説明

トナー付着強度測定装置およびトナー付着強度測定方法

【課題】トナーと磁性体成分を含むキャリアとからなる二成分現像剤におけるキャリアに対するトナーの付着強度を再現性よく正確に測定する。
【解決手段】二成分現像剤を磁力によって保持する第1磁石22を有する現像剤保持部2と、第1磁石22に保持された二成分現像剤に気流を供給する気流供給部3と、上記気流によってキャリアから分離したトナーである分離トナーの個数を検知する分離トナー検知部4と、上記気流の風速と分離トナー検知部4の検知した分離トナーの個数とに基づいてトナーとキャリアとの付着強度あるいは付着強度の程度を示す指標を算出する付着力演算部5bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二成分現像剤に含まれるトナーとキャリアとの付着強度分布を測定するためのトナー付着強度測定装置およびトナー付着強度測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、トナーと磁性体成分を含むキャリアとからなる二成分現像剤を用いる電子写真方式の画像形成装置が知られている。この種の画像形成装置では、画像データに応じた静電潜像を感光体の表面に形成し、その静電潜像をトナーによって現像し可視化している。この場合、感光体の表面に対向する位置にトナーとキャリアとを含む二成分現像剤を搬送し、上記静電潜像によって作用する、トナーとキャリアとの付着強度(付着力)よりも強い静電引力によって、トナーを上記静電潜像に移行させている。
【0003】
ところで、二成分現像剤を用いる現像プロセスでは、トナーの比電荷やトナーの形状等がトナーとキャリアとの付着強度に影響を与えることが知られている。また、トナーの帯電性は長期間の使用によって経年的に低下することが知られている。
【0004】
トナーとキャリアとの付着強度が低下すると、現像装置から感光体に移行するトナーの量が過大になって画像品位が低下したり、現像装置からトナーが飛散したりするなどの不具合が生じる。
【0005】
このため、二成分現像剤に用いられるトナーの開発や現像プロセスへの最適化、劣化度合いの評価などを行う上で、トナーとキャリアとの付着強度もしくは付着強度分布を容易かつ正確に測定する技術が求められている。
【0006】
一般に、トナー等の粉体の付着強度は、粉体が付着している被付着体から粉体を分離するのに要する力を測定することによって検出される。また、粉体を被付着体から分離させる方法としては、遠心分離法、電界法、ブロー法などが知られている。
【0007】
遠心分離法(例えば特許文献1〜3参照)では、粉体を付着させた試料基板に対向する位置に試料基板から分離した粉体を受ける受け基板を配置し、試料基板を遠心分離装置のロータ内に設置し、ロータの回転による遠心力を用いて粉体を試料基板から分離させて受け基板に付着させる。そして、受け基板に付着した粉体の質量を測定し、粉体の質量及びロータの回転数から分離に要した遠心力を計算して粉体の試料基板に対する付着強度を求める。
【0008】
電界法(例えば特許文献4〜6参照)では、粉体を付着させた導電性試料基板に対向する位置に試料基板から分離した粉体を受ける導電性受け基板を配置し、試料基板側に配置した電極と受け基板側に配置した電極との間に電界を印加することにより、帯電している粉体を試料基板から分離させて受け基板に付着させる。そして、受け基板に付着した粉体の質量を測定し、測定した質量と、予め測定しておいた粉体の電荷量と、印加した電界強度とを用いて分離に必要な静電力を求めることにより、粉体の試料基板に対する付着強度を算出する。
【0009】
ブロー法(例えば特許文献2参照)では、粉体を付着させた試料基板に向けて圧縮空気を所定の風速で噴射することで試料基板から粉体を分離させ、分離したトナーを集塵機で捕捉し、集塵機に捕捉された粉体の体積から粉体が受ける空気抵抗を求め、それに基づいて粉体の試料基板に対する付着強度を算出する。
【0010】
また、特許文献7には、粉体を付着させた試料基板を高速で移動させることによって粉体を試料基板から分離させ、分離直後の粒子数および粒子質量に基づいて粉体の試料基板に対する付着強度を検出する方法が開示されている。
【0011】
また、特許文献8には、トナーとキャリアの混合物からなる現像剤を試料基板に磁気的に付着させ、この現像剤に一定の電界を印加しながら試料基板を基板面に対して垂直方向に高速移動させることにより、トナーをキャリアから脱離させ、脱離前後の粒子数および粒子質量を求めることによりトナーとキャリアとの付着強度を測定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10−267772号公報(平成10年10月9日公開)
【特許文献2】特開平11−237327号公報(平成11年8月31日公開)
【特許文献3】特開平11−258081号公報(平成11年8月24日公開)
【特許文献4】特開平11−153538号公報(平成11年6月8日公開)
【特許文献5】特開2001−228075号公報(平成13年8月24日公開)
【特許文献6】特開2005−201884号公報(平成17年7月28日公開)
【特許文献7】特開2003−156426号公報(平成15年5月30日公開)
【特許文献8】特開2003−098065号公報(平成15年4月3日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記特許文献1〜7の方法では、粉体と試料基板との間の付着強度を測定することはできるものの、トナーとキャリアとの間の付着強度を測定することができない。つまり、特許文献1〜7の方法では、試料基板からトナーだけでなくキャリアも分離されてしまうので、トナーとキャリアとの付着強度を測定することが困難である。また、ブロー法を用いる場合、現像剤中の各トナーに均一な風速の気流を当てるのが困難なこと、および気流によってトナーだけでなくキャリアが飛散してしまうことから、測定結果にばらつきが生じ、再現性のよい測定を行うことが困難である。
