説明

トナー帯電量評価方法およびこれを用いたトナーの製造方法

【課題】簡易な操作方法により、かつ正確なトナー比帯電量を評価する方法およびこれを用いたトナーの製造方法を提供する。
【解決手段】混合撹拌されたトナーとキャリアからなる正電荷現像剤を、両端にメッシュを備えた開口部を有する導電性の容器に前記静電荷現像剤の一部を計量して収納し、前記開口部の一方から吸引手段により気体の吸引をし、且つ他方の開口部から吹付手段により気体を吹き付けて前記開口部の前記吸引手段から前記容器内の前記トナーの少なくとも1部を前記正電荷現像剤と分離して前記容器外に排除して前記トナーの比電荷と正電荷現像剤中のトナー濃度とのデータ群による回帰直線を最小二乗法により求め、該回帰直線から前記静電荷現像剤のトナーの比電荷を得るトナー帯電量評価方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトナーとキャリアからなる静電荷現像剤の評価に使用するトナー帯電量評価方法およびこれを用いたトナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真方式における現像剤として、トナーとキャリアからなる2成分の現像剤が用いられている。この方式では、トナーの持つ電荷量が画質に大きな影響を与えることが知られている。このため、トナーの持つ電荷量を適正化するための評価手段が必要である。この評価手段として、現在ブローオフと呼ばれる評価手段が用いられている(非特許文献1および特許文献1参照)。この評価手段では、トナーのみを通過させ得る径を備えた金網(メッシュ)を張った金属容器に、キャリアにトナーが静電気的に付着している現像剤を入れた後、乾燥空気等の気体を吹き付けて、トナーのみを金属容器外へ吹き飛ばして測定されている。これにより容器全体としてトナーの電荷量と同じ電荷量で逆極性を有する電荷が検出できるので、この評価手段を用いてトナーの電荷量が検出されてきた。
【0003】
この評価手段が採用されてきた当時の2成分現像剤は、キャリア径が80〜100μm程度であり、一方、そのキャリアに電気的な力により保持されるトナーの大きさは9〜12μmと大きいものであった。キャリアはメッシュの開口径に対して十分に大きいため、トナーとキャリアとをメッシュで分離することは容易である上、トナーの帯電量(Q/M)が20〜25μC/g程度であり、トナーとキャリア間で働く電気的な吸引力もそれ程高く無く、トナーの粒径も大きくなると付着力(Van der Waals力)も大きくなると考えられるため、評価は容易であった。
【0004】
近年、高画質化の要求からトナー粒径は5〜10μmとなり、それに伴いトナーを保持するために、比表面積の大きい小粒径キャリアが求められている。
また、画像形成装置のフルカラー化のために、画像面積率が従来よりも増加して、トナー消費の多さに追従する必要性が高まったこと、及び装置の小型化のため、現像器に装填されている現像剤が従来よりも少量であることが要求されたことの2点が相まって、2成分現像剤のトナー濃度を従来よりも高くする必要が生じ、トナーをキャリアに十分に保持するために、キャリアの小粒径化だけでなく、トナー帯電量(Q/M)を従来よりも高くする必要が生じている。
そのため、キャリアの径が40μm以下となり、他方トナー粒径は5〜10μmとなり、キャリアの径がトナー径に一段と近ずくものとなっている。またトナーの比電荷(Q/M)も30〜40μC/gと2割から、倍近くにも増している。
【0005】
このような2成分現像剤の状況下において、2成分現像剤中のトナー濃度が、従来の3%程度から、5〜10%程度と2倍程度から3倍とする傾向になりつつある。すなわち従来の3%程度の現像剤では1gのトナーを運ぶために、キャリアは、その32gが関与していたことになる(97g−キャリア/3g−トナー≒32g−キャリア/g−トナー)。しかしながら現今の5〜8%程度のトナーを有する現像剤では、19〜11.5g−キャリア/g−トナーとなっている。これは、キャリアがトナーを運搬する容量が従来の1.7倍から2.8倍あるいはこれ(2.8倍)を越すものとなっていることを意味している。
また高画質化の要求から、トナー粒径を前記した範囲に揃えると共にその大きさにおける統計的な分散の程度も狭いものとなっている。
【0006】
