説明

トイレ室の暖房制御システム及び暖房制御方法

【課題】本発明は、使用者がトイレ室を快適に使用でき、しかも、不要な電力の消費を極力抑えて使用コストを低く抑えることのできるトイレ室の暖房制御システム及び暖房制御方法の提供を目的とする。
【解決手段】高出力運転と低出力運転とを行い得る暖房装置2と、制御装置3とを備える。制御装置3は、トイレ室に使用者が入室されたとの判定を行った場合に、高出力運転信号を暖房装置に送信する。又、その入室された使用者の用便姿勢がトイレ室に設けられた便器4に対して立位であるとの判定を行った場合に、低出力運転信号を暖房装置に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ室の暖房を制御する暖房制御システム及び暖房制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、トイレ室の温度を制御する暖房装置が知られている。そのような暖房装置として、例えば室温検知手段によって検出されたトイレ室内の温度と、使用者によって設定された設定温度とに基づき、ファンとヒータを有する暖房ユニットを制御する。又、トイレの使用を検知する使用検知手段を設け、使用検知手段によるトイレ使用時には、トイレ室内の設定温度を補正することができようにしている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−81669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、用便に際しては、便器に対して立った立位で行う場合と、便座に座った座位で行う場合とがあるが、前記特許文献1に記載のものでは、一律にトイレ室内の設定温度を補正することになる。立位で行う場合は、座位で行う場合に比べて通常肌の露出の程度が少ないため、このような立位で用便を行う場合にまで、座位の場合と同様に設定温度を補正したのでは、不要な電力を消費していることになる。
【0004】
本発明は、使用者がトイレ室を快適に使用でき、しかも、不要な電力の消費を極力抑えて使用コストを低く抑えることのできるトイレ室の暖房制御システム及び暖房制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明の請求項1は、トイレ室に設けられた暖房装置と、その暖房装置に制御信号を送信可能な制御装置とを備えたトイレ室の暖房制御システムであって、前記暖房装置は、高出力運転と、その高出力運転よりも低出力で運転する低出力運転とを行い得るように構成され、前記制御装置は、前記トイレ室に使用者が入室されたか否かを判定する入室判定部によって、入室されたとの判定を行った場合に、その判定に基づいて、高出力運転信号を暖房装置に送信するとともに、その入室された使用者の用便姿勢がトイレ室に設けられた便器に対して立位か又は座位かを判定する用便姿勢判定部によって、立位であるとの判定を行った場合に、その判定に基づいて、低出力運転信号を暖房装置に送信することを特徴とするトイレ室の暖房制御システムを提供する。
【0006】
本発明の請求項2は、トイレ室に設けられ高出力運転とその高出力運転よりも低出力で運転する低出力運転とを行い得る暖房装置と、その暖房装置に制御信号を送信可能な制御装置とを用いてトイレ室の暖房を制御するトイレ室の暖房制御方法であって、前記制御装置に、トイレ室に使用者が入室されたか否かを判定させ、入室されたとの判定を行った場合に、その判定に基づいて、高出力運転信号を暖房装置に送信させるとともに、その入室された使用者の用便姿勢がトイレ室に設けられた便器に対して立位か座位かを判定させ、立位であるとの判定を行った場合に、その判定に基づいて、低出力運転信号を暖房装置に送信させる処理を行わせることを特徴とするトイレ室の暖房制御方法を提供することにより、前記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1及び請求項2によれば、制御装置は、入室されたとの判定を行った場合に、高出力運転信号を暖房装置に送信する。又、その入室された使用者の用便姿勢が立位であるとの判定を行った場合に、低出力運転信号を暖房装置に送信する。
【0008】
これにより、高出力運転信号を受信した暖房装置は、高出力運転を開始できる。従って、例えば使用者が入室されるまでの間、トイレ室の暖房装置が作動していない場合でも、使用者が入室されると高出力運転を開始するため、使用者は即座に暖かさを感じることができる。よって、使用者が入室されるまでの間、トイレ室の暖房装置の作動を停止しておくこともでき、電力の消費を抑えて使用コストを低く抑えることも可能となる。
【0009】
