説明

データ処理装置

【課題】 人が何度も登録データを採取しに行くことなしに、有効な登録データを自動的に増やすことができるデータ処理装置を提供する。
【解決手段】 データ処理装置1は、コントローラ2と、このコントローラ2による処理結果を提示するための提示器3と、オペレータがコントローラ2に対して情報を入力するための入力器4とを備えている。コントローラ2は、データベース5に登録されている各学習データの座標点の配置構造を解析するデータ点配置構造解析部6と、各学習データの座標点の配置構造に基づいて、各学習データの座標点の集合領域(クラスタ)を広くするように新規学習データを生成する新規データ生成部7と、新規学習データを提示器3に送出するデータ提示処理部9と、入力器4で入力された情報を受けて、新規学習データをデータベース5に追加登録するデータ追加処理部10とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば画像等のデータを拡充する処理を行うためのデータ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像データを登録・学習するためのデータ処理装置としては、例えば特許文献1に記載されている画像学習装置が知られている。この公報に記載の画像学習装置は、初期登録(既登録)されている画像データを分析し、この画像データから学習に必要な不足画像を推定し、ユーザに通知することにより、学習用画像の撮影にかかる手間を軽減するというものである。
【特許文献1】特開2004−213567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術においては、学習に必要な不足画像を再度ユーザが撮影しに行く必要があるため、依然としてユーザに負担がかかると共に、不足画像の追加撮影のためのコストもかかる。また、不足画像の撮影に行く際にユーザに与えられる指示は、プロファイルベクトルのテンプレート値であるが、実際に必要なものは、既に撮影した画像とは異なる画像であり、与えられた指示だけでは、学習に対してどのような画像を本当に追加すべきか曖昧である。
【0004】
本発明の目的は、人が何度も登録データを採取しに行くことなしに、有効な登録データを自動的に増やすことができるデータ処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のデータ処理装置は、複数のデータが登録されるデータ格納部と、データ格納部に登録されている各データの座標点の位置関係に基づいて新規データを生成するデータ作成手段と、データ作成手段で生成された新規データを提示するデータ提示手段と、新規データに関する情報を入力するための入力手段と、入力手段で入力された情報を受けて、新規データをデータ格納部に追加登録するデータ追加手段とを備えることを特徴とするものである。
【0006】
このようなデータ処理装置においては、データ格納部に登録されている複数のデータの座標点の位置関係に基づいて新規データが生成され、その新規データがオペレータに対して提示される。オペレータは、その提示された新規データを見て、その新規データに関する情報を入力手段により入力する。新規データに関する情報としては、例えば提示された新規データが属するクラス等が挙げられる。そして、データ処理装置では、オペレータにより入力された情報を受けて、新規データがデータ格納部に追加登録される。このように本発明のデータ処理装置によれば、データ格納部に既に登録されている複数のデータを基にして新規データが自動的に作成されるので、最初に必要最小限のデータを採取してデータ格納部に初期登録した後は、人がいちいち登録データを採取しに行かなくても、有効な登録データを自動的に増やしていくことができる。
【0007】
また、本発明のデータ処理装置は、複数のデータが登録されるデータ格納部と、データ格納部に登録されている各データの座標点の位置関係に基づいて新規データを生成するデータ作成手段と、データ作成手段で生成された新規データを外部機器に送出するデータ出力手段と、外部機器から出力された情報を受けて、新規データをデータ格納部に追加登録するデータ追加手段とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
このようなデータ処理装置においては、データ格納部に登録されている複数のデータの座標点の位置関係に基づいて新規データが生成され、その新規データが外部機器に送られる。すると、外部機器からは、新規データに関する情報が出力される。新規データに関する情報としては、例えば新規データに対する外部機器の動作結果等が挙げられる。そして、データ処理装置では、外部機器からの情報を受けて、新規データがデータ格納部に追加登録される。このように本発明のデータ処理装置によれば、データ格納部に既に登録されている複数のデータを基にして新規データが自動的に作成されるので、最初に必要最小限のデータを採取してデータ格納部に初期登録した後は、人がいちいち登録データを採取しに行かなくても、有効な登録データを自動的に増やしていくことができる。
