データ処理装置,データ復元装置,データ処理方法及びデータ復元方法
【課題】データ処理装置,データ復元装置,データ処理方法及びデータ復元方法に関し、対象体の状態をより正確に解析することができるようにする。
【解決手段】対象体の状態に応じて変動する複数のパラメータからなる複数の実データを、ニューラルネットワークの教師なし学習により多次元の複数のニューロンへと圧縮するとともに、該ニューロンから該実データの構造を復元するデータ処理装置10であって、所定のメンバシップ関数を用いて、圧縮された各々の該ニューロンをファジー化するファジー化手段2と、ファジー化手段2によりファジー化された各々の該ニューロンに基づき、該実データの密度分布を復元する密度分布復元手段4とを備える。
【解決手段】対象体の状態に応じて変動する複数のパラメータからなる複数の実データを、ニューラルネットワークの教師なし学習により多次元の複数のニューロンへと圧縮するとともに、該ニューロンから該実データの構造を復元するデータ処理装置10であって、所定のメンバシップ関数を用いて、圧縮された各々の該ニューロンをファジー化するファジー化手段2と、ファジー化手段2によりファジー化された各々の該ニューロンに基づき、該実データの密度分布を復元する密度分布復元手段4とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニューラルネットワークの教師なし学習の手法を用いて、各種機械をはじめとする、動植物,微生物等の生命体、天候や天体の運動等の自然現象など種々の対象体の状態を診断するためのデータ処理装置,データ復元装置,データ処理方法及びデータ復元方法に関し、特に、油圧ショベル等の作業機械に生じる異常状態を診断するのに用いて好適な装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、膨大な数のデータの構造を解析するために、ニューラルネットワークの教師なし学習の手法を用いてデータをニューロンへと圧縮する技術や、圧縮されたニューロンから元のデータの構造を復元する技術が開発されている。
例えば、特許文献1には、対象となる機械に取り付けられたセンサにより、機械の稼働状態に応じて変動する複数のパラメータ値からなるデータセットを複数検出する構成や、複数のデータセットをニューロンの座標情報,平均距離情報及びウェイト情報を含むニューロンモデルパラメータへと圧縮する構成、これらのニューロンモデルパラメータを機械から管理センターへと送信し、ニューロンの移動平均やデータセットの密度分布(分布密度)を求めてデータセットを解析する構成等が開示されている。これらのような構成により、圧縮データから元のデータセットの特性をより正確に再現して、機械の診断を行うことができるようになっている。
【特許文献1】特開2006−11849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に記載の技術では、ニューロンモデルパラメータから元のデータセットの密度分布を求めるにあたり、ニューロンの座標情報,平均距離情報及びウェイト情報を用いて、図13に示すような三次元グラフを作成している。すなわち、ニューロンの座標情報に基づいてピーク(グラフ上に表現された山)の位置を定め、ウェイト情報に基づいてピークの高さを定めるとともに、平均距離情報に基づいてピークの傾斜面の傾きを定めて、データセットの密度分布を解析している。これにより、例えばデータセットの密度分布の変化を山形状の違いとして視覚的に捉えることができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の上記のような手法では、密度分布の変化が折れ線状に表現されるため、データを解析しにくい場合がある。より正確な解析のためには、滑らかに変化するような分布密度を復元したい。
また、特許文献1には、図14に示すように、ウェイト情報を考慮したニューロンの移動平均を求めることで、データセットの特性を正確に再現する手法も記載されている。この例では、エンジン回転数とブースト圧との相関関係におけるニューロンの移動平均が図示されている。
【0005】
しかしながら、この手法では、図14に示すように、エンジン回転数に関して低回転域及び高回転域では、求められたニューロンの移動平均が元のデータ(生データ)群からはみ出してしまう部分があるため、ニューロンの移動平均のうち、どの程度の範囲内の情報が、データセットの特性を十分に再現しているとみなせる信頼性の高い範囲であるかが明確とならないことがある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、対象体の状態をより正確に解析することができるようにした、データ処理装置,データ復元装置,データ処理方法及びデータ復元方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の本発明のデータ処理装置は、対象体の状態に応じて変動する複数のパラメータからなる複数の実データを、ニューラルネットワークの教師なし学習により多次元の複数のニューロンへと圧縮するとともに、該ニューロンから該実データの構造を復元するデータ処理装置であって、所定のメンバシップ関数を用いて、圧縮された各々の該ニューロンをファジー化するファジー化手段と、該ファジー化手段によりファジー化された各々の該ニューロンに基づき、該実データの密度分布を復元する密度分布復元手段とを備えたことを特徴としている。
【0008】
また、請求項2記載の本発明のデータ処理装置は、該多次元の空間内における該ニューロンの各々の位置をニューロンセンターとして設定するニューロンセンター設定手段と、一つの該ニューロンが代表する該実データの数をニューロンウェイトとして演算するニューロンウェイト演算手段と、該空間内において、一つの該ニューロンから該ニューロンが代表する該実データまでの平均距離をニューロン幅として演算するニューロン幅演算手段とをさらに備えるとともに、該ファジー化手段が、該ニューロンセンター及び該ニューロン幅に基づき、各々の該ニューロンのファジー値を演算するファジー値演算手段を有し、該密度分布復元手段が、該ファジー値演算手段により演算された各々の該ニューロンの該ファジー値及び該ニューロンウェイトに基づき、該実データの密度分布を復元することを特徴としている。
【0009】
なお、該ニューロンウェイトは、該ニューロンの強さを示す指標である。また、該ニューロン幅は、パラメータ空間内における各ニューロンの影響度合いを示す指標である。
また、請求項3記載の本発明のデータ処理装置は、該ニューロンセンター及び該ニューロンウェイトに基づき、該空間内における該ニューロンの移動平均を演算する移動平均演算手段と、該密度分布復元手段で復元された該実データの密度分布に基づき、該移動平均演算手段で演算された該移動平均の閾値を設定する閾値設定手段とをさらに備えたことを特徴としている。
【0010】
また、請求項4記載の本発明のデータ処理装置は、該密度分布復元手段で復元された該実データの密度分布の重心点を演算する密度分布重心演算手段をさらに備えたことを特徴としている。
また、請求項5記載の本発明のデータ処理装置は、該ニューロンセンターを構成するK種類のパラメータのうちのk番目のパラメータ(k=1,2,…,K)に対し、該k番目のパラメータの最小値Pkmin及び最大値Pkmax間を等間隔に分割するように、m個の等距離点xjk(j=1,2,…,m)を設定する等距離点設定手段をさらに備え、該ニューロンセンター設定手段が、N個の該ニューロンのうちのi番目のニューロンにおける該k番目のパラメータの該ニューロンセンターをCikとして設定し、該ニューロン幅演算手段が、N個の該ニューロンのうちのi番目のニューロンにおける該k番目のパラメータの該ニューロン幅をwikとして演算するとともに、該ファジー値演算手段が、該i番目のニューロンにおける該k番目のパラメータの該ニューロンセンターCik及び該ニューロン幅wikに基づき、該メンバシップ関数としてガウス関数を適用し以下の式(1)
【0011】
【数1】
【0012】
を用いて、該ファジー値fi(xjk)を演算することを特徴としている。
また、請求項6記載の本発明のデータ処理装置は、該ニューロンウェイト演算手段が、N個の該ニューロンのうちのi番目のニューロンにおけるニューロンウェイトをgiとして演算するとともに、該密度分布復元手段が、該ファジー値演算手段で演算された該ファジー値fi(xjk)及び該ニューロンウェイト演算手段で演算された該ニューロンウェイトgiに基づき、以下の式(2)
【0013】
【数2】
【0014】
を用いて、該等距離点xjkにおける密度分布zjkを演算することを特徴としている。
また、請求項7記載の本発明のデータ処理装置は、該密度分布重心演算手段が、密度分布zjkの重心点GOPの座標をGOP=[xO1,xO2,…,xOK]として、各座標xOk(k=1,2,…,K)を以下の式(3)
【0015】
【数3】
【0016】
に基づいて演算することを特徴としている。
請求項8記載の本発明のデータ復元装置は、対象体の状態に応じて変動する複数のパラメータからなる複数の実データを、ニューラルネットワークの教師なし学習により多次元の複数のニューロンへと圧縮する圧縮装置であり、かつ、該多次元の空間内における該ニューロンの各々の位置をニューロンセンターとして設定し、一つの該ニューロンが代表する該実データの数をニューロンウェイトとして演算し、該空間内において、一つの該ニューロンから該ニューロンが代表する該実データまでの平均距離をニューロン幅として演算する圧縮装置、によって圧縮された該複数のニューロンから、該実データの構造を復元するためのデータ復元装置であって、所定のメンバシップ関数を用いて、該ニューロンセンター及び該ニューロン幅に基づき、各々の該ニューロンのファジー値を演算するファジー値演算手段と、該ファジー化手段により演算された各々の該ニューロンの該ファジー値及び該ニューロンウェイトに基づき、該実データの密度分布を復元する密度分布復元手段とを備えたことを特徴としている。
【0017】
また、請求項9記載の本発明のデータ処理方法は、対象体の状態に応じて変動する複数のパラメータからなる複数の実データを、ニューラルネットワークの教師なし学習により多次元の複数のニューロンへと圧縮するとともに、該ニューロンから該実データの構造を復元するデータ処理方法であって、所定のメンバシップ関数を用いて、圧縮された各々の該ニューロンをファジー化するファジー化ステップと、該ファジー化ステップにおいてファジー化された各々の該ニューロンに基づき、該実データの密度分布を復元する密度分布復元ステップとを備えたことを特徴としている。
【0018】
また、請求項10記載の本発明のデータ処理方法は、該多次元の空間内における該ニューロンの各々の位置をニューロンセンターとして設定するニューロンセンター設定ステップと、一つの該ニューロンが代表する該実データの数をニューロンウェイトとして演算するニューロンウェイト演算ステップと、該空間内において、一つの該ニューロンから該ニューロンが代表する該実データまでの平均距離をニューロン幅として演算するニューロン幅演算ステップとをさらに備えるとともに、該ファジー化ステップが、該ニューロンセンター及び該ニューロン幅に基づき、各々の該ニューロンのファジー値を演算するファジー値演算ステップを有し、該密度分布復元ステップにおいて、該ファジー値演算ステップにより演算された各々の該ニューロンの該ファジー値及び該ニューロンウェイトに基づき、該実データの密度分布を復元することを特徴としている。
【0019】
また、請求項11記載の本発明のデータ処理方法は、該ニューロンセンター及び該ニューロンウェイトに基づき、該空間内における該ニューロンの移動平均を演算する移動平均演算ステップと、該密度分布復元ステップで復元された該実データの密度分布に基づき、該移動平均演算手段で演算された該移動平均の閾値を設定する閾値設定ステップとをさらに備えたことを特徴としている。
【0020】
また、請求項12記載の本発明のデータ処理方法は、該密度分布復元ステップで復元された該実データの密度分布の重心点を演算する密度分布重心演算ステップをさらに備えたことを特徴としている。
また、請求項13記載の本発明のデータ処理方法は、該ニューロンセンターを構成するK種類のパラメータのうちのk番目のパラメータ(k=1,2,…,K)に対し、該k番目のパラメータの最小値Pkmin及び最大値Pkmax間を等間隔に分割するように、m個の等距離点xjk(j=1,2,…,m)を設定する等距離点設定ステップをさらに備え、該ニューロンセンター設定ステップにおいて、N個の該ニューロンのうちのi番目のニューロンにおける該k番目のパラメータの該ニューロンセンターをCikとして設定し、該ニューロン幅演算ステップにおいて、N個の該ニューロンのうちのi番目のニューロンにおける該k番目のパラメータの該ニューロン幅をwikとして演算するとともに、該ファジー値演算ステップにおいて、該i番目のニューロンにおける該k番目のパラメータの該ニューロンセンターCik及び該ニューロン幅wikに基づき、該メンバシップ関数としてガウス関数を適用し以下の式(4)
【0021】
【数4】
【0022】
を用いて、該ファジー値fi(xjk)を演算することを特徴としている。
また、請求項14記載の本発明のデータ処理方法は、該ニューロンウェイト演算ステップにおいて、N個の該ニューロンのうちのi番目のニューロンにおけるニューロンウェイトをgiとして演算するとともに、該密度分布復元ステップにおいて、該ファジー値演算ステップで演算された該ファジー値fi(xjk)及び該ニューロンウェイト演算ステップで演算された該ニューロンウェイトgiに基づき、以下の式(5)
【0023】
【数5】
【0024】
を用いて、該等距離点xjkにおける密度分布zjkを演算することを特徴としている。
また、請求項15記載の本発明のデータ処理方法は、該密度分布重心演算ステップにおいて、密度分布zjkの重心点GOPの座標をGOP=[xO1,xO2,…,xOK]として、各座標xOk(k=1,2,…,K)を以下の式(6)
【0025】
【数6】
【0026】
に基づいて演算することを特徴としている。
請求項16記載の本発明のデータ復元方法は、対象体の状態に応じて変動する複数のパラメータからなる複数の実データをニューラルネットワークの教師なし学習により多次元の複数のニューロンへと圧縮する圧縮装置であり、かつ、該多次元の空間内における該ニューロンの各々の位置をニューロンセンターとして設定し、一つの該ニューロンが代表する該実データの数をニューロンウェイトとして演算し、該空間内において、一つの該ニューロンから該ニューロンが代表する該実データまでの平均距離をニューロン幅として演算する圧縮装置、によって圧縮された該複数のニューロンから、該実データの構造を復元するデータ復元方法であって、所定のメンバシップ関数を用いて、該ニューロンセンター及び該ニューロン幅に基づき、各々の該ニューロンのファジー値を演算するファジー値演算ステップと、該ファジー値演算ステップにより演算された各々の該ニューロンの該ファジー値及び該ニューロンウェイトに基づき、該実データの密度分布を復元する密度分布復元ステップとを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0027】
