説明

デブリフィルタ

【課題】低圧力損失で冷却水中の異物を捕獲可能なデブリフィルタの提供。
【解決手段】複数の同一形状の屈曲板と、複数の同一形状の第1格子板と、複数の同一形状の第2格子板とを備え、第1格子板及び第2格子板は短冊状であり、屈曲板は短冊状の第1傾斜板と第1傾斜板の長手方向に沿う長手縁辺を共有して短冊状の第2傾斜板とを有し、平行配列の複数の屈曲板における共有の長手縁辺とは反対側の第1長手縁辺と第1格子板の長手縁辺とを交差させて屈曲板と第1格子板とを固定し、複数の屈曲板における共有の長手縁辺とは反対側の第2長手縁辺と第2格子板の長手縁辺とを交差させて屈曲板と第2格子板とを固定し、前記屈曲板に固定された前記第1格子板の、前記第2格子板に向う長手縁辺と、前記屈曲板に固定された前記第2格子板の、前記第1格子板に向う長手縁辺とが非接触状態であるデブリフィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はデブリフィルタに関し、流通する冷却水の圧力損失が小さく、冷却水中に存在する異物を捕獲することのできるデブリフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来においては、燃料集合体に装荷される様々なデブリフィルタが開発されてきた。
【0003】
特許文献1には、「・・・破片捕取装置であって、該破片捕取装置は、一対の重ね合わせた板を含んでおり、該板の各々は、実質的に同じ寸法、形状及びピッチの複数の孔を有しており、前記一対の板のうちの一方の板の前記孔は、該一対の板のうちの他方の板の前記孔からずれている、破片捕取装置とを備えた原子炉用の下部タイプレート・アセンブリ」が記載されている(特許文献1の請求項1及び図10〜14参照。)。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された破片捕取装置にあっては、孔を有する2枚の板をずらして重ね合わせているので、冷却水の流路を狭めているに過ぎず、流通方向に沿って直線状の異物が流通している場合は、板に形成されている孔から他の板に形成されている孔へと直線状の異物が通過する可能性があった。
異物が通過する可能性を低減するために、冷却水の流路を直線状にしないという改良が加えられてきた。
【0005】
例えば特許文献2には、「・・・原子炉用の燃料集合体であって、この燃料集合体は冷却材中に含まれる固体異物を燃料集合体の入口側で捕捉するフィルタを備え、このフィルタに形成された複数の貫通孔は、入口から出口を直線で見通せない曲がり部を有し、さらにこれらの複数の貫通孔を流路開口面において千鳥格子状に配列したことを特徴とする燃料集合体」が記載されている(特許文献2の請求項1、図3及び5参照。)。
【0006】
更に、特許文献3には、「・・・、前記異物フィルタが、複数の第1平板とこれらの前記第1平板と直交する方向に配置された複数の第2平板を組合せて構成された格子を含む一対の平板集合体を備え、それぞれの平板集合体において、各前記第1平板が前記下部タイプレートの軸方向と並行に配置され、各前記第2平板が前記軸方向に対して同じ向きに傾斜して配置され、前記一対の平板集合体のうちの一方である第1の平板集合体が、前記軸方向において、他方の第2の前記平板集合体よりも前記燃料棒側に配置されており、隣り合う前記第2平板間に形成される流路が、前記軸方向に対して斜めになるように、その入口から出口まで真っ直ぐに形成されており、前記第2平板集合体に形成される前記流路が、前記第1平板集合体に形成される前記流路と逆方向に傾斜されており、前記第1平板集合体の前記第1平板の下端が前記第2平板集合体の前記第1平板の上端と接触しており、前記第2平板集合体の前記流路の出口における前記第2平板の位置が、前記第1平板集合体の前記流路の入口におけるほぼ中央に配置され、前記第1平板集合体の前記流路の入口における第2平板の位置が、前記第2平板集合体の前記流路の出口におけるほぼ中央に配置されたことを特徴とする燃料集合体」が記載されている(特許文献3の請求項1及び図3〜5参照。)。
【0007】
