説明

データ処理装置、方法及びプログラム

【課題】選択リストを条件として指定し時系列データ群から所定最大数までの新着順リストを得る処理について、冗長なデータ保持無しに負荷を軽減する。
【解決手段】選択リストに基づく新着順リストの最大数にあたる発生時刻を最古時刻として、選択リストごとに記憶しておくことにより、次回その選択リストについて新着順リストを得るときは、対応する最古時刻までに処理対象を限定できる。このため、選択リストを条件として指定し時系列データ群から所定最大数までの新着順リストを得る処理について、冗長なデータ保持無しに負荷を軽減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時系列データの抽出処理に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、大規模データを扱うデータベースの技術が多様な分野で活用されているが(例えば、特許文献1参照)、その一分野として、Twitter(非特許文献1参照)等のミニブログがある。
【0003】
その典型例では、ミニブログの各ユーザがPC等のクライアントシステムからサーバに、所定文字数までのメッセージ(「つぶやき」「ツイート」などと呼ばれる)を入力することで投稿者として投稿すると、投稿された各メッセージは時間順の時系列データとして蓄積される。各ユーザが、自分がメッセージを読みたい他の投稿者を「お気に入り」のように選択リストに対象者として登録(フォロー)しておくと、以降のサーバアクセス時や更新時に、蓄積されている時系列データの中から、対象者が投稿したメッセージがデータ抽出され、時系列(タイムライン)の形で表示される。
【0004】
より一般的にいえば、上記のような抽出の対象となる時系列データでは、時間の経過とともに任意のタイミングでレコード(例えばメッセージ)が追加され得る(追加は必須ではない)。メッセージは、発生時刻と、属性として投稿者(属性値は例えば「甲」又は「乙」など)とを伴う。抽出条件として、メッセージが持つ属性の取りうるいくつかの値(例えば投稿者が甲と丙など)を選択し保持している投稿者の選択リストが、ユーザごとに存在する。抽出結果のソート基準としては、選択リストに該当する全てのメッセージが発生時刻の最新順にソートされ、所定の最大数まで新着順リストとして表示される。
【0005】
上記のようなミニブログのサービスで、例えば、10万人の投稿者がいて、投稿者あたりのメッセージすなわちつぶやきが1000件あり、お気に入りの表示対象者を100人登録しているユーザに、投稿時刻すなわち発生時刻の新着順で表示対象者のつぶやきをリストとして表示する場合を想定する。この場合、つぶやき総数1億件から抽出される100人分のつぶやき

つぶやき1000件×対象者数100人=10万件

のうち、新着を所定の最大数500件、表示するケースを考える。
【0006】
このような処理を効率よく行う一手法として、データベース(DB)にインデックスという検索用辞書を作成するアプローチが存在する。このインデックスは、特に「選択」および「ソート」の2つの用途で処理を高速化させるために利用できる。インデックスの構築には多くの場合、B−Tree(バランス木)が利用される。B−Treeは、保持するリーフ(レコード)の数をnとした場合に、木構造のルートからリーフまで到達するのにlog(n)オーダ前後の回数でたどりつけることを全てのリーフに対して保証する。このことにより、インデックスはリーフを「選択」する処理の高速化に使用できる。また、木構造であるがゆえに、枝探索アルゴリズムを使うことで「ソート」された順序にリーフを取得することができる。
【0007】
インデックスはDBのレコードに対して、特定の属性を基準に生成される。この基準はレコードに含まれる属性に基づくが、単一の属性でも良いし、複数の属性でも良い。例えば、ある属性1と属性2という順序を基準としてインデックスを作成した場合、属性1が同一のレコードは、同一のノードの下の部分木に属し、更に属性2の値に従ってリーフが割り当てられる。このインデックスを枝探索することで、属性1、属性2の順序でソートされたレコードが取得できる。例えばトランプで属性1をスート(ハート、ダイヤなど)、属性2を数字とした場合、スペードのエース、スペードの2、スペードの3…クラブのエース、クラブの2、クラブの3…といった順序であれば効率よくレコードを取得できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Twitter, Inc.、「Twitter」、[online]、[2010年6月9日検索]、インターネット〈URL: http://twitter.com/>