本発明のデータ処理装置及びデータ処理方法(請求項1,9)によれば、圧縮されたニューロンをファジー化することにより、滑らかな実データの密度分布を復元することができる。
また、本発明のデータ処理装置,データ処理方法,データ復元装置及びデータ復元方法(請求項2,8,10及び16)によれば、ニューロンのファジー値とニューロンウェイトに基づく密度分布の復元により、実データの密度分布の復元率を向上させることができる。つまり、圧縮から復元までの過程において消失される情報量を減らすことができ、対象体の状態解析や傾向把握の精度を高めることができる。また、ニューロンのファジー値とニューロンウェイトに基づいて、実データにおける各パラメータ毎の密度分布をそれぞれ復元することができ、実データを視覚的かつ多面的に解析することが容易となる。
【0028】
また、本発明のデータ処理装置及びデータ処理方法(請求項3,11)によれば、閾値設定手段により密度分布に基づく閾値が設定されるため、ニューロンの移動平均のうち、実データの構造が良好に反映されている領域とそうでない領域との境界を定義することができる。これにより、ニューロンの移動平均を用いた対象体の状態解析,傾向把握の精度をより高めることができる。
【0029】
また、本発明のデータ処理装置及びデータ処理方法(請求項4,12)によれば、対象体の状態を多次元の空間内における点座標として簡潔に表すことができる。また、数値演算だけで対象体の状態を把握することができ、定量的な判断が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図12は本発明の一実施形態にかかるデータ処理装置を説明するものであり、図1は本データ処理装置の全体構成を示す構成図、図2は本装置で圧縮された実データ及びニューロンを二次元空間上に示したグラフ、図3は図2における各ニューロンの幅を示す図、図4(a),(b)は図2における各ニューロンの各パラメータについての位置及びニューロン幅をガウス関数で近似して示したグラフ、図5は実データ及びニューロンの各々の重みづけ移動平均を示すグラフ、図6はニューロンの重みづけ移動平均及びFIRA法により復元された実データの密度分布を示すグラフ、図7(a),(b)は正常運転時及び非正常運転時における稼働特性を説明するためのグラフ、図8(a),(b)は実データの密度分布の重心点を示すグラフ、図9は本装置におけるデータ圧縮時の制御内容を説明するためのフローチャート、図10は本装置におけるファジー化制御を説明するためのフローチャート、図11は本装置におけるニューロンの重みづけ移動平均の演算制御を説明するためのフローチャート、図12は本装置における実データの重心点の演算制御を説明するためのフローチャートである。
【0031】
[1.構成]
[1−1]全体構成
図1に示すように、本データ処理装置10は、油圧ショベルの状態(正常,非正常,故障等の状態)を診断の対象としたものであり、油圧ショベル上に搭載された第1データ処理装置10aと、油圧ショベルから離れた場所にあるメンテナンスセンター(例えば、第1データ処理装置10aが設けられた油圧ショベルを所有、あるいは管理する事業所等)で情報処理を行うための第2データ処理装置10bとを備えて構成される。
【0032】
第1データ処理装置10aは、データ検出装置11,圧縮装置1及び通信装置12を備えて構成される。一方、第2データ処理装置10bは、通信装置13,復元装置9及びデータ出力装置14を備えて構成される。
圧縮装置1及び復元装置9はともに、処理プログラムを内蔵した記憶装置(ROM,RAM等)や中央処理装置(CPU)を備えたコンピュータである。圧縮装置1は、その内部に機能部位として、ニューロンセンター設定部(ニューロンセンター設定手段)1a,ニューロンウェイト演算部(ニューロンウェイト演算手段)1b及びニューロン幅演算部(ニューロン幅演算手段)1cを備えている。また、復元装置9は、その内部に機能部位として、ファジー化部(ファジー化手段)2,密度分布復元部(密度分布復元手段)4,移動平均演算部(移動平均演算手段)5,閾値設定部(閾値設定手段)6及び重心点演算部(重心点演算手段)7を備えている。
【0033】
[1−2]第1データ処理装置
データ検出装置11には、油圧ショベルに関する各パラメータ(変動要素)に対応する各種のセンサが設けられている。これらのセンサは、油圧ショベルの動作に応じて変動する各パラメータ値を各動作モード毎に検出するようになっている。
ここで検出されるパラメータとは、センサから直接検出されるデータのほか、ある検出データを演算等によって処理して、対応するパラメータの値を推定値として求めたものを含む。例えば、エンジン回転数,燃料消費量,油圧ポンプ圧力(1つ又は複数の油圧ポンプ圧力),油圧回路内の油温,車体の前進・後進或いは旋回を制御する作動圧,バケットを制御するバケットシリンダの作動圧,スティックを制御するスティックシリンダの作動圧,ブームを制御するブームシリンダの作動圧などが挙げられる。
【0034】
本データ処理装置10では、これらの同時に検出された各パラメータ(同一の状態下において検出された各パラメータのことを意味し、ここでは同時刻に検出された各パラメータのことをいう)が、ひとつの実データxsとして圧縮装置1へ入力されるようになっている。
以下、データ検出装置11から圧縮装置1へ入力される実データxsを一般化して以下の式7のように記述する。なお、データ検出装置11で検出された実データxsの総数をM個、各実データxsを構成するパラメータの種類数をK種類とする。また、以下の数式中においては、ベクトルやマトリックスを意味する記号を太字(Bold)で示し、スカラーを意味する記号を斜体(Italic)で示す。
【0035】
【数7】
【0036】
つまりここでは、一つの実データxsを、K次元空間内における点座標(データ点)として記述しており、データ検出装置11で検出されたM個の実データxsは、K次元空間内におけるM個の点の集合として表現される。このようなデータ点の集合のことを、「データの雲」と呼ぶ。
圧縮装置1は、これらのM個の実データxsを、これよりも大幅に数の少ないN個の情報の粒(N<<M)に置き換えることをコンセプトとして、情報を圧縮する演算を行う。ここでは、データ全体の形(すなわち、データの雲の形状)とデータの密度(すなわち、データ点の密度)とを算出することによって実データxsの構造を保ちながら情報量を小さくするようになっている。
【0037】
圧縮の手法としては、ニューラルネットワークの教師なし学習法が用いられるようになっている。具体的には、ニューラルガス学習法や自己組織化マップ学習法等の公知の学習法により学習(トレーニング)がなされ、N個の情報の粒がニューロンとして得られることになる。
例えば、K次元空間内に所定数のニューロンがランダムに配置されるとともに、実データxsがそのK次元空間内に入力され、ニューロンの学習が繰り返し行われる。この学習の後、弱いニューロンやアイドリングニューロンが削除され、N個のニューロンからなるニューロンセットが作成される。
【0038】
なお、圧縮装置1は、データ検出装置11から入力されたデータxsを一時的に蓄え、所定の稼働時間毎にまとめて圧縮するようになっている。例えば、1日の油圧ショベルの稼働によって蓄積された数千個以上のデータを実データxsとしている。
【0039】
[1−2−1]ニューロンセンター
このようなニューロンセットの各ニューロンについて、ニューロンセンター設定部1aは、K次元空間内における各ニューロンの位置の情報を、ニューロンセンター[c1,c2,…,cN]として設定する。各ニューロンはK種類のパラメータを備えて構成されているため、ニューロンセンターciはK次元のベクトル量として表現され、その一般式は以下の式8に示す通りとなる。
【0040】
【数8】
【0041】
なお、一般的に、ニューロンのニューロンセンターciが多くの実データxsに囲まれているほど、そのニューロンはそれらの実データxsを代表しているものと見なすことができる。
【0042】
[1−2−2]ニューロンウェイト
また、ニューロンウェイト演算部1bは、各ニューロンが代表する実データxsの数をニューロンウェイト[g1,g2,…,gN]として演算する。換言すれば、ニューロンウェイトgiとは、そのニューロンがM個の実データxsのうちの何個の実データxsに対して勝者ニューロンとなっているかを示すものである。つまり、このニューロンウェイトgiは、スカラー量として表現される。なお、ニューロンウェイトgiとは、ニューロンの強さを示す指標といえる。
【0043】
まず、ニューロンウェイト演算部1bは、各実データxsに対し、以下の式9に示すユークリッド距離の最も短いニューロンである勝者ニューロンnsを算出する。
【0044】
【数9】
【0045】
ただし、Ds(n)は、実データxsからi番目のニューロンまでの距離
次にこの情報を用いて、ニューロンウェイト演算部1bは、M個の実データxsをN個のサブセットMi(i=1,2,…,N)に分割する。各サブセットMiは、同じi番目のニューロンを勝者ニューロンとしている実データxsを有している。各サブセットMiに含まれる実データxsの数をmi(i=1,2,…,N)と表すと、以下の式10,式11に示す条件が成立している。
【0046】
【数10】
【0047】
つまり、ニューロンの標準化したウェイトgiは、以下に示す式12で計算される。
【0048】
【数11】
【0049】
各サブセットMi(i=1,2,…,N)は、K次元空間内に固有のサブ空間を形成しており、いわゆる「ボロノイ多角形」に類似した形状をなしている。ボロノイ多角形とは、平面中に多数の点が存在する場合に、隣り合った点の垂直二等分線によって形成される複雑な形状の多角形のことをいう。
例えば、M=759個の実データxsをN=6個のニューロンへと圧縮した場合に、K種類のうち2つのパラメータX1,X2についての各ニューロンの配置と各サブセットMiとを図2に示す。各サブセットMiの境界線が図中に破線で示されており、平面が複雑な多角形体で仕切られることになる。重要な点は、この多角形内にそれぞれ一つずつ位置するニューロンは、各多角形内に存在する全ての実データxsに対して勝者ニューロンであるということである。なお、図2中には、6つのボロノイ多角形とそれらに対応した実データxsの数miが示されている。
【0050】
[1−2−3]ニューロン幅
ニューロン幅演算部1cは、それぞれにニューロンについて、サブセットMi内に存在する各実データxsまでの平均距離をニューロン幅[w1,w2,…,wN]として演算する。これは、図2に示すように、各サブセットMiの領域内には、部分的に実データxsの存在しないところがあり、ボロノイ多角形によって囲まれる領域の大きさが必ずしも実データxsの分布状態を反映したものとはいえないからである。ここでは、ニューロン幅wi(i=1,2,…,N)を実データxsの分布状態を示す指標として扱うこととする。なお、ニューロン幅wiは、K次元のベクトル量として表現され、その一般式は以下の式13,14に示す通りとなる。
【0051】
【数12】
【0052】
図3は、図2に示した各ニューロンの幅wiのうち、2つのパラメータX1,X2についてのニューロンの幅を寸法(長さ)で示したものである。
なお、圧縮装置1内で設定,演算された各ニューロンのニューロンセンターci,ニューロンウェイトgi及びニューロン幅wiの情報は、通信装置12へと入力されるようになっている。
【0053】
通信装置12は、油圧ショベルの外部へ無線送信を行うためのものであり、圧縮装置1から入力された情報を、事業所のメンテナンスセンター内に設けられた第2データ処理装置10bへと送信する。通信装置12における通信頻度は、圧縮装置1における圧縮頻度に対応しており、例えば油圧ショベルの稼働終了後に、1日1回送信されるようになっている。
【0054】
[1−3]第2データ処理装置
第1データ処理装置10aの通信装置12から送信された情報は、第2データ処理装置10bの通信装置13によって受信され、復元装置9へと入力される。復元装置9の内部において、ニューロン幅wiの情報はファジー化部2へ入力され、ニューロンセンターciの情報はファジー化部2及び移動平均演算部5へ入力され、ニューロンウェイトgiの情報は移動平均演算部5及び閾値設定部6へと入力される。
【0055】
復元装置9は、圧縮されたニューロンから、元の実データの構造を復元する演算を行うものである。
なお、ここでいう情報の復元とは、例えばソフトウェア応用分野におけるデータの展開や解凍(decompression,unzipping)とは異なるアイデアである。主な違いは、オリジナルの情報を完全に復元するのではなく、圧縮した情報に基づいて元のデータのパラメータ間の相関を抽出することや、データの密度分布の概略を復元することを目的としている点である。前述の通り、圧縮装置1が実データxsの構造を保ちながら情報量を小さくするようになっているのは、このような目的を意識したものである。
【0056】
[1−4]ファジー化部
ファジー化部2は、所定のメンバシップ関数を用いて、圧縮された各々のニューロンをファジー化するように機能するものである。
まず、等距離点設定部8は、入力された各ニューロンセンターciを構成するk番目のパラメータ(k=1,2,…,K)に対し、スキャニングによって、k番目のパラメータの最小値Pkmin及び最大値Pkmax間を等間隔に分割するように、m個の等距離点xjk(j=1,2,…,m)を設定する。つまりここでは、例えばK種類のうち任意の一種類のパラメータに着目して全てのニューロンセンターciを眺めたときに、そのパラメータの最小値Pkmin及び最大値Pkmaxを抽出し、それらの値の間に等間隔の目盛りを割り付けていることになる。この場合、各目盛りの位置が等距離点xjkとなる。
【0057】
次に、ファジー値演算部3が、k番目のパラメータから作られた全ての等距離点xjkに対し、N個のガウスメンバシップ関数を使って、以下の式15に基づきファジー値fi(xjk)を演算する。なお、演算されるファジー値の大きさは、0≦fi(xjk)≦1の範囲内である。
【0058】
【数13】
【0059】
図4(a),(b)に示すように、ニューロンセンターCi、すなわち各ニューロンの位置情報をガウス密度分布関数の頂点の位置とみなし、さらに、ニューロン幅wiをガウス密度分布関数の幅とみなすことで、各ニューロンが代表している実データxsの分布を、全パラメータにわたって近似的に復元している。このように、ファジー推論による相関解析の手法のことを、FIRA法(FIRA method, Fuzzy Inference Relationship Analysis)と呼ぶ。
【0060】
このFIRA法では、各パラメータのデータ密度分布をある程度まで復元し、かつ密度分布を滑らかに内挿することができるようになっている。復元した密度分布曲線を各パラメータ毎に描いて視覚的に解析することが可能である。
