説明

トランスペアレント伝送装置

【課題】マルチペアレント伝送装置のクライアント信号を、SDH/SONETフレーム等の多重化によって生成する場合に、クライアント信号のオーバーヘッド情報をマルチペアレントに伝送する。
【解決手段】
STM−1#1〜STM−12#は、対応するSTM−1受信器110−1〜110−12に入力され、マッピング部113で4連結の仮想コンテナAU−3に収容され、ポインタ処理部114でAUポインタを付加された後、分離部115で非連結の4個のAU−3に分離される。多重器120は、STM−1受信器110−1〜110−12から入力した48個の非連結AU−3を多重化することにより送信用ペイロード信号AUG−16を生成する。STM−16送信器130は、AUG−16にオーバーヘッド情報を付加することによりSTM−16フレームを生成して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、SDH(Synchronous Digital Hierarchy)/SONET(Synchronous Optical Network)標準に準拠したフレームを、トランスペアレントに伝送するための、伝送装置に関する。より詳細には、この発明は、このような伝送装置の、多重・分離技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロードバンドの利用が急速に拡大していることに伴い、光通信ネットワークに要求される収容トラフィック容量も増大している。このような要求を満たすための技術の一つとして、波長多重技術(WDM:Wavelength Division Multiplexing)が、知られている。WDM技術を光通信ネットワークに適用することにより、1本の光ファイバケーブルで数百Gbit/sの高速大容量通信が可能になる。このため、多くの通信業者は、WDM技術を用いた光通信ネットワークを導入している。
【0003】
WDM技術を採用した光通信ネットワークは、一般に、電話通信サービスや専用線サービスに加えて、イーサネット(登録商標)などのマルチ・サービスを収容している。そのため、一般的なWDM光通信ネットワークは、データ・フォーマットやプロトコル等が異なるクライアント信号を、該データ・フォーマット等を変更せずに、そのまま伝送するように構成されている。このような伝送技術は、トランスペアレント伝送と称される。トランスペアレント伝送を行う伝送装置では、一般に、デジタル・ラッパーと称されるフレーム・フォーマット技術が採用される。デジタル・ラッパーは、OTN(Optical Transport Network)、すなわちITU−T(International Telecommunications Union-Telecommunications Sector)勧告G.709で標準化されたネットワークの、ファイル・フォーマット技術である。
【0004】
図9は、OTNの構造を概念的に示すブロック図である。図9に示したように、OTN800は、クライアント信号の伝送速度として、2.48832Gbit/s、9.952380(すなわち、2.48832×4)Gbit/s、39.81312(すなわち、2.48832×16)Gbit/sを使用する。
【0005】
光チャネル・ペイロード・ユニットOPU1は、伝送速度2.48832Gbit/sで入力されたクライアント信号をマッピングする。光チャネル・データ・ユニットODU1は、光チャネル・ペイロード・ユニットOPU1から出力されたフレームを、多重化しない場合は光チャンネル・トランスポート・ユニットOTU1に送り、4フレームずつ多重化する場合は光チャネル・データ・トゥリビュータリ・ユニット・グループODTUG2に送り、16フレームずつ多重化する場合は光チャネル・データ・トゥリビュータリ・ユニット・グループODTUG3に送る。光チャンネル・トランスポート・ユニットOTU1は、入力されたフレームにFEC(Forwarded Error Correction)を付加する等して、出力する。光チャネル・データ・トゥリビュータリ・ユニット・グループODTUG2は、入力されたフレームを4個ずつ多重化することにより伝送速度9.953280Gbit/sのクライアント信号に変換して、出力する。
【0006】
光チャネル・ペイロード・ユニットOPU2は、伝送速度9.953280Gbit/sのクライアント信号をマッピングする。光チャネル・データ・ユニットODU2は、光チャネル・ペイロード・ユニットOPU2から出力されたフレームを、多重化しない場合は光チャンネル・トランスポート・ユニットOTU2に送り、4フレームずつ多重化する場合は光チャネル・データ・トゥリビュータリ・ユニット・グループODTUG3に送る。光チャンネル・トランスポート・ユニットOTU2は、入力されたフレームにFECを付加する等して、出力する。光チャネル・データ・トゥリビュータリ・ユニット・グループODTUG3は、光チャネル・データ・ユニットODU1から入力されたフレームを16個ずつ多重化することにより或いは光チャネル・データ・ユニットODU2から入力されたフレームを4個ずつ多重化することにより、伝送速度39.81312Gbit/sのクライアント信号に変換して、出力する。
【0007】
光チャネル・ペイロード・ユニットOPU3は、伝送速度39.81312Gbit/sのクライアント信号をマッピングする。光チャネル・データ・ユニットODU3は、光チャネル・ペイロード・ユニットOPU3から出力されたフレームを、光チャンネル・トランスポート・ユニットOTU3に送る。光チャンネル・トランスポート・ユニットOTU3は、入力されたフレームにFECを付加する等して、出力する。
【0008】
このようにして通信フレームを多重化することにより、OTNの使用効率を向上させることができる。
【0009】
OTNで使用されるクライアント信号は、例えば、ATM(Asynchronous Transfer Mode)セル、イーサネット(登録商標)信号、STM(Synchronous Transfer Mode)信号等である。
【0010】
ここで、STM信号のフレームフォーマットを定める標準規格として、SDHやSONETが知られている。
【0011】
SDHでは、伝送速度155.52Mbit/sのフレームを‘STM−1’と呼び、このSTM−1フレームを多重化して伝送速度の高いフレームを生成する手順が規定されている。この規定では、まず、低速フレーム(例えばSTM−1フレーム)のペイロードから読み出されたデータをバーチャルコンテナと呼ばれるデータ群に分割した後、各バーチャルコンテナを高速フレームのペイロードに格納する。
