説明

トナー

【課題】高品質、高品位な画像出力において、高生産性・耐久安定性に優れたトナーを提供することである。
【解決手段】少なくとも結着樹脂と離型剤を含有するトナー粒子と無機微粒子とを有するトナーであって、該無機微粒子は、真比重が4.5g/cm3以上であり、1次粒子の個数平均粒径が30nm以上300nm以下であり、該無機微粒子が重量平均分子量300以上3000以下の炭化水素化合物によって、該無機微粒子100質量部に対して0.1質量部以上30.0質量部以下の割合で処理されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法に用いられるトナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真法を用いた画像形成装置としての複写機やプリンタ等は、パーソナルユースからプロフェッショナルユースへのシフトにより、性能面では、より高精彩化、より高速化、そして、より高信頼性化が厳しく追及されるようになってきた。特にモノクロの画像形成装置分野では、軽印刷(多品種少量印刷が可能なプリント・オン・デマンド;POD)用途として本格的な使用が開始されており、高生産性と高耐久性、低ランニングコストが一層求められている。オフィスユース等のプリンティング環境においても、信頼性、プリント品質、耐久性等の面で、従来よりも高い性能が必要とされている。よって、画像形成装置に関しては、更なる高速化に伴う生産性の向上と、メンテナンスフリーを可能とする耐久性を有し、低ランニングコストを達成することが、非常に重要となってきている。
【0003】
例えば、トナーの画像濃度安定性を向上させるため、研磨剤や金属石鹸をトナー粒子表面に付着させたトナーが提案されている(特許文献1及び特許文献2)。これらは、感光体上の付着(フィルミング)成分や帯電部材による放電生成物を研磨、除去するという効果が示されている。しかしながら、感光体上において、トナーの離型剤成分の付着物を効果的に研磨することや、その効果発現のために、クリーニング部材で研磨剤を滞留させることに対しては、何ら考慮していない。加えて、研磨剤自体の吸湿を抑制して画像流れを低減することやトナーの帯電特性改良について、考慮していない。
【0004】
さらに、無機微粒子の表面処理としては、従来、カップリング剤等による処理方法が広く知られている。又、オイルレス定着性を向上するために、予め離型剤で処理した添加粒子を含有させるトナーも提案されている(特許文献3)。この離型剤で処理した添加粒子をトナーに添加することによって、トナーの定着部材に対する離型効果が高まり、定着性を向上させることが出来る。しかしながら、この添加粒子に関して、トナーの離型剤成分付着による画像流れや画像濃度ムラを改善することに対しては、何ら考慮されていない。
【0005】
よって、オゾン生成物やトナー中の離型剤成分が感光体に付着することで生じる画像流れや画像濃度ムラを抑制し、高生産性・耐久安定性を更に向上させるための改善策は、未だ不十分といえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−316301号公報
【特許文献2】特開2009−169315号公報
【特許文献3】特開2000−284525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高品質、高品位な画像出力において、高生産性・耐久安定性に優れたトナーを提供することである。即ち、トナー中の離型剤成分や水分吸着性の高い微粒子などの感光体上付着物を研磨、除去し、それによって生じる画像流れ、画像濃度ムラの発生を抑制することである。そして、あらゆる環境においても、長期に渡って、安定的に良好な画像を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記の本発明の構成により達成される。
【0009】
(1)即ち、本発明は、少なくとも結着樹脂と離型剤を含有するトナー粒子と無機微粒子とを有するトナーであって、
該無機微粒子は、真比重が4.5g/cm3以上であり、1次粒子の個数平均粒径が30nm以上300nm以下であり、
該無機微粒子が重量平均分子量300以上3000以下の炭化水素化合物によって、該無機微粒子100質量部に対して0.1質量部以上30.0質量部以下の割合で処理されていることを特徴とするトナーに関する。
【0010】
(2)また本発明は、該無機微粒子は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及びセリウムから選ばれる1種以上の元素を含有することを特徴とする(1)に記載のトナーに関する。
【0011】
(3)また本発明は、該無機微粒子は、粒子形状が立方体状及び/または直方体状であることを特徴とする(1)または(2)に記載のトナーに関する
(4)また本発明は、該無機微粒子は、ペロブスカイト型結晶構造を有する無機微粒子であることを特徴とする(1)乃至(3)に記載のトナーに関する。
【0012】
(5)また本発明は、該無機微粒子が、炭化水素化合物及びアルコキシシラン化合物で処理されていることを特徴とする(1)乃至(4)に記載のトナーに関する。
【0013】
(6)また本発明は、該離型剤が、炭化水素系ワックスであることを特徴とする(1)乃至(5)に記載のトナーに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、結着樹脂と離型剤を少なくとも含有するトナー粒子表面に、炭化水素化合物で処理された無機微粒子を有することで、画像流れ、画像濃度ムラの発生を抑制することができる。また、特に高温高湿下での長期の使用によって顕著となり易い、画像濃度低下、カブリの悪化、画像濃度ムラの発生を抑制できるトナーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の該無機微粒子に炭化水素化合物を処理する際に用いられる表面処理装置の一例を示す模式図である。
【図2】本発明のトナーを用いた現像装置の一例を示す模式図である。
【図3】本発明のトナーを用いた現像装置の一例を示す模式図である。
【図4】本発明のトナー粒子の表面改質装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【0017】
まず、本発明のトナーは、結着樹脂と離型剤を少なくとも含有するトナー粒子と、トナー粒子表面に少なくとも特定の表面処理を施した無機微粒子とを有するトナーである。そして、トナー中に含まれる離型剤成分と、外添される無機微粒子の表面処理剤との相乗効果により、上記課題である感光体上に付着するトナー起因の離型剤成分に関わる課題を解決するものである。
【0018】
本発明者らの鋭意検討の結果、該無機微粒子を炭化水素化合物で処理することにより、感光体上に付着するトナー起因の離型剤成分との親和性が良好であるため、より選択的、効果的に研磨、除去することができることを見出した。また、このとき、感光体と対峙するクリーニング部材周辺において、該無機微粒子は、その付着性が故に、滞留し易いため、その研磨作用をより安定的、効果的に発現させることができることを見出した。
【0019】
また、トナー粒子表面に存在する離型剤成分に、炭化水素化合物で処理された該無機微粒子を、その親和性が高いことが影響して、選択的、効果的に付着させられることがわかった。これにより、トナー粒子表面に該無機微粒子が保持されやすくなり、トナー粒子表面からの離型剤成分の遊離や感光体表面との直接的な接触機会が大幅に低減され、画像不良の発生を効果的に抑制できることもわかった。
【0020】
これらの検討によって、本発明に至ったものである。
【0021】
本発明に用いられる無機微粒子は、真比重が4.5g/cm3以上であり、1次粒子の個数平均粒径(D1)が30nm以上300nm以下である。また、該無機微粒子は、重量平均分子量300以上3000以下の炭化水素化合物によって、該無機微粒子100質量部に対して、0.1質量部以上30.0質量部以下で処理されている。
【0022】
本発明に用いられる無機微粒子は、真比重が4.5g/cm3以上である。この範囲にあることで、トナー表面からの脱離性が制御され、感光体表面の付着物を効果的に研磨することができる。また、炭化水素化合物による処理工程において、該無機微粒子の分散性が極めて良好である。
【0023】
該無機微粒子の真比重が4.5g/cm3より小さい場合には、トナー粒子やトナー表面の離型剤成分部分との付着性が極端に強くなるため、所望の作用効果を得ることができない。
【0024】
本発明に用いられる無機微粒子は、1次粒子の個数平均粒径(D1)が30nm以上300nm以下である。この範囲にあることで、該無機微粒子によって、トナー表面の離型剤成分部分を選択的に被覆し、保持させることができる。また、炭化水素化合物による処理工程において、該無機微粒子の均一処理性が極めて良好である。
【0025】
該無機微粒子の個数平均粒径(D1)が30nm未満であると、感光体上の転写残トナーをブレードでクリーニングするシステムでは、結果として、研磨部位であるクリーニングブレードへ十分な無機微粒子が供給されず、研磨効果が不十分となり、画像流れが発生すると考えられる。また、効率よく該無機微粒子がクリーニング部材へ滞留できない上、クリーニング部材をすり抜けて帯電ローラー等の帯電部材を汚染し、画像濃度が低下すると考えられる。また、微細な粒径側に無機微粒子の分布が偏ることで、無機微粒子がキャリアと物理的に強く付着してしまうため、キャリアの帯電性能を阻害し、トナー飛散やカブリなどの弊害が発生する。
