説明

トイレ利用管理装置、トイレ利用管理システム及びトイレ利用管理装置の制御方法

【課題】人手を介することなく、トイレ個室の利用状況を管理対象者に関連づけて記録する。
【解決手段】管理対象者に予め対応づけられたID情報を有して当該管理対象者に携帯される無線タグから複数のトイレ個室内にそれぞれ設置された便座に設けたループアンテナを介して電波を受信し、ID情報を取得する受信装置と、受信装置が受信したID情報に基づいて、トイレ個室を特定する情報、当該トイレ個室へ入室した時刻および退室した時刻を管理対象者に関連づけて記録する制御装置と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ利用管理装置、トイレ利用管理システム及びトイレ利用管理装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病院・介護施設等などにおいては、患者または施設利用者の状態を管理するために、トイレの利用時間や回数を記録することが一般的に行われていた。
この場合において、トイレの利用時間や回数の記録は、人手による記録が一般的であったため、記録漏れ等が生じ、正確に記録(履歴)を残すことができなかった。
また、個人を特定する手法としては、特許文献1に記載されたICカードを用いる手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−070238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、個人を特定するに際し、ICカードを読取機に翳すことが必要であり、翳し忘れた場合等には個人を特定できない場合が生じるという問題点があった。
そこで、本発明の目的は、煩わしい操作を行うことなく、管理対象者のトイレの利用状況を取得し、記録することが可能なトイレ利用管理装置、トイレ利用管理システム及びトイレ利用管理装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、複数のトイレ個室内にそれぞれ設置された便座に設けたアンテナと、管理対象者に予め対応づけられたID情報を有して当該管理対象者に携帯される無線タグから前記アンテナを介して電波を受信し、前記ID情報を取得する受信装置と、前記受信装置が受信した前記ID情報に基づいて前記管理対象者を特定し、前記トイレ個室を特定する情報、前記無線タグが前記アンテナの通信可能エリア内に位置することが検知された検知開始時刻及び検知終了時刻を、特定した前記管理対象者と対応づけて記録する制御装置と、を備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、受信装置は、無線タグからアンテナを介して電波を受信し、管理対象者に予め対応づけられたID情報を取得する。
これにより制御装置は、受信装置が受信したID情報に基づいて管理対象者を特定し、トイレ個室を特定する情報、無線タグがアンテナの通信可能エリア内に位置することが検知された検知開始時刻及び検知終了時刻を、特定した管理対象者と対応づけて記録する。
したがって、人手を介することなく、トイレの個室の利用状況を管理対象者に対応付けて記録することができる。
【0006】
また、本発明は、前記トイレ個室内には、前記管理対象者から当該管理対象者に関連するデータを収集するデータ収集装置が設けられており、前記制御装置は、前記データ収集装置により前記データが収集された場合に、当該データが収集された際にトイレ個室を利用していた前記管理対象者に対応づけて収集したデータを管理することを特徴としている。
上記構成によれば、制御装置は、データ収集装置によりデータが収集された場合に、当該データが収集された際にトイレ個室を利用していた管理対象者に対応づけて収集したデータを管理するので、データ収集装置により収集したデータを確実にトイレ個室を利用していた管理対象者に対応づけて管理することができる。
【0007】
また、本発明は、前記トイレ個室内には、前記データ収集装置として前記管理対象者の検査を行い、検査データを収集する検査装置が配備されており、前記制御装置は、当該検査装置により検査がなされた場合に、当該検査がなされた際に当該トイレ個室を利用していた前記管理対象者の検査データとして管理を行うことを特徴としている。
上記構成によれば、制御装置は、検査装置により検査がなされた場合に、当該検査がなされた際に当該トイレ個室を利用していた管理対象者の検査データとして管理を行うので、検査装置により収集した検査データをトイレ個室を利用していた管理対象者の検査データとして確実に対応づけて管理することができる。
