説明

トラッキング装置

【目的】 物体搬送システムの立下げの後立上げるときの、物体位置とトラッキング情報の整合性を高くする。
【構成】 不揮発性メモリ(27),停止時にカウント手段(18)にロ−ドしているプリセット値(A1)およびカウント値(B1)を不揮発性メモリ(27)に書込み、搬送ラインのトラッキングを行なう再起動時に不揮発性メモリ(27)よりデ−タ(A1),(B1)を読出すデ−タ保持制御手段(24,34)、および、読み出されたデ−タ(A1),(B1)ならびにカウント手段(18)の現カウント値(B2)に対応して、先の停止時のプリセット値(A1)とカウント値(B1)との差(A1-B1)に現カウント値(B2)を加えたA2=A1-B1+B2をカウンタ(18)にプリセットし、トラッキング情報を、読み出されたカウント値(B1)と現カウント値(B2)の差(B1-B2)だけ修正する修正手段(24)、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、物体の位置追跡に関し、特に、物体を搬送しつつ搬送ライン上で該物体に一種又は数種の処理を実施する連続処理ラインで、該処理を物体位置に合せてタイミング良く実施するための位置追跡に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、圧延機で圧延した鋼板(ストリップ)には、スケ−ルの除去,焼鈍,表面処理,洗浄,乾燥等各種の処理が行なわれ、各種の処理を連続して行なう連続処理ラインが用いられる。連続処理ラインには、例えば図1に示すように、ストリップ1を、入側のペイオフリ−ル(POR)2から払出して溶接機3で先行のストリップと接続して送り込む。ストリップ1は連続処理ライン上で処理,加工を受けて、出側の捲取リ−ル(TR)4に捲取られるが、連続処理ラインで一体連続のストリップは、出側のシャ−5にて所要の長さ又は所定位置で分割される。ストリップ1の処理,加工を行なう中央部14bは、ライン速度が一定状態であるなど安定した状態が望ましいのに対し、入側部で溶接機3で行なう、先行材ストリップの尾端と後行材ストリップの先端との溶接は、両ストリップの尾端と先端を停止して行なう必要があるため、入側ル−パ6aが備わっている。溶接時には入側ル−パ6aが右方に移動しこれにより先行材ストリップの尾端が停止していてもストリップは中央部7に連続して移動する。また、出側部でのシャ−5によるストリップの切断,捲取コイルの抜き取りあるいは製品検査等の為に出側でストリップを停止または減速するときには、出側ル−パ6bが左方に移動しこれによりストリップの先頭が停止していてもストリップは中央部14bより連続して搬出される。
【0003】連続処理ライン上でのストリップの位置追跡すなわちトラッキングの観点からライン全体を見ると、入側部(ペイオフリ−ル2,溶接機3,ブライドルロ−ル8a),入側ル−パ6a,中央部(入側ブライドルロ−ル8b,各種処理部14b,出側ブライドルロ−ル8c),出側ル−パ6bおよび出側部(出側ブライドルロ−ル8d,シャ−5,捲取リ−ル4)に区分することができる。トラッキングは、入側で溶接した溶接点を追跡し、該溶接点の処理ライン上の位置より、処理ライン上の各設備にストリップのどの部分があるかを認識する。このためブライドルロ−ル8a〜8dの、ストリップとロ−ルが長い接触長を持つように巻き付けた各2〜4本のロ−ルの1つにPLG(パルス発生器)が結合され、PLGが発生するパルスをカウントすることによりストリップ1の進行した長さを計測する。測定精度向上のために、溶接点を検出するためのセンサ14が設置され、処理ラインの基準点からセンサ14までのストリップ長を予め計測しておき、センサ14が溶接点を検知したときにカウント値(計測値)の補正を行なう。ストリップ1上に複数個の点(仮想点:トラッキングポイント)を定めて、図3に示すように、各点の位置情報をメモリ(デ−タテ−ブル:図3中の「トラッキングポイント51の現在位置の欄)に記憶し、測定精度が問題とならない程度の充分に短い固定周期で測定したPLGのパルス数でデ−タテ−ブル上の各点の位置情報を更新し、各点が所定の設備に到達する毎に該設備による処理のための制御を行なうポイント・トラッキング方式が知られている。