【0026】
一方、該無機微粒子の個数平均粒径(D1)が300nmより大きいと、感光体表面やクリーニング部材やその他画像形成装置の部材を著しく傷を付け、画像欠陥や前記部材の消耗を促進させるため、好ましくない。また、現像剤の流動性が大きく低下し、混合性が低下し、帯電が不均一となり、カブリが発生するものと考えられる。
【0027】
本発明に用いられる炭化水素化合物としては、流動パラフィンやトナーに使用される公知のワックス等;例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスが好ましく使用される。より好ましくは、トナー中に含有させるワックスと同一のワックスを少なくとも一種類以上使用することが好ましい。更に好ましくは、トナー中に含有させる離型剤は、前記脂肪族炭化水素系ワックスを用いることが、トナー自体の良好な定着性と該無機微粒子による作用効果の両立を発現するために、有効である。
【0028】
本発明に用いられる炭化水素化合物の重量平均分子量は、300以上3000以下である。この範囲にあることで、炭化水素化合物で処理された該無機微粒子自体の二次凝集性もなく、単分散な状態でのトナー表面への付着性が良好となる。炭化水素化合物の重量平均分子量が300未満の場合は、炭化水素化合物で処理された該無機微粒子自体が二次凝集を発生し、トナー表面への付着が不均一となるとともに、現像スリーブ表面への付着性が大きくなり、トナーの融着等が発生しやすくなってしまう。炭化水素化合物の重量平均分子量が3000を超える場合は、炭化水素化合物の粘性が大きくなることで、該無機微粒子への炭化水素化合物の均一処理が困難となり、これまた該無機微粒子自体が二次凝集を発生してしまい易くなる。いずれの場合も、該無機微粒子自体が二次凝集を発生した場合、トナー粒子表面からの該無機微粒子の遊離が促進され、現像スリーブ表面への該無機微粒子の蓄積量が多くなってしまうことから、画像濃度低下及びカブリの悪化、スリーブゴースト画像、スジ・ムラ画像の発生を伴ってしまう。
【0029】
また、本発明に用いられる炭化水素化合物の処理量は、該無機微粒子100質量部に対して、0.1質量部以上30.0質量部以下である。より好ましくは0.5質量部以上20.0質量部以下である。この範囲にあることで、炭化水素化合物で処理された該無機微粒子の二次凝集性もなく、単分散な状態でのトナー表面への付着性が良好となる。炭化水素化合物の処理量が0.1質量部未満の場合は、トナー粒子表面の離型剤成分への選択的な付着力が小さくなり、該無機微粒子の遊離が促進されてしまう。炭化水素化合物の処理量が30.0質量部を超える場合は、該無機微粒子表面に処理されずに残った余剰の炭化水素化物により、該無機微粒子自体の二次凝集が発生し、これまた画像不良の原因となってしまう場合がある。
【0030】
また、上記炭化水素化合物で処理された該無機微粒子のトナー粒子に対する添加量は、0.1質量部以上5.0質量部以下が好ましい。この範囲にあることで、トナーの長期に渡る帯電性が安定するので、より高い耐久能力が発揮できる。該無機微粒子のトナー粒子に対する添加量が0.1質量部未満である場合は、トナーの長期に帯電安定化に対する効果は少ない。該無機微粒子のトナー粒子に対する添加量が5.0質量部を超える場合は、トナー粒子表面に保持しきれない該無機微粒子が遊離してしまい、現像スリーブ表面への該無機微粒子の蓄積が発生してしまう。
【0031】
更に、本発明のトナーで使用する該無機微粒子は、炭化水素化合物とアルコキシシラン化合物で表面処理してもよい。本発明ではアルコキシシラン化合物であれば、特に限定は無い。例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等を使用することができる。これらアルコキシシラン化合物と炭化水素化合物を併用することにより、本来極めて吸湿性の高い該無機微粒子の特性を効果的に改善することができる。これによって、トナーの帯電特性が良好となり、温度・湿度の悪影響を低減させ、長期放置後の帯電の立上り特性が良好となるため好ましい。加えて、トナー粒子表面への該無機微粒子の付着性が向上し、トナーの流動性も向上させることができる。また、感光体表面だけでなく、現像スリーブ表面へのトナーの付着、融着も防止できるため、好ましい。
【0032】
本発明に用いられる該無機微粒子としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及びセリウムから選ばれる1種以上の元素を含有することが好ましい。
【0033】
これら元素を含有する無機微粒子を用いた場合、長期使用においても、濃度変動や画像流れが発生することがない。これら元素を含有する該無機微粒子が、偏在することがなく、安定して、感光体表面やクリーニング部材に補給され続けたためと考えられる。
【0034】
また、本発明に用いられる該無機微粒子は、珪酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム及び酸化セリウムから選ばれる1種以上の無機微粒子であることがより好ましい。
【0035】
これら無機微粒子を用いた場合、画像流れ、感光体ドラム上のフィルミングが抑制され、ブレードクリーニングを行った系では、ブレードの欠けや感光体表面にキズの発生もなく、良好な画像を安定して得ることができる。これら無機微粒子は、感光体上にキズを発生させることなく、また、感光体表面上の帯電生成物を除去するための適度な研磨も可能な、硬度と形状を有するためと考えられる。
【0036】
また、本発明に用いられる該無機微粒子としては、粒子形状が立方体状及び/または直方体状であることが好ましい。これは、該無機微粒子の稜線が感光体表面に当接することによって、強固に付着した帯電生成物や離型剤成分に対する良好な掻き取り性を得ることができるものと考えられる。
【0037】
さらに、本発明に用いられる該無機微粒子としては、ペロブスカイト型結晶構造を有することが好ましい。詳細は不明であるが、ペロブスカイト型結晶に起因する、硬度と形状が良好に作用して、該無機微粉体の極めて高い研磨効果が発現するものと推察している。
【0038】
次に、本発明に用いられる該無機微粒子の製造方法について説明する。
【0039】
該無機微粒子の製造方法としては、以下の方法で製造することができる。まず、未処理の無機微粉体は、ペロブスカイト型結晶を有する無機微粉体の公知の製造方法で得ることができる。その後、特定の炭化水素化合物、または、特定の炭化水素化合物及びアルコキシシラン化合物で、前記の未処理無機微粉体を処理することによって、本発明に用いる該無機微粉体を製造することができる。
【0040】
例えば、硫酸チタニル水溶液を加水分解して得られた含水酸化チタンスラリーをアルカリ水溶液で洗浄した。次に、該含水酸化チタンのスラリーに塩酸を添加して、pHを0.5に調整してチタニアゾル分散液を得た。該チタニアゾル分散液にNaOHを添加し、分散液のpHを5.5に調整し、上澄み液の電気伝導度が70μS/cmになるまで洗浄をくり返しした。
【0041】
該含水酸化チタンに対し、1.0倍モル量のSr(OH)2・8H2Oを加えてSUS製の反応容器に入れ、窒素ガス置換した。更に、SrTiO3換算で0.5mol/リットルになるように蒸留水を加えた。窒素雰囲気中で該スラリーを80℃まで10℃/時間で昇温し、80℃に到達してから5時間反応を行った。反応後室温まで冷却し、上澄み液を除去した後純水で洗浄をくり返した。
【0042】
このスラリーに硫酸を加えpH3とした後、イソプロパノールに溶解させたノルマルパラフィンワックス1(Mw:500)溶液と、n−オクチルトリエトキシシランを添加し、1時間かけて温度を60℃に昇温することにより、酸化チタン母粒子表面にn−オクチルトリエトキシシランを、二酸化チタン母粒子に対し8.0質量%、ノルマルパラフィンワックス1を二酸化チタンに対し0.2質量%被覆した。この後、濾過、洗浄して、得られた湿ケーキを90℃で一昼夜熱処理し、粉砕して該無機微粒子を得た。
【0043】
電子顕微鏡にて5万倍の倍率で観察したところ、直方体状又は立方体状のチタン酸ストロンチウム微粒子が確認された。
【0044】
例えば、前記製造方法において、含水酸化チタンに対して、添加する材料を変更することによって、チタン酸ストロンチウム微粒子以外の材料を製造することができる。
【0045】
該無機微粒子の表面処理を乾式で行う場合は、公知のミキサーやミル等の混合装置、表面処理装置が使用可能である。本発明では、図1に示した表面処理装置を使用すると効率よく表面処理が行えるので、好ましく用いることができる。
【0046】
図1に示した表面処理装置は、まず、図中の投入口5より、処理物として無機微粒子及び少なくとも炭化水素化合物を投入する。処理物の投入の仕方としては、無機微粒子と炭化水素化合物は別々に投入してもよく、投入前にミキサーやミルで混合した状態にしてもよい。図1に示した表面処理装置においては、処理物同士の衝突が十分であることから、処理物を別々に投入しても良好な処理が可能であることが利点である。
