説明

トラック後部の扉装置及びトラック後部扉の接車構造

【課題】 トラックの荷物室後部を、建造物の荷物用開口部に接車した状態で、荷物室後部に設けられている内側扉を開閉できるようにして、荷物室に対する荷物の搬出入の際に、運転手がトラックに乗降する回数を低減すること。
【解決手段】 トラック荷物室10の後部開口部10aを開閉するための左扉14及び右扉14を備え、左扉14及び右扉14のそれぞれは、第1ヒンジ15を介して互いに連結する内側扉12、12及び外側扉16、16を有し、それぞれの外側扉16、16が荷物室10の開口枠部に第2ヒンジ17を介して連結するトラック後部の扉装置8であって、荷物室10の後部面のうち、左右一対の内側扉12、12の外側に形成されている一対の外側扉16、16と、左右一対の内側扉12、12の上方及び下方に設けられている上側枠体18及び下側枠体19とが建造物の荷物用開口部の周囲部分に設けられているパッド21と当接可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトラックの荷物室後部を、建造物に設けられている荷物搬出入口等に接車した状態で、荷物室後部に設けられている内側扉を開閉することができるトラック後部の扉装置、及びトラック後部扉の接車構造に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック後部の扉装置(以下、単に「扉装置」と言うこともある。)として、例えば図16に示すものがある(例えば、特許文献1参照。)。この扉装置1は、トラック2の荷物室3の後部に設けられ、左右両開きの左扉4及び右扉4を備えている。これら左扉4及び右扉4は、それぞれヒンジ5、・・・を介して、荷物室3の後部開口枠部に開閉自在に設けられている。
【0003】
例えば、このトラック2の荷物室3に積載されている荷物を倉庫6内に搬入する場合は、図17に示すように、まず、運転手が左扉4及び右扉4を開いた状態にする。そして、トラック2を後退させて、トラック荷物室3の後部開口部3aを倉庫6の荷物搬出入口6aに接車させる(図示せず)。この接車した状態で、トラック荷物室3内の荷物を荷物搬出入口6aに通して倉庫6内に搬入することができる。
【0004】
また、倉庫6内に保管されている荷物をトラック2の荷物室3内に積み込むときは、上記と同様に、運転手が左扉4及び右扉4を開いた状態にして、トラック荷物室3の後部開口部3aを倉庫6の荷物搬出入口6aに接車させる。この状態で、倉庫6内の荷物をトラック2の荷物室3内に積み込むことができる。図17に示す7は、クッションパッドである。このクッションパッド7は、トラック2の荷物室後部と倉庫6の荷物搬出入口6aとの接触の際の衝撃を緩和するためのものである。
【0005】
なお、図17に示すように、トラック2の荷物室後部開口部3aを倉庫6の荷物搬出入口6aに接車させて、荷物を倉庫6内に運び込むときに、トラック2の荷物室後部に設けられている左扉4及び右扉4を開放するのは、左右の扉4、4を閉じた状態で荷物室後部を倉庫6の荷物搬出入口6aに接車すると、左右の扉4、4を開けることができないからである。つまり、図16に示すように、荷物室後部面の全体が左扉4及び右扉4で形成されていて、この左右の各扉4、4が荷物搬出入口6aのクッションパッド7に当接するからである。
【特許文献1】特開2004−203301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図17に示す従来のトラック後部の扉装置1では、トラック2の後部開口部3aを倉庫6の荷物搬出入口6aに接車する前に、予め、左右の各扉4、4を開放する必要があるので、これらの扉4、4を開放したときに、外気や雨水等がトラック2の荷物室後部開口部3aから荷物室3内に入り込むことがある。
【0007】
そして、運転手は、トラック2の後部開口部3aを倉庫6の荷物搬出入口6aに接車する前に、トラック2から降りて、左右の各扉4、4を開く必要がある。また、トラック2の後部開口部3aを倉庫6の荷物搬出入口6aから引き離した後にも、トラック2から降りて、左右の各扉4、4を閉じる必要がある。よって、運転手は、トラック2の乗降に手間が掛かるし、その際に雨に濡れることがある。
【0008】
