説明

トナー製造装置の洗浄方法

【課題】 本発明によれば、装置の洗浄にかかる時間、使用する水の量を大幅に削減することで低コストを実現するばかりでなく、洗浄時に発生する粉塵が抑えられるため、作業者の健康面にも配慮した洗浄方法であると言える。またこれまで必要としていた集塵機が要らなくなることで、集塵機による騒音もなくなり、より快適な作業環境を提供することができる。この洗浄方法を採用することにより、別品種トナーの生産切り替え時間を大幅に短縮でき、トナーの生産性を格段に向上させる洗浄方法を提供することである。
【解決手段】 トナー製造装置壁面上の付着物に対し界面活性剤を含む水溶液を接触させた後に洗浄すること特徴とするトナー製造装置の洗浄方法により解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真法、静電記録法等において使用されるトナー製造装置の洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、静電荷像現像用トナーの製造方法は、粉砕法、重合法に大別され、粉砕法では、樹脂、着色剤等の原料を混合、混練し、冷却工程を経、ジェットミル等で微粉砕後分級し、必要に応じて添加剤を加えた後、篩別後容器に充填し製品となる。また、重合法では、モノマー、ワックス等の原料を重合し、着色剤、帯電制御剤等を加え、必要に応じて、得られた重合粒子を凝集した後に脱水・洗浄・乾燥工程を経て、必要に応じて添加剤を加えた後に容器に充填し製品となる。
ここで、トナーの原料処方は使用される電子写真装置によって異なるため、同一製造ラインで複数の品種を製造するためには装置の洗浄が必要であることが多い。特に帯電性や、モノカラー、フルカラー用のトナーの色目が異なる品種間の洗浄においては完全な清掃性が要求され、通常は装置を分解後、装置機壁の付着物をエアブローや掃除機による吸引、水や有機溶剤による洗浄、またはこれらの組み合わせによって付着物を除去する方法が一般的である。
【0003】
しかしながら、エアブローや集塵機では付着物を完全に除去するのは困難であり、簡易的なレベルでの清掃しかできない。またエアブローによる清掃の一つとして、特許文献1にあるような方法も提案されているが、装置が大規模になるほど、必要なブロアーや集塵機は大型化し、それに伴う騒音も大きくなることで、作業環境上決して好ましい方法とは言えない。
快適な作業環境の中で完全に洗浄するためには人手による洗浄が最良であるが、洗浄には膨大な時間と労力がかかっているのが実状である。水による洗浄の場合は元々疎水性になっているトナー粒子に水がなじみにくく、注水の仕方によっては付着物を完全に落としきれなかったり、トナー粒子が粉塵となって舞い上がり装置の外部を汚染したりすることもあるため、手間がかかる上に作業環境上も好ましくない。有機溶剤による洗浄においても着火性が高いことから安全上の問題があり、また使用者の健康上好ましくない点も多い。特に多品種少量品生産設備の場合には、品種切り替え頻度が多いため、実際に生産を行っている装置稼動時間に対する洗浄時間の比率は非常に大きくなる。これらのことから短時間、低労力、低コスト、かつ快適な環境下で洗浄できる方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−267929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、トナー製造装置の洗浄方法に関し、短時間、低労力、低コスト、かつ快適な方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の洗浄方法は、装置の洗浄にかかる時間、使用する水の量を大幅に削減することで低コストを実現するばかりでなく、洗浄時に発生する粉塵が抑えられるため、作業者の健康面にも配慮した洗浄方法であると言える。またこれまで必要としていた集塵機が要らなくなることで、集塵機による騒音もなくなり、より快適な作業環境を提供することがで
きる。この洗浄方法を採用することにより、別品種トナーの生産切り替え時間を大幅に短縮でき、トナーの生産性を格段に向上させる洗浄方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の流動層式乾燥機からトナーをアルミコンテナに排出する工程の一例を表す概略図である。
【符号の説明】
【0008】
10 アルミコンテナ
11 アルミコンテナ10からトナー粒子を受け入れるシュート
12 定量供給を行うためのロータリーバルブ
13 袋の開口部を固定させるための膨脹型パッキンヘッド
14 充填量を測定するためのロードセル
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決するために検討を重ね、トナー製造装置壁面上の付着物に対し、界面活性剤を含む水溶液を接触させた後、洗浄を行うことにより上記課題を解決できることを見出した。本発明は、この知見に基づくものであり、本発明の要旨は以下の通りである。
【0010】
1.トナー製造装置壁面上の付着物に対し界面活性剤を含む水溶液を接触させた後に洗浄すること特徴とするトナー製造装置の洗浄方法。