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平3−108064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記のような従来技術では、大量のデータからある第一の条件(例えば投稿者)で抽出したデータを、第一の条件とは関連性がない別のソート基準(例えば時刻順すなわち投稿順)でソートして所定の最大数まで表示したいという一般的なケースで、処理負荷が増大する場合があった。特に、レコードが任意のタイミングで発生するとき、該当があれば所定最大数まで表示させるという条件を満たすには、遡って検索すべき時間的範囲を判断して限定できないため負荷が過大になる問題があった。
【0011】
例えば、前述のミニブログのサービスで、投稿時刻の最新順にお気に入り投稿者のメッセージをリスト表示する場合、(1)「投稿時刻」、(2)「投稿者」という順序の属性で、上記のインデックスを作成すれば、投稿時刻順にソートされ、お気に入り投稿者に該当するつぶやきを効率よく取得できるように思われるが、実はそうではない。なぜなら、つぶやきは10万人のユーザがそれぞれ1000件投稿しているため、1億件のつぶやきを先頭から順番に検索していくことになるからである。
【0012】
したがって、例えば仮に、サービス以来経過した期間の半ばあたりでつぶやきをやめてしまった投稿者だけをお気に入りしているユーザがいたとしたら、そのユーザのお気に入りの新着を表示するためには、現在から過去に向かってインデックスを5000万件ほど辿らなくてはならず、過大な負荷となる。
【0013】
逆に、(1)「投稿者」、(2)「投稿時刻」という属性順でインデックスを作成した場合を考えると、前述のとおり、お気に入り100件についてつぶやき1000件、合わせて10万件のつぶやきを取得することになる。しかし、インデックスの最初の属性は「投稿者」となっている。ひとりの投稿者であれば、その中で2番目の属性の「投稿時刻」に基づいて順番にインデックスからつぶやきを取得できるが、お気に入りが複数件あれば、取得してきたつぶやきを時刻順に再度ソートしなければ新着順に出すことはできない。つまり、10万件をソートする必要が発生する。これも非常に負荷の高い処理である。
【0014】
他のアプローチとして、ユーザごとの表示対象者を指定している選択リストごとに、選択リストに該当する新着順リストそのものを最大数N件ずつ保持することも考えられる。しかし、これは、ユーザごとにお気に入りの投稿者の最新のつぶやきを例えば500件ずつ保持することを意味し、そのデータが冗長で、必要な記憶容量の大きさが負担となる問題があった。
【0015】
上記の課題に対し、本発明の目的は、選択リストを条件として指定し時系列データ群から所定最大数までの新着順リストを得る処理について、冗長なデータ保持無しに負荷を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的をふまえ、本発明の一態様(1)であるデータ処理装置は、属性を伴うレコードを発生時刻とともに時系列データとして記憶したデータ記憶手段と、前記レコードにおける所定の属性について一又は二以上の値を選択している選択リストを記憶している選択リスト記憶手段と、指定された前記選択リストに基づいて、前記時系列データから所定最大数までのレコードを抽出し新着順リストとして出力する抽出手段と、前記新着順リストとして出力された最古の前記レコードの前記発生時刻を最古時刻として、前記選択リストごとに対応付けて所定の最古時刻記憶手段に記憶させる時刻処理手段と、を有し、前記抽出手段は、前記指定された前記選択リストに対応する前記最古時刻が前記最古時刻記憶手段に記憶されている場合、その最古時刻以降の新しいレコードを対象として前記抽出を行うことを特徴とする。
【0017】
本発明の他の態様(3)であるデータ処理方法は、上記態様を方法のカテゴリで捉えたもので、コンピュータが、属性を伴うレコードを発生時刻とともに時系列データとして記憶したデータ記憶手段と、前記レコードにおける所定の属性について一又は二以上の値を選択している選択リストを記憶している選択リスト記憶手段と、を実現し、コンピュータが、指定された前記選択リストに基づいて、前記時系列データから所定最大数までのレコードを抽出し新着順リストとして出力する抽出ステップと、コンピュータが、前記新着順リストとして出力された最古の前記レコードの前記発生時刻を最古時刻として、前記選択リストごとに対応付けて所定の最古時刻記憶手段に記憶させる時刻処理ステップと、を含み、コンピュータが、前記抽出ステップに際し、前記指定された前記選択リストに対応する前記最古時刻が前記最古時刻記憶手段に記憶されている場合、その最古時刻以降の新しいレコードを対象として前記抽出を行うことを特徴とする。
