説明

トップインレット型の低圧蒸気タービン

【課題】内車室内の蒸気及び蒸気入口部内の蒸気の放熱ロスを低減可能なトップインレット型の低圧蒸気タービンを提供する。
【解決手段】低圧蒸気タービン1は、内車室2と、内車室2を覆うように内車室2の外側に設けられる外車室4と、外車室4を上方から貫通して設けられ、内車室2に蒸気を導入する蒸気入口部24と、を備えている。外車室4の外周に沿って、窪み部14がロータ軸直交方向に延設されている。クロスオーバー管62が窪み部14内に完全に収納されている。窪み部14のロータ軸直交に沿って形成された側壁16は、蒸気入口部24とディフューザ8との間の位置に形成されている。側壁16は、内車室2を通過した後、ディフューザ8によって案内されて、外車室4と内車室2との間を通って蒸気入口部24へ向かう低温の蒸気の流れを遮る整流板としての機能を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電所や原子力発電所等で用いられるトップインレット型の低圧蒸気タービンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントにおいては、原子炉で発生した熱エネルギーを蒸気として取り出すための蒸気発生器で発生した蒸気は高圧蒸気タービンに送られる。そして、高圧蒸気タービンで仕事をした蒸気は、湿分分離加熱器で再び加熱され、クロスオーバー管を通って低圧蒸気タービンに送られる。
【0003】
図7は、原子力発電プラントにおける低圧蒸気タービン近傍の斜視図である。図7に示すように、原子力発電プラントにおいては、湿分分離加熱器60は2つ設けられ、2つの湿分分離加熱器60が低圧蒸気タービン58を挟むようにして低圧蒸気タービン58の横に配置されている。そして、それぞれの湿分分離加熱器60で加熱された蒸気が流れるクロスオーバー管62が設けられている。クロスオーバー管62は、低圧蒸気タービン58内部に連通しており、クロスオーバー管62を流れる蒸気は低圧蒸気タービン58に導入されるようになっている。つまり、低圧蒸気タービン58には、2つのクロスオーバー管62から蒸気が導入されることとなる。このように、低圧蒸気タービン58の上方から蒸気を導入する構造をトップインレット型という。
【0004】
トップインレット型の低圧蒸気タービンは、図8に示すように、内車室80と、内車室80を覆うように設けられた外車室82と、外車室82を上方から貫通して設けられ、内車室80に蒸気を導入する蒸気入口部84と、内車室80を通過した後の蒸気を案内するディフューザ86と、を備えている(例えば、特許文献1)。低圧蒸気タービン内に導入された高温の蒸気は、蒸気入口部84を通って内車室80に導入される。内車室80を通過した後の低温の蒸気は、ディフューザ86に案内されて内車室80の周囲に沿って下方へ流れて外車室82の下端から排出される。
【0005】
また、特許文献2には、中央部に窪み部を設けたトップインレット型の蒸気タービンが開示されている。この蒸気タービンのタービン本体内には、タービンロータに沿って配置された内部蒸気円筒管が設けられており、蒸気タービン内に導入された高温の蒸気は、蒸気入口部を通って高圧部の翼段落列で仕事をした後、内部蒸気円筒管内を通過して低圧部の翼段落列に送給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−93614号公報
【特許文献2】特開平8−303207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載したトップインレット型の低圧蒸気タービンにおいては、内車室を通過した後の低温の蒸気が、ディフューザに案内されて内車室の周囲に沿って下方へ流れるとともに、蒸気入口部付近まで回り込むため、内車室内の高温の蒸気及び蒸気入口部内の高温の蒸気が有する熱の一部が、内車室の外周及び蒸気入口部の外周を介して放熱され、内車室を通過した後の低温の蒸気に移ってしまうことによる放熱ロスが生じる。即ち内車室内の高温の蒸気及び蒸気入口部内の高温の蒸気が、内車室を通過した後の蒸気と熱交換して冷却されてしまうという問題があった。