2.界面活性剤を含む水溶液の界面活性剤の濃度が、0.4質量%以上、1質量%以下であることを特徴とする前記1に記載のトナー製造装置の洗浄方法。
3.界面活性剤を含む水溶液を、トナー製造装置壁面1mあたり0.1L以上用いることを特徴とする前記1又は2に記載のトナー製造装置の洗浄方法。
4.トナー製造装置がトナーを乾燥する工程、トナーを移送する工程、トナーを充填する工程に用いる装置であることを特徴とする前記1乃至3に記載のトナー製造装置の洗浄方法。
【0011】
本発明は、トナー製造装置壁面に付着した付着物を、界面活性剤を含む水溶液と接触させ、除去を行う洗浄方法である。付着物とは、トナーの製造過程で発生するトナー原料、トナー、外添剤及びその凝集物等である。これら付着物は、製品に混在すると品質不良を招くため、トナーの品種切り替え時には除去する必要がある。本発明は、この除去を短時間、低労力、低コスト、かつ快適な環境下で行うことができえる。
本発明の洗浄方法を用いる製造装置及び工程は限定されないが、トナーを乾燥する工程、トナーを移送する工程、トナーを充填する工程、乾燥した状態のトナー粒子が付着する製造装置である乾燥機、移送設備、充填機などに特に大きな効果を発揮する。トナー粒子の付着した壁面を洗浄する前に、あらかじめ界面活性剤の水溶液を接触させておき、トナー粒子等を水になじませ易くすることによって、その後効果的に洗浄することができる。
【0012】
本発明に用いる界面活性剤は、特に限定されないが、重合トナー製造工程に用いられる界面活性剤を適宜用いることができる。界面活性剤としては、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤などが挙げられ、2種以上を併用してもよい。
カチオン界面活性剤の具体例としては、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、等が挙げられる。
また、アニオン界面活性剤の具体例としては、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム、等の脂肪酸石けん、硫酸ドデシルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナ
トリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
さらに、ノニオン界面活性剤の具体例としては、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノニルフェニルポリオキシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、モノデカノイルショ糖等があげられる。
また、重合トナーの製造装置において本発明の洗浄方法を用いる場合、本発明で用いた洗浄後の水溶液に含まれるトナーを回収することもでき、歩留りを向上させることもできる。
【0013】
本発明の界面活性剤水溶液の濃度は、界面活性剤の種類によって最適な濃度が多少変わってくるが、0.4質量%以上が好ましく0.5質量%以上がさらに好ましい。また、1%以下が好ましく、0.7質量%以下であるのがさらに好ましい。界面活性剤の濃度が低すぎると、界面活性剤水溶液を噴霧しても、付着物と界面活性剤水溶液が十分になじまず、噴霧後の洗浄で付着物が壁面に残る場合がある。一方、濃度が高すぎると、付着物は界面活性剤水溶液となじむが、界面活性剤由来による泡が発生し、その後の洗浄に時間がかかる場合がある。
【0014】
本発明の界面活性剤水溶液を付着物に接触させる方法は、特に限定されないが、付着した壁面に対して霧状に噴霧するのが好ましい。ホースを使った棒状の注水やシャワーノズルによる散布は、水溶液が付着面に対し勢い良く当たることで一定の洗浄効果は期待できるが、一方でその水圧によってトナー等の付着物が舞い上がり、作業者を含め、装置外を汚染する場合がある。界面活性剤水溶液の噴霧には、霧吹き、噴霧器、エアブラシ等を用いることができる。界面活性剤水溶液を噴霧した後は、トナー等の付着物と界面活性剤が十分なじんでいるため、付着物が舞い上がることは少なく、ホースやシャワーノズルを使って注水して洗浄することも可能である。
【0015】
本発明の界面活性剤を含む水溶液を、付着物に接触させる量は限定されず適宜調整することができるが、トナー製造装置壁面1mあたり0.1L以上用いることが好ましい。また、トナー製造装置壁面1mあたり10L以下用いることが好ましい。量が少なすぎると、付着物に十分界面活性剤が行渡らず、本発明の効果が発現しにくい場合があり、量が多すぎると、界面活性剤由来による泡の発生が起こる場合がある。
【0016】
本発明のトナーの製造方法とは特に限定されず、粉砕法、重合法等が挙げられる。
粉砕トナーの通常の製造方法としては先ずトナー原料を混合し、溶融押し出し機などで混練し、板状に押し出して冷却固化後、粉砕・分級して、添加剤を加えトナー材料を得る。トナー原料としては樹脂および着色剤が必須成分として使用されるが、必要に応じて例えば帯電制御剤やその他のトナー特性付与剤を使用することができる。
