圧縮する速度は、前記圧力センサ31で前記空気系の圧力を計測しながら、前記目標圧力に到達する少し手前までは高速(第一速度)で加圧を行い、数秒間加圧を停止して前記空気系の圧力が定常状態になるのを確認してから、徐々に前記目標圧力に到達するまで低速(第二速度)で圧縮を行う。あるいは、目標圧力に到達する少し手前までは高速で圧縮を行い、徐々に圧縮速度を減速させることで前記空気系の圧力を定常状態近づけながら目標圧力に到達させる。即ち、第一速度と第二速度は、それぞれ一定の速度である場合に限定されず、平均値としての第一速度と、平均値としての第二速度が、高速と低速に設定されるようにしても良い。空気系の圧力が目標圧力に到達したことを確認した後、前記ピストン27の到達点と前記の特定の開始点の移動量をマイクロプロセッサ49で演算して記憶部(ROM)51に記憶する。このときの前記ピストン27の移動量は、前記モータ37の総回転角度に置き換えることが出来る。また、使用する前記ピストン27の断面積の値を予め前記プログラムに入れておくことで、前記ピストン27の移動量から前記試料室11に送られた空気の流量を前記マイクロプロセッサ49で演算することができる。つまり、試料室11には既知の体積を持った校正用の円柱が入っているので、前記移動量は、計測原理でいうところのはじめの圧力を一定にして特定の目標圧力まで圧縮するときの容積変化量となり、求める実容積の値は前記の円柱の体積となるので、この関係を計算式として前記記憶部(ROM)51に記憶する。また、前記ピストン27は前記開始点に移動させて停止して、前記電磁弁41を開いて前記空気系を大気開放すると同時に前記表示部5に校正終了を知らせる表示を出す。もし、特定の終了点まで前記ピストン27が移動しても目標圧力に到達しない場合は、前記の空気系のどこかに詰り等の問題があるか、もしくは圧力センサ31、原点センサ39、モータ37、ピストン27、ギヤ33、歯車35、制御装置21に故障がある可能性があることになる。その場合は、エラーメッセージを表示部5に表示する。
【0049】
未知の計測試料の実容積を計測する時は、計測対象の試料を前記試料室11に入れて、密閉し前記表示部5を見ながら前記操作パネル3で計測開始を入力すると前記制御装置21の記憶部(ROM)51にある前記プログラムにより計測が自動的に行われ計測結果が表示部5に表示される。前記の自動的な計測を具体的に説明すると、まず、前記原点センサ39の電気信号に基づいてモータ37を駆動させることにより前記モータ37に取り付けられた歯車35が、ピストン27に取り付けられたギヤ33を特定の開始点に移動させて停止する。次に、電磁弁41を開きエアーシリンダー23内のエアー25と大気の圧力が等しくなることを圧力センサ31が計測して確認する。つまり圧力センサ31がエアーシリンダー23内のエアー25と電磁弁41と配管43と継ぎ手45とエアー出口29で接続されたひとつの空気系の圧力を計測した電気信号が配線47を介して前記制御装置21に備えられたマイクロプロセッサ49に送られて演算処理され、エアー25と大気に圧力差がないことが確認できる。もし、このときエアー25と大気にある一定以上の圧力差がある場合は、前記の空気系のどこかに詰り等の問題があるか、もしくは圧力センサ31、原点センサ39、モータ37、ピストン27、ギヤ33、歯車35、制御装置21に故障がある可能性があることになる。すなわち、エアー25と大気に一定以上の圧力差がある場合は、エラーメッセージを表示部5に表示する。
【0050】
次に、エアー25と大気に圧力差がないことがマイクロプロセッサ49で確認された後、前記電磁弁41を閉め目標圧力に到達するまで前記空気系の空気を圧縮する。前記圧縮は、前記圧力センサ31からの電気信号を前記マイクロプロセッサ49で演算しながら目標圧力に到達するまで前記モータ37を駆動させる。このとき前記ピストン27と前記ギヤ33が前記エアーシリンダー23内の前記エアー25を前記試料室11に送る方向に動くように、前記モータ37に取り付けられた前記歯車35を回転させる。このとき前記空気系は密閉されているので、前記ピストン27により前記空気系の空気は圧縮され圧力が上昇することになる。