説明

トナー

【課題】分光スペクトルをシャープにし、トナー画像の高彩度化を図ることのできるトナーを提供する。
【解決手段】少なくとも樹脂と着色剤を含有するトナーにおいて、着色剤が中心金属M1、M2、置換基R、Zを有するフタロシアニン誘導体である。(M1はCu、Co、Ni、Ti=Oのいずれかであり、M2はSiであり、Rは炭素数3〜10の第2級アルキル基、第3級アルキル基、環状アルキル基のいずれかであり、また、複数置換されていてもよい。Zはヒドロキシル基、ハロゲン基、炭素数3〜10の炭化水素基、アルコキシ基のいずれかである。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のカラートナーに用いられる着色剤の一つに、有機顔料が挙げられる。一般的に、有機顔料は染料より、耐熱性や耐光性に優れ、文字、写真画像の保存に有利であるのが利点である。一方で、有機顔料は、分光スペクトルがブロードとなり、発色の精細さに欠けるという問題がある。
この問題に対して、銅フタロシアニン誘導体を微細に粉砕するために分散工程を強化し、1次凝集体を維持して鮮明性や透明性を高める技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−239870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術にあっても、未だ発色の精細さに欠け、不十分なものであった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、分光スペクトルをシャープにし、トナー画像の高彩度化を図ることのできるトナーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、
少なくとも樹脂と着色剤を含有するトナーにおいて、
前記着色剤が下記一般式(I)又は一般式(II)であることを特徴とするトナーが提供される。
【0006】
【化1】

【化2】

(一般式(I)において、MはCu、Co、Ni、Ti=Oのいずれかであり、Rは炭素数3〜10の第2級アルキル基、第3級アルキル基、環状アルキル基のいずれかであり、また複数置換されていてもよい。また、一般式(II)において、MはSiであり、Rは炭素数3〜10の第2級アルキル基、第3級アルキル基、環状アルキル基のいずれかであり、また、複数置換されていてもよい。Zはヒドロキシル基、ハロゲン基、炭素数3〜10の炭化水素基、アルコキシ基のいずれかである。)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、分光スペクトルをシャープにし、トナー画像の高彩度化を図ることができる。
メカニズムは以下のように推察している。
従来の着色剤は、共役系が長いものが多く、そのため固体や結晶状態では分子の重なりにより着色剤分子固有の分光特性に加え、分子間に働く分光特性が混合した状態となる。そのため単分子に加え、巨大分子の分光特性もあわせ持つことから光の吸収帯の幅は広がりを持ち、色味の点では彩度が低下してしまう(色の純度が鈍る)。特にシアントナー用着色剤などは色味の観点から吸収帯が長波長領域に存在しているため、イエロー・マゼンタに比べ共役系が長いものが多い。そのため分子間に働く分光特性が混合した状態となり易く、分光吸収スペクトルの吸収帯がブロード化し彩度が低下する原因と推察される。
【0008】
図1では、従来用いられている銅フタロシアニン顔料の分子構造及び簡略図を示しており、図2は、銅フタロシアニンのz軸方向の重なりによる多分子化の状態を示している。これら図1、図2に示すように、銅フタロシアニンは、共役系が長く、かつ、平面構造(xy平面)をとり、z軸上にπ結合を形成している。そのため、結晶状態では、z軸方向に伸びたπ結合同士が垂直に重なることで共役系が広くなり分子間での電子の移動が起きやすくなる。よって、単分子での発色とは異なり、多分子の分光特性が存在することになる。そして、図2の状態で着色剤がトナーに取り込まれた場合、トナーにより発色する色は反射スペクトルがブロード化し、彩度が低いものとなってしまう。
【0009】
そこで、本発明の発明者らは、フタロシアニン骨格に嵩高い置換基(立体的に大きな置換基)を導入し、分子同士の反発を利用して分子間距離を広げる考えに至った。すなわち、結着樹脂と相溶しない顔料系着色剤にて分子間距離を拡大し、より単分子分光特性を利用することにより、従来よりも分光スペクトルをシャープにすることが可能となる。結果として、高彩度化が可能となる。これは分子単位での制御のため、着色剤分子の凝集体である粒子を分散により細かくすることで得られる効果より大きな効果が得られると考えられる。
【0010】