【0017】
粉砕トナーに用いられるバインダー樹脂としては、例えば、トナーに適した公知の各種の樹脂を使用することができる。例えば、スチレン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は2種類以上を併用することもできる。特に、スチレン系樹脂、飽和または不飽和ポリエステル樹脂およびエポキシ樹脂を主樹脂として用いることが好ましい。トナー用着色剤としては、公知の各種の着色剤を使用することができ、例えばカーボンブラック、ニグロシン、ベンジジンイエロー、キナクリドン、ローダミンB、フタロシアニンブルー等が好適に使用される。着色剤は、樹脂100重量部当たり、通常0.1〜30重量部、好ましくは3〜15重量部の割合で使用される。
【0018】
粉砕トナーに用いられる帯電制御剤としては、公知の各種の帯電制御剤を使用することができる。例えば、4級アンモニウム塩、ニグロシン染料、トリフェニルメタン染料、スチレン−アミノアクリレート共重合体、ポリアミン樹脂などの正帯電制御剤や、モノアゾ系金属錯塩、アルキルサリチル酸金属化合物等の負帯電制御剤が挙げられる。帯電制御剤は樹脂100重量部当たり、通常0.1〜10重量部の割合で使用される。
【0019】
粉砕トナーに用いられる各種のトナー特性付与剤としては、例えば、オフセット防止のため、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリアルキレンワックスを使用することができる。また、流動性および耐凝集性の向上のために、チタニア、アルミナ、シリカ等の無機微粒子を使用することができる。これらのトナー特性付与剤は、樹脂100重量部当たり、通常0.1〜10重量部の割合で使用される。更に、トナーが磁性トナーである場合には、フェライト、マグネタイトを始め、鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性元素を含む合金又は化合物などの磁性粒子を含有することができる。磁性粒子は、バインダー樹脂100重量部当たり、通常、20〜70重量部の割合で使用される。
【0020】
次に、冷却固化されたペレット状トナーは、ハンマー式粉砕機などの粗粉砕機によって、だいたい重量平均粒径が約100〜3000μm、好ましくは約300μm前後の範囲になるように粗粉砕される。ここに、重量平均粒径とは、粒径−重量分布のメジアン値粒径であり、例えばベックマンコールター社製マルチサイザーで測定することができる。
【0021】
混合装置としては機内に羽根やスクリューなどの回転部を有するもの、例えば三井鉱山社製ヘンシェルミキサー、マツボー社製レーディゲーミキサー、ホソカワミクロン社製ナウターミキサー、カワタ社製スーパーミキサーなど、または容器自体が回転する一般のV型混合機等に使用できる。混練装置としては、連続式の押出機たとえばW&P社製ZSK型押出機、BUSS社製コニーダー、東芝機械社製TEM型押出機、池貝社製PCM型押出機、三井鉱山社製ニーデックスなど、一般のバッチ式混練機にも使用できる。
【0022】
冷却装置としては三井鉱山社や三菱化学エンジニアリング社製ドラムクーラー、NBC社製ベルトクーラーなどが使用できる。粉砕機としてはNPK社製I型・IDS型ジェットミル、ホソカワミクロン社製AFG・TJMなどのジェットミルやホソカワミクロン社製ハンマーミル・フィッツミル・フェザーミル・イノマイザー・ACMパルベライザー、ターボ工業社製ターボミル、川崎重工社製KTM、日清エンジニアリング社製スーパーローター、NPK社製ファインミルなどの衝撃式粉砕機に使用できる。
【0023】
分級機としてはNPK社製DS型・DSX型分級機、日鉄鉱業社製エルボージェット分級機、ホソカワミクロン社製ミクロンセパレーター・ATPなどの気流式分級装置に使用できる。
【0024】
一方、重合トナーの通常の製造方法としては先ず原料となるモノマー、ワックス等を水中で重合槽を用いて重合し、顔料等の着色剤や帯電制御剤等の補助原料を加え、加熱して重合体粒子を凝集・溶融、冷却固化した後に種々の添加剤を加えてトナー材料を得る。トナー原料としてはモノマーおよびワックスが必須成分として使用されるが、必要に応じて例えば着色剤や帯電制御剤やその他のトナー特性付与剤を使用することができる。
【0025】
重合トナーのモノマーとしては、重合トナーに用いられるモノマーであれば特に限定されるものではなく、種々の公知の酸性極性基あるいは塩基性極性基を有するモノマーを用いることが出来る。酸性極性基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸、等のカルボキシル基を有するモノマー、スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有するモノマー等が挙げられる。
【0026】