また、左右の各扉4、4を開いた状態にして、トラック2を後退させて、トラック荷物室3の後部開口部3aを倉庫6の荷物搬出入口6aに接車させる際に、開放状態の各扉4、4が別のトラックや建造物に接触する可能性もある。更に、例えばトラック荷物室3が冷凍室又は保冷室として構成されている場合は、積載されている冷凍食品等の温度が外気の進入によって上昇することがある。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、トラックの荷物室後部を、建造物に設けられている荷物用開口部に接車した状態で、荷物室後部に設けられている内側扉を開閉することができるようにして、荷物室に対する荷物の搬出入の際に、運転手がトラックに乗降する回数を低減することができ、荷物室内に外気や雨水が進入することを防止できるトラック後部の扉装置、及びトラック後部扉の接車構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るトラック後部の扉装置は、トラック荷物室の後部開口部を開閉するための左右両開きの左扉及び右扉を備え、これら左扉及び右扉のそれぞれは、第1ヒンジを介して互いに連結する内側扉及び外側扉を有し、それぞれの外側扉が前記荷物室の開口枠部に第2ヒンジを介して連結するトラック後部の扉装置であって、前記荷物室の後部面のうち、前記左右一対の内側扉の外側に形成されている環状部分が建造物に設けられている荷物用開口部の周囲部分と当接可能な構成としたことを特徴とするものである。
【0011】
この発明に係るトラック後部の扉装置によると、トラックの荷物室後部を建造物に設けられている荷物用開口部に接車するときは、左扉及び右扉を閉じた状態にして、トラック荷物室の後部を建造物の荷物用開口部に接車させることができる。ここで、荷物用開口部の周囲部分に、例えばパッドを設けることによって、トラック荷物室後部を建造物の荷物用開口部に対して、パッドを介して接車することができる。この接車した状態で、トラックの荷物室後部面のうち、左右一対の内側扉の外側に形成されている環状部分が、建造物の荷物用開口部の周囲部分に設けられているパッドと当接することとなる。従って、この接車した状態で、左右の各扉に設けられている一対の内側扉を開放することができ、よって、トラック荷物室内の荷物を建造物内に搬入できるし、建造物内の荷物をトラック荷物室内に搬入できる。
【0012】
そして、建造物の荷物用開口部に接車するトラックの荷物室後部を、この荷物用開口部から引き離すときは、トラックの荷物室後部が建造物の荷物用開口部に接車する状態で、トラック荷物室の後部開口部を左扉及び右扉で閉じることができる(一対の内側扉も閉じた状態にする。)。しかる後に、トラックを移動させて、トラックの荷物室後部を建造物の荷物用開口部から引き離すことができる。
【0013】
また、一対の内側扉を開閉できる構成としたことによって、例えば1枚の内側扉を開閉できるようにした場合と比較して、内側扉の横幅をそれよりも狭くすることができる。つまり、一対の各内側扉の横幅を比較的広くしても、1枚の内側扉を使用する場合と比較して、各内側扉の建造物内における開閉スペースがあまり広くならないようにすることができる。よって、この一対の各内側扉の横幅を比較的広くして、一対の内側扉を開放したときに形成されるトラック側荷物用開口部の横幅を比較的大きくすることができる。その結果、トラック側荷物用開口部に例えば横幅の広いパレットが通るようにすることができる。
【0014】
そして、この発明に係るトラック後部の扉装置において、前記荷物室を、低温室とすることができる。このようにすると、上記のように、トラックの荷物室後部を建造物の荷物用開口部に対して、接車するときや引き離すときに、例えば比較的温度の高い外気がトラックの荷物室内に入り込むことを防止できるので、荷物室内の低温で管理されている荷物の温度上昇を防止することができる。
【0015】
また、この発明に係るトラック後部の扉装置において、前記荷物室の後部面に形成されている前記環状部分が、前記左右一対の外側扉と、前記左右一対の内側扉の上方及び下方に設けられている上側枠体及び下側枠体とから成るようにすることができる。このようにすると、トラックの荷物室後部が建造物の荷物用開口部に接車した状態では、左右一対の外側扉を開閉することができないが、トラックの荷物室後部を建造物の荷物用開口部から引き離した状態では、この左右一対の外側扉を開閉することができる。よって、トラックの荷物室後部面に対して、比較的横幅方向に広い開口部を形成することができる。