【0012】
このような多重化により、SDHでは、上述のOTNに適合したフレームを生成することができる。すなわち、16個のSTM−1フレームを多重することによりSTM−16(伝送速度2.48832Gbit/s)を生成でき、64個のSTM−1フレームを多重することによりSTM−64(伝送速度9.953280Gbit/s)を生成でき、さらに、256個のSTM−1フレームを多重することによりSTM−256(伝送速度39.81312Gbit/s)を生成できる。
【0013】
SONETの多重化方法も、SDHの場合とほぼ同様である。SONETでは、伝送速度51.85Mbit/sのフレームをOC−1と呼び、このOC−1フレームを多重する。SONETでは、48個のOC−1フレームを多重してOC−48(伝送速度2.48832Gbit/s)を生成でき、192個のOC−1フレームを多重してOC−192(伝送速度9.953280Gbit/s)を生成でき、さらに、768個のOC−1フレームを多重してOC−768(伝送速度39.81312Gbit/s)を生成できる。
【0014】
SDH/SONETで規定されたフレームをトランスペアレント伝送のクライアント信号として使用する技術は、例えば下記特許文献1、2に記載されている。
【特許文献1】特開2005−333286号公報
【特許文献2】特開2002−314499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来のOTNにおいて、クライアント信号としてSDH/SONET規格に準拠した多重フレームを使用する場合、以下のような課題があった。
【0016】
SDH/SONETのフレームには、オーバーヘッドと称される管理情報が格納される。オーバーヘッド情報は、中継セクション・オーバーヘッド(RSOH:Regenerator Section OoverHead)と多重セクション・オーバーヘッド(MSOH:Maltiplex Section OoverHead)とに大別される。オーバーヘッド情報は、そのフレームを送信或いは中継した装置に固有の管理情報を含む場合がある。
【0017】
SDH/SONETのネットワークでは、低速フレームが多重装置に受信された際に、該フレームのオーバーヘッド情報が読み出される。そして、この多重装置が、該低速フレームのペイロードに格納されたデータを、上述の手順にしたがって多重化する。すなわち、SDH/SONETの多重化では、低速フレームのペイロードに格納されたデータからバーチャルコンテナを生成する際に、該低速フレームのオーバーヘッド情報は格納されない。そして、多重化によって得られた高速フレームには、その高速フレームに対応した新しいオーバーヘッド情報が付加される。
【0018】
しかし、OTNのクライアント信号を生成する場合には、多重化前のSDH/SONETフレームに格納されたオーバーヘッド情報を廃棄することは望ましくない。すなわち、トランスペアレント伝送では、SDH/SONETフレームのオーバーヘッド情報も、トランスペアレントに伝送することが望ましい。
【0019】
また、上述のように、OTNの仕様では、伝送速度2.48832Gbit/s未満のクライアント信号を伝送することができない。例えば、OTNの仕様では、STM−1(伝送速度155.52Mbit/s)やSTM−4(伝送速度622.08Mbit/s)をそのまま伝送することはできない。
【0020】
これに対して、上述の特許文献1では、STM−64フレームを4個のSTM−16フレームに多重分離する際に、該STM−16フレームの未定義バイトに格納する技術が開示されている(特許文献1の例えば段落0014参照)。この技術を応用して、低速フレームから高速フレームへの多重化に際して該高速フレームの未定義バイトにオーバーヘッド情報を格納することとすれば、オーバーヘッド情報のトランスペアレント伝送が可能になる。しかしながら、特許文献1の技術は、フレームと多重装置とで周波数が同期していることを前提としている。すなわち、フレームと多重装置とでクロックが同期していない場合、特許文献1の技術では、受信フレームのオーバーヘッド情報に欠落や重複が発生してトランスペアレント伝送が行えなくなるという欠点がある。
【0021】
また、上述の特許文献2では、SDH/SONETフレームのオーバーヘッド情報のうち、値が固定或いは既知のものの一部を、他のデータに置き換える技術が開示されている(特許文献2の例えば段落0040〜0045参照)。この技術を応用すれば、低速フレームのオーバーヘッド領域をトランスペアレントに通信することが可能になる。しかしながら、特許文献2の技術は、SDH/SONETに準拠していないフレームを使用する必要がある。このため、SDH/SONETに適合する中継伝送装置を、特許文献2に対応する送信装置と受信装置との間に設置できないという欠点がある。
【0022】
この発明の課題は、トランスペアレント伝送装置のクライアント信号を、SDH/SONETフレーム等の多重化によって生成する場合に、多重化前のフレームに格納されたオーバーヘッド情報を廃棄せずにトランスペアレントに伝送する技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この発明に係るトランスペアレント伝送装置は、入力したクライアント信号を連結仮想コンテナに収容するマッピング部と連結仮想コンテナにポインタを付加する第1ポインタ処理部とポインタが付加された連結仮想コンテナを非連結仮想コンテナに分離する分離部とをそれぞれ有する複数の第1受信器と、複数の第1受信器から入力した非連結仮想コンテナを多重化することにより送信用ペイロード信号を生成する多重器と、送信用ペイロード信号にオーバーヘッド情報を付加することにより多重フレームを生成する第1送信器とを備える多重装置を有する。
【発明の効果】
【0024】
この発明に係るトランスペアレント伝送装置の多重装置では、クライアント信号を連結仮想コンテナに一旦格納してからポインタを付加し、その後で、独立した仮想コンテナに分離する。そして、分離後の各仮想コンテナを多重化する。これにより、クライアント信号のオーバーヘッド情報を廃棄せずにマルチペアレントに伝送することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、図中、各構成成分の大きさ、形状および配置関係は、この発明が理解できる程度に概略的に示してあるにすぎず、また、以下に説明する数値的条件は単なる例示にすぎない。