また、塩基性極性基を有するモノマーとしては、アミノスチレン及びその4級塩、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、等の窒素含有複素環含有モノマー、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び、これらのアミノ基を4級化したアンモニウム塩を有する(メタ)アクリル酸エステル、更には、アクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、アクリル酸アミドを挙げることができる。
その他のコモノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−n−ノニルスチレン等のスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。この中で、スチレン、ブチルアクリレート等が特に好ましい。
これらのモノマーは単独または混合して用いられるが、その際、重合体のガラス転移温度が40〜80℃となることが好ましい。ガラス転移温度が80℃を越えると定着強度が弱くなり、フルカラートナーにおいては、OHPシートに印字した際の透明性の悪化や普通紙においても光沢の低下が問題となることがあり、一方、重合体のガラス転移温度が40℃未満の場合は、トナーの保存安定性が悪くなりすぎて問題を生じる。特に、酸性極性基を持つモノマーとしてアクリル酸が、その他のモノマーとしてスチレン、アクリル酸エステル、及びメタクリル酸エステルが好適に使用される。
【0027】
重合トナーに用いられるワックスは、重合トナーに用いられる公知のワックス類の任意のものを使用することができるが、具体的には低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス、パラフィンワックス、ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス、水添ひまし油カルナバワックス等の植物系ワックス、ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン、アルキル基を有するシリコーン、ステアリン酸等の高級脂肪酸、長鎖脂肪酸アルコール、ペンタエリスリトール等の長鎖脂肪酸多価アルコール、及びその部分エステル体、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド等が例示される。これらのワックスの中で定着性を改善するためにより好ましいのは、融点が100℃以下のワックスであり、更に好ましいワックスの融点は40〜90℃の範囲、特に好ましいのは50〜80℃の範囲である。融点が100℃を越えると定着温度低減の効果が乏しくなる。
【0028】
重合トナーは、懸濁重合法によって得られるものと乳化重合法によって得られるものとに大別されるが、ここでは主に、乳化重合法によって得られる重合トナーを例として説明する。ワックス微粒子は、上記ワックスを公知のカチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤の中から選ばれる少なくともひとつの乳化剤の存在下で乳化して得られる。これらの界面活性剤は2種以上を併用してもよい。カチオン界面活性剤の具体例としては、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、等が挙げられる。
【0029】
また、アニオン界面活性剤の具体例としては、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム、等の脂肪酸石けん、硫酸ドデシルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
さらに、ノニオン界面活性剤の具体例としては、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノニルフェニルポリオキシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、モノデカノイルショ糖等があげられる。
【0030】
重合トナーに用いられる重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、等の過硫酸塩、及び、これら過硫酸塩を一成分として酸性亜硫酸ナトリウム等の還元剤を組み合わせたレドックス開始剤、過酸化水素、4,4‘−アゾビスシアノ吉草酸、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロペーオキサイド、等の水溶性重合開始剤、及び、これら水溶性重合性開始剤を一成分として第一鉄塩等の還元剤と組み合わせたレドックス開始剤系、過酸化ベンゾイル、2,2‘−アゾビス−イソブチロニトリル、等が用いられる。これら重合開始剤はモノマー添加前、添加と同時、添加後のいずれの時期に重合系に添加しても良く、必要に応じてこれらの添加方法を組み合わせても良い。
【0031】
必要に応じて公知の連鎖移動剤を使用することができるが、その様な連鎖移動剤の具体的な例としては、t―ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ジイソプロピルキサントゲン、四塩化炭素、トリクロロブロモメタン、等があげられる。連鎖移動剤は単独または2種類以上の併用でもよく、重合性単量体に対して0〜5重量%用いられる。