【0014】
また、特許文献8には、トナーとキャリアとの付着強度を検出することが記載されているものの、現像剤を磁気的に付着させた試料基板に打撃を加えることによって微粒子を磁性粒子から分離させているので、各現像剤に瞬間的に作用する力にばらつきが生じることなどから、測定精度が低く、再現性が悪いという問題がある。
【0015】
本発明の目的は、キャリアに対するトナーの付着強度を再現性よく正確に測定できるトナー付着強度測定装置およびトナー付着強度測定方法を提供することにある。
【0016】
また、トナーの帯電性の劣化は現像剤中のすべてのトナーに均一に生じるわけではなく、各トナー間で個体差がある。すなわち、長期間使用した現像剤には、帯電性が低下したトナーと帯電性がほとんど低下していないトナーとが混在している。また、トナーの形状にばらつきがある場合には、トナーとキャリアとの付着強度はトナー毎に大きく異なる場合がある。このため、トナーの劣化度合いや特性を評価するためには、現像剤に含まれる各トナーの付着強度の分布状況を把握することが求められている。しかしながら、特許文献8の技術では、現像剤に含まれるトナー全体の平均的な付着強度を得ることしかできず、トナーの付着強度の分布状況を検出することができない。
【0017】
本発明の他の目的は、キャリアに対するトナーの付着強度分布を再現性よく正確に測定できるトナー付着強度測定装置およびトナー付着強度測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のトナー付着強度測定装置は、上記の課題を解決するために、トナーと磁性体成分を有するキャリアとを含む二成分現像剤における上記トナーの上記キャリアに対する付着強度を測定するトナー付着強度測定装置であって、上記二成分現像剤を磁力によって保持する第1磁石を有する現像剤保持部と、上記第1磁石に保持された上記二成分現像剤に気流を供給する気流供給部と、上記気流によって上記キャリアから分離したトナーである分離トナーの個数を検知する分離トナー検知部と、上記気流の風速と上記分離トナー検知部の検知した分離トナーの個数とに基づいて上記トナーと上記キャリアとの付着強度の算出あるいは付着強度の程度を示す指標の算出を行う付着強度演算部とを備えていることを特徴としている。なお、上記の指標は、付着強度の程度を示すものであれば特に限定されるものではないが、例えば、分離トナーの検出数や、分離トナーを検出したときの風速に基づいて算出される壁せん断力などを用いることができる。
【0019】
また、本発明のトナー付着強度測定方法は、トナーと磁性体成分を有するキャリアとを含む二成分現像剤における上記トナーの上記キャリアに対する付着強度を測定するトナー付着強度測定方法であって、上記二成分現像剤を第1磁石に磁力によって保持させる現像剤保持工程と、上記第1磁石に保持された上記二成分現像剤に気流を供給する気流供給工程と、上記気流によって上記キャリアから分離したトナーである分離トナーの個数を検知する分離トナー検知工程と、上記気流の風速と上記分離トナー検知工程で検知した分離トナーの個数とに基づいて上記トナーと上記キャリアとの付着強度の算出あるいは付着強度の程度を示す指標の算出を行う付着強度算出工程とを含むことを特徴としている。
【0020】
上記のトナー付着強度測定装置およびトナー付着強度測定方法によれば、二成分現像剤を第1磁石に磁力によって保持させることにより、二成分現像剤を磁気ブラシ状に保持できる。すなわち、二成分現像剤を、第1磁石における二成分現像剤の保持面に対して垂直な方向に立ち並ぶように保持することができる。したがって、二成分現像剤に含まれる各キャリアおよび各トナーに対して気流を略均一に当てることができる。これにより、第1磁石に保持された二成分現像剤に気流を供給し、この気流によってキャリアから分離した分離トナーの個数を検知し、上記気流の風速と検知した分離トナーの個数とに基づいてトナーとキャリアとの付着強度あるいは付着強度の程度を示す指標を算出することで、トナーとキャリアとの付着強度あるいは付着強度の程度を示す指標を再現性よく正確に測定することができる。
【0021】
また、本発明のトナー付着強度測定装置は、上記の構成に加えて、上記気流供給部から供給される気流の風速を制御する風速制御部を備え、上記風速制御部は、上記気流の風速を単調増加させるように制御し、上記分離トナー検知部は、所定の風速毎に上記分離トナーの個数を検知し、上記付着強度演算部は、上記所定の風速毎に検知した分離トナーの個数と、それに対応する各風速とに基づいて、上記二成分現像剤に含まれるトナーのキャリアに対する付着強度の分布の算出あるいは付着強度の程度を示す指標の分布の算出を行う構成としてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、上記二成分現像剤に含まれるトナーのキャリアに対する付着強度の分布あるいは付着強度の程度を示す指標の分布を再現性よく正確に測定することができる。したがって、例えば、二成分現像剤に含まれるトナーの帯電性の劣化度合いにばらつきがある場合や、トナーの形状のばらつき等に起因してトナーのキャリアに対する付着強度にばらつきがある場合であっても、上記のように測定した分布に基づいてトナーの劣化度合いや特性を適切に評価することができる。
【0023】
また、上記第1磁石は、上記二成分現像剤を保持する保持面がS極またはN極のいずれか一方になるように配置されている構成であってもよい。
【0024】
上記の構成によれば、上記保持面に対して略垂直な磁界を形成することができるので、二成分現像剤を上記保持面に対して垂直な方向に並ぶように保持することができる。したがって、測定結果の再現性をより高めることができる。
