説明

トランスペアレント伝送装置

【課題】1個の6.312Mb/s信号を4個のトリビュータリー・ユニットTU11に変換することができるトランスペアレント伝送装置を提供する。
【解決手段】低速信号受信部110は、6.312Mb/s信号を受信する。スタッフビット挿入部120は、6.312Mb/s信号をTU11に収容される信号群に区切り、該信号群の先頭にビット長を調整するためのスタッフビットをそれぞれ挿入する。POH挿入部130は、スタッフビットの先頭にパス・オーバーヘッドをそれぞれ挿入する。TUポインタ挿入部140は、パス・オーバーヘッドの先頭にTUポインタをそれぞれ挿入して、4個のトリビュータリー・ユニットTU11(すなわちトリビュータリー・ユニット・グループTUG2)を完成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、PDH(Plesiochronous Digital Hierarchy)標準等に準拠したビットレートを、トランスペアレントに伝送するための、伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光通信ネットワークとして、SDH標準やSONET標準に準拠したもの等が知られている。このようなネットワークを開示する文献としては、例えば下記特許文献1が知られている。
【0003】
図6は、従来の光通信ネットワークの構成例を示す概念図である。図6に示したように、従来の光通信ネットワーク600では、複数台(図6の例では4台)の伝送装置610,620,630,640が、SDH標準またはSONET標準に準拠した通信ネットワーク650に接続される。各伝送装置610〜640は、それぞれクロスコネクト611,621,631,641を有する。クロスコネクトとは、ある単位で多重化された複数の入出力信号線を用い、ある単位毎に時間的且つ空間的に位置を入れ替えて、任意の入力信号を任意の出力信号線に出力する機能部である。伝送装置は、インターフェース部を備えることができる。図6の例では、伝送装置610,630に、インターフェース部612,632が設けられている。インターフェース部612,632は、外部から入力された低速フレームを高速フレームに複数個ずつ収容して、通信ネットワーク600に出力する。
【0004】
このように、SDH標準やSONET標準では、複数の低速フレームを1個の高速フレームに収容すること(すなわち、低速フレームを多重化すること)により、ネットワークの利用効率を向上させている。
【0005】
図7は、SDH標準で採用されている多重化方式を説明するための概念図である。
【0006】
SDH標準では、一番小さく多重化し易い大きさの単位として、コンテナ(C)が用意されている。コンテナとは、低速信号を収容する箱である。コンテナとしては、収容する信号の速度に応じて、C11、C12、C2、C3、C4が規定されている(図7参照)。
【0007】
伝送装置は、入力した低速信号をコンテナに収容した後、各コンテナに、パス・オーバーヘッド(POH)と称されるオーバーヘッドを付加する。パス・オーバーヘッドには、警報発生状態を示す機能等がある。パス・オーバーヘッドが付加されたコンテナは、低次バーチャル・コンテナ(LoVC)と称される。低次バーチャル・コンテナとしては、収容する信号の速度に応じて、VC11、VC12、VC2、VC3、VC4が規定されている。
【0008】
さらに、バーチャルコンテナには、トリビュータリー・ユニット・ポインタ(TUポインタ)と称されるオーバーヘッドが付加される。TUポインタとは、低次バーチャル・コンテナの先頭を示すオーバーヘッドである。TUポインタが付加された低次バーチャル・コンテナは、トリビュータリー・ユニット(TU)と称される。トリビュータリー・ユニットとしては、収容する信号の速度に応じて、TU11、TU12、TU2、TU3等が規定されている。
【0009】
次に、同じ信号速度に対応するトリビュータリ・ユニットを1個または複数個連結することにより、トリビュータリ・ユニット・グループ(TUG)が生成される。また、生成されたトリビュータリー・ユニット・グループを複数個連結して、さらに高速のトリビュータリー・ユニット・グループを生成することもできる。トリビュータリー・ユニット・グループとしては、TUG2、TUG3等が規定されている。
【0010】