また、特許文献2に記載の蒸気タービンの内部蒸気円筒管は、蒸気入口部と交差するように配置されているため、蒸気入口部内の高温の蒸気が、内部蒸気円筒管を通過する蒸気と熱交換して冷却されるおそれがある。そして、窪み部にクロスオーバー管等の蒸気管を収容する旨の記載も無い。
ところで、近年、原子力発電プラントの大型化に伴い、低圧蒸気タービンの大型化が進んでいる。低圧蒸気タービンを大型化するためには外車室及び内車室を大型化する必要がある。内車室としては、静翼が翼環を介して内部に支持される壁部材で構成されている一重内車室構造や、内車室を第1内車室と第2内車室の二重構造として第1内車室と第2内車室の間に抽気室が形成される二重内車室構造が知られている。二重内車室構造は、内車室内の高温の蒸気から内車室を介して放熱する放熱量が、一重内車室構造と比較すると少ないためエネルギーのロスが少ないという利点がある。しかしながら、二重内車室構造を大型化すると製作コスト、メンテナンスコストが膨大になるため、内車室の大型化にあたっては一重内車室構造が用いられている。この一重内車室構造を用いた場合、上述した熱交換による放熱ロスが著しいという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は係る従来技術の問題点に鑑み、内車室内の蒸気及び蒸気入口部内の蒸気の放熱ロスを低減可能なトップインレット型の低圧蒸気タービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決する本発明に係るトップインレット型の低圧蒸気タービンは、
内車室と、前記内車室を覆うように前記内車室の外側に設けられた外車室と、
前記外車室を上方から貫通して設けられ、前記内車室に蒸気を導入する蒸気入口部と、
前記内車室を通過した後の蒸気を案内するディフューザと、
前記蒸気入口部と前記ディフューザとの間の位置に設けられ、前記ディフューザによって案内されて、前記外車室と前記内車室との間を通って前記蒸気入口部へ向かう蒸気の流れを遮る整流板と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記トップインレット型の低圧蒸気タービンによれば、蒸気入口部とディフューザとの間の位置に整流板を備えているため、内車室を通過した後の低温の蒸気が蒸気入口部へ向かって流れることを抑制できる。これにより、内車室の中央部付近及び蒸気入口部近傍を通過する低温の蒸気量が減少するために、内車室内の蒸気及び蒸気入口部内の蒸気の放熱ロスを低減することができる。したがって、整流板を設けることにより、放熱ロスの少ない大型の低圧蒸気タービンを製作することができる。
また、整流板は、補強材としての機能も有するため、整流板が取り付けられている外車室又は内車室の補強材の数を低減することができる。
【0011】
また、前記蒸気入口部に接続された蒸気管を更に備え、
前記外車室の外周に沿って、前記蒸気管の少なくとも一部を収納する窪み部がロータ軸直交方向に延設されており、
前記窪み部のロータ軸直交に沿った側壁によって前記整流板が形成されていてもよい。
【0012】
このように、外車室の外周に沿って窪み部が延設されているため、蒸気管の少なくとも一部を窪み部内に収納することができる。これにより、トップインレット型の低圧蒸気タービンの高さを従来のものよりも低くすることができる。
ところで、外車室は、一般的に水平分割面において上半部と下半部とに分割することができる。定期点検時等には上半部を吊り上げて外車室を開放する場合があるが、この上半部を移動させるためには、上半部を例えば、蒸気管(例えば、クロスオーバー管)を超える高さまで吊り上げる必要がある。そのため、低圧蒸気タービンの大型化にともない、天井の高さによっては既設の建屋の天井を高くしなければならない可能性が生じるとともに、新規に建屋を建設する場合にも建屋の天井高さを高くする必要があり建屋の建設費用が高額になる。しかし、本発明では、蒸気管の少なくとも一部が窪み部内に収納されていることにより、上半部を吊り上げる高さを従来のトップインレット型の低圧蒸気タービンを用いた場合よりも低くすることができる。これにより、タービンを大型化してもタービンが設置される建屋の天井高さを変更する必要がない。