【0047】
次に、処理物は、回転体2表面に設けられた複数の撹拌羽根3により撹拌・混合されながら、ケーシング1と撹拌羽根3との微小間隙において被覆処理された後、排出口6から排出される。尚、図1においては、回転体2は、下方に位置する撹拌羽根が紙面の前面を通って上方へと移動する方向に回転する。この際、回転体2表面の撹拌羽根3aは、回転体2の軸方向の一方向(投入口5側→排出口6側)に処理物を送るための送り撹拌機構として働き、撹拌羽根3bは、回転体2の軸方向で逆方向(排出口6→投入口5)に処理物を送るための戻し撹拌機構として働く。これらの機構により、処理物は送りと戻しが繰り返され、ケーシング1内での処理物の移動経路が複雑で且つ長くなる。この送りと戻しにより、撹拌羽根3と処理物の衝突、また処理物同士の衝突をより十分に生じさせ、ケーシング1と撹拌羽根3の微小間隙における被覆処理をより効率よく行うことができる。また、ケーシング及び回転体は図1に示したとおり、水平であることが好ましい。水平であることで、処理物の偏在や滞留が発生しずらくなり、微小間隙における被覆処理を更に効率よく行うことができる。その結果、無機微粒子表面への炭化水素化合物の被覆を均一且つ迅速に行うことができる。
【0048】
又、表面処理剤として炭化水素化合物とアルコキシシラン化合物を併用する場合は、処理物と同時に投入してもよく、別々に投入しても良好な処理が可能である。
【0049】
次に、本発明に用いられるトナー粒子について説明する。
【0050】
本発明に用いられるトナー粒子は、結着樹脂及び磁性酸化鉄、離型剤を少なくとも含有し、粉砕法、重合法いずれの方法で製造されたものでもよい。好ましくは、本発明においては、トナー粒子表面に離型剤が微分散した状態であるほうが、該無機微粒子の均一付着性が向上するので、粉砕法で製造されたトナーが好ましく使用される。
【0051】
結着樹脂としては、公知の樹脂が使用可能である。中でも、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂又はハイブリッド樹脂を用いることが好ましい。例えば、結着樹脂としてポリエステルユニットを有する樹脂を生成する場合には、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物又は多価カルボン酸エステルが原料モノマーとして使用できる。
【0052】
具体的には、例えば二価アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールAが挙げられる。
【0053】
三価以上のアルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
【0054】
2価の酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6乃至12のアルキル基で置換された琥珀酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物が挙げられる。
【0055】
また、架橋部位を有するポリエステル樹脂を形成するための3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、及び、これらの無水物やエステル化合物が挙げられる。
【0056】
それらの中でも、特に、下記一般式(イ)で代表されるビスフェノール誘導体をジオール成分とし、二価以上のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキルエステルとからなるカルボン酸成分(例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等)を酸成分として、これらを縮重合したポリエステル樹脂が、トナーとして、良好な摩擦帯電特性を有するので好ましい。
【0057】
【化1】

【0058】
本発明において、「ハイブリッド樹脂」とは、ビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットが化学的に結合した樹脂を意味する。具体的には、ポリエステルユニットと(メタ)アクリル酸エステルの如きカルボン酸エステル基を有するモノマーを重合したビニル系重合体ユニットとがエステル交換反応によって形成する樹脂であり、好ましくはビニル系重合体を幹重合体、ポリエステルユニットを枝重合体としたグラフト共重合体(あるいはブロック共重合体)である。なお、本発明において「ポリエステルユニット」とはポリエステルに由来する部分を示し、「ビニル系重合体ユニット」とはビニル系重合体に由来する部分を示す。ポリエステルユニットを構成するポリエステル系モノマーとしては、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分であり、ビニル系重合体ユニットとは、ビニル基を有するモノマー成分である。
【0059】
ビニル系共重合体或いはビニル系重合体ユニットを有する樹脂を生成するためのビニル系モノマーとしては、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレンの如きスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如き不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;が挙げられる。
【0060】
さらに、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物、前記α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。
【0061】
さらに、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸エステル類;4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマーが挙げられる。
【0062】
本発明に使用できるトナーにおいて、結着樹脂のビニル系共重合体或いはビニル系重合体ユニットは、ビニル基を二個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよい。
【0063】
この場合に用いられる架橋剤には、芳香族ジビニル化合物として例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンが挙げられ、アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられ、エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられ、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。
【0064】
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
【0065】
ハイブリッド樹脂を製造する際には、ビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニットのいずれか一方又は両方の中に、両樹脂ユニットの成分と反応し得るモノマー成分を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂ユニットを構成するモノマーのうちビニル系重合体ユニットの成分と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸又はその無水物が挙げられる。ビニル系重合体ユニットを構成するモノマーのうちポリエステルユニットの成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
【0066】
ビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットの反応生成物を得る方法としては、先に挙げたビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニットのそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方もしくは両方の樹脂の重合反応を行うことにより得る方法が好ましい。
【0067】
本発明に使用できるビニル系共重合体或いはビニル系重合体ユニットを有する樹脂を製造する場合に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カーバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチル−プロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドの如きケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレートが挙げられる。
【0068】
本発明に使用できるのトナーに用いられるハイブリッド樹脂を調製するための製造方法としては、例えば、以下の(1)乃至(5)に示す製造方法を挙げることができる。