【0008】
また、本発明は、前記受信装置は、前記無線タグとの間でLF帯の通信周波数を用いて磁界通信を行うことを特徴としている。
上記構成によれば、受信装置は、管理対象者が患者である場合のように、各種装置を装着していたり、点滴用の輸液バッグを装着していたりする場合でも、それらの影響を受けずに確実に通信を行うことができる。
【0009】
また、本発明は、前記トイレ個室内には、非常通報を行うための非常通報用ボタンが配備されており、前記制御装置は、前記非常通報用ボタンが操作された際に当該トイレ個室を利用していた前記管理対象者を特定し、告知することを特徴としている。
上記構成によれば、制御装置は、非常通報用ボタンが操作された際に当該トイレ個室を利用していた管理対象者を特定し、告知するので、非常通報用ボタンの操作者である管理対象者を特定した上で対応することができ、確実な対応を行うことができる。
【0010】
また、本発明は、前記便座は、暖房用の電熱線を内蔵しており、前記電熱線を前記アンテナとして用いることを特徴としている。
上記構成によれば、別途便座にアンテナを設けることなく、通信を行え、製造コストの低減を図ることができるとともに、デザイン性に優れたシステムを提供できる。
【0011】
また、本発明は、複数のトイレ個室内にそれぞれ設置された便座に設けたアンテナと、管理対象者に予め対応づけられたID情報を有し、当該管理対象者に携帯される無線タグと、前記無線タグから前記アンテナを介して電波を受信し、前記ID情報を取得する受信装置と、前記受信装置が受信した前記ID情報に基づいて前記管理対象者を特定し、前記トイレ個室を特定する情報、前記無線タグが前記アンテナの通信可能エリア内に位置することが検知された検知開始時刻及び検知終了時刻を、特定した前記管理対象者と対応づけて記録する制御装置と、を備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、無線タグは、管理対象者に予め対応づけられたID情報を電波により送信する。
これにより受信装置は、無線タグからアンテナを介して電波を受信し、ID情報を取得する。
これらの結果、制御装置は、受信装置が受信したID情報に基づいて、管理対象者を特定し、トイレ個室を特定する情報、無線タグがアンテナの通信可能エリア内に位置することが検知された検知開始時刻及び検知終了時刻を、特定した管理対象者と対応づけて記録する。
【0012】
また、本発明は、複数のトイレ個室内にそれぞれ設置された便座に設けたアンテナを有するとともに、トイレ利用データを記憶する記憶装置を備えたトイレ利用管理装置の制御方法であって、管理対象者に予め対応づけられたID情報を有して当該管理対象者に携帯される無線タグから前記アンテナを介して電波を受信し、前記ID情報を取得する受信過程と、前記受信した前記ID情報に基づいて前記管理対象者を特定し、前記トイレ個室を特定する情報、前記無線タグが前記アンテナの通信可能エリア内に位置することが検知された検知開始時刻及び検知終了時刻を、特定した前記管理対象者と対応づけて前記記憶装置に記憶する記憶過程と、を備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、管理対象者に予め対応づけられたID情報を有して当該管理対象者に携帯される無線タグからアンテナを介して電波を受信し、ID情報を取得し、前記受信した前記ID情報に基づいて前記管理対象者を特定し、前記トイレ個室を特定する情報、前記無線タグが前記アンテナの通信可能エリア内に位置することが検知された検知開始時刻及び検知終了時刻を、特定した前記管理対象者と対応づけて前記記憶装置に記憶するので、人手を介することなく、トイレの個室の利用状況を管理対象者に対応付け記憶することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、人手を介することなく、トイレの個室の利用状況を管理対象者に関連づけて記録できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態のトイレ利用管理システムの構成を模式的に示す図である。
【図2】トイレ利用管理システム10の要部概要構成図である。
【図3】ICカードタグ15の機能的構成を示すブロック図である。
【図4】通信装置12−1〜12−nの機能的構成を示すブロック図である。
【図5】管理サーバー18の機能的構成を示すブロック図である。