続いて、トリビュータリー・ユニット・グループに、パス・オーバーヘッドが付加される。このパス・オーバーヘッドは、トリビュータリー・ユニット・グループの先頭を示すために付加される。パス・オーバーヘッドが付加されたトリビュータリー・ユニット・グループは、高次バーチャル・コンテナ(HoVC)と称される。高次バーチャル・コンテナとしては、VC3、VC4が規定されている。
【0011】
さらに、高次バーチャル・コンテナに、AUポインタが付加される。AUポインタとは、高次バーチャル・コンテナの先頭を示すオーバーヘッドである。AUポインタが付加された高次バーチャル・コンテナは、アドミニストラティブ・ユニット(AU)と称される。アドミニストラティブ・ユニットとしては、AU3、AU4が規定されている。
【0012】
その後、複数のアドミニストラティブ・ユニットを1個または複数個連結することによってアドミニストラティブ・ユニット・グループ(AUG)を生成し、さらに、このアドミニストラティブ・ユニット・グループにセクション・オーバーヘッドを付加することにより、SDHフレーム(すなわち、STM−Nフレーム)が完成する。セクション・オーバーヘッドは、フレーム同期やビット誤り監視等の機能を有するオーバーヘッドである。
【0013】
図8は、PDHの一つのビットレートである、6.312Mb/s信号の構造を示す概念図である。6.312Mb/s信号は、コンテナC2に対応する(図7参照)。図8において、(A)は非トランスペアレント伝送を行うための6.312Mb/s信号、(B)はトランスペアレント伝送を行うための6.312Mb/s信号である。
【0014】
図8(A)に示したように、非トランスペアレント伝送用の6.312Mb/s信号は、8ビット×96個のタイムスロットTS1〜TS96と、8ビット×2個のステータスビットSTと、5ビット×1個のフレーム信号F/Aとを含む。ここで、ステータスビットSTは、フレームの区切りを表す信号であり、また、フレーム信号F/Aは、対向する装置に警報を伝送する警報信号、シグナリング信号等である。
【0015】
一方、図8(B)に示したように、トランスペアレント伝送用の6.312Mb/s信号には、タイムスロットやフレーム信号等が割り当てられていない。トランスペアレント伝送用6.312Mb/s信号は、例えば、高速デジタル伝送サービスのインターフェース(6Mb/s)をそのまま収容するために用いられている。
【特許文献1】特開平8−23321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
我が国では、SDH標準に準拠した光通信ネットワークに既存の6.312Mb/s信号を多重収容することにより、高速デジタルサービスを行っている。この場合、6.312Mb/s信号をC2コンテナに収容し、VC2、TU2、TUG2を順次生成し、さらに、高次バーチャル・コンテナ(VC4またはVC3)、アドミニストラティブ・ユニット(AU3またはAU4)を生成して、STM−Nを得る方式の光通信ネットワークが一般的である(図7参照)。
【0017】
しかしながら、このような光通信ネットワークは、バーチャルコンテナVC2に対応していない伝送装置(収容単位がVC11に限定されたSONET装置等)や中継装置(低次パスクロスコネクト装置等)に、そのままでは接続できない場合がある。
【0018】
これに対して、光通信ネットワーク全体を、バーチャルコンテナVC2に対応できるように構築することも可能であるが、ネットワークを一から再構築する必要があり、多大なコストが必要となる。
【0019】
この発明の課題は、6.312Mb/sトランスペアレント信号のトランスペアレント伝送装置を、安価に提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この発明に係るトランスペアレント伝送装置は、トランスペアレント信号を受信する受信部と、トランスペアレント信号を複数のトリビュータリー・ユニットに収容される信号群に区切り、該信号群の先頭にビット長を調整するためのスタッフビットをそれぞれ挿入するスタッフビット挿入部と、該スタッフビットの先頭にパス・オーバーヘッドをそれぞれ挿入するパス・オーバーヘッド挿入部と、該パス・オーバーヘッドの先頭にトリビュータリー・ユニット・ポインタをそれぞれ挿入するトリビュータリー・ユニット・ポインタ挿入部とを備える。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、トランスペアレント信号を、信号内容を変更することなく、複数のトリビュータリー・ユニットを含むトリビュータリー・ユニット・グループに変換することができる。したがって、この発明によれば、該トランスペアレント信号を、光通信ネットワークに送信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、図中、各構成成分の大きさ、形状および配置関係は、この発明が理解できる程度に概略的に示してあるにすぎず、また、以下に説明する数値的条件は単なる例示にすぎない。