【0025】
また、上記第1磁石における上記保持面に対向する位置に第2磁石を備えており、上記第2磁石における上記第1磁石との対向面の極性が、上記第1磁石における上記保持面の極性と逆極性である構成としてもよい。
【0026】
上記の構成によれば、第1磁石と第2磁石との間に略平行な磁界を形成することができる。したがって、二成分現像剤を上記保持面に対して垂直な方向に並ぶように保持することができるので、測定結果の再現性をさらに高めることができる。
【0027】
また、上記第1磁石は、上記第2磁石の方向に向かって突出した複数の第1突部を備え、上記第2磁石は、上記各第1突部に対向する位置に設けられた、上記第1磁石の方向に向かって突出した複数の第2突部を備えており、上記第1突部と上記第2突部との間に作用する磁力によって上記二成分現像剤を保持する構成としてもよい。例えば、上記各第1突部および上記各第2突部は、上記気流の流れる方向に対して平行な方向に延伸するように配置されている構成としてもよい。あるいは、上記各第1突部および上記各第2突部は、上記気流の流れる方向に対して平行な第1方向、および上記気流の流れる方向に対して垂直かつ上記第1突部と上記第2突部との対向方向に垂直な第2方向に沿ってマトリクス状に配置されている構成としてもよい。
【0028】
上記の各構成によれば、第1突部と第2突部との間の磁束密度を局所的に高めることができるので、これら両突部の間に二成分現像剤の磁気ブラシを形成できる。また、二成分現像剤からなる磁気ブラシが互いに独立した状態で第1突部と第2突部との各対向部に形成されるため、供給される気流が主に第1突部と第2突部との非対向部、すなわち第1突部と第2突部との各対向部に形成される磁気ブラシ同士の間を通過し、磁気ブラシに対して一様にあたる。これにより、測定結果の再現性をより高くすることができる。
【0029】
また、上記現像剤保持部は、上記気流供給部から供給される上記気流が流される導流管を備え、上記気流供給部は上記導流管の一端側から上記気流を供給し、上記分離トナー検知部は上記導流管の他端側から排出される上記分離トナーの個数を検知する構成としてもよい。
【0030】
上記の構成によれば、第1磁石に保持された二成分現像剤に供給される気流の風速を安定させ、測定結果の再現性を高めることができる。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明のトナー付着強度測定装置は、上記二成分現像剤を磁力によって保持する第1磁石を有する現像剤保持部と、上記第1磁石に保持された上記二成分現像剤に気流を供給する気流供給部と、上記気流によって上記キャリアから分離したトナーである分離トナーの個数を検知する分離トナー検知部と、上記気流の風速と上記分離トナー検知部の検知した分離トナーの個数とに基づいて上記トナーと上記キャリアとの付着強度の算出あるいは付着強度の程度を示す指標の算出を行う付着強度演算部とを備えている。
【0032】
また、本発明のトナー付着強度測定方法は、上記二成分現像剤を第1磁石に磁力によって保持させる現像剤保持工程と、上記第1磁石に保持された上記二成分現像剤に気流を供給する気流供給工程と、上記気流によって上記キャリアから分離したトナーである分離トナーの個数を検知する分離トナー検知工程と、上記気流の風速と上記分離トナー検知工程で検知した分離トナーの個数とに基づいて上記トナーと上記キャリアとの付着強度の算出あるいは付着強度の程度を示す指標の算出を行う付着強度算出工程とを含む。
【0033】
それゆえ、トナーとキャリアとの付着強度あるいは付着強度の程度を示す指標を再現性よく正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態にかかるトナー付着強度分布測定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示したトナー付着強度分布測定装置に備えられる現像剤保持部の斜視図である。
【図3】図1に示したトナー付着強度分布測定装置に備えられる現像剤保持部の断面図である。
【図4】図2および図3に示した現像剤保持部に備えられる第1磁石の平面図である。
【図5】実験に用いたトナーの特性を示す説明図である。
【図6】図1に示したトナー付着強度分布測定装置を用いて行った実験結果の一例を示すグラフであり、風速を経過時間に応じて一定の割合で増加させた場合の、経過時間毎の分離トナーの検出頻度を示している。
【図7】図1に示したトナー付着強度分布測定装置を用いて行った実験結果の一例を示すグラフであり、上図はトナーとキャリアとを混合した二成分現像剤について、風速を経過時間に応じて一定の割合で増加させた場合の経過時間毎の分離トナーの検出頻度を示しており、下図はトナーを混合させていないキャリア単体について、風速を経過時間に応じて一定の割合で増加させた場合の経過時間毎のキャリアの検出頻度を示している。
【図8】図1に示したトナー付着強度分布測定装置を用いて行った実験結果の一例を示すグラフであり、風速を経過時間に応じて一定の割合で増加させた場合の経過時間毎の分離トナーの検出数の積算分布を示している。
【図9】図1に示したトナー付着強度分布測定装置を用いて行った実験結果の一例を示すグラフであり、風速を経過時間に応じて一定の割合で増加させた場合の経過時間毎の分離トナーの検出数の積算分布を示している。
【図10】図1に示したトナー付着強度分布測定装置を用いて行った実験結果の一例を示すグラフであり、比電荷の異なる複数のトナーについて、二成分現像剤に含まれるトナーのうちの50%がキャリアから分離したときの風速をプロットしたグラフである。
【図11】比較例にかかるトナー付着強度測定装置に備えられる現像剤保持部の斜視図である。
【図12】図11に示した現像剤保持部に備えられる現像剤収容容器の斜視図である。