【0009】
好ましくは、データ作成手段は、データ格納部に登録されている各データの座標点の配置構造を解析する手段と、各データの座標点の配置構造に基づいて、データの座標点の集合領域を広くするように新規データを生成する手段とを有する。この場合には、特に複雑な演算を行うことなく、簡単に新規データを生成することができる。
【0010】
また、データ作成手段は、データ格納部に登録されている各データの座標点が互いに離れるように各データの座標点間に働く力を求める手段と、各データの座標点間に働く力に基づいて各データの座標点を移動させることにより、新規データを生成する手段とを有していても良い。この場合には、複数のデータの座標点を広い領域でほぼ均等に分散させることができるため、任意のクラスに属する有効な登録データをまんべんなく得ることが可能となる。
【0011】
この場合、各データの座標点の移動によって、データの属するクラスが変化した座標点があるときに、当該クラスが変化した座標点を、各データの座標点を移動させる前の位置またはその近傍に戻すように補正する手段を更に備えることが好ましい。このようにクラスが変化したデータの座標点を補正することにより、データ格納部に登録されている最新のデータを取り込むことなく、補正後の各データの座標点を用いて、再びデータ作成手段により新規データを生成する際に、データの数を減少させなくて済む。この場合には、データ作成手段による前回の処理と同様に、複数のデータの座標点を広い領域でほぼ均等に分散させることができる。
【0012】
また、好ましくは、データ作成手段は、新規データの座標点とデータ格納部に登録されている各データの座標点との最小距離を求め、当該最小距離が所定値よりも大きい新規データのみを選択する。これにより、既に登録されているデータとの差異が殆ど無いデータも新規データと判断されて新規データの数が必要以上に多くなってしまうことを抑止できる。従って、例えばオペレータが新規データに関する情報を入力手段により入力する場合には、オペレータの負担を軽減することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、人が何度も登録データを採取しに行くことなしに、有効な登録データを自動的に増やすことができる。これにより、オペレータやユーザの手間が大幅に省けると共に、データ採取に要するコストを抑えることができる。本発明は、認識装置の開発に必要となる学習データの作成や、装置の検証に用いる検証用データの作成等に特に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係わるデータ処理装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係わるデータ処理装置の第1実施形態の構成を示すブロック図である。本実施形態は、本発明に係わるデータ処理装置を学習データ拡充装置に適用したものである。同図において、本実施形態のデータ処理装置1は、学習データとして画像データの拡充を行うための装置である。画像データは、例えば自動車に搭載される画像認識装置に登録されるものである。このような画像データとしては、歩行者画像、道路標識画像、道路白線画像等がある。
【0016】
データ処理装置1は、コントローラ2と、このコントローラ2による処理結果を提示するための提示器3と、オペレータがコントローラ2に対して情報を入力するための入力器4とを備えている。
【0017】
コントローラ2は、データベース5と、データ点配置構造解析部6と、新規データ生成部7と、提示データ選択部8と、データ提示処理部9と、データ追加処理部10とを有している。
【0018】
データベース5には、複数の画像データ(学習データ)が初期データとして予め登録されている。初期データは、戸外において、歩行者や標識等として典型的な対象を適当な数だけ撮影することにより採取されたものである。各画像データは、例えば歩行者画像クラス、道路標識画像クラス、道路白線画像クラス、風景画像クラス等のようにクラス(グループ)分けされて、データベース5に登録される。
【0019】
データ点配置構造解析部6は、データベース5に登録されている複数の学習データを取り込み、各学習データの座標点の配置構造をクラスタ解析等によって解析し、その解析結果を新規データ生成部7に送出する。学習データは、高次元(例えば256次元)空間内の座標点で表される。このため、各学習データの座標点の配置構造(位置関係)を解析することで、各学習データの座標点の集合領域(クラスタ)構造が分かる。そこで、データ点配置構造解析部6は、データベース5に登録されている各学習データの座標点位置及びクラスと解析によって得られたクラスタ構造とを新規データ生成部7に送出する。
【0020】