【図6】検査管理サーバー21の機能的構成を示すブロック図である。
【図7】実施形態の処理フローチャートである。
【図8】データベース部72のデータフォーマットの一例の説明図である。
【図9】警報(アラート)画面を表示した場合の画面の一例の説明図である。
【図10】電圧波形の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本実施形態では、尿検査装置など検査装置および非常通報用の非常通報用ボタンが設置された病院のトイレの個室の利用状況を管理するトイレ利用管理システムに本発明を適用した場合について説明する。
図1は、本実施形態に係るトイレ利用管理システムの構成を模式的に示す図である。
トイレ利用管理システム10は、大別すると、トイレのトイレ個室R1〜Rn内に配置された洋式便器11−1〜11−nのそれぞれに設けられた通信装置12−1〜12−nと、トイレ個室R1〜Rn内のそれぞれに配置された非常通報用ボタン13−1〜13−nと、検査対象者14に携帯されるICカードタグ15と、洋式便器11−1〜11−nのそれぞれに設けられ尿検査を行う検査装置16−1〜16−nと、各通信装置12−1〜12−nと通信ネットワーク17を介して接続された管理サーバー18と、非常通報用ボタン13−1〜13−nと信号線19を介して接続され、非常通報を行う非常通報端末20と、検査装置16−1〜16−nと12−1〜12−n及び通信ネットワーク17を介して接続された検査管理サーバー21と、医師、看護師などが検査対象者の状態などを監視するための監視端末22と、を備えている。
なお、監視端末22は、複数台設けるように構成することも可能である。
【0016】
図2は、トイレ利用管理システム10の要部概要構成図である。
管理対象のトイレ個室には、当該トイレ個室への検査対象者14を特定するために、通信装置12−1〜12−nが配置されている。
具体的には、トイレ利用管理システム10の通信装置12−1〜12−nは、検査対象者14が所持する非接触無線通信機能を備えたICカードタグ15から管理対象のトイレ個室R1〜Rnのそれぞれに設置された便座31−1〜31−nの各々に設けられたループアンテナ32−1〜32−nを介してICカードタグ15に記録された検査対象者IDを無線により読み取る。
これにより、通信装置12−1〜12−nは、管理サーバー18に検査対象者IDを通知する。
【0017】
図3は、ICカードタグ15の機能的構成を示すブロック図である。
ICカードタグ15は、その表面に検査対象者14の氏名、診療科、写真等が記載されて検査対象者14の身元を示す役割を担うとともに、その内部には、図3に示すように、ループアンテナ32−1〜32−nを介して通信装置12−xとの間で長波による非接触型無線通信機能を実現する無線タグ40が内蔵されている。
無線タグ40は、検査対象者14の識別情報である検査対象者IDを格納するメモリー41と、長波による無線通信用のRF部42と、これらを制御する制御部43と、ループアンテナ32−1〜31−nのうち検査対象者14が利用しているトイレ個室Rx(x:1〜n。以下、同様)内のループアンテナ32−xから放射された電波を受信するアンテナ44とを備え、トイレ個室Rx内のループアンテナ32−xが放射する電波を受信した場合に、その電波の受信に応答して検査対象者IDを送信する。
【0018】
ここで、本実施形態で採用している無線通信方式について説明する。
一般的に知られている無線通信方式のICカードタグの通信方式としては、例えば、ICカードタグとしてFelica[登録商標]を用いた場合、HF帯(周波数13.56MHz)を使用している。このFelicaは、電源である電池は不要であるが、通信距離が数cmであり、トイレ個室に対する入退室を確実に検出するものとはなり得ない。
またUHF帯(例えば、周波数900MHz)のアクティブICカードタグを用いた場合には、検出範囲としては十分であるが、心臓ペースメーカーに影響を与える虞があり、病院などでの使用には不向きである。
さらに赤外線無線方式(周波数2.4GHz)は、一定間隔でポーリングを行う必要があり、ICカードタグ側の電力消費量(電流消費量)が多く、電池が大型化し、寿命が1〜2ヶ月程度と短いという問題がある。
【0019】
これらに対し、通信装置12−1〜12−nと、ICカードタグ15と、の間の通信は、LF帯の通信周波数(例えば、周波数131kHz)を用い、通信装置12−1〜12−nと、ICカードタグ15と、の間で空間に磁気回路を構成した磁界通信を行っている。磁界通信は、水中や金属ケースの中など、電波の減衰する環境であっても、影響を受けずに通信が行えることが特徴である。