【0026】
この実施形態では、STM−1フレームを多重化することによりSTM−16フレームを生成する場合を例に採って説明する。
【0027】
この実施形態に係るトランスペアレント伝送装置について、多重装置と分離装置とに分けて説明する。この実施形態の多重装置と分離装置とは同一のトランスペアレント伝送装置に搭載されるが、別個のトランスペアレント伝送装置に搭載することも可能である。この実施形態に係るトランスペアレント伝送装置をOTN等の光通信ネットワークに接続する場合、該伝送装置と同一のトランスペアレント伝送装置を、対向装置として設置することができる。
【0028】
<多重装置>
図1は、この実施形態に係る多重装置の構成を示すブロック図である。図1に示したように、この実施形態に係る多重装置100は、12台のSTM−1受信器110−1〜110−12と、多重化器120と、STM−16送信器130とを備えている。
【0029】
STM−1受信器110−1〜110−12は、それぞれ、12系統のSTM−1フレーム(すなわちSTM−1♯1〜STM−1♯12)のいずれかを入力して、4台のAU−3に変換する。STM−1受信器110−1〜110−12は、それぞれ、光/電気変換部111と、タイミング再生部112と、マッピング部113と、ポインタ処理部114と、分離部115とを備えている。
【0030】
光/電気変換部111は、光信号として入力されたSTM−1フレームを、電気信号に変換する。
【0031】
タイミング再生部112は、STM−1フレームの電気信号を用いて、該STMフレームに同期するクロック信号f1を再生する。
【0032】
マッピング部113は、バーチャル・コンカチネーション技術を用いて、STMフレームの電気信号から、4連結された仮想コンテナVC−3(以下、「VC−3−4v」と記す)を生成する(後述)。ここで、バーチャルコンカチネーション技術とは、仮想コンテナ(VC)を仮想的に連結する技術であり、ITU−T勧告G.707で標準化されている。また、VC−3とは、仮想コンテナ連結方式の一つであり、連結単位となる帯域は約50Mbit/sである。なお、この実施形態ではVC−3を用いる場合を説明するが、他の連結方式を採用してもよい。例えば、VC−4の場合は、約150Mbit/s刻みで連結を行うことができる。
【0033】
ポインタ処理部114は、VC−3−4v信号にAUポインタを付加するとともに、クロックの変更を行う。AUポインタとは、仮想コンテナの先頭位置を示すためのポインタである。仮想コンテナVC−3にAUポインタを付加したものは、AU−3と称される。ポインタ処理部114からは、4連結されたAU−3が出力される。ポインタ処理部114の内部構成については、図2を用いて後述する。
【0034】
分離部115は、4連結されたAU−3信号を、4個の独立したAU−3信号に分離して、出力する。
【0035】
多重化器120は、STM−1受信器110−1〜110−12からそれぞれ出力されたAU−3を多重化する。上述のように、各STM−1受信器110−1〜110−12からは、それぞれ4個一組のAU−3が出力され、したがって、12台のSTM−1受信器110−1〜110−12から出力されるAU−3の総数は48個である。多重化器120は、これら48個のAU−3を多重化する。このフレームは、AUG−16と称される。
【0036】
STM−16送信器130は、AUG−16信号をSTM−16フレームに変換して、OTN等のネットワーク(図示せず)に出力する。送信器130は、オーバーヘッド生成部131と、電気/光変換部132とを備えている。
【0037】
オーバーヘッド生成部131は、AUG−16信号に、上述の多重セクション・オーバーヘッド(MSOH)および中継セクション・オーバーヘッド(RSOH)を付加する。これにより、STM−16と等価の電気信号が生成されたことになる。
【0038】
電気/光変換部132は、オーバーヘッド生成部131から入力された電気信号を光信号に変換して、出力する。
【0039】
図2は、ポインタ処理部114の内部構成例を示すブロック図である。図2に示したように、このポインタ処理部114は、エラスティック・ストア・メモリ201と、書込制御部202と、読出制御部203と、位相監視部204と、ポインタ生成部205と、ポインタ挿入部206とを有する。
【0040】
エラスティック・ストア・メモリ201は、書き込みと読み出しとを同時に行うことができる、デュアルポート・タイプのメモリである。エラスティック・ストア・メモリ201は、マッピング部113から、VC−3−4v信号と、VCフレームパルスとを入力する。VCフレームパルスとは、該VC−3−4v信号の先頭を示すパルス信号である。エラスティック・ストア・メモリ201は、書込制御部202から入力したアドレスにVC−3−4vデータおよびVCフレームパルスを格納し、また、読出制御部203から入力したアドレスのVC−3−4vデータを出力する。
【0041】
書込制御部202は、エラスティック・ストア・メモリ201に、書込制御信号(ここでは書込アドレス)を供給する。
【0042】
読出制御部203は、エラスティック・ストア・メモリ201に、読出制御信号(ここでは読出アドレスおよび読出イネーブル信号)を供給する。
【0043】
位相監視部204は、書込制御部202および読出制御部203の位相差から、エラスティック・ストア・メモリ201のデータ蓄積量の増加/減少を監視する。そして、位相監視部204は、かかる増加/減少が所定の閾値を超えた場合に、読出制御部203の読出タイミングを制御するとともに、ジャスティフィケーション・イベントを生成してポインタ生成部205に送る(後述)。
【0044】
ポインタ生成部205は、エラスティック・ストア・メモリ201から入力したVC−3−4v信号と外部から入力した装置内フレームパルスとの差分を用いて、AUポインタ値を算出する。さらに、ポインタ生成部205は、ジャスティフィケーション・イベントを用いて、ジャスティフィケーション情報を生成する。
【0045】
ポインタ挿入部206は、エラスティック・ストア・メモリ201から入力したVC−3−4v信号に、ポインタ生成部205が生成したAUポインタ値およびジャスティフィケーション情報を、AUポインタとして付加する。これにより、4連結されたAU−3信号が生成される。
【0046】
次に、この実施形態に係る多重装置100の動作について、詳細に説明する。
【0047】