しかしながら、特許文献2及び3に記載されているような、流路を屈折させる構造にあっては、流通する冷却水の圧力損失が大きくなる。特許文献1のように孔を設けた板体を2枚重ねて、更に流路を変形するという技術的思想としては、例えば特許文献4に記載された発明を挙げることができる。
【0008】
特許文献4には、「多数の流水孔を有する下部ノズルのアダプタプレート上面に支持格子を近接させ、この支持格子の格子板にて上記流水孔出口を細分化してなる原子燃料集合体において、上記流水孔の軸角度を上記支持格子の流路方向に対して傾斜させ、かつ隣合う列の流水孔同士の傾きを互いに逆方向となしたことを特徴とする原子燃料集合体」が記載されている(特許文献4の請求項1、図5及び6参照。)。
【0009】
しかしながら、圧力損失の充分な低減と異物の捕獲とを両立することのできるデブリフィルタは無かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−240680号公報
【特許文献2】特開2004−317522号公報
【特許文献3】特許第3977969号
【特許文献4】特開平8−105988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明が解決しようとする課題は、流通する冷却水の圧力損失が小さく、冷却水中に存在する異物を確実に捕獲することのできるデブリフィルタを提供することである。
【0012】
この発明が解決しようとする別の課題は、設置領域の縮小を図ることのできるデブリフィルタを提供することである。
【0013】
この発明が解決しようとする他の課題は、製造工程の低減を図ることのできるデブリフィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するための手段として、
(1)複数の同一形状をした屈曲板と、複数の同一形状をした第1格子板と、複数の同一形状をした第2格子板とを備えるデブリフィルタであって、
前記第1格子板は、短冊状に形成された板であり、
前記第2格子板は、短冊状に形成された板であり、
前記屈曲板は、短冊状に形成された第1傾斜板と前記第1傾斜板の長手方向に沿う長手縁辺を共有して短冊状に形成された第2傾斜板とを有し、
第1傾斜面同士及び第2傾斜面同士が互いに平行になるように配列された複数の屈曲板における前記第1傾斜板の第2傾斜板と共有する長手縁辺とは反対側の第1長手縁辺と、前記第1格子板の長手方向に沿う長手縁辺とが交差するように、前記屈曲板と前記第1格子板とが固定され、
前記複数の屈曲板における前記第2傾斜板の第1傾斜板と共有する長手縁辺とは反対側の第2長手縁辺と、前記第2格子板の長手方向に沿う長手縁辺とが交差するように、前記屈曲板と前記第2格子板とが固定され、
前記屈曲板に固定された前記第1格子板の、前記第2格子板に向う長手縁辺と、前記屈曲板に固定された前記第2格子板の、前記第1格子板に向う長手縁辺とが非接触状態であることを特徴とするデブリフィルタ、
(2)前記第1格子板は、その板の長手方向に沿う長手縁辺に、長手方向に対して斜めに形成された複数の第1傾斜切目を有してなり、
前記第2格子板は、その板の長手方向に沿う長手縁辺に、長手方向に対して斜めに形成された複数の第2傾斜切目を有してなり、
前記屈曲板の前記第1長手縁辺が前記第1格子板の第1傾斜切目に挿入及び固定され
前記屈曲板の前記第2長手縁辺が前記第2格子板の第2傾斜切目に挿入及び固定されて成る(1)に記載のデブリフィルタ、
(3)前記屈曲板は、前記第1長手縁辺に、前記長手方向に直交する方向に形成された複数の第1切目を有し、かつ、前記第2長手縁辺に、前記長手方向に直交する方向に形成された複数の第2切目を有し、
前記複数の屈曲板における前記第1切目と前記第1格子板における前記第1傾斜切目とが噛み合うように組み合わされ、前記複数の屈曲板における前記第2切目と前記第2格子板における前記第2傾斜切目とが噛み合うように組み合わされて成る(2)に記載のデブリフィルタ、
(4)屈曲板に形成される第1切目の数が第1格子板の数と同じであり、屈曲板に形成される第2切目の数が第2格子板の数と同じであり、屈曲板の数が第1傾斜切目の数及び/又は第2傾斜切目の数と同数である(3)に記載のデブリフィルタ、及び、