【0032】
先述のワックス類を乳化剤の存在下に分散してエマルジョンとし、樹脂のシード重合に供する。エマルジョン中のワックス粒子の平均粒径は、0.01μm 〜3μm が好ましく、さらに好ましくは0.03〜1μm、特に0.05〜0.8μmのものが好適に用いられる。なお、平均粒径は、例えばマイクロトラックUPA(日機装社製)を用いて測定することができる。ワックス粒子の平均粒径が3μm よりも大きい場合にはシード重合して得られる重合体粒子の平均粒径が大きくなりすぎるために、トナーとして高解像度を要求される用途には不適当である。また、ワックス粒子の平均粒径が0.01μm よりも小さい場合には、シード重合後の重合体一次粒子中のワックス含有量が低くなりすぎるためワックスの効果が低くなる。
【0033】
ワックスエマルジョンの存在下でシード乳化重合をするに当たっては、逐次、極性基を有するモノマー(酸性極性基を有するモノマーもしくは塩基性官能基有するモノマー)、及び、その他のモノマーを添加する事により、ワックスを含有するエマルジョン内で重合を進行させる。この際、モノマー同士は別々に加えても良いし、予め複数のモノマー混合しておいて添加しても良い。更に、モノマー添加中にモノマー組成を変更することも可能である。また、モノマーはそのまま添加しても良いし、予め水や界面活性剤などと混合、調整した乳化液として添加することもできる。界面活性剤としては、前記の界面活性剤から1種又は2種以上の併用系が選択される。
【0034】
シード乳化重合を進行するにあたっては、乳化剤を一定量ワックスエマルジョンに添加してもかまわない。また重合開始剤の添加時期は、モノマー添加前、モノマーと同時添加、モノマー添加後のいずれでも良く、またこれらの添加方法の組み合わせであっても構わない。
以上の様にして得られる重合体一次粒子は、実質的にワックスを包含した形の重合体粒子であるが、そのモルフォロジーとしては、コアシェル型、相分離型、オクルージョン型、等いずれの形態をとっていてもよく、またこれらの形態の混合物であってもよい。特に好ましいのはコアシェル型である。ワックスは、通常、バインダー樹脂100重量部に対して1 重量部〜40重量部で用いられ、好ましくは2重量部〜35重量部、更に好ましくは5重量部〜30重量部で用いられる。また、本発明の趣旨をはずれない範囲では、ワックス以外の成分、例えば顔料、帯電制御剤、等を同時にシードとして用いても構わない。
さらに着色剤をモノマー又はワックスに溶解又は分散させて用いても構わない。
【0035】
重合体一次粒子の平均粒径は、通常0.05μm〜3μmの範囲であり、好ましくは0.1μm〜1μm、更に好ましくは0.1μm〜0.5μmである。なお、平均粒径は、例えば先述のマイクロトラックUPAを用いて測定することができる。粒径が0.05μmより小さくなると凝集速度の制御が困難となり好ましくない。また、3μmより大きいと凝集して得られるトナー粒径が大きくなりすぎるため、トナーとして高解像度を要求される用途には不適当である。
【0036】
上記のようにして得られた重合体一次粒子は、攪拌槽で攪拌しながら必要に応じて上記の添加剤等を加えながら、重量平均粒径が約3〜12μm、好ましくは約5〜10μmの範囲になるように凝集粒子を生成させる。重合、凝集工程では攪拌翼を有する公知の攪拌槽が使用できる。粒子同士の凝集をより強固にするために加熱処理を行ってもよい。このようにして得られた凝集粒子は冷却され、イーグルフィルター、フィルタープレスあるいは遠心分離器等の濾過装置で洗浄、脱水した後に、気流乾燥機、流動乾燥機又は真空乾燥機あるいはこれらの組み合わせによる乾燥機を用いて乾燥させて、重合トナーを得ることが出来る。
【0037】
なお、上記の重合工程において重合体一次粒子を得る際に、顔料等の着色剤をワックスと同時にシードとして用いたり、着色剤をモノマー又はワックスに各々溶解又は分散させて用いたりしても構わないが、凝集工程で重合体一次粒子と同時に着色剤一次粒子を凝集させて会合粒子を形成し、重合トナーとすることが好ましい。この時、ワックスを内包化した重合体一次粒子が用いられるが、必要に応じて2種類以上の重合体一次粒子を用いても良い。また、ここで用いられる着色剤としては、無機顔料又は有機顔料、有機染料のいずれでも良く、またはこれらの組み合わせでも良い。これらの具体的な例としては、カーボンブラック、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、ローダミン系染顔料、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系染顔料など、公知の任意の染顔料を単独あるいは混合して用いることができる。フルカラートナーの場合にはイエローはベンジジンイエロー、モノアゾ系、縮合アゾ系染顔料、マゼンタはキナクリドン、モノアゾ系染顔料、シアンはフタロシアニンブルーをそれぞれ用いるのが好ましい。着色剤は、通常、バインダー樹脂100重量部に対して3〜20重量部となるように用いられる。