まず、各STM−1受信器110−1〜110−12に、対応するSTM−1フレーム(すなわち、STM−1#1〜STM−1#12)が入力される。各STM−1受信器110−1〜110−12の光/電気変換部111は、STM−1フレームを光信号から電気信号に変換する。
【0048】
図3に、STM−1フレームのフォーマットを示す。図3から解るように、1個のSTM−1フレームは、270バイト(列)×9バイト(行)のデータで構成され、したがって全体で270×9=2430バイトである。先頭の9列には、中継セクション・オーバーヘッド(RSOH)、AUポインタおよび多重セクション・オーバーヘッド(MSOH)が配置される。SDH標準では1フレームあたり125μsで伝送されるので、伝送容量は(2430×8)ビット×125μs=155.52Mbit/sとなる。
【0049】
タイミング生成部112は、かかる電気信号を用いてSTM−1フレームのクロック信号f1を再生し、マッピング部113およびポインタ処理部114に送る。
【0050】
マッピング部113は、STMフレーム電気信号から、VC−3−4v(すなわち、4連結された仮想コンテナVC−3)を生成する。
【0051】
図4に、通常のVC−3−4vフレームのフォーマットを示す。図4から解るように、VC−3−4vは340バイト(列)×9バイト(行)のデータで構成され、したがって全体で3024バイトである。このうち、ペイロードは、336バイト(列)×9バイト(行)である。したがって、ペイロードの容量は、125μs当たり3024バイトである。また、図4において、パスオーバーヘッド(POH)は、VC−3フレームの管理情報を格納するオーバーヘッドであり、各種警報情報やパリティビット、マルチフレーム位相表示(H4バイト)等が含まれる。
【0052】
図4に示したように、通常のVC−3−4vでは、最初の4列に計4個のPOHが格納され、その後の各列には4個のVC−3のユーザデータが1列ずつ順次格納される。
【0053】
これに対して、この実施形態では、図5に示したように、STM−1フレームの信号データを、VC−3−4vフレームのペイロードに、オーバーヘッダも含めて格納する。但し、上述のように、STM−1フレームが2430バイトであるのに対してVC−3−4vフレームのペイロードは3024バイトであるため、該ペイロードには余り領域が生じる。このため、この実施形態では、この余り領域を、固定スタッフ・バイト(例えば全部‘1’のバイト・データ)で埋めるものとする。固定スタッフ・バイトの挿入位置は、任意であり、ペイロードの先頭或いは後端である必要はない。また、ペイロード内の複数の領域に分けて、固定スタッフ・バイトを挿入してもよい。さらには、該ペイロード内でのSTM−1信号の配置は限定されず、例えば、STM−1信号の先頭がペイロードの先頭に来る必要もなく、STM−1信号と該ペイロードとのバイト間の整合も必要ない。したがって、マッピング時のバイト・アライニングは不要である。
【0054】
マッピング部113は、VC−3−4vフレームのペイロードを以上のようにして作成した後、このペイロードの先頭側に4個のPOHを付加し(図5参照)、さらに、上述の固定スタッフ・バイトとは別の固定スタッフ・バイト(4行×2列)を挿入する。この固定スタッフ・バイトは、後の処理でVC−3をAU−3にマッピングする際にフレーム容量の整合をとるためのものであり、SDH標準で規定されている位置に挿入される。
【0055】
このようにして生成されたVC−3−4vフレームは、VCフレームパルス(該フレームの先頭を示すパルス)とともに、マッピング部113からポインタ処理部114に送られる。
【0056】
なお、マッピング部113は、クロック信号f1に同期して動作し、且つ、このクロック信号f1はタイミング生成部112によって受信STM−1フレームから再生される。したがって、マッピング部113から出力されるVC−3−4vフレームは、受信STM−1フレームに同期している。また、上述のVCフレームパルスも、クロック信号f1に同期している。
【0057】
ポインタ処理部114のエラスティック・ストア・メモリ201(図2参照)は、マッピング部113から、VC−3−4vフレームおよびVCフレームパルスを入力する。また、書込制御部202は、書込クロックが与えるタイミング(したがって、クロック信号f1が与えるタイミング)で、書込アドレスをエラスティック・ストア・メモリ201に供給する。そして、エラスティック・ストア・メモリ201は、該書込アドレスに、VC−3−4v信号およびVCフレームパルスを書き込む。
【0058】
読出制御部203は、装置内フレームパルスが与えるタイミングで、読出制御信号(読出アドレスおよび読出イネーブル信号)を生成して、エラスティック・ストア・メモリ201に送る。これにより、該読出アドレスに対応するVC−3−4v信号が、エラスティック・ストア・メモリ201から出力される。ここで、読出制御部203は、装置内クロック信号f2が与えるタイミングで動作する。したがって、VC−3−4v信号は、装置内クロック信号f2に同期して、エラスティック・ストア・メモリ201から出力されることになる。このようにして、この実施形態では、クロック信号f1が与える位相・周期(すなわち、STM−1フレームの受信周期)から、装置内クロック信号f2が与える位相・周期への、変更を行っている。
【0059】
このように、この実施形態では、エラスティック・ストア・メモリ201への書き込み周期と読み出し周期とが、非同期である。このため、エラスティック・ストア・メモリ201のデータ蓄積量は、一定ではなく、増減する。したがって、この実施形態では、該データ蓄積量の増減を、位相監視部204が監視している。位相監視部204は、該データ蓄積量の、増加方向の閾値および減少方向の閾値を記憶している。そして、位相監視部204は、該データ蓄積量が増加方向の閾値を超えた場合には負のジャスティフィケーション・イベントを出力し、且つ、該データ蓄積量が減少方向の閾値を超えた場合には正のジャスティフィケーション・イベントを出力する。
【0060】
読出制御部203は、正または負のジャスティフィケーション・イベントを入力すると、以下のようなスタッフ操作により、読み出しタイミングを調整する。
【0061】
読出制御部203は、ジャスティフィケーション・イベントを受信しなかった場合、図6に符号A,B,Dで示したように、当該VC−3−4vフレームのすべての信号を、エラスティック・ストア・メモリ201から読み出す。
【0062】