【0004】しかし、固定周期でストリップの移動量を計測するには適さないコンピュ−タ(プロコン)では、大量のトラッキングポイントを、割り込みイベントでの起動でトラッキングできる方式のゾ−ントラッキング方式が考案されている。ゾ−ントラッキング方式は、例えば図4に示すように、処理ラインを予めゾ−ン分割する。例えば、ル−パ部を1ゾ−ンにすることを制約条件にして、ライン全長を適当な長さに分割し、ル−パゾ−ンやペイオフリ−ル,捲取リ−ル以外のゾ−ン長は固定長とする。溶接機から各ゾ−ンの始点までの長さはル−パのル−プカ−の位置が決まれば確定する。即ち、溶接点が溶接完了後移動し始める時の入側ル−パ6a内のストリップの長さを測定すれば、入側ル−パ出側位置までの長さは確定し、その長さ分だけル−パ出側のストリップが進行すれば、溶接点がル−パ出側位置に到達したことを知ることができる。また、ル−パ出側位置を基準位置と見れば、それより下流側のゾ−ン(61−4以降)の先頭位置はル−パ内のストリップ長さに関係ない固定した位置になる。更に、そのゾ−ンの始点または終点を基準位置と見れば、ゾ−ンの中にあるトラッキング・ポイントは基準位置からの長さで表わされるので、ル−パ内のストリップ長さに関係ない位置で表わすことができる。また、入側ル−パ内のトラッキング・ポイントもそのゾ−ンの終点からの位置で表わせば、ル−パ内のストリップ長さに関係ない位置で表わすことができる。即ち、設備内の全てのトラッキング・ポイントは、ゾ−ン始点(または終点)の基準位置からの長さ(相対的な値)により絶対的な位置(設備上の位置)として認識できる。
【0005】大量のトラッキング・ポイントをトラッキングするために、まず、トラッキングする点の種類を性格別に分類する。溶接点のように物理的にストリップ内の位置が確定している点(仮に点種別Aと呼ぶ)や、設定制御を変更する点や注文上の管理項目が変わる点で特別な処理を行なう様設計されている点のようにストリップ内の位置が製造命令情報から予定で決まっている点(同じく点種別B)、出側で分割する点のように溶接時には位置未確定の点(同じく点種別C)、前工程からの参考情報のように位置は決まっていても、その点以外の点の通過でデ−タを提供できれば良い点(同じく点種別D)などに分類する。トラッキングする必要の無い点はトラッキング・ポイントから除外する。点種別A,Bからトラッキング対象の基本的な点として選択し、その同一点種別間を線情報(以下仮に線情報と呼ぶ)としてゾ−ン間の移動を追跡する。その点を含めて全てのトラッキング・ポイントはこの線情報の先頭または尾端からの長さ(相対的な値)でその位置を表わすようにする。これにより、点種別C,Dを含めた全ての点をトラッキングすることができる。
【0006】以上により、線情報がトラッキング・ゾ−ン内を移動する絶対的な移動をトラッキングすれば、相対的な長さ計算を行なうことですべてのトラッキング・ポイントをトラッキングする事ができる。
【0007】ひとつのカウンタを用いて多くの制御すべき位置やデ−タ処理すべき位置にトラッキング・ポイントが到達したタイミングを割り込みイベントとして把握するために、パルス・スケジュ−ラ(プログラムでもたらされる機能)が用いられる。 生産管理用計算機(ビジコン)との大量デ−タ送受信や高度なモデル計算などを行う制御用計算機(プロコン)では、タスク当りの演算量が多く演算時間のバラツキも大きい特徴があるため、タスク間の切り替えは優先度処理付きの割り込み方式を取っている。即ち、タスクが演算を開始したら原則として演算終了まで継続して演算し、自タスクが入出力待ちになるか優先度の高い他タスクに対する割り込みイベントが発生したとき、自タスクは中断状態で待ち状態となる。