又、立位で用便を行う使用者は、座位で用便を行う場合に比べて肌の露出が少ないため、低出力運転に切替えても差し支えのないものにできる。従って、入室された使用者の用便姿勢が立位である場合には、低出力運転信号を暖房装置に送信し、受信した暖房装置に低出力運転させることにより、電力の消費を抑えて使用コストを低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明のトイレ室の暖房制御システムを施したトイレ室の概略図、図2は、その暖房制御システムに用いられる暖房装置を説明するためのブロック図、図3は、その暖房制御システムに用いられる制御装置を説明するためのブロック図である。
【0011】
この実施形態のトイレ室の暖房制御システムは、図1に示すように、トイレ室1に設けられた暖房装置2と、暖房装置2に制御信号を有線又は無線(この実施形態では、無線)によって送信可能な制御装置3とを備えている。
【0012】
この実施形態の暖房装置2は、トイレ室1内に設置された室内機21を備えたエアコンディショナー(エアコン)から構成されている。室内機21は、側面上部に開口部22を備えている。又、開口部22には、送風ファン(図示せず)が設けられている。
【0013】
そして、この室内機21は、トイレ室1に設けられた便器4の側方側に、用便に際して便器4に対して立位又は座位の用便姿勢の使用者と開口部22とが略対向するように設置されている。これにより、エアコンが有する暖房手段によって室内機21に発生させた暖気を開口部22から送風ファンによって温風にして、上記立位又は座位の用便姿勢の使用者に吹き付けることができるようになされている。
【0014】
又、この実施形態の暖房装置2は、図2に示すように、操作部20を備えている。又、この操作部20は、高出力運転部23と、低出力運転部24と、運転停止部25と、受信部26とを備えている。
【0015】
高出力運転部23は、制御装置3から、暖房装置2を高出力運転させるための制御(指令)信号である高出力運転信号を受信した場合にその高出力運転信号に基づいて暖房装置2の暖房運転を高出力で行う高出力運転を行わせる。
【0016】
低出力運転部24は、制御装置3から、上記高出力よりも低出力で暖房装置2を運転させるための制御信号である低出力運転信号を受信した場合にその低出力運転信号に基づいて暖房装置2の暖房運転を、上記高出力運転よりも低出力で運転する低出力運転を行わせる。
【0017】
この実施形態では、低出力運転は、送風ファンの回転数を、高出力運転時よりも減らすことにより行っている。尚、低出力運転は、この形態のものに限らず、例えば設定温度を、高出力運転時よりも低い設定温度にするとともに、送風ファンの回転数を、高出力運転時よりも減らすようにしても良い。
【0018】
運転停止部25は、制御装置3から、暖房装置2の運転を停止させるための制御信号である運転停止信号を受信した場合にその運転停止信号に基づいて、高出力運転又は低出力運転をしている暖房装置2を停止させる。
【0019】
受信部26は、例えば上記高出力運転信号、低出力運転信号、運転停止信号を制御装置3から受信する。
【0020】
又、暖房装置2は、図示しないが、記録装置であるメモリ、CPU、表示装置である表示部、入力装置であるボタンキー、制御装置3と通信するための通信インターフェース等を備えている。
【0021】
そして、上記CPUは、図2の高出力運転部23、低出力運転部24、運転停止部25、受信部26として機能する。
【0022】
制御装置3は、図3に示すように入室判定部31と、用便姿勢判定部32と、退室判定部33と、送信部34とを備えている。
【0023】
入室判定部31は、トイレ室に使用者が入室したか否かを、トイレ室に設けられた入退室検出手段としての入退室検出用赤外線センサ(図示せず)による検出データに基づいて判定する。
【0024】
より詳しくは、この実施形態の入退室検出用赤外線センサは、トイレ室の出入り口を通る使用者に赤外線が遮られるように設置されている。そして、この入退室検出用赤外線センサは、トイレ室の出入り口から入ってくる使用者が赤外線を遮ると、それを検出するとともに、その入室したことの検出データを制御装置3に送信する。それを受信した制御装置3は、トイレ室に使用者が入室されたとの判定を行う。
【0025】
又、制御装置3は、上記入室されたとの判定を行った場合、高出力運転信号を生成し、その高出力運転信号を暖房装置2に送信する。
【0026】
退室判定部33は、使用者がトイレ室から退室したか否かを、上記入退室検出用赤外線センサによる検出データに基づいて判定する。詳しくは、トイレ室の出入り口から出て行く使用者が赤外線を遮ると、それを検出するとともに、その退室したことの検出データを制御装置3に送信する。それを受信した制御装置3は、使用者がトイレ室から退室されたとの判定を行う。
【0027】
又、制御装置3は、上記退室されたとの判定を行った場合、運転停止信号を生成し、その運転停止信号を暖房装置2に送信する。
【0028】
