説明

トランスおよびそれを用いた電気機器

【課題】充填部材の充填量が抑えられることにより小型化されることができ、かつ信頼性も確保されたトランスと、そのトランスを用いた電気機器とを提供する。
【解決手段】ケース1は、上方に開口している。ボビン2は、ケース1内に設けられている。二次側接続ピン3は、ボビン2の上方に設けられている。二次側電線4は、ボビン2に巻かれたコイル部4aと、二次側接続ピン3に固定されたピン巻き付け部4bとを有している。吸上げ部6は、二次側接続ピン3およびピン巻き付け部4bとの間に隙間が形成されるように設けられた部材である。エポキシ樹脂5は、コイル部4aの上方においてコイル部4aを覆う第1の高さまでケース内に充填され、かつ隙間において第1の高さよりも高い第2の高さまで充填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスおよび電気機器に関し、特に、充填部材が充填されたケースを有するトランスおよびそれを用いた電気機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、内部に磁性体コアが挿入された樹脂製のボビンに1次巻線、2次巻線の少なくとも2つの巻線が巻きつけられたコイル部を有する高圧トランスが広く用いられている。このような高圧トランスに関しては、たとえば実開平5−72117号公報(第8図)に記載されたものがある。この文献には、絶縁ケースに収納されたコイル部がエポキシ樹脂などの絶縁材で充填封止されることが記載されている。
【0003】
高圧トランスが用いられる電気機器には、たとえば放電現象を利用したイオン発生装置がある。このイオン発生装置においては、イオンを発生させるためにイオン発生電極に、たとえば3kVの高電圧を印加する必要がある。このような高電圧を得るために高圧トランスが用いられる。
【0004】
イオン発生装置は、普及されるにつれて、小型化、高信頼性化および低価格化が要求されている。このため、イオン発生装置に用いられる高圧トランスについても、小型化、高信頼性化および低価格化が要求されている。
【特許文献1】実開平5−72117号公報(第8図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1に記載されたような高圧トランスでは、絶縁ケースに絶縁材(充填部材)が充填される。この充填部材の体積が抑制されれば高圧トランスを小型化することができる。しかし、充填部材の充填が不十分となって、絶縁材により保護されるべき部分が露出し、高圧トランスの信頼性が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、充填部材の充填量が抑えられることにより小型化されることができ、かつ信頼性も確保されたトランスと、そのトランスを用いた電気機器とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のトランスは、ケースと、ボビンと、端子部と、電線と、吸上げ部と、充填部材とを有している。ケースは上方に開口している。ボビンはケース内に設けられている。端子部はボビンの上方に設けられている。電線は、ボビンに巻かれた第1の部分と、端子部に固定された第2の部分とを有している。吸上げ部は、端子部および第2の部分との間に隙間が形成されるように設けられた部材である。第1の充填部材は、第1の部分の上方において第1の部分を覆う第1の高さまでケース内に充填され、かつ隙間において第1の高さよりも高い第2の高さまで充填されている。
【0008】
本発明のトランスによれば、第1の充填部材は、電線の第1の部分の上方において第1の部分を覆う第1の高さまでケース内に充填され、かつ隙間において第1の高さよりも高い第2の高さまで充填されている。このため、第1の部分の上方における充填部材の体積を抑制すると同時に、隙間において十分な高さまで充填部材を充填することにより電線を保護することができる。これにより、トランスの小型化と高信頼性化を同時に実現することができる。
【0009】
上記のトランスにおいて好ましくは、隙間は少なくとも一種の樹脂が液状状態の場合に毛管現象が生じる寸法を有し、第1の充填部材は硬化状態の樹脂からなる。
【0010】