入出力処理完了か自タスクより高い優先度のタスクの演算が終了すると、待ちを解除して中断したところから演算を継続するようにしている。従って、図2のように、カウンタを常時監視して目的の位置に到達したか否かは、プロコンの外部機構(プリセットカウンタ)として用意し、到達した時にプロコンに対し割り込みを入力する方式を取っている。そこで、イベント発生位置(例えば、制御デ−タ設定位置やデ−タ採取位置,次ゾ−ン開始位置など)をもとに、まず複数個取り付けられるPLG13とプリセットカウンタ18を割り振り、プリセットカウンタ毎に以下のパルススケジュ−ラテ−ブル20を用意する。図2には、全部を示していないが、図1に示す処理ラインに対して、PLG13,プリセットカウンタ18およびパルススケジュ−ラテ−ブル20を1組とするものが、合計4組備わっている。各組は、ブライドルロ−ル8a,8b,8cおよび8dのそれぞれに組合せられている。
【0008】あるタイミングで見ると、トラッキング・ポイントが現在居る位置がトラッキングゾ−ンの先頭または終点からの長さで分かっていれば、そのトラッキング・ポイントが次に処理したいイベント発生位置(処理設備を制御すべき位置)までの長さを計算できる。トラッキングはその長さをパルススケジュ−ラ19のテ−ブル20に登録して、その長さ分進行して到達したときに初めてトラッキングを起動してもらうようにし、到達した時の起動でトラッキング・ポイントが次にすべき処理をする。一つのパルススケジュ−ラテ−ブル20に登録されてくる長さは一つではなく、最大ではトラッキング・ポイントの数とイベント発生位置の数の積の数だけあり、大量にある。そのため、パルススケジュ−ラ19は、長さの小さい順に処理をして全ての長さに対する起動リクエストに答えられるようにしている。例えば、図4R>4のように、トラッキング・ポイント51−2が第5ゾ−ン61−5に到達してy2〔m〕後に処理2を実行するように設計されていれば、図5のように、トラッキング・ポイント51−2が第5ゾ−ン61−5に到達した時トラッキングが長さy2でパルススケジュ−ラ19にリクエストをかけ、パルススケジュ−ラ19は、その長さを含めてスケジュ−ラテ−ブル20(リクエストの待ち行列テ−ブル)のデ−タを小さい順に並び替え(昇順)、最も小さい値をプリセットカウント18にプリセットする(図2および図5の22)。または、ストリップの進行でカウントアップし、プリセット値に到達したとき、パルススケジュ−ラに対する割り込み(図2および図5の一致信号21)を発生する。パルススケジュ−ラ19は最も上位の長さ分だけ進行したと判断して該当の処理をするようにトラッキングタスクを理由付きで起動する(例えば、制御デ−タ設定タスクやデ−タ採取タスクの起動、次ゾ−ン到達時の処理など)。同時に、パルススケジュ−ラ19は、その到達長さ分進行したので、昇順に並べられている登録された長さのテ−ブル値から今回到達した長さ分を減算する。そして、その中での最小値を次のプリセット値としてプリセットカウンタ18にプリセットする。これを繰返して順次トラッキング・ポイントの処理すべきタスクタイミングを作り出していく。原理的にはこれで可能だが、この方式では、プリセットカウンタ18のカウント値がプリセット値に一致してからパルススケジュ−ラが割り込み入力を受けて次のプリセット値をプリセットするまでの処理に時間がかかり、その間もストリップは進行しているので、その分の処理時間遅れによる誤差が避けられず、かつ、その誤差は積算されていくために、ストリップが進行した正確な長さを得られなくなる。そこで図6に示すように、パルススケジュ−ラ19は、上記割り込み時に進行した長さを積算して行き、イニシャル以降の積算長(ロジカルカウント値71)を用いる。これは、割り込み時にプリセットした長さを前回までのロジカルカウントに足し込むため、誤差は無い。これは、ゾ−ン内の正確な位置を計算するに用い、パルススケジュ−ラ19への次回の到達位置要求の計算などに用いられる。また、トラッキング以外のソフトウェアにも提供し、正確な位置情報を得られるようにしている。このように、ひつとのパルススケジュ−ラ19を見ても、多くの長さのデ−タがトラッキングが初期化された時からの積算値を含めて、整合を保ちながらテ−ブルに保存されている。