【0018】
本発明の他の態様(4)は、上記態様をコンピュータ・プログラムのカテゴリで捉えたもので、コンピュータを制御することによりデータ処理を行わせるデータ処理プログラムであって、コンピュータに、属性を伴うレコードを発生時刻とともに時系列データとして記憶したデータ記憶手段と、前記レコードにおける所定の属性について一又は二以上の値を選択している選択リストを記憶している選択リスト記憶手段と、を実現させ、コンピュータに、指定された前記選択リストに基づいて、前記時系列データから所定最大数までのレコードを抽出し新着順リストとして出力させ、コンピュータに、前記新着順リストとして出力された最古の前記レコードの前記発生時刻を最古時刻として、前記選択リストごとに対応付けて所定の最古時刻記憶手段に記憶させ、コンピュータに、前記指定された前記選択リストに対応する前記最古時刻が前記最古時刻記憶手段に記憶されている場合、その最古時刻以降の新しいレコードを対象として前記抽出を行わせることを特徴とする。
【0019】
このように、選択リストに基づく新着順リストの最大数にあたる発生時刻を最古時刻として、選択リストごとに記憶しておくことにより、次回その選択リストについて新着順リストを得るときは、対応する最古時刻までに処理対象を限定できる。このため、選択リストを条件として指定し時系列データ群から所定最大数までの新着順リストを得る処理について、冗長なデータ保持無しに負荷を軽減することができる。
【0020】
本発明の他の態様(2)は、上記いずれかの態様において、前記時刻処理手段は、前記選択リストに対応付けて前記最古時刻記憶手段に記憶されている前記最古時刻に基づいて前記抽出手段によりレコードが抽出され新着順リストとして新たに出力された場合、新たに出力された最古の前記レコードの前記発生時刻により、前記最古時刻記憶手段に記憶されているその選択リストに対応する最古時刻を更新することを特徴とする。
【0021】
このように、記憶している最古時刻を利用して新たに新着順リストを出力した場合に最古時刻を更新することにより、メッセージなどのレコードが増えてゆく際に、古い最古時刻に基づいて余分なレコードを処理する無駄が回避できる。
【0022】
なお、上記の各態様とは異なるカテゴリ(装置に対し方法、方法に対しプログラムなど)や、以下に説明するさらに具体的な各態様も本発明に含まれる。異なるカテゴリについては、「手段」を「処理」又は「ステップ」のように適宜読み替えるものとする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、選択リストを条件として指定し時系列データ群から所定最大数までの新着順リストを得る処理について、冗長なデータ保持無しに負荷を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態の構成を示す機能ブロック図。
【図2】本発明の実施形態で用いる情報(データ)を例示する図。
【図3】本発明の実施形態における処理手順を示すフローチャート。
【図4】本発明の実施形態における画面表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明を実施するための形態(「実施形態」と呼ぶ)について、図に沿って説明する。なお、背景技術や課題などで既に述べた内容と共通の前提事項については適宜省略する。
【0026】
〔構成〕
本実施形態は、図1に示すデータ処理装置1(以下「本装置1」又は「本装置」と略称する)に関するもので、本装置1は、通信ネットワークW経由で、ユーザが用いる端末Tからのアクセスに応じ、ミニブログのメッセージについて入力を受け付け、表示を行うウェブサーバ装置である。
【0027】
本装置1は、一般的なコンピュータの構成として少なくとも、CPUなどの演算制御部6と、外部記憶装置(HDD等)や主メモリ等の記憶装置7と、通信ネットワークW(インターネット、携帯電話網、LANなど)との通信手段8(LANアダプタなど)と、を有する。また、端末Tは、パーソナル・コンピュータ(PC)、スマートフォンや携帯電話端末装置など、ユーザの用いる情報処理装置で、図1では一つを模式的に例示するが、実際は多数存在する。
【0028】