(5)前記屈曲板は、前記第1長手縁辺に、前記長手方向に直交する方向に形成された複数の第1切目を有し、かつ、前記第2長手縁辺に、前記長手方向に直交する方向に形成された複数の第2切目を有し、
前記第1格子板の長手縁辺が前記屈曲板の前記第1傾斜切目に挿入及び固定され、
前記第2格子板の長手縁辺が前記屈曲板の前記第2傾斜切目に挿入及び固定されて成る(1)に記載のデブリフィルタを挙げることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によると、第1格子板の長手縁辺と第2格子板の長手縁辺とが非接触であることにより、屈曲板のみで形成されて成る流路、換言すると断面積が冷却水の流入口よりも大きい流路によって圧力損失を低減することができると共に、屈曲板に沿って冷却水を整流することができるので、流通する冷却水の圧力損失が小さいデブリフィルタを提供することができる。更に、この発明によると、冷却水の流入する部位と流出する部位に第1格子板及び第2格子板と屈曲板とにより断面積の小さい流路が形成されていることによって、冷却水が流入してから流出するまでに2度の異物を捕集する機会が生じるので、異物を確実に捕集可能なデブリフィルタを提供することができる。
【0016】
また、この発明によると、第1格子板及び第2格子板、並びに/又は屈曲板に切目が設けられており、切目と長手縁辺とが又は切目と切目とが組合せられることにより、切目を設けない場合に比べて、冷却水が流入する部位から流出する部位までの寸法を縮小することができるので、設置領域の小さいデブリフィルタを提供することができる。
【0017】
更に、この発明によると、前記切目の数と屈曲板、第1格子板及び第2格子板の数とを同数にすることによって、各部材の枚数と切目の数との組合せを考慮する必要がなくなるので、製造工程の少ないデブリフィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、この発明に係るデブリフィルタの一実施態様を示す平面図である。
【図2】図2は、図1に示したデブリフィルタの正面図である。
【図3】図3は、図1に示したデブリフィルタの一部拡大斜視図である。
【図4】図4は、図1に示したデブリフィルタの俯瞰図である。
【図5】図5は、この発明に係るデブリフィルタの他の実施態様を示す俯瞰図である。
【図6】図6は、この発明に係るデブリフィルタにおける第1格子板の一実施態様を示す平面図である。
【図7】図7は、この発明に係るデブリフィルタにおける屈曲板の一実施態様を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下においては、この発明に係るデブリフィルタの一実施態様を、図面を参照しつつ説明する。先ず、図1〜3には、デブリフィルタの向きをそれぞれ変えて示した。なお、図1は、デブリフィルタにおいて、後述の第1格子板と第2格子板との長手方向に沿った面を示している。図2は、デブリフィルタにおいて、後述の屈曲板の長手方向に沿った面を示している。図3は、デブリフィルタの斜視図を示している。デブリフィルタは、燃料集合体における下部タイプレート又は燃料支持金具側面の冷却材流入口に炉心オリフィスに代えて付設することにより、燃料集合体内を流通する冷却水中に混入している異物を捕集することができる。
【0020】
図1に示すデブリフィルタ1は、複数の同一形状をした屈曲板2と、複数の同一形状をした第1格子板3と、複数の同一形状をした第2格子板4とを備える。
【0021】
第1格子板3と第2格子板4とは、それぞれ短冊状に形成された板体である。また、屈曲板2は、短冊状に形成された第1傾斜板5と、第1傾斜板5の長手方向に沿う長手縁辺6を共有して短冊状に形成された第2傾斜板7とを有する。
【0022】