【0009】連続処理ラインの自動設定は、溶接される前にラインで使用される設定値一式をプラントコントロ−ラ(PLC)32に設定する方式と、PLC32の設定制御で使用される直前に次の設定値を設定する方式があるが、図2に示すシステムは後者の方式の場合に相当する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】通常の連続制御では、次の設定値は必ずその設定値を使用する前に設定される(設定値を次スケジュ−ルと呼ぶ)が、定修立ち上げ時には、PLC32は現在の設定制御デ−タ(現スケジュ−ル)を初期化している場合が多く、その時点から自動制御を再開することは出来ず、オペレ−タによる手動運転、または、PLC32に設定値を直接指示する半自動運転を行っている。すなわち、上述のストリップの連続処理ラインでは、予防保全のためなどで、定期的に点検,修理(以下定修と称す)を行い、その間生産を一時的に中断する。定修中にプログラムの修正などを行い、デバッグのためにシミュレ−ションを行うことによって、定修直後は、トラッキングを含めたプロコンの内容情報が定修直前と異なっていることが多く、プロコン内のトラッキングデ−タ他を一式初期化するなどの処置をしてプロコンおよび処理システムを再起動(立上げ)することが多い。単純に、システム立下げ前の状態にコンピュ−タを復元すれば良い分野においては、システム停止(立下げ)前にコンピュ−タの揮発性メモリの内容を不揮発性メモリに保存しておき、システム立上げ時には、不揮発性メモリに保存していた内容を読出して揮発性メモリに復元することによりシステム立下げ時の状態に戻すことは容易である。しかし、これはコンピュ−タの内部のみで全てのデ−タを復元できる単体で閉じた情報の場合である。一方、特公昭64−2535号公報には、自動車に乗った時に、過去のドライビングポジションの調整結果デ−タの中から予め決められた判別指標をもとに運転者の該当のデ−タを、現在のドライビングポジション値を無視して上書き設定するポジション設定方式が提示されている。これは、復元されるデ−タが現在値を無視して良い場合には有効であるが、上述のようなストリップ処理システムの立下げと立上げの間のトラッキング情報の継続性を得るために利用することはできない。上述の処理システムや他のファクトリオ−トメ−ション(FA)等のシステムで、上述の処理システムのように、トラッキング対象物体が連続体の場合には、各部(トラッキング・ポイント)の各種処理の処理順および処理時間が密接に関連しているため、内部デ−タ間の整合を保ちながら個々の位置と状態を合わせ込むことはオペレ−タの修正では非常に難しかった。また、一方では、定修後に連続処理ラインを立上げした時、燃焼設備の加熱準備などが必要であるなど即座に製品を造れる状態になっていないことが多かったことから、トラッキングの復元,即時制御開始のニ−ズも無いに等しかった。シ−ズ上は難かしく、ニ−ズ上は希薄であった。
【0011】ところが近年、冷間圧延の連続処理ライン,コ−ティングライン等が建設され、定修後の立上げから即時製造開始をして生産性の向上を望むニ−ズが顕在化してきた。即ち、定修開始時のシステム立下げ前の状態に制御システムを戻し、ライン内に残っているストリップから、定修直前と実質上連続に制御を開始できる機能が求められてきている。