【0016】
この発明に係るトラック後部扉の接車構造は、この発明のトラック後部の扉装置に形成されている前記環状部分が、前記建造物の前記荷物用開口部の周囲部分を構成するドックシェルターのパッドに当接可能であることを特徴とするものである。このトラック後部扉の接車構造によると、トラックの荷物室後部が建造物の荷物用開口部に接車した状態では、トラックの荷物室後部面に形成されている環状部分を、建造物の荷物用開口部の周囲部分を構成するドックシェルターのパッドに当接させることができる。
【0017】
そして、この発明に係るトラック後部扉の接車構造において、前記パッドが、封止機能及び衝撃吸収機能を有するものとするのが好ましい。このようにすると、トラックの荷物室後部がパッドを介して建造物の荷物用開口部に接車する際に、このパッドによって、その接触部分を封止できるし、接触の際の衝撃を吸収することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係るトラック後部の扉装置によると、左扉及び右扉を閉じた状態で、トラックの荷物室後部を建造物の荷物用開口部に対して、接車したり引き離すことができるので、接車したり引き離す際に、トラックの後部開口部から外気や雨水等が荷物室内に入り込むことを防止できる。
【0019】
そして、トラックの荷物室後部を建造物の荷物用開口部に接車した状態で、左扉及び右扉を開閉することができるので、接車の前に、運転手は、トラックから降りて、左右の各扉を開く必要がないし、トラックの荷物室後部を建造物の荷物用開口部から引き離した後に、トラックから降りて、左右の各扉を閉じる必要もない。よって、運転手は、トラックを乗降する手間が掛からないし、雨に濡れることもない。
【0020】
また、左扉及び右扉を閉じた状態で、トラックの荷物室後部を建造物の荷物用開口部に接車することができるので、接車の際に、左右の各扉が別のトラックや建造物に接触することを防止できる。
【0021】
この発明に係るトラック後部扉の接車構造によると、上記のようにして接車したときに、ドックシェルターのパッドによって、接触部分から外気等が荷物室や建造物内に進入することを防止できるようにすることができる。そして、このパッドによって、接車の際の衝撃を吸収して、建造物やトラックの損傷を防止できるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係るトラック後部の扉装置(以下、単に「扉装置」と言うこともある。)、及びこの扉装置を適用したトラック後部扉の接車構造の一実施形態を図1〜図15を参照して説明する。このトラック後部の扉装置8は、図5に示すように、トラック9の荷物室10の後部が建造物(例えば冷凍倉庫又は保冷倉庫)11の荷物用開口部(例えば荷物搬出入口)11aに接車した状態で、荷物室10の後部に設けられている一対の内側扉12、12を開閉することができるようにしたものである。そして、トラック後部扉の接車構造13は、このトラック後部の扉装置8が、上記のようにして建造物11の荷物用開口部11aに接車できるようにすると共に、例えば接車の際の衝撃を吸収したり、接触部分からの外気等の進入を防止できるようにするものである。
【0023】
トラック9は、図5に示すように、荷台に略直方体の箱状の荷物室10が設けられているものである。そして、図1に示すように、この荷物室10の後部面には、荷物を搬出入するための開口部10aが形成されており、この開口部10aに対してトラック後部の扉装置8が設けられている。なお、荷物室10は、例えば冷凍室又は保冷室等の低温室として構成されている。
【0024】
このトラック後部の扉装置8は、図1に示すように、荷物室10の後部開口部10aを開閉するための左右両開きの左扉14及び右扉14を備えている。これら一対の左扉14及び右扉14のそれぞれは、第1ヒンジ15、・・・を介して互いに揺動自在に連結する内側扉12及び外側扉16を有しており、それぞれの外側扉16、16が開口部10aを形成する左側枠体及び右側枠体(開口枠部)に第2ヒンジ17、・・・を介して揺動自在に連結している。そして、図1に示すように、閉じた状態の左扉14及び右扉14の上方及び下方には、上側枠体18及び下側枠体19が設けられている。この上側枠体18及び下側枠体19は、荷物室10及びトラック9の荷台に固定して設けられており、開口部10aの上縁及び下縁を形成している。