なお、屈曲板2の第1傾斜板5及び第2傾斜板7の各部位の寸法及び第1傾斜板5と第2傾斜板7とが成す角度等は、異物の捕集能力及び冷却水の圧力損失等を考慮して、好適な数値を選定する。更に、第1格子板3の短辺、長辺及び厚みの各寸法と、第2格子板4の短辺、長辺及び厚みの各寸法とは、同一に形成されている。よって、製造時に1種類の短冊状の板体を製造することにより、第1格子板3と第2格子板4とを得ることができる。もっとも、この発明に係るデブリフィルタにおいて、第1格子板と第2格子板との各部位の寸法は、異物の捕集能力及び冷却水の圧力損失等を考慮して、同一にしなくとも良い。
【0023】
この発明に係るデブリフィルタにおいて、屈曲板は、この発明の目的を達成することができるように、屈曲して成る板体であれば、その製造方法に制限なく製造されることができる。具体的には、屈曲板は、例えば長手縁辺と短手縁辺とを有する一枚の矩形板を一方の短手縁辺の中点と他方の短手縁辺の中点とを結ぶ仮想的な長手方向の線において山折りに、又は谷折りに折り曲げることにより、第1傾斜板と第2傾斜板とを有する屈曲した板体として形成される。第1傾斜板と第2傾斜板とは、矩形板における折り曲げられた箇所を、長手縁辺として共有している。屈曲板は、このように前記矩形板を屈曲することにより形成することができるが、2枚の短冊状の板が相互に傾斜しているように、2枚の短冊状の板における長手縁辺同士を溶着等によって結合することにより、長手縁辺が共有された第1傾斜板と第2傾斜板とを有する屈曲板としてもよい。屈曲板における第1傾斜板における短手方向の縁辺と第2傾斜板における短手方向の縁辺とは同じ寸法で有っても異なる寸法であってもよい。
【0024】
この発明に係るデブリフィルタにおいて、複数の屈曲板が、第1傾斜板同士及び第2傾斜板同士が互いに平行になるように配列されている。
デブリフィルタを形成する全ての屈曲板における第1傾斜板及び第2傾斜板が同じ形状を有し、しかも全ての屈曲板がいずれも、第1傾斜板と第2傾斜板とのなす角度を同じにしている場合には、第1傾斜板同士及び第2傾斜板同士が互いに平行になるように、全ての屈曲板を配列することは容易である。
デブリフィルタを形成する全ての屈曲板における第1傾斜板が全て同じ形状であり、また全ての屈曲板における第2傾斜板が全て同じ形状であり、全ての屈曲板における第1傾斜板の大きさと第2傾斜板の大きさとが相違するときには、同じ大きさの第1傾斜板が平行に、また同じ大きさ意の第2傾斜板が平行に配列されるように、複数の屈曲板の方向性を選択してこれらを配列する必要がある。
ともかく、第1傾斜板5同士及び第2傾斜板7同士が互いに平行になるように配列された複数の屈曲板2において、前記長手縁辺6とは反対側の第1長手縁辺8と、第1格子板3の長手方向に沿う長手縁辺9とが交差するように、屈曲板2と第1格子板3とが固定されている。更に言うと、図1〜3に示すように、屈曲板2及び第1格子板3は、屈曲板2の第1長手縁辺8と第1格子板3の長手縁辺9とが直交するように、屈曲板2と第1格子板3とが固定されている。
【0025】
また、複数の屈曲板2において、第2格子板4の長手縁辺6とは反対側の第2長手縁辺10と、第2格子板4の長手縁辺12とが交差するように、屈曲板2と前記第2格子板4とが固定されている。更に、図1〜3に示すように、屈曲板2及び第2格子板4は、屈曲板2の第2長手縁辺10と第2格子板4の長手縁辺12とが直交するように、屈曲板2と第2格子板4とが固定されている。
【0026】
デブリフィルタ1においては、図1〜3に示すように、第1格子板3の長手縁辺9と第2格子板4の長手縁辺12とが非接触、つまり隔絶した状態となって配置される。このような配置構成であると、図1において、下方から上方に向けて冷却水が流通する場合に、屈曲板2と第2格子板4とにより形成される冷却水流入用の流路、及び、屈曲板2と第1格子板3とにより形成される冷却水流出用の流路は、隣接する屈曲板2の第1傾斜板5同士及び第2傾斜板7同士で形成される流路に比べると、流路の断面積が小さい。したがって、デブリフィルタ1には、デブリフィルタ1を通過する冷却水の流路の断面積が相対的に小さい部分と、相対的に大きい部分とが存在していることになる。
【0027】