【0012】定修後に即時開始できるラインでありながら即時製造開始できない理由は、トラッキングを現状の位置と一致させることが困難なためである。その理由は、定修中にプリセットパルスカウンタの電源が遮断されカウント値がゼロリセットされることがあるケ−スや、定修中の工事の都合で定修開始直後に連絡不徹底でプロコンがトラッキングしていない時にストリップを移動させてしまうなど、定修中の作業の影響が残ってトラッキングがずれる場合がある。また、プロコンのトラブルやトラッキング異常が発生した後のプロコンのトラッキングは初期化して次に溶接されたストリップからトラッキングを開始するのが一般的であったが、プロコンによる自動運転が定着してきているがため、すでにライン内にあるストリップから即時設定制御を開始したいというニ−ズが高まってきている。
【0013】本発明は、物体搬送システムの立下げの後立上げるときの、物体位置とトラッキング情報の整合性を高くすることを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、物体(1)の搬送速度に比例する周波数の電気パルスを発生するパルス発生器(13),該電気パルスをカウントするプリセットカウント手段(18),該プリセットカウント手段(18)にプリセット値をロ−ドし該プリセットカウント手段(18)がプリセット値のカウントを完了すると該プリセットカウント手段(18)に次のプリセット値をロ−ドするスケジュ−ラ(19)、および、該スケジュ−ラ(19)を制御して搬送ラインにおける物体の位置を追跡するトラッキング手段(23)を備えるトラッキング装置において、不揮発性メモリ(27),搬送ラインの停止時に、前記プリセットカウント手段(18)にロ−ドしているプリセット値(A1)および該プリセットカウント手段(18)のカウント値(B1)を該不揮発性メモリ(27)に書込み、搬送ラインのトラッキングを行なう再起動時に該不揮発性メモリ(27)よりプリセット値(A1)およびカウント値(B1)を読出すデ−タ保持制御手段(24,34)、および、読み出されたプリセット値(A1)およびカウント値(B1)ならびに前記プリセットカウント手段(18)の現カウント値(B2)に対応して、搬送ラインの前記停止時のプリセット値(A1)とカウント値(B1)との差(A1-B1)に現カウント値(B2)を加えたプリセット値(A2=A1-B1+B2)を該プリセットカウンタ(18)にロ−ドし、トラッキング手段(23)の追跡位置情報(トラッキング情報)を、読み出されたカウント値(B1)と現カウント値(B2)の差(B1-B2)だけ修正する再起動値修正手段(24)、を備えることを特徴とする。
【0015】
【作用】搬送ラインの停止時から再起動時までに物体の位置が変化していない場合には、停止時のプリセット値(A1)とカウント値(B1)との差(A1-B1)は、プリセットカウンタ(18)がプリセット値のカウントを完了する(イベントを発生させる)までの所要残り移動長である。再起動値修正手段(24)が、差(A1-B1)に現カウント値(B2)を加えたプリセット値(A2=A1-B1+B2)を該プリセットカウンタ(18)にロ−ドするので、再起動後は、物体が差(A1-B1)分の移動の後に、プリセットカウンタ(18)がプリセット値のカウントを完了する(イベントを発生させる)。すなわち、搬送ラインの停止時と実質上連続な形で、プリセットカウンタ(18)がプリセット値のカウントを完了する(イベントを発生させる)。また、再起動値修正手段(24)が、追跡位置情報(トラッキング情報)を、読み出されたカウント値(B1)と現カウント値(B2)の差(B1-B2)だけ修正するので、トラッキング情報も搬送ラインの停止時と実質上連続なものとなる。したがって、搬送ラインの停止時から再起動時までにプリセットカウンタのプリセット値(ロ−ド値)あるいはカウント値が、例えば初期化などにより、停止時とは異った値になっても、搬送ラインの停止時と実質上連続な形でイベントが発生し、かつ、物体位置と整合するトラッキング情報が発生される。