また、窪み部のロータ軸直交に沿った側壁を整流板として用いることにより、新たに整流板を設置しなくてもよい。これにより、設置の手間や材料費を削減することができる。
【0013】
また、前記外車室は、互いに対向する前記整流板としての一対の前記側壁の位置において3分割されていてもよい。
【0014】
このように、外車室は、整流板としての側壁の位置で3分割されるため、外車室の組立て及び分解が容易となり、メンテナンス性に優れている。
【0015】
また、前記外車室には、前記窪み部の前記側壁の外表面に補強用リブが設けられていてもよい。
【0016】
このように、窪み部の側壁の外表面には補強用リブが設けられているため、真空荷重負荷時における側壁の変形を防止することができる。
【0017】
また、前記蒸気入口部の上方において、前記蒸気管が前記窪み部内に完全に収納されていてもよい。
【0018】
このように、蒸気管が窪み部内に完全に収納されているため、低圧蒸気タービンの最も高い位置は、外車室の頂上となる。これにより、トップインレット型の低圧蒸気タービンを用いる場合には建屋を大きく構築しなければならないという従来の欠点が無くなる。さらに、蒸気管が窪み部内に完全に収納されていても、トップインレット型の低圧蒸気タービンは、サイドインレット型の低圧蒸気タービンよりも点検や分解が容易であるという利点はそのまま維持することができる。
また、従来、低圧蒸気タービンの点検時において部品を取り外す際に、当該部品を外車室よりも高く吊り上げても、蒸気管(例えば、クロスオーバー管)が邪魔になり点検位置へ移動させることができない場合には、点検の必要が無い蒸気管を取り外さなければならなかったが、本発明では、蒸気管が窪み部内に完全に収納されているため、無駄な蒸気管の脱着を無くすことができる。
【0019】
また、前記内車室は、静翼が翼環を介して内部に支持される壁部材で構成される一重内車室構造であることとしてもよい。
【0020】
一重内車室構造は、多重構造の車室と比較すると構造が簡単で製作コスト、メンテナンスコストが安い。これにより、低圧蒸気タービンを大型化しても製造コストの増加を抑制することができる。
【0021】
また、前記外車室は、水平分割面において上半部と下半部とに分割可能であり、
前記整流板は、前記上半部の周方向全体にわたって、前記外車室と前記内車室との間の空間に設けられており、前記水平分割面に位置する両端から中央に向かうにしたがって拡幅されていてもよい。
【0022】
このように、整流板は、上半部の周方向全体にわたって、外車室と内車室との間の空間に設けられており、水平分割面に位置する両端から中央に向かうにしたがって拡幅されているため、内車室を通過した後の低温の蒸気が蒸気入口部へ向かって流れることを効果的に抑制できる。これによって、放熱ロスを大幅に低減することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、内車室内の蒸気及び蒸気入口部内の蒸気の放熱ロスを低減可能なトップインレット型の低圧蒸気タービンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第一実施形態に係るトップインレット型の低圧蒸気タービンが適用される原子力発電プラントの概略図である。
【図2】低圧蒸気タービンの概略断面図である。
【図3】図2のA−A断面図であり、外車室と整流板との取合い関係を示す図である。
【図4】整流板の他の例を示す図である。
【図5】整流板の他の例を示す図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る低圧蒸気タービンの概略断面図である。
【図7】従来の原子力発電プラントにおける低圧蒸気タービン近傍の斜視図である。
【図8】従来の低圧蒸気タービンの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。なお、以下の説明では、本発明に係るトップインレット型の低圧蒸気タービンを原子力発電プラントに適用した例について説明するが、これに限定されるものではなく、火力発電プラント等の他のプラントにも適用可能である。また、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0026】