図3は、本発明の着色剤の概要図を示しており、図3に示すように、本発明の着色剤は、z軸方向の重なりを防ぐために立体的に大きな置換基であり、かつ、電子の移動を起こさない置換基を導入することにより、分子同士の反発を利用して、単分子の分光特性を利用することが可能となる。そのため、本発明の着色剤を用いて作製したトナーを用いた場合、反射スペクトルがシャープであり、彩度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来の着色剤である銅フタロシアニンの分子構造及び簡略図である。
【図2】従来の着色剤である銅フタロシアニンのz軸方向の重なりによる多分子化の状態を示した図であり、図中、矢印はZ軸方向の重なりにより電子が移動できるようになっていることを表している。
【図3】本発明の着色剤の概要図であり、図中、Aはアザポルフィリン環由来の原子団、Dは本発明の嵩高い置換基を示し、Dの嵩高い置換基を導入することで分子同士の反発を利用していることを表している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のトナーについて説明する。
[トナー]
本発明のトナーは、少なくとも樹脂及び着色剤を含有し、着色剤が下記一般式(I)又は一般式(II)で示されるものである。
【0013】
【化3】

【化4】

(一般式(I)において、MはCu、Co、Ni、Ti=Oのいずれかであり、Rは炭素数3〜10の第2級アルキル基、第3級アルキル基、環状アルキル基のいずれかであり、また複数置換されていてもよい。また、一般式(II)において、MはSiであり、Rは炭素数3〜10の第2級アルキル基、第3級アルキル基、環状アルキル基のいずれかであり、また、複数置換されていてもよい。Zはヒドロキシル基、ハロゲン基、炭素数3〜10の炭化水素基、アルコキシ基のいずれかである。)
【0014】
〈樹脂〉
本発明に係るトナーに用いる樹脂は特に限定されるものではない。下記に記載されるビニル系単量体と呼ばれる重合性単量体を重合して形成される重合体がその代表的なものである。さらには、ポリエステル樹脂も使用することができる。また、本発明で使用可能な樹脂を構成する重合体は、少なくとも1種の重合性単量体を重合して得られる重合体を構成成分とするものであり、これら重合性単量体を単独或いは複数種類組み合わせて作製した重合体である。
【0015】
以下、ビニル系の重合性単量体の具体例を示す。
(1)スチレン或いはスチレン誘導体
例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンが挙げられる。
(2)メタクリル酸エステル誘導体
例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルが挙げられる。
(3)アクリル酸エステル誘導体
例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニルが挙げられる。
【0016】
(4)ビニルエステル類
例えば、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等である。
(5)ビニルエーテル類
例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等である。
(6)ビニルケトン類
例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等である。
【0017】
(7)その他
例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸或いはメタクリル酸誘導体が挙げられる。
また、本発明に係るトナーに使用可能な樹脂を構成するビニル系の重合性単量体には、以下に示すイオン性解離基を有するものも使用可能である。特に、弱アルカリ性を有する着色剤を用いた場合、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等のイオン性解離基を側鎖に有する単量体を使用すれば、樹脂中での分散性をより向上させることができ、好ましい。
【0018】
具体的には、カルボキシル基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸等が挙げられる。また、スルホン酸基を有する単量体としては、スチレンスルホン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。リン酸基を有する単量体としてはアシドホスホオキシエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0019】
また、以下に示す多官能性ビニル類を使用することにより、架橋構造の樹脂を作製することも可能である。多官能性ビニル類の具体例としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等が挙げられる。
【0020】
さらには、下記に示す非結晶性ポリエステル樹脂も使用することができる。