新規データ生成部7は、各学習データの座標点の配置構造に基づいて、クラスタを広くするように1つ以上の新規学習データを生成し、これを提示データ選択部8に送出する。新規学習データの生成法の具体例を図2に示す。図2において、×印は、データベース5に登録されている各学習データの座標点位置を示し、点線内部は、新規学習データの作成領域を示している。
【0021】
図2(a)に示す方法は、各クラスタを全体的にほぼ均等に拡大させるように新規学習データを生成する、いわゆる拡大法である。例えば、あるクラスタのほぼ中心に位置する座標点aを基準にして、任意の座標点bに対して座標点aの反対側に新規学習データの座標点b’を作成し、別の任意の座標点cに対して座標点aの反対側に新規学習データの座標点c’を作成する。このとき、座標点a,b間の距離は座標点b,b’間の距離とほぼ等しく、座標点a,c間の距離は座標点c,c’間の距離とほぼ等しい。このような拡大法では、生成された新規学習データの属するクラスは、拡大前のクラスタが属するクラスとする。
【0022】
図2(b)に示す方法は、隣接する2つ以上のクラスタの内側の領域に新規学習データを生成する、いわゆる内挿法である。例えば2つのクラスタがある場合、一方のクラスタの任意の座標点dと他方のクラスタの任意の座標点eとのほぼ中間位置に新規学習データの座標点fを作成する。このような内挿法では、生成された新規学習データの属するクラスは、内挿前の2つ以上のクラスタのうち新規学習データに最も近いクラスタが属するクラスとする。
【0023】
図2(c)に示す方法は、隣接する2つ以上のクラスタの外側の領域に新規学習データを生成する、いわゆる外挿法である。例えば2つのクラスタがある場合、一方のクラスタの任意の座標点gの外側(他方のクラスタの反対側)に新規学習データの座標点g’を作成し、他方のクラスタの任意の座標点hの外側(一方のクラスタの反対側)に新規学習データの座標点h’を作成する。このような外挿法では、生成された新規学習データの属するクラスは、外挿前の2つ以上のクラスタのうち新規学習データに最も近いクラスタが属するクラスとする。
【0024】
このような拡大法、内挿法及び外挿法を採用することにより、データベース5に既に登録されている学習データの近傍に位置する新規学習データを、特に複雑な計算を行うことなく簡単に作成することができる。従って、様々な状況、例えば異なる天候(晴、曇、雨)や異なる時刻(朝、昼、夕、夜)等における同一対象の画像データを容易に得ることができる。
【0025】
提示データ選択部8は、新規データ生成部7で生成された新規学習データの座標点とデータベース5に既に登録されている各学習データの座標点との最小距離とを求め、当該最小距離が所定値よりも大きいと判断すると、その新規学習データを提示すべきデータとして選択しデータ提示処理部9に送出する。
【0026】
データ提示処理部9は、提示データ選択部8で選択された新規学習データをデータ追加処理部10に送出すると共に、その新規学習データを、提示器3により提示可能な形式に変換して提示器3に送出する。新規学習データの形式変換としては、新規学習データの座標点の次元圧縮や座標変換等が行われる。例えば、学習データの座標値に対して主成分分析を行って得られた軸によって、学習データの座標値の座標変換を行い、更に座標変換後の座標値に対し主成分分析の寄与率の高いn個の軸の値のみ変更・拡充を行う。そして、データ提示処理部9では、変更したn個の軸の値と変更していない残りの軸の値を用いて、新規学習データの逆座標変換を行う。
【0027】
データ追加処理部10は、入力器4で入力された情報を受けて、データ提示処理部9から出力された新規学習データを拡充データとしてデータベース5に追加登録する。入力器4で入力される情報は、提示器3により提示された新規学習データが属するクラスである。このとき、データ追加処理部10は、データ提示処理部9から出力された新規学習データと入力器4で入力されたクラスとを一緒にデータベース5に追加登録する。
【0028】
次に、以上のように構成されたデータ処理装置1により学習データの拡充を行う動作について説明する。
【0029】
コントローラ2による処理の実行が開始されると、まずデータベース5に既に登録されている複数の学習データがデータ点配置構造解析部6に送られる。そして、データ点配置構造解析部6において、各学習データの座標点の配置構造が解析され、その解析結果が新規データ生成部7に送られる。新規データ生成部7では、各学習データの座標点の配置構造を基にして新規学習データが生成される。その新規学習データは提示データ選択部8に送られ、提示データ選択部8において当該新規学習データが提示されるべきデータであると判断されると、データ提示処理部9により新規学習データが提示器3に表示される。
【0030】