なお、ファジー化のメンバシップ関数として適用されているガウス関数は、各パラメータ毎にニューロンの数Nと同じ数だけ用意される。したがって、図4(a),(b)に示すように、例えばパラメータX1についてのガウス密度分布関数は、パラメータX2についてのガウス密度分布関数とは異なる形で与えられる。
ここで演算されたファジー値fi(xjk)は、密度分布復元部4へ入力されるようになっている。
【0061】
[1−5]密度分布復元部
密度分布復元部4は、ファジー化部2から入力されたファジー値fi(xjk)及び通信装置13から入力されたニューロンウェイトgiに基づき、以下の式16に従って等距離点xjkにおける密度分布zjkを演算する。
【0062】
【数14】
【0063】
つまりここでは、各ニューロンが代表している各実データxsの密度が各等距離点xjkにおいて算出され、それらが合算されて実データxsの密度分布zjkが近似的に復元されることになる。
【0064】
[1−6]移動平均演算部
移動平均演算部5は、古典的な「移動平均」の演算手法に「重みづけ」を加えた手法で演算処理を行うものであり、通信装置13から入力されたニューロンセンターCi及びニューロンウェイトgiに基づき、各ニューロンの移動平均値を演算する。
【0065】
具体的には、移動平均演算部5が、各ニューロンにおいて、K種類のパラメータのうちの任意の2種類のパラメータP1,P2を選択し、二次元平面内[P1,P2]内に各ニューロンを配置する。また、スキャニングにより、何れか一方のパラメータ(例えば、パラメータP1)の最大値P1maxと最小値P1minとを読み込むとともに、これらの幅(P1max−P1min)よりも短い所定長WLのウィンドウを設定する。
【0066】
続いて、このウィンドウをパラメータP1の左境界側に配置し、ウィンドウ内に含まれているニューロンの重心点を算出し、二次元平面上にプロットする。所定のオーバーラップWOでウィンドウをパラメータP1の左境界側から右境界側へと順に移動させながらニューロンの重心点をプロットすることを繰り返して、ウィンドウの配置箇所数Mwと同じ数の重心点Vjを二次元平面状にプロットするようになっている。
【0067】
なお、j番目のウィンドウ(j=1,2,…,Mw)の重心点Vjの座標(VX,VY)は、以下の式17を用いて演算することができる。
【0068】
【数15】
【0069】
ここで、cjiX及びcjiYは、i番目のニューロン(i=1,2,…,Nj)のセンターであり、giはニューロンウェイトである。つまりここでは、ニューロンの位置をウェイトによって重みづけした重心点が演算されていることになる。なお、ウィンドウは互いにオーバーラップしているため、次の不等式18が成立する。
【0070】
【数16】
【0071】
上述のようにプロットされた、パラメータのあるペア[X,Y]に対する相関曲線は、ウィンドウ長さWLやオーバーラップWOの幅に依存した形状として二次元平面内[P1,P2]にプロットされることになるが、一般に、ウィンドウ数が多く(例えば、Mw>10)、またオーバーラップ量が中庸(例えば、ウィンドウ幅WLの50%程度)である場合には、実データxsから算出した移動平均と比較して視覚的にロスの少ない良好な曲線が得られる。
【0072】
図5に、移動平均演算部5での演算結果をグラフ化したものを例示したように、実データの移動平均のグラフとニューロンの重みづけ移動平均のグラフとは、概ね一致していることがわかる。
このような重み付け移動平均による解析手法は、パラメータのあるペアに対する相関曲線に差があるかどうかを容易に発見することのできるツールとして使うことができる。すなわち、パラメータのあるペアに対する相関曲線を視覚的に比較して、油圧ショベルの劣化や非正常な兆候などを発見することができる。
なお、ここで演算されたニューロンの重みづけ移動平均は、データ出力装置14へ入力されるようになっている。
【0073】
[1−7]閾値演算部
閾値演算部6は、密度分布復元部4で演算された密度分布zjkに基づいて、移動平均演算部5で演算されたニューロンの重みづけ移動平均の閾値を設定するものである。ここでは、密度分布zjkの大きさが、予め設定された所定値(例えば、0.03)よりも大きくなる等距離点xjk及び該所定値よりも小さくなる等距離点xjkを閾値として設定する。
【0074】
例えば、2つの閾値によって挟まれた範囲を「密度分布zjkが十分意味を持つ範囲」、すなわち、密度分布zjkに対応する重みづけ移動平均の信頼できる範囲、とみなすようになっている。なお、ここで演算された閾値は、データ出力装置14へ入力されるようになっている。
このように、重みづけした移動平均の手法とFIRA法を通して得られた閾値とを組み合わせることによって、油圧ショベルの稼働パラメータのいかなる組合せに対しても、視覚的に容易に比較が可能なヒューマンサポート技術(マンマシーン技術)を作り出し、発生している可能性のある機械の劣化等に対し、正常時との「違い」を発見したり、正常であるか否かの「判定」を行ったりすることができることになる。
【0075】
[1−8]重心点演算部
重心点演算部7は、密度分布復元部4で復元された実データxsの密度分布zjkの重心点GOPを演算するものである。ここでは、密度分布zjkの重心点GOPの座標をGOP=[xO1,xO2,…,xOK]として、各座標xOk(k=1,2,…,K)を以下の式19に従って演算する。
【0076】
【数17】
【0077】
K次元空間内における密度分布zjkの重心点GOPは、M個の実データxsが検出された油圧ショベルの稼働状態を最も簡潔に表している。ここで演算された重心点GOPは、データ出力装置14へ入力されるようになっている。
【0078】
[2.フローチャート]
本実施形態に係るデータ処理装置は、上述のように構成されており、その処理は図9〜図12に示すフローチャートに沿って実行される。図9のフローチャートは圧縮装置1における実データxsの圧縮時に実行されるフローであり、図10〜図12のフローチャートは、復元装置9における情報の復元時に実行されるフローである。
【0079】
[2−1]圧縮フロー
図9に示すフローチャートでは、M個の実データxsが圧縮され、これよりも大幅に数の少ないN個のニューロンが生成される。
まずステップA10では、データ検出装置11で検出されたM個の実データxsが読み込まれる。ここでは、1日の油圧ショベルの稼働によって蓄積されたデータが実データxsとして読み込まれる。
【0080】
続くステップA20では、ニューラルネットワークの教師なし学習法により、M個の実データxsがN個(例えば数個)のニューロンセットへ圧縮される。このとき、情報量は大幅に小さくなるが、実データxsの構造は保たれたままとなる。
ステップA30では、ニューロンセンター設定部1aにおいて、圧縮された各ニューロンの位置の情報がニューロンセンター[c1,c2,…,cN]として設定される。ここでは、上記の式8に示すように、各ニューロンセンターci(i=1,2,…,N)がK次元のベクトル量として表現される。
【0081】
さらに続くステップA40では、ニューロンウェイト演算部1bにおいて、上記の式9〜12に基づき、各ニューロンによって代表される実データxsの数がニューロンウェイト[g1,g2,…,gN]として演算される。ここで演算される各ニューロンウェイトgi(i=1,2,…,N)は、スカラー量として表現される。
そして、続くステップA50では、ニューロン幅演算部1cにおいて、上記の式13,14に基づき、各々のニューロンを勝者ニューロンとする各実データxsまでの平均距離がニューロン幅wiとして演算される。ニューロン幅についてもニューロンセンターciと同様に、K次元のベクトル量として表現される
【0082】
[2−2]復元・ファジー化フロー
図10に示すフローチャートでは、圧縮されたニューロンのファジー化により実データxsの密度分布zjkが演算される。
まずステップB10では、ファジー化部2において、ニューロンセンターci,ニューロンウェイトgi及びニューロン幅wiが読み込まれる。続いてステップB20では、等距離点設定部8において、各ニューロンセンターciを構成するk番目のパラメータ(k=1,2,…,K)に対してそのパラメータの最小値Pkmin及び最大値Pkmax間を等間隔に分割するように、m個の等距離点xjk(j=1,2,…,m)が設定される。
【0083】
続いてステップB30では上述の式15に基づき、ファジー値演算部3において、各等距離点xjkに対するファジー値fi(xjk)が演算される。ここでは、ニューロンセンターCi、すなわち各ニューロンの位置情報がガウス密度分布関数の頂点の位置とみなされ、ニューロン幅wiがガウス密度分布関数の幅とみなされている。これにより、各ニューロンが代表している実データxsの分布が、全パラメータにわたって近似的に復元される。
【0084】
さらに続くステップB40では、密度分布復元部4において、前ステップで演算されたファジー値fi(xjk)とニューロンウェイトgiとに基づき、上述の式16に従って等距離点xjkにおける密度分布zjkが演算される。このステップにおいて、各ニューロンが代表している各実データxsの密度が各等距離点xjkにおいて算出され、それらが合算されて実データxsの密度分布zjkが近似的に復元される。
【0085】
[2−3]復元・移動平均演算フロー
図11に示すフローチャートでは、ファジー化フローで演算された実データxsの密度分布zjkを利用した判定のための演算がなされる。
ステップC10では、移動平均演算部5において、ニューロンセンターCi及びニューロンウェイトgiが読み込まれるとともに、閾値設定部6において密度分布復元部4で演算された密度分布zjkが読み込まれる。
【0086】
続くステップC20では、移動平均演算部5において、ニューロンセンターCiを構成するK種類のパラメータのうち、任意の2種類のパラメータP1,P2が選択され、二次元平面内[P1,P2]内に各ニューロンが配置される。
さらにステップC30では、スキャニングにより、何れか一方のパラメータP1の最大値P1maxと最小値P1minとが読み込まれ、これらの幅(P1max−P1min)よりも短い所定長WLのウィンドウが設定されるとともに、二次元平面[P1,P2]上におけるパラメータP1の左境界側から右境界側へ向けて、所定量だけオーバーラップWOする(ウィンドウ同士が重なる)ように、ウィンドウが所定数Mw配置される。
【0087】
そして、ステップC40において、上述の式17を用いて、各ウィンドウ内に含まれるニューロンについてそれらのニューロンセンターCi及びニューロンウェイトgiから重心点Vjが演算される。ここで演算された各ウィンドウにおけるニューロンの重心点Vjは、続くステップC50においてデータ出力装置14へ入力される。
一方、ステップC60では、閾値設定部6において、密度分布復元部4で演算された密度分布zjkの大きさ基づいて、閾値が設定される。例えば、密度分布zjkの大きさが0.03よりも大きくなる等距離点xjkが各パラメータにおける閾値として設定される。ここで設定された閾値は、ウィンドウが所定数Mw配置される。
【0088】
そして、ステップC70では、データ出力装置14において、二次元平面上に各ウィンドウの重心点VjがMw個プロットされるとともに、各パラメータに対応する閾値も同一平面状にプロットされる。なお、このステップでの制御結果例を図6に示す。
ここでは、エンジン回転数とブースト圧力との相関関係が示されている。太実線で示された折れ線グラフは、実データに基づく古典的な(ウェイトを考慮しない)移動平均手法で計算したものであり、細実線で示された方が各ウィンドウにおけるニューロンの重心点Vjを連結したものである。また、閾値設定部6で設定された閾値のうち、エンジン回転数に対応する閾値は破線で示されている。
【0089】
このように、ニューロンの重心点Vjを連結した、重み付けした移動平均のグラフと、密度分布から得られる閾値とを重ね合わせて示すことで、重み付けした移動平均のうちの信頼できる領域が視覚的に明確に表現される。
【0090】
[2−4]復元・重心点演算フロー
図12に示すフローチャートでは、ファジー化フローで演算された密度分布zjkの重心点GOPが演算される。
【0091】
まず、ステップD10では、重心点演算部7において、密度分布復元部4で演算された密度分布zjkが読み込まれる。続くステップD20では、密度分布zjkの重心点GOPの座標をGOP=[xO1,xO2,…,xOK]として、各座標xOk(k=1,2,…,K)が上述の式19に従って演算される。ここで算出されたGOPは、M個の実データxsが検出された油圧ショベルの稼働状態を簡潔に示している。
【0092】
そして、ステップD30では、データ出力装置14において、算出されたGOPが出力される。なお、K種類のパラメータから2つのパラメータ(エンジン回転数及びブースト圧力)を選択してこれらのパラメータを変数とした2次元平面上にGOPをプロットした例を図8(a)に示す。ここで、F1〜F5はそれぞれ、非正常状態の油圧ショベルから得られた実データに基づいて算出されたGOPの位置を示している。また、O1〜O5はそれぞれ、正常状態の油圧ショベルから得られた実データに基づいて算出されたGOPの位置を示している。また、NH,NM及びNLはそれぞれ、正常状態の油圧ショベルであって高負荷の状態,中負荷の状態及び低負荷の状態で得られた実データに基づくGOPの位置を示している。
【0093】
[3.効果]
本発明の一実施形態に係るデータ処理装置は、以下のような効果を奏する。
[3−1]ファジー推論による相関解析手法
まず、圧縮されたニューロンをファジー化することにより、滑らかな実データxsの密度分布zjkを復元することができる。これにより、油圧ショベルの稼働状態の正確な解析が可能となる。
【0094】
また、ニューロンのファジー値fi(xjk)とニューロンウェイトgiに基づく密度分布zjkの復元により、実データxsの密度分布zjkの復元率を向上させることができる。つまり、圧縮から復元までの過程において消失される情報量を減らすことができ、対象体の状態解析や傾向把握の精度を高めることができる。また、実データxsにおける各パラメータ毎の密度分布zjkをそれぞれ復元することができ、実データxsを視覚的かつ多面的に解析することが容易となる。
【0095】
また、復元された密度分布zjkのグラフは、移動平均演算部5で演算される重み付けした移動平均(重心点Vj)のグラフと組み合わせて用いると便利である。すなわち、閾値設定部6において「密度分布zjkが十分意味を持つ範囲」の閾値が設定されるようになっているため、ニューロンの移動平均のうち、実データxsの構造が良好に反映されている領域とそうでない領域との境界を定義することができる。これにより、データセットの特性を十分に再現しているとみなせる信頼性の高い範囲を明確にすることができ、ニューロンの移動平均を用いた対象体の状態解析,傾向把握の精度をより高めることができる。
【0096】
図7(a),(b)はそれぞれ、正常運転時及び非正常運転時におけるエンジン回転数と燃料消費量との相関関係を示すグラフであり、各々のケースにおける重み付け移動平均と閾値とを図示したものである。このように、運転状態の違いが「信頼できる領域」同士のグラフの差として視覚的に容易に発見することが可能である。