本発明において用いられる非結晶性ポリエステル樹脂は、公知のポリエステル樹脂を使用することができる。非結晶性ポリエステル樹脂は多価カルボン酸成分と多価アルコール成分とから合成される。なお、前記非結晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。また、非結晶性ポリエステル樹脂は、1種の非結晶性ポリエステル樹脂でも構わないが、2種以上の非結晶性ポリエステル樹脂の混合であっても構わない。
【0021】
非結晶性ポリエステル樹脂における多価アルコール成分としては、例えば2価のアルコール成分としてエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチレグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等を用いることができる。また、3価以上のアルコール成分としては、グリセリン、ソルビトール、1,4−ソルビタン、トリメチロールプロパン等を用いることができる。
【0022】
また、上記多価アルコール成分と縮合させる2価カルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族カルボン酸類;無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等の脂肪族カルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式カルボン酸類;及びこれらの酸の低級アルキルエステル、酸無水物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上用いることができる。
【0023】
これら多価カルボン酸の中でも、特にアルケニルコハク酸もしくはその無水物を用いると、他の官能基に比べ疎水性の高いアルケニル基が存在することにより、より容易に結晶性ポリエステル樹脂と相溶することができる。アルケニルコハク酸成分の例としては、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸又はこれらの酸無水物、酸塩化物、炭素数1〜3の低級アルキルエステルを挙げることができる。
【0024】
更に、3価以上のカルボン酸を含有することにより、高分子鎖が架橋構造をとることができ、該架橋構造をとることにより、高温域における弾性率の低下を抑制することができ、高温域でのオフセット性を向上させることができる。
上記3価以上のカルボン酸としては、例えば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸や1,2,5−ベンゼントリカルボン酸等のトリメリット酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ヘミメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸、メリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸又はこれらの酸無水物、酸塩化物、炭素数1〜3の低級アルキルエステル等が挙げられるが、トリメリット酸が特に好適である。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
また、酸成分としては、前述の脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、スルホン酸基を持つジカルボン酸成分が含まれていることが好ましい。前記スルホン酸基を持つジカルボン酸は、顔料等の色材の分散を良好にできる点で有効である。また、樹脂全体を水に乳化或いは懸濁して、樹脂粒子の分散液を作製する際に、ジカルボン酸成分がスルホン酸基を有していれば、界面活性剤を使用しないで乳化或いは懸濁することも可能である。
【0026】
上記の理由から、非結晶性ポリエステル樹脂にはアルケニルコハク酸及びその無水物のうちの少なくとも1種と、トリメリット酸及びその無水物のうちの少なくとも1種と、を含んで反応させた成分が含有されることが望ましいが、その成分は結晶性ポリエステル樹脂との相溶化及び結晶性ポリエステル樹脂の固定化に主要な役割を果たす、非結晶性ポリエステル樹脂の高分子量成分に含まれることが望ましい。
【0027】
〈着色剤〉
本発明に係るトナーに用いられる着色剤は、上記一般式(I)又は上記一般式(II)で示されるものである。
上記一般式(I)又は上記一般式(II)において、Mは特にCu又はSiが好ましく、また導入する置換基Rはできるだけ大きく、かつ、色味に大きな影響を与えないものが好ましい。例えば、t−ブチル基などの第3級アルキル基、又はシクロヘキシル基、アダマンチル基などの脂環基である。
本発明で使用する着色剤は、フタロシアニンを合成した後、置換基Rや置換基Zを導入することによって製造することができる。