【0023】
図1は、この実施形態に係るトランスペアレント伝送装置の構成を概念的に示すブロック図である。
【0024】
図1に示したように、この実施形態に係るトランスペアレント伝送装置100は、低速信号受信部110と、スタッフビット挿入部120と、POH挿入部130と、TUポインタ挿入部140とを備えている。
【0025】
低速信号受信部110は、トランスペアレント信号として、低速信号である6.312Mb/s信号を受信する。6.312Mb/s信号は、125μsecで伝送される。したがって、6.312Mb/s信号の総ビット数は、(6.312×106)×(125×10−6)=789ビットである。
【0026】
スタッフビット挿入部120は、6.312Mb/s信号を、トリビュータリー・ユニットに収容される信号群に区切り、各信号群の先頭にビット長を調整するためのスタッフビットをそれぞれ挿入する。この実施形態では、6.312Mb/s信号(789ビット)を、4個の信号群(3個の197ビット信号群と1個の198ビット信号群)に区切る。そして、最初の3個の信号群の先頭にはそれぞれ3ビットのスタッフビットを挿入し、最後の信号群の先頭には2ビットのスタッフビットを挿入する。
【0027】
POH挿入部130は、各信号群の先頭(すなわち、スタッフビット挿入部120が挿入した各スタッフビットの先頭)に、POH(パス・オーバーヘッド)を挿入する。このとき、POHは4マルチフレームで定義されているため、最初のマルチフレームにはV5バイトが、2番目のマルチフレームにはJ2バイトが、3番目のマルチフレームにはN2バイトが、最後のマルチフレームにはK4バイトが、それぞれ挿入される。なお、V5バイト、J2バイト、N2バイトおよびK4バイトは、ITU−T標準G.707に規定されている。
【0028】
トリビュータリー・ユニット・ポインタ挿入部140は、各パス・オーバーヘッドの先頭に、トリビュータリー・ユニット・ポインタをそれぞれ挿入し、4つのトリビュータリー・ユニットTU11(すなわち、1個のトリビュータリー・ユニット・グループTUG2)として出力する。
【0029】
図1に示したトランスペアレント伝送装置100の動作について、図2〜図5の概念図を用いて説明する。
【0030】
まず、低速信号受信部110が、6.312Mb/s信号を受信する。受信された6.312Mb/s信号は、スタッフビット挿入部120に送られる。
【0031】
次に、スタッフビット挿入部120が、受信信号を、3個の197ビットの信号群と1個の198ビット信号群とに区切る。そして、最初の3個の信号群にはそれぞれ3ビットのスタッフビットを挿入し、最後の信号群には2ビットのスタッフビットを挿入する。これにより、4個のC11コンテナ(200ビット)が生成される。図2に、スタッフビット挿入部120の出力信号を示す。また、図3に、図2の出力信号を4個に区分した状態を示す。図2および図3において、‘i’は、6.312Mb/s信号に含まれていた信号を示している。このように、スタッフビット挿入部120は、出力信号を、4個のコンテナC11#1〜C11#4の状態で出力する。
【0032】
続いて、POH挿入部130が、各C11コンテナの先頭(すなわち、スタッフビット挿入部120が挿入した各スタッフビットの先頭)に、POHを挿入する。このとき、POHは図4のように4マルチフレームで定義されているため、最初のマルチフレームにはV5バイトが、2番目のマルチフレームにはJ2バイトが、3番目のマルチフレームにはN2バイトが、最後のマルチフレームにはK4バイトが、それぞれ挿入される。これにより、4個の低次バーチャル・コンテナVC11が生成される。図4は、POH挿入部130の出力信号を、4区分した状態で示している。図4から解るように、POH挿入部130は、出力信号を、4個の低次バーチャル・コンテナVC11#1〜VC11#4の状態で出力する。
【0033】