【図13】図1に示したトナー付着強度分布測定装置を用いて行った実験結果の一例を示すグラフであり、風速を経過時間に応じて一定の割合で増加させた場合の経過時間毎の分離トナーの検出数の積算分布を、同じ条件について2回繰り返し行った場合の結果を示している。
【図14】図11に示した比較例にかかるトナー付着強度分布測定装置用いて行った実験結果の一例を示すグラフであり、風速を経過時間に応じて一定の割合で増加させた場合の経過時間毎の分離トナーの検出数の積算分布を、同じ条件について2回繰り返し行った場合の結果を示している。
【図15】(a)は図1に示したトナー付着強度分布測定装置に備えられる現像剤保持部の変形例を示す斜視図である。(b)は(a)に示した現像剤保持部に備えられる第1磁石および第2磁石を拡大した斜視図である。
【図16】図1に示したトナー付着強度分布測定装置に備えられる現像剤保持部の変形例を示す断面図である。
【図17】図15(a)および図15(b)に示したトナー付着強度分布測定装置に備えられる第1磁石および第2磁石の変形例を示す斜視図である。
【図18】図15(a)および図15(b)に示したトナー付着強度分布測定装置に備えられる第1磁石および第2磁石の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(1.トナー付着強度分布測定装置1の構成)
本発明の一実施形態について説明する。図1は、本実施形態にかかるトナー付着強度分布測定装置(トナー付着強度測定装置)1の構成を示すブロック図である。
【0036】
この図に示すように、トナー付着強度分布測定装置1は、現像剤保持部2、気流供給部3、分離トナー検知部4、演算部5、および排気装置6を備えている。
【0037】
気流供給部3は、図1に示したように、フィルタ3a、コンプレッサ3b、ドライヤ3c、および風速調整機3dを備えており、フィルタ3a、コンプレッサ3b、ドライヤ3c、および風速調整機3dは送風管7a,7b,7cを介してこの順で接続されている。
【0038】
フィルタ3aはコンプレッサ3bに吸引される外気から埃等を除去するものである。
【0039】
コンプレッサ3bは、フィルタ3aおよび送風管7aを介して外気を吸引して圧縮し、送風管7bを介してドライヤ3cに送る。ドライヤ3cは、コンプレッサ3bから送風管7bを介して送られてきた空気を乾燥させ、送風管7cを介して風速調整機3dに送る。風速調整機3dは、現像剤保持部2の導流管21に直結されており、ドライヤ3cから送風管7cを介して送られてきた空気の風速を演算部5に備えられる風速制御部5aからの指示(風速制御信号)に応じて調整し、導流管21に送る。また、風速調整機3dは、導流管21に送った空気の風速を検出し、検出結果に対応する風速情報を演算部5にリアルタイムで出力する。なお、風速調整機3dは、風速を適切に制御できるものであればよく、その構成は特に限定されるものではないが、例えば一般的な流量制御弁と風速計とを用いることができる。
【0040】
図2は現像剤保持部2の斜視図であり、図3は現像剤保持部2の断面図である。図2および図3に示すように、現像剤保持部2は、中空形状の角柱状のパイプで構成される導流管21と、導流管21の内壁に備えられた第1磁石22とを備えている。
【0041】
導流管21としては、長さ140mm、延伸方向に垂直な断面の内壁部の形状が幅(流路の幅)が8mm、高さ(流路の高さ)が1mmの矩形形状のものを用いた。ただし、導流管21の形状および寸法はこれに限るものではない。
【0042】
第1磁石22は、導流管21内の底面に、第1磁石22における導流管21の内側の表面が、導流管21の内壁部における第1磁石22が配置される領域以外の底面と同一平面になるように配置されている。また、第1磁石22は、S極が導流管21の内側を向き、N極が導流管21の外側を向くように配置されている。これにより、第1磁石22におけるS極とN極との間に放射状の磁界が形成され、図3に模式的に示すように、トナーT1と磁性体成分を含むキャリアCとからなる二成分現像剤が第1磁石22によって磁気ブラシ状に保持される(第1磁石22の表面に垂直な方向に立ち並ぶように保持される)。
【0043】
なお、本実施形態では、第1磁石22として、導流管21の内側の表面が幅8mm、長さ27mmの矩形状であり、磁束密度120mTである永久磁石を用いた。ただし、第1磁石22の構成はこれに限るものではない。また、本実施形態ではS極が導流管21の内側を向き、N極が導流管21の外側を向くように配置しているが、これに限らず、N極が導流管21の内側を向き、S極が導流管21の外側を向くように配置してもよい。
【0044】
分離トナー検知部4は、第1磁石22に保持された二成分現像剤のキャリアから分離され、気流とともに搬送される分離トナーT2の個数を検知するとともに、検知した分離トナーT2の個数情報を演算部5にリアルタイムで出力するものである。分離トナー検知部4は、空気流に含まれるトナーの個数を検知できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば市販のパーティクルアナライザーなどを用いることができる。本実施形態では、柴田科学株式会社製のレーザーダストモニター(パーティクルアナライザー):LD−1)を用いた。
【0045】
なお、図1に示したように、分離トナー検知部4には、現像剤保持部2の方向に向かうほど開口部の断面積が大きくなる円錐状の導流管8が接続されており、現像剤保持部2の導流管21から排出される空気流Aと、導流管21の周囲から流れ込む空気流Bとが同時に吸い込まれるようになっている。このように、導流管21の周囲から流れ込む空気流Bを空気流Aとともに吸い込むことにより、導流管8の壁面に分離トナーT2が付着することを抑制し、測定精度を向上させることができる。
【0046】