また、通信装置12−1〜12−nと、ICカードタグ15と、の間の通信距離は、リーダー/ライターとして機能する通信装置12−1〜12−nの出力に依存するが、電波法の規定に基づけば、最大10m程度まで可能であり、半径1m以内のトイレ個室内であれば十分に出力範囲内となっている。
さらに、ICカードタグ15は、電源としての電池45を内蔵するアクティブ型のタグであるが、、リーダー/ライターとして機能する通信装置12−1〜12−nからの磁界をトリガーとして検出してウェイクアップする方式を採用しているため、アクティブ型タグとしては、比較的消費電力が少なく、1万回以上(寿命5年程度)のアクセスが可能であり、十分に実用に耐える仕様となっている。
【0020】
トイレ個室Rx内のループアンテナ32−xは、図2に示すように、便座31−1〜31nの各々に埋め込まれ、これら便座31−1〜31nのそれぞれに固定的に設置されている。これらのループアンテナ32−xは、無指向性で半径数十センチメートル〜1メートル(例えば約80センチメートル)の通信可能エリアを有するものである。なお、通信可能エリアは、通信装置12−xの出力に応じて可変可能であり、トイレ個室Rxの大きさなどに合わせて設定することが可能である。具体的には、車いす用トイレや、介助者付き添い可能なトイレなど比較的面積か大きなトイレ個室の場合には、通信可能エリアを大きく設定し(例えば、半径1m)、通常のトイレ個室については、通信可能エリアを小さく設定する(例えば、半径40cm)ことができる。
この場合において、検査対象者14が便座31−xに着座した際には、この検査対象者14が携帯しているICカードタグ15がループアンテナ32−xの通信可能エリア内に位置することとなり、相互に通信が可能な状態となる。
【0021】
図4は、通信装置12−1〜12−nの機能的構成を示すブロック図である。
通信装置12−xは、ループアンテナ32−xを介してICカードタグ15に記録された検査対象者IDを無線により読み取り、通信ネットワーク17を介して管理サーバー18に出力するものである。
より具体的には、通信装置12−xは、図4に示すように、制御部50と、無線通信部51と、ネットワークインターフェース(I/F)52と、を有している。
制御部50は、各部を中枢的に制御するものであり、プログラム実行手段としてのCPUや、このCPUのワークエリアとして用いられるRAM、各種プログラムを格納するROM等を備えて構成されている。
【0022】
無線通信部51は、ループアンテナ32−xを介してICカードタグ15との間で長波による無線通信を行うものである。具体的には、図示を省略する無線通信用のRF回路やベースバンド回路を有し、制御部50の制御の下、例えば1秒に5回程度の一定時間ごとに、ループアンテナ32−xに流れる電流を変化させて磁界の変化を生じさせることでICカードタグ15と電磁的通信を行うための電波を放射する。この電波の放射により、通信可能領域内にICカードタグ15が存在する場合には、そのICカードタグ15から検査対象者IDが送信され、無線通信部51によって受信される。
ネットワークI/F52は、通信ネットワーク17に接続されるものである。この通信ネットワーク17には、図1に示すように、管理サーバー18が接続されており、無線通信部51によって受信された検査対象者IDが、制御部50の制御の下、通信ネットワーク17を介して管理サーバー18に送信される。
【0023】
図5は、管理サーバー18の機能的構成を示すブロック図である。
管理サーバー18は、通信装置12−xから送信された検査対象者ID及び装置IDに基づいて、各トイレ個室Rx毎に検査対象者14に携帯されるICカードタグ15がループアンテナ32−xの通信可能エリア内に位置することが検知された検知開始時刻及び検知終了時刻を管理するものである。
具体的には、管理サーバー18は、制御部60と、ネットワークI/F部61と、データベース部62とを有している。
制御部60は、自装置の各部を中枢的に制御するものであり、プログラム実行手段としてのCPU、このCPUのワークエリアとして機能するRAM、各種プログラムや設定データを格納するROM等を有している。
ネットワークI/F部61は、通信ネットワーク17に接続され、この通信ネットワーク17を介して通信装置12−xのそれぞれから検査対象者ID及び装置IDを受信し、制御部60に出力する。
【0024】