【0069】
(1)ビニル系重合体とポリエステル樹脂を別々に製造後、少量の有機溶剤に溶解・膨潤させ、エステル化触媒及びアルコールを添加し、加熱することによりエステル交換反応を行ってハイブリッド樹脂を合成する方法。
【0070】
(2)ビニル系重合体を製造後に、これの存在下にポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂成分を製造する方法である。ハイブリッド樹脂成分はビニル系重合体ユニット(必要に応じてビニル系モノマーも添加できる)とポリエステルモノマー(多価アルコール、多価カルボン酸)との反応、及び前記ユニット及びモノマーと必要に応じて添加されるポリエステルとの反応により製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0071】
(3)ポリエステル樹脂を製造後に、これの存在下にビニル系重合体ユニット及びハイブリッド樹脂成分を製造する方法である。ハイブリッド樹脂成分はポリエステルユニット(必要に応じてポリエステルモノマーも添加できる)とビニル系モノマーとの反応、及び前記ユニット及びモノマーと必要に応じて添加されるビニル系重合体ユニットとの反応により製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0072】
(4)ビニル系重合体及びポリエステル樹脂を製造後に、これらの重合体ユニット存在下にビニル系モノマー及びポリエステルモノマー(多価アルコール、多価カルボン酸)のいずれか一方又は両方を添加し、添加したモノマーに応じた条件の重合反応を行うことにより、ハイブリッド樹脂成分を製造する方法。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0073】
(5)ビニル系モノマー及びポリエステルモノマー(多価アルコール、多価カルボン酸等)を混合して付加重合及び縮重合反応を連続して行うことによりビニル系重合体ユニット、ポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂成分を製造する方法。さらに、適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0074】
上記(1)乃至(5)の製造方法において、ビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニットには、分子量や架橋度の異なる複数種の重合体ユニットを使用することができる。
【0075】
なお、本発明におけるビニル系重合体又はビニル系重合体ユニットとは、ビニル系単重合体若しくはビニル系共重合体又はビニル系単重合体ユニット若しくはビニル系共重合体ユニットを意味するものである。
【0076】
次に、本発明のトナーに使用できる離型剤(ワックス)について説明する。本発明に用いることができるワックスとしては、次のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス、酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、それらのブロック共重合物、カルナバワックス、ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステルワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類。さらに、本発明に用いることができるワックスとして、脂肪酸エステルを主成分とするワックスが挙げられ、次の脂肪酸類とアルコール類の縮合物が挙げられる。脂肪酸類としては、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き脂肪酸類が挙げられる。アルコール類としては、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、ソルビトールの如きアルコール類が挙げられる。また、本発明に用いることができるワックスとしては、次のアミドワックスが挙げられる。リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド類が挙げられる。
【0077】
これらのワックスのうち、本発明により好ましく用いられるのは、炭化水素系のワックスである。本発明者らの鋭意検討の結果、特定の該無機微粒子と炭化水素系ワックスの組み合わせでトナー粒子を作製すると、トナー粒子表面に存在する炭化水素系ワックス成分に特定の該無機微粒子が選択的に付着することがわかった。又、この該無機微粒子とトナー粒子表面の選択的な付着をより均一化するためには、トナー粒子表面に存在する炭化水素系ワックス成分がより微分散していることが好ましい。よって、本発明のトナーに使用できるワックスは、溶融混練等で樹脂中に予め分散されたマスターバッチとして使用すると、本発明をより効果的に達成できる。
【0078】
本発明のトナーには、摩擦帯電性を安定化させるために公知の荷電制御剤を用いることができる。荷電制御剤は、荷電制御剤の種類や他のトナー粒子構成材料の物性によっても異なるが、一般に、トナー粒子中に結着樹脂100質量部当たり0.1乃至10質量部含まれることが好ましく、0.1乃至5質量部含まれることがより好ましい。このような荷電制御剤としては、トナーを負帯電性に制御するものと、正帯電性に制御するものとが知られており、トナーの種類や用途に応じて種々のものを一種又は二種以上用いることができる。
【0079】
負帯電性荷電制御剤としては、サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ダイカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが利用できる。正帯電性荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩、前記四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物が利用できる。荷電制御剤はトナー粒子に対して内添しても良いし外添しても良い。特に、本発明に使用できるトナーでは、トナーの摩擦帯電スピードが速く且つ一定の摩擦帯電量を安定して維持できる芳香族カルボン酸金属化合物が好ましい。
【0080】
次に本発明のトナーの製造方法について説明する。
【0081】
本発明のトナーとしては、粉砕法、重合法いずれの方法で製造されたものであってもよい。好ましくは、トナー粒子表面のワックス成分の微分散の観点から、溶融混練工程を有する粉砕法による製造方法である。以下、粉砕法の製造方法を例示する。
【0082】
まず、原料混合工程では、少なくとも結着樹脂、及びワックスを所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、Q型ミキサー、ナウターミキサーがある。
【0083】
更に、上記の配合で混合したトナー原料を溶融混練して、結着樹脂を溶融し、その中に及びワックスを分散させる。その溶融混練工程では、例えば、加圧ニーダー、バンバリィミキサーの如きバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。又、連続生産できる優位性から、1軸または2軸押出機が主流となっており、例えば、池貝製作所製PCM型2軸押出機、神戸製鋼所社製KTK型2軸押出機、東芝機械社製TEM型2軸押出機、ケイ・シー・ケイ社製2軸押出機、ブス社製コ・ニーダーが一般的に使用される。更に、トナー原料を溶融混練することによって得られる樹脂組成物は、溶融混練後、2本ロールで圧延され、水冷等で冷却する冷却工程を経て冷却される。
【0084】
上記で得られた樹脂組成物の冷却物は、次いで、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルで粗粉砕され、更に、公知の風力式粉砕機や機械式粉砕機で微粉砕される。粉砕工程では、このように段階的に所定のトナー粒度まで粉砕される。
【0085】
更に、得られた微粉砕品を表面改質工程で表面改質、すなわち、球形化処理をおこない、表面改質粒子を得てもよい。本発明においては、表面改質工程として、熱風を用いた熱球形化処理が好ましく用いられる。熱風を用いたトナー粒子の表面改質処理は、例えば、サーフュージョンシステム(日本ニユーマチック工業社製)がある。また、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所製)、クリプトロンコスモシステム(川崎重工業社製)、イノマイザーシステム(ホソカワミクロン社製)の如き高速気流中衝撃法を応用した表面改質装置、メカノフュージヨンシステム(ホソカワミクロン社製)、メカノミル(岡田精工社社製)の如き乾式メカノケミカル法を応用した表面改質装置において、加熱することで、表面改質を行ってもよい。
【0086】