このとき、オペレータは、提示器3に表示された新規学習データを見て、その新規学習データの属するクラス(歩行者画像クラス、道路標識画像クラス等)を入力器4により入力する。このとき、データ拡充に適した新規学習データのみが提示データ選択部9により選択されているので、オペレータがチェックする新規学習データの数が多くなりすぎることは無く、オペレータによるクラス情報の入力作業に必要以上に手間がかかることは無い。
【0031】
オペレータが入力したクラス情報は、入力器4からデータ追加処理部10に送られる。また、データ追加処理部10には、データ提示処理部9から新規学習データも送られてくる。これらの新規学習データ及びそれが属するクラスは、データベース5に拡充データとして追加登録される。
【0032】
そして、上記の処理は、必要に応じて繰り返し実行される。これにより、データベース5には、数多くの学習データが登録されることになる。
【0033】
以上のように本実施形態にあっては、既にデータベース5に登録されている複数の学習データの各座標点の配置構造に基づいて新規学習データを自動的に作成し、その新規学習データをデータベース5に追加登録するので、初めに少数の典型的な初期データを採取してデータベース5に初期登録しておけば、その後のオペレータの作業としては、新規学習データの属するクラスを入力器4で入力するだけで良い。つまり、オペレータは、必要とする学習データを採取すべく、例えば同一対象を晴の日、曇の日、雨の日あるいは朝、昼、夕、夜というように何度も撮影しに行かなくて済む。このようにオペレータがいちいち学習データを採取に出向かなくても、データベース5に登録される有効な学習データの数を自動的に増加させることができる。これにより、オペレータやユーザ等にかかる負担を大幅に軽減することができる。また、学習データの採取に要するコストを抑えることもできる。
【0034】
なお、上記の第1実施形態では、オペレータは、新規学習データに関する情報として新規学習データの属するクラスを入力器4により入力するものとしたが、例えばデータベース5に登録される学習データの属するクラスが1つだけの場合には、オペレータは、新規学習データがそのクラスに属するか否かの情報を入力器4により入力するようにしても良い。
【0035】
図3は、本発明に係わるデータ処理装置の第2実施形態の構成を示すブロック図である。本実施形態も、第1実施形態と同様に、本発明に係わるデータ処理装置を学習データ拡充装置に適用したものである。図中、第1実施形態と同一または同等の部材には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0036】
本実施形態のデータ処理装置20は、コントローラ21と、提示器3と、入力器4とを備えている。コントローラ21は、データベース5と、ダイナミクス計算部22と、新規データ生成部23と、提示データ選択部8と、データ提示処理部9と、データ追加処理部10と、データ点位置補正部24とを有している。
【0037】
ダイナミクス計算部22は、データベース5に登録されている複数の学習データを取り込み、任意のクラスにおける各学習データの座標点間に働く力を算出し、その結果を新規データ生成部23に送出する。学習データの拡充の観点から考えると、各学習データの座標点間に働く力としては、例えば斥力が望ましい。斥力Fは、下記式から得られる。
【0038】
F=(X−X)/|X−X
:斥力を受ける座標点の位置
:斥力を与える座標点の位置
【0039】
新規データ生成部23は、ダイナミクス計算部22で求められた各学習データの座標点間に働く力に基づいて、任意のクラスにおける各学習データの座標点の位置を下記式のように移動させることにより、複数の新規学習データを生成し、これを提示データ選択部8に送出する。
←X+Fdt (dt:ステップ時間)
【0040】
各学習データの座標点間に対して斥力Fを与えて、各学習データの座標点を移動させた例を図4に示す。各学習データの座標点は、例えば図4(a)〜(b)に示すように、時間経過に従って互いに離れていくようにリング状に散らばるようになる。なお、このように各学習データの座標点を移動させると、一部の学習データの属するクラスが変化する。
【0041】
データ点位置補正部24は、データベース5に追加登録される新規学習データをデータ追加処理部10から取り込み、各学習データの座標点の移動によってクラスが変化した学習データの座標点を、各学習データの座標点を移動させる前の位置またはその近傍に戻すように補正する。学習データの座標点位置の補正法としては、クラスが変化した学習データの座標点を、計算によって移動前の位置に戻したり、何らかの乱数を与えて移動前の位置近辺に戻すようにする。このとき、各学習データの座標点を移動させてもクラスが変化していない学習データの座標点については、移動後の状態のままにしておく。
【0042】
なお、データベース5に登録される学習データの属するクラスが1つだけの場合には、データ提示処理部9は、提示データ選択部8で選択された新規学習データそのものだけを提示器3に送出し、データベース5に登録される学習データの属するクラスが複数ある場合には、データ提示処理部9は、提示データ選択部8で選択された新規学習データ及びそれが属するクラスを提示器3に送出する。