そして、本装置1では、記憶装置7に予め記憶(インストール)した図示しない所定のコンピュータ・プログラムが演算制御部6を制御することで、図1に示す各手段などの要素(10,20など)を実現する。これら各要素のうち、情報の記憶手段は、記憶装置7において各種のデータベース(「DB」とも表す)やファイル、配列等の変数、各種スタックやレジスタ、システム設定値など任意の形式で実現できる。
【0029】
このような記憶手段のうち、データ記憶手段10は、図2(1)に例示するように、ミニブログのメッセージMを、属性(投稿者:甲、乙など)を伴うレコードとして、発生時刻B(図の例では日時)とともに時系列データとして記憶する手段である。また、選択リスト記憶手段15は、ミニブログのサービスのユーザごとに、ユーザがメッセージを読みたいお気に入りの表示対象者として登録した他の投稿者を、選択リストとして記憶している手段である。
【0030】
例えば、図2(2)に例示する選択リストAは、ミニブログのユーザごとに(例では丙)、前記時系列データのレコードにおける所定の属性(投稿者)について一又は二以上の値(例えば、甲、乙・・・)を列挙する形で選択している。なお、記憶手段以外の各手段は、以下のような情報処理の機能・作用を実現・実行する処理手段である。
【0031】
〔基本的作用効果〕
上記のように構成した本装置1の動作手順を図3のフローチャートに示す。まず、ユーザからのアクセスによる表示要求が有った場合(ステップS1)、そのユーザが表示対象者を登録した選択リストが指定されたことになる。そして、抽出手段20は、指定された選択リストに対応する最古時刻が最古時刻記憶手段35に記憶されているか判断するが(ステップS2)、その選択リストについて初めて新着順リストを出力する場合は、最古時刻の記憶は無い(ステップS2:「NO」)。
【0032】
この場合(ステップS2:「NO」)、抽出手段20は、指定された選択リストに基づいて、データ記憶手段10に記憶されている時系列データから所定最大数までのレコードを抽出するが(ステップS3)、選択リストに含まれる表示対象者のメッセージがどの程度の頻度や割合で時系列データに含まれるかは未知である。このため、データ記憶手段10に記憶されている最新のメッセージを起点として過去に向かって、相当余裕を見た十分な件数まで抽出の対象とするか、もしくは表示対象者に該当する抽出件数を確認しながら所定量ずつ抽出の処理を進める。
【0033】
この際、表示対象者のメッセージの数や割合が少なく所定の最大数になかなか達しなければ、投稿者を表示対象者と照合する処理を、サービス開始以来の全てのメッセージに亘って行うこととなる。図2(2)の選択リストでは、ユーザ丙は、表示対象者として甲と乙を指定しており(図中、破線の楕円)、この選択リストに基づいて、図2(1)の時系列データから、投稿者が甲と乙(図2(1)でも破線の楕円で示す)のレコードが抽出される(図2(4))。
【0034】
上記のように抽出された抽出データは、図2(4)の例では破線の楕円で示すように、投稿者(甲、乙)ごとに整列していて、発生時刻順になっていない。そして、このように抽出した表示対象者のメッセージのレコード(例えば、図2(4))を所定の最大数Nまで発生時刻順にソートすることによって(ステップS4。例えば図2(5))、図4に例示するように、ミニブログの新着順リストとして出力する(ステップS4)。
【0035】
続いて、時刻処理手段30は、新着順リストとして出力された最古の(すなわち最大数N件目にあたる)レコードの発生時刻Bを最古時刻Zとして、選択リストごとに対応付けて所定の最古時刻記憶手段35に記憶させる(ステップS6。例えば図2(3))。図2の例では、選択リスト記憶手段15内の選択リストAと最古時刻記憶手段35内の最古時刻Zを別々に図示しているが、ユーザごとに、表示対象者と、最古時刻Zと、を対応付けるなどして、選択リスト記憶手段15と最古時刻記憶手段35は一体に構成してもよい。
【0036】
そして、抽出手段20は、指定された選択リストに対応する最古時刻Zが最古時刻記憶手段35に記憶されている場合(ステップS2:「YES」)、その最古時刻以降の新しいレコードを対象として前記抽出を行う(ステップS5)。
【0037】
以上のように、選択リストAに基づく新着順リストの最大数(N件目)にあたる発生時刻Bを最古時刻Zとして、選択リストAごとに記憶しておくことにより(図3のステップS6)、次回その選択リストAについて新着順リストを得るときは、対応する最古時刻Zまでに処理対象を限定できる(ステップS5)。このため、選択リストを条件として指定し時系列データ群から所定最大数までの新着順リストを得る処理について、冗長なデータ保持無しに負荷を軽減することができる。