図1は、本発明の第一実施形態に係るトップインレット型の低圧蒸気タービンが適用される原子力発電プラントの概略図である。
図1に示すように、原子力発電プラント50は、原子炉で発生した熱エネルギーを蒸気として取り出すための蒸気発生器52を備えている。蒸気発生器52で発生した蒸気は主蒸気管54を経て高圧蒸気タービン56に送られる。高圧蒸気タービン56に送られた蒸気は高圧蒸気タービン56を駆動した後、湿分分離加熱器60で加熱され、クロスオーバー管62を通ってトップインレット型の低圧蒸気タービン1(以下、トップインレット型の低圧蒸気タービンを単に低圧蒸気タービンという)に送られる。
【0027】
低圧蒸気タービン1のタービンシャフトには発電機64の回転軸が連結されており、低圧蒸気タービン1に送られた蒸気は低圧蒸気タービン1を駆動した後、復水器66で蒸気から水(以下、復水という)に戻される。復水器66には復水ポンプ68の吸込み口が復水ポンプ入口管70を介して接続されており、復水は復水ポンプ68で昇圧された後、低圧給水加熱器72に供給される。
【0028】
低圧給水加熱器72に供給された復水は、低圧給水加熱器72で加熱された後、給水ポンプ74にて高圧給水加熱器76に送られる。高圧給水加熱器76で加熱された復水は、蒸気発生器52に供給される。
【0029】
湿分分離加熱器60は2つ設けられ(図7参照)、2つの湿分分離加熱器60が低圧蒸気タービン1を挟むようにして低圧蒸気タービン1の横に配置されている。
【0030】
次に、図2及び図3に基づいて、本実施形態に係る低圧蒸気タービン1内の構造について説明する。
図2は、低圧蒸気タービン1の概略断面図である。また、図3は、図2のA−A断面図であり、外車室と側壁との取合い関係を示す概略図である。
図2及び図3に示すように、低圧蒸気タービン1は、内車室2と、内車室2を覆うように内車室2の外側に設けられる外車室4と、外車室4を上方から貫通して設けられ、内車室2に蒸気を導入する蒸気入口部24と、を備えている。そして内車室2と外車室4との間には空間14が形成される。
【0031】
内車室2は、ロータ6と、内車室2内を通過した後の蒸気の流れを案内するディフューザ8とを含んで構成されている。また、内車室2は、一重内車室構造である。
【0032】
ロータ6は、外車室4外で軸受部12によって回転自在に支持されている。また、ロータ6には、複数本の動翼(図示しない)が植え込まれて固定されており、ロータ6の動翼が植え込まれた部分及び動翼は内車室2内に収納されている。
【0033】
内車室2内には、翼環11を介してロータ6側の動翼と対向するように、複数本の静翼(図示しない)が取り付けられている。
外車室4は、ロータ6を通る水平分割面5において上半部4aと下半部4bとに分割可能に構成されている。
【0034】
さらに、本発明に特徴的な構成として、外車室4の外周に沿って、窪み部14がロータ軸直交方向に延設されている。
蒸気入口部24の上方及びその近傍において、クロスオーバー管62は窪み部14内に完全に収納されている。即ちクロスオーバー管62よりも外車室4の上端が高い位置にある。蒸気入口部24の上方に、2つのクロスオーバー管62及び蒸気入口部24に接続されたT字管13が配されている。これにより、2つのクロスオーバー管62それぞれを流れる湿分分離加熱器60からの高温の蒸気は、T字管13内を通って蒸気入口部24に導入される。
【0035】
窪み部14のロータ軸直交に沿って形成された側壁16は、蒸気入口部24とディフューザ8との間の位置に形成されている。窪み部14のロータ軸方向の長さ(即ち窪み部14の側壁16間の長さ)L1は、内車室2のロータ軸方向の長さL2よりも短く形成されている。
【0036】
窪み部14の側壁16は、図3に示すように、外車室4の上半部4aの周方向全体にわたって、外車室4と内車室2との間の空間に設けられており、水平分割面5に位置する両端から中央に向かうにしたがって円弧状に拡幅するように形成されている。内車室2を通過した後の低温の蒸気が、ディフューザ8によって案内されて、外車室4と内車室2との間を通って蒸気入口部24へ向かって流れることを遮る整流板としての機能を、この側壁16は有している。