【0043】
以上のように構成されたデータ処理装置20において、コントローラ21による処理の実行が開始されると、まずデータベース5に既に登録されている複数の学習データがダイナミクス計算部22に送られ、各学習データの座標点間に働く力が求められ、これが新規データ生成部23に送られる。新規データ生成部23では、各学習データの座標点間に働く力を基にして各学習データの座標点の位置を移動させることにより、複数の新規学習データが生成される。これらの新規学習データは提示データ選択部8に送られ、提示されるべき新規学習データだけが選択される。そして、選択された新規学習データは、データ提示処理部9により提示器3に表示される。
【0044】
このとき、第1実施形態と同様に、オペレータは、提示された新規学習データの属するクラスを入力器4により入力する。そして、データ追加処理部10によって、新規学習データ及びそれが属するクラスがデータベース5に拡充データとして追加登録される。また、新規学習データはデータ点位置補正部24に送られ、各学習データの座標点の移動によってクラスが変わった学習データの座標点の位置が補正される。
【0045】
データ点位置補正部24により補正された後の各学習データは、再度ダイナミクス計算部22に送られる。そして、上述した各学習データの座標点間に働く力の計算処理以降の処理が繰り返し行われる。
【0046】
ここで、学習データの座標点位置を補正することにより、任意のクラスにおける各学習データの座標点間に働く力の計算を再度行うときに、各学習データの座標点の移動によって別のクラスになった学習データの座標点がカットされずに済むため、計算に用いる学習データの数が減ることは無い。このため、上記の処理を複数サイクル繰り返し行うことで、各学習データの座標点の位置を複数回移動させたときには、数多くの学習データの座標点が広い領域でほぼ均等に分散されるようになる。これにより、最終的には、任意のクラスに属する多くの有効な学習データがまんべんなく得られるようになる。
【0047】
以上のように本実施形態にあっては、既にデータベース5に登録されている各学習データの座標点間に働く力に基づいて各学習データの座標点の位置を移動させることで、新規学習データを自動的に作成し、その新規学習データをデータベース5に追加登録するので、第1実施形態と同様に、オペレータやユーザ等が何度も学習データを採取に出向くことなく、有効な学習データの数を自動的に増加させることができる。
【0048】
なお、上記の第2実施形態では、データベース5に登録されている学習データをダイナミクス計算部22に取り込むのは最初だけとし、各学習データの座標点の移動によってクラスが変動した学習データの座標点の位置を補正した後、その学習データをダイナミクス計算部22に送り、以降の処理を繰り返し行うようにしたが、特にこの手法には限られない。例えば、データ点位置補正部24を設けずに、ダイナミクス計算部22により各学習データの座標点間に働く力の計算処理を行う度に、データベース5に登録されている最新の学習データをダイナミクス計算部22に取り込んでも良い。この場合には、ダイナミクス計算部22により計算処理を行う度に、計算に用いる学習データの数が確実に増えることになる。
【0049】
図5は、本発明に係わるデータ処理装置の第3実施形態の構成を示すブロック図である。本実施形態は、本発明に係わるデータ処理装置を自動検証装置に適用したものである。同図において、本実施形態のデータ処理装置30は、検証対象機器31の機能検証(性能評価や保証)に用いる検証条件(検証用データ)及び検証結果の拡充を行うための装置である。検証対象機器31は、例えば画像認識装置であり、この場合には検証用データとして画像データが用いられる。
【0050】
データ処理装置30は、データベース32と、データ点配置構造解析部33と、新規データ生成部34と、検証データ選択部35と、データ出力部36と、データ追加処理部37とを有している。
【0051】
データベース32には、複数の画像データ(検証用データ)が初期データとして予め登録されている。初期データは、例えば第1実施形態におけるデータベース5に登録されている初期データと同様のものである。
【0052】
データ点配置構造解析部33は、データベース32に登録されている複数の検証用データを取り込み、各検証用データの座標点の配置構造を解析し、その解析結果を新規データ生成部34に送出する。データ点配置構造解析部33は、具体的には、第1実施形態におけるデータ点配置構造解析部6と同様の処理を行う。
【0053】
新規データ生成部34は、各検証用データの座標点の配置構造に基づいて新規検証用データを生成し、これを検証データ選択部35に送出する。新規データ生成部34は、具体的には、第1実施形態における新規データ生成部7と同様の処理を行う。