これらの着色剤も乳化剤の存在下で水中に乳化させエマルジョンの状態で用いるが、平均粒径としては、0.01〜3μm のものを用いるのが好ましい。
【0038】
帯電制御剤としては、公知の任意のものを単独ないしは併用して用いることができる。カラートナー適応性(帯電制御剤自体が無色ないしは淡色でトナーへの色調障害がないこと)を勘案すると、正荷電性としては4級アンモニウム塩化合物が、負荷電性としてはサリチル酸もしくはアルキルサリチル酸のクロム、亜鉛、アルミニウムなどとの金属塩、金属錯体や、ベンジル酸の金属塩、金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物、フェノールアミド化合物等が好ましい。その使用量はトナーに所望の帯電量により決定すれば良いが、通常はバインダー樹脂100重量部に対し0.01〜10重量部用い、更に好ましくは0.1〜10重量部用いる。
【0039】
更に、重合体一次粒子を得る際に、帯電制御剤をワックスと同時にシードとして用いたり、帯電制御剤をモノマー又はワックスに溶解又は分散させて用いても構わないが、重合体一次粒子と同時に帯電制御剤一次粒子を凝集させて会合粒子を形成し、重合トナーとすることが好ましい。この場合、帯電制御剤も水中で平均粒径0.01〜3μmのエマルジョンとして使用する。
添加する時期は、重合体一次粒子と着色剤一次粒子を凝集させる工程で同時に添加して凝集させても良いし、これらの一次粒子が会合して2次粒子が生成した段階で加えても良いし、さらには粒径が最終的な重合トナーの粒径まで会合粒子が成長した後に添加しても良い。
【0040】
重合トナーを製造するに当たっては、凝集粒子の粒径が実質的に最終的なトナーの粒径まで成長した後に、更に同種又は異なった種類のバインダー樹脂エマルジョンを添加し、粒子を表面に付着させることにより、表面近傍のトナー性状を修飾する事も可能である。また、本発明のトナーは、必要により流動化剤等の添加剤と共に用いることができ、そのような流動化剤としては、具体的には、疎水性シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム等の微粉末を挙げることができ、通常、バインダー樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部用いられる。
【0041】
また、各種のトナー特性付与剤としては、流動性および耐凝集性の向上のために、チタニア、アルミナ、シリカ等の無機微粒子を使用することができる。
これらのトナー特性付与剤は、樹脂100重量部当たり、通常0.1〜10重量部の割合で使用される。更に、トナーが磁性トナーである場合には、フェライト、マグネタイトを始め、鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性元素を含む合金又は化合物などの磁性粒子を含有することができる。磁性粒子は、バインダー樹脂100重量部当たり、通常、20〜70重量部の割合で使用される。
【0042】
上記のトナー特性付与剤を重合トナーに外添処理する場合には、それぞれを所定量配合の上、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の粉体にせん断力を与える高速攪拌機等で攪拌・混合をするのが良い。その際に、外添処理機内部で発熱があり、凝集物が生成しやすくなることがあるので、外添処理機周囲を水等で冷却するなどの手段で温度調節をしても良い。その場合には、外添処理機内部の温度を重合トナーの樹脂のガラス転移温度より低め、具体的には、5〜20℃、好ましくは10℃程度低めにするのが良い。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により何ら制限されるものではない。
【0044】
(実施例1)
<ワックス粒子の製造>
ペンタエリスリトールのテトラステアリン酸エステルを主成分とするエステルワックス(ユニスターH476:日本油脂社製)30重量部を、アニオン性界面活性剤20%水溶液(ネオゲンS−20A:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液 第一工業製薬製、以下、20%DBS水溶液と略す)2.5重量部と共に、イオン交換水67.5重量部に加えて、高圧剪断下で乳化することにより、エステルワックスのエマルジョン(以下、ワックスエマルジョンAと略す)を作製した。なお、マイクロトラックUPAで測定した体積平均粒径(mv)は0.24μmであった。
【0045】
<重合体一次粒子エマルジョンB1の製造>
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器に、上記ワックスエマルジョンAを42.14重量部、イオン交換水335.3重量部を仕込み、攪拌しながら窒素気流下で70℃に昇温した。攪拌翼先端部の周速2.78m/sで攪拌しながら、<開始剤水溶液−1>を一括添加した。
【0046】
その後も攪拌を続けたまま、以下<重合性モノマー類等>と<乳化剤水溶液>との混合物を4.5時間かけて添加した。その後、反応器内温を1.5時間かけて90℃まで昇温