【0016】搬送ライン再起動時の物体の位置が、停止時の位置とずれていると、上述の再起動値修正によっても、物体に対する処理位置ずれを生ずる。そこで本発明の好ましい実施例は、再起動値修正手段(24)が修正した追跡位置情報(トラッキング情報)を表示する表示手段(29),オペレ−タの修正情報を入力するための入力装置(29)、および、該入力装置(29)より入力された修正情報に基づいてプリセットカウンタ(18)にロ−ドするプリセット値およびトラッキング手段(23)の追跡位置情報(トラッキング情報)を修正する手段(24)、を更に備える。これによれば、物体の位置ずれがあるときその分をオペレ−タが入力装置(29)に入力すると、トラッキング情報が物体の現位置を表わすものとなり、搬送ラインの停止時から再起動時までにプリセットカウンタのプリセット値(ロ−ド値)あるいはカウント値が、例えば初期化などにより、停止時とは異った値になっても、また物体位置がずれていても、搬送ラインの停止時と実質上連続な形で物体位置に整合してイベントが発生し、かつ、物体位置と整合するトラッキング情報が発生される。
【0017】
【実施例】図1に本発明の一実施例が適用されるストリップ処理ラインを示し、図2に該処理ラインに結合した本発明の一実施例を示す。なお、図2には、入側ブライドルロ−ル8aに結合した、スケジュ−ラテ−ブル20,プリセットカウンタ18およびPLG13の組合せ、のみを示すが、この組合せと同様なものが他に3組ありこれらはそれぞれブライドルロ−ル8b,8cおよび8dに結合されている。以下、入側ブライドルロ−ル8aに結合した組のものを主体に説明する。他の組のものも同様である。図2において「揮発性メモリ」と題字を付した上段ブロックはプロコン31であり、「電気PLC群」と付した下段ブロックは、プラントコントロ−ラ(ディスクリ−ト電気回路,CPU等でなる電気制御回路)32である。
【0018】まず概要を説明すると、図1に示す処理ラインが停止する毎に、プロコン31のトラッキング合わせ(プログラムによる合わせ機能)24が、トラッキング用プリセットカウンタ18のプリセット値17(A1)とカウント値16(B1)をプロコン31内の揮発性メモリ又は不揮発性メモリ27にセ−ブする。そしてシステム立下げ(プロコン31をシステム制御系から電気的に分離又はプロコン31の電源オフ)時にはその直前に、揮発性メモリにセ−ブしているデ−タを不揮発性メモリ27に書込む。システム立上げ時には不揮発性メモリ27からデ−タを読出して揮発性メモリに書込み、そしてシステム立下げ前の状態に戻すようにプリセットカウンタ18をプリセットししかもトラッキング情報を修正する。そして、次の場合は更に以下の対応処置を行なう。
【0019】(1) トラッキング用プリセットカウンタ18がシステム立下げ中にリセットなどで値が変化している場合:最後に記憶されている停止時のプリセットカウンタ18のプリセット値17(A1)とカウント値16(B1)、即ち、立下げ前の値を強制的に設定するか、カウンタ18を他の用途にも用いているなどで設定することが出来ない場合またはしない場合は、システム立下げ前と立上げ時のカウンタの値の差(B1−B2)を求めて、差(B1−B2)に相当する長さ分のプリセット(A2=A1−B1+B2)を行って一致信号が発生(プリセット値=カウント値)すると、プリセット値A1のときに一致信号に応じて行なう処理と同一の処理を行ない、しかも、プリセット(A2)と共に、トラッキング情報も差(B1−B2)分補正する。(2) トラッキング対象物であるストリップ1がシステム立下げ中に移動している場合:ストリップ1が移動した後の位置をオペレ−タが把握して移動量または修正後の位置をトラッキング23に入力し、その位置までトラッキング情報を進める。トラッキング合せ24はその時にPLG13が発生するパルス数を計数し、プリセットカウンタにセットして一致信号を発生させたのと同一のトラッキング処理を行って、トラッキングを進行させ合わせる。トラッキングが正しい状態となれば、既にその位置にあるストリップの設定値を計算し設定すれば(即設定と呼ぶ)、即時、制御を開始できる。