具体的には、置換基Rは、一般的にフタロシアニンの溶解性の観点から原料の段階で導入する必要がある。例えば、Rがi−プロピル基の場合、4−i−プロピルフタル酸無水物を原料とし、またRがt−ブチル基の場合は、4−t−ブチルフタル酸無水物を原料とし、金属塩とモリブデン酸アンモニウム等の触媒存在下、尿素中で加熱することで合成できる。
また、置換基Zは、ジクロロシリコンフタロシアニンを水酸化ナトリウム、ピリジンの存在下加熱することで得られるジヒドロキシシリコンフタロシアニンを用い、所望の置換基を有するシリルクロライドを、塩基の存在下反応させることで合成することができる。
【0028】
〈離型剤〉
離型剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
トナーへの離型剤の添加量としては、1〜30質量%が好ましい。
【0029】
外添剤としては、公知の疎水性シリカ、疎水性金属酸化物の他に、酸化セリウム粒子、チタン酸塩粒子、或いは炭素数20〜50の脂肪酸または、高級アルコール粒子を添加し併用することが耐フィルミング性の観点から好ましい。酸化セリウム粒子またはチタン酸塩粒子を添加する場合、耐フィルミング性を高める観点から個数平均粒径が150〜800nmのものを用いることが好ましい。
【0030】
[トナーの製造方法]
以下、本発明のトナーを製造するための製造方法について、具体例を挙げる。
本発明に係るトナーは、粉砕法、懸濁重合法、乳化会合法等の公知の製造方法により製造することができる。
【0031】
以下、本発明に係るトナーの製造方法の一例として、乳化会合法による、コアシェル構造を持つトナーの製造方法を示す。
(1)コア用樹脂粒子乳化工程
この工程では、トナーのコア部となる粒子を製造する。まず、コア部の結着樹脂となる樹脂粒子を乳化する。乳化した樹脂粒子は30〜300nmであることが好ましい。例えば、重合性の単量体を乳化、分散し、重合開始剤を添加して重合反応を進行させることにより、コア用樹脂粒子の分散液を調製する。重合反応を使用せず、樹脂及び必要に応じて離型剤や着色剤を溶媒中に溶解或いは分散させた後に水系媒体中に分散、脱溶剤して樹脂粒子を調整することもできる。このとき、重合性単量体又は樹脂溶液に離型剤を溶解させて乳化(分散)液を調製すると、トナー粒子が完成した後に離型剤粒子が脱離して、画像形成装置の部材を汚染することを抑制できるので好ましい。
【0032】
(2)凝集・融着工程
上記コア用樹脂粒子の分散液に上記一般式(I)又は(II)で示される着色剤粒子の分散液を添加するとともに、必要に応じて離型剤粒子の分散液を添加する。次いで、凝集剤を添加し、水系媒体中でコア用樹脂粒子と着色剤粒子、離型剤が添加されている場合にはさらに添加された離型剤粒子を凝集、融着させてコア粒子を形成する。凝集と融着の一連の工程を会合工程と呼ぶことがある。
凝集・融着の方法としては、塩析融着法が好ましい。塩析融着法は、凝集と融着を並行して進め、所望の粒子径までコア粒子が成長したところで凝集の停止剤を添加し、粒子成長を停止させる方法である。この方法では、必要に応じて粒子形状を制御するための加熱が継続して行われる。
【0033】
コア粒子の大きさとしては、体積基準のメジアン径で3〜10μmが好ましく、特に好ましいのは3〜7nmである。コア粒子の体積基準のメジアン径は、コールターマルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」
を搭載したコンピュータシステム(ベックマン・コールター社製)を接続した装置を用いて測定、算出する。
測定手順としては、試料0.02gを、界面活性剤溶液20ml(試料の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)で馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、試料の分散液を作製する。作製した分散液を、サンプルスタンド内のISOTON II(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定器の表示濃度が5〜10%になるまでピペットにて注入する。この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値が得られる。測定器において、測定粒子カウント数を25000個、アパチャー径を50μmにし、測定範囲である1〜30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出する。体積積算分率が大きい方から50%の粒子径を体積基準メジアン径とする。
【0034】
水系媒体とは、主成分(50%質量以上)が水からなるものをいう。水以外の成分としては、水に溶解する有機溶媒を挙げることができる。例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0035】