この場合、図7(b)に領域Aとして示すように、正常運転時における「信頼できる領域」と非正常運転時における「信頼できる領域」とが重なり合う部分の重み付け移動平均を確認することが好ましい。なお、閾値の設定に際し、このような運転状態の違いの発見がより容易となるような値を予め定めておくことも好ましい。
【0097】
[3−2]密度分布の重心点を利用した解析手法
また、重心点演算部7において演算される実データxsの密度分布zjkの重心点GOPに着目すると、図8(a)に示すように、正常運転時における重心点GOPは、ほぼ一本の線上(正常運転ラインNOL)に位置する特性を有していることがわかる。つまり、このような特性を利用すれば、運転状態のわからないデータに対してその密度分布zjkの重心点GOPを演算すれば、その重心点GOPと正常運転ラインNOLとの距離に基づいて、運転状態を把握することが可能となる。例えば、重心点GOPと正常運転ラインNOLとの距離が近い場合には正常運転であるとみなし、逆に距離が離れている場合には非正常状態であるとみなすことができる。
【0098】
上述の通り、この解析手法によれば、油圧ショベルの稼働状態を多次元の空間内における点座標として簡潔に表すことができる。また、数値演算だけで油圧ショベルの状態を把握することができ、定量的な判断が容易となる。
なお、上記ような判定の基準値を正常運転ラインNOLに対してある程度の幅を持たせることも一案である。例えば、図8(b)に示すように、正常運転ラインNOLの両側に2本のラインNOL′を引き、重心点GOPがこの2本のラインNOL′内に位置する場合には正常運転(又は正常状態に近い状態)であるとみなし、逆に位置しない場合には非正常状態であるとみなしてもよい。この場合、F1〜F3が「重い故障」の状態であると判断したり、F4,F5が「ほとんど正常、又は、穏やかな故障」の状態であると判断することができる。
【0099】
[4.その他]
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば上述の実施形態では、ファジー化のためのメンバシップ関数として、ガウス密度分布関数を用いているが、ファジー化の手法はこれに限定されず、値域が[0,1]である関数である他の関数を利用することも可能である。
【0100】
また、上述の実施形態では、ニューロンセンターCi及びニューロン幅wiに基づいてファジー値fi(xjk)を演算するようになっているが、ファジー値fi(xjk)の算出に際してニューロンウェイトgiを考慮した演算としてもよい。
なお、本実施形態では、診断の対象として油圧ショベルを例に挙げたが、対象体はこれに限定されるものではなく、例えばトラック・バス,船舶等の乗物類、及び、産業機械をはじめとした各種機械類の動作の良否判定等に広く適用できるほか、動植物や微生物等の生命体の状態の良否判定等や、天候或いは地球等、天体の変化の推定等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の一実施形態にかかるデータ処理装置の全体構成を示す構成図である。
【図2】本装置で圧縮された実データ及びニューロンを二次元空間上に示したグラフである。
【図3】図2における各ニューロンの幅を示す図である。
【図4】図2における各ニューロンの各パラメータについての位置及びニューロン幅をガウス関数で近似して示したグラフであり、(a)はパラメータX1についてのグラフ、(b)はパラメータX2(X2≠X1)についてのグラフである。
【図5】実データ及びニューロンの各々の重みづけ移動平均を示すグラフである。
【図6】ニューロンの重みづけ移動平均及びFIRA法により復元された実データの密度分布を示すグラフである。
【図7】本装置に係る油圧ショベルの稼働特性を説明するためのグラフであり、(a)は正常運転時、(b)は非正常運転時を示す。
【図8】本装置で演算される実データの密度分布の重心点を示すグラフであり、(a)は油圧ショベルの正常運転時及び非正常運転時における重心点を併せて示したものであり、(b)は運転状態の診断に係る閾値設定例を示したものである。
【図9】本装置におけるデータ圧縮時の制御内容を説明するためのフローチャートである。
【図10】本装置におけるファジー化制御を説明するためのフローチャートである。
【図11】本装置におけるニューロンの重み付け移動平均の演算制御を説明するためのフローチャートである。
【図12】本装置における実データの重心点の演算制御を説明するためのフローチャートである。
【図13】従来技術に係るデータセットの密度分布を図示した三次元グラフである。
【図14】従来技術に係るウェイト情報を考慮したニューロンの移動平均を示すグラフである。
【符号の説明】
【0102】
1 圧縮装置
1a ニューロンセンター設定部(ニューロンセンター設定手段)
1b ニューロンウェイト演算部(ニューロンウェイト演算手段)
1c ニューロン幅演算部(ニューロン幅演算手段)
2 ファジー化部(ファジー化手段)
3 ファジー値演算部(ファジー値演算手段)
4 密度分布復元部(密度分布復元手段)
5 移動平均演算部(移動平均演算手段)
6 閾値設定部(閾値設定手段)
7 重心点演算部(密度分布重心演算手段)
8 等距離点設定部(等距離点設定手段)
9 復元装置(データ復元装置)
10 データ処理装置
10a 第1データ処理装置
10b 第2データ処理装置
11 データ検出装置
12,13 通信装置
14 データ出力装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニューラルネットワークの教師なし学習の手法を用いて、各種機械をはじめとする、動植物,微生物等の生命体、天候や天体の運動等の自然現象など種々の対象体の状態を診断するためのデータ処理装置,データ復元装置,データ処理方法及びデータ復元方法に関し、特に、油圧ショベル等の作業機械に生じる異常状態を診断するのに用いて好適な装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、膨大な数のデータの構造を解析するために、ニューラルネットワークの教師なし学習の手法を用いてデータをニューロンへと圧縮する技術や、圧縮されたニューロンから元のデータの構造を復元する技術が開発されている。
例えば、特許文献1には、対象となる機械に取り付けられたセンサにより、機械の稼働状態に応じて変動する複数のパラメータ値からなるデータセットを複数検出する構成や、複数のデータセットをニューロンの座標情報,平均距離情報及びウェイト情報を含むニューロンモデルパラメータへと圧縮する構成、これらのニューロンモデルパラメータを機械から管理センターへと送信し、ニューロンの移動平均やデータセットの密度分布(分布密度)を求めてデータセットを解析する構成等が開示されている。これらのような構成により、圧縮データから元のデータセットの特性をより正確に再現して、機械の診断を行うことができるようになっている。
【特許文献1】特開2006−11849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に記載の技術では、ニューロンモデルパラメータから元のデータセットの密度分布を求めるにあたり、ニューロンの座標情報,平均距離情報及びウェイト情報を用いて、図13に示すような三次元グラフを作成している。すなわち、ニューロンの座標情報に基づいてピーク(グラフ上に表現された山)の位置を定め、ウェイト情報に基づいてピークの高さを定めるとともに、平均距離情報に基づいてピークの傾斜面の傾きを定めて、データセットの密度分布を解析している。これにより、例えばデータセットの密度分布の変化を山形状の違いとして視覚的に捉えることができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の上記のような手法では、密度分布の変化が折れ線状に表現されるため、データを解析しにくい場合がある。より正確な解析のためには、滑らかに変化するような分布密度を復元したい。
また、特許文献1には、図14に示すように、ウェイト情報を考慮したニューロンの移動平均を求めることで、データセットの特性を正確に再現する手法も記載されている。この例では、エンジン回転数とブースト圧との相関関係におけるニューロンの移動平均が図示されている。
【0005】
しかしながら、この手法では、図14に示すように、エンジン回転数に関して低回転域及び高回転域では、求められたニューロンの移動平均が元のデータ(生データ)群からはみ出してしまう部分があるため、ニューロンの移動平均のうち、どの程度の範囲内の情報が、データセットの特性を十分に再現しているとみなせる信頼性の高い範囲であるかが明確とならないことがある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、対象体の状態をより正確に解析することができるようにした、データ処理装置,データ復元装置,データ処理方法及びデータ復元方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の本発明のデータ処理装置は、対象体の状態に応じて変動する複数のパラメータからなる複数の実データを、ニューラルネットワークの教師なし学習により多次元の複数のニューロンへと圧縮するとともに、該ニューロンから該実データの構造を復元するデータ処理装置であって、所定のメンバシップ関数を用いて、圧縮された各々の該ニューロンをファジー化するファジー化手段と、該ファジー化手段によりファジー化された各々の該ニューロンに基づき、該実データの密度分布を復元する密度分布復元手段とを備えたことを特徴としている。
【0008】
また、請求項2記載の本発明のデータ処理装置は、該多次元の空間内における該ニューロンの各々の位置をニューロンセンターとして設定するニューロンセンター設定手段と、一つの該ニューロンが代表する該実データの数をニューロンウェイトとして演算するニューロンウェイト演算手段と、該空間内において、一つの該ニューロンから該ニューロンが代表する該実データまでの平均距離をニューロン幅として演算するニューロン幅演算手段とをさらに備えるとともに、該ファジー化手段が、該ニューロンセンター及び該ニューロン幅に基づき、各々の該ニューロンのファジー値を演算するファジー値演算手段を有し、該密度分布復元手段が、該ファジー値演算手段により演算された各々の該ニューロンの該ファジー値及び該ニューロンウェイトに基づき、該実データの密度分布を復元することを特徴としている。
【0009】
なお、該ニューロンウェイトは、該ニューロンの強さを示す指標である。また、該ニューロン幅は、パラメータ空間内における各ニューロンの影響度合いを示す指標である。
また、請求項3記載の本発明のデータ処理装置は、該ニューロンセンター及び該ニューロンウェイトに基づき、該空間内における該ニューロンの移動平均を演算する移動平均演算手段と、該密度分布復元手段で復元された該実データの密度分布に基づき、該移動平均演算手段で演算された該移動平均の閾値を設定する閾値設定手段とをさらに備えたことを特徴としている。
【0010】
また、請求項4記載の本発明のデータ処理装置は、該密度分布復元手段で復元された該実データの密度分布の重心点を演算する密度分布重心演算手段をさらに備えたことを特徴としている。
また、請求項5記載の本発明のデータ処理装置は、該ニューロンセンターを構成するK種類のパラメータのうちのk番目のパラメータ(k=1,2,…,K)に対し、該k番目のパラメータの最小値Pkmin及び最大値Pkmax間を等間隔に分割するように、m個の等距離点xjk(j=1,2,…,m)を設定する等距離点設定手段をさらに備え、該ニューロンセンター設定手段が、N個の該ニューロンのうちのi番目のニューロンにおける該k番目のパラメータの該ニューロンセンターをCikとして設定し、該ニューロン幅演算手段が、N個の該ニューロンのうちのi番目のニューロンにおける該k番目のパラメータの該ニューロン幅をwikとして演算するとともに、該ファジー値演算手段が、該i番目のニューロンにおける該k番目のパラメータの該ニューロンセンターCik及び該ニューロン幅wikに基づき、該メンバシップ関数としてガウス関数を適用し以下の式(1)
【0011】
【数1】
【0012】
を用いて、該ファジー値fi(xjk)を演算することを特徴としている。
また、請求項6記載の本発明のデータ処理装置は、該ニューロンウェイト演算手段が、N個の該ニューロンのうちのi番目のニューロンにおけるニューロンウェイトをgiとして演算するとともに、該密度分布復元手段が、該ファジー値演算手段で演算された該ファジー値fi(xjk)及び該ニューロンウェイト演算手段で演算された該ニューロンウェイトgiに基づき、以下の式(2)
【0013】
【数2】
【0014】
を用いて、該等距離点xjkにおける密度分布zjkを演算することを特徴としている。
また、請求項7記載の本発明のデータ処理装置は、該密度分布重心演算手段が、密度分布zjkの重心点GOPの座標をGOP=[xO1,xO2,…,xOK]として、各座標xOk(k=1,2,…,K)を以下の式(3)
【0015】
【数3】
【0016】
に基づいて演算することを特徴としている。
請求項8記載の本発明のデータ復元装置は、対象体の状態に応じて変動する複数のパラメータからなる複数の実データを、ニューラルネットワークの教師なし学習により多次元の複数のニューロンへと圧縮する圧縮装置であり、かつ、該多次元の空間内における該ニューロンの各々の位置をニューロンセンターとして設定し、一つの該ニューロンが代表する該実データの数をニューロンウェイトとして演算し、該空間内において、一つの該ニューロンから該ニューロンが代表する該実データまでの平均距離をニューロン幅として演算する圧縮装置、によって圧縮された該複数のニューロンから、該実データの構造を復元するためのデータ復元装置であって、所定のメンバシップ関数を用いて、該ニューロンセンター及び該ニューロン幅に基づき、各々の該ニューロンのファジー値を演算するファジー値演算手段と、該ファジー化手段により演算された各々の該ニューロンの該ファジー値及び該ニューロンウェイトに基づき、該実データの密度分布を復元する密度分布復元手段とを備えたことを特徴としている。
【0017】
また、請求項9記載の本発明のデータ処理方法は、対象体の状態に応じて変動する複数のパラメータからなる複数の実データを、ニューラルネットワークの教師なし学習により多次元の複数のニューロンへと圧縮するとともに、該ニューロンから該実データの構造を復元するデータ処理方法であって、所定のメンバシップ関数を用いて、圧縮された各々の該ニューロンをファジー化するファジー化ステップと、該ファジー化ステップにおいてファジー化された各々の該ニューロンに基づき、該実データの密度分布を復元する密度分布復元ステップとを備えたことを特徴としている。
【0018】