用便姿勢判定部32は、この実施形態では、用便に際して使用者の用便姿勢が便器4に対して立った状態の立位か又は便器4の便座に座った状態の座位かを、トイレ室に設けられた用便姿勢検出手段としての用便姿勢検出用赤外線センサ(図示せず)による検出データに基づいて判定する。
【0029】
詳しくは、この実施形態における用便姿勢検出用赤外線センサは、便器4に対して立位の使用者に赤外線が遮られるように設置されている。そして、この用便姿勢検出用赤外線センサは、用便に際して便器4の前に立った使用者が赤外線を遮るとそれを連続的に検出するとともに、その検出データを連続的に制御装置3に送信する。
【0030】
そして、制御装置3は、用便姿勢検出用赤外線センサから受信する検出データが所定時間(例えば5秒)以上である場合に、その受信した検出データに基づいて使用者の用便姿勢が立位であるとの判定を行う。
【0031】
又、制御装置3は、使用者の用便姿勢が立位であるとの判定を行った場合、低出力運転信号を生成し、その低出力運転信号を暖房装置2に送信する。
【0032】
一方、制御装置3は、用便姿勢検出用赤外線センサから受信する検出データが所定時間よりも短い場合に、その受信した検出データに基づいて使用者の用便姿勢が座位であるとの判定を行う。
【0033】
送信部34は、例えば高出力運転信号、低出力運転信号、或いは、運転停止信号を暖房装置2に送信する。
【0034】
又、制御装置3は、図示しないが、記録装置であるメモリ、CPU、表示装置である表示部、入力装置であるボタンキー、暖房装置2と通信するための通信インターフェース等を備えている。
【0035】
そして、上記CPUは、図3の入室判定部31、用便姿勢判定部32、退室判定部33、送信部34として機能する。
【0036】
次に、この実施形態のシステムの動作について、図4に基づいて説明する。まず、制御装置3は、トイレ室1に使用者が入室されたか否かを、入退室検出用赤外線センサによる検出データに基づいて判定する(図3、ステップS1)。
【0037】
このステップS1において、制御装置3は、未だ入室されないとの判定を行った場合、制御を戻す。一方、ステップS1において、制御装置3は、入室されたとの判定を行った場合、その判定に基づいて、高出力運転信号を生成して暖房装置2に送信する。
【0038】
例えば図5に示すように、時刻t1で、使用者がトイレ室に入室すると、制御装置3は、入室されたとの判定を行い、そして、この判定に基づいて高出力運転信号を生成して暖房装置2に送信する。
【0039】
高出力運転信号を受信した暖房装置2(の操作部20)は、受信したその高出力運転信号に基づいて、高出力運転を開始する(図4、ステップS2)。
【0040】
その後、制御装置3は、使用者の用便姿勢が便器4に対して立位か又は座位かを、用便姿勢検出用赤外線センサによる検出データに基づいて判定する(図4、ステップS3)。
【0041】
このステップS3において、制御装置3は、立位であるとの判定を行った場合、その判定に基づいて、低出力運転信号を生成して暖房装置2に送信する。
【0042】
例えば図5に示すように、時刻t2で、使用者が立位の用便姿勢を採ると、制御装置3は、立位であるとの判定を行い、そして、この判定に基づいて低出力運転信号を生成して暖房装置2に送信する。
【0043】
低出力運転信号を受信した暖房装置2は、受信したその低出力運転信号に基づいて、高出力運転から低出力運転に切り替えて低出力運転を開始する(図4、ステップS4)。
【0044】
その後、制御装置3は、使用者がトイレ室1から退室されたか否かを、入退室検出用赤外線センサによる検出データに基づいて判定する(図4、ステップS5)。このステップS5において、未だ退室されていないとの判定を行った場合は、制御を戻し、退室されるのを待つ。
【0045】
一方、ステップS5において、退室されたとの判定を行った場合は、その判定に基づいて運転停止信号を生成し、暖房装置2に送信する。
【0046】
例えば図5に示すように、時刻t3で、使用者が退室すると、制御装置3は、退室したとの判定を行い、そして、その判定に基づいて運転停止信号を生成して暖房装置2に送信する。運転停止信号を受信した暖房装置2は、低出力運転を停止する(図4、ステップS6)。
【0047】
上記ステップS3において、制御装置3は、座位であるとの判定を行った場合、使用者がトイレ室1から退室されたか否かを、入退室検出用赤外線センサによる検出データに基づいて判定する(図4、ステップS7)。
【0048】
このステップS7において、未だ退室されていないとの判定を行った場合は、制御を戻し、退室されるのを待つ。一方、ステップS7において、退室されたとの判定を行った場合は、その判定に基づいて運転停止信号を生成し、暖房装置2に送信する。運転停止信号を受信した暖房装置2は、高出力運転を停止する(図4、ステップS8)。
【0049】
尚、上記実施形態では、制御装置が座位であるとの判定を行った場合に、暖房装置を入室された際に運転させた高出力運転を継続、即ち、同じ出力で運転させているが、この形態のものに限らず、適宜変更できる。