【0038】
〔SQLの例〕
上記のような最古時刻を用いたレコード抽出の処理(ステップS5)を実現する一態様として、次のようなSQLが考えられる。但し、時系列データに含まれる各メッセージMのレコードが、属性Pである投稿者、発生時刻Bの各フィールドを含むとする。但しこのSQLは、正確な記述例ではなく概念的な例を示すもので、実際には、システムやデータベースの表、フィールドなどの構成に応じた記述を用いる。

<SQL1>
SELECT メッセージ.発生時刻B, メッセージ.内容
FROM 選択リストA INNNER JOIN メッセージM
ON 選択リストA.属性P = メッセージM.属性P
WHERE 選択リストA.セット = (セットの指定)
AND メッセージM.発生時刻B >= 最古時刻Z
【0039】
上記SQL1の結果はまだ発生時刻Bの順序に整列されていないが(例えば図2(4))、メッセージMに「属性P」・「発生時刻B」をインデックスで設定しておけば、メッセージMの中から選択リスト中にある属性Pごとに発生時刻Bが最古時刻Zよりも新しいメッセージMをインデックスを参照しながら効率よく取得することができる。
【0040】
なぜなら、インデックスのB−Treeを枝探索する際に、属性P中のリーフは発生時刻Bの最新順に取得でき、最古時刻Zよりも古いリーフに出会ったらその属性Pの部分木の探索を終わらせて、次の属性Pの部分木の探索を始められるため、および、選択リスト中に無い属性Pの部分木に出会ったら、部分木ごと無視して次の属性Pの部分木の枝探索に移ることができるためである。最古時刻Zが適切であれば、このSQL1の結果、取得されるメッセージMの件数は最大数N件となる。
【0041】
〔SQLによるソートの例〕
上記SQL1による抽出結果に対して、DBにおいて改めて発生時刻順のソートを実行する場合は、SQL1の後に下記のように記述することになる。

<SQL2>
(SQL1) ORDER BY メッセージM.発生時刻B DESC

ここで、一般的にDBは、ソートする件数が小さければオンメモリでソートを実行するため、最大数Nが十分に小さければSQL2で十分な処理速度が出る。しかし、最大数Nが大きくなるとDBサーバはソートする前にレコードをディスクに書き込み始めるため、処理速度が落ちてしまう。
【0042】
上記のケースに対処するためには、SQL1で実行した結果を、例えば本実施形態の機能を実現するアプリケーション・プログラム側でメモリに保持し、このアプリケーション・プログラム側で発生時刻Bに従ってオンメモリでソートを行うことが考えられる。オンメモリでソートさせるのに妥当な件数までは最大数Nを大きくすることができる。
【0043】
〔最古時刻の更新〕
また、メッセージMは不定期に追加されるため、最古時刻Zはなんらかのタイミングで初期化および更新されることが望ましい。そのタイミングは自由に選択できるが、最も好ましいタイミングは、図3のフローチャートに示すように、新着順リストを新たに取得するタイミングである。このタイミングで選択リストに基づく最新の新着順リストが取得でき、最大数N番目の発生時刻Bを知ることができ、最古時刻Zを更新することができる。
【0044】
すなわち、この場合、時刻処理手段30は、選択リストに対応付けて最古時刻記憶手段35に記憶されている最古時刻に基づいて(ステップS2:「YES」)抽出手段20によりレコードが抽出され(ステップS5)新着順リストとして新たに出力された場合(ステップS4)、新たに出力された最古のレコードの発生時刻を最古時刻として記憶することにより、最古時刻記憶手段35に記憶されているその選択リストに対応する最古時刻を更新する(ステップS6)。
【0045】
このように、記憶している最古時刻を利用して新たに新着順リストを出力した場合に最古時刻を更新することにより、メッセージなどのレコードが増えてゆく際に、最古時刻に基づいて余分なレコードを処理する無駄が回避できる。
【0046】
〔他の実施形態〕
なお、上記各実施形態は例示に過ぎず、本発明は、以下に例示するものやそれ以外の他の実施態様も含むものである。例えば、本発明の適用対象はミニブログに限らず、電子掲示板、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、災害用等の音声伝言システム、各種の電子商取引やセキュリティの管理など、任意に定めることができる。
【0047】