【0054】
検証データ選択部35は、新規データ生成部34で作成された新規検証用データの座標点とデータベース32に既に登録されている各検証用データの座標点との最小距離とを求め、当該最小距離が所定値よりも大きいと判断すると、その新規検証用データを検証対象機器31に送るべきデータとしてデータ出力部36に送出する。
【0055】
データ出力部36は、検証データ選択部35で選択された新規検証用データをデータ追加処理部37に送出する。また、データ出力部36は、検証対象機器31の機能(動作)を検証すべく、新規検証用データを検証対象機器31に送出する。新規検証用データが検証対象機器31に入力されると、検証対象機器31は、その新規検証用データを自動認識し、当該新規検証用データが属するクラスを検証結果として出力する。
【0056】
データ追加処理部37は、検証対象機器31に送られた新規検証用データと検証対象機器31から出力された検証結果とをデータベース32に追加登録する。
【0057】
以上のようなデータ処理装置30によれば、データベース32に既に登録されている複数の検証用データから新規検証用データを自動的に作成し、その新規検証用データとこれに対する検証対象機器31の検証結果とをデータベース32に追加登録するので、最初に小数の典型的な初期データを採取してデータベース32に初期登録した後は、再度検証用データの採取に出向くことなく、検証用データの数を自動的に増加させることができる。これにより、検証対象機器31の機能検証のためにオペレータやユーザ等にかかる手間が大幅に軽減されると共に、検証用データの採取に要するコストを削減することができる。
【0058】
その結果、例えば検証対象機器31の入出力関係の仕様が知られていない場合でも、オペレータやユーザ等は、検証対象機器31の入出力関係を少ない手間で把握し、その妥当性を判断することが可能となる。
【0059】
図6は、本発明に係わるデータ処理装置の第4実施形態の構成を示すブロック図である。本実施形態も、第3実施形態と同様に、本発明に係わるデータ処理装置を自動検証装置に適用したものである。図中、第3実施形態と同一または同等の部材には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0060】
本実施形態のデータ処理装置40は、データベース32と、ダイナミクス計算部41と、新規データ生成部42と、検証データ選択部35と、データ出力部36と、データ追加処理部37と、データ点位置補正部43とを有している。
【0061】
ダイナミクス計算部41は、データベース32に登録されている複数の検証用データを取り込み、任意のクラスにおける各検証用データの座標点間に働く力を算出し、その結果を新規データ生成部42に送出する。この時の計算法は、第2実施形態におけるダイナミクス計算部22の処理と同様である。
【0062】
新規データ生成部42は、ダイナミクス計算部41で求められた各検証用データの座標点間に働く力に基づいて、各検証用データの座標点の位置を移動させることにより、複数の新規検証用データを生成する。各検証用データの座標点位置を移動させる方法は、第2実施形態における新規データ生成部23の処理と同様である。
【0063】
データ点位置補正部43は、データベース32に追加登録される新規検証用データをデータ追加処理部37から取り込み、各検証用データの座標点の移動によってクラスが変動した検証用データの座標点を、その移動前の位置またはその近傍に戻すように補正する。この時の補正法は、第2実施形態におけるデータ点位置補正部24の処理と同様である。
【0064】
以上のようなデータ処理装置によれば、既にデータベース32に登録されている各検証用データの座標点間に働く力を基にして各検証用データの座標点の位置を移動させることにより、新規検証用データを自動的に作成し、データベース32に追加登録するので、第3実施形態と同様に、何度も検証用データを採取に出向くことなく、有効な検証用データの数を自動的に増加させることができる。
【0065】
以上、本発明に係わるデータ処理装置の実施形態について幾つか説明してきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態は、データ処理装置を学習データ拡充装置または自動検証装置に適用したものであるが、本発明に係わるデータ処理装置は、データベース等のデータ格納部に登録されている複数のデータの各座標点間の位置関係に基づいて新規データを生成し、この新規データをデータ格納部に追加登録するものであれば、他の装置にも適用可能である。
【0066】
また、上記実施形態では、画像データを対象としたが、データ格納部に登録するデータとしては、特に画像データには限られないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係わるデータ処理装置の第1実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す新規データ生成部において新規学習データを生成する方法を示す概念図である。