【0025】
つまり、図1に示す左右一対の外側扉16、16と、荷物室10の後部面の上下それぞれ設けられている上側枠体18及び下側枠体19とによって矩形の環状部分20が形成されている。この環状部分20は、図5に示す建造物11に設けられている荷物用開口部11aの周囲部分を構成するドックシェルターのパッド21と当接可能な形状及び寸法に形成されている。図2は、トラック荷物室10の後部面の環状部分20にパッド21が当接する状態を示す部分断面正面図であり、荷物室後部面を建造物11内から見た図である。
【0026】
パッド21は、略矩形の枠状体であり、ドックシェルターを形成するものである。そして、互いに左右方向に間隔を隔てて配置されている左側部材21a及び右側部材21bと、互いに上下方向に間隔を隔てて配置されている上側部材21c及び下側部材21dとを備えている。これらの各部材は、断面形状が略矩形に形成されている。パッド21は、例えばウレタンフォーム等の合成ゴム製であり、トラック荷物室10の後部面と当接した状態で、その接触部分を気密封止できると共に、この後部面との接触の際の衝撃を吸収することができる機能を備えている。
【0027】
図3は、トラック荷物室10の後部面の環状部分20にパッド21が当接した状態で、左右一対の内側扉12、12を開放した状態を示す正面図であり、トラック側荷物用開口部10bを建造物11内から見た図である。図4は、図3に示すトラック後部扉の接車構造13の横断面図である。そして、図6(a)は、トラック9を建造物11から引き離した状態において、一対の左扉14及び右扉14を閉じた状態を示す横断面図である。また、図6(b)に示すように、この状態から左右一対の内側扉12、12を開放することができる。更に、図6(c)に示すように、この状態から左右一対の外側扉16、16を開放することができる。図7は、一対の左扉14及び右扉14を閉じた状態を示す縦断面図である。
【0028】
上記のように構成されたトラック後部の扉装置8、及びこの扉装置8を適用したトラック後部扉の接車構造13によると、図5に示すように、トラック9の荷物室後部を建造物11に設けられている荷物用開口部11aに接車するときは、左扉14及び右扉14を閉じた状態にして(図1参照)、トラック9の荷物室10の後部を建造物11の荷物用開口部11aに接車することができる。この接車状態で、図2に示すように、トラック9の荷物室後部面のうち、左右一対の内側扉12、12の外側に形成されている環状部分20を、建造物11の荷物用開口部11aの周囲部分に設けられているパッド21に当接させることができる。よって、図3及び図4に示すように、この接車した状態で、左右の各扉14、14に設けられている一対の内側扉12、12を開放することができる。ただし、一対の外側扉16、16には、パッド21が当接しているので閉じた状態である。このように、接車状態で、一対の内側扉12、12を開放できるので、トラック荷物室10内の例えば冷凍食品等の荷物を、このトラック側荷物用開口部10b及び建造物側荷物用開口部11aに通して建造物(冷凍倉庫又は保冷倉庫)11内に搬入できるし、建造物11内の荷物をトラック荷物室10内に搬入できる。
【0029】
そして、建造物11の荷物用開口部11aに接車するトラック9の荷物室後部を、この荷物用開口部(パッド21)11aから引き離すときは、トラック9の荷物室後部が建造物11の荷物用開口部11aに接車する状態で、建造物側荷物用開口部11aを扉(図示せず)で閉めることができるし、トラック側荷物用開口部10bを左扉14及び右扉14で閉じることができる(一対の内側扉12、12も閉じた状態にする。)。しかる後に、トラック9を移動させて、トラック9の荷物室後部を建造物11の荷物用開口部11aから引き離すことができる。
【0030】
ところで、図4に示すように、トラック9の荷物室後部を建造物11の荷物用開口部11aに接車した状態で、一対の内側扉12、12を開閉できる構成としたことによって、例えば1枚の内側扉を開閉できるようにした場合と比較して、それぞれの内側扉12、12の横幅をそれよりも狭くすることができる。このように、内側扉12、12の横幅を狭くすることによって、内側扉12、12の建造物11内における開閉スペース22(図4参照)を比較的狭くすることができる。よって、建造物11内での荷物を保管するためのスペースを有効に利用できる。