他方、キャリア及びトナーが小粒径となり、ブローオフによるトナーの評価を行なう際には、トナーとキャリアを分離する働きを有する金網(メッシュ)の開口径の微細化が要求され、また高精度の金網の使用が要求されている。ところが、この方法で用いられる金網はSUSの細線が編んで作られており、このようなメッシュの開口径では、金網の線の太さの影響が小粒径のトナーに影響して評価に反映し、評価に求められる均質性が担保されない。すなわち金網を構成する細線は細くても数十μmが限界であり、この細線を用いてもせいぜい2〜30μmの段差が生じてしまう。このため、粒径の揃った数μmのトナーを通過させると共に、40μm以下のキャリアの通過を同時に阻止する機能は、限界に近いものとなっている。
【0007】
さらにこのような従来のメッシュのものでは、メッシュを構成する金網の細線が外力等により互に移動可能なために、開口径及び形状が変化してしまう。この変化の程度はμオーダー〜数十μオーダー程度であり、しかも金網は細線が繊維として編みこむような立体構造となっている。このために、斜め方向の開口径の大きさが平面的な開口径の大きさよりも大きくなり、実質上、呼称寸法よりも大きなキャリアなどの物体を通過させてしまう。またトナー自体の帯電量も大きくなり、しかも帯電量の比電荷Q/Mも大きくなっており、しかもこれが分布を持っている。さらにキャリアとトナーが前記したように小粒径化が進み、比電荷が増加し、かつ小粒径化により、静電力に逆らってキャリアとトナーを分離するのに、容易ではなくなっている。またトナー自身の比電荷が分布を持つことから、キャリアとトナーとを風圧で分離する際に全部のトナーとキャリアを分離する際にQ/Mの比較的小さいものは分離できるが、Q/Mの大きなトナーは分離しにくい傾向もある。よってこのようなトナー全体の帯電量の比電荷を求める評価では、小さい比電荷のトナーに偏って評価されている可能性がある。
また、従来のメッシュを用いた測定では、小粒径化に伴い、キャリア漏れも起きやすく、トナー比電荷量を正確に求めることができない問題があった。
【0008】
上記の問題を解決する方法としては、例えば、樹脂材料にレーザー照射によって形成したメッシュをメッシュ部に採用したブローオフ測定装置(特許文献2参照)や、目開きの大きい金属メッシュと目開きの小さい樹脂メッシュを重ね合わせて設けたブローオフ測定装置(特許文献3参照)が提案されている。これらの装置を用いることで、キャリア漏れの防止は可能となった。しかしながらこれらの装置を用いた測定方法では、測定されたトナー比電荷量にばらつきが発生するのは避けられないが、肝心なトナー全体としての比電荷Q/Mの真値を求めているとは言いがたく、現実の値とかけ離れて評価されている可能性があり、実質的な評価がなされていないという懸念が起きている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、簡易な操作方法により、かつ正確なトナー比帯電量を評価する方法およびこれを用いたトナーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題は下記の手段(1)〜(5)によって解決される。
(1) 混合撹拌されたトナーとキャリアからなる静電荷現像剤を、メッシュを備えた開口部を両端に有する導電性の容器に計量して収納し、前記開口部の一方から気体の吸引をし且つ他方の開口部から気体の吹き付けによって前記容器内の前記トナーの少なくとも1部を前記静電荷現像剤と分離して前記容器外に排除して、前記トナーの比電荷と静電荷現像剤中のトナー濃度とのデータ群による回帰直線を最小二乗法により求め、該回帰直線から前記静電荷現像剤のトナーの比電荷を得るトナー帯電量評価方法を特徴とする。
(2)前記(1)に記載のトナー帯電量評価方法において、前記データ群を3以上求めて前記回帰直線を得ることを特徴とする。
(3)前記(1)、(2)に記載のトナー帯電量評価方法において、前記気体の吸引は、その吸引圧力を10〜15kPaとし、前記気体の吹き付けの圧力を150〜210kPaとすることを特徴とする。
(4) 前記(1)から(3)のいずれかのトナー帯電量評価方法において、前記開口部の一方から気体の吸引をし、且つ他方の開口部からの気体の吹き付けは、10〜30秒間行なわれることを特徴とする。
(5)トナー製造工程中あるいはトナー製造工程後に、前記(1)〜(4)のいずれかに記載のトナー帯電量評価方法を用いるトナーの製造方法を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、トナーのQ/Mを正確に評価できる、トナー帯電量の評価方法およびこれを用いたトナーの製造方法を得ることができる。これによって益々、高速度の画像形成装置に資するトナーの開発に拍車がかけられる。また従来の評価装置を用いて評価できるため、余分な評価装置の開発にかけるコストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のトナー帯電量評価方法に用いられる評価装置の構成例を示す図である。