また、図4に示すような表面改質装置を用いることもできる。オートフィーダー102を用い、トナー粒子101は供給ノズル103を通り、表面改質装置内部104に供給される。ブロワ−109により、表面改質装置内部104の空気は吸引されているので、供給ノズル103から導入されたトナー粒子101は機内に分散する。機内に分散されたトナー粒子101は、熱風導入口105から導入される熱風で、瞬間的に熱が加えられて表面改質される。導入される熱風の温度は100℃以上450℃以下に調整可能であり、トナー処方に応じて随時、設定変更することが出来る。熱風の温度を100℃未満とすることは、装置的には可能であるが、熱処理の均一性や生産性の面で問題が発生する場合がある。また、熱風の温度を450℃超えとする場合には、熱風発生装置自体の大型化や、処理時のトナー粒子またはトナーが受ける熱エネルギーを調整することが困難となる。また、同様に装置内の温度コントロールが十分に行えず、融着現象が発生する場合がある。
【0087】
本発明ではヒーターにより熱風を発生させているが、トナー粒子の表面改質に十分な熱風を発生させられるものであれば装置は特に限定されない。表面改質されたトナー粒子107は、冷風導入口106から導入される冷風で瞬時に冷却される。この時、冷風は除湿された圧縮エアーまたはN2ガスを用いることが出来る。また、冷風は他に装置内に導入される気流との相互作用により、最適な装置内温度分布を構成する目的から、温度は−100℃以上60℃以下であることが好ましく、更に好ましくは−20℃以上20℃以下である。温度自体が高すぎても、低すぎても、熱処理に過剰なエネルギーが必要な場合があり、更に、処理自体が不均一になる場合がある。
【0088】
本発明では冷風には液体窒素を用いているが、表面改質されたトナー粒子107を瞬時に冷却することができれば、手段は特に限定されない。表面改質されたトナー粒子107はブロワー109で吸引されて、サイクロン108で捕集される。
【0089】
その後、必要に応じて表面改質粒子を慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)等の分級機或いは、風力式篩のハイボルター(東洋ハイテック社製)の如き篩分機を用いて分級し、重量平均粒子径3〜10μmのトナー粒子を得る。
【0090】
トナー粒子は、粉砕・分級後、又は表面改質後に、該無機微粒子と併用して流動性向上剤をヘンシェルミキサーの如き混合機で外添混合することにより、トナーの流動性を調整して用いることが好ましい。
【0091】
流動性向上剤としては、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末、酸化チタン微粉末、アルミナ微粉末、湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、それらをシラン化合物、及び有機ケイ素化合物、チタンカップリング剤、シリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカ等がある。
【0092】
シリカとしては、湿式製法シリカ及び乾式製法シリカいずれも使用できる。
【0093】
また、酸化チタン微粉体であれば、硫酸法、塩素法、揮発性チタン化合物例えばチタンアルコキシド,チタンハライド,チタンアセチルアセトネートの低温酸化(熱分解,加水分解)により得られる酸化チタン微粒子が用いられる。結晶系としてはアナターゼ型,ルチル型,これらの混晶型,アモルファスのいずれのものも用いることができる。
【0094】
そしてアルミナ微粉体であれば、バイヤー法、改良バイヤー法、エチレンクロルヒドリン法、水中火花放電法、有機アルミニウム加水分解法、アルミニウムミョウバン熱分解法、アンモニウムアルミニウム炭酸塩熱分解法、により得られるアルミナ微粉体のいずれのものも用いることができる。
【0095】
次に、本発明のトナーを用いることができる一成分系現像装置について説明する。一成分系現像装置としては、例えば、図2及び図3に示すような一成分系現像装置が知られている。図2において、公知のプロセスにより形成された潜像を担持する静電潜像担持体、例えば、感光体301は、矢印A方向に回転される。現像剤担持体としての現像スリーブ308は、現像剤容器303に収容された一成分系トナーとしての現像剤304を担持して、矢印B方向に回転することによって、現像スリーブ308と感光体301とが対向している現像領域Dに現像剤304を搬送する。図2に示すように、現像スリーブ308は、基体としての金属円筒管306上に形成された樹脂被覆層307を有し、また現像スリーブ308内には現像剤304を現像スリーブ308上に磁気的に吸引且つ保持するために、マグネットローラ305が配置、固着されている。現像スリーブ308とマグネットローラ305とは非接触状態にある。なお、金属円筒管306上に形成された樹脂被覆層307は、公知の材料を用いた樹脂被覆層が適応可能である。
【0096】
また現像剤容器303中には、矢印C方向に回転することによって、現像剤304を撹拌する撹拌翼309、310、現像剤容器303中に現像剤304を供給するスクリュー311、現像剤容器303中の現像剤量を調整する撹拌壁312が設けられている。
【0097】
現像剤304は、トナー相互間及び現像スリーブ308上の樹脂被覆層307との摩擦により、感光ドラム301上の潜像を現像することが可能な摩擦帯電電荷を得る。図2の例では、現像領域Dに搬送される現像剤304の層厚を規制するために、現像剤層厚規制部材としての強磁性金属製の現像ブレード302が、現像スリーブ308の表面から約50〜500μmのギャップ幅を持って現像スリーブ308に臨む様に現像剤容器303から垂下されており、マグネットローラー305のN極からの磁力線が磁性規制ブレード302に集中することにより、現像スリーブ308上に現像剤304の薄層が形成される。本発明においては、この磁性規制ブレードにかえて図3に示すような非磁性ブレード、弾性ブレードを使用することもできる。
【0098】
この様にして現像スリーブ308上に形成される現像剤304の薄層の厚みは、現像領域Dにおける現像スリーブ308と感光ドラム301との間の最小間隙よりも更に薄いものであることが好ましい。
【0099】
本発明に用いることのできる現像スリーブは、以上の様な現像剤の薄層により潜像を現像する方式の現像装置、即ち、非接触型現像装置に組み込むのが特に有効であるが、現像領域Dにおいて、現像剤層の厚みが現像スリーブ308と感光体301との間の最小間隙以上の厚みである現像装置、即ち接触型現像装置にも本発明の現像剤担持体を適用することができる。
【0100】
説明の煩雑を避けるため、以下の説明では、上記したような非接触型現像装置を例に採って行う。
【0101】
上記現像スリーブ308に担持されたトナーを有する一成分系現像剤304を飛翔させるため、上記現像スリーブ308にはバイアス手段としての現像バイアス電源313により現像バイアス電圧が印加される。この現像バイアス電圧として直流電圧を使用するときに、潜像の画像部(現像剤304が付着して可視像化される領域)の電位と背景部の電位との間の値の電圧を現像スリーブ308に印加するのが好ましい。
【0102】
現像された画像の濃度を高め、あるいは階調性を向上するためには、現像スリーブ308に交番バイアス電圧を印加し、現像領域Dに向きが交互に反転する振動電界を形成してもよい。この場合には、上記した現像画像部の電位と背景部の電位の中間の値を有する直流電圧成分を重畳した交番バイアス電圧を現像スリーブ308に印加するのが好ましい。高電位部と低電位部を有する潜像の高電位部にトナーを付着させて可視像化する、所謂正規現像の場合には、潜像の極性と逆極性に帯電するトナーを使用する。高電位部と低電位部を有する潜像の低電位部にトナーを付着させて可視化する、所謂反転現像の場合には、潜像の極性と同極性に帯電するトナーを使用する。高電位,低電位というのは、絶対値による表現である。これらいずれの場合にも、現像剤304は少なくとも現像スリーブ308との摩擦により帯電する。
【0103】
図2はあくまでも本発明の現像装置を模式的に例示したものであり、現像剤容器303の形状、撹拌翼309、310の有無、磁極の配置に様々な形態がある。
【0104】
以下に、本発明に関わる測定方法について詳細に述べる。
【0105】
<無機微粒子の個数平均粒径(D1)の測定方法>
無機微粒子の個数平均粒径は、走査型電子顕微鏡FE−SEM(日立製作所社製 S−4700)により10万倍に拡大したトナー粒子表面の写真を撮影し、画像のコントラスト調整後、2値化する。さらに、その2値化画像を更に拡大して、それぞれの粒子について例えば50個の粒子について定規、ノギス等を用い、粒子の長径を計測し、その個数平均粒径を測定する。その際、微粒子の組成判別は、指定した特定の元素のみを上記装置のX線マイクロアナライザーにより検出することにより行う。
【0106】
<該無機微粒子の二次凝集性測定>
該無機微粒子の二次凝集性については、本発明の該無機微粒子を透過電子顕微鏡で10万倍にて観察し、100個の粒子(二次凝集した粒子は1個とする)の長軸径、短軸径を測定した平均値を個数平均粒子径とし、その粒度分布から得られる標準偏差値σを評価した。
A:0nm以上50nm未満で二次凝集がほとんど無い。
B:50nm以上100nm未満で一部二次凝集が見受けられる
C:100nm以上200nm未満で二次凝集はあるが、実用下限レベル。
D:200nm以上400nm未満で二次凝集があり、実用不可レベル。