なお、凝集・融着工程の後、熟成工程を経ることとしてもよい。
具体的には、凝集・融着工程で加熱温度を低めにして粒子間の融着の進行を抑制しコア粒子の均一化を図る。その後、熟成工程において加熱温度を低めに、かつ時間を長くしてコア粒子の表面が均一形状となるよう制御する。
【0036】
(3)シェル化工程
シェル化工程では、コア粒子の分散液中に、シェル用樹脂粒子の分散液を添加する。当該分散液は公知のトナー用結着樹脂粒子と同組成の樹脂粒子の分散液でよく、コア用樹脂粒子と同じ樹脂粒子の分散液でもよい。ただし、耐熱保存性と低温定着性を両立するためには、コア用樹脂粒子よりガラス転移点が5℃から25℃高めに共重合比を設定することが好ましい。
シェル化工程では、シェル用樹脂粒子がコア粒子表面で融着し、コア粒子表面全体を覆うシェル層を薄く形成することが可能となる。
【0037】
(4)冷却・洗浄工程
冷却・洗浄工程では、シェル化により得られたトナー粒子の分散液を、例えば1〜20℃/minの冷却速度で冷却する。所定温度まで冷却すると、冷却されたトナー粒子の分散液からトナー粒子を固液分離する。固液分離は遠心分離の他、ヌッチェ等を用いた減圧濾過、フィルタープレス等を用いた濾過等、何れの方法でもよい。次いで、固液分離によって得られたトナーケーキ(ウェット状のトナー粒子をケーキのような円筒形状に整えたもの)を洗浄し、界面活性剤や塩析剤等の付着物を除去する。
【0038】
(5)乾燥工程
乾燥工程では、洗浄されたトナーケーキを乾燥処理する。乾燥処理には、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機等を用いることができる。乾燥されたトナー粒子の水分は、5%質量以下であることが好ましく、さらに好ましくは2%質量以下である。
【0039】
(6)外添処理工程
外添処理工程では、乾燥によって得られたトナー粒子に外添剤を混合し、静電荷現像用トナーを得る。
【0040】
[現像剤の作製]
本発明のトナーは、例えば磁性体を含有させて一成分磁性トナーとして使用する場合、いわゆるキャリアと混合して二成分現像剤として使用する場合、非磁性トナーを単独で使用する場合等が考えられ、何れも好適に使用することができる。
本発明のトナーにおいては、キャリアと混合する二成分現像剤として使用する場合は、キャリアに対するトナーフィルミング(キャリア汚染)の発生を抑制することができ、一成分現像剤として使用する場合は、現像装置の摩擦帯電部材に対するトナーフィルミングの発生を抑制することができる。
【0041】
二成分現像剤を構成するキャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子を用いることが好ましい。
キャリアとしては、その体積平均粒径としては15〜100μmのものが好ましく、25〜60μmのものがより好ましい。キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0042】
キャリアとしては、さらに樹脂により被覆されているもの、或いは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアを用いることが好ましい。被覆用の樹脂組成としては特に限定はないが、例えばオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール系樹脂等を使用することができる。
【0043】
[画像形成方法]
以上のトナーは、接触加熱方式による定着工程を含む画像形成方法に好適に用いることができる。画像形成方法としては、具体的には、以上のようなトナーを使用して、例えば像担持体上に静電的に形成された静電潜像を、現像装置において現像剤を摩擦帯電部材によって帯電させることにより顕在化させてトナー画像を得る。そして、このトナー像を用紙に転写し、その後、用紙上に転写されたトナー画像を接触加熱方式の定着処理によって用紙に定着させることにより、可視画像が得られる。
【0044】
[定着方法]
本発明のトナーを使用する好適な定着方法としては、いわゆる接触加熱方式のものを挙げることができる。接触加熱方式としては、特に熱圧定着方式、さらには熱ロール定着方式及び固定配置された加熱体を内包した回動する加圧部材により定着する圧接加熱定着方式を挙げることができる。
熱ロール定着方式の定着方法においては、通常、表面にフッ素樹脂等が被覆された鉄やアルミニウム等よりなる金属シリンダー内部に熱源が備えられた上ローラと、シリコーンゴム等で形成された下ローラとから構成された定着装置が用いられる。
【0045】