排気装置6は、分離トナーT2を空気から分離するフィルタと空気吸引機とを備えており(いずれも図示せず)、排気管9を介して分離トナー検知部4に接続されている。これにより、分離トナー検知部4から排出される空気を空気吸引機で吸引するとともに、吸引した空気に含まれる分離トナーT2をフィルタで分離し、分離トナーT2を除去した空気を外部へ排出する。
【0047】
演算部5は、風速制御部5aと付着力演算部(付着強度演算部)5bとを備えている。風速制御部5aは、気流供給部3の風速調整機3dから入力される風速情報に基づいて、風速調整機3dから導流管21に供給される気流の風速が目標値になるように風速調整機3dの動作をフィードバック制御する。付着力演算部5bは、風速調整機3dから入力される風速情報と分離トナー検知部4から入力される分離トナーT2の個数情報とに基づいて、キャリアに対するトナーの付着強度(トナー付着強度分布)を算出する。
【0048】
(2.実験結果)
次に、トナー付着強度分布測定装置1を用いて行ったトナー付着強度の測定結果(トナー付着強度分布の検出結果)について説明する。
【0049】
実験方法としては、まず、トナーとキャリアとからなる二成分現像剤を混合・攪拌してトナーを帯電させ、現像剤保持部2の第1磁石22に保持させた。なお、本実施形態では、図4に示したように、第1磁石22の上面(二成分現像剤の保持面)の中央部のみに現像剤を保持させた。これは、導流管21の壁面による気流の乱れが測定結果に及ぼす影響を低減するとともに、第1磁石22の磁力線方向が二成分現像剤の保持面に対して略垂直になっている領域のみで現像剤を保持することにより、二成分現像剤を磁気ブラシ状に保持して各キャリアおよび各トナーに均一に気流を当てるためである。つまり、第1磁石の周縁部では、磁力線方向と保持面とのなす角度が小さくなって二成分現像剤を磁気ブラシ状に保持することが困難であることから、本実施形態では測定対象の現像剤を磁気ブラシ状に均一に保持させるために、第1磁石22の上面の中央部のみに現像剤を保持させた。
【0050】
具体的には、第1磁石22の上面の周縁部を非磁性体の膜でマスキングし、第1磁石22の上面の中央部における幅4mm×長さ23mm、面積92mmの領域(図4の斜線部)に、混合・攪拌した二成分現像剤をふるいで分散させて20mgだけ重力落下させた。したがって、単位面積あたりの現像剤量は、0.22mg/mm=0.22kg/mである。なお、ふるいとしては、目開き75μm(200メッシュ)のものを用いた。これにより、第1磁石22上に落下した二成分現像剤は、第1磁石22が強磁性であり、キャリアが磁性体成分を有していることから、磁気ブラシ状に立ち並ぶ(第1磁石22の表面に垂直な方向に立ち並ぶ)。その後、上記のマスキングに用いた非磁性体の膜を剥がし、二成分現像剤を保持した第1磁石22を現像剤保持部2に設置した。
【0051】
次に、気流供給部3から導流管21への気流の供給を開始し、風速が所定時間後に150m/sに達するように一定の割合で風速を増加(単調増加)させた。
【0052】
これにより、現像剤保持部2内のキャリアCに付着しているトナーT1は、風速に応じた空気抵抗を受ける。そして、トナーT1の受ける空気抵抗がトナーT1とキャリアCとの付着強度よりも大きくなったときに、このトナーT1がキャリアCから分離して分離トナーT2となり、気流によって分離トナー検知部4へ搬送させる。
【0053】
なお、この実験では、図5に示すトナーA〜Cを用いた場合のそれぞれについて、トナー付着強度分布の検出を行った。トナーAは、重合法で生成したポリエステルからなるトナーであり、粒子平均直径5.0μm、粒子平均密度1.2×10kg/m、SF−1=130、SF−2=123である。トナーBは、重合法で生成したポリエステルからなるトナーであり、粒子平均直径5.0μm、粒子平均密度1.2×10kg/m、SF−1=154、SF−2=138である。トナーCは、粉砕法で生成したポリエステルからなるトナーであり、粒子平均直径5.0μm、粒子平均密度1.2×10kg/m、SF−1=160、SF−2=145である。なお、SF−1およびSF−2はトナー粒子の形状を示す形状係数であり、値が100に近いほど球形に近いことを示している。具体的には、SF−1およびSF−2は、トナー粒子の絶対最大長をLmax、トナー粒子の投影面積をArea、トナー粒子の周長をLperimeterとすると、下記式で定義される。
【0054】
【数1】

【0055】
また、キャリアとしては、フェライトからなるコア粒子を樹脂でコーティングした、粒子平均直径が45〜50μmのものを用いた。
【0056】
図6は、−22.9μC/gに帯電させたトナーCを用い、風速が気流の供給開始から50分後に150m/sに到達するように一定の割合(気流加速度α=0.05m/s)で風速を増加させた場合の、経過時間毎の分離トナーの検出頻度を示すグラフである。なお、図6の上図は風速の経時変化を示しており、下図は検出された分離トナーの粒子数の頻度分布(飛散プロファイル)を示している。
【0057】
図7の上図は、−37.4μC/gに帯電させたトナーBを用い、風速が気流の供給開始から5分後に150m/sに到達するように一定の割合(気流加速度α=0.5m/s)で風速を増加させた場合の、経過時間毎の分離トナーの検出頻度を示すグラフである。また、図7の下図は、トナーを混合していないキャリア単体を第1磁石22の上面の中央部に19mg付着させ、風速が気流の供給開始から5分後に150m/sに到達するように一定の割合(気流加速度α=0.5m/s)で風速を増加させた場合の、経過時間毎のキャリアの検出頻度を示すグラフである。なお、下図の縦軸および横軸は、上図との比較を容易にするために、上図と同じ基準で示した。図7から明らかなように、飛散するキャリアの数はキャリアから分離して飛散するトナーの数に比べて非常に少なかった。したがって、図7の上図に示した飛散プロファイルは、キャリアの飛散の影響はほとんど受けておらず、トナー粒子の飛散が支配的であることがわかる。なお、図7に示した結果と実際の現象との整合性を確認するために顕微鏡による観察を行ったところ、風速0から40m/sの範囲内ではキャリアの飛散は確認できず、トナーの飛散のみが確認された。