E:400nm以上で二次凝集が多数見受けられる。
【実施例】
【0107】
以下、具体的製造例及び実施例をもって本発明を更に詳しく説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0108】
<無機微粒子の製造例1>
硫酸チタニル水溶液を加水分解して得られた含水酸化チタンのスラリーをアルカリ水溶液で洗浄した。次に、該含水酸化チタンのスラリーに塩酸を添加して、pHを4.0に調整してチタニアゾル分散液を得た。該チタニアゾル分散液にNaOHを添加し、分散液の
pHを8.0に調整し、上澄み液の電気伝導度が100μS/cmになるまで洗浄をくり返しした。該含水酸化チタンに対し、1.02倍モル量のSr(OH)2・8H2Oを加えてSUS製の反応容器に入れ、窒素ガス置換した。更に、SrTiO3換算で0.3mol/リットルになるように蒸留水を加えた。窒素雰囲気中で該スラリーを90℃まで30℃/時間で昇温し、90℃に到達してから5時間反応を行った。反応後室温まで冷却し、上澄み液を除去した後、純水で洗浄をくり返し、その後、ヌッチェで濾過を行った。得られたケーキを乾燥し、個数平均粒径(D1)が95nmのチタン酸ストロンチウム微粒子を得た。
【0109】
イソプロパノールに溶解させたノルマルパラフィンワックス(Mw:400)溶液と、i−ブチルトリメトキシシランを添加し、1時間かけて温度を60℃に昇温することにより、チタン酸ストロンチウム微粒子100質量部に対し、i−ブチルトリメトキシシランを3.0質量部、ノルマルパラフィンワックス1を5.0質量部被覆した。この後、濾過、洗浄して、得られた湿ケーキを60℃で一昼夜熱処理し、粉砕して個数平均粒子径100nmのチタン酸ストロンチウム微粒子を得た。
【0110】
このチタン酸ストロンチウム微粒子は、粒子形状が概略立方体または直方体であり、無機微粒子A−1とした。
【0111】
<無機微粒子の製造例2>
硫酸チタニル水溶液を加水分解して得られた含水酸化チタンスラリーをアルカリ水溶液で洗浄した。次に、該含水酸化チタンのスラリーに塩酸を添加して、pHを0.65に調整してチタニアゾル分散液を得た。該チタニアゾル分散液にNaOHを添加し、分散液のpHを4.5に調整し、上澄み液の電気伝導度が70μS/cmになるまで洗浄をくり返しした。該含水酸化チタンに対し、0.97倍モル量のSr(OH)2・8H2Oを加えてSUS製反応容器に入れ、窒素ガス置換した。さらにSrTiO3換算で0.5mol/リットルになるように蒸留水を加えた。窒素雰囲気中で該スラリーを83℃まで6.5℃/時間で昇温し、83℃に到達してから4時間反応を行った。反応後室温まで冷却し、上澄み液を除去した後純水で洗浄をくり返す。
【0112】
イソプロパノールに溶解させたノルマルパラフィンワックス(Mw:500)溶液と、n−オクチルトリエトキシシランを添加し、1時間かけて温度を60℃に昇温することにより、チタン酸ストロンチウム微粒子100質量部に対し、n−オクチルトリエトキシシランを3.0質量部、ノルマルパラフィンワックスを10.0質量部被覆した。この後、濾過、洗浄して、得られた湿ケーキを60℃で一昼夜熱処理し、得られたケーキを乾燥して表面処理したチタン酸ストロンチウムを得た。
【0113】
得られたチタン酸ストロンチウムは、粒子形状が概略立方体または直方体であり、個数平均粒径(D1)が30nmであった。このチタン酸ストロンチウムを無機微粒子A−2とする。
【0114】
<無機微粒子の製造例3>
四塩化チタン水溶液にアンモニア水を添加することにより加水分解して得られた含水酸化チタンを上澄み液の電気伝導度が90μS/cmになるまで純水で洗浄した。該含水酸化チタンに対し、1.6倍モル量のSr(OH)2・8H2Oを加えてSUS製反応容器に入れ、窒素ガス置換した。さらにSrTiO3換算で0.2mol/リットルになるように蒸留水を加えた。窒素雰囲気中で該スラリーを78℃まで12℃/時間で昇温し、78℃に到達してから3.5時間反応を行った。反応後室温まで冷却し、上澄み液を除去した後純水で洗浄をくり返した。
【0115】
イソプロパノールに溶解させたノルマルパラフィンワックス(Mw:450)溶液と、ヘキシルトリエトキシシランを添加し、1時間かけて温度を60℃に昇温することにより、チタン酸ストロンチウム微粒子100質量部に対し、ヘキシルトリエトキシシランを3.0質量部、ノルマルパラフィンワックスを3.0質量部被覆した。この後、濾過、洗浄して、得られた湿ケーキを60℃で一昼夜熱処理し、粉砕して、表面処理したチタン酸ストロンチウムを得た。
【0116】
得られたチタン酸ストロンチウムは、粒子形状が概略立方体または直方体であり、個数平均粒径(D1)が300nmであった。このチタン酸ストロンチウムを無機微粒子A−3とする。
【0117】
<無機微粒子の製造例4>
固体の酸化チタンを希硫酸で溶解した溶液に、水酸化ナトリウムを加えて充分撹拌後、デカンテーションを行いチタン水和物のゾルを含有する水溶液を得た。このゾル含有水溶液に酢酸マグネシウム水溶液を加え、撹拌混合した後、水酸化ナトリウム水溶液によりpH調整した。次いで、各混合溶液を液温5℃で、撹拌や振動を与えることなく6時間静置した。静置後、デカンテーションを行い、塩素イオン、ナトリウムイオン等を除去し、沈殿物を濾別、乾燥して乾燥物を取得した。乾燥物を700℃で3時間加熱処理して、個数平均粒径(D1)が195nmのペロブスカイト型のチタン酸マグネシウムが得られた。
【0118】
イソプロパノールに溶解させたノルマルパラフィンワックス(Mw:300)溶液と、n−オクチルトリエトキシシランを添加した。1時間かけて温度を60℃に昇温することにより、チタン酸マグネシウム微粒子100質量部に対し、n−オクチルトリエトキシシランを2.0質量部、ノルマルパラフィンワックスを30.0質量部被覆した。この後、濾過、洗浄して、得られた湿ケーキを60℃で一昼夜熱処理し、得られたケーキを乾燥、粉砕して、表面処理したチタン酸マグネシウムを得た。
【0119】
このチタン酸マグネシウムは、粒子形状が概略立方体または直方体であり、個数平均粒径(D1)が200nmであった。このチタン酸マグネシウムを無機微粒子A−4とする。
【0120】
<無機微粒子の製造例5>
固体の酸化チタンを希硫酸で溶解した溶液に、水酸化ナトリウムを加えて充分撹拌後、デカンテーションを行いチタン水和物のゾルを含有する水溶液を得た。このゾル含有水溶液に酢酸カルシウム水溶液を加え、撹拌混合した後、水酸化ナトリウム水溶液によりpH
調整した。次いで、各混合溶液を液温5℃で、撹拌や振動を与えることなく6時間静置した。静置後、デカンテーションを行い、塩素イオン、ナトリウムイオン等を除去し、沈殿物を濾別、乾燥して乾燥物を取得した。乾燥物を700℃で3時間加熱処理して、個数平均粒径(D1)が147nmのペロブスカイト型のチタン酸カルシウムが得られた。
【0121】
イソプロパノールに溶解させたノルマルパラフィンワックス(Mw:3000)溶液と、ヘキシルトリエトキシシランを添加し、1時間かけて温度を60℃に昇温することにより、チタン酸カルシウム微粒子100質量部に対し、ヘキシルトリエトキシシランを0.1質量部、ノルマルパラフィンワックスを0.1質量部被覆した。この後、濾過、洗浄して、得られた湿ケーキを60℃で一昼夜熱処理し、粉砕して、表面処理したチタン酸カルシウムを得た。
【0122】
得られたチタン酸カルシウムは、粒子形状が概略立方体または直方体であり、個数平均粒径(D1)が150nmであった。このチタン酸カルシウムを無機微粒子A−5とする。
【0123】
<無機微粒子の製造例6>
濃度0.92規定のNaOH水溶液を約90℃に保持し、40℃に加熱保持したTiCl4水溶液(TiCl4濃度0.472mol/l)と、予め未溶解分を除去し約95℃に加熱保持したBaCl2/NaOH水溶液(BaCl2濃度0.258mol/リットル、NaOH濃度2.73mol/リットル)とを、反応容器内に連続的に供給した。混合水溶液の温度を約90℃で一定とし、2分間撹拌して粒子状のチタン酸バリウムを生成した。熟成後、デカンテーションを行って上澄みと沈殿物を分離し洗浄して固体反応物を回収した。回収した固体反応物を大気雰囲気下において100℃で加熱することにより乾燥した。さらに900℃に30分加熱して個数平均粒径(D1)が206nmのチタン酸バリウム粉末を得た。
【0124】
イソプロパノールに溶解させたノルマルパラフィンワックス(Mw:500)溶液と、ヘキシルトリエトキシシランを添加し、1時間かけて温度を60℃に昇温することにより、チタン酸バリウム微粒子100質量部に対し、ヘキシルトリエトキシシランを1.0質量部、ノルマルパラフィンワックスを5.0質量部被覆した。この後、濾過、洗浄して、得られた湿ケーキを60℃で一昼夜熱処理し、粉砕して、表面処理したチタン酸バリウムを得た。
【0125】
得られたチタン酸バリウムは、粒子形状が概略立方体または直方体であり、個数平均粒径(D1)が210nmであった。このチタン酸バリウムを無機微粒子A−6とする。
【0126】
<無機微粒子の製造例7>