熱源としては、線状のヒータが用いられ、ヒータによって上ローラの表面温度が120〜200℃程度に加熱される。上ローラ及び下ローラ間には圧力が加えられており、この圧力によって下ローラが変形されることにより、変形部にいわゆるニップが形成される。ニップの幅は1〜10mm、好ましくは1.5〜7mmとされる。定着線速は40mm/sec〜600mm/secとされることが好ましい。ニップの幅が過小である場合には、熱を均一にトナーに付与することができなくなり、定着ムラが発生する場合がある。一方、ニップ幅が過大である場合には、トナー粒子に含有されるポリエステル樹脂の溶融が促進され、定着オフセットが発生する場合がある。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.着色剤の合成
(1)着色剤I−1〜I−12の合成
フタロシアニン(テトラアザポルフィン環)原料として、4-i-プロピルフタル酸無水物(15.0g、0.1モル)、尿素(30g)、硝酸アンモニウム(16g、0.2モル)、モリブデン酸アンモニウム(0.1g)を加え、165℃にて6時間攪拌した。
冷却後、2−エチルヘキサノール(70ml)、DBU(30.4g、0.2モル) 一般式(I)のMの原料として塩化第一銅(2.5g、0.025モル)を添加し、180℃にて5時間攪拌した。
冷却後、析出物をろ過し、5%水酸化ナトリウム水溶液、5%塩酸水溶液、水を各30mlずつで順次3回洗浄し青色粉末(I−1)9.8gを得た。
以下、着色剤I−2〜I−12を表1のように、フタロシアニン(テトラアザポルフィン環)原料、Mの原料をそれぞれ選択し、合成した。
【0047】
【表1】

【0048】
(2)着色剤化合物II-1の合成
フタロシアニン(テトラアザポルフィン環)原料として、4-t-ブチルフタル酸無水物(15.1g、0.1モル)、尿素(30g)、硝酸アンモニウム(16g、0.2モル)、モリブデン酸アンモニウム(0.1g)を加え、165℃にて6時間攪拌した。冷却後、2−エチルヘキサノール(70ml)、DBU(30.4g、0.2モル)、一般式(II)のMの原料として四塩化珪素(3.5g、0.025モル)を添加し、180℃にて5時間攪拌した。冷却後、析出物をろ過し、5%水酸化ナトリウム水溶液、5%塩酸水溶液、水各30mlずつで順次3回洗浄し、ジクロロシリコンフタロシアニン9.4gを得た。
ジクロロシリコンフタロシアニン(9.4g)、NaOH(2.5g)、水(200ml)、ピリジン(60ml)の混合液に添加し、還流加熱で1時間反応させた。生成物を熱ろ過し、ピリジン、アセトン、水の順で洗浄した。次いで、水(100ml)中で室温撹拌を数回繰り返した後、中性を確認し、結晶をろ別、乾燥してジヒドロキシシリコンフタロシアニン5.8gを得た。
ジヒドロキシシリコンフタロシアニン(5.8g)、トリ−n−ブチルアミン(10ml)、キノリン(180ml)を窒素雰囲気下、さらに置換基Zの原料として、トリメチルシリルクロライド(5.2g)を加えて140〜150℃で6時間反応させた。生成物を室温まで冷却後、メタノール、水の混合液中に加えた。析出した結晶を濾別し、結晶をトルエンで加熱懸濁後、冷却してろ過し乾燥して着色剤化合物(II−1)を得た。
【0049】
(3)着色剤II−2〜II−4の合成
着色剤化合物II−1の合成において、置換基Zの原料として、トリメチルシリルクロライドを加えたところを表1に示す原料に変更した以外は同様にして、着色剤化合物II−2〜II−4を得た。
【0050】
2.着色剤微粒子分散液の調製
(1)着色剤微粒子分散液1の調製
n−ドデシル硫酸ナトリウム11.5質量部をイオン交換水160質量部に攪拌、溶解させた溶液を攪拌させており、当該溶液中に着色剤I−1:24.5質量部を徐々に添加した。
次いで、攪拌装置「クレアミックスWモーション CLM−0.8」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理を行うことにより、体積基準のメジアン径が126nmである「着色剤微粒子分散液1」を調製した。
【0051】
(2)着色剤微粒子分散液2〜16の調製
「着色剤微粒子分散液1」の調製において、着色剤I−1をそれぞれ着色剤I−2〜I−12、着色剤化合物II−1〜II−4に変更した以外は、同様の手順で着色剤微粒子分散液2〜16を調製した。
【0052】
3.トナーの作製
(1)トナー1の作製
(1−1)コア形成用樹脂粒子の作製
(i)第1段重合
攪拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に構造式
で示されるアニオン系界面活性剤4質量部をイオン交換水3040質量部に溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)10質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、温度を75℃とした後、下記化合物よりなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。