制御部60は、入退室特定部65と、データベースアクセス部66とを有している。入退室特定部65は、装置IDと、この装置IDが付された通信装置12−xが設置されているトイレ個室Rxとの対応関係に基づいて、検査対象者がいずれのトイレ個室Rxを利用(入室及び退出)したかを特定し、特定結果を検査対象者IDと共にデータベースアクセス部66に出力する。
データベースアクセス部66は、検査対象者14の各トイレ個室Rx内でICカードタグ15がループアンテナ32−xの通信可能エリア内に位置することが検知された検知開始時刻(入室日時)および検知終了時刻(退室日時)をデータベース部62に記録するものである。
【0025】
データベース部62は、入室記録データベース62Aと、退室記録データベース62Bとを備えている。
入室記録データベース62Aは、ICカードタグ15がループアンテナ32−xの通信可能エリア内に位置することが検知された検知開始時刻(入室日時)と共にトイレ個室Rxに入室した検査対象者14の検査対象者IDが制御部60によって記録されるものである。退室記録データベース62Bは、ICカードタグ15がループアンテナ32−xの通信可能エリア内に位置しなくなったことが検知された検知終了時刻(退室日時)とともに、トイレ個室Rxを退室した検査対象者14の検査対象者IDが制御部60によって記録されるものである。したがって、これらの入室記録データベース62A及び退室記録データベース62Bの記録に基づいて、現時点で個室Rxに配置されたループアンテナ32−xの通信可能エリア内にICカードタグ15が位置するとされた検査対象者14や、当該検査対象者14の滞在時間などが管理可能となる。
【0026】
図6は、検査管理サーバー21の機能的構成を示すブロック図である。
検査管理サーバー21は、検査装置16−xから通信装置12−xを介して送信された検査データ(検査日時データを含む。)に基づいて、各検査装置16−xのトイレ個室Rx毎に検査対象者14の検査データを管理するものである。
具体的には、検査管理サーバー21は、制御部70と、ネットワークI/F部71と、データベース部72とを有している。
制御部70は、自装置の各部を中枢的に制御するものであり、プログラム実行手段としてのCPU、このCPUのワークエリアとして機能するRAM、各種プログラムや設定データを格納するROM等を有している。
ネットワークI/F部71は、通信ネットワーク17に接続され、この通信ネットワーク17及び通信装置12−xを介して、検査装置16−xからの検査データを受信し、制御部70に出力する。
【0027】
制御部70は、データベースアクセス部75を有しており、このデータベースアクセス部75は、検査対象者14の検査データを検査対象者14に対応づけてデータベース部72に記録するものである。
データベース部72は、検査対象者、検査データおよび検査日時が対応づけられて制御部70によって記録されるものである。したがって、データベース部62の記録に基づいて、人手を介することなく、確実に検査データと検査対象者との対応関係を管理可能となる。
【0028】
次いで、本実施形態の動作について説明する。
図7は、実施形態の処理フローチャートである。
ICカードタグ15を所持した検査対象者14がトイレ個室Rxに入室し、ICカードタグ15がループアンテナ32−xの通信可能エリア内に位置することが検知された場合、通信装置12−xのそれぞれが実行する利用者検出処理により、検査対象者14が検出される。
この利用者検出処理について詳述すると、図7に示すように、通信装置12−xは、一定時間ごとにループアンテナ32−xに電流を流し、通信可能エリア内に存在する全てのICカードタグ15に対してIDの応答を呼びかけるための信号を送出し、各ICカードタグ15からの応答としての電波を受信可能な状態とする(ステップS11)。
【0029】
次いで、通信装置12−xは、各ICカードタグ15からの応答としての電波を受信したか否かを判別する(ステップS12)。
ステップS12の判別において、ICカードタグ15からの応答としての電波を受信できなかった場合には(ステップS12;No)、待機状態となる。
ステップS12の判別において、ICカードタグ15からの応答としての電波を受信した場合には(ステップS12;Yes)、すなわち、ICカードタグ15がループアンテナ32−xの通信可能エリア内に位置することが検知された場合には、通信装置12−xは、通信ネットワーク17を介して管理サーバー18に検査対象者ID、装置ID及び受信日時データ(検知開始時刻)を通知する(ステップS13)。