【0020】次に詳細に説明する。
(1) 中央部停止信号23が発生するとプロコン31は、図7に示すように、プリセットカウンタ18のプリセット値(ロ−ド値)A1とカウンタ18のカウント値B1、ならびにその他所要のデ−タを揮発性メモリ又は不揮発性メモリにセ−ブする。そして、図8に示すように、プロコン31の立下げ直前に、プリセット値A1およびカウント値B1ならびに揮発性メモリ上の他の所要のデ−タを不揮発性メモリ27に書込む。
【0021】そしてプロコン31の立上げ時に、図9に示すように、不揮発性メモリ27から揮発性メモリ上にデ−タを復元し、プロコン31の立下げ時の状態に戻す。ストリップ1が立下げ中に移動していないが、トラッキング用プリセットカウンタ18がシステム立下げ中にリセットなどで値が変化している場合には、最後に記憶されている停止時のプリセット値A1(17)とカウント値B1(16)をプリセットカウンタ18に強制的に上書きで設定するか、カウンタ18を他の用途にも用いているためなどで設定することが出来ない場合は、システム立下げ前と立上げ時のカウンタ値B2の差B1−B2を求めて、差B1−B2に該当する長さ分のプリセットA2を行って一致信号が発生したのと同一の処理を行って、トラッキングの内部デ−タを修正する。
【0022】すなわち、システム立下げ前のプリセット値をA1とし、カウント値をB1とする。立上げ時にもカウント値を読込みB2とする。立上げ時にB1とB2の値が異なっていれば、プリセットカウンタ18のプリセット値A2は、A2=A1−(B1−B2)
とすると共に、パルススケジュ−ラテ−ブル20の全ての値を(B1−B2)だけ減算し、(B1−B2)に相当する長さ分のトラッキングを進行させる。これにより、(B1−B2)相当のプリセットをパルスカウンタに対し行い、その一致信号を入力したことに相当させる。プリセットカウンタ18のカウント値を強制的に変更せずに可能である。
【0023】(2) ストリップ1が、システム立下げ中に移動している場合には、図9に示す「トラッキング修正」を実行する。この内容を図10に示す。上記(1)の後(オペレ−タが図9のステップ97の表示を見て、更に)、ストリップ1の移動位置をオペレ−タが把握して移動量(ずれ量)又はストリップ1の現位置対応のトラッキング位置をプロコン31に入力し、プロコン31のトラッキング合わせ24が、トラッキング情報をストリップ1の現位置対応のものに変更する。すなわち、トラッキング合わせ24は、ストリップ1の移動量(ずれ量)をゾ−ン長とゾ−ン内位置の長さに分解し、ゾ−ン間の移動、ゾ−ン内の移動の順番でトラッキング情報を修正する。スケジュ−ラ19と組合せて、プリセットカウンタ18にセットして一致信号を発生させたのと同一のトラッキング処理を行って、トラッキングを進行させ合わせるようにする。具体的には、プリセットカウンタ18のプリセット値A3を、A3=A2−(移動量に相当するカウント値)
とすると共に、スケジュ−ラテ−ブル20の全ての値を「移動量に相当するカウント値」だけ減算し、移動量分のトラッキングを進行させる。トラッキング合わせが終了したとき、スケジュ−ラテ−ブル20の最小値をプリセットカウンタ18にプリセットする。
【0024】(3) 即設定(図9のステップ99〜102&図10のステップ124〜127): 上記(1),(2)により、現在の設定値を復元されたトラッキングを正として新たに計算し直し、プロコン31から電気計装PLC32に設定する(即設定(26)と呼ぶ)。その時、設定値の中に制御変更する位置を示す長さデ−タがあれば、修正されたトラッキングを基に制御変更する位置までの長さデ−タを新たな計算により求めて設定する。
【0025】