この毛管現象により、隙間において第1の高さよりも高い第2の高さまで液状状態の樹脂が充填される。その後にこの液状状態の樹脂が硬化されることにより、隙間を第2の高さまで硬化樹脂により充填することができる。
【0011】
上記のトランスにおいて好ましくは、隙間の上端の高さが第2の部分の下端の高さよりも高い。
【0012】
これにより、電線の第2の部分の下方に存在する第2の部分と第1の部分との間に位置する配線部が充填部材により保護される。よって、トランスの信頼性を、より高めることができる。
【0013】
上記のトランスにおいて好ましくは、第2の部分が端子部にはんだ付けされた部分を有し、隙間の上端の高さがはんだ付けされた部分の下端の高さよりも高い。
【0014】
これにより、はんだ付けされた部分の下方のはんだ付けにより確実に固定されていない部分が充填部材により保護される。よって、トランスの信頼性を、より高めることができる。
【0015】
上記のトランスにおいて好ましくは、隙間の上端の高さが第2の部分の上端の高さよりも高い。
【0016】
これにより、電線の第2の部分の全体が充填部材により保護される。よって、トランスの信頼性を、より高めることができる。
【0017】
上記のトランスにおいて好ましくは、吸上げ部がくり貫き部を有し、くり貫き部の内壁により隙間が形成されている。
【0018】
これにより、隙間において端子部全周を取り囲むように充填部材を充填することができる。よって隙間において端子部に固定された電線の第2の部分が全周にわたって充填部材により保護される。よって、トランスの信頼性を、より高めることができる。
【0019】
上記のトランスにおいて好ましくは、吸上げ部の側面の下方に切欠部が設けられている。
【0020】
この切欠部により、トランスの製造段階における充填部材の充填経路が確実に確保される。よって、トランスの信頼性を、より高めることができる。
【0021】
上記のトランスにおいて好ましくは、電線が切欠部を通っている。
この切欠部により、電線に吸上げ部からの荷重がかかることが抑制される。よって、電線の断線を防止することができる。
【0022】
上記のトランスにおいて好ましくは、ボビンと吸上げ部とが一体形成されている。
これにより、吸上げ部の取り付け時の作業効率を高めたり、部品コストを低減したりすることができる。
【0023】
本発明の電気機器は、上記のトランスと、第1の充填部材上に設けられた第1の充填部材よりもヤング率の小さい第2の充填部材とを有している。
【0024】
本発明の電気機器によれば、ヤング率が小さいために熱衝撃に強い第2の充填部材により、ヤング率が大きいために熱衝撃を受けるとクラックが生じやすい第1の充填部材をトランスの周囲雰囲気から保護することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように本発明によれば、電線の第1の部分の上方における第1の充填部材の体積を抑制すると同時に、隙間において十分な高さまで第1の充填部材を充填することにより電線を保護することができる。これにより、トランスの小型化および高信頼性化を同時に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
はじめに本実施の形態における高圧トランスの構成について説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態1における高圧トランスの構成を概略的に示す断面図である。なお、図1においては、図を見易くするために、第1の充填部材(エポキシ樹脂)については、その上面位置のみを破線で示している。
【0028】
図2は、本発明の実施の形態1における高圧トランスの構成を概略的に示す平面図である。なお、図2においては、図を見易くするために、第1の充填部材(エポキシ樹脂)を省略している。また、図2のI−I線に沿った断面図が図1である。
【0029】
図1および図2を参照して、本実施の形態の高圧トランス100は、ケース1と、ボビン2と、一対の二次側接続ピン(端子部)3と、二次側電線(電線)4と、吸上げ部6と、エポキシ樹脂(第1の充填部材)5とを有している。ケース1は、上方に開口している。ボビン2はケース1内に設けられている。二次側接続ピン3はボビン2の上方に設けられている。また、二次側接続ピン3は導電性を有している。エポキシ樹脂5はケース1内に充填されており硬化状態となっている。二次側接続ピン3の上端は充填されたエポキシ樹脂5の上面から露出している。