最後に、TUポインタ挿入部140が、各低次バーチャル・コンテナの先頭(すなわち、POH挿入部130が挿入した各パス・オーバーヘッドの先頭)に、TUポインタを挿入する。図5に示したようにTUポインタは4マルチフレームで定義されているため、最初のマルチフレームにはV1バイトが、2番目のマルチフレームにはV2バイトが、3番目のマルチフレームにはV3バイトが、最後のマルチフレームにはK4バイトが、それぞれ挿入される。これにより、4個のトリビュータリー・ユニットTU11が生成される。図5は、4個のTU11をトリビュタリ・ユニット・グループTUG2へ多重する過程を示している。TUG2は9行12列のバイトで構成されているが、多重化後の配列が明確になるように、ここではTU11のフレームを9行3列の形に直して表示する。4個のTU11からTUG2を生成する場合、バイトインタリーブと呼ばれる多重化方法を使用する。この多重化方法は、4個のTU11の各々の第1列目(TU11♯1−1、TU11♯2−1、TU11♯3−1、TU11♯4−1)を順次多重化し、次に第2列目(TU♯1−2、TU♯2−2、TU11♯3−2、TU11♯4−2)を順次多重して、最後に第3列目(TU♯1−3、TU11♯2−3、TU11♯3−3、TU11♯4−3)を多重する。これにより、TUG2が形成される。TUポインタ挿入部140の出力信号は、このTUG2の状態で出力される。
【0034】
以上説明したように、この実施形態によれば、6.312Mb/s信号を、信号内容を変更することなく、トリビュータリ・ユニット・グループTUG2に変換することができる。したがって、この実施形態によれば、6.312Mb/s信号が、VC11限定のネットワークで送信できるようになる。一方、VC11限定のネットワークからVC3対応のネットワークにフレームを送る場合には、この実施形態と逆の手順により、4個のトリビュータリー・ユニットTU11から6.312Mb/s信号を生成すればよい。
【0035】
このようにして、この実施形態によれば、VC3対応のネットワークとVC11限定のネットワークとの間での通信が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施の形態に係るトランスペアレント伝送装置の構成を概念的に示すブロック図である。
【図2】図1に示したトランスペアレント伝送装置の動作を説明するための概念図である。
【図3】図1に示したトランスペアレント伝送装置の動作を説明するための概念図である。
【図4】図1に示したトランスペアレント伝送装置の動作を説明するための概念図である。
【図5】図1に示したトランスペアレント伝送装置の動作を説明するための概念図である。
【図6】従来の光通信ネットワークの構成例を示す概念図である。
【図7】SDH標準に準拠した多重化方式を説明するための概念図である。
【図8】SDH標準に準拠した6.312Mb/s信号の構造を示す概念図であり、(A)は非トランスペアレント伝送を行うための6.312Mb/s信号、(B)はトランスペアレント伝送を行うための6.312Mb/s信号である。
【符号の説明】
【0037】
100 トランスペアレント伝送装置
110 低速信号受信部
120 スタッフビット挿入部
130 POH挿入部
140 TUポインタ挿入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスペアレント信号を受信する受信部と、
前記トランスペアレント信号を複数のトリビュータリー・ユニットに収容される信号群に区切り、該信号群の先頭にビット長を調整するためのスタッフビットをそれぞれ挿入するスタッフビット挿入部と、
該スタッフビットの先頭にパス・オーバーヘッドをそれぞれ挿入するパス・オーバーヘッド挿入部と、
該パス・オーバーヘッドの先頭にトリビュータリー・ユニット・ポインタをそれぞれ挿入するトリビュータリー・ユニット・ポインタ挿入部と、
を備えることを特徴とするトランスペアレント伝送装置。
【請求項2】
前記トランスペアレント信号が6.312Mb/s信号であり、且つ、前記トリビュータリー・ユニットがSDH標準に規定されたTU11であることを特徴とする請求項1に記載のトランスペアレント伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−124798(P2008−124798A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306547(P2006−306547)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(593065844)株式会社沖コムテック (127)
【Fターム(参考)】