【図2】トナーの製造方法の評価に、本発明のトナー帯電量評価方法を採用した例を示すフローチャートである。
【図3】本発明のトナー帯電量評価方法の手順を示すフローチャートである。
【図4】測定により得られたデータ群(トナー比電荷とトナー濃度)と、最小二乗法により求めた回帰直線の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を、図面を参照しながら、実施形態により説明する。
なお、いわゆる当業者は、特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明は、この発明における最良の形態の例であって、本発明の特許請求の範囲を限定するものではない。
【0014】
図1を用いて本発明のトナー帯電量評価方法の概略説明を行なう。評価する静電荷現像剤は、トナー11とトナー11よりも径の大きいキャリア12からなり、このトナー11とキャリア12は、それぞれ設定された重量に計量された後、ひとつの容器に収納し攪拌される。このとき、トナー11とキャリア12は摩擦帯電により逆極性の電荷を有するように帯電し、静電的な力でキャリアの周囲に複数のトナー11が付着している。この状態では、全体としての電荷の総和は0である。
【0015】
導電性の容器13の両端の開口部分はメッシュ14を備えており、メッシュ14の開口径はトナー11の径よりも大きく、キァリア12の径よりも小さくなっている。容器13の中に前述の攪拌した静電荷現像剤10の一部を収容しておく。前記容器13の開口部分の対向する位置に、気体17を吸引する手段としてエア吸引装置22の吸引ノズル18が配置され、気体16を吹き付ける手段としてエアブロアー20の吹き付けノズル15が配置されている。これらの手段で気体を吸引し且つ吹き付けることにより、容器13内に収容されている静電荷現像剤10のトナー11とキャリア12を分離させる。吸引する気体17の圧力はエア吸引装置により調整可能であり、その値はマノメーター23により計測することができる。また吹き付ける気体16の圧力はエアブロアー20により調整可能で、その値は圧力計21によって計測される。
【0016】
分離されたトナー24はメッシュ14の開口を通過して容器13の外部へ除去される。この際にトナー24は帯電したまま吹き飛ばされるために、容器13内のキャリア12にはトナー24が持ち去った電荷と等量で逆極性の電荷Qが残る。この電荷Qはクーロンメーター19により計測することができる。また、分離されたトナー24の重量は、気体の吸引・吹き付け前後での容器13収納の現像剤の重量差Mとして、天秤で計測することによって求めることが可能である。
【0017】
このようにして、電荷Qと、分離されたトナー24の重量とを上記した操作を少なくとも3回以上繰り返して計測することで、トナー比電荷とトナー濃度との組合せのデータ(組合せデータ)を複数個求めることができる。前記した組合せデータを求めるとき、トナー比電荷Q/Mは、前記電荷Qと前記分離されたトナー24の重量Mの比から求めることができ、またトナー濃度は前記分離されたトナー24の重量Mと導電性容器13に仕込んだ現像剤の重量との比から求めることができる。
前述したトナー比電荷Q/Mとトナー濃度との組合せデータ(データ群)から、最小二乗法により回帰直線を算出し、前記回帰直線から特定のトナー濃度に対するトナー比電荷を算出し、算出されたトナー比電荷を用いてトナー帯電量の評価を行なう。なお回帰直線を算出するための前記組み合わせデータは少なくとも3、たとえば5または5以上用いることができる。
【0018】
トナー11は、熱可塑性樹脂を主成分とするバインダー樹脂、着色剤、微粒子、帯電制御剤、離型剤等を含有する公知のトナーを用いることができる。トナーは、重合法、造粒法等の製造方法を用いて製造することができ、不定形又は球形のトナーが挙げられる。また、磁性トナー及び非磁性トナーのいずれも用いることができる。
【0019】
バインダー樹脂としては、ポリスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体、スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂肪族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられる。なお、これらは、単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0020】