また、負のジャスティフィケーション・イベントを受信した場合(すなわち、エラスティック・ストア・メモリ201のデータ蓄積量が増加方向の閾値を超えた場合)、読出制御部203は、図6に符号Cで示したように、4個のH3バイトのタイミングで、ペイロードデータの読み出しを行う。これにより、エラスティック・ストア・メモリ201のデータ蓄積量は減少する。
【0063】
一方、正のジャスティフィケーション・イベントを受信した場合(すなわち、エラスティック・ストア・メモリ201のデータ蓄積量が減少方向の閾値を超えた場合)、読出制御部203は、H3バイトの次の4バイト分の読出時間(4バイト分の装置内クロック信号f2を入力している間)は読み出しを行わない。その後、読出制御部203は、エラスティック・ストア・メモリ201内のデータを、装置内クロック信号f2のタイミングにしたがって順次読み出す。これにより、エラスティック・ストア・メモリ201のデータ蓄積量は増加する。
【0064】
このようにしてエラスティック・ストア・メモリ201から読み出されたVC−3−4v信号は、ポインタ生成部205およびポインタ挿入部206に送られる。
【0065】
ポインタ生成部205は、かかるVC−3−4v信号とともに装置内フレームパルスを入力し、両者の差分を用いてAUポインタ値を算出する。また、ポインタ生成部205は、位相監視部204からジャスティフィケーション・イベントを入力した場合には、ジャスティフィケーション情報(すなわち、上述のようなスタッフ動作を実施する情報)を事前に生成する。AUポインタ値およびジャスティフィケーション情報は、ポインタ情報として、ポインタ挿入部206に送られる。
【0066】
ポインタ挿入部206は、エラスティック・ストア・メモリ201からVC−3−4v信号を入力するとともに、ポインタ生成部205からポインタ情報を入力する。そして、ポインタ挿入部206は、該VC−3−4v信号に該ポインタ情報を付加する。これにより、4連結されたAU−3信号が完成する。この信号は、分離部115に送られる。
【0067】
その後、上述のように、分離部115(図1参照)が、4連結されたAU−3信号を4個の独立したAU−3信号に分離し、多重化器120が、STM−1受信器110−1〜110−12から出力された同型48個のAU−3を多重化することによってAUG−16を生成する。さらに、オーバーヘッド生成部131が、AUG−16信号に、中継セクション・オーバーヘッド(RSOH)および多重セクション・オーバーヘッド(MSOH)を付加し、電気/光変換部132が、これを光信号に変換することにより、STM−16フレームが完成する。
【0068】
上述のように、この実施形態の多重装置100では、マッピング部113でSTM−1フレームからVC−3−4vを生成し、ポインタ処理部114でAUポインタを付加した後で、分離部115で独立のAU−3に分離する。換言すれば、この実施形態では、STM−1フレームを仮想連結された状態のVC−3フレームに一旦格納してからAUポインタを付加し、その後で、独立した状態に分離する。さらに、この実施形態のジャスティフィケーションでは、4バイト単位でスタッフ操作が行われる。したがって、この実施形態では、1台のポインタ処理部114で、AUポインタの付加を行うことができる。これに対して、仮想連結された4個のVC−3を分離した後でAUポインタを付加する場合、4個のVC−3フレームそれぞれについてに個別にポインタ値の計算等を行う必要があるため、4台のポインタ処理部が必要になる。このような理由から、この発明では、オーバーヘッド情報のトランスペアレント伝送が実現されるだけでなく、回路規模を縮小することもできる。
【0069】
<分離装置>
図7は、この実施形態に係る分離装置の構成を示すブロック図である。図7に示したように、この実施形態に係る分離装置700は、STM−16受信部710と、分離部720と、12台のSTM−1送信部730−1〜730−12とを備えている。
【0070】
STM−16受信部710は、OTN等のネットワーク(図示せず)からSTM−16フレームを受信し、RSOHおよびMSOHを抽出して各種処理を行った後、分離部720に送る。STM−16受信部710は、光/電気変換部711と、タイミング再生部712と、オーバーヘッド終端部713とを有する。
【0071】
光/電気変換部711は、光信号として入力されたSTM−16フレームを、電気信号に変換する。
【0072】
タイミング再生部712は、STM−16フレームの電気信号を用いて、該STMフレームに同期するクロック信号f3を再生する。
【0073】
オーバーヘッド終端部713は、STM−16フレームからRSOHおよびMSOHを終端して、必要な各種処理を行う。STM−16フレームのペイロードには、AUG−16信号が格納されている。このAUG−16信号は、分離部720に送られる。
【0074】
分離部720は、AUG−16信号を、48個のAU−3に分離して、対応するSTM−1送信部730−1〜730−12に送る。各STM−1送信部730−1〜730−12には、AU−3が4個ずつ振り分けられることになる。
【0075】
STM−1送信部730−1〜730−12は、それぞれ4個のAU−3から、STM−1フレーム#1〜#12を再生する。これらのSTM−1送信部730−1〜730−12は、それぞれ、4台のポインタ処理部731−1〜731−4と、タイミング再生部732と、4台の位相調整部733−1〜733−4と、結合部734と、デマップ部735と、電気/光変換部736とを有する。
【0076】
ポインタ処理部731−1〜731−4は、それぞれ、受信したAU−3のAUポインタに格納された情報に基づいて該AU−3からVC−3を抜き出すとともに、クロックの変更を行う。ポインタ処理部731−1〜731−4の内部構成については、図8を用いて後述する。
【0077】
タイミング再生部732は、ポインタ処理部731−1〜731−4からの情報を用いて送信クロックf4を再生する。
【0078】
位相調整部733−1〜733−4は、ポインタ処理部731−1〜731−4からそれぞれ出力された4個のVC−3フレームの位相合わせを行う。
【0079】
結合部734は、位相が一致する4個のVC−3フレームを結合することにより、VC−3−4vを再生する。
【0080】
デマップ部735は、再生されたVC−3−4vから、STM−1電気信号を抽出する。
【0081】
電気/光変換部736は、STM−1の電気信号を光信号に変換して、出力する。
【0082】