し保持した。また、前記混合物を滴下開始した時間を「重合開始」とし、前記の操作と併行して<開始剤水溶液−2>を重合開始から7.5時間かけて添加した。<開始剤水溶液−2>の添加が終了した後も更に攪拌を続け、内温90℃のまま1時間保持した。
【0047】
<重合性モノマー類等>
スチレン 76.75重量部
アクリル酸ブチル 23.25重量部
アクリル酸 1.5重量部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.8重量部
トリクロロブロモメタン 0.52重量部
<乳化剤水溶液>
20%DBS水溶液 1.0重量部
イオン交換水 67.33重量部
<開始剤水溶液−1>
8質量%過酸化水素水溶液 3.2重量部
8質量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 3.2重量部
<開始剤水溶液−2>
8質量%過酸化水素水溶液 23.28重量部
8質量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 23.28重量部
【0048】
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子エマルジョンB1を得た。マイクロトラックUPAを用いて測定した体積平均粒径(mv)は0.22μmであり、固形分濃度は18.8質量%であった。
【0049】
<重合体一次粒子エマルジョンB2の製造>
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器に20%DBS水溶液を1.72重量部、イオン交換水を309部仕込み、窒素気流下で90℃に昇温した。攪拌翼先端部の周速2.78m/sで攪拌しながら、<開始剤水溶液−1>を一括添加した。
その後も攪拌を続けたまま、以下の<重合性モノマー類等>と<乳化剤水溶液>との混合物を5時間かけて添加した。また、前記混合物を滴下開始した時間を「重合開始」とし、前記の操作と併行して<開始剤水溶液−2>を重合開始から6時間かけて添加した。<開始剤水溶液−2>の添加が終了した後も更に攪拌を続け、内温90℃のまま1時間保持した。
<重合性モノマー類等>
スチレン 88.0重量部
アクリル酸ブチル 12.0重量部
アクリル酸 1.5重量部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.4重量部
トリクロロブロモメタン 0.48重量部
<乳化剤水溶液>
20%DBS水溶液 1.5重量部
イオン交換水 66.4重量部
<開始剤水溶液−1>
8質量%過酸化水素水溶液 3.2重量部
8質量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 3.2重量部
<開始剤水溶液−2>
8質量%過酸化水素水溶液 18.9重量部
8質量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 18.9重量部
【0050】
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子エマルジョンB2を得た。マイクロトラックUPAを用いて測定した体積平均粒径(mv)は0.14μmであり、固形分濃度は18.9質量%であった。
【0051】
<トナー粒子の製造>
以下の各成分を用いて、以下の凝集工程(コア材凝集工程・シェル被覆工程)・円形化工程・洗浄工程・乾燥工程を実施することによりコアシェル型の構造を持ったトナー粒子Cを製造した。
【0052】
重合体一次粒子エマルジョンB1 固形分として95重量部
重合体一次粒子エマルジョンB2 固形分として 5重量部
着色剤(ピグメントブルー15:3)分散液 着色剤固形分として4.6重量部
20%DBS水溶液 コア材凝集工程では、固形分として0.1重量部
円形化工程では、固形分として4重量部
0.5重量%硫酸アルミ水溶液 固形分として0.15重量部
【0053】
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器に重合体一次粒子エマルジョンB1と20%DBS水溶液を仕込み、内温10℃で攪拌翼先端部の周速0.8m/sで5分間攪拌した。続いて攪拌翼先端部の周速を5.1m/sまで上げ、着色剤分散液を8分かけて連続添加し、5分間保持した後、硫酸アルミ0.5質量%水溶液とイオン交換水1.5重量部を計12分かけて連続添加してから、5分間保持した。
【0054】
その後、周速を保持したまま内温を50℃まで90分かけて昇温した。次いで、その状
態で150分保持し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定したところ、6.5μmまで成長した。
【0055】
○シェル被覆工程
その後、重合体一次粒子エマルジョンB2を5分かけて連続添加してそのまま50分保持した。このとき、粒子のDv50は7.2μmであった。
【0056】
○円形化工程