スチレン:532質量部
n−ブチルアクリレート:200質量部
メタクリル酸:68質量部
n−オクチルメルカプタン:16.4質量部
前記単量体混合液を滴下後、この系を75℃にて2時間にわたり加熱、攪拌して重合(これを第1段重合という)を行い、「樹脂粒子j1」を調製した。
【0053】
(ii)第2段重合(中間層の形成)
攪拌装置を取り付けたフラスコ内に下記化合物を添加して単量体混合液を調製した。
スチレン:101.1質量部
n−ブチルアクリレート:62.2質量部
メタクリル酸:12.3質量部
n−オクチルメルカプタン:1.75質量部
前記単量体混合液に、下記離型剤を添加した後、80℃に加温して溶解させ、単量体溶液を調整した。
パラフィンワックス「HNP−57」(日本製蝋社製):93.8質量部
一方、第1段重合で使用したアニオン系界面活性剤3質量部をイオン交換水1560質量部に溶解させた界面活性剤溶液を80℃に加熱し、この界面活性剤溶液に、前記樹脂粒子j1の分散液を固形分換算で32.8質量部添加した。添加後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)により、前記離型剤を溶解させた単量体溶液を8時間混合分散させ、分散粒子径340nmを有する乳化粒子を含む分散液を調製した。
次いで、この分散液に過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を80℃にて3時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第2段重合)を行って「樹脂粒子j2」の分散液を得た。
【0054】
(iii)第3段重合(外層の形成)
上記のようにして得られた樹脂粒子j2の分散液中に、過硫酸カリウム5.45質量部をイオン交換水220質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下で、下記化合物よりなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。
スチレン:293.8質量部
n−ブチルアクリレート:154.1質量部
n−オクチルメルカプタン:7.08質量部
前記単量体混合液の滴下終了後、2時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第3段重合)を行った後、28℃まで冷却し、「コア形成用樹脂粒子j3」を調製した。第3段重合により調製したコア形成用樹脂粒子j3のガラス転移温度Tgは28.1℃であった。
なお、ガラス転移温度の測定は、以下のようにして行った。
【0055】
《ガラス転移温度の測定》
DSC−7示差走査カロリメーター(パーキンエルマー製)、TAC7/DX熱分析装置コントローラ(パーキンエルマー製)を用いて行うことができる。測定手順としては、試料4.5〜5.0mgを小数点以下2桁まで精秤し、アルミニウム製パン(KITNO.0219-0041)に封入し、DSC−7サンプルホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用した。測定温度0〜200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、Heat-cool-Heat の温度制御で測定を行い、その2nd.Heatにおけるデータを元に解析を行った。ガラス転移温度は、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移温度として求める。
【0056】
(1−2)コア粒子の形成
温度センサ、冷却管、窒素導入装置、攪拌装置を取り付けた反応容器内に、下記材料を投入して攪拌した。
コア形成用樹脂粒子j3の分散液(固形換算分):420.7質量部
イオン交換水:900質量部
着色剤微粒子分散液1:200質量部
容器内の温度を30℃に調整した後、この溶液に5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10に調整した。
次いで、上記調製液を攪拌しながら、塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて65℃まで昇温した。その状態で「コールカウンターTA−II」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準のメジアン径(D50)が5.5μmになった時点で、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を添加して粒径成長を停止させた。さらに、熟成処理として液温度70℃にて1時間にわたり加熱攪拌することにより融着を継続させ、コア粒子を形成した。得られたコア粒子の円形度を「FPIA2100」(シスメックス社製)にて測定したところ、平均円形度は0.912であった。