【0031】
そして、図4に示すように、内側扉12、12を左右一対として設けることによって、この一対の各内側扉12、12のそれぞれの横幅を比較的広くしても、1枚の内側扉を使用する場合と比較して、各内側扉12、12の建造物11内における開閉スペース22があまり広くならないようにすることができる。よって、この一対の各内側扉12、12の横幅を比較的広くして、一対の内側扉12、12を開放したときに形成されるトラック側荷物用開口部10bの横幅Wを比較的大きくすることができる。その結果、トラック側荷物用開口部10bに例えば横幅の広いパレットが通るようにすることができる。
【0032】
例えば、図4に示すトラック側荷物用開口部10bの横幅Wを約1.4mとすることによって、例えば縦横の長さがそれぞれ約1.1mのパレットをこの開口部10bに通すことができる。この大きさのパレットをトラック側荷物用開口部10bに通すことができるようにすると、食品等の荷物をこのパレットに載せた状態で、建造物11内の荷物をトラック9の荷物室10内に積み込むことができるし、トラック荷物室10内の荷物を建造物11内に降ろすことができる。
【0033】
また、図5に示すように、このトラック後部の扉装置8によると、左扉14及び右扉14を閉じた状態で、トラック9の荷物室後部を建造物11の荷物用開口部11aに接車したり、引き離すことができるので、接車したり引き離す際に、トラック9の後部開口部10aから外気や雨水等が荷物室10内に入り込むことを防止できる。そして、荷物室10内が所定の低温の温度範囲となるように管理されている場合は、低温の荷物の温度上昇を防止できる。
【0034】
そして、トラック9の荷物室後部を建造物11の荷物用開口部11aに接車した状態で、左扉14及び右扉14を開閉できるので、接車の前に、運転手は、トラック9から降りて、左右の各扉14、14を開く必要がないし、トラック9の荷物室後部を建造物11の荷物用開口部11aから引き離した後に、トラック9から降りて、左右の各扉14、14を閉じる必要もない。よって、運転手は、トラック9を乗降する手間が掛からないし、雨に濡れることもない。
【0035】
また、図5に示すように、左扉14及び右扉14を閉じた状態で、トラック9の荷物室後部を建造物11の荷物用開口部11aに接車することができるので、接車の際に、左右の各扉14、14が別のトラックや建造物に接触することを防止できる。
【0036】
更に、図3及び図4に示すように、トラック9の荷物室後部が建造物11の荷物用開口部11aのパッド21に接車した状態では、左右一対の外側扉16、16を開閉することができないが、トラック9の荷物室後部を、建造物11の荷物用開口部11aのパッド21から引き離した状態では、この左右一対の外側扉16、16を開閉することができる。よって、トラック9の荷物室後部面に対して、比較的横幅方向に広い開口部10aを形成することができる。このように、トラック9の荷物室後部面に比較的横幅方向に広い開口部10aを形成することができると、荷物室10に対する荷物の積み降ろしを容易に行うことができる。
【0037】
更に、トラック後部扉の接車構造13によると、図3〜図5に示すように、トラック9の荷物室後部が、建造物11の荷物用開口部11aに設けられているパッド21に接車した状態では、トラック9の荷物室後部面に形成されている環状部分20が、パッド21に当接することができる。これによって、パッド21と環状部分20との接触部分を封止することができ、外気等の荷物室10及び建造物11内への進入を防止することができる。そして、このパッド21によって、接車の際の衝撃を吸収して、建造物11やトラック9の損傷を防止することができる。
【0038】
次に、図1に示すトラック後部の扉装置8に設けられている施錠構造を説明する。この施錠構造は、一対の各内側扉12、12を施錠するための一対の内側扉用施錠装置(図8〜図11参照)23、23と、一対の各外側扉16、16を施錠するための一対の外側扉用施錠装置(図12〜図15参照)24、24とを備えている。この一対の内側扉用施錠装置23、23は、図1に示すように、左側の内側扉用施錠装置(左内側扉用施錠装置)23と、右側の内側扉用施錠装置(右内側扉用施錠装置)23とを備えており、両者は、互いに左右対称であるので、右側のものを説明して左側のものの説明を省略する。
【0039】