【0030】
ボビン2は、分離壁2bにより区画された筒部2aを有している。筒部2aの図中右側には二次側電線4の一部がコイル状に巻かれている。二次側電線4は、たとえば直径0.03mm〜0.05mmの細線である。二次側電線4の両端のそれぞれは、1対の二次側接続ピン3の各々に接続されている。また筒部2aは図1および図2における横方向に貫通するくり貫き部を有しており、このくり貫き部を貫通するように磁心41が挿入されている。
【0031】
また筒部2aの図中左側には一次側電線34の一部がコイル状に巻かれている。一次側電線34の両端のそれぞれは、1対の一次側接続ピン33の各々に電気的に接続されている。これにより、高圧トランス100は、一次側接続ピン33を一次側端子とし、二次側接続ピン3を二次側端子とする高圧トランスとしての機能を有している。
【0032】
図3は、図2のIII−III線に沿った断面を示す概略的な斜視図である。図4は、図3の分解組立図である。図5は、図2のV−V線に沿った断面を示す概略的な部分断面図である。なお、図3および図4においては、図を見易くするために、ケースおよび第1の充填部材(エポキシ樹脂)を省略している。
【0033】
図3および図4を参照して、二次側電線4は、ボビン2の筒部2aに巻かれたコイル部(第1の部分)4aと、二次側接続ピン3に巻きつけられて固定された部分であるピン巻き付け部(第2の部分)4bとを有している。また二次側電線4は、コイル部4aとピン巻き付け部4bとの間に配線部4cを有している。
【0034】
吸上げ部6は、二次側接続ピン3の延在方向(図中縦方向)と同一方向にくり貫かれたくり貫き部60を有している。また吸上げ部6は、側面の下方に切欠部61を有している。配線部4cは切欠部61を通っている。
【0035】
図5を参照して、ピン巻き付け部4bは、はんだ18によりはんだ付けされた部分を有している。
【0036】
また、吸上げ部6のくり貫き部60内壁と二次側接続ピン3およびピン巻き付け部4bとの間に隙間SPが形成されている。隙間SPは液状状態のエポキシ樹脂に毛管現象が生じる寸法を有している。
【0037】
エポキシ樹脂5は、コイル部4aの上方においてコイル部4aを覆う高さHP(第1の高さ)までケース1(図5において図示せず)内に充填され、かつ隙間SPにおいて高さHPよりも高い第2の高さHSまで充填されている。
【0038】
エポキシ樹脂5の高さHPは、本実施の形態のように、ピン巻き付け部4bの下端の高さH1よりも高いことが好ましい。
【0039】
また、エポキシ樹脂5の高さHPは、本実施の形態のように、ピン巻き付け部4bがはんだ18によりはんだ付けされた部分の下端の高さH2よりも高いことが好ましい。
【0040】
また、エポキシ樹脂5の高さHPは、本実施の形態のように、ピン巻き付け部の上端の高さH3によりも高いことが好ましい。
【0041】
次に、本実施の形態における高圧トランスを有する電気機器としてのイオン発生装置の構成について説明する。
【0042】
図6は、本発明の実施の形態1における電気機器としてのイオン発生装置の構成を概略的に示す断面図である。なお、図6においては、図を見易くするために、第1の充填部材(エポキシ樹脂)および第2の充填部材(ウレタン樹脂)については、その上面位置のみを破線で示している。
【0043】
図6を参照して、本実施の形態のイオン発生装置200は、上述した高圧トランス100と、ウレタン樹脂(第2の充填部材)7と、装置用ケース8と、回路基板9と、配線43と、イオン発生電極42とを有している。装置用ケース8には高圧トランス100が収納され、さらにウレタン樹脂7が充填されている。これにより、エポキシ樹脂5の上に、エポキシ樹脂5よりもヤング率の小さいウレタン樹脂7が形成されている。
【0044】
回路基板9は、二次側接続ピン3と接続されている。また、回路基板9は、基板部9aと、部品9bとを有している。部品9bは基板部9aの高圧トランス100側(図中下側)に実装されている。これにより部品9bは基板部9aの表面から高圧トランス100側に突出しており、部品9bの一部は吸上げ部6と同じ高さに位置している。
【0045】
イオン発生電極42は、高圧トランス100の二次側接続ピン3に配線43を介して接続されており、高電圧の供給を受けることができる。