図8は、ポインタ処理部731−1〜731−4の内部構成例を示すブロック図である。図8に示したように、このポインタ処理部731−1〜731−4は、ポインタ抽出部801と、ポインタ解釈部802と、書込制御部803と、読出制御部804と、エラスティック・ストア・メモリ805と、位相監視部806とを備える。
【0083】
ポインタ抽出部801は、AU−3フレームとタイミングパルス(該AU−3フレームの先頭を示すパルス)とを用いて、該AU−3フレームからAUポインタを抽出する。
【0084】
ポインタ解釈部802は、ポインタ抽出部801から入力されたAUポインタを解釈して、VCフレームパルス(AU−3のペイロードに格納されたVC−3の先頭位置を示すパルス)と、データイネーブル信号(VC−3のペイロード区間を表示するイネーブル信号)とを生成する。
【0085】
書込制御部803は、データイネーブル信号に基づいて、書込制御信号(すなわち書込イネーブル信号および書込アドレス)を生成・出力する。書込制御部803は、書込クロックが与えるタイミングに基づいて動作し、この書込クロックはクロック信号f3に同期している。
【0086】
読出制御部804は、読出クロックに基づいて、読出制御信号(すなわち読出アドレス)を生成・出力する。この読出クロックは、クロック信号f4に同期している。
【0087】
エラスティック・ストア・メモリ805は、書込イネーブル信号および書込アドレスにしたがってVC−3信号およびVCフレームパルスを記憶し、読出アドレスにしたがってVC−3信号を出力する。
【0088】
位相監視部806は、書込制御部803および読出制御部804の位相差から、エラスティック・ストア・メモリ805のデータ蓄積量の増加/減少を監視する。そして、位相監視部806は、かかる増加/減少が所定の閾値を超えた場合に、読出制御部804の読出周波数を調整する。
【0089】
次に、この実施形態に係る分離装置700の動作について、詳細に説明する。
【0090】
まず、STM−16受信部710にSTM−16フレームが受信され、光/電気変換部711によって電気信号に変換される。タイミング再生部732は、この電気信号を用いて、STM−16フレームのクロック信号f3を再生する。
【0091】
そして、オーバーヘッド終端部713が、クロック信号f3に与えられたタイミングで、STM−16フレームのオーバーヘッド情報であるRSOHおよびMSOHを抽出し、各種必要な処理を行う。これらのオーバーヘッド情報は、該STM−16フレームを送信した装置と分離装置700との間のみでやり取りされる管理情報であるため、STM−16受信部710で終端しても問題にならない。
【0092】
分離部720は、クロック信号f3が与えるタイミングで、STM−16に格納されたAUG−16信号を48個のAU−3信号に分離して、対応するSTM−1送信部にそれぞれ振り分ける。また、これと同時に、各AU−3信号に対応するタイミングパルスが、STM−1送信部730−1〜730−12に送られる。
【0093】
STM−1送信部730−1〜730−12は、それぞれ、4個ずつのAU−3信号を、タイミングパルスとともに受信する。ポインタ処理部731−1〜731−4は、対応するAU−3信号のAUポインタを抽出することにより、該AU−3信号に格納されたVC−3信号の先頭を検出する。また、ポインタ処理部731−1〜731−4は、AUポインタにジャスティフィケーション情報が含まれている場合には、スタッフ処理を実施する。分離装置700におけるスタッフ処理は、多重装置100のポインタ処理部114(図2参照)の場合と異なり、各AU−3毎に個別に行う必要がある。各AU−3信号は中継伝送路において別個のパスとして扱われるため異なる経路を通過している可能性があり、さらには、各中継装置は必要に応じてAUポインタを書き換えるので、4個のAU−3の位相が一致しないからである。
【0094】
ポインタ処理部731−1〜731−4の具体的な動作について、図8を用いて説明する。
【0095】
ポインタ抽出部801は、タイミングパルスを用いて、AUポインタのH1、H2バイト(図5、図6参照)を抽出する。H1、H2バイトは、ポインタ解釈部802に送られる。ポインタ解釈部802は、これらのポインタ値から、VCフレームパルスおよびデータイネーブル信号を生成する。VCフレームパルスは、VC−3の先頭位置(すなわち、POHのJ1の位置、図6参照)を表すパルスである。また、データイネーブル信号は、VC−3のペイロード区間を表示する信号である。上述のように、AUポインタにジャスティフィケーション情報が含まれている場合には、スタッフ処理が実施される。
【0096】
次に、書込制御部803が、データイネーブル信号に基づいて、書込イネーブル信号および書込アドレスを生成・出力する。上述のように、書込イネーブル信号および書込アドレスは、書込クロックに同期して出力され、したがって、クロック信号f3に同期している。
【0097】
エラスティック・ストア・メモリ805は、書込イネーブル信号および書込アドレスにしたがって、VC−3信号およびVCフレームパルスを記憶する。したがって、エラスティック・ストア・メモリ805の書込動作も、クロック信号f3に同期している。
【0098】
一方、読出制御部804は、読出クロックが与えるタイミングで、読出アドレスを生成・抽出する。これにより、エラスティック・ストア・メモリ805から、VC−3信号が出力される。上述のように、読出クロックは、クロック信号f4に同期しているので、エラスティック・ストア・メモリ805がVC−3信号を出力するタイミングも、クロック信号f4に同期している。上述のように、クロック信号f4は、タイミング再生部732によって生成され、STM−1フレームの送信クロックに同期している。
【0099】
このようにして、この実施形態では、クロック信号f3が与える位相・周期(すなわち、STM−16フレームの受信周期)から、クロック信号f4が与える位相・周期(すなわち、STM−1フレームの送信周期)への、変更を行っている。
【0100】