なお、以下においては、断面積が小さい流路であって冷却水がデブリフィルタ1内に流入する際に通過する流路、すなわち第2格子板4と屈曲板2の第2傾斜板7とにより形成される流路を、流入路13と称することがある。また、断面積が大きい流路、すなわち流路の形成に第1格子板3及び第2格子板4が寄与しておらず、屈曲板2のみで形成される流路を、屈曲流路部14と称することがある。更に、断面積が小さい流路であって冷却水がデブリフィルタ1外に流出する際に通過する流路、すなわち第1格子板3と屈曲板2の第1傾斜板5とにより形成される流路を、流出路15と称することができる。
【0028】
ここで、冷却水がデブリフィルタ1内を流通するときの作用について、説明する。先ず、冷却水は、流入路13、屈曲流路部14、及び流出路15を、この順番に流通することになる。冷却水は、デブリフィルタ1を通過する前は流入路13、屈曲流路部14及び流出路15のいずれに比べても断面積が大きい流路を流通していることが多いので、冷却水が流入路13に流入したときに圧力損失が大きくなる。しかしながら、冷却水はデブリフィルタ1外の流路よりは断面積が小さいが、流入路13よりは断面積が大きい屈曲流路部14において大幅に圧力損失が小さくなる。更に、屈曲流路部14は、冷却水の流通が完全には自由になっておらず、屈曲板2によって整流作用が働く。屈曲流路部14内部においては、流入部13から流出部15に至るまで、整流作用によって冷却水が円滑に流通する。屈曲流路部14において整流作用が働いているので、屈曲流路部14から流出部15内に冷却水が流通しても圧力損失は大きくならない。最後に、冷却水は、小さい圧力損失を維持しつつ、流出部15を通ってデブリフィルタ1外に流出する。結果として、冷却水が断面積の小さい流路を流通することにより圧力損失の増大は避けられなかった従来のデブリフィルタに比べて、この発明に係るデブリフィルタは、屈曲板により形成される屈曲流路部が設けられているので、圧力損失を大幅に低減し、更にその小さい圧力損失を維持しつつ冷却水を流通させることができる。
【0029】
更に、デブリフィルタ1は、断面積の小さい流路が流入路13及び流出路15と2つ設けられているので、冷却水中に含まれる異物を捕集することのできる機会が2回ある。したがって、断面積の小さい流路を1つ設けて成る従来のデブリフィルタに比べて、デブリフィルタ1は異物をより確実に捕集することができる。
【0030】
この発明に係るデブリフィルタにおいて、屈曲板、第1格子板及び第2格子板の材料としては、冷却水によって溶解する等の変質を生じることがなく、異物によって不可逆的な破損を生じない材料によって形成されていることが好ましく、例えば金属、更に言うとステンレス、及びインコネル等を挙げることができる。
【0031】
デブリフィルタ1を第1格子板3の側から俯瞰した図を、図4に示す。図4に示すように、屈曲部2の第1長手縁辺8と第1格子板3の長手縁辺とが直交するように、屈曲部2と第1格子板3とが配置されている。この発明においては、屈曲板の第1長手縁辺と第1格子板の長手縁辺とは交差していれば良いので、例えば図5に示すように、屈曲部21の第1長手縁辺81と第1格子板31の長手縁辺とが傾斜して交差するように、屈曲部21と第1格子板31とが配置されている態様であっても良い。屈曲部の第1長手縁辺と第1格子板の長手縁辺との交差態様について、デブリフィルタ1及びデブリフィルタ11のいずれを採用するかは、デブリフィルタが設置される燃料集合体内を流通する冷却水中に含まれる異物の形状及び大きさに応じて決定すれば良い。
【0032】
また、屈曲板と第1格子板との固定、及び屈曲板と第2格子板との固定は、燃料集合体内を流通する冷却水から受ける圧力によって屈曲板、第1格子板及び第2格子板が分離しない程度に固定されていれば良く、例えばそれぞれの接点を溶接する等して固定する態様を挙げることができる。
【0033】
この発明に係るデブリフィルタにおいて、屈曲板の第1長手縁辺と第1格子板の長手縁辺又は第2格子板の長手縁辺との固定態様として、例えば単に縁辺同士を点接触させて溶接して固定する態様であっても良いが、第1格子板及び第2格子板、並びに/又は屈曲板に切目を設けて、切目と各部材とを又は切目同士を組合せて固定する態様であっても良い。なお、図1〜5に示した実施態様は、いずれも屈曲板、第1格子板、及び第2格子板の全てに切目を設けて、切目同士が噛み合うように組合せて固定する態様である。各部材に切目を設ける態様について以下に説明する。