【0058】
図8は、−11.0μC/gに帯電させたトナーAおよび−32.5μC/gに帯電させたトナーAを用い、風速が気流の供給開始から5分後に150m/sに到達するように一定の割合(気流加速度α=0.5m/s)で風速を増加させた場合の、分離トナーの検出数(トナー付着強度)の積算分布を示すグラフである。
【0059】
なお、積算分布は、付着力演算部5bが、風速0〜150m/sまでの風速毎の分離トナーの検出個数を抽出し、150m/sまでの分離トナーの個数を累積し、各風速における分離トナーの検出個数を上記の累積値で除算し、除算後の値を風速0〜150m/sまで風速毎に累積することにより求めたものである。
【0060】
また、気流によってトナーが受ける力は風速の2乗に比例して大きくなる。このため、付着力演算部5bは、各風速に対する分離トナーの検出数の積算分布に基づいて、トナー付着強度の積算分布(トナー付着強度分布)を算出する。
【0061】
また、図9は、それぞれ−22.0μC/g、−22.9μC/g、−30.1μC/gに帯電させたトナーCを用い、風速が気流の供給開始から5分後に150m/sに到達するように一定の割合(気流加速度α=0.5m/s)で風速を増加させた場合の、分離トナーの検出数(トナー付着強度)の積算分布を示すグラフである。
【0062】
また、図10は、比電荷の異なるトナーA〜Cについて、風速が気流の供給開始から5分後に150m/sに到達するように一定の割合(気流加速度α=0.5m/s)で風速を増加させた場合に、50%のトナーがキャリアから分離したときの風速をプロットしたグラフである。
【0063】
図8および図9に示したように、本実施形態のトナー付着強度分布測定装置1により、トナーの比電荷とトナーのキャリアに対する付着強度との関係を正確に検出することができた。すなわち、図10からも明らかなように、一般に、比電荷が大きいほどトナーのキャリアに対する付着強度が強いことが知られているが、本実施形態にかかるトナー付着強度測定装置1により、それを正確に検出することができた。なお、図10に示したように、粉砕法によって生成したトナーの方が重合法によって生成したトナーよりもキャリアに対する付着強度が強かった。
【0064】
次に、本実施形態のトナー付着強度分布測定装置1による付着強度(付着力)分布の測定と、現像剤を第1磁石22によって保持せずに導流管21内に配置した比較例にかかるトナー付着強度分布測定装置による付着強度(付着力)分布の測定とを行った実験結果について説明する。
【0065】
図11は比較例にかかる現像剤保持部102の斜視図であり、図12は現像剤保持部102に備えられる現像剤収容容器122の斜視図である。比較例にかかるトナー付着強度測定装置の構成は、現像剤保持部の構成が異なる以外は、トナー付着強度分布測定装置1と同様である。図11に示すように、現像剤保持部102は、現像剤保持部2における第1磁石22に変えて、現像剤収容容器122を備えている。現像剤収容容器122は、図12に示すように、幅4mm×長さ23mmの枡状の窪み122aを有しており、この窪み122aに現像剤を収容するようになっている。
【0066】
図13は、本実施形態のトナー付着強度分布測定装置1を用い、−22.0μC/gに帯電させた不定形トナー(粉砕トナー)について、風速が気流の供給開始から5分後に150m/sに到達するように一定の割合(気流加速度α=0.5m/s)で風速を増加させた場合の分離トナーの検出数(トナー付着強度)の積算分布を算出する処理を同じ条件で2回繰り返し行った結果を示すグラフである。
【0067】
また、図14は、比較例にかかるトナー付着強度測定装置を用い、現像剤収容容器が異なる以外は図13の場合と同様の条件で分離トナーの検出数(トナー付着強度)の積算分布を算出する処理を2回繰り返した場合の結果を示すグラフである。
【0068】
図14に示したように、比較例にかかるトナー付着強度測定装置を用いた場合には測定する毎に測定結果が大きく異なり、測定結果の再現性が低かった。これに対して、図13に示したように、本実施形態のトナー付着強度測定装置1を用いた場合には測定を繰り返し行っても略同様の結果が得られ、測定結果の再現性が高かった。
【0069】
これは、比較例にかかるトナー付着強度分布測定装置では、(1)現像剤収容容器122に収容した現像剤のうちの表面に位置する現像剤の上面のみに気流が当たり、現像剤に対して気流が均一に当たらないため、および(2)キャリアが磁石によって保持されていないために気流によって飛散してしまうためであると考えられる。
【0070】
一方、本実施形態にかかるトナー付着強度測定装置1では、(1)現像剤を第1磁石22によって磁気ブラシ状に保持(第1磁石22の表面に垂直な方向に立ち並ぶように保持)することができるので、現像剤に対して均一に気流を当てることができること、および(2)磁性体成分を含むキャリアが第1磁石22の磁界によって磁気的に保持されるので、気流によってキャリアが飛散することを抑制し、キャリアから分離したトナーのみを飛散させることができることから、再現性のよい測定結果が得られると考えられる。
【0071】
以上のように、本実施形態にかかるトナー付着強度分布測定装置1は、二成分現像剤を磁力によって保持する第1磁石22を有する現像剤保持部と、第1磁石22に保持された二成分現像剤に気流を供給する気流供給部3と、上記気流によってキャリアから分離した分離トナーの個数を検知する分離トナー検知部4と、上記気流の風速と上記分離トナー検知部4の検知した分離トナーの個数とに基づいてトナーとキャリアとの付着強度の分布を算出する付着力演算部5bとを備えている。