ポリエステル樹脂は、スチレン系樹脂やアクリル系樹脂と比較して、トナーの保存時の安定性を確保しながら、溶融粘度を低下させることができる。ポリエステル樹脂は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合反応によって得ることができる。
アルコール成分としては、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール等のジオール類、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のエーテル化ビスフェノール類、これらを炭素数3〜22の飽和又は不飽和の炭化水素基で置換した2価のアルコール単位体、その他の2価のアルコール単位体、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ショ糖、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の三価以上の高アルコール単量体が挙げられる。
【0021】
カルボン酸成分としては、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等のモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸、これらを炭素数3〜22の飽和又は不飽和の炭化水素基で置換した2価の有機酸単量体、これらの酸の無水物、低級アルキルエステルと、リノレイン酸からの二量体酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、3,3−ジカルボキシメチルブタン酸、テトラカルボキシメチルメタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸エンボール三量体酸、これら酸の無水物等の三価以上の多価カルボン酸単量体が挙げられる。
【0022】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンの重縮合物等を用いることができ、具体的には、エポミックR362、R364、R365、R366、R367、R369(以上、三井石油化学工業社製)、エポトートYD−011、YD−012、YD−014、YD−904、YD−017、(以上、東都化成社製)、エポコート1002、1004、1007(以上、シェル化学社製)等の市販品が挙げられる。
【0023】
着色剤としては、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、ハンザイエローG、ローダミン6Gレーキ、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料、モノアゾ系染顔料、ジスアゾ系染顔料等の公知の染顔料を単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0024】
磁性トナーは、磁性体を含有するが、磁性体としては、鉄、コバルト等の強磁性体、マグネタイト、ヘマタイト、Li系フェライト、Mn−Zn系フェライト、Cu−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Ba系フェライト等の微粉末を用いることができる。
【0025】
摩擦帯電性を制御するために、トナーは、モノアゾ染料の金属錯塩、ニトロフミン酸及びその塩、サリチル酸、ナフトエ塩、ジカルボン酸のCo、Cr、Fe等の金属錯体アミノ化合物、4級アンモニウム塩、有機染料等の帯電制御剤を含有してもよい。
【0026】
さらに、トナーは、必要に応じて、離型剤を含有してもよい。離型剤としては、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、カルナウバワックス、マイクロクリスタリンワックス、ホホバワックス、ライスワックス、モンタン酸ワックス等を単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0027】
トナーは、この他の添加剤を含有してもよい。良好な画像を得るためには、トナーに流動性を付与することが好ましい。このためには、一般に流動性向上剤として、疎水化された金属酸化物の粒子、滑剤等の粒子を添加することが有効であり、金属酸化物、樹脂、金属石鹸等の粒子を添加剤として用いることができる。添加剤の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ステアリン酸亜鉛等の滑剤、酸化セリウム、炭化ケイ素等の研磨剤、表面を疎水化したSiO、TiO等の無機酸化物等の流動性付与剤、公知のケーキング防止剤及びそれらの表面処理物等が挙げられる。トナーの流動性を向上させるためには、特に、疎水性シリカが好ましく用いられる。