【0034】
図6には、図1〜4に示したデブリフィルタ1における第1格子板3のみを示した。
【0035】
第1格子板3は、第1格子板3の長手方向に沿う長手縁辺9に、長手方向に対して斜めに形成された複数の第1傾斜切目16を有して成る。前記デブリフィルタ1における第1格子板3及び第2格子板4は、各寸法が同一であるので、図6に示すように形成された第1格子板3を第2格子板4としても用いることができる。第1格子板と第2格子板との寸法を変えて作成する場合は、図6には示していないが、第2格子板4の長手縁辺12に、長手方向に対して斜めに形成された複数の第2傾斜切目を形成すると良い。
【0036】
仮に、第1格子板3及び第2格子板4にのみ切目を設けた場合、屈曲板2の第1長手縁辺8が第1格子板3の第1傾斜切目16に挿入され、相互の摩擦力で固定されることにより、流出路15が形成される。また、屈曲板2の第2長手縁辺10が第2格子板4の第2傾斜切目に挿入された上で固定されることにより、流入路13が形成される。
【0037】
第1傾斜切目及び第2傾斜切目を設けて、第1傾斜切目及び第2傾斜切目に屈曲板の第1長手縁辺及び第2長手縁辺をそれぞれ挿入及び固定することにより、切目を設けずに単に縁辺同士を点接触させて固定する態様に比べて、流入路から流出路までの寸法が小さくなるので、小型のデブリフィルタに形成することができ、狭い設置領域にこの小型のデブリフィルタを配置することができる。
【0038】
図7には、図1〜4に示したデブリフィルタ1における屈曲板2を示した。
【0039】
屈曲板2は、第1長手縁辺8に、屈曲板2の長手方向に直交する方向に形成された複数の第1切目17を有し、かつ、第2長手縁辺10に複数の第1切目17と同一寸法及び同数の第2切目18を有している。なお、この発明に係るデブリフィルタにおいては、第1切目及び第2切目の寸法及び数は同一であることが必須ではない。もっとも、各切目の寸法及び数が同一であると、第1格子板と第2格子板とが同一寸法で製造されている場合には、屈曲板の2つの長手縁辺に1種類の切目を形成するだけで済むので、製造工程の低減を図ることができる。
【0040】
仮に、屈曲板2にのみ切目を設けた場合、第1格子板3の長手縁辺9が屈曲板2の第1切目17に挿入された上で固定されることにより、流出路15が形成されることになる。また、第2格子板4の長手縁辺12が屈曲板2の第2切目18に挿入され、相互の摩擦力で固定されることにより、流入路13が形成されることになる。
【0041】
第1切目及び第2切目を設けて、第1切目及び第2切目に第1格子板の長手縁辺及び第2格子板の長手縁辺をそれぞれ挿入及び固定することにより、切目を設けずに単に縁辺同士を点接触させて固定する態様に比べて、流入路から流出路までの寸法が小さくなるので、小型のデブリフィルタに形成することができ、狭い設置領域にこの小型のデブリフィルタを配置することができる。
【0042】
屈曲板、第1格子板及び第2格子板に切目を設ける更に別の態様としては、屈曲板、第1格子板及び第2格子板のいずれにも切目を設けて、屈曲板における前記第1切目と前記第1格子板における前記第1傾斜切目とが噛み合うように組み合わされて固定され、屈曲板における前記第2切目と前記第2格子板における前記第2傾斜切目とが噛み合うように組み合わされて固定される態様を挙げることができる。
【0043】
この態様も上述の切目を設けて成る態様と同様に、切目を設けずに単に縁辺同士を点接触させて固定する態様に比べて、流入路から流出路までの寸法が小さくなるので、小型のデブリフィルタに形成することができ、狭い設置領域にこの小型のデブリフィルタを配置することができる。
【0044】
なお、各部材に切目を設ける場合に、屈曲板に形成される第1切目の数が第1格子板の数と同じであり、屈曲板に形成される第2切目の数が第2格子板の数と同じであり、屈曲板の数が第1傾斜切目の数及び/又は第2傾斜切目の数と同数である態様であるのが好ましい。この態様によると、部材の枚数だけ溝を形成すれば良いので、第1格子板と第2格子板とを同一寸法で一挙に作製することができると共に、屈曲板の第1長手縁辺と第2長手縁辺とにおいて切目の数を変える必要が無いので、デブリフィルタの製造工程の簡素化を図ることができる。