【0072】
このように、二成分現像剤を第1磁石22に磁力によって保持させることにより、二成分現像剤を磁気ブラシ状に保持できるので、二成分現像剤に含まれる各キャリアおよび各トナーに対して気流を略均一に当てることができる。これにより、第1磁石22に保持された二成分現像剤に気流を供給し、この気流によってキャリアから分離した分離トナーの個数を検知し、上記気流の風速と検知した分離トナーの個数とに基づいてトナーとキャリアとの付着強度の分布を算出することで、トナーとキャリアとの付着強度分布を再現性よく正確に測定することができる。
【0073】
なお、本実施形態では、風速制御部5aが気流供給部3から導流管21に供給する気流の風速を変化させ、付着力演算部5bが各風速における分離トナーの検出数に基づいてトナー付着強度分布を算出する構成について説明したが、これに限るものではない。例えば、気流供給部3から導流管21に供給する気流の風速を一定にし、この風速における分離トナーの検出数に基づいて現像剤に含まれるトナー全体の平均的な付着強度を算出するようにしてもよい。また、風速制御部5aが、算出したトナー付着強度分布に基づいて現像剤に含まれるトナーの平均的な付着強度を算出するようにしてもよい。
【0074】
また、付着強度あるいは付着強度分布を算出する構成に限らず、付着強度の程度を示す指標あるいは付着強度の程度を示す指標の分布を算出してもよい。上記の指標としては、例えば、分離トナーの検出数、分離トナーの検出数を分離トナーのサンプリング周期等で除算した値、分離トナーを検出したときの風速に基づいて算出される壁せん断力などを用いることができる。
【0075】
また、本実施形態では、第1磁石22として磁束密度120mTの永久磁石を用いたが、これに限るものではなく、気流供給部3から供給される気流によって第1磁石22からキャリアが分離しない程度の磁界(あるいは第1磁石22から分離されるキャリアの量を分離トナーT2の測定結果に影響を及ぼさない範囲に抑制できる程度の磁界)が得られる構成であればよい。
【0076】
また、本実施形態では、現像剤保持部2における導流管21の底面に第1磁石22を1つだけ配置しているが、これに限るものではない。
【0077】
図15(a)は現像剤保持部2の変形例を示す斜視図であり、図15(b)はこの変形例にかかる現像剤保持部2に備えられる第1磁石22および第2磁石23の拡大斜視図であり、図16はこの変形例にかかる現像剤保持部2の断面図である。
【0078】
これら各図に示すように、導流管21の内壁部の上面における第1磁石22に対向する位置に、第1磁石22との対向面側がN極になるように(第1磁石22の対向面と反対の極性(逆極性)になるように)第2磁石23を配置してもよい。これにより、第1磁石22と第2磁石23との間に略平行な磁界が形成され、トナーと磁性体成分を含むキャリアとからなる二成分現像剤を、図16に示すように磁気ブラシ状に保持(第1磁石22および第2磁石23の表面に垂直な方向に立ち並ぶように保持)することができる。
【0079】
図17は、図15(a)の現像剤保持部2に備えられる第1磁石22および第2磁石23の変形例を示す斜視図である。この図に示す例では、第1磁石122における第2磁石123との対向面に、第2磁石123の方向に突出する複数の凸部(第1突部)122aと、凸部122a同士の間に配置された、第2磁石123とは反対側に窪んだ凹部(スリット)122bとが設けられている。また、第2磁石123における第1磁石122との対向面には、第1磁石122の各凸部122aに対向する位置に第1磁石122の方向に突出する凸部(第2突部)123aが設けられており、第1磁石122の各凹部122bに対向する位置に第1磁石122とは反対側に窪んだ凹部(スリット)123bが設けられている。また、各凸部122aおよび各凸部123aは細長い直方体形状からなり、導流管21を流れる気流の方向に対して略平行な方向に延伸するように配置されている。
【0080】
これにより、第1磁石122の各凸部122aとこれら各凸部122aに対向配置された第2磁石123の凸部123aとの間の磁束密度(磁界強度)を局所的に高めることができるので、凸部122aと凸部123aとの間に二成分現像剤の磁気ブラシを形成できる。また、二成分現像剤からなる磁気ブラシが互いに独立した状態で所定の位置(凸部122aと凸部123aとの各対向部)に形成されるため、供給される気流が主に凹部122bと凹部123bとの間を通過し、凸部122aと凸部123aとの間に形成された磁気ブラシに対して一様にあたるので、測定結果の再現性をより高めることができる。
【0081】
図18は、図15(a)の現像剤保持部2に備えられる第1磁石22および第2磁石23の他の変形例を示す斜視図である。この図に示す例では、第1磁石222における第2磁石223との対向面に、第2磁石223の方向に突出する多数の凸部(第1突部)222aと、凸部222a同士の間に配置された、第2磁石123とは反対側に窪んだ凹部222bとが設けられている。また、第2磁石223における第1磁石222との対向面には、第1磁石222の各凸部222aに対向する位置に第1磁石222の方向に突出する凸部(第2突部)223aが設けられており、第1磁石222の各凹部222bに対向する位置に第1磁石122とは反対側に窪んだ凹部(スリット)223bが設けられている。また、各凸部222aおよび各凸部223aは角柱形状からなり、導流管21を流れる気流の方向に対して略平行な方向(第1方向)および導流管21を流れる気流の方向に略垂直かつ凸部222aと凸部223aとの対向方向に略垂直な方向(第2方向)にマトリクス状(行列状)に整列するように配置されている。なお、図18の例では各凸部222aおよび各凸部223aが角柱形状からなる場合を示したが、各凸部222aおよび各凸部223aの形状はこれに限るものではなく、例えば円柱形状であってもよい。