右内側扉用施錠装置23は、図1に示すように、施錠棒25を有している。この施錠棒25は、右側の内側扉(右内側扉)12の外面であって、先縁に沿って垂直方向に配置され、軸受部26、・・・を介して回動自在にこの右内側扉12に設けられている(図7参照)。そして、この施錠棒25には、連結部材27及び連結ピン28を介して操作レバー29が設けられている。この操作レバー29は、ブラケット30で水平に支持されている。
【0040】
また、この施錠棒25の上下の各端部には、爪部31が設けられている。施錠棒25の下端に設けられている爪部31は、図8に示すように、施錠棒25の下端から同図の左方向に延びる2つの主突起32、32を備えている。この2つの主突起32、32の間には、主溝部33が形成されている。また、爪部31は、2つの副突起34、34を備えている。この2つの副突起34、34は、主突起32、32と反対側の面に形成され、右方向に延びて形成されている。この2つの副突起34、34の間には、副溝部35が形成されている。
【0041】
更に、図8に示すように、この右内側扉用施錠装置23は、爪部31と係合可能な爪受け部36を備えている。この爪受け部36は、下側枠体19の前面に設けられている。この爪受け部36は、図11(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、基板37を有している。この基板37の上面に板状の主突部38が形成されており、この主突部38は爪部31の主溝部33に係合できる形状に形成されている(図8参照)。また、この主突部38の上縁には係止板39が形成されている。この係止板39は、爪部31の主溝部33が主突部38に係合したときに、爪部31の一対の主突起32、32が主突部38から外れないように係止するためのものである。更に、基板37の上面には、主突部38と間隔を隔てて副突部40が形成されている。この副突部40は、図8に示すように、爪部31の副溝部35に係合できる形状に形成されている。なお、図1に示す施錠棒25の上端に対しても爪部31及び爪受け部36が設けられているが、この爪部31及び爪受け部36は、図8に示す施錠棒25の下端に対して設けられている爪部31及び爪受け部36と同等のものであるので、それらの詳細な説明を省略する。
【0042】
次に、この図1等に示す右内側扉用施錠装置23の作用を説明する。今、図1に示すように、右内側扉12が閉じており、右内側扉用施錠装置23が施錠された状態とする。この施錠状態では、爪部31が爪受け部36と係合し(図8参照)、操作レバー29がブラケット30と係合しており、これによって、施錠棒25の回転を係止することができ、よって、右内側扉12が開かないように係止することができる。
【0043】
次に、右内側扉用施錠装置23を解錠するときは、まず、操作者が水平位置に支持されている図1に示す操作レバー29を、連結ピン28を中心にして反時計方向に所定角度だけ上方向に揺動させて、この操作レバー29をブラケット30から切り離す。そして、この操作レバー29を手前に引けばよい。操作レバー29を手前に引くと、図9に示すように、施錠棒25が矢印方向41に揺動して、爪部31の主突起32、32が爪受け部36を押すこととなり、爪部31が爪受け部36から外れる。そして、右内側扉12が第1ヒンジ15を中心にして開方向に揺動する。これによって、図10に示すように、右内側扉12を開放することができる。
【0044】
なお、開放された右内側扉12を閉じて施錠するときは、上記と逆の手順で操作すればよい。また、上記と同様にして、左内側扉用施錠装置23及び左内側扉12の解錠、開閉、及び施錠をすることができる。よって、これらの詳細な説明を省略する。
【0045】
次に、図1及び図12〜図15を参照して、一対の外側扉用施錠装置24、24を説明する。この一対の外側扉用施錠装置24、24は、図1に示す左側の外側扉用施錠装置(左外側扉用施錠装置)24と、右側の外側扉用施錠装置(右外側扉用施錠装置)24とを備えており、両者は、互いに左右対称であるので、左側のものを説明して右側のものの説明を省略する。
【0046】