【図3】本発明に係わるデータ処理装置の第2実施形態の構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示す新規データ生成部において新規学習データを生成する方法を示す概念図である。
【図5】本発明に係わるデータ処理装置の第3実施形態の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明に係わるデータ処理装置の第4実施形態の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0068】
1…データ処理装置、3…提示器(データ提示手段)、4…入力器(入力手段)、5…データベース(データ格納部)、6…データ点配置構造解析部(データ作成手段)、7…新規データ生成部(データ作成手段)、8…提示データ選択部(データ作成手段)、9…データ提示処理部(データ提示手段)、10…データ追加処理部(データ追加手段)、20…データ処理装置、22…ダイナミクス計算部(データ作成手段)、23…新規データ生成部(データ作成手段)、24…データ点位置補正部、30…データ処理装置、31…検証対象機器(外部機器)、32…データベース(データ格納部)、33…データ点配置構造解析部(データ作成手段)、34…新規データ生成部(データ作成手段)、35…検証データ選択部(データ作成手段)、36…データ出力部(データ出力手段)、37…データ追加処理部(データ追加手段)、40…データ処理装置、41…ダイナミクス計算部(データ作成手段)、42…新規データ生成部(データ作成手段)、43…データ点位置補正部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデータが登録されるデータ格納部と、
前記データ格納部に登録されている前記各データの座標点の位置関係に基づいて新規データを生成するデータ作成手段と、
前記データ作成手段で生成された前記新規データを提示するデータ提示手段と、
前記新規データに関する情報を入力するための入力手段と、
前記入力手段で入力された情報を受けて、前記新規データを前記データ格納部に追加登録するデータ追加手段とを備えることを特徴とするデータ処理装置。
【請求項2】
複数のデータが登録されるデータ格納部と、
前記データ格納部に登録されている前記各データの座標点の位置関係に基づいて新規データを生成するデータ作成手段と、
前記データ作成手段で生成された前記新規データを外部機器に送出するデータ出力手段と、
前記外部機器から出力された情報を受けて、前記新規データを前記データ格納部に追加登録するデータ追加手段とを備えることを特徴とするデータ処理装置。
【請求項3】
前記データ作成手段は、前記データ格納部に登録されている前記各データの座標点の配置構造を解析する手段と、前記各データの座標点の配置構造に基づいて、前記データの座標点の集合領域を広くするように前記新規データを生成する手段とを有することを特徴とする請求項1または2記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記データ作成手段は、前記データ格納部に登録されている前記各データの座標点が互いに離れるように前記各データの座標点間に働く力を求める手段と、前記各データの座標点間に働く力に基づいて前記各データの座標点を移動させることにより、前記新規データを生成する手段とを有することを特徴とする請求項1または2記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記各データの座標点の移動によって、データの属するクラスが変化した座標点があるときに、当該クラスが変化した座標点を、前記各データの座標点を移動させる前の位置またはその近傍に戻すように補正する手段を更に備えることを特徴とする請求項4記載のデータ処理装置。
【請求項6】
前記データ作成手段は、前記新規データの座標点と前記データ格納部に登録されている前記各データの座標点との最小距離を求め、当該最小距離が所定値よりも大きい前記新規データのみを選択することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載のデータ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−309662(P2006−309662A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−134340(P2005−134340)
【出願日】平成17年5月2日(2005.5.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】