これにより管理サーバー18の制御部60は、入退室特定部65により、装置IDと、この装置IDが付された通信装置12−xが設置されているトイレ個室Rxとの対応関係に基づいて、検査対象者14がいずれのトイレ個室Rxへ入室したかを特定し、特定結果を検査対象者IDと共にデータベースアクセス部66に出力する。データベースアクセス部66は、検査対象者14のトイレ個室Rxへの入室記録をデータベース部62に記録する。
【0030】
これと並行して、検査装置16−xは尿検査の指示がなされたか否かを判別し(ステップS14)、尿検査の指示がなされ(ステップS14;Yes)、かつ、検査装置16−xにおいて尿が検出された場合には尿検査の検査データを通信ネットワーク17を介して検査管理サーバー21に通知する(ステップS15)。
これにより、検査管理サーバー21は、管理サーバー18に問い合わせを行い、当該検査時刻に対応する入室記録が存在するか否かを判別する(ステップS16)。
ステップS16の判別において、入室記録が存在しない場合には(ステップS16;No)、検査対象者が特定されない検査データとしてその旨を通知する(ステップS23)。
一方、ステップS16の判別において、入室記録が存在する場合には(ステップS16;Yes)、検査管理サーバー21のデータベース部72に尿検査の検査データを記録し(ステップS17)、処理をステップS11に移行する。
【0031】
図8は、データベース部72のデータフォーマットの一例の説明図である。
データベース部72を構成するデータは、管理対象者である検査対象者を特定するための検査対象者IDが格納された検査対象者IDデータ72Aと、トイレ個室Rxを特定するトイレ番号データ72Bと、検査対象者がトイレ番号データ72Bに対応するトイレ個室Rxに入室した時刻が格納された入室時刻データ72Cと、検査対象者がトイレ番号データ72Bに対応するトイレ個室Rxから退室した時刻が格納された退室時刻データ72Dと、尿検査その他の検査データが格納された第1検査データ72Eと、尿検査その他の検査データが格納された第2検査データ72Fと、を備えている。
したがって、ステップS16の判別において、対象となる検査対象者IDに対応する入室時刻データ72Cに適切なデータが格納されている場合には、尿検査のデータを第1検査データ72Eあるいは第2検査データ72Fに尿検査の検査データを記録する。
【0032】
また、ステップS14の判別において、尿検査の指示がなされていない場合には(ステップS14;No)、通信装置12−xは、一定時間ごとにループアンテナ32−xに電流を流し、通信可能範囲に存在する全てのICカードタグ15に対してID(検査対象者ID及び装置ID)の応答を呼びかけるための信号を送出し、同一のICカードタグ15からの応答としての電波が受信できたか否かを判別する(ステップS18)。
ステップS18の判別において、同一のICカードタグ15からの応答としての電波が受信できなくなった場合には(ステップS18;No)、検査対象者14がトイレ個室Rxから退室したものとし、通信ネットワーク17を介して管理サーバー18に検査対象者ID、装置ID及び最後の受信日時データを通知する(ステップS19)。
これにより、管理サーバー18の制御部60は、入退室特定部65により、装置IDと、この装置IDが付された通信装置12−xが設置されているトイレ個室Rxとの対応関係に基づいて、検査対象者のトイレ個室Rxからの退室を特定し、特定結果を検査対象者IDと共にデータベースアクセス部66に出力し、データベースアクセス部66は、検査対象者14のトイレ個室Rxへの退室記録をデータベース部62に記録する(ステップS20)。
【0033】
一方、ステップS18の判別において、同一のICカードタグ15からの応答としての電波の受信が継続している場合には(ステップS18;Yes)、当該検査対象者14のトイレ個室Rxへの入室から一定時間が経過したか否かを判別する(ステップS21)。これは、トイレ個室Rx内で検査対象者14が倒れているなどの異常事態を検出するためである。
すなわち、ステップS21の判別において、検査対象者14のトイレ個室Rxへの入室から、一定時間が経過した場合には(ステップS21;Yes)、トイレ個室Rx内で検査対象者14が倒れているなどの異常事態が想定されるとして、管理サーバー18は、通信ネットワーク17を介して監視端末22に対して異常警報(アラート)を発信して、監視者にトイレ個室Rxを特定する情報(個室番号など)とともに異常状態を通報する(ステップS22)。