また、請求項10記載の本発明のデータ処理方法は、該多次元の空間内における該ニューロンの各々の位置をニューロンセンターとして設定するニューロンセンター設定ステップと、一つの該ニューロンが代表する該実データの数をニューロンウェイトとして演算するニューロンウェイト演算ステップと、該空間内において、一つの該ニューロンから該ニューロンが代表する該実データまでの平均距離をニューロン幅として演算するニューロン幅演算ステップとをさらに備えるとともに、該ファジー化ステップが、該ニューロンセンター及び該ニューロン幅に基づき、各々の該ニューロンのファジー値を演算するファジー値演算ステップを有し、該密度分布復元ステップにおいて、該ファジー値演算ステップにより演算された各々の該ニューロンの該ファジー値及び該ニューロンウェイトに基づき、該実データの密度分布を復元することを特徴としている。
【0019】
また、請求項11記載の本発明のデータ処理方法は、該ニューロンセンター及び該ニューロンウェイトに基づき、該空間内における該ニューロンの移動平均を演算する移動平均演算ステップと、該密度分布復元ステップで復元された該実データの密度分布に基づき、該移動平均演算手段で演算された該移動平均の閾値を設定する閾値設定ステップとをさらに備えたことを特徴としている。
【0020】
また、請求項12記載の本発明のデータ処理方法は、該密度分布復元ステップで復元された該実データの密度分布の重心点を演算する密度分布重心演算ステップをさらに備えたことを特徴としている。
また、請求項13記載の本発明のデータ処理方法は、該ニューロンセンターを構成するK種類のパラメータのうちのk番目のパラメータ(k=1,2,…,K)に対し、該k番目のパラメータの最小値Pkmin及び最大値Pkmax間を等間隔に分割するように、m個の等距離点xjk(j=1,2,…,m)を設定する等距離点設定ステップをさらに備え、該ニューロンセンター設定ステップにおいて、N個の該ニューロンのうちのi番目のニューロンにおける該k番目のパラメータの該ニューロンセンターをCikとして設定し、該ニューロン幅演算ステップにおいて、N個の該ニューロンのうちのi番目のニューロンにおける該k番目のパラメータの該ニューロン幅をwikとして演算するとともに、該ファジー値演算ステップにおいて、該i番目のニューロンにおける該k番目のパラメータの該ニューロンセンターCik及び該ニューロン幅wikに基づき、該メンバシップ関数としてガウス関数を適用し以下の式(4)
【0021】
【数4】
【0022】
を用いて、該ファジー値fi(xjk)を演算することを特徴としている。
また、請求項14記載の本発明のデータ処理方法は、該ニューロンウェイト演算ステップにおいて、N個の該ニューロンのうちのi番目のニューロンにおけるニューロンウェイトをgiとして演算するとともに、該密度分布復元ステップにおいて、該ファジー値演算ステップで演算された該ファジー値fi(xjk)及び該ニューロンウェイト演算ステップで演算された該ニューロンウェイトgiに基づき、以下の式(5)
【0023】
【数5】
【0024】
を用いて、該等距離点xjkにおける密度分布zjkを演算することを特徴としている。
また、請求項15記載の本発明のデータ処理方法は、該密度分布重心演算ステップにおいて、密度分布zjkの重心点GOPの座標をGOP=[xO1,xO2,…,xOK]として、各座標xOk(k=1,2,…,K)を以下の式(6)
【0025】
【数6】
【0026】
に基づいて演算することを特徴としている。
請求項16記載の本発明のデータ復元方法は、対象体の状態に応じて変動する複数のパラメータからなる複数の実データをニューラルネットワークの教師なし学習により多次元の複数のニューロンへと圧縮する圧縮装置であり、かつ、該多次元の空間内における該ニューロンの各々の位置をニューロンセンターとして設定し、一つの該ニューロンが代表する該実データの数をニューロンウェイトとして演算し、該空間内において、一つの該ニューロンから該ニューロンが代表する該実データまでの平均距離をニューロン幅として演算する圧縮装置、によって圧縮された該複数のニューロンから、該実データの構造を復元するデータ復元方法であって、所定のメンバシップ関数を用いて、該ニューロンセンター及び該ニューロン幅に基づき、各々の該ニューロンのファジー値を演算するファジー値演算ステップと、該ファジー値演算ステップにより演算された各々の該ニューロンの該ファジー値及び該ニューロンウェイトに基づき、該実データの密度分布を復元する密度分布復元ステップとを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0027】
本発明のデータ処理装置及びデータ処理方法(請求項1,9)によれば、圧縮されたニューロンをファジー化することにより、滑らかな実データの密度分布を復元することができる。
また、本発明のデータ処理装置,データ処理方法,データ復元装置及びデータ復元方法(請求項2,8,10及び16)によれば、ニューロンのファジー値とニューロンウェイトに基づく密度分布の復元により、実データの密度分布の復元率を向上させることができる。つまり、圧縮から復元までの過程において消失される情報量を減らすことができ、対象体の状態解析や傾向把握の精度を高めることができる。また、ニューロンのファジー値とニューロンウェイトに基づいて、実データにおける各パラメータ毎の密度分布をそれぞれ復元することができ、実データを視覚的かつ多面的に解析することが容易となる。
【0028】
また、本発明のデータ処理装置及びデータ処理方法(請求項3,11)によれば、閾値設定手段により密度分布に基づく閾値が設定されるため、ニューロンの移動平均のうち、実データの構造が良好に反映されている領域とそうでない領域との境界を定義することができる。これにより、ニューロンの移動平均を用いた対象体の状態解析,傾向把握の精度をより高めることができる。
【0029】
また、本発明のデータ処理装置及びデータ処理方法(請求項4,12)によれば、対象体の状態を多次元の空間内における点座標として簡潔に表すことができる。また、数値演算だけで対象体の状態を把握することができ、定量的な判断が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図12は本発明の一実施形態にかかるデータ処理装置を説明するものであり、図1は本データ処理装置の全体構成を示す構成図、図2は本装置で圧縮された実データ及びニューロンを二次元空間上に示したグラフ、図3は図2における各ニューロンの幅を示す図、図4(a),(b)は図2における各ニューロンの各パラメータについての位置及びニューロン幅をガウス関数で近似して示したグラフ、図5は実データ及びニューロンの各々の重みづけ移動平均を示すグラフ、図6はニューロンの重みづけ移動平均及びFIRA法により復元された実データの密度分布を示すグラフ、図7(a),(b)は正常運転時及び非正常運転時における稼働特性を説明するためのグラフ、図8(a),(b)は実データの密度分布の重心点を示すグラフ、図9は本装置におけるデータ圧縮時の制御内容を説明するためのフローチャート、図10は本装置におけるファジー化制御を説明するためのフローチャート、図11は本装置におけるニューロンの重みづけ移動平均の演算制御を説明するためのフローチャート、図12は本装置における実データの重心点の演算制御を説明するためのフローチャートである。
【0031】
[1.構成]
[1−1]全体構成
図1に示すように、本データ処理装置10は、油圧ショベルの状態(正常,非正常,故障等の状態)を診断の対象としたものであり、油圧ショベル上に搭載された第1データ処理装置10aと、油圧ショベルから離れた場所にあるメンテナンスセンター(例えば、第1データ処理装置10aが設けられた油圧ショベルを所有、あるいは管理する事業所等)で情報処理を行うための第2データ処理装置10bとを備えて構成される。
【0032】
第1データ処理装置10aは、データ検出装置11,圧縮装置1及び通信装置12を備えて構成される。一方、第2データ処理装置10bは、通信装置13,復元装置9及びデータ出力装置14を備えて構成される。
圧縮装置1及び復元装置9はともに、処理プログラムを内蔵した記憶装置(ROM,RAM等)や中央処理装置(CPU)を備えたコンピュータである。圧縮装置1は、その内部に機能部位として、ニューロンセンター設定部(ニューロンセンター設定手段)1a,ニューロンウェイト演算部(ニューロンウェイト演算手段)1b及びニューロン幅演算部(ニューロン幅演算手段)1cを備えている。また、復元装置9は、その内部に機能部位として、ファジー化部(ファジー化手段)2,密度分布復元部(密度分布復元手段)4,移動平均演算部(移動平均演算手段)5,閾値設定部(閾値設定手段)6及び重心点演算部(重心点演算手段)7を備えている。
【0033】
[1−2]第1データ処理装置
データ検出装置11には、油圧ショベルに関する各パラメータ(変動要素)に対応する各種のセンサが設けられている。これらのセンサは、油圧ショベルの動作に応じて変動する各パラメータ値を各動作モード毎に検出するようになっている。
ここで検出されるパラメータとは、センサから直接検出されるデータのほか、ある検出データを演算等によって処理して、対応するパラメータの値を推定値として求めたものを含む。例えば、エンジン回転数,燃料消費量,油圧ポンプ圧力(1つ又は複数の油圧ポンプ圧力),油圧回路内の油温,車体の前進・後進或いは旋回を制御する作動圧,バケットを制御するバケットシリンダの作動圧,スティックを制御するスティックシリンダの作動圧,ブームを制御するブームシリンダの作動圧などが挙げられる。
【0034】
本データ処理装置10では、これらの同時に検出された各パラメータ(同一の状態下において検出された各パラメータのことを意味し、ここでは同時刻に検出された各パラメータのことをいう)が、ひとつの実データxsとして圧縮装置1へ入力されるようになっている。
以下、データ検出装置11から圧縮装置1へ入力される実データxsを一般化して以下の式7のように記述する。なお、データ検出装置11で検出された実データxsの総数をM個、各実データxsを構成するパラメータの種類数をK種類とする。また、以下の数式中においては、ベクトルやマトリックスを意味する記号を太字(Bold)で示し、スカラーを意味する記号を斜体(Italic)で示す。
【0035】
【数7】
【0036】
つまりここでは、一つの実データxsを、K次元空間内における点座標(データ点)として記述しており、データ検出装置11で検出されたM個の実データxsは、K次元空間内におけるM個の点の集合として表現される。このようなデータ点の集合のことを、「データの雲」と呼ぶ。
圧縮装置1は、これらのM個の実データxsを、これよりも大幅に数の少ないN個の情報の粒(N<<M)に置き換えることをコンセプトとして、情報を圧縮する演算を行う。ここでは、データ全体の形(すなわち、データの雲の形状)とデータの密度(すなわち、データ点の密度)とを算出することによって実データxsの構造を保ちながら情報量を小さくするようになっている。
【0037】
圧縮の手法としては、ニューラルネットワークの教師なし学習法が用いられるようになっている。具体的には、ニューラルガス学習法や自己組織化マップ学習法等の公知の学習法により学習(トレーニング)がなされ、N個の情報の粒がニューロンとして得られることになる。
例えば、K次元空間内に所定数のニューロンがランダムに配置されるとともに、実データxsがそのK次元空間内に入力され、ニューロンの学習が繰り返し行われる。この学習の後、弱いニューロンやアイドリングニューロンが削除され、N個のニューロンからなるニューロンセットが作成される。
【0038】
なお、圧縮装置1は、データ検出装置11から入力されたデータxsを一時的に蓄え、所定の稼働時間毎にまとめて圧縮するようになっている。例えば、1日の油圧ショベルの稼働によって蓄積された数千個以上のデータを実データxsとしている。
【0039】
[1−2−1]ニューロンセンター
このようなニューロンセットの各ニューロンについて、ニューロンセンター設定部1aは、K次元空間内における各ニューロンの位置の情報を、ニューロンセンター[c1,c2,…,cN]として設定する。各ニューロンはK種類のパラメータを備えて構成されているため、ニューロンセンターciはK次元のベクトル量として表現され、その一般式は以下の式8に示す通りとなる。
【0040】
【数8】
【0041】
なお、一般的に、ニューロンのニューロンセンターciが多くの実データxsに囲まれているほど、そのニューロンはそれらの実データxsを代表しているものと見なすことができる。
【0042】
[1−2−2]ニューロンウェイト
また、ニューロンウェイト演算部1bは、各ニューロンが代表する実データxsの数をニューロンウェイト[g1,g2,…,gN]として演算する。換言すれば、ニューロンウェイトgiとは、そのニューロンがM個の実データxsのうちの何個の実データxsに対して勝者ニューロンとなっているかを示すものである。つまり、このニューロンウェイトgiは、スカラー量として表現される。なお、ニューロンウェイトgiとは、ニューロンの強さを示す指標といえる。
【0043】
まず、ニューロンウェイト演算部1bは、各実データxsに対し、以下の式9に示すユークリッド距離の最も短いニューロンである勝者ニューロンnsを算出する。
【0044】
【数9】
【0045】
ただし、Ds(n)は、実データxsからi番目のニューロンまでの距離
次にこの情報を用いて、ニューロンウェイト演算部1bは、M個の実データxsをN個のサブセットMi(i=1,2,…,N)に分割する。各サブセットMiは、同じi番目のニューロンを勝者ニューロンとしている実データxsを有している。各サブセットMiに含まれる実データxsの数をmi(i=1,2,…,N)と表すと、以下の式10,式11に示す条件が成立している。
【0046】
【数10】
【0047】
つまり、ニューロンの標準化したウェイトgiは、以下に示す式12で計算される。
【0048】
【数11】
【0049】
各サブセットMi(i=1,2,…,N)は、K次元空間内に固有のサブ空間を形成しており、いわゆる「ボロノイ多角形」に類似した形状をなしている。ボロノイ多角形とは、平面中に多数の点が存在する場合に、隣り合った点の垂直二等分線によって形成される複雑な形状の多角形のことをいう。
例えば、M=759個の実データxsをN=6個のニューロンへと圧縮した場合に、K種類のうち2つのパラメータX1,X2についての各ニューロンの配置と各サブセットMiとを図2に示す。各サブセットMiの境界線が図中に破線で示されており、平面が複雑な多角形体で仕切られることになる。重要な点は、この多角形内にそれぞれ一つずつ位置するニューロンは、各多角形内に存在する全ての実データxsに対して勝者ニューロンであるということである。なお、図2中には、6つのボロノイ多角形とそれらに対応した実データxsの数miが示されている。
【0050】
[1−2−3]ニューロン幅