【0050】
例えば、制御装置が座位であるとの判定を行った場合に、暖房装置を入室された際に運転させた高出力運転よりも高出力で運転させる最高出力運転で運転させるようにしても良い。
【0051】
より詳しくは、暖房装置は、高出力運転と、高出力運転よりも低出力で運転する低出力運転と、高出力運転よりも高出力で運転する最高出力運転とを切り替えて行い得るように構成されている。そして、例えば制御装置が座位であるとの判定を行った場合に、その判定に基づいて最高出力運転信号を生成し、暖房装置に送信する。暖房装置は、受信した最高出力運転信号に基いて高出力運転よりも高出力で運転する。
【0052】
また、上記実施形態では、用便姿勢が立位か座位かの制御装置の判定を、用便姿勢検出用赤外線センサによる検出データに基づいて行っているが、この形態のものに限らず、適宜変更できる。
【0053】
例えば、人や動物などの温度をもつものから自然に放射されている赤外線による温度変化を検知する焦電センサを用いて立位であるか否かを検出し、その検出データに基づいて行うようにしても良い。又、便器4の便座に圧力検出器を付設し、使用者が入室してから設定時間内に、便座に着座した際にかかる圧力を検出した場合に、用便姿勢が座位であるとの判定を行い、上記設定時間内に圧力を検出しない場合に、立位であるとの判定を行っても良い。
【0054】
又、上記実施形態では、暖房装置としてエアコンを用いているが、この形態のものに限らず、赤外線ヒータ、パネルヒータ、オイルヒータ等であっても良い。又、暖房装置としてパネルヒータを用いる場合、例えばパネルヒータに設けられたヒータ線の全部とその一部とに通電を切り替えるようにして、高出力運転と低出力運転とを行えるようにしても良い。
【0055】
又、上記実施形態では、暖房装置と制御装置とを別途に設けているが、例えば制御装置を暖房装置に組み込んで付設した形態のものであっても良く、適宜変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態のトイレ室の暖房制御システムを施したトイレ室の概略図である。
【図2】その暖房制御システムに用いられる暖房装置を説明するためのブロック図である。
【図3】その暖房制御システムに用いられる制御装置を説明するためのブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態のトイレ室の暖房制御システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】暖房装置の運転と、入室及び退室と、用便姿勢の関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1 トイレ室
2 暖房装置
3 制御装置
4 便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレ室に設けられた暖房装置と、その暖房装置に制御信号を送信可能な制御装置とを備えたトイレ室の暖房制御システムであって、
前記暖房装置は、高出力運転と、その高出力運転よりも低出力で運転する低出力運転とを行い得るように構成され、
前記制御装置は、前記トイレ室に使用者が入室されたか否かを判定する入室判定部によって、入室されたとの判定を行った場合に、その判定に基づいて、高出力運転信号を暖房装置に送信するとともに、その入室された使用者の用便姿勢がトイレ室に設けられた便器に対して立位か又は座位かを判定する用便姿勢判定部によって、立位であるとの判定を行った場合に、その判定に基づいて、低出力運転信号を暖房装置に送信することを特徴とするトイレ室の暖房制御システム。
【請求項2】
トイレ室に設けられ高出力運転とその高出力運転よりも低出力で運転する低出力運転とを行い得る暖房装置と、その暖房装置に制御信号を送信可能な制御装置とを用いてトイレ室の暖房を制御するトイレ室の暖房制御方法であって、
前記制御装置に、トイレ室に使用者が入室されたか否かを判定させ、入室されたとの判定を行った場合に、その判定に基づいて、高出力運転信号を暖房装置に送信させるとともに、その入室された使用者の用便姿勢がトイレ室に設けられた便器に対して立位か座位かを判定させ、立位であるとの判定を行った場合に、その判定に基づいて、低出力運転信号を暖房装置に送信させる処理を行わせることを特徴とするトイレ室の暖房制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−229041(P2009−229041A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78389(P2008−78389)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】