【0046】
次に、本実施の形態の比較例について説明する。
図9は、比較例における高圧トランスの構成を概略的に示す断面図である。なお、図9においては、図を見易くするために、第1の充填部材(エポキシ樹脂)については、その上面位置のみを破線で示している。
【0047】
主に図9を参照して、比較例における高圧トランス100cは、本実施の形態における高圧トランス100と異なり、吸上げ部6(図1)を有していない。このため、隙間SP(図5)が形成されておらず、液状樹脂が隙間SPに毛管現象により吸上げられることがない。このため、ケース1にほぼ一定の液面で充填された液状樹脂が硬化されてエポキシ樹脂5が形成されている。エポキシ樹脂5は、ピン巻き付け部4bの上端よりも高く充填されることにより、ケース1内に高さHMに至るまで充填され、ピン巻き付け部4bを保護している。
【0048】
図10は、比較例におけるイオン発生装置の構成を概略的に示す断面図である。なお、図10においては、図を見易くするために、第1の充填部材(エポキシ樹脂)および第2の充填部材(ウレタン樹脂)については、その上面位置のみを破線で示している。
【0049】
図10を参照して、比較例におけるイオン発生装置200cは、本実施の形態におけるイオン発生装置200と異なり、本実施の形態の高圧トランス100の代わりに上述した比較例の高圧トランス100cを有している。
【0050】
部品9bの下端は高さHMのエポキシ樹脂5の上面より上に位置している。すなわち、部品9bはエポキシ樹脂5がピン巻き付け部4bを保護している高さよりも高い位置に設けられなければならない。この結果、イオン発生装置200c全体の高さ寸法が高くなるので、比較例におけるイオン発生装置200cの体積は本実施の形態のイオン発生装置200の体積よりも大きくなる。
【0051】
再び図9を参照して、工程ばらつきによりエポキシ樹脂5の充填量が過小であった場合、エポキシ樹脂5の上面は、たとえば高さHLに位置し、ピン巻き付け部4bの保護されるべき部分が露出してしまう。
【0052】
図9および図10を参照して、逆にエポキシ樹脂5の充填量が過多であった場合、エポキシ樹脂5の上面は、たとえば高さHH(図9)に位置する。この場合、部品9b(図10)の下面がエポキシ樹脂5の上面と衝突してしまい、部品9bに故障が発生する可能性がある。
【0053】
本実施の形態の高圧トランス100によれば、図5に示すように、エポキシ樹脂5は、二次側電線4のコイル部4aの上方においてコイル部4aを覆う高さHPまでケース1内に充填され、かつ隙間SPにおいて高さHPよりも高い高さHSまで充填されている。このため、コイル部4aの上方におけるエポキシ樹脂5の体積を抑制すると同時に、隙間SPにおいて十分な高さまでエポキシ樹脂5を充填することにより二次側電線4を保護することができる。これにより、高圧トランス100の小型化および高信頼性化を同時に実現することができる。
【0054】
また、隙間SPは液状状態のエポキシ樹脂に毛管現象が生じる寸法を有し、エポキシ樹脂5は、液状状態から硬化されたエポキシ樹脂から形成されている。毛管現象が用いられることにより、隙間SPにおいて高さHPよりも高い高さHSまでエポキシ樹脂5を充填することができる。
【0055】
また、隙間SPの上端の高さHSがピン巻き付け部4bの下端の高さH1よりも高くされている。これにより、二次側電線4のピン巻き付け部4bの下方に存在するピン巻き付け部4bとコイル部4aとの間に位置する配線部4cがエポキシ樹脂5により保護される。よって、高圧トランス100の信頼性を、より高めることができる。
【0056】
また、ピン巻き付け部4bが二次側接続ピン3にはんだ18によりはんだ付けされた部分を有し、隙間SPの上端の高さHSがはんだ18の下端の高さH2よりも高くされている。これにより、はんだ18の下方のはんだ付けにより確実に固定されていない部分がエポキシ樹脂5により保護される。よって、高圧トランス100の信頼性を、より高めることができる。
【0057】
また、隙間SPの上端の高さHSがピン巻き付け部4bの上端の高さH3よりも高くされている。これにより、二次側電線4のピン巻き付け部4b全体がエポキシ樹脂5により保護される。よって、高圧トランス100の信頼性を、より高めることができる。
【0058】