【符号の説明】
【0045】
1、11 デブリフィルタ
2、21 屈曲板
3 第1格子板
4 第2格子板
5、51 第1傾斜板
6、61、9、12 長手縁辺
7 第2傾斜板
8、81 第1長手縁辺
10 第2長手縁辺
13 流入部
14 屈曲流路部
15 流出部
16 第1傾斜切目
17 第1切目
18 第2切目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の同一形状をした屈曲板と、複数の同一形状をした第1格子板と、複数の同一形状をした第2格子板とを備えるデブリフィルタであって、
前記第1格子板は、短冊状に形成された板であり、
前記第2格子板は、短冊状に形成された板であり、
前記屈曲板は、短冊状に形成された第1傾斜板と前記第1傾斜板の長手方向に沿う長手縁辺を共有して短冊状に形成された第2傾斜板とを有し、
第1傾斜面同士及び第2傾斜面同士が互いに平行になるように配列された複数の屈曲板における前記第1傾斜板の、第2傾斜板と共有する長手縁辺とは反対側の第1長手縁辺と、前記第1格子板の長手方向に沿う長手縁辺とが交差するように、前記屈曲板と前記第1格子板とが固定され、
前記複数の屈曲板における前記第2傾斜板の、第1傾斜板と共有する長手縁辺とは反対側の第2長手縁辺と、前記第2格子板の長手方向に沿う長手縁辺とが交差するように、前記屈曲板と前記第2格子板とが固定され、
前記屈曲板に固定された前記第1格子板の、前記第2格子板に向う長手縁辺と、前記屈曲板に固定された前記第2格子板の、前記第1格子板に向う長手縁辺とが非接触状態であることを特徴とするデブリフィルタ。
【請求項2】
前記第1格子板は、その板の長手方向に沿う長手縁辺に、長手方向に対して斜めに形成された複数の第1傾斜切目を有してなり、
前記第2格子板は、その板の長手方向に沿う長手縁辺に、長手方向に対して斜めに形成された複数の第2傾斜切目を有してなり、
前記屈曲板の前記第1長手縁辺が前記第1格子板の第1傾斜切目に挿入及び固定され
前記屈曲板の前記第2長手縁辺が前記第2格子板の第2傾斜切目に挿入及び固定されて成る請求項1に記載のデブリフィルタ。
【請求項3】
前記屈曲板は、前記第1長手縁辺に、前記長手方向に直交する方向に形成された複数の第1切目を有し、かつ、前記第2長手縁辺に、前記長手方向に直交する方向に形成された複数の第2切目を有し、
前記複数の屈曲板における前記第1切目と前記第1格子板における前記第1傾斜切目とが噛み合うように組み合わされ、前記複数の屈曲板における前記第2切目と前記第2格子板における前記第2傾斜切目とが噛み合うように組み合わされて成る請求項2に記載のデブリフィルタ。
【請求項4】
屈曲板に形成される第1切目の数が第1格子板に形成される第1傾斜切目の数と同じであり、屈曲板に形成される第2切目の数が第2格子板に形成される第2傾斜切目の数と同じであり、屈曲板の数が第1傾斜切目の数と同数である前記請求項3に記載のデブリフィルタ。
【請求項5】
前記屈曲板は、前記第1長手縁辺に、前記長手方向に直交する方向に形成された複数の第1切目を有し、かつ、前記第2長手縁辺に、前記長手方向に直交する方向に形成された複数の第2切目を有し、
前記第1格子板の長手縁辺が前記屈曲板の前記第1傾斜切目に挿入及び固定され、
前記第2格子板の長手縁辺が前記屈曲板の前記第2傾斜切目に挿入及び固定されて成る請求項1に記載のデブリフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−118012(P2012−118012A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270341(P2010−270341)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000165697)原子燃料工業株式会社 (278)