窪み部14を設けたことにより、内車室2を通過した後の蒸気が、外車室4と内車室2との間を通って蒸気入口部24へ近づくことを抑制できる。
【0037】
側壁16の外表面には、複数のI型の補強リブ18が溶接等により接続されている。これにより、真空荷重負荷時における側壁16の変形を防止することができる。
【0038】
また、外車室4は、互いに対向する一対の側壁16の位置において3分割可能に構成されている。即ち外車室4は、窪み部14の底面20を外周に含む中央部25と、この中央部25の両側にそれぞれ接続されて、側壁16を含む一対の端部26、27と、中央部25と各端部26、27とをそれぞれ固定する固定手段28、29と、から構成されている。
【0039】
中央部25のロータ軸方向の長さは、窪み部14の底面20のロータ軸方向の長さL1と同じになるように形成されている。
【0040】
固定手段28、29は、中央部25と各端部26、27とが低圧蒸気タービン1の運転時等に分割しないように固定できればよく、本実施形態では、ボルト等の締結部にて接続されている。
【0041】
次に、上述した構成からなる低圧蒸気タービン1の動作について説明する。
低圧蒸気タービン1において、外部より導入される蒸気は、クロスオーバー管62及び蒸気入口部24を通って内車室2内に導入される。内車室2に導入された蒸気は、静翼を通過しながら膨張して増速され、動翼に対して仕事をしてロータ6を回転させる。
【0042】
内車室2を通過した後の蒸気の一部は、図2にAで示した流れのようにディフューザ8に沿って内車室2の上方に流れた後、蒸気入口部24近傍及び内車室2中央部付近へ近づくことなく側壁16に沿って内車室2の周囲に流れて外車室4下部の排出部(不図示)から排出される。
【0043】
上述したように、本実施形態に係る低圧蒸気タービン1によれば、窪み部14を備えているため、内車室2を通過した後の低温の蒸気が蒸気入口部24へ向かって流れることを抑制できる。これにより、内車室2の中央部付近及び蒸気入口部24近傍を通過する低温の蒸気量が減少するために、内車室2内の蒸気及び蒸気入口部24内の蒸気の放熱ロスを低減することができる。さらに、側壁16は、上半部4aの周方向全体にわたって、水平分割面5に位置する両端から中央に向かうにしたがって拡幅するように形成されているため、内車室2を通過した後の低温の蒸気が蒸気入口部24へ向かって流れることを効果的に抑制できる。これによって、放熱ロスの少ない大型の低圧蒸気タービン1を製作することができる。
【0044】
また、外車室4の外周に沿って窪み部14が延設されているため、クロスオーバー管62を窪み部14内に収納することができる。これにより、トップインレット型の低圧蒸気タービン1の高さを従来のものよりも低くすることができる。さらに、クロスオーバー管62が窪み部14内に収納されていることにより、上半部4aや部品等を吊り上げる高さを従来のトップインレット型の低圧蒸気タービン1よりも低くすることができる。これにより、低圧蒸気タービン1を大型化しても低圧蒸気タービン1が設置される建屋の天井高さを変更する必要がない。そして、従来、点検時において部品等を取り外す際に、当該部品等を外車室4よりも高く吊り上げて、クロスオーバー管62が邪魔になり点検位置へ移動させることができない場合には、点検の必要が無いクロスオーバー管62を取り外さなければならなかったが、本発明では、クロスオーバー管62が窪み部14内に完全に収納されているため、無駄なクロスオーバー管62の脱着を無くすことができる。
【0045】
また、クロスオーバー管62が窪み部14内に完全に収納されているため、トップインレット型の低圧蒸気タービン1の最も高い位置は、外車室4の頂上となる。これにより例えば、同一出力条件の下では、トップインレット型の低圧蒸気タービン1の高さをサイドインレット型の低圧蒸気タービンの高さと同程度にすることができるため、トップインレット型の低圧蒸気タービン1を用いる場合には建屋を大きく構築しなければならないという従来の欠点が無くなる。さらに、クロスオーバー管62が窪み部14内に完全に収納されていても、トップインレット型の低圧蒸気タービン1は、サイドインレット型の低圧蒸気タービンよりも点検や分解が容易であるという利点はそのまま維持することができる。