また、吸上げ部6がくり貫き部60(図4)を有し、くり貫き部60の内壁により隙間SP(図5)が形成されている。これにより、隙間SPにおいて二次側接続ピン3全周を取り囲むようにエポキシ樹脂5を充填することができる。よって隙間SPにおいて二次側接続ピン3に固定された二次側電線4のピン巻き付け部4bが全周にわたってエポキシ樹脂5により保護される。よって、高圧トランス100の信頼性を、より高めることができる。
【0059】
また、吸上げ部6の側面の下方に切欠部61(図3)が設けられている。この切欠部61により、高圧トランス100の製造段階におけるエポキシ樹脂5の充填経路が確実に確保される。よって、高圧トランス100の信頼性を、より高めることができる。
【0060】
また、図3に示すように、二次側電線4が切欠部61を通っている。この切欠部61により、二次側電線4に吸上げ部6の荷重がかかることが抑制される。よって、二次側電線4の断線を防止することができる。
【0061】
本実施の形態のイオン発生装置200によれば、図6に示すように、ウレタン樹脂7がエポキシ樹脂5上に設けられている。このため、ヤング率が小さいために熱衝撃に強いウレタン樹脂7により、ヤング率が大きいために熱衝撃を受けるとクラックが生じやすいエポキシ樹脂5をトランスの周囲雰囲気から保護することができる。また熱膨張率が大きいウレタン樹脂7の温度変化による伸縮により二次側電線4の断線が生じることをエポキシ樹脂5により防止することができる。
【0062】
なお本実施の形態においては電気機器の一例としてイオン発生装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。また電気機器は第2の充填部材を有する高圧トランスであってもよい。
【0063】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2における高圧トランスの構成を概略的に示す部分斜視図である。なお、図7においては、図を見易くするために、ケースおよび第1の充填部材(エポキシ樹脂)を省略している。
【0064】
図7を参照して、本実施の形態の高圧トランスは、実施の形態1における吸上げ部6に代わり、吸上げ部6Vと、可動部材10と、スペーサ部11とを有している。
【0065】
ボビン2の分離壁2bと、スペーサ部11と、可動部材10と、吸上げ部6Vとは、一体形成されている。すなわち、ボビン2と吸上げ部6Vとが一体形成された部品となっている。この一体形成された部品は、たとえば1つの金型から一括形成される樹脂部品である。
【0066】
スペーサ部11および可動部材10の境界部と、可動部材10および吸上げ部6Vの境界部とは肉厚が薄く形成されている。このため、エポキシ樹脂5が充填される前段階においては容易に屈曲させることができる。
【0067】
図8は、本発明の実施の形態2における高圧トランスの製造方法における工程を示す部分斜視図である。図8を参照して、まず吸上げ部6Vが二次側接続ピン3から十分に離れた状態とされる。この状態で二次側接続ピン3に二次側電線4が巻きつけられてピン巻き付け部4bが形成される。吸上げ部6Vが二次側接続ピン3から離されているため、ピン巻き付け部4bの形成を容易に行なうことができる。また、必要に応じてピン巻き付け部4bが二次側接続ピン3にはんだ付けされる。
【0068】
次に、スペーサ部11および可動部材10の境界部と、可動部材10および吸上げ部6Vの境界部とが屈曲されることにより、二次側接続ピン3が吸上げ部6Vのくり貫き部60Vに挿入される。これにより、二次側接続ピン3およびピン巻き付け部4bと、吸上げ部6Vとの間に隙間が形成される。
【0069】
この後に、エポキシ樹脂5の充填が行なわれることにより、本実施の形態の高圧トランスが得られる。
【0070】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0071】
本実施の形態の高圧トランスによれば、ボビン2と吸上げ部6Vとが一体形成されているため、吸上げ部6Vの取り付け時の作業効率を高めたり、部品コストを低減したりすることができる。