ニューロン幅演算部1cは、それぞれにニューロンについて、サブセットMi内に存在する各実データxsまでの平均距離をニューロン幅[w1,w2,…,wN]として演算する。これは、図2に示すように、各サブセットMiの領域内には、部分的に実データxsの存在しないところがあり、ボロノイ多角形によって囲まれる領域の大きさが必ずしも実データxsの分布状態を反映したものとはいえないからである。ここでは、ニューロン幅wi(i=1,2,…,N)を実データxsの分布状態を示す指標として扱うこととする。なお、ニューロン幅wiは、K次元のベクトル量として表現され、その一般式は以下の式13,14に示す通りとなる。
【0051】
【数12】
【0052】
図3は、図2に示した各ニューロンの幅wiのうち、2つのパラメータX1,X2についてのニューロンの幅を寸法(長さ)で示したものである。
なお、圧縮装置1内で設定,演算された各ニューロンのニューロンセンターci,ニューロンウェイトgi及びニューロン幅wiの情報は、通信装置12へと入力されるようになっている。
【0053】
通信装置12は、油圧ショベルの外部へ無線送信を行うためのものであり、圧縮装置1から入力された情報を、事業所のメンテナンスセンター内に設けられた第2データ処理装置10bへと送信する。通信装置12における通信頻度は、圧縮装置1における圧縮頻度に対応しており、例えば油圧ショベルの稼働終了後に、1日1回送信されるようになっている。
【0054】
[1−3]第2データ処理装置
第1データ処理装置10aの通信装置12から送信された情報は、第2データ処理装置10bの通信装置13によって受信され、復元装置9へと入力される。復元装置9の内部において、ニューロン幅wiの情報はファジー化部2へ入力され、ニューロンセンターciの情報はファジー化部2及び移動平均演算部5へ入力され、ニューロンウェイトgiの情報は移動平均演算部5及び閾値設定部6へと入力される。
【0055】
復元装置9は、圧縮されたニューロンから、元の実データの構造を復元する演算を行うものである。
なお、ここでいう情報の復元とは、例えばソフトウェア応用分野におけるデータの展開や解凍(decompression,unzipping)とは異なるアイデアである。主な違いは、オリジナルの情報を完全に復元するのではなく、圧縮した情報に基づいて元のデータのパラメータ間の相関を抽出することや、データの密度分布の概略を復元することを目的としている点である。前述の通り、圧縮装置1が実データxsの構造を保ちながら情報量を小さくするようになっているのは、このような目的を意識したものである。
【0056】
[1−4]ファジー化部
ファジー化部2は、所定のメンバシップ関数を用いて、圧縮された各々のニューロンをファジー化するように機能するものである。
まず、等距離点設定部8は、入力された各ニューロンセンターciを構成するk番目のパラメータ(k=1,2,…,K)に対し、スキャニングによって、k番目のパラメータの最小値Pkmin及び最大値Pkmax間を等間隔に分割するように、m個の等距離点xjk(j=1,2,…,m)を設定する。つまりここでは、例えばK種類のうち任意の一種類のパラメータに着目して全てのニューロンセンターciを眺めたときに、そのパラメータの最小値Pkmin及び最大値Pkmaxを抽出し、それらの値の間に等間隔の目盛りを割り付けていることになる。この場合、各目盛りの位置が等距離点xjkとなる。
【0057】
次に、ファジー値演算部3が、k番目のパラメータから作られた全ての等距離点xjkに対し、N個のガウスメンバシップ関数を使って、以下の式15に基づきファジー値fi(xjk)を演算する。なお、演算されるファジー値の大きさは、0≦fi(xjk)≦1の範囲内である。
【0058】
【数13】
【0059】
図4(a),(b)に示すように、ニューロンセンターCi、すなわち各ニューロンの位置情報をガウス密度分布関数の頂点の位置とみなし、さらに、ニューロン幅wiをガウス密度分布関数の幅とみなすことで、各ニューロンが代表している実データxsの分布を、全パラメータにわたって近似的に復元している。このように、ファジー推論による相関解析の手法のことを、FIRA法(FIRA method, Fuzzy Inference Relationship Analysis)と呼ぶ。
【0060】
このFIRA法では、各パラメータのデータ密度分布をある程度まで復元し、かつ密度分布を滑らかに内挿することができるようになっている。復元した密度分布曲線を各パラメータ毎に描いて視覚的に解析することが可能である。
なお、ファジー化のメンバシップ関数として適用されているガウス関数は、各パラメータ毎にニューロンの数Nと同じ数だけ用意される。したがって、図4(a),(b)に示すように、例えばパラメータX1についてのガウス密度分布関数は、パラメータX2についてのガウス密度分布関数とは異なる形で与えられる。
ここで演算されたファジー値fi(xjk)は、密度分布復元部4へ入力されるようになっている。
【0061】
[1−5]密度分布復元部
密度分布復元部4は、ファジー化部2から入力されたファジー値fi(xjk)及び通信装置13から入力されたニューロンウェイトgiに基づき、以下の式16に従って等距離点xjkにおける密度分布zjkを演算する。
【0062】
【数14】
【0063】
つまりここでは、各ニューロンが代表している各実データxsの密度が各等距離点xjkにおいて算出され、それらが合算されて実データxsの密度分布zjkが近似的に復元されることになる。
【0064】
[1−6]移動平均演算部
移動平均演算部5は、古典的な「移動平均」の演算手法に「重みづけ」を加えた手法で演算処理を行うものであり、通信装置13から入力されたニューロンセンターCi及びニューロンウェイトgiに基づき、各ニューロンの移動平均値を演算する。
【0065】
具体的には、移動平均演算部5が、各ニューロンにおいて、K種類のパラメータのうちの任意の2種類のパラメータP1,P2を選択し、二次元平面内[P1,P2]内に各ニューロンを配置する。また、スキャニングにより、何れか一方のパラメータ(例えば、パラメータP1)の最大値P1maxと最小値P1minとを読み込むとともに、これらの幅(P1max−P1min)よりも短い所定長WLのウィンドウを設定する。
【0066】
続いて、このウィンドウをパラメータP1の左境界側に配置し、ウィンドウ内に含まれているニューロンの重心点を算出し、二次元平面上にプロットする。所定のオーバーラップWOでウィンドウをパラメータP1の左境界側から右境界側へと順に移動させながらニューロンの重心点をプロットすることを繰り返して、ウィンドウの配置箇所数Mwと同じ数の重心点Vjを二次元平面状にプロットするようになっている。
【0067】
なお、j番目のウィンドウ(j=1,2,…,Mw)の重心点Vjの座標(VX,VY)は、以下の式17を用いて演算することができる。
【0068】
【数15】
【0069】
ここで、cjiX及びcjiYは、i番目のニューロン(i=1,2,…,Nj)のセンターであり、giはニューロンウェイトである。つまりここでは、ニューロンの位置をウェイトによって重みづけした重心点が演算されていることになる。なお、ウィンドウは互いにオーバーラップしているため、次の不等式18が成立する。
【0070】
【数16】
【0071】
上述のようにプロットされた、パラメータのあるペア[X,Y]に対する相関曲線は、ウィンドウ長さWLやオーバーラップWOの幅に依存した形状として二次元平面内[P1,P2]にプロットされることになるが、一般に、ウィンドウ数が多く(例えば、Mw>10)、またオーバーラップ量が中庸(例えば、ウィンドウ幅WLの50%程度)である場合には、実データxsから算出した移動平均と比較して視覚的にロスの少ない良好な曲線が得られる。
【0072】
図5に、移動平均演算部5での演算結果をグラフ化したものを例示したように、実データの移動平均のグラフとニューロンの重みづけ移動平均のグラフとは、概ね一致していることがわかる。
このような重み付け移動平均による解析手法は、パラメータのあるペアに対する相関曲線に差があるかどうかを容易に発見することのできるツールとして使うことができる。すなわち、パラメータのあるペアに対する相関曲線を視覚的に比較して、油圧ショベルの劣化や非正常な兆候などを発見することができる。
なお、ここで演算されたニューロンの重みづけ移動平均は、データ出力装置14へ入力されるようになっている。
【0073】
[1−7]閾値演算部
閾値演算部6は、密度分布復元部4で演算された密度分布zjkに基づいて、移動平均演算部5で演算されたニューロンの重みづけ移動平均の閾値を設定するものである。ここでは、密度分布zjkの大きさが、予め設定された所定値(例えば、0.03)よりも大きくなる等距離点xjk及び該所定値よりも小さくなる等距離点xjkを閾値として設定する。
【0074】
例えば、2つの閾値によって挟まれた範囲を「密度分布zjkが十分意味を持つ範囲」、すなわち、密度分布zjkに対応する重みづけ移動平均の信頼できる範囲、とみなすようになっている。なお、ここで演算された閾値は、データ出力装置14へ入力されるようになっている。
このように、重みづけした移動平均の手法とFIRA法を通して得られた閾値とを組み合わせることによって、油圧ショベルの稼働パラメータのいかなる組合せに対しても、視覚的に容易に比較が可能なヒューマンサポート技術(マンマシーン技術)を作り出し、発生している可能性のある機械の劣化等に対し、正常時との「違い」を発見したり、正常であるか否かの「判定」を行ったりすることができることになる。
【0075】
[1−8]重心点演算部
重心点演算部7は、密度分布復元部4で復元された実データxsの密度分布zjkの重心点GOPを演算するものである。ここでは、密度分布zjkの重心点GOPの座標をGOP=[xO1,xO2,…,xOK]として、各座標xOk(k=1,2,…,K)を以下の式19に従って演算する。
【0076】
【数17】
【0077】
K次元空間内における密度分布zjkの重心点GOPは、M個の実データxsが検出された油圧ショベルの稼働状態を最も簡潔に表している。ここで演算された重心点GOPは、データ出力装置14へ入力されるようになっている。
【0078】
[2.フローチャート]
本実施形態に係るデータ処理装置は、上述のように構成されており、その処理は図9〜図12に示すフローチャートに沿って実行される。図9のフローチャートは圧縮装置1における実データxsの圧縮時に実行されるフローであり、図10〜図12のフローチャートは、復元装置9における情報の復元時に実行されるフローである。
【0079】
[2−1]圧縮フロー
図9に示すフローチャートでは、M個の実データxsが圧縮され、これよりも大幅に数の少ないN個のニューロンが生成される。
まずステップA10では、データ検出装置11で検出されたM個の実データxsが読み込まれる。ここでは、1日の油圧ショベルの稼働によって蓄積されたデータが実データxsとして読み込まれる。
【0080】
続くステップA20では、ニューラルネットワークの教師なし学習法により、M個の実データxsがN個(例えば数個)のニューロンセットへ圧縮される。このとき、情報量は大幅に小さくなるが、実データxsの構造は保たれたままとなる。
ステップA30では、ニューロンセンター設定部1aにおいて、圧縮された各ニューロンの位置の情報がニューロンセンター[c1,c2,…,cN]として設定される。ここでは、上記の式8に示すように、各ニューロンセンターci(i=1,2,…,N)がK次元のベクトル量として表現される。
【0081】
さらに続くステップA40では、ニューロンウェイト演算部1bにおいて、上記の式9〜12に基づき、各ニューロンによって代表される実データxsの数がニューロンウェイト[g1,g2,…,gN]として演算される。ここで演算される各ニューロンウェイトgi(i=1,2,…,N)は、スカラー量として表現される。
そして、続くステップA50では、ニューロン幅演算部1cにおいて、上記の式13,14に基づき、各々のニューロンを勝者ニューロンとする各実データxsまでの平均距離がニューロン幅wiとして演算される。ニューロン幅についてもニューロンセンターciと同様に、K次元のベクトル量として表現される
【0082】
[2−2]復元・ファジー化フロー
図10に示すフローチャートでは、圧縮されたニューロンのファジー化により実データxsの密度分布zjkが演算される。
まずステップB10では、ファジー化部2において、ニューロンセンターci,ニューロンウェイトgi及びニューロン幅wiが読み込まれる。続いてステップB20では、等距離点設定部8において、各ニューロンセンターciを構成するk番目のパラメータ(k=1,2,…,K)に対してそのパラメータの最小値Pkmin及び最大値Pkmax間を等間隔に分割するように、m個の等距離点xjk(j=1,2,…,m)が設定される。
【0083】
続いてステップB30では上述の式15に基づき、ファジー値演算部3において、各等距離点xjkに対するファジー値fi(xjk)が演算される。ここでは、ニューロンセンターCi、すなわち各ニューロンの位置情報がガウス密度分布関数の頂点の位置とみなされ、ニューロン幅wiがガウス密度分布関数の幅とみなされている。これにより、各ニューロンが代表している実データxsの分布が、全パラメータにわたって近似的に復元される。
【0084】
さらに続くステップB40では、密度分布復元部4において、前ステップで演算されたファジー値fi(xjk)とニューロンウェイトgiとに基づき、上述の式16に従って等距離点xjkにおける密度分布zjkが演算される。このステップにおいて、各ニューロンが代表している各実データxsの密度が各等距離点xjkにおいて算出され、それらが合算されて実データxsの密度分布zjkが近似的に復元される。
【0085】
[2−3]復元・移動平均演算フロー
図11に示すフローチャートでは、ファジー化フローで演算された実データxsの密度分布zjkを利用した判定のための演算がなされる。
ステップC10では、移動平均演算部5において、ニューロンセンターCi及びニューロンウェイトgiが読み込まれるとともに、閾値設定部6において密度分布復元部4で演算された密度分布zjkが読み込まれる。
【0086】
続くステップC20では、移動平均演算部5において、ニューロンセンターCiを構成するK種類のパラメータのうち、任意の2種類のパラメータP1,P2が選択され、二次元平面内[P1,P2]内に各ニューロンが配置される。
さらにステップC30では、スキャニングにより、何れか一方のパラメータP1の最大値P1maxと最小値P1minとが読み込まれ、これらの幅(P1max−P1min)よりも短い所定長WLのウィンドウが設定されるとともに、二次元平面[P1,P2]上におけるパラメータP1の左境界側から右境界側へ向けて、所定量だけオーバーラップWOする(ウィンドウ同士が重なる)ように、ウィンドウが所定数Mw配置される。
【0087】
そして、ステップC40において、上述の式17を用いて、各ウィンドウ内に含まれるニューロンについてそれらのニューロンセンターCi及びニューロンウェイトgiから重心点Vjが演算される。ここで演算された各ウィンドウにおけるニューロンの重心点Vjは、続くステップC50においてデータ出力装置14へ入力される。