【0046】
また、窪み部14のロータ軸直交に沿った側壁16を整流板として用いることにより、新たな整流板を設置しなくてもよい。これにより、設置の手間や材料費を削減することができる。
【0047】
また、側壁16は、補強材としての機能も有するため、外車室4の補強リブの数を低減することができる。さらに、側壁16の外表面には補強リブ18が設けられているため、真空荷重負荷時における側壁16の変形を防止することができる。
【0048】
また、外車室4は、側壁16の位置で3分割されているため、外車室4の組立て及び分解が容易となり、メンテナンス性に優れている。
【0049】
また、一重内車室構造は、多重構造の車室と比較すると構造が簡単で製作コスト、メンテナンスコストが安い。これにより、低圧蒸気タービン1を大型化しても製造コストの上昇を抑制することができる。
【0050】
なお、本実施形態においては、側壁16として、水平分割面5に位置する両端から中央に向かうにしたがって円弧状に拡幅する形状のものを用いた場合について説明したが、この形状に限定されるものでない。例えば、図4に示すように、水平分割面5に位置する両端から中央に向かうにしたがって円弧状に拡幅し、中央部が水平になる形状の側壁17や、図5に示すように、上半部4aの肩部から中央に向かって水平な略扇形の側壁19を用いてもよい。
【0051】
また、本実施形態においては、クロスオーバー管62が窪み部14内に完全に収納されている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、クロスオーバー管62の一部が窪み部14内に収納されていればよい。クロスオーバー管62の一部が窪み部14内に収納されていることにより、本実施形態に係る低圧蒸気タービン1の高さを、従来の低圧蒸気タービンよりも低くすることができる。
【0052】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。以下の説明において、上記の実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
第二実施形態は、第一実施形態で設けた窪み部14の代わりに、外車室の内周面に整流板を設けたものである。
【0053】
図6は、本発明の第二実施形態に係る低圧蒸気タービンの概略断面図である。
図6に示すように、低圧蒸気タービン41は、内車室2と、外車室44と、外車室44を上方から貫通して設けられ、内車室2に蒸気を導入する蒸気入口部48と、蒸気入口部24とディフューザ8との間に設けられた整流板46と、を備えている。
整流板46は、外車室44の内周面に、外車室44から内車室2側へ向かって突出するように設けられている。この整流板46によって、内車室2を通過した後の蒸気が、外車室44と内車室2との間を通って、内車室2の中央部付近や蒸気入口部48近傍まで流れることを抑制することができる。整流板46は、第一実施形態の側壁16と同様の形状を有している。勿論、整流板46として、第一実施形態の側壁17や側壁19と同様の形状のものを用いてもよい。
【0054】
内車室2を通過した後の蒸気の一部は、図6にCで示した流れのようにディフューザ8に沿って内車室2の上方に流れた後、内車室2の中央部付近及び蒸気入口部48近傍へ近づくことなく整流板46に沿って内車室2の周囲に流れて外車室44下部の排出部(不図示)から排出される。
【0055】
なお、本実施形態においては、整流板46を、外車室44の内周面から内車室2側へ向かって突出するように設けたが、これに限定されるものではなく、内車室2の外周面から外車室44側へ向かって突出するように整流板46を設けてもよい。要は、外車室44と内車室2との間を通って蒸気入口部48へ向かう蒸気の流れを遮るように、蒸気入口部48とディフューザ8との間の位置に設けられていればよい。
【0056】
上述したように、本実施形態に係る低圧蒸気タービン41によれば、蒸気入口部48とディフューザ8との間の位置に整流板46を備えているため、内車室2を通過した後の低温の蒸気が蒸気入口部48へ向かって流れることを抑制できる。これにより、内車室2の中央部付近及び蒸気入口部48近傍を通過する低温の蒸気量が減少するために、内車室2内の蒸気及び蒸気入口部48内の蒸気の放熱ロスを低減することができる。