また、ステップS21の判別において、検査対象者14のトイレ個室Rxへの入室から一定時間が経過していない場合には(ステップS21;No)、処理を再びステップS11に移行して以下、同様の処理を行う。
【0034】
この結果、監視者は、現場の担当者を当該トイレ個室Rxへ向かわせるなどの対処を行うことが可能となる。
以上の説明のように、本実施形態によれば、トイレ個室R1〜Rnを利用する検査対象者(トイレ利用者)は、トイレの利用頻度などを記録することなく、記録のための労力負担を低減することが可能となる。
これに伴い、医師、看護師などの医療従事者あるいは介護従事者の負担も低減される。
さらに、尿検査などの検査装置の検査結果(検査データ)と、検査対象者14との対応付けを自動的に行えるので、検査データと検査対象者との対応付けが確実、かつ、正確に行える。
【0035】
さらにまた、トイレ利用者と、トイレ利用回数の確認と、が確実に行えるので、患者の異常を早期に検出することも可能となる。
さらにまた、トイレの個室内の滞在時間を容易に把握することができ、必要以上に滞在が長く、トイレ内で倒れているなどの異常事態を早期に検出して、通報することができ、検査対象者の安全をより確実に確保することが可能となる。
【0036】
以上の説明は、トイレ個室内で検査対象者が倒れた場合などの異常状態を報知する場合について説明したが、トイレ個室R1〜Rn内で、非常通報用ボタン13−1〜13−nが操作された場合に、当該操作を示す信号の入力(有線あるいは無線による信号の入力)を受けて当該非常通報用ボタン13−1〜13−nが操作されたいずれかのトイレ個室R1〜Rnを特定する情報とともに、非常通報用ボタン13−1〜13−nを操作した操作者(検査対象者あるいは患者など)を特定することも可能である。
さらに、監視端末22のディスプレイ画面上に特定した操作者(検査対象者あるいは患者など)を表示させるように構成することも可能である。
【0037】
図9は、監視端末22のディスプレイに警報(アラート)画面を表示した場合の画面の一例を説明する図である。
図9に示すように、監視端末22のディスプレイの表示画面22Aには、トイレの個室を特定する情報22B(図9では、「2階 第1トイレ 第3個室」)と、当該個室内に滞在しているトイレ利用者の情報22C(図9では、患者名「○○ ○○」と、当該トイレ利用者の詳細情報(例えば、現在の病状や、倒れた場合の対処方法など)を表示させるための指示ボタン22Dが表示される。
この構成により、実際にトイレ利用者に異常事態が発生したとしても迅速、かつ、正確に対処することが可能となり、トイレ利用者の安全を確実に確保することが可能となる。
【0038】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
以上の説明においては、トイレ個室R1〜Rn内の便座31−1〜31−nにアンテナとしてのループアンテナ32−1〜32−nを設ける構成としていたが、便座31−1〜31−nが予め便座暖房用の電熱線(電熱コイル)を有している場合には、この電熱線をループアンテナとして切り替えて用いるように構成することも可能である。このような構成が可能なのは、通信周波数帯域としてLF帯を用いているため、通信がループアンテナ32−1〜32−nの性能の影響を受けにくいからである。
【0039】
図10は、電圧波形の説明図である。
この場合においては、電熱線に印加する電圧波形を動作モードが暖房モードの場合と、通信モードの場合とで切り替える電圧切替手段を設ける。そして、実際に電熱線に印加する電圧波形は、図10に示すように、動作モードが暖房モードである時刻t1〜時刻t2の期間および時刻t3〜時刻t4の期間は、電熱線を暖房用のヒータとして用いるために正の一定電圧を印加するように構成する。
一方、動作モードが通信モードである時刻t2〜時刻t3の期間は、電熱線を通信用のループアンテナとして機能させるために、通信状態に応じた波形を有する交流電圧を印加するように構成する。
この構成によれば、暖房用の電熱線を内蔵した便座31−1〜31−nにアンテナを別途設ける必要が無いため、製造コストの低減を図ることができるとともに、デザイン性に優れたシステムを提供することが可能となる。
【0040】
また、上述した実施形態では、本発明をトイレの個室への入退室管理を行うシステムに適用した場合を例示したが、これに限らず、風呂、シャワーなどのプライバシーが必要とされるとともに、利用者が一人で利用する可能性が高い施設を管理するシステムにも応用することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