Mg(OH)2粉末のスラリーとSiO2粉末をMgO:SiO2(モル比)で2:1となる様に秤量し、MgO濃度71.5g/リットル、SiO2濃度53.3g/リットルで150Lのスラリーとし、サンドグラインダーミルにて、湿式粉砕を行った。スラリーをスプレードライヤーで噴霧乾燥し、電気炉にて大気中で1100℃で30分焼成を行った。その後、焼成品をスラリー化して、サンドグラインダーミルにて、湿式粉砕を行った。スラリーをスプレードライヤーで噴霧乾燥し、サンドミルにて粉砕した。以上のようにして得られた珪酸マグネシウムの一次粒子の個数平均粒径(D1)は255nmであった。
【0127】
イソプロパノールに溶解させたノルマルパラフィンワックス(Mw:400)溶液と、ヘキシルトリエトキシシランを添加し、1時間かけて温度を60℃に昇温することにより、珪酸マグネシウム微粒子100質量部に対し、ヘキシルトリエトキシシランを1.0質量部、ノルマルパラフィンワックスを1.0質量部被覆した。この後、濾過、洗浄して、得られた湿ケーキを60℃で一昼夜熱処理し、粉砕して、表面処理した珪酸マグネシウムを得た。この珪酸マグネシウムを無機微粒子A−7とする。
【0128】
<無機微粒子の製造例8>
CeO2換算で1.6mol/リットルの塩化第二セリウム(CeCl3)水溶液148.7mlと31重量%の過酸化水素水19.7gを加えた後、純水を加えて全量を200mlとした。以下、これを原料Aという。一方、28重量%アンモニア水を、NH3とCeCl3に含まれるClとの原子比(NH3/Cl)が1.5になるように65.6ml計りとり、これに純水を加えて全量を200mlとした。以下、これを原料Bという。次に、原料Aと原料Bとをともに全量ビーカーに入れ、撹拌しながら滴下し、含酸化セリウムゲルを沈殿させた。このときビーカーには純水50mlを予め添加しておいた。次にこの沈殿ゲルを、オートクレーブにて、150℃で24時間加熱処理してスラリー500mlを得、これを純水で5回濾過洗浄し、さらに200mlのエチルアルコールで洗浄、撹拌、濾過、減圧乾燥することにより個数平均粒径(D1)215nmの酸化セリウム粉末を得た。
【0129】
イソプロパノールに溶解させたノルマルパラフィンワックス(Mw:500)溶液と、ヘキシルトリエトキシシランを添加し、1時間かけて温度を60℃に昇温することにより、酸化セリウム微粒子100質量部に対し、ヘキシルトリエトキシシランを1.0質量部、ノルマルパラフィンワックスを0.5質量部被覆した。この後、濾過、洗浄して、得られた湿ケーキを60℃で一昼夜熱処理し、粉砕して、表面処理した酸化セリウムを得た。この酸化セリウムを無機微粒子A−8とする。
【0130】
<無機微粒子の製造例9>
生石灰を理論水量比1.5で乾式消和して得られた消石灰粉を用い、濃度450g/リットルの石灰乳を調製し、高速インペラー分散機で処理したのち、前記石灰乳を濃度120g/リットルに調整した。撹拌しながらCO2濃度29容量%のCO2含有ガスを石灰乳中に吹き込んで炭酸化反応を行った。炭酸化反応は第1段階として供給速度18m3/m2・hrで炭酸化率が6.2%になるまでCO2含有ガスを吹き込み、次に第2段階として供給速度を1.5m3/m2・hrに下げ炭酸化率が12.8%になるまでCO2含有ガスを吹き込み、さらに第3段階として供給速度を18m3/m2・hrまで上げ炭酸化率を44.5%になるまでCO2含有ガスを吹き込み反応を行った。得られた反応生成物を走査型電子顕微鏡で観察したところ、平均して長径2μm、厚さ0.2μmの六角板状であった。さらにこの生成物を熱重量分析におけるTG曲線を求めたところ、CaCO3・1.6Ca(OH)2・H2Oの組成式が得られた。
【0131】
得られた炭酸カルシウム系六角板状複合体1モルに対し、25℃、濃度400g/lにおける粘度が2500cpの水酸化カルシウム水性懸濁液1モルを混合した。得られた混合物に反応開始温度25℃で二酸化炭素濃度30容量%の二酸化炭素含有ガスを供給速度8.0m3/m2・hrで吹き込み炭酸化率50.5%まで炭酸化して、炭酸カルシウム系六角板状複合体を平均して長径3.8μmで厚さ0.4μmに粗大化させ、水性懸濁液Aを調製した。一方25℃、濃度400g/lにおける粘度が2,500cpの水酸化カルシウム水性懸濁液を、濃度50g/lに調製し、反応開始温度13℃で二酸化炭素濃度30容量%の二酸化炭素含有ガスを供給速度10.0m3/m2・hrで炭酸化率32.3%となるまで吹き込んで、水性懸濁液Bを調製した。次いでA液とB液を、A液中のCa系化合物とB液中のCa系化合物のモル比が100:8になるように混合したのち、反応開始温度15℃で二酸化炭素濃度30容量%の二酸化炭素含有ガスを供給速度15m3/m2・hrで吹き込み、反応させて、個数平均粒径220nmである均一な立方体状炭酸カルシウムを得た。
【0132】
イソプロパノールに溶解させたノルマルパラフィンワックス(Mw:400)溶液と、ヘキシルトリエトキシシランを添加し、1時間かけて温度を60℃に昇温することにより、炭酸カルシウム微粒子100質量部に対し、ヘキシルトリエトキシシランを1.0質量部、ノルマルパラフィンワックスを0.7質量部被覆した。この後、濾過、洗浄して、得られた湿ケーキを60℃で一昼夜熱処理し、粉砕して、表面処理した炭酸カルシウムを得た。
【0133】
得られた炭酸カルシウムは、粒子形状が概略立方体または直方体であり、個数平均粒径(D1)が230nmであった。この炭酸カルシウムを無機微粒子A−9とする。
【0134】
<無機微粒子の製造例10>
無機微粒子の製造例1と同様にして、未処理のチタン酸ストロンチウム微粒子を得た。得られたチタン酸ストロンチウム微粒子は、粒子形状が概略立方体または直方体であり、個数平均粒径(D1)が110nmであった。このチタン酸ストロンチウムを無機微粒子A−10とする。
【0135】
<無機微粒子の製造例11>
無機微粒子の製造例2と同様にして、未処理のチタン酸ストロンチウム微粒子を得た。得られたチタン酸ストロンチウム微粒子は、粒子形状が概略立方体であり、個数平均粒径(D1)が23nmであった。
【0136】
イソプロパノールに溶解させたノルマルパラフィンワックス(Mw:450)溶液を添加し、1時間かけて温度を60℃に昇温することにより、チタン酸ストロンチウム微粒子100質量部に対し、ノルマルパラフィンワックスを7.0質量部被覆した。この後、濾過、洗浄して、得られた湿ケーキを60℃で一昼夜熱処理し、粉砕して、表面処理したチタン酸ストロンチウムを得た。得られたチタン酸ストロンチウムは、粒子形状が概略立方体または直方体であり、個数平均粒径(D1)が25nmであった。このチタン酸ストロンチウムを無機微粒子A−11とする。
【0137】
<無機微粒子の製造例12>
無機微粒子の製造例3と同様にして、未処理のチタン酸ストロンチウム微粒子を得た。得られたチタン酸ストロンチウム微粒子は、粒子形状が概略立方体であり、個数平均粒径(D1)が330nmであった。
【0138】
イソプロパノールに溶解させたノルマルパラフィンワックス(Mw:450)溶液を添加し、1時間かけて温度を60℃に昇温することにより、チタン酸ストロンチウム微粒子100質量部に対し、ノルマルパラフィンワックスを3.0質量部被覆した。この後、濾過、洗浄して、得られた湿ケーキを60℃で一昼夜熱処理し、粉砕して、表面処理したチタン酸ストロンチウムを得た。得られたチタン酸ストロンチウムは、粒子形状が概略立方体または直方体であり、個数平均粒径(D1)が350nmであった。このチタン酸ストロンチウムを無機微粒子A−12とする。
【0139】
<無機微粒子の製造例13>
ゾルゲル法によって得られた粒径120nmのシリカ微粒子を生成した後、シリカ微粒子100質量部に対して、ヘキサメチルジシラザン1.0質量部となるように表面処理を行う。
【0140】
イソプロパノールに溶解させたノルマルパラフィンワックス(Mw:450)溶液と、ヘキサメチルジシラザンを添加し、1時間かけて温度を60℃に昇温することにより、シリカ微粒子に対し、ヘキサメチルジシラザンを2.0質量部、ノルマルパラフィンワックスを8.0質量部被覆した。この後、濾過、洗浄して、得られた湿ケーキを60℃で一昼夜熱処理し、粉砕して、個数平均粒径が130nmのシリカ微粒子を得た。このシリカ微粒子を無機微粒子A−13とする。
【0141】
無機微粒子A−1乃至A−13の性状を表1にまとめて示す。
【0142】
【表1】

【0143】
<結着樹脂の製造例>
ビニル系共重合体ユニットを得るための材料として、スチレン10質量部、2−エチルヘキシルアクリレート4質量部、フマル酸2質量部、α−メチルスチレンの2量体5質量部、ジクミルパーオキサイド5質量部を滴下ロートに入れた。また、ポリエステル重合体ユニットを得るための材料として、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン25質量部、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン16質量部、テレフタル酸22質量部、無水トリメリット酸6質量部、フマル酸10質量部及び2−エチルヘキサン酸錫0.2質量部をガラス製4リットルの四つ口フラスコに入れた。この四つ口フラスコに温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけ、マントルヒーター内に設置した。次に四つ口フラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、温度130℃の温度で撹拌しつつ、先の滴下ロートより、ビニル系単量体及び重合開始剤を約4時間かけて滴下した。次いで、温度を200℃まで昇温し、4時間反応させ、重量平均分子量89,000、数平均分子量3500の結着樹脂(B−1)を得た。