左外側扉用施錠装置24は、図1に示すように、上側施錠具42と、下側施錠具43とを備えている。下側施錠具43は、図12に示すように、板部材44を有している。この板部材44は、左外側扉16の内面であって、先縁の下端部に設けられている。この板部材44の表面には、筒状の保持部45が鉛直方向に設けられており、この保持部45内に施錠ピン46が筒方向に移動自在に収容されている。この施錠ピン46には、操作ピン47が設けられており、この操作ピン47は、保持部45の周壁に形成されている操作開口部48から外側に突出している。この操作開口部48は、操作ピン47を上下方向に移動できるように保持部45の筒方向に形成されており、操作ピン47が操作開口部48の下端位置に移動した状態で、施錠ピン46が係合孔49に挿入した状態(左外側扉16を開閉できない施錠状態)となる。この係合孔49は、荷物室10の床面50に形成されている。そして、図13に示すように、操作ピン47が操作開口部48の上端位置に移動した状態で、施錠ピン46が係合孔49から外れた状態(解錠状態)となり、左外側扉16を開閉することができる。また、操作ピン47が操作開口部48の下端位置又は上端位置に移動した状態で、それぞれの状態を維持できるように、操作開口部48には下係合溝48a及び上係合溝48bが形成されている。
【0047】
次に、上側施錠具42を図14及び図15を参照して説明する。図14は、上側施錠具42を施錠して、左外側扉16を閉じた状態を示している。図15は、上側施錠具42を解錠して、左外側扉16を開放した状態を示している。このように、この図14及び図15に示す上側施錠具42は、図12及び図13に示す下側施錠具43と略上下対称の構造であり、両者が相違するところは、係合孔49が、下側施錠具43では、荷物室10の床面50に形成されているのに対して、上側施錠具42では天井51に設けられている係合部材52に形成されているところである。
【0048】
この上側施錠具42によると、図14に示すように、操作ピン47が操作開口部48の上端位置に移動した状態で、施錠ピン46が係合孔49に挿入した状態(左外側扉16を開閉できない施錠状態)となる。また、図15に示すように、操作ピン47が操作開口部48の下端位置に移動した状態で、施錠ピン46が係合孔49から外れた状態(解錠状態)となり、左外側扉16を開閉することができる。
【0049】
これ以外は、下側施錠具43と同等であるので、同等部分を同一の図面符号で示し、それらの詳細な説明を省略する。また、図1に示す右外側扉用施錠装置(上側施錠具42、下側施錠具43)24は、図12〜図15に示す左外側扉用施錠装置(上側施錠具42、下側施錠具43)24と同等であるので、それらの詳細な説明を省略する。
【0050】
ただし、上記実施形態では、荷物室10を冷凍室又は保冷室等の低温室とし、建造物11を冷凍倉庫又は保冷倉庫としたが、これに代えて、例えば荷物室10及び建造物11内が所定の温度範囲となるように、温度管理されていないものとしてもよい。また、建造物11は、倉庫以外の例えば建築物や構造物としてもよい。
【0051】
そして、上記実施形態では、内側扉用施錠装置23、23を図8〜図11に示すものとし、外側扉用施錠装置24、24を図12〜図15に示すものとしたが、これ以外の例えば公知の施錠装置を使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように、本発明に係るトラック後部の扉装置、及びトラック後部扉の接車構造は、トラックの荷物室後部を、建造物に設けられている荷物用開口部に接車した状態で、荷物室後部に設けられている内側扉を開閉できるようにして、荷物室に対する荷物の搬出入の際に、運転手がトラックに乗降する回数を低減することができ、荷物室内に外気や雨水が進入することを防止できる優れた効果を有し、このようなトラック後部の扉装置、及びトラック後部扉の接車構造等に適用するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明の実施形態に係るトラック後部の扉装置を示す正面図である。
【図2】同実施形態に係る同扉装置が建造物の荷物用開口部のパッドに接車する状態をこの荷物用開口部側から見た状態を示す正面図である。
【図3】図2に示す同扉装置に設けられている一対の内側扉を開放した状態を示す正面図である。
【図4】図3に示す同扉装置を示す横断面図である。
【図5】同実施形態に係る同扉装置が建造物の荷物用開口部のパッドに接車する状態を建造物の外側から見た状態を示す側面図である。
【図6】同実施形態に係る同扉装置を示す図であり、(a)は一対の左右の各扉を閉じた状態を示す横断面図、(b)は一対の左右の各内側扉を開放した状態を示す横断面図、(c)は一対の左右の各扉を開放した状態を示す横断面図である。