10…トイレ利用管理システム、11…洋式便器、12…通信装置、13…非常通報用ボタン、14…検査対象者、15…ICカードタグ、16…検査装置、17…通信ネットワーク、18…管理サーバー、19…信号線、20…非常通報端末、21…検査管理サーバー、22…監視端末、31−1〜31−n…便座、32−1〜32−n…ループアンテナ、40…無線タグ、R1〜Rn、Rx…トイレ個室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトイレ個室内にそれぞれ設置された便座に設けたアンテナと、
管理対象者に予め対応づけられたID情報を有して当該管理対象者に携帯される無線タグから前記アンテナを介して電波を受信し、前記ID情報を取得する受信装置と、
前記受信装置が受信した前記ID情報に基づいて前記管理対象者を特定し、前記トイレ個室を特定する情報、前記無線タグが前記アンテナの通信可能エリア内に位置することが検知された検知開始時刻及び検知終了時刻を、特定した前記管理対象者と対応づけて記録する制御装置と、
を備えたことを特徴とするトイレ利用管理装置。
【請求項2】
請求項1記載のトイレ利用管理装置において、
前記管理対象者から当該管理対象者に関連するデータを収集するデータ収集装置を備え、
前記制御装置は、前記データ収集装置により収集されたデータと、当該データが収集された際にトイレ個室を利用していた前記管理対象者と、を対応づけて記録することを特徴とするトイレ利用管理装置。
【請求項3】
請求項2記載のトイレ利用管理装置において、
前記トイレ個室内には、前記データ収集装置として前記管理対象者の検査を行い、検査データを収集する検査装置が配備されており、
前記制御装置は、当該検査装置により検査がなされた場合に、当該検査がなされた際に当該トイレ個室を利用していた前記管理対象者の検査データとして管理を行うことを特徴とするトイレ利用管理装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のトイレ利用管理装置において、
前記受信装置は、前記無線タグとの間でLF帯の通信周波数を用いて磁界通信を行うことを特徴とするトイレ利用管理装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のトイレ利用管理装置において、
前記トイレ個室内には、非常通報を行うための非常通報用ボタンが備えられており、
前記制御装置は、前記非常通報用ボタンの操作を示す信号の入力を受けて前記非常通報用ボタンが操作された際に当該トイレ個室を利用していた前記管理対象者を特定することを特徴とするトイレ利用管理装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のトイレ利用管理装置において、
前記便座は、暖房用の電熱線を内蔵しており、
前記電熱線を前記アンテナとして用いることを特徴とするトイレ利用管理装置。
【請求項7】
複数のトイレ個室内にそれぞれ設置された便座に設けたアンテナと、
管理対象者に予め対応づけられたID情報を有し、当該管理対象者に携帯される無線タグと、
前記無線タグから前記アンテナを介して電波を受信し、前記ID情報を取得する受信装置と、
前記受信装置が受信した前記ID情報に基づいて前記管理対象者を特定し、前記トイレ個室を特定する情報、前記無線タグが前記アンテナの通信可能エリア内に位置することが検知された検知開始時刻及び検知終了時刻を、特定した前記管理対象者と対応づけて記録する制御装置と、
を備えたことを特徴とするトイレ利用管理システム。
【請求項8】
複数のトイレ個室内にそれぞれ設置された便座に設けたアンテナを有するとともに、トイレ利用データを記憶する記憶装置を備えたトイレ利用管理装置の制御方法であって、
管理対象者に予め対応づけられたID情報を有して当該管理対象者に携帯される無線タグから前記ループアンテナを介して電波を受信し、前記ID情報を取得する受信過程と、
前記受信した前記ID情報に基づいて前記管理対象者を特定し、前記トイレ個室を特定する情報、前記無線タグが前記アンテナの通信可能エリア内に位置することが検知された検知開始時刻及び検知終了時刻を、特定した前記管理対象者と対応づけて前記記憶装置に記憶する記憶過程と、
を備えたことを特徴とするトイレ利用管理装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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