【0082】
これにより、第1磁石222の各凸部222aとこれら各凸部222aに対向配置された第2磁石223の凸部223aとの間の磁束密度(磁界強度)を局所的に高めることができるので、凸部222aと凸部223aとの間に二成分現像剤の磁気ブラシを形成できる。また、二成分現像剤からなる磁気ブラシが互いに独立した状態で所定の位置(凸部222aと凸部223aとの各対向部)に形成されるため、供給される気流が主に凹部222bと凹部223bとの間を通過し、凸部222aと凸部223aとの間に形成された磁気ブラシに対して一様にあたるので、測定結果の再現性をより高めることができる。
【0083】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、二成分現像剤に含まれるトナーとキャリアとの付着強度分布を検出するトナー付着強度測定装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 トナー付着強度分布測定装置(トナー付着強度測定装置)
2 現像剤保持部
3 気流供給部
3a フィルタ
3b コンプレッサ
3c ドライヤ
3d 風速調整機
4 分離トナー検知部
5 演算部
5a 風速制御部
5b 付着力演算部(付着強度演算部)
6 排気装置
7a,7b,7c 送風管
8 導流管
9 排気管
21 導流管
22 第1磁石
23 第2磁石
C キャリア
T1 トナー
T2 分離トナー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーと磁性体成分を有するキャリアとを含む二成分現像剤における上記トナーの上記キャリアに対する付着強度を測定するトナー付着強度測定装置であって、
上記二成分現像剤を磁力によって保持する第1磁石を有する現像剤保持部と、
上記第1磁石に保持された上記二成分現像剤に気流を供給する気流供給部と、
上記気流によって上記キャリアから分離したトナーである分離トナーの個数を検知する分離トナー検知部と、
上記気流の風速と上記分離トナー検知部の検知した分離トナーの個数とに基づいて上記トナーと上記キャリアとの付着強度の算出あるいは付着強度の程度を示す指標の算出を行う付着強度演算部とを備えていることを特徴とするトナー付着強度測定装置。
【請求項2】
上記気流供給部から供給される気流の風速を制御する風速制御部を備え、
上記風速制御部は、上記気流の風速を単調増加させるように制御し、
上記分離トナー検知部は、所定の風速毎に上記分離トナーの個数を検知し、
上記付着強度演算部は、上記所定の風速毎に検知した分離トナーの個数と、それに対応する各風速とに基づいて、上記二成分現像剤に含まれるトナーのキャリアに対する付着強度の分布の算出あるいは付着強度の程度を示す指標の分布の算出を行うことを特徴とする請求項1に記載のトナー付着強度測定装置。
【請求項3】
上記第1磁石は、上記二成分現像剤を保持する保持面がS極またはN極のいずれか一方になるように配置されていることを特徴とする請求項2に記載のトナー付着強度測定装置。
【請求項4】
上記第1磁石における上記保持面に対向する位置に第2磁石を備えており、
上記第2磁石における上記第1磁石との対向面の極性が、上記第1磁石における上記保持面の極性と逆極性であることを特徴とする請求項3に記載のトナー付着強度測定装置。
【請求項5】
上記第1磁石は、上記第2磁石の方向に向かって突出した複数の第1突部を備え、
上記第2磁石は、上記各第1突部に対向する位置に設けられた、上記第1磁石の方向に向かって突出した複数の第2突部を備えており、
上記第1突部と上記第2突部との間に作用する磁力によって上記二成分現像剤を保持することを特徴とする請求項4に記載のトナー付着強度測定装置。
【請求項6】
上記各第1突部および上記各第2突部は、上記気流の流れる方向に対して平行な方向に延伸するように配置されていることを特徴とする請求項5に記載のトナー付着強度測定装置。
【請求項7】
上記各第1突部および上記各第2突部は、上記気流の流れる方向に対して平行な第1方向、および上記気流の流れる方向に対して垂直かつ上記第1突部と上記第2突部との対向方向に垂直な第2方向に沿ってマトリクス状に配置されていることを特徴とする請求項5に記載のトナー付着強度測定装置。
【請求項8】
上記現像剤保持部は、上記気流供給部から供給される上記気流が流される導流管を備え、
上記気流供給部は上記導流管の一端側から上記気流を供給し、上記分離トナー検知部は上記導流管の他端側から排出される上記分離トナーの個数を検知することを特徴とする請求項1または7のいずれか1項に記載のトナー付着強度測定装置。
【請求項9】
トナーと磁性体成分を有するキャリアとを含む二成分現像剤における上記トナーの上記キャリアに対する付着強度を測定するトナー付着強度測定方法であって、
上記二成分現像剤を第1磁石に磁力によって保持させる現像剤保持工程と、
上記第1磁石に保持された上記二成分現像剤に気流を供給する気流供給工程と、
上記気流によって上記キャリアから分離したトナーである分離トナーの個数を検知する分離トナー検知工程と、
上記気流の風速と上記分離トナー検知工程で検知した分離トナーの個数とに基づいて上記トナーと上記キャリアとの付着強度あるいは付着強度の程度を示す指標を算出する付着強度算出工程とを含むことを特徴とするトナー付着強度測定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−8231(P2011−8231A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105664(P2010−105664)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】