【0028】
トナーの重量平均粒径は、3.0〜9.0μmであることが好ましく、3.5〜7.5μmがさらに好ましい。なお、トナーの粒径は、コールターカウンター(コールターカウンター社製)を用いて測定することができる。
【0029】
また、トナーの平均円形度は0.90〜0.99であることが好ましい。この範囲を満足するトナーは流動性が良くなる。平均円形度は、フロー式粒子像分析装置(FPIA−2000;シスメックス社製)を用いて測定できる。
【0030】
キャリア12は、磁性を有する芯材と被覆層から構成される公知の各種キャリアを用いることができる。
磁性を有する芯材としては、例えば、鉄、コバルトなどの強磁性体、マグネタイト、ヘマタイト、Li系フェライト、Mn−Zn系フェライト、Cu−Zn系フェライト、Ni−Znフェライト、Baフェライトなどが挙げられる。
【0031】
キャリアの被覆層としては少なくともシリコーン樹脂が含まれているものが好ましい。シリコーン樹脂は、従来から知られているものが使用でき、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーンおよびアルキド、ポリエステル、エポキシ、ウレタンなどで変性したシリコーン樹脂が挙げられる。例えば、ストレートシリコーン樹脂としては、KR271、KR272、KR282、KR252、KR255、KR152(信越化学工業社製)、SR2400、SR2406(東レダウコーニングシリコーン社製)などがある。また、変性シリコーンとしては、エポキシ変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーン、アルキッド変性シリコーンなどが挙げられ、変性シリコーンの例としては、エポキシ変性:ES−1001N、アクリル変性:KR−5208、ポリエステル変性:KR−5203、アルキッド変性:KR−206、ウレタン変性:KR−305(以上、信越化学工業社製)、エポキシ変性:SR−2115、アルキッド変性:SR2110(東レダウコーニングシリコーン社製)などである。
【0032】
またキャリアの被覆層には、シリコーン樹脂の他に、ポリスチレン、ポリクロロスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロロアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、キシレン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、フッ素系樹脂等を含有してもよい。これらシリコーン樹脂の他の樹脂の使用量は樹脂全体のうち40%未満であることが好ましい。
【0033】
また、樹脂被覆層に添加剤として帯電制御剤を使用することも可能である。シリコーン樹脂の場合には、特に、アミノシランカップリング剤の添加が有効であり、シリコーン樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部添加すると良い。
本発明によるキャリア被覆層は硬質粒子を含有する。このことで被覆層を補強することが可能となる。中でも、金属酸化物からなる粒子は、粒子径の均一性が高く、被覆層の補強効果が大きいため、好ましく用いられる。また、金属酸化物は、Siの酸化物、Tiの酸化物又はAlの酸化物であることが好ましく、硬質粒子は、単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0034】
磁性を有する芯材の表面に被覆層を形成する方法としては、スプレードライ法、浸漬法、パウダーコーティング法等の公知の方法を用いることができる。特に、流動層型コーティング装置を用いる方法は、均一な被覆層を形成するのに有効である。
【0035】
次に上記した本発明のトナー帯電量評価方法を用いたトナーの製造方法について説明する。
図2は、トナーの製造方法の評価に、本発明のトナー帯電量評価方法を採用した例を示すフローチャートである。
この例では、トナーの製造方法として、粉砕方法によって製造する例を挙げている。この例に従って説明すれば、原材料を計量し、原材料を混合して溶融混練し、冷却して固化した後に粉砕して分級することによりトナー母体粒子を製造し、得られたトナー母体粒子と外添剤とを混合してトナーを製造する。その後、得られたトナーを用い、このトナーとキャリアとを所定濃度で混合して現像剤を得る。この現像剤を用いて本発明のトナー帯電量評価方法を用いてトナーの比電荷Q/Mを求める検査を行う。この検査に合格したトナーを最終製品とすることによって、本発明のトナーの製造方法が行われる。