【0057】
(1−3)シェル樹脂粒子の調製
前記コア形成用樹脂粒子j3の作製において、第1段重合に用いた単量体混合液を、下記化合物と添加量に変更した単量体混合溶液を用いた以外は、同様の手順で重合反応及び反応後の処理を行うことにより、シェル樹脂粒子を調製した。
スチレン:624質量部
2−エチルヘキシルアクリレート:120質量部
メタクリル酸:56質量部
n−オクチルメルカプタン:16.4質量部
得られたシェル樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は62.6℃であった。
【0058】
(1−4)シェル層の形成
次いで、65℃において上記調製したシェル樹脂粒子の分散液96質量部(固形分換算)を添加し、さらに塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解させた水溶液を10分間かけて添加した。添加後、70℃(シェル化温度)まで昇温させ、1時間にわたり攪拌を継続してコア粒子の表面にシェル樹脂粒子を融着させる。その後、75℃で20分間熟成処理を行い、コア粒子にシェル層を形成させた。
ここで、塩化ナトリウム40.2質量部を添加し、6℃/分の条件で30℃まで冷却した後、濾過を行い、45℃のイオン交換水で繰り返し洗浄した後、40℃の温風で乾燥し、コア表面にシェル層を有するトナー1を作製した。
【0059】
(2)トナー2〜16の作製
トナー1の作製において、着色剤微粒子分散液1を着色剤微粒子分散液2〜16にそれぞれ変更した以外は、同様の方法でトナー2〜16を作製した。
【0060】
4.評価
(1)最大彩度
《最大彩度の定義》
トナー単色画像の最大彩度は次のように定義する。
(i)トナー着色剤の含有量が多く設定されている場合、トナー付着量の増大とともに彩度もほぼ比例して上昇するが、あるレベルを超えると付着量が上昇しても彩度が上昇しなくなり停滞し出しついには低下する様になる。このトナー付着量が上昇しているのに彩度が上昇から下降に転じるときの彩度を、この場合の最大彩度と定義する。
(ii)トナー付着量と彩度が比例する場合、画像形成装置で設定可能な転写紙へのトナー付着量が最大となるときのトナー画像の彩度を、この場合の最大彩度と定義する。
なお、トナーの最大彩度は、下記式より算出したCが、最大値をとる色相角において測定したものをいう。
式:彩度C=〔(a+(b1/2
このとき、転写紙は坪量128g/m、明度約93のものを用い、この様な転写紙の具体例としては、たとえば、王子製紙(株)製の「PODグロスコート紙」等が挙げられる。
《最大彩度の彩度計測方法》
市販のフルカラー複合機「bizhub PRO C6500(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製)」を用い、各現像剤を投入し、常温常湿(20℃、50%)にて紙上の付着量の異なる画像を採取する。
次に、分光光度計「Gretag Macbeth Spectrolino」(Gretag Macbeth社製)を用いてトナー画像のL*、*、を計測した。測定条件は、光源にD65光源、反射測定アパーチャにφ4mmのものを使用し、測定波長域380〜730nmを10nm間隔、視野角(observer)を2°、基準合わせに専用白タイルを用いたものである。最大彩度Cは、前記a,bから下記式より算出したものである。
式:彩度C=〔(a+(b1/2
算出した彩度を下記表2に示す。
【0061】
【表2】

【0062】
表2の結果から明らかのように、本発明のトナー1〜11は、比較例のトナー12〜16に比べて最大彩度が高いことが認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも樹脂と着色剤を含有するトナーにおいて、
前記着色剤が下記一般式(I)又は一般式(II)であることを特徴とするトナー。
【化1】

【化2】

(一般式(I)において、MはCu、Co、Ni、Ti=Oのいずれかであり、Rは炭素数3〜10の第2級アルキル基、第3級アルキル基、環状アルキル基のいずれかであり、また複数置換されていてもよい。また、一般式(II)において、MはSiであり、Rは炭素数3〜10の第2級アルキル基、第3級アルキル基、環状アルキル基のいずれかであり、また、複数置換されていてもよい。Zはヒドロキシル基、ハロゲン基、炭素数3〜10の炭化水素基、アルコキシ基のいずれかである。)



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−107301(P2011−107301A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260718(P2009−260718)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】