【0072】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、充填部材が充填されたケースを有するトランスおよびそれを用いた電気機器に特に有利に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態1における高圧トランスの構成を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1における高圧トランスの構成を概略的に示す平面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面を示す概略的な斜視図である。
【図4】図3の分解組立図である。
【図5】図2のV−V線に沿った断面を示す概略的な部分断面図である。
【図6】本発明の実施の形態1における電気機器としてのイオン発生装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2における高圧トランスの構成を概略的に示す部分斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態2における高圧トランスの製造方法における工程を示す部分斜視図である。
【図9】比較例における高圧トランスの構成を概略的に示す断面図である。
【図10】比較例におけるイオン発生装置の構成を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0075】
1 ケース、2 ボビン、2a 筒部、2b 分離壁、3 二次側接続ピン、4 二次側電線、4a コイル部、4b ピン巻き付け部、4c 配線部、5 エポキシ樹脂、6,6V 吸上げ部、7 ウレタン樹脂、8 装置用ケース、9 回路基板、9a 基板部、9b 部品、10 可動部材、11 スペーサ部、33 一次側接続ピン、34 一次側電線、41 磁心、42 イオン発生電極、43 配線、60,60V くり貫き部、61 切欠部、100,100c 高圧トランス、200,200c イオン発生装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口したケースと、
前記ケース内に設けられたボビンと、
前記ボビンの上方に設けられた端子部と、
前記ボビンに巻かれた第1の部分と、前記端子部に固定された第2の部分とを有する電線と、
前記端子部および前記第2の部分との間に隙間が形成されるように設けられた部材である吸上げ部と、
前記第1の部分の上方において前記第1の部分を覆う第1の高さまで前記ケース内に充填され、かつ前記隙間において前記第1の高さよりも高い第2の高さまで充填された第1の充填部材とを備えた、トランス。
【請求項2】
前記隙間は少なくとも一種の樹脂が液状状態の場合に毛管現象が生じる寸法を有し、前記第1の充填部材は硬化状態の前記樹脂からなることを特徴とする、請求項1に記載のトランス。
【請求項3】
前記隙間の上端の高さが前記第2の部分の下端の高さよりも高いことを特徴とする、請求項1または2に記載のトランス。
【請求項4】
前記第2の部分が前記端子部にはんだ付けされた部分をし、前記隙間の上端の高さが前記はんだ付けされた部分の下端の高さよりも高いことを特徴とする、請求項1または2に記載のトランス。
【請求項5】
前記隙間の上端の高さが前記第2の部分の上端の高さよりも高いことを特徴とする、請求項1または2に記載のトランス。
【請求項6】
前記吸上げ部がくり貫き部を有し、前記くり貫き部の内壁により前記隙間が形成されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のトランス。
【請求項7】
前記吸上げ部の側面の下方に切欠部が設けられていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のトランス。
【請求項8】
前記電線が前記切欠部を通っていることを特徴とする、請求項7に記載のトランス。
【請求項9】
前記ボビンと前記吸上げ部とが一体形成されていることを特徴とする、請求項1〜8に記載のトランス。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のトランスと、前記第1の充填部材上に設けられた前記第1の充填部材よりもヤング率の小さい第2の充填部材とを備えた、電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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