【0036】
また重合方法などの他の製造方法においては、トナー母体粒子を製造しこれに外添剤などを加えてトナーを製造後、前記同様にこのトナーとキャリアとを所定濃度で混合して現像剤を得る。この現像剤を用いて本発明のトナー帯電量評価方法を用いてトナーの比電荷Q/Mを求める検査を行い、この検査に合格したトナーを最終製品とすることによって、本発明のトナーの製造方法が行われることとなる。
【0037】
なお、本発明のトナー帯電量評価方法の手順を図3に示すフローチャートを用いて簡単に説明する。まずトナーとキャリアを所定量計量し、調湿する。計量されたトナーとキャリアとを混合撹拌して現像剤を得た後に本発明のトナー帯電量評価方法を実施する。その後解析等を行い、回帰直線を求め、この回帰直線を用いてトナーの現像剤中の含有量(重量%値)からトナーの比電荷Q/Mを求め、本発明のトナー帯電量評価方法を終了する。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に記載された発明に限定されるものではない。
(実施例1:トナー1の作製)
<原材料>
樹脂: ポリエステル樹脂 100部
(ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物テレフタル酸、コハク酸誘導体から合成されたポリエステル)
着色剤: 銅フタロシアニンブルー顔料(C.I.ピグメントブルー15:3) 3.5部
(Lionol Blue FG−7351;東洋インキ社製)
帯電電制御剤: サルチル酸亜鉛塩 5部
(ボントロンE84、オリエント化学)
離型剤: 低分子量ポリエチレン 5部
【0039】
上記原材料をミキサーで充分に混合し、その後、2軸押出し機を用いて、バレル温度100℃、混練機回転数120rpmで溶融混練した。
得られた混練物を圧延冷却して固化後カッターミルで粗粉砕し、ジェット気流を用いた微粉砕機で粉砕後、旋回式風力分級装置を用いて、平均粒径が6μmの粒度分布に分級して母体着色粒子を得た。
更に、母体着色粒子100部に対して、以下の混合条件にて添加剤を混合し、トナー1を作製した。
添加剤: シリカ微粉末 2.0部
(R972;日本アエロジル社製)
<混合条件>
混合機:遊星ボールミル
公転回転数:600rpm
混合時間:60sec
(ミル用ボールとして、直径7mmのジルコニア製ボールを使用。)
【0040】
(実施例2:トナー作製例2)
上記実施例1において、遊星ボールミルの混合時間を600secとした以外は、全く同様にしてトナー2を作製した。
【0041】
(キャリアの作製例)
Fe、CuO、及びZnOからなる混合物を、湿式ボールミルを用いて粉砕物の粒子径が1μm以下になるように粉砕した。
得られた粉砕物にポリビニルアルコールを添加し、次いで、スプレードライヤーにより造粒を行った。この造粒物を電気炉で焼成した後、解砕し、分級し、粒度調整して芯材を作製した。
この芯材の成分分析を行ったところ、Feが46mol%、CuOが27mol%、ZnOが27mol%であった。
次に、下記組成の組成物をホモミキサーで10分間分散し、被覆層液を調製した。
<被覆層液>
・アクリル樹脂溶液(固形分50質量%) 21.0質量部
・グアナミン溶液(固形分70質量%) 6.4質量部
・アルミナ粒子[0.3μm、固有抵抗1014(Ω・cm)]
7.6質量部
・シリコーン樹脂溶液 65.0質量部
[固形分23質量%(SR2410:東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)]
・アミノシラン 1.0質量部
[固形分100質量%(SH6020:東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)]
・トルエン 60質量部
・ブチルセロソルブ 60質量部
【0042】
次に、上記組成の被覆層液を芯材表面に厚みが0.15μmになるようにスピラコーター(岡田精工株式会社製)により塗布し、乾燥した。
得られたキャリアを電気炉中にて150℃で1時間放置して焼成した。冷却後フェライト粉バルクを目開き106μmの篩を用いて解砕し、キャリアを作製した。
なお、被覆層厚みの測定は、透過型電子顕微鏡にてキャリア断面を観察することにより、被覆層の厚みを求め、その厚みの平均値をもって被覆層の厚みとした。
【0043】
(トナー帯電量の測定例)
前述のとおりにして作成したトナー452mgとキャリア6gをガラス製容器に収容し、腕振り型振とう機を使用して、振り角30度、振とう速度150回/分で2分間攪拌した。