上述のように、4個のAU−3信号は非同期である場合があり、したがって、各AU−3信号に格納されたVC−3信号も非同期である場合がある。このため、各VC−3からぺーロードを取り出してSTM−1信号を再生するためには、各VC−3信号に同期したタイミング成分(すなわち、クロック)を抽出する必要がある。このタイミング抽出は、上述のタイミング再生部732が行っている。位相監視部806は、タイミング再生部732でクロック再生を行うために必要な制御を行うために、設けられている。位相監視部806は、エラスティック・ストア・メモリ805のデータ蓄積量の増加/減少を監視する。そして、位相監視部806は、かかる増加/減少が所定の閾値を超えた場合に、タイミング再生部732に制御信号を送る。ここで、データ蓄積量が増加方向の閾値を超えた場合には、クロック信号f4の周波数がVC−3の周波数よりも低いことを示す制御信号が、タイミング再生部732に送られる。逆に、データ蓄積量が減少方向の閾値を超えた場合には、クロック信号f4の周波数がVC−3の周波数よりも高いことを示す制御信号が、タイミング再生部732に送られる。タイミング再生部732は、位相監視部806から受け取った制御信号に基づいて、クロック信号f4の周波数を変化させる。これにより、読み出しクロックの周波数も変化する。このような動作により、エラスティック・ストア・メモリ805のデータ蓄積量は、一定に保たれるようになる。データ蓄積量が一定のとき、クロック信号f4の周波数は、VC−3の周波数と同期している。
【0101】
この実施形態では、4個のVC−3を再生した後、これらを結合してSTM−1フレームを再生する(後述)。このため、各ポインタ処理部731−1〜731−4で、クロック信号f4が互いに同期していなければならない。したがって、この実施形態のタイミング再生部732では、各ポインタ処理部731−1〜731−4から出力される4個の制御信号のうち、いずれか1個を選択する。そして、選択された制御信号から生成されたクロック信号f4が、各ポインタ処理部731−1〜731−4の読出クロックとして使用される。4個のVC−3は、元々同じ周波数である。したがって、これらの制御信号のいずれか1個のみを使用しても、問題は生じない。選択された制御信号に対応するVC−3信号に、SDH標準で規定された警報が発生した場合には、他のポインタ処理部731−1〜731−4で生成された制御信号を新たに選択すればよい。
【0102】
ポインタ処理部731−1〜731−4から出力されたVC−3信号は、位相調整部733−1〜733−4(図7参照)に送られる。上述のように、4個のAU−3信号は異なる経路を通過している場合があり、したがって、これらのAU−3から抽出したVC−3の位相も一致していない場合がある。このため、位相調整部733は、4個のVC−3の位相合わせを行う。この実施形態では、各VC−3信号のオーバーヘッドに格納されたH4バイトに含まれるマルチフレーム位相を検出して、かかる位相合わせを行うこととする。各VC−3信号の位相差を吸収するためには、例えば、これらのVC−3を一旦メモリに蓄積して、同じタイミングで読み出せばよい。
【0103】
位相合わせされた4個のVC−3信号は、結合部734に送られる。結合部734は、これら4個のVC−3信号を結合することにより、VC−3−4vフレームを再生する。さらに、デマップ部735で、VC−3−4vフレームのペイロードから、固定スタッフバイトを取り除く。これにより、STM−1フレームが、元のフレーム構造を保った状態で、抽出される。
【0104】
抽出されたSTM−1フレームは、電気/光変換部736で光信号に変換されて、分離装置700から出力される。
【0105】
ここで、結合部734およびデマップ部735は、クロック信号f4が与えるタイミングで動作する。さらに、クロック信号f4は、VC−3信号に同期している。したがって、再生されたSTM−1フレームも、VC−3に同期している。このように、この実施形態では、STM−1フレームの格納データのみならず、タイミング成分もトランスペアレントに伝送することができる。
【0106】
以上説明したように、この実施形態に係るトランスペアレント伝送装置によれば、SDH信号をオーバーヘッド情報およびタイミング成分を含めてトランスペアレントに伝送することができ、さらには、非同期信号のトランスペアレント伝送も可能である。
【0107】
また、この実施形態に係るトランスペアレント伝送装置は、SDH標準に完全に準拠しているので、依存の中継装置等を介在させることができ、したがって、柔軟なネットワークを構築することができるとともに、クライアント信号のオーバーヘッド情報とは別に送信側多重装置と受信側分離装置との間で使用されるオーバーヘッド情報を送信することができる。
【0108】
加えて、STM−1フレーム等の、伝送速度2.48832Gbit/s未満のクライアント信号を、トランスペアレント伝送することができる。
【0109】
なお、この実施形態では、単一の光波長を用いてトランスペアレント伝送を行う場合を例に採って説明したが、電気/光変換部132(図1参照)の出力光波長を動的に変更でき或いは選択できるように構成すれば、WDM装置におけるトランスポンダに、この実施形態を適用することができる。
【0110】
また、この実施形態では、STM−1信号を4個のVC−3フレームに収容する場合を例に採って説明したが、使用するVCタイプは、用途やコスト等に応じて適宜選択することが可能である。例えば、2個のVC−4フレームにSTM−1信号を収容することも可能である。この場合、収容するインタフェース数は減少するものの、回路規模を縮小できるという利点がある。また、VC−11/12、VC−2のような低次パスを使用することも可能である。
【0111】
この実施形態では、クライアント信号としてSTM−1信号を収容する場合を例に採って説明したが、STM−N信号の形式はSTM−1に限定されず、例えばSTM−0,STM−4,STM−16も採用できる。さらには、一種類の装置で異なる種類のクライアント信号を収容して多重することも可能である。
【0112】
この実施形態では、SDH標準のクライアント信号を使用する場合を例に採って説明したが、他の種類のクライアント信号、例えばSONET標準のクライアント信号を使用する場合も、この発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】実施形態に係る多重装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】実施形態に係る多重装置に設けられたポインタ処理部の構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】実施形態に係る多重装置の動作を説明するための概念図である。
【図4】実施形態に係る多重装置の動作を説明するための概念図である。
【図5】実施形態に係る多重装置の動作を説明するための概念図である。
【図6】実施形態に係る多重装置の動作を説明するための概念図である。