また、手段などの各要素は、コンピュータの演算制御部に限らず、ワイヤードロジック等に基づく電子回路など他の情報処理機構で実現してもよい。また、各構成図、データの図、フローチャートの図などは例示に過ぎず、各要素の有無、その順序や具体的内容などは適宜変更可能である。例えば、本発明の装置は、サーバなどの装置を複数用いて実現してもよく、個々の記憶手段を別個独立のサーバ装置やシステムで実現する構成も一般的である。また、機能によっては、外部のプラットフォーム等をAPI(アプリケーション・プログラム・インタフェース)やネットワークコンピューティング(いわゆるクラウドなど)で呼び出して実現するなど、構成は柔軟に変更できる。
【符号の説明】
【0048】
1 データ処理装置
6 演算制御部
7 記憶装置
8 通信手段
10 データ記憶手段
15 選択リスト記憶手段
20 抽出手段
30 時刻処理手段
35 最古時刻記憶手段
A 選択リスト
B 発生時刻
M メッセージ
W 通信ネットワーク
P 属性
T 端末
Z 最古時刻

【特許請求の範囲】
【請求項1】
属性を伴うレコードを発生時刻と共に時系列データとして記憶したデータ記憶手段と、
前記レコードにおける所定の属性について一又は二以上の値を選択している選択リストを記憶している選択リスト記憶手段と、
指定された前記選択リストに基づいて、前記時系列データから所定最大数までのレコードを抽出し新着順リストとして出力する抽出手段と、
前記新着順リストとして出力された最古の前記レコードの前記発生時刻を最古時刻として、前記選択リストごとに対応付けて所定の最古時刻記憶手段に記憶させる時刻処理手段と、
を有し、
前記抽出手段は、前記指定された前記選択リストに対応する前記最古時刻が前記最古時刻記憶手段に記憶されている場合、その最古時刻以降の新しいレコードを対象として前記抽出を行う
ことを特徴とするデータ処理装置。
【請求項2】
前記時刻処理手段は、前記選択リストに対応付けて前記最古時刻記憶手段に記憶されている前記最古時刻に基づいて前記抽出手段によりレコードが抽出され新着順リストとして新たに出力された場合、新たに出力された最古の前記レコードの前記発生時刻により、前記最古時刻記憶手段に記憶されているその選択リストに対応する最古時刻を更新することを特徴とする請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項3】
コンピュータが、属性を伴うレコードを発生時刻とともに時系列データとして記憶したデータ記憶手段と、前記レコードにおける所定の属性について一又は二以上の値を選択している選択リストを記憶している選択リスト記憶手段と、を実現し、
コンピュータが、指定された前記選択リストに基づいて、前記時系列データから所定最大数までのレコードを抽出し新着順リストとして出力する抽出ステップと、
コンピュータが、前記新着順リストとして出力された最古の前記レコードの前記発生時刻を最古時刻として、前記選択リストごとに対応付けて所定の最古時刻記憶手段に記憶させる時刻処理ステップと、
を含み、
コンピュータが、前記抽出ステップに際し、前記指定された前記選択リストに対応する前記最古時刻が前記最古時刻記憶手段に記憶されている場合、その最古時刻以降の新しいレコードを対象として前記抽出を行う
ことを特徴とするデータ処理方法。
【請求項4】
コンピュータを制御することによりデータ処理を行わせるデータ処理プログラムであって、
コンピュータに、属性を伴うレコードを発生時刻とともに時系列データとして記憶したデータ記憶手段と、前記レコードにおける所定の属性について一又は二以上の値を選択している選択リストを記憶している選択リスト記憶手段と、を実現させ、
コンピュータに、指定された前記選択リストに基づいて、前記時系列データから所定最大数までのレコードを抽出し新着順リストとして出力させ、
コンピュータに、前記新着順リストとして出力された最古の前記レコードの前記発生時刻を最古時刻として、前記選択リストごとに対応付けて所定の最古時刻記憶手段に記憶させ、
コンピュータに、前記指定された前記選択リストに対応する前記最古時刻が前記最古時刻記憶手段に記憶されている場合、その最古時刻以降の新しいレコードを対象として前記抽出を行わせる
ことを特徴とするデータ処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−38178(P2012−38178A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179096(P2010−179096)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(500257300)ヤフー株式会社 (1,128)
【Fターム(参考)】