前記空気系を圧縮する速度は、前記圧力センサ31で前記空気系の圧力を計測しながら、前記目標圧力に到達する少し手前までは高速(第一速度)で加圧を行い、数秒間加圧を停止して前記空気系の圧力が定常状態になるのを確認してから徐々に前記目標圧力に到達するまで低速(第一速度)で圧縮を行うかあるいは、目標圧力に到達する少し手前までは高速で圧縮を行い、徐々に圧縮速度を減速させることで前記空気系の圧力を定常状態近づけながら目標圧力に到達させる。目標圧力に到達したことを確認したら、前記ピストン27の到達点と前記の特定の開始点の移動量をマイクロプロセッサ49で演算して記憶部(ROM)51に記憶する。このときの前記ピストン27の移動量は、前記モータ37の総回転角度に置き換えることが出来る。前記マイクロプロセッサ49は、特定の目標圧力まで圧縮するときの容積変化量から前記校正で求められた計算式で前記試料の実容積値を演算して前記記憶部(ROM)51に記憶する。また、前記ピストン27は前記開始点に移動させて停止して、前記電磁弁41を開いて前記空気系を大気開放すると同時に前記表示部5に計測終了を知らせる表示を出す。もし、特定の終了点まで前記ピストン27が移動しても目標圧力に到達しない場合は、前記の空気系のどこかに詰り等の問題があるか、もしくは圧力センサ31、原点センサ39、モータ37、ピストン27、ギヤ33、歯車35、制御装置21に故障がある可能性があることになる。その場合は、エラーメッセージを表示部5に表示する。
【0051】
デジタル土壌物理性計測装置1は、自動で複数回の繰り返し計測をして、平均値をマイクロプロセッサ49で演算して記憶部(ROM)51に記憶することができる。さらに同一サンプルを複数回計測する時に、前回計測値と比較した値が一定範囲内であればさらなる計測を繰り返すことなく計測をマイクロプロセッサ49で演算して自動判定して終了することもできる。また、計測した計測値をデジタルデータとして前記記憶部(ROM)51に保存するとともに、出力ケーブル62と出力コネクタ15を介して計測データを外部コンピュータ61に出力することができる。
【0052】
デジタル土壌物理性計測装置1の前記制御装置21は、時計機能としてリアルタイムクロック53を備えている。前記リアルタイムクロック53は、表示部5を見ながら操作パネル3で現在時刻・日付を入力することができる。前記時計機能は計測した日時を計測データに付加して、記憶部(ROM)51に保存されることでデータの整理を簡単に行うことができる。
【0053】
ここで説明した実施例は、特定の目標圧力(圧縮圧力)に対する空気容積(圧縮容積)の変化量から実容積を求める方法で記載しているが、ボイル−シャルル(Boyle−Chareles)の法則によれば、圧縮容積を一定にしたときに圧力変化量から実容積を求める計測方法も原理的には全く同等であるためあえて記載していない。
【0054】
デジタル土壌物理性計測装置1の、校正と計測はプログラムにより目標圧力に達するまで加圧する一連の計測作業を全て自動化して制御するので、個人差による計測誤差を防ぐことが可能となり計測精度が向上する。
【0055】
また、目標圧力に到達させる加圧速度を自動制御することが可能であるので、この加圧速度の自動制御は計測精度の向上と計測時間の短縮につながる。
【0056】
さらに、圧力変化量に基づいて次への加圧に移行するか否かを判定するので、計測装置あるいは計測手段の異常を自動で検出することが可能となり、計測を中止あるいは計測者に異常を知らせることができ計測精度が向上する。
【0057】
また、自動で複数回の繰り返し平均値を算出することができるので、計測値計算の時間を短縮するメリットがある。さらに同一サンプルを複数回計測するとき、前回計測値と比較した値が一定範囲内であればさらなる計測を繰り返すことなく計測を自動判定して終了することができるので、計測精度を保ちながら計測時間を短縮するメリットがある。
【0058】
また、計測した計測値をデジタルデータとして保存できるので、データ入力作業が軽減されるとともにデータ解析が容易に行えるメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】デジタル土壌物理性計測装置の外観図である。