【図7】同実施形態に係る同扉装置のA−A断面図である。
【図8】同実施形態に係る同扉装置に設けられている爪部が爪受け部に係合している状態を示す拡大斜視図である。
【図9】同実施形態に係る同扉装置に設けられている爪部が爪受け部から外れる状態を示す拡大斜視図である。
【図10】同実施形態に係る同扉装置に設けられている爪部が爪受け部から外れた状態を示す拡大斜視図である。
【図11】同実施形態に係る同扉装置に設けられている爪受け部を示す図であり、(a)は拡大正面図、(b)は拡大平面図、(c)は拡大左側面図、(d)は拡大右側面図である。
【図12】同実施形態に係る同扉装置に設けられている左外側扉用施錠装置の下側施錠具が施錠されている状態を示す拡大斜視図である。
【図13】図12に示す左外側扉用施錠装置の下側施錠具が解錠されている状態を示す拡大斜視図である。
【図14】同実施形態に係る同扉装置に設けられている左外側扉用施錠装置の上側施錠具が施錠されている状態を示す拡大斜視図である。
【図15】図14に示す左外側扉用施錠装置の上側施錠具が解錠されている状態を示す拡大斜視図である。
【図16】従来のトラック後部の扉装置を示す斜視図である。
【図17】従来の同扉装置が設けられているトラック荷物室の後部開口部を倉庫の荷物搬出入口に接車させる前の状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0054】
8 トラック後部の扉装置
9 トラック
10 荷物室
10a 開口部
10b トラック側荷物用開口部
11 建造物
11a 荷物用開口部
12 内側扉
13 トラック後部扉の接車装置
14 左扉、右扉
15 第1ヒンジ
16 外側扉
17 第2ヒンジ
18 上側枠体
19 下側枠体
20 環状部分
21 パッド
22 開閉スペース
23 内側扉用施錠装置
24 外側扉用施錠装置
25 施錠棒
26 軸受部
27 連結部材
28 連結ピン
29 操作レバー
30 ブラケット
31 爪部
32 主突起
33 主溝部
34 副突起
35 副溝部
36 爪受け部
37 基板
38 主突部
39 係止板
40 副突部
42 上側施錠具
43 下側施錠具
44 板部材
45 保持部
46 施錠ピン
47 操作ピン
48 操作開口部
49 係合孔
50 荷物室の床面
51 荷物室の天井
52 係合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラック荷物室の後部開口部を開閉するための左右両開きの左扉及び右扉を備え、これら左扉及び右扉のそれぞれは、第1ヒンジを介して互いに連結する内側扉及び外側扉を有し、それぞれの外側扉が前記荷物室の開口枠部に第2ヒンジを介して連結するトラック後部の扉装置であって、
前記荷物室の後部面のうち、前記左右一対の内側扉の外側に形成されている環状部分が建造物に設けられている荷物用開口部の周囲部分と当接可能な構成としたことを特徴とするトラック後部の扉装置。
【請求項2】
前記荷物室は、低温室であることを特徴とする請求項1記載のトラック後部の扉装置。
【請求項3】
前記荷物室の後部面に形成されている前記環状部分が、前記左右一対の外側扉と、前記左右一対の内側扉の上方及び下方に設けられている上側枠体及び下側枠体とから成ることを特徴とする請求項1又は2記載のトラック後部の扉装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のトラック後部の扉装置に形成されている前記環状部分が、前記建造物の前記荷物用開口部の周囲部分を構成するドックシェルターのパッドに当接可能であることを特徴とするトラック後部扉の接車構造。
【請求項5】
前記パッドは、封止機能及び衝撃吸収機能を有することを特徴とする請求項4記載のトラック後部扉の接車構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−282051(P2006−282051A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−106372(P2005−106372)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000118497)伊藤ハム株式会社 (57)