一方、ステップC60では、閾値設定部6において、密度分布復元部4で演算された密度分布zjkの大きさ基づいて、閾値が設定される。例えば、密度分布zjkの大きさが0.03よりも大きくなる等距離点xjkが各パラメータにおける閾値として設定される。ここで設定された閾値は、ウィンドウが所定数Mw配置される。
【0088】
そして、ステップC70では、データ出力装置14において、二次元平面上に各ウィンドウの重心点VjがMw個プロットされるとともに、各パラメータに対応する閾値も同一平面状にプロットされる。なお、このステップでの制御結果例を図6に示す。
ここでは、エンジン回転数とブースト圧力との相関関係が示されている。太実線で示された折れ線グラフは、実データに基づく古典的な(ウェイトを考慮しない)移動平均手法で計算したものであり、細実線で示された方が各ウィンドウにおけるニューロンの重心点Vjを連結したものである。また、閾値設定部6で設定された閾値のうち、エンジン回転数に対応する閾値は破線で示されている。
【0089】
このように、ニューロンの重心点Vjを連結した、重み付けした移動平均のグラフと、密度分布から得られる閾値とを重ね合わせて示すことで、重み付けした移動平均のうちの信頼できる領域が視覚的に明確に表現される。
【0090】
[2−4]復元・重心点演算フロー
図12に示すフローチャートでは、ファジー化フローで演算された密度分布zjkの重心点GOPが演算される。
【0091】
まず、ステップD10では、重心点演算部7において、密度分布復元部4で演算された密度分布zjkが読み込まれる。続くステップD20では、密度分布zjkの重心点GOPの座標をGOP=[xO1,xO2,…,xOK]として、各座標xOk(k=1,2,…,K)が上述の式19に従って演算される。ここで算出されたGOPは、M個の実データxsが検出された油圧ショベルの稼働状態を簡潔に示している。
【0092】
そして、ステップD30では、データ出力装置14において、算出されたGOPが出力される。なお、K種類のパラメータから2つのパラメータ(エンジン回転数及びブースト圧力)を選択してこれらのパラメータを変数とした2次元平面上にGOPをプロットした例を図8(a)に示す。ここで、F1〜F5はそれぞれ、非正常状態の油圧ショベルから得られた実データに基づいて算出されたGOPの位置を示している。また、O1〜O5はそれぞれ、正常状態の油圧ショベルから得られた実データに基づいて算出されたGOPの位置を示している。また、NH,NM及びNLはそれぞれ、正常状態の油圧ショベルであって高負荷の状態,中負荷の状態及び低負荷の状態で得られた実データに基づくGOPの位置を示している。
【0093】
[3.効果]
本発明の一実施形態に係るデータ処理装置は、以下のような効果を奏する。
[3−1]ファジー推論による相関解析手法
まず、圧縮されたニューロンをファジー化することにより、滑らかな実データxsの密度分布zjkを復元することができる。これにより、油圧ショベルの稼働状態の正確な解析が可能となる。
【0094】
また、ニューロンのファジー値fi(xjk)とニューロンウェイトgiに基づく密度分布zjkの復元により、実データxsの密度分布zjkの復元率を向上させることができる。つまり、圧縮から復元までの過程において消失される情報量を減らすことができ、対象体の状態解析や傾向把握の精度を高めることができる。また、実データxsにおける各パラメータ毎の密度分布zjkをそれぞれ復元することができ、実データxsを視覚的かつ多面的に解析することが容易となる。
【0095】
また、復元された密度分布zjkのグラフは、移動平均演算部5で演算される重み付けした移動平均(重心点Vj)のグラフと組み合わせて用いると便利である。すなわち、閾値設定部6において「密度分布zjkが十分意味を持つ範囲」の閾値が設定されるようになっているため、ニューロンの移動平均のうち、実データxsの構造が良好に反映されている領域とそうでない領域との境界を定義することができる。これにより、データセットの特性を十分に再現しているとみなせる信頼性の高い範囲を明確にすることができ、ニューロンの移動平均を用いた対象体の状態解析,傾向把握の精度をより高めることができる。
【0096】
図7(a),(b)はそれぞれ、正常運転時及び非正常運転時におけるエンジン回転数と燃料消費量との相関関係を示すグラフであり、各々のケースにおける重み付け移動平均と閾値とを図示したものである。このように、運転状態の違いが「信頼できる領域」同士のグラフの差として視覚的に容易に発見することが可能である。
この場合、図7(b)に領域Aとして示すように、正常運転時における「信頼できる領域」と非正常運転時における「信頼できる領域」とが重なり合う部分の重み付け移動平均を確認することが好ましい。なお、閾値の設定に際し、このような運転状態の違いの発見がより容易となるような値を予め定めておくことも好ましい。
【0097】
[3−2]密度分布の重心点を利用した解析手法
また、重心点演算部7において演算される実データxsの密度分布zjkの重心点GOPに着目すると、図8(a)に示すように、正常運転時における重心点GOPは、ほぼ一本の線上(正常運転ラインNOL)に位置する特性を有していることがわかる。つまり、このような特性を利用すれば、運転状態のわからないデータに対してその密度分布zjkの重心点GOPを演算すれば、その重心点GOPと正常運転ラインNOLとの距離に基づいて、運転状態を把握することが可能となる。例えば、重心点GOPと正常運転ラインNOLとの距離が近い場合には正常運転であるとみなし、逆に距離が離れている場合には非正常状態であるとみなすことができる。
【0098】
上述の通り、この解析手法によれば、油圧ショベルの稼働状態を多次元の空間内における点座標として簡潔に表すことができる。また、数値演算だけで油圧ショベルの状態を把握することができ、定量的な判断が容易となる。
なお、上記ような判定の基準値を正常運転ラインNOLに対してある程度の幅を持たせることも一案である。例えば、図8(b)に示すように、正常運転ラインNOLの両側に2本のラインNOL′を引き、重心点GOPがこの2本のラインNOL′内に位置する場合には正常運転(又は正常状態に近い状態)であるとみなし、逆に位置しない場合には非正常状態であるとみなしてもよい。この場合、F1〜F3が「重い故障」の状態であると判断したり、F4,F5が「ほとんど正常、又は、穏やかな故障」の状態であると判断することができる。
【0099】
[4.その他]
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば上述の実施形態では、ファジー化のためのメンバシップ関数として、ガウス密度分布関数を用いているが、ファジー化の手法はこれに限定されず、値域が[0,1]である関数である他の関数を利用することも可能である。
【0100】
また、上述の実施形態では、ニューロンセンターCi及びニューロン幅wiに基づいてファジー値fi(xjk)を演算するようになっているが、ファジー値fi(xjk)の算出に際してニューロンウェイトgiを考慮した演算としてもよい。
なお、本実施形態では、診断の対象として油圧ショベルを例に挙げたが、対象体はこれに限定されるものではなく、例えばトラック・バス,船舶等の乗物類、及び、産業機械をはじめとした各種機械類の動作の良否判定等に広く適用できるほか、動植物や微生物等の生命体の状態の良否判定等や、天候或いは地球等、天体の変化の推定等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の一実施形態にかかるデータ処理装置の全体構成を示す構成図である。
【図2】本装置で圧縮された実データ及びニューロンを二次元空間上に示したグラフである。
【図3】図2における各ニューロンの幅を示す図である。
【図4】図2における各ニューロンの各パラメータについての位置及びニューロン幅をガウス関数で近似して示したグラフであり、(a)はパラメータX1についてのグラフ、(b)はパラメータX2(X2≠X1)についてのグラフである。
【図5】実データ及びニューロンの各々の重みづけ移動平均を示すグラフである。
【図6】ニューロンの重みづけ移動平均及びFIRA法により復元された実データの密度分布を示すグラフである。
【図7】本装置に係る油圧ショベルの稼働特性を説明するためのグラフであり、(a)は正常運転時、(b)は非正常運転時を示す。
【図8】本装置で演算される実データの密度分布の重心点を示すグラフであり、(a)は油圧ショベルの正常運転時及び非正常運転時における重心点を併せて示したものであり、(b)は運転状態の診断に係る閾値設定例を示したものである。
【図9】本装置におけるデータ圧縮時の制御内容を説明するためのフローチャートである。
【図10】本装置におけるファジー化制御を説明するためのフローチャートである。
【図11】本装置におけるニューロンの重み付け移動平均の演算制御を説明するためのフローチャートである。
【図12】本装置における実データの重心点の演算制御を説明するためのフローチャートである。
【図13】従来技術に係るデータセットの密度分布を図示した三次元グラフである。
【図14】従来技術に係るウェイト情報を考慮したニューロンの移動平均を示すグラフである。
【符号の説明】
【0102】
1 圧縮装置
1a ニューロンセンター設定部(ニューロンセンター設定手段)
1b ニューロンウェイト演算部(ニューロンウェイト演算手段)
1c ニューロン幅演算部(ニューロン幅演算手段)
2 ファジー化部(ファジー化手段)
3 ファジー値演算部(ファジー値演算手段)
4 密度分布復元部(密度分布復元手段)
5 移動平均演算部(移動平均演算手段)
6 閾値設定部(閾値設定手段)
7 重心点演算部(密度分布重心演算手段)
8 等距離点設定部(等距離点設定手段)
9 復元装置(データ復元装置)
10 データ処理装置
10a 第1データ処理装置
10b 第2データ処理装置
11 データ検出装置
12,13 通信装置
14 データ出力装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象体の状態に応じて変動する複数のパラメータからなる複数の実データを、ニューラルネットワークの教師なし学習により多次元の複数のニューロンへと圧縮するとともに、該ニューロンから該実データの構造を復元するデータ処理装置であって、
所定のメンバシップ関数を用いて、圧縮された各々の該ニューロンをファジー化するファジー化手段と、
該ファジー化手段によりファジー化された各々の該ニューロンに基づき、該実データの密度分布を復元する密度分布復元手段と
を備えたことを特徴とする、データ処理装置。
【請求項2】
該多次元の空間内における該ニューロンの各々の位置をニューロンセンターとして設定するニューロンセンター設定手段と、
一つの該ニューロンが代表する該実データの数をニューロンウェイトとして演算するニューロンウェイト演算手段と、
該空間内において、一つの該ニューロンから該ニューロンが代表する該実データまでの平均距離をニューロン幅として演算するニューロン幅演算手段とをさらに備えるとともに、
該ファジー化手段が、該ニューロンセンター及び該ニューロン幅に基づき、各々の該ニューロンのファジー値を演算するファジー値演算手段を有し、
該密度分布復元手段が、該ファジー値演算手段により演算された各々の該ニューロンの該ファジー値及び該ニューロンウェイトに基づき、該実データの密度分布を復元する
ことを特徴とする、請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項3】
該ニューロンセンター及び該ニューロンウェイトに基づき、該空間内における該ニューロンの移動平均を演算する移動平均演算手段と、
該密度分布復元手段で復元された該実データの密度分布に基づき、該移動平均演算手段で演算された該移動平均の閾値を設定する閾値設定手段と
をさらに備えたことを特徴とする、請求項2記載のデータ処理装置。
【請求項4】
該密度分布復元手段で復元された該実データの密度分布の重心点を演算する密度分布重心演算手段
をさらに備えたことを特徴とする、請求項3記載のデータ処理装置。
【請求項5】
該ニューロンセンターを構成するK種類のパラメータのうちのk番目のパラメータ(k=1,2,…,K)に対し、該k番目のパラメータの最小値Pkmin及び最大値Pkmax間を等間隔に分割するように、m個の等距離点xjk(j=1,2,…,m)を設定する等距離点設定手段をさらに備え、
該ニューロンセンター設定手段が、N個の該ニューロンのうちのi番目のニューロンにおける該k番目のパラメータの該ニューロンセンターをCikとして設定し、
該ニューロン幅演算手段が、N個の該ニューロンのうちのi番目のニューロンにおける該k番目のパラメータの該ニューロン幅をwikとして演算するとともに、
該ファジー値演算手段が、該i番目のニューロンにおける該k番目のパラメータの該ニューロンセンターCik及び該ニューロン幅wikに基づき、該メンバシップ関数としてガウス関数を適用し以下の式(1)
【数1】
を用いて、該ファジー値fi(xjk)を演算する
ことを特徴とする、請求項4記載のデータ処理装置。
【請求項6】
該ニューロンウェイト演算手段が、N個の該ニューロンのうちのi番目のニューロンにおけるニューロンウェイトをgiとして演算するとともに、
該密度分布復元手段が、該ファジー値演算手段で演算された該ファジー値fi(xjk)及び該ニューロンウェイト演算手段で演算された該ニューロンウェイトgiに基づき、以下の式(2)
【数2】
を用いて、該等距離点xjkにおける密度分布zjkを演算する
ことを特徴とする、請求項5記載のデータ処理装置。
【請求項7】
該密度分布重心演算手段が、密度分布zjkの重心点GOPの座標をGOP=[xO1,xO2,…,xOK]として、各座標xOk(k=1,2,…,K)を以下の式(3)
【数3】
に基づいて演算する
ことを特徴とする、請求項6記載のデータ処理装置。
【請求項8】
対象体の状態に応じて変動する複数のパラメータからなる複数の実データを、ニューラルネットワークの教師なし学習により多次元の複数のニューロンへと圧縮する圧縮装置であり、かつ、該多次元の空間内における該ニューロンの各々の位置をニューロンセンターとして設定し、一つの該ニューロンが代表する該実データの数をニューロンウェイトとして演算し、該空間内において、一つの該ニューロンから該ニューロンが代表する該実データまでの平均距離をニューロン幅として演算する圧縮装置、によって圧縮された該複数のニューロンから、該実データの構造を復元するためのデータ復元装置であって、
所定のメンバシップ関数を用いて、該ニューロンセンター及び該ニューロン幅に基づき、各々の該ニューロンのファジー値を演算するファジー値演算手段と、
該ファジー化手段により演算された各々の該ニューロンの該ファジー値及び該ニューロンウェイトに基づき、該実データの密度分布を復元する密度分布復元手段と
を備えたことを特徴とする、データ復元装置。
【請求項9】
対象体の状態に応じて変動する複数のパラメータからなる複数の実データを、ニューラルネットワークの教師なし学習により多次元の複数のニューロンへと圧縮するとともに、該ニューロンから該実データの構造を復元するデータ処理方法であって、