また、整流板46は、補強材としての機能も有するため、整流板46が取り付けられている外車室44の補強リブの数を低減することができる。
【0057】
なお、上述した各実施形態においては、蒸気入口部24、48に蒸気を供給する蒸気管としてクロスオーバー管62を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、1本や3本以上の蒸気管であってもよい。要は、低圧蒸気タービン1、41の蒸気入口部24、48に蒸気を供給可能な蒸気管であればよい。
【符号の説明】
【0058】
1 低圧蒸気タービン
2 内車室
4 外車室
4a 上半部
4b 下半部
5 水平分割面
6 ロータ
8 ディフューザ
11 翼環
12 軸受部
13 T字管
14 窪み部
16 側壁
17 側壁
18 補強リブ
19 側壁
20 底面
24 蒸気入口部
25 中央部
26 端部
27 端部
28 固定手段
29 固定手段
41 低圧蒸気タービン
44 外車室
46 整流板
48 蒸気入口部
50 原子力発電プラント
52 蒸気発生器
54 主蒸気管
56 高圧蒸気タービン
58 低圧蒸気タービン
60 湿分分離加熱器
62 クロスオーバー管
64 発電機
66 復水器
68 復水ポンプ
70 復水ポンプ入口管
72 低圧給水加熱器
74 給水ポンプ
76 高圧給水加熱器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内車室と、
前記内車室を覆うように前記内車室の外側に設けられた外車室と、
前記外車室を上方から貫通して設けられ、前記内車室に蒸気を導入する蒸気入口部と、
前記内車室を通過した後の蒸気を案内するディフューザと、
前記蒸気入口部と前記ディフューザとの間の位置に設けられ、前記ディフューザによって案内されて、前記外車室と前記内車室との間を通って前記蒸気入口部へ向かう蒸気の流れを遮る整流板と、を備えることを特徴とするトップインレット型の低圧蒸気タービン。
【請求項2】
前記蒸気入口部に接続された蒸気管を更に備え、
前記外車室の外周に沿って、前記蒸気管の少なくとも一部を収納する窪み部がロータ軸直交方向に延設されており、
前記窪み部のロータ軸直交に沿った側壁によって前記整流板が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のトップインレット型の低圧蒸気タービン。
【請求項3】
前記外車室は、互いに対向する前記整流板としての一対の前記側壁の位置において3分割されていることを特徴とする請求項2に記載のトップインレット型の低圧蒸気タービン。
【請求項4】
前記外車室には、前記窪み部の前記側壁の外表面に補強用リブが設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載のトップインレット型の低圧蒸気タービン。
【請求項5】
前記蒸気入口部の上方において、前記蒸気管が前記窪み部内に完全に収納されていることを特徴とする請求項2から4のうち何れか一項に記載のトップインレット型の低圧蒸気タービン。
【請求項6】
前記内車室は、静翼が翼環を介して内部に支持される壁部材で構成される一重内車室構造であることを特徴する請求項1から5のうち何れか一項に記載のトップインレット型の低圧蒸気タービン。
【請求項7】
前記外車室は、水平分割面において上半部と下半部とに分割可能であり、
前記整流板は、前記上半部の周方向全体にわたって、前記外車室と前記内車室との間の空間に設けられており、前記水平分割面に位置する両端から中央に向かうにしたがって拡幅されていることを特徴とする請求項1から6のうち何れか一項に記載のトップインレット型の低圧蒸気タービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−36420(P2013−36420A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174247(P2011−174247)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)