【図2】デジタル土壌物理性計測装置の上面図である。
【図3】デジタル土壌物理性計測装置の背面図である。
【図4】デジタル土壌物理性計測装置の接続状態を示す構成図である。
【図5】デジタル土壌物理性計測装置の機能を示すブロック図である。
【符号の説明】
1.デジタル土壌物理性計測装置
3.操作パネル
5.表示部
7.筐体
9.電源スイッチ
11.試料室
13.電源ソケット
15.出力コネクタ
17.入力コネクタ
21.制御装置
23.エアーシリンダー
25.エアー
27.ピストン
29.エアー出口
31.圧力センサ
33.ギヤ
35.歯車
37.モータ
39.原点センサ
41.電磁弁
43.配管
45.継ぎ手
47.配線
49.マイクロプロセッサ(CPU)
51.記憶部
53.リアルタイムクロック
55.アダプター
57.電源ケーブル
59.蓄電池
61.外部コンピュータ
62.出力ケーブル
63.上位コンピュータ
64.入力ケーブル
65.加圧手段
67.圧力計測手段
69.流量計測手段
71.加圧手段駆動装置
101.加圧速度調整手段
103.加圧中断手段
105.移行判定手段
107.平均値算出手段
109.反復手段
111.出力手段
113.計測値保存手段
115.計測制御プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測用の試料室と、前記試料室を加圧する加圧手段と、前記試料室内の圧力を計測する圧力計測手段と、加圧に用いる空気の流量を計測する流量計測手段と、前記加圧手段を駆動する加圧手段駆動装置と、前記試料室の内圧に基づいて前記加圧手段駆動装置を制御する制御装置とを備え、前記試料室が目標圧力に達するまでの空気流量に基づいて前記試料室内の試料容積を計測するデジタル土壌物理性計測装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記加圧手段駆動装置を高速から低速に変化するように制御する加圧速度調整手段を備えた請求項1に記載のデジタル土壌物理性計測装置。
【請求項3】
前記加圧速度調整手段は、初期から一定の中間圧力までを加圧する第一速度と前記中間圧力から目標圧力までを加圧する第二速度で前記加圧手段駆動装置を制御することを特徴とする請求項2に記載のデジタル土壌物理性計測装置。
【請求項4】
前記制御装置は、途中で一時的に加圧を中断する加圧中断手段を備えた請求項1から請求項3のいずれかに記載のデジタル土壌物理性計測装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記加圧中断手段による加圧中断中の圧力変化量に基づいて次への加圧に移行するか否かを判定する移行判定手段を備えた請求項4に記載のデジタル土壌物理性計測装置。
【請求項6】
前記移行判定手段は、加圧中断中の圧力低下を検出した場合に計測の中止を決定することを特徴とする請求項5に記載のデジタル土壌物理性計測装置。
【請求項7】
前記制御装置は、複数回の繰り返し計測の平均値を算出する平均値算出手段を備えた請求項1から請求項6のいずれかに記載のデジタル土壌物理性計測装置。
【請求項8】
前記制御装置は、複数回の繰り返し計測値および前記平均値を保存する計測値保存手段を備えた請求項7に記載のデジタル土壌物理性計測装置。
【請求項9】
前記制御装置は、複数回の繰り返し計測における前回の計測値と今回の計測値を比較してその差が一定の範囲内となるまで計測を繰り返す反復手段を備えた請求項1から請求項8に記載のデジタル土壌物理性計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−217156(P2010−217156A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92485(P2009−92485)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(394008846)大起理化工業株式会社 (10)