所定のメンバシップ関数を用いて、圧縮された各々の該ニューロンをファジー化するファジー化ステップと、
該ファジー化ステップにおいてファジー化された各々の該ニューロンに基づき、該実データの密度分布を復元する密度分布復元ステップと
を備えたことを特徴とする、データ処理方法。
【請求項10】
該多次元の空間内における該ニューロンの各々の位置をニューロンセンターとして設定するニューロンセンター設定ステップと、
一つの該ニューロンが代表する該実データの数をニューロンウェイトとして演算するニューロンウェイト演算ステップと、
該空間内において、一つの該ニューロンから該ニューロンが代表する該実データまでの平均距離をニューロン幅として演算するニューロン幅演算ステップとをさらに備えるとともに、
該ファジー化ステップが、該ニューロンセンター及び該ニューロン幅に基づき、各々の該ニューロンのファジー値を演算するファジー値演算ステップを有し、
該密度分布復元ステップにおいて、該ファジー値演算ステップにより演算された各々の該ニューロンの該ファジー値及び該ニューロンウェイトに基づき、該実データの密度分布を復元する
ことを特徴とする、請求項9記載のデータ処理方法。
【請求項11】
該ニューロンセンター及び該ニューロンウェイトに基づき、該空間内における該ニューロンの移動平均を演算する移動平均演算ステップと、
該密度分布復元ステップで復元された該実データの密度分布に基づき、該移動平均演算手段で演算された該移動平均の閾値を設定する閾値設定ステップと
をさらに備えたことを特徴とする、請求項10記載のデータ処理方法。
【請求項12】
該密度分布復元ステップで復元された該実データの密度分布の重心点を演算する密度分布重心演算ステップ
をさらに備えたことを特徴とする、請求項11記載のデータ処理方法。
【請求項13】
該ニューロンセンターを構成するK種類のパラメータのうちのk番目のパラメータ(k=1,2,…,K)に対し、該k番目のパラメータの最小値Pkmin及び最大値Pkmax間を等間隔に分割するように、m個の等距離点xjk(j=1,2,…,m)を設定する等距離点設定ステップをさらに備え、
該ニューロンセンター設定ステップにおいて、N個の該ニューロンのうちのi番目のニューロンにおける該k番目のパラメータの該ニューロンセンターをCikとして設定し、
該ニューロン幅演算ステップにおいて、N個の該ニューロンのうちのi番目のニューロンにおける該k番目のパラメータの該ニューロン幅をwikとして演算するとともに、
該ファジー値演算ステップにおいて、該i番目のニューロンにおける該k番目のパラメータの該ニューロンセンターCik及び該ニューロン幅wikに基づき、該メンバシップ関数としてガウス関数を適用し以下の式(4)
【数4】
を用いて、該ファジー値fi(xjk)を演算する
ことを特徴とする、請求項12記載のデータ処理方法。
【請求項14】
該ニューロンウェイト演算ステップにおいて、N個の該ニューロンのうちのi番目のニューロンにおけるニューロンウェイトをgiとして演算するとともに、
該密度分布復元ステップにおいて、該ファジー値演算ステップで演算された該ファジー値fi(xjk)及び該ニューロンウェイト演算ステップで演算された該ニューロンウェイトgiに基づき、以下の式(5)
【数5】
を用いて、該等距離点xjkにおける密度分布zjkを演算する
ことを特徴とする、請求項13記載のデータ処理方法。
【請求項15】
該密度分布重心演算ステップにおいて、密度分布zjkの重心点GOPの座標をGOP=[xO1,xO2,…,xOK]として、各座標xOk(k=1,2,…,K)を以下の式(6)
【数6】
に基づいて演算する
ことを特徴とする、請求項14記載のデータ処理方法。
【請求項16】
対象体の状態に応じて変動する複数のパラメータからなる複数の実データをニューラルネットワークの教師なし学習により多次元の複数のニューロンへと圧縮する圧縮装置であり、かつ、該多次元の空間内における該ニューロンの各々の位置をニューロンセンターとして設定し、一つの該ニューロンが代表する該実データの数をニューロンウェイトとして演算し、該空間内において、一つの該ニューロンから該ニューロンが代表する該実データまでの平均距離をニューロン幅として演算する圧縮装置、によって圧縮された該複数のニューロンから、該実データの構造を復元するデータ復元方法であって、
所定のメンバシップ関数を用いて、該ニューロンセンター及び該ニューロン幅に基づき、各々の該ニューロンのファジー値を演算するファジー値演算ステップと、
該ファジー値演算ステップにより演算された各々の該ニューロンの該ファジー値及び該ニューロンウェイトに基づき、該実データの密度分布を復元する密度分布復元ステップと
を備えたことを特徴とする、データ復元方法。
【請求項1】
対象体の状態に応じて変動する複数のパラメータからなる複数の実データを、ニューラルネットワークの教師なし学習により多次元の複数のニューロンへと圧縮するとともに、該ニューロンから該実データの構造を復元するデータ処理装置であって、
所定のメンバシップ関数を用いて、圧縮された各々の該ニューロンをファジー化するファジー化手段と、
該ファジー化手段によりファジー化された各々の該ニューロンに基づき、該実データの密度分布を復元する密度分布復元手段と
を備えたことを特徴とする、データ処理装置。
【請求項2】
該多次元の空間内における該ニューロンの各々の位置をニューロンセンターとして設定するニューロンセンター設定手段と、
一つの該ニューロンが代表する該実データの数をニューロンウェイトとして演算するニューロンウェイト演算手段と、
該空間内において、一つの該ニューロンから該ニューロンが代表する該実データまでの平均距離をニューロン幅として演算するニューロン幅演算手段とをさらに備えるとともに、
該ファジー化手段が、該ニューロンセンター及び該ニューロン幅に基づき、各々の該ニューロンのファジー値を演算するファジー値演算手段を有し、
該密度分布復元手段が、該ファジー値演算手段により演算された各々の該ニューロンの該ファジー値及び該ニューロンウェイトに基づき、該実データの密度分布を復元する
ことを特徴とする、請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項3】
該ニューロンセンター及び該ニューロンウェイトに基づき、該空間内における該ニューロンの移動平均を演算する移動平均演算手段と、
該密度分布復元手段で復元された該実データの密度分布に基づき、該移動平均演算手段で演算された該移動平均の閾値を設定する閾値設定手段と
をさらに備えたことを特徴とする、請求項2記載のデータ処理装置。
【請求項4】
該密度分布復元手段で復元された該実データの密度分布の重心点を演算する密度分布重心演算手段
をさらに備えたことを特徴とする、請求項3記載のデータ処理装置。
【請求項5】
該ニューロンセンターを構成するK種類のパラメータのうちのk番目のパラメータ(k=1,2,…,K)に対し、該k番目のパラメータの最小値Pkmin及び最大値Pkmax間を等間隔に分割するように、m個の等距離点xjk(j=1,2,…,m)を設定する等距離点設定手段をさらに備え、
該ニューロンセンター設定手段が、N個の該ニューロンのうちのi番目のニューロンにおける該k番目のパラメータの該ニューロンセンターをCikとして設定し、
該ニューロン幅演算手段が、N個の該ニューロンのうちのi番目のニューロンにおける該k番目のパラメータの該ニューロン幅をwikとして演算するとともに、
該ファジー値演算手段が、該i番目のニューロンにおける該k番目のパラメータの該ニューロンセンターCik及び該ニューロン幅wikに基づき、該メンバシップ関数としてガウス関数を適用し以下の式(1)
【数1】
を用いて、該ファジー値fi(xjk)を演算する
ことを特徴とする、請求項4記載のデータ処理装置。
【請求項6】
該ニューロンウェイト演算手段が、N個の該ニューロンのうちのi番目のニューロンにおけるニューロンウェイトをgiとして演算するとともに、
該密度分布復元手段が、該ファジー値演算手段で演算された該ファジー値fi(xjk)及び該ニューロンウェイト演算手段で演算された該ニューロンウェイトgiに基づき、以下の式(2)
【数2】
を用いて、該等距離点xjkにおける密度分布zjkを演算する
ことを特徴とする、請求項5記載のデータ処理装置。
【請求項7】
該密度分布重心演算手段が、密度分布zjkの重心点GOPの座標をGOP=[xO1,xO2,…,xOK]として、各座標xOk(k=1,2,…,K)を以下の式(3)
【数3】
に基づいて演算する
ことを特徴とする、請求項6記載のデータ処理装置。
【請求項8】
対象体の状態に応じて変動する複数のパラメータからなる複数の実データを、ニューラルネットワークの教師なし学習により多次元の複数のニューロンへと圧縮する圧縮装置であり、かつ、該多次元の空間内における該ニューロンの各々の位置をニューロンセンターとして設定し、一つの該ニューロンが代表する該実データの数をニューロンウェイトとして演算し、該空間内において、一つの該ニューロンから該ニューロンが代表する該実データまでの平均距離をニューロン幅として演算する圧縮装置、によって圧縮された該複数のニューロンから、該実データの構造を復元するためのデータ復元装置であって、
所定のメンバシップ関数を用いて、該ニューロンセンター及び該ニューロン幅に基づき、各々の該ニューロンのファジー値を演算するファジー値演算手段と、
該ファジー化手段により演算された各々の該ニューロンの該ファジー値及び該ニューロンウェイトに基づき、該実データの密度分布を復元する密度分布復元手段と
を備えたことを特徴とする、データ復元装置。
【請求項9】
対象体の状態に応じて変動する複数のパラメータからなる複数の実データを、ニューラルネットワークの教師なし学習により多次元の複数のニューロンへと圧縮するとともに、該ニューロンから該実データの構造を復元するデータ処理方法であって、
所定のメンバシップ関数を用いて、圧縮された各々の該ニューロンをファジー化するファジー化ステップと、
該ファジー化ステップにおいてファジー化された各々の該ニューロンに基づき、該実データの密度分布を復元する密度分布復元ステップと
を備えたことを特徴とする、データ処理方法。
【請求項10】
該多次元の空間内における該ニューロンの各々の位置をニューロンセンターとして設定するニューロンセンター設定ステップと、
一つの該ニューロンが代表する該実データの数をニューロンウェイトとして演算するニューロンウェイト演算ステップと、
該空間内において、一つの該ニューロンから該ニューロンが代表する該実データまでの平均距離をニューロン幅として演算するニューロン幅演算ステップとをさらに備えるとともに、
該ファジー化ステップが、該ニューロンセンター及び該ニューロン幅に基づき、各々の該ニューロンのファジー値を演算するファジー値演算ステップを有し、
該密度分布復元ステップにおいて、該ファジー値演算ステップにより演算された各々の該ニューロンの該ファジー値及び該ニューロンウェイトに基づき、該実データの密度分布を復元する
ことを特徴とする、請求項9記載のデータ処理方法。
【請求項11】
該ニューロンセンター及び該ニューロンウェイトに基づき、該空間内における該ニューロンの移動平均を演算する移動平均演算ステップと、
該密度分布復元ステップで復元された該実データの密度分布に基づき、該移動平均演算手段で演算された該移動平均の閾値を設定する閾値設定ステップと
をさらに備えたことを特徴とする、請求項10記載のデータ処理方法。
【請求項12】
該密度分布復元ステップで復元された該実データの密度分布の重心点を演算する密度分布重心演算ステップ
をさらに備えたことを特徴とする、請求項11記載のデータ処理方法。
【請求項13】
該ニューロンセンターを構成するK種類のパラメータのうちのk番目のパラメータ(k=1,2,…,K)に対し、該k番目のパラメータの最小値Pkmin及び最大値Pkmax間を等間隔に分割するように、m個の等距離点xjk(j=1,2,…,m)を設定する等距離点設定ステップをさらに備え、
該ニューロンセンター設定ステップにおいて、N個の該ニューロンのうちのi番目のニューロンにおける該k番目のパラメータの該ニューロンセンターをCikとして設定し、
該ニューロン幅演算ステップにおいて、N個の該ニューロンのうちのi番目のニューロンにおける該k番目のパラメータの該ニューロン幅をwikとして演算するとともに、
該ファジー値演算ステップにおいて、該i番目のニューロンにおける該k番目のパラメータの該ニューロンセンターCik及び該ニューロン幅wikに基づき、該メンバシップ関数としてガウス関数を適用し以下の式(4)
【数4】
を用いて、該ファジー値fi(xjk)を演算する
ことを特徴とする、請求項12記載のデータ処理方法。
【請求項14】
該ニューロンウェイト演算ステップにおいて、N個の該ニューロンのうちのi番目のニューロンにおけるニューロンウェイトをgiとして演算するとともに、
該密度分布復元ステップにおいて、該ファジー値演算ステップで演算された該ファジー値fi(xjk)及び該ニューロンウェイト演算ステップで演算された該ニューロンウェイトgiに基づき、以下の式(5)
【数5】
を用いて、該等距離点xjkにおける密度分布zjkを演算する
ことを特徴とする、請求項13記載のデータ処理方法。
【請求項15】
該密度分布重心演算ステップにおいて、密度分布zjkの重心点GOPの座標をGOP=[xO1,xO2,…,xOK]として、各座標xOk(k=1,2,…,K)を以下の式(6)
【数6】
に基づいて演算する
ことを特徴とする、請求項14記載のデータ処理方法。
【請求項16】
対象体の状態に応じて変動する複数のパラメータからなる複数の実データをニューラルネットワークの教師なし学習により多次元の複数のニューロンへと圧縮する圧縮装置であり、かつ、該多次元の空間内における該ニューロンの各々の位置をニューロンセンターとして設定し、一つの該ニューロンが代表する該実データの数をニューロンウェイトとして演算し、該空間内において、一つの該ニューロンから該ニューロンが代表する該実データまでの平均距離をニューロン幅として演算する圧縮装置、によって圧縮された該複数のニューロンから、該実データの構造を復元するデータ復元方法であって、
所定のメンバシップ関数を用いて、該ニューロンセンター及び該ニューロン幅に基づき、各々の該ニューロンのファジー値を演算するファジー値演算ステップと、
該ファジー値演算ステップにより演算された各々の該ニューロンの該ファジー値及び該ニューロンウェイトに基づき、該実データの密度分布を復元する密度分布復元ステップと
を備えたことを特徴とする、データ復元方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−323401(P2007−323401A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153373(P2006−153373)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
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