【発明の効果】システム立上げと同時にシステム立下げ時のトラッキングが復元されるので、システム立上げ時の設定制御が即時にできる。これによりシステム立上げから制御開始までの間の歩留向上,生産性向上,トラブル減少,生産原単位向上をはかることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例を適用するストリップ連続処理ラインを示すブロック図である。
【図2】 図1に示すストリップ連続処理ラインに適用する本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図3】 従来のポイント・トラッキング方式を図1に示すストリップ処理ラインに適用した場合の、トラッキングと処理との関係を示すブロック図である。
【図4】 図1に示すストリップ連続処理ラインのゾ−ン分割と、各ゾ−ンにおける処理の割当てを示すブロック図である。
【図5】 図2に示すプリセットカウンタ18のプリセットタイミングとプリセット値のカウント完了タイミングの関係を示すブロック図である。
【図6】 図2に示すプリセットカウンタ18のプリセット値の時系列推移を示すグラフである。
【図7】 図2に示すプロコン31の、図1に示す処理ラインの中央部停止信号23に応答したデ−タセ−ブ処理を示すフロ−チャ−トである。
【図8】 図2に示すプロコン31の、自己の立下げ時の、立下げ直前に行なうデ−タ転送処理を示すフロ−チャ−トである。
【図9】 図2に示すプロコン31の、自己の立上げ時のデ−タ設定処理を示すフロ−チャ−トである。
【図10】 図9に示す「トラッキング修正」の内容を示すフロ−チャ−トである。
【符号の説明】
1:ストリップ 2:ペイオフリ−ル
3:溶接機 4:捲取リ−ル
5:出側シャ− 6:ル−パ
8:ブライドルロ−ル 12:モ−タ
13:パルス発生器 14:溶接点センサ
18:プリセットカウンタ 27:不揮発性メモリ
28:運転用CRT&操作ボ−ド 29:プロコン用CRT&入力ボ−ド
31:プロコン 32:プロセスラインコントロ−ラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】物体の搬送速度に比例する周波数の電気パルスを発生するパルス発生器,該電気パルスをカウントするプリセットカウント手段,該プリセットカウント手段にプリセット値をロ−ドし該プリセットカウント手段がプリセット値のカウントを完了すると該プリセットカウント手段に次のプリセット値をロ−ドするスケジュ−ラ、および、該スケジュ−ラを制御して搬送ラインにおける物体の位置を追跡するトラッキング手段を備えるトラッキング装置において、不揮発性メモリ,搬送ラインの停止時に、前記プリセットカウント手段にロ−ドしているプリセット値および該プリセットカウント手段のカウント値を該不揮発性メモリに書込み、搬送ラインのトラッキングを行なう再起動時には該不揮発性メモリよりプリセット値およびカウント値を読出すデ−タ保持制御手段、および、読み出されたプリセット値およびカウント値ならびに前記プリセットカウント手段の現カウント値に対応して、搬送ラインの前記停止時のプリセット値とカウント値との差に現カウント値を加えたプリセット値を該プリセットカウンタにロ−ドし、トラッキング手段の追跡位置情報を、読み出されたカウント値と現カウント値の差だけ修正する再起動値修正手段、を備えることを特徴とするトラッキング装置。
【請求項2】再起動値修正手段が修正した追跡位置情報を表示する表示手段,オペレ−タの修正情報を入力するための入力装置、および、該入力装置より入力された修正情報に基づいてプリセットカウンタにロ−ドするプリセット値およびトラッキング手段の追跡位置情報を修正する手段、を更に備えるトラッキング装置。

【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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