攪拌終了後、静電潜像現像剤のうち200mgを速やかに量り取り、両端開口部にメッシュサイズ635のメッシュを備えた導電性容器に収容した。
次に、導電性容器の一方の開口部に対向して配置されている吸引ノズルから13kPaでエアを吸引すると同時に、もう一方の開口部から吹き付けノズルで200kPaのエアを吹き付けて、導電性容器内に収容した静電潜像現像剤からトナーを分離し除去した。
この測定を9回繰り返し行なって、表1中の最小2乗法で求められたトナー比電荷(μC/g)の結果を得た。一方、従来どおりの評価方法で求めた一回限りの値を、平均トナー比電荷(μC/g)として求めた。
また上記した測定により得られたデータ群(トナー比電荷とトナー濃度)をプロットし、最小二乗法により求めた回帰直線の例を図4に示す。
トナー濃度とトナー比電荷の回帰直線を最小二乗法により、以下のa値とb値を求めた。
(トナー比電荷)=a×(トナー濃度)−b
今回の計測で回帰直線を最小二乗法により求めたところ、aは1.72となり、bは55.55となった。この関係式から、作製例のトナーのトナー濃度7%のときのトナー比電荷を算出すると、−43.51μC/gとなった。
【0044】
また上記作製法で得られたトナー1およびトナー2とキャリアを、キャリア93部に対してトナー7部の割合で混合し、二成分現像剤を作成した。
得られた現像剤を潜像担持体がOPCドラム感光体でクリーニング方式がブレードクリーニングである複写機に設置し、ドットの再現性を目視で観察し、○:良好、×:不良(許容不可のレベル)のランクで評価した。
結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
以上、説明したように、本発明の評価方法によってトナーの比電荷Q/Mの真値を最小二乗法により、求めることができた。この評価方法によって評価されたトナーの比電荷値は、トナー粒子の帯電の分布が反映された真の平均化された値である。また本発明の評価方法は画像評価によってもその真価が支持されており、信頼性が極めて高い。このため本発明の評価方法を用いてトナーを製造することにより、信頼性の高いトナーが得られる。
【符号の説明】
【0047】
11 トナー、12 キャリア、13 導電性の容器、14 メッシュ、 15 エアブロアーの吹き付けノズル、16 気体、17 気体、18 エア吸引装置の吸引ノズル、19 クーロンメーター、20 エアブロアー、 21 圧力計、22 エア吸引装置、23 圧力計(マノメーター)、24 分離されたトナー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0048】
【特許文献1】特開平2−10259
【特許文献2】特開平9−218533
【特許文献3】特開2006−29897
【非特許文献】
【0049】
【非特許文献1】日本画像学会標準 トナー帯電量測定法(ブローオフ測定法) 日本画像学会誌 第37巻 学会創立40周年記念増刊号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合撹拌されたトナーとキャリアからなる静電荷現像剤を、メッシュを備えた開口部を両端に有する導電性の容器に計量して収納し、前記開口部の一方から吸引手段により気体の吸引をし、且つ他方の開口部から吹付手段により気体を吹き付けて前記開口部の前記吸引手段から前記容器内の前記トナーの少なくとも1部を前記静電荷現像剤と分離して前記容器外に排除して前記トナーの比電荷と正電荷現像剤中のトナー濃度とのデータ群による回帰直線を最小二乗法により求め、該回帰直線から前記静電荷現像剤のトナーの比電荷を得ることを特徴とするトナー帯電量評価方法。
【請求項2】
前記データ群を3以上求めて前記回帰直線を得ることを特徴とする請求項1に記載のトナー帯電量評価方法。
【請求項3】
前記気体の吸引は、その吸引圧力を10〜15kPaとし、前記気体の吹き付けの圧力を150〜210kPaとすることを特徴とする請求項1または2に記載のトナー帯電量評価方法。
【請求項4】
前記開口部の一方から気体の吸引をし、且つ他方の開口部からの気体の吹き付けは、10〜30秒間行なわれることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のトナー帯電量評価方法。
【請求項5】
トナー製造工程中あるいはトナー製造工程後に、請求項1〜4に記載のトナー帯電量評価方法を用いることを特徴とするトナーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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