【図7】実施形態に係る分離装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図8】実施形態に係る分離装置に設けられたポインタ処理部の構成を概略的に示すブロック図である。
【図9】OTNの構造を概念的に示すブロック図である。
【符号の説明】
【0114】
100 多重装置
110−1〜110−12 STM−1受信器
111,711 光/電気変換部
112,712,732 タイミング再生部
113 マッピング部
114,731−1〜731−4 ポインタ処理部
115 分離部
120 多重化器
130 STM−16送信器
131 オーバーヘッド生成部
132,736 電気/光変換部
201,805 エラスティック・ストア・メモリ
202,803 書込制御部
203,804 読出制御部
204,806 位相監視部
205 ポインタ生成部
206 ポインタ挿入部
700 分離装置
710 STM−16受信部
720 分離部
730−1〜730−12 STM−1送信部
733 位相調整部
734 結合部
735 デマップ部
801 ポインタ抽出部
802 ポインタ解釈部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力したクライアント信号を連結仮想コンテナに収容するマッピング部と、前記連結仮想コンテナにポインタを付加する第1ポインタ処理部と、前記ポインタが付加された前記連結仮想コンテナを非連結仮想コンテナに分離する分離部とをそれぞれ有する、複数の第1受信器と、
該複数の第1受信器から入力した前記非連結仮想コンテナを多重化することにより、送信用ペイロード信号を生成する多重器と、
前記送信用ペイロード信号にオーバーヘッド情報を付加することにより、多重フレームを生成する第1送信器と、
を備える多重装置を有することを特徴とするトランスペアレント伝送装置。
【請求項2】
前記第1ポインタ処理部が、
前記連結仮想コンテナを一時的に格納する第1メモリと、
該第1メモリに前記連結仮想コンテナを書き込むための書込制御信号を生成する第1書込制御部と、
前記第1メモリから前記連結仮想コンテナを読み出すための読出制御信号を生成する第1読出制御部と、
前記メモリの蓄積データ量を監視し、該蓄積データ量が減少方向の閾値或いは増加方向の閾値を超えたか否かを検出する第1位相監視部と、
前記メモリから読み出された前記連結仮想コンテナに対応する前記ポインタを生成するポインタ生成部と、
前記ポインタを前記連結仮想コンテナに付加するポインタ挿入部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のトランスペアレント伝送装置。
【請求項3】
前記第1書込制御部が、前記クライアント信号から再生されたクロックに同期して、前記第1メモリへの書込タイミングを制御することを特徴とする請求項2に記載のトランスペアレント伝送装置。
【請求項4】
前記第1読出制御部が、装置内で生成された装置内クロックに同期して、前記第1メモリからの読み出しタイミングを制御することを特徴とする請求項2または3に記載のトランスペアレント伝送装置。
【請求項5】
前記蓄積データ量が前記減少方向の閾値を超えたときに、前記第1読出制御部が、所定バイト分の期間だけ前記メモリからの読み出しを行わず、且つ、
前記蓄積データ量が前記増加方向の閾値を超えたときに、前記第1読出制御部が、前記仮想コンテナの所定オーバーヘッダ情報を所定バイトだけ読み飛ばす、
ことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のトランスペアレント伝送装置。
【請求項6】
前記多重装置から受信された前記多重フレームのオーバーヘッド情報を終端する終端部を有する第2受信器と、
前記多重フレームから、複数の前記非連結仮想コンテナをそれぞれ分離する分離器と、
対応する前記非連結仮想コンテナを入力してペイロードデータを抽出する複数の第2ポインタ処理部と、前記ペイロードデータの位相合わせを行う位相合わせ部と、位相合わせされた前記ペイロードデータを結合することにより前記連結仮想コンテナを再生する結合部と、該連結仮想コンテナから前記クライアント信号を再生するデマップ部とを有する第2送信部と、
を備える分離装置をさらに有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のトランスペアレント伝送装置。
【請求項7】
前記第2ポインタ処理部が、
前記ペイロードデータから前記ポインタを抽出するポインタ抽出部と、
該ポインタ抽出部が抽出した前記ポインタを用いて前記ペイロードデータにおける前記非連結仮想コンテナの格納位置を特定するポインタ解釈部と、
前記非連結仮想コンテナを一時的に格納する第2メモリと、
該第2メモリに前記非連結仮想コンテナを書き込むための書込制御信号を生成する第2書込制御部と、
前記第2メモリから前記非連結仮想コンテナを読み出すための読出制御信号を生成する第2読出制御部と、
前記メモリの蓄積データ量を監視し、該蓄積データ量が減少方向の閾値或いは増加方向の閾値を超えたか否かを検出する第2位相監視部と、
を有することを特徴とする請求項6に記載のトランスペアレント伝送装置。
【請求項8】
前記第2書込制御部が、前記多重フレームから再生されたクロックに同期して、前記書込タイミング信号を出力することを特徴とする請求項7に記載のトランスペアレント伝送装置。
【請求項9】
前記第2読出制御部が、それぞれの前記ペイロードデータから再生されたクロックのいずれかに同期して、前記読出タイミング信号を出力することを特徴とする請求項7または8に記載のトランスペアレント伝送装置。
【請求項10】
前記蓄積データ量が前記減少方向の閾値を超えたときに、前記第2読出制御部が、前記メモリからの読み出し周波数を高くし、且つ、
前記蓄積データ量が前記増加方向の閾値を超えたときに、前記第2読出制御部が、前記メモリからの読み出し周波数を低くする、
ことを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載のトランスペアレント伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−131063(P2008−131063A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309997(P2006−309997)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(593065844)株式会社沖コムテック (127)
【Fターム(参考)】