続いて、20%DBS水溶液とイオン交換水1.4重量部を計10分かけて添加した後、90℃に昇温し、その後、60分保持した。その後、90分かけて30℃まで冷却し、トナー粒子のスラリーを得た。この時トナー粒子のDv50は7.0μm、フロー式粒子像分析装置FPIA−2100(シスメックス社製)を用いて測定した平均円形度は0.953であった。
【0057】
○洗浄工程
トナー粒子のスラリーをフィルタープレスにてろ過後、トナー粒子に対して70倍のイオン交換水で洗浄し、圧搾、解砕し水分率28%の湿品トナーを得た。
【0058】
○乾燥工程
前記の洗浄工程で得た湿品トナーを流動層式乾燥機で乾燥し、トナー粒子を得た。カールフィッシャー水分計(三菱化学アナリテック社製)で測定した水分量は0.2%であった。
【0059】
トナー粒子は流動層式乾燥機からアルミコンテナ中に排出し、図1にある、アルミコンテナ(図1 10)からトナー粒子を受け入れるシュート(図1 11)定量供給を行う
ためのロータリーバルブ(図1 12)、袋の開口部を固定させるための膨脹型パッキンヘッド(図1 13)、充填量を測定するためのロードセル(図1 14)を備えた高さ3.5mの充填機を通して、350kg分のトナー粒子を25kgずつ秤量した後、アルミコンテナ10及びロードセル14を外して、充填機を洗浄できる状態にした。
【0060】
充填装置内部には付着したトナーが全面に積層しており、その付着量は、多いところで1cmあたり0.8gであった。
【0061】
界面活性剤水溶液は、アニオン性界面活性剤(20%DBS水溶液 ネオゲンS−20A:第一工業製薬社製)を固形分濃度0.5重量%までイオン交換水で希釈したものを用いた。
前記の界面活性剤水溶液は市販の霧吹きを使い、注水時に最も粉塵の舞う、最上のシュート壁面を重点的に、かつその下の配管壁面にも行き渡るように噴霧した。使用した水溶液は500ccであり、装置壁面1mあたり0.5Lであった。
【0062】
また、筒状に加工した布(防水処理を施したもの)をパッキンヘッド13に取り付け、もう一方の端を排水溝に挿入し、充填装置内部の洗浄水を全て排水溝に流せるようにした。その後、ホースを使って0.76m/hrの流速で、電気伝導度1.0μS/cmのイオン交換水を注水し、充填装置壁面の付着分を目視で付着が確認できなくなるまで洗い落した。注水の際には、装置壁面からトナー粒子が舞い上がって装置の外側を汚染することもなかった。
【0063】
洗浄に要した時間は、先の界面活性剤水溶液噴霧の時間も含めて60分であり、洗浄に使用したイオン交換水の量は0.63mであった。また、同充填装置のバタフライ弁15を閉じてイオン交換水を貯めて10分放置し、貯めていた水の電気伝導度を測定したところ、電気伝導度は洗浄に使用したイオン交換水と同じ1.0μS/cmであり、系内に界面活性剤が残っていないことも確認した。
【0064】
(実施例2)
噴霧のための界面活性剤水溶液の固形分濃度を0.7重量%にした以外は、実施例1と全く同じ方法で洗浄を行った。
注水の際には、装置壁面からトナー粒子が舞い上がって装置の外側を汚染することもなかった。
洗浄に要した時間は、先の界面活性剤水溶液噴霧の時間も含めて57分であり、洗浄に使用したイオン交換水の量は0.58mであった。また、同充填装置のバタフライ弁15を閉じてイオン交換水を貯めて10分放置し、貯めていた水の電気伝導度を測定したところ、電気伝導度は洗浄に使用したイオン交換水と同じ1.0μS/cmであり、系内に界面活性剤が残っていないことも確認した。
【0065】
(比較例1)
界面活性剤の水溶液を噴霧せずに、イオン交換水だけで洗浄すること以外は実施例1と同様に洗浄作業を実施した。このときの洗浄に要した時間は120分(使用したイオン交換水の量は1.52m)であり、かつ注水時にシュート壁面等からトナー粒子が舞い上がり、充填機周りや、室内の床面及び壁面にも付着したため、集塵機で清掃する時間をさらに要した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー製造装置壁面上の付着物に対し界面活性剤を含む水溶液を接触させた後に洗浄すること特徴とするトナー製造装置の洗浄方法。
【請求項2】
界面活性剤を含む水溶液の界面活性剤の濃度が、0.4質量%以上、1質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のトナー製造装置の洗浄方法。
【請求項3】
界面活性剤を含む水溶液を、トナー製造装置壁面1mあたり0.1L以上用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー製造装置の洗浄方法。
【請求項4】
トナー製造装置がトナーを乾燥する工程、トナーを移送する工程、トナーを充填する工程に用いる装置であることを特徴とする請求項1乃至3に記載のトナー製造装置の洗浄方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−203664(P2011−203664A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73165(P2010−73165)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】