【0144】
〔トナー製造例1乃至13〕
下記の材料を用いて、トナー粒子(T−1)を作製した。
【0145】
結着樹脂(B−1) 100質量部
ノルマルパラフィンワックス(最大吸熱ピーク:75℃) 5質量部
3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 1質量部
C.I.ピグメントレッド122 6質量部
上記の材料をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井鉱山(株)製)で混合した後、温度120℃に設定した二軸式押出機(PCM−30型、池貝製)にて溶融混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、トナー粗砕物を得た。得られたトナー粗砕物を、機械式粉砕機(T−300型、ターボ工業製)を用いて微粉砕した。粉砕条件としては、回転子の回転数を120s-1として粉砕処理した。
【0146】
次に、得られた微粉砕物を、図4に示す表面改質装置により表面改質を行った。表面改質時の条件は、原料供給速度は2.0kg/hr、熱風流量4.5m3/min、熱風の吐出温度は220℃、冷風温度3℃、冷風流量3.0m3/minで表面改質を行った。次に、コアンダ効果を利用した風力分級機(エルボジェットラボEJ−L3、日鉄鉱業社製)で分級しで微粉及び粗粉を同時に分級除去し、トナー粒子(t1)を得た。また、トナー粒子(t2)乃至(t3)に関しても、表2に示した離型剤に変更した以外は、トナー粒子(t1)と同様にして作製した。
【0147】
【表2】

【0148】
続いて、得られたトナー粒子(t1)乃至(t3)を10.0kg用意する。トナー粒子100質量部に対して、表3に示した無機微粒子及び表面処理酸化チタン微粒子0.7質量部をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井鉱山(株)製)で回転数30s-1、10分間外添混合して、トナー(T−1)乃至(T−13)を得た。
【0149】
【表3】

【0150】
〔実施例1乃至9、及び比較例1乃至4〕
表3に示したトナーをキヤノン株式会社製コピー機(imagePRESS C1+)を用いて画出し評価を行った。評価は、温度32.5℃−湿度85%RH環境下で、画像の印字比率は10%ととし、初期の画像濃度が1.45となるように現像バイアスを調整し、その設定のまま20万枚まで耐久を行った。その後、本体電源を切った状態で72時間放置してから、更に画像評価を行った。なお、画像流れや濃度ムラを評価するため、感光体の加温は行われないように調整した。以下の評価基準に基づく評価結果を表4に示す。
【0151】
<画像濃度維持率>
得られた画像に対して、濃度計X−Rite500型により濃度測定を行い、6点の平均値をとって画像濃度とし、下記の指標で判断した。
A:耐久後の画像濃度維持率が90%以上。
B:耐久後の画像濃度維持率が80%以上90%未満。
C:耐久後の画像濃度維持率が70%以上80%未満(本発明において実用下限レベル)。
D:耐久後の画像濃度維持率が60%以上70%未満(本発明において実用不可レベル)。
E:耐久後の画像濃度維持率が60%未満。
【0152】
<カブリ>
上記画像評価に続いて、耐久後のベタ白画像を印字し、以下の基準で判断した。印字しない紙の6点の平均反射率Dr(%)と、印字した紙の6点の平均反射率Ds(%)とを、リフレクトメータ(東京電色株式会社製の「REFLECTOMETER MODEL TC−6DS」)によって測定し、カブリ率(%)を求めた。
カブリ率(%)=Dr(%)−Ds(%)
A:カブリ率が0.5%未満(非常に良好)
B:カブリ率が0.5以上1.0%未満(良好)
C:カブリ率が1.0以上2.0%未満(本発明において実用下限レベル)
D:カブリ率が2.0以上3.0%未満(本発明において実用不可レベル)
E:カブリ率が3.0%以上(目視で解るレベル)。
【0153】
<クリーニング不良>
上記画像評価に続いて、耐久後のゴースト画像を印字し、以下の基準で判断した。尚、ゴースト画像は現像スリーブの1周目に相当する画像領域に2cm×2cmのベタ画像を印字し、現像スリーブ2周目以降に相当する画像領域にハーフトーン画像を印字した。その際、現像スリーブ2周目以降に相当するハーフトーン領域に、現像スリーブ1周目の画像履歴が残り、濃度差が生じたどうか濃度計X−Rite500型により濃度測定を行い、以下の基準で判断した。
A:ハーフトーン領域に濃度差が、0.01未満。
B:ハーフトーン領域の濃度差が、0.01以上0.03未満。
C:ハーフトーン領域の濃度差が、0.03以上0.05未満(本発明において実用下限レベル)。
D:ハーフトーン領域の濃度差が、0.05以上0.10未満(本発明において実用不可レベル)。
E:ハーフトーン領域の濃度差が、0.10以上。
【0154】
<画像濃度ムラ>
上記画像評価に続いて、耐久後のハーフトーン画像を印字するとともに、耐久後の現像装置を取り出し、現像スリーブ上のトナーコート層を目視で観察し、コートスジを以下の基準で判断した。
A:トナーコート層及びハーフトーン画像上にも、スジが全く無い。
B:トナーコート層に軽微にスジがあるが、ハーフトーン画像上には、スジが無い。
C:トナーコート層にスジがあるが、ハーフトーン画像上は軽微なスジである(本発明において実用下限レベル)。
D:トナーコート層にスジがり、ハーフトーン画像上にもスジが確認できる(本発明において実用不可レベル)。
E:トナーコート層及びハーフトーン画像上にも、スジがある。
【0155】
<耐久後画像流れ>
上記画像評価に続いて、耐久後のハーフトーン画像を印字するとともに、耐久後の現像装置を取り出し、現像スリーブ上のトナーコート層を目視で観察し、コートスジを以下の基準で判断した。
A:トナーコート層及びハーフトーン画像上にも、スジが全く無い。
B:トナーコート層に軽微にスジがあるが、ハーフトーン画像上には、スジが無い。
C:トナーコート層にスジがあるが、ハーフトーン画像上は軽微なスジである(本発明において実用下限レベル)。
D:トナーコート層にスジがり、ハーフトーン画像上にもスジが確認できる(本発明において実用不可レベル)。
E:トナーコート層及びハーフトーン画像上にも、スジがある。
【0156】
【表4】

【符号の説明】
【0157】
1:ケーシング、2:回転体、3、3a、3b:撹拌羽根、d:撹拌羽根の周方向の重なり部分、4:ジャケット、5:投入口、6:排出口、7:支持体、8:駆動部、9:処理空間、101:トナー粒子、102:オートフィーダー、103:供給ノズル、104:表面改質装置内部、105:熱風導入口、106:冷風導入口、107:表面改質されたトナー粒子、108:サイクロン、109:ブロワー、301:静電潜像担時体(感光体)、302:現像剤層厚規制部材(現像ブレード)、303:現像剤容器、304:現像剤、305:マグネットローラ、306:金属円筒管、307:樹脂被覆層、308:現像剤担持体(現像スリーブ)、309、310:撹拌翼、311:供給スクリュー、312:撹拌壁、313:高圧電源、A:現像スリーブ回転方向、B:感光体回転方向、C:撹拌翼回転方向、D:現像領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂と離型剤を含有するトナー粒子と無機微粒子とを有するトナーであって、
該無機微粒子は、真比重が4.5g/cm3以上であり、1次粒子の個数平均粒径が30nm以上300nm以下であり、
該無機微粒子が重量平均分子量300以上3000以下の炭化水素化合物によって、該無機微粒子100質量部に対して0.1質量部以上30.0質量部以下の割合で処理されていることを特徴とするトナー。
【請求項2】
該無機微粒子は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及びセリウムから選ばれる1種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
該無機微粒子は、粒子形状が立方体状及び/または直方体状であることを特徴とする請求項1または2に記載のトナー。
【請求項4】
該無機微粒子は、ペロブスカイト型結晶構造を有する無機微粒子であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項5】
該無機微粒子が、炭化水素化合物及びアルコキシシラン化合物で処理されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項6】
該離型剤が、炭化水素系ワックスであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のトナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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