説明

トランス用ボビン及びトランス

【課題】 高電圧出力タイプのインバータトランスであっても、高耐圧の部品を用いることなく構成した異常検出回路にて異常を検出すること
【解決手段】 外周に1次コイル12と2次コイル13を装着するための巻線部、1次コイルの端部を取り付けるための1次側の端子ピン16、2次コイルの端部を取り付けるための2次側の端子ピン17を備えたボビン11に、両コイルを装着すると共に磁気コア14を装着する。1次側に2次コイルの漏れ磁束を検出するための磁束検知用端子ピン18を設ける。磁束検知用端子ピンは、1次側及び2次側の端子ピンと非導通にする。磁束検知用端子ピンには、2次コイルに発生する磁束に応じた電位が発生するため、その電位を監視することで異常検知できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスボビン及びそれを用いたトランスに関するもので、特に、高出力タイプに適する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶TVや大型の液晶モニタでは、一般に、バックライトとして冷陰極管が用いられている。多数本の冷陰極管を液晶パネルの背面に適度の間隔で配置し、インバータトランスを介したインバータ回路の出力にて各冷陰極管を点灯させることで画面全体の輝度を保っている。
【0003】
このような冷陰極管点灯用のインバータトランスは、通常、巻線部と、この巻線部に形成された端子保持部とを一体化したボビンを用い、そのボビンの巻線部に巻線材を巻き回すことで1次コイル及び2次コイルを形成するとともに、そのボビンに磁気コアを装着して構成する。このとき、巻線材の先端は、端子保持部に装着した端子ピンに接続する。また、磁気コアは、巻線部の内部を通り外部で閉磁路を構成する配置をとる。
【0004】
液晶テレビや液晶モニタに用いられる液晶パネルの大型化により、バックライトに使用される放電管の本数は著しく増加している。具体的には、40インチパネルで20本、46インチパネルでは24本もの放電管を使用する。そのため、放電管の点灯に使用するインバータトランスのコストや実装面積の増大、実装基板の大型化が問題となっており、その対策としてインバータトランスは特許文献1等に開示される2出力タイプのものが主流となっている。
【0005】
一方、インバータ回路は、その出力を監視する保護回路を備えている。図5は、係る保護回路を備えたインバータ回路の一部を示している。同図に示すように、インバータ用のトランス1は、1つの1次コイル2と2つの2次コイル3を備える。2つの2次コイル3には、出力系統に対して並列に異常検出回路4を接続する。この異常検出回路4は、2次コイルの出力端子間に接続され、その電位差を監視する。そして、出力短絡や出力開放などの異常が生じた場合、2次コイル3の出力端子間の電位差は0になったり正常動作時の電位差に比べて異常に大きい値となったりする。異常検出回路4は、係る異常が生じた場合に、異常検出回路4の出力がONになる。係るONになったことを契機として、図示省略する制御回路により、トランス1の1次コイルへの電圧印加をOFFにするなどの異常時処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−112981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、この種のバックライト用のインバータ回路は、輝度調整等のために定電流回路が採用されている。冷陰極管は、定電流駆動により例えば1kV〜1.5kV程度の高電圧、数mA程度の低電流で点灯させている。そのため、異常検出回路4を構成する回路部品、特に、出力ラインに接続されるコンデンサCは、高耐圧のものを使用する必要がある。通常安全を考慮し、定格出力の3倍程度の容量のものを用いるため、3kV〜4.5kVといった非常に高い耐圧のコンデンサCが必要となる。
【0008】
コンデンサCの寸法形状は、耐圧が大きくなるほど大型になることから、実装面積を広く使用する必要が生じ、小型化・軽薄化のネックとなる。さらに、異常検出回路4は、2次コイルの出力端子間に接続するため、トランスの2次側に各回路部品を配置する必要があり、設置レイアウトに制限を生じる。
【0009】
高耐圧の部品を用いることなく構成した異常検出回路にて異常を検出することができるようにしたいという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明のトランスは、(1)外周に1次コイルと2次コイルを装着するための巻線部、前記1次コイルの端部を取り付けるための1次側の端子、前記2次コイルの端部を取り付けるための2次側の端子、を備えたトランス用ボビンであって、前記2次コイルの漏れ磁束を検出するための磁束検知用端子を備え、前記磁束検知用端子は、前記1次側の端子並びに前記2次側の端子と非導通となるようにした。
【0011】
通常動作時では、2次コイルから漏れ磁束が発生するため、その漏れ磁束に基づいて磁束検知用端子に電位が発生する。この発生する電位は、磁束に応じた大きさとなるので、出力短絡或いは出力開放等の異常が生じた場合には、2次コイルに電流が流れずに漏れ磁束が0になったり、異常電流が流れて漏れ磁束が通常よりも大きくなったりする。従って、磁束検知用端子に発生する電位を監視することで異常の有無を判定できる。この電位は、漏れ磁束に基づくものであるため、仮に2次コイルの出力が1kV以上などであっても小さくて済む。よって、異常を検出し保護するための回路を構成する部品も高耐圧のものが不要となり、小型化で省スペースとなる。
【0012】
(2)前記1次側の端子の設置側と、前記2次側の端子の設置側が異なり、前記磁束検知用端子は、前記1次側の端子と同じ側に配置するとよい。2次側の出力を検知するものでないため、2次側に設置する必要性が無くなり、電圧の小さい1次側に設置することで安全性が高まる。(3)前記磁束検知用端子は、前記1次側の端子の設置側と、前記2次側の端子の設置側のいずれとも異なる箇所に設けてもよい。
【0013】
(4)冷陰極管を負荷として電力供給するインバータトランス用のボビンに適用できる。冷陰極管であるため、2次側の出力は1kV以上の高電圧になるが、上述したように高耐圧用の部品を用いることなく異常検知ができる。
【0014】
(5)本発明にかかるトランスは、(1)から(4)のいずれかのトランス用ボビンと、前記巻線部に装着した1次コイル及び2次コイルを備えたトランスである。
【発明の効果】
【0015】
磁束検知用端子には、2次コイルから発生する漏れ磁束に応じた電位が発生するので、その電位を監視することで異常検知ができる。漏れ磁束に基づく電位であるため、さほど大きくないので異常検出回路を高耐圧の部品を用いることなく構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の好適な一実施形態を示す平面図である。
【図2】その底面図である。
【図3】動作原理を説明する図である。
【図4】トランスに接続される外部回路(保護回路を構成する異常検出回路)を含む回路図である。
【図5】従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1,図2は、本発明に係るトランスの一態様である1入力2出力(出力端子は4つ)タイプのインバータ用のトランスの一例を示している。また、このトランスは、直流入力を交流出力に変換し、冷陰極管を負荷として電力を供給するインバータトランスである。
【0018】
トランス10は、ボビン11と、そのボビン11の軸方向中央部位に巻き付けられた1次コイル12と、ボビンの軸方向両側に巻き付けられた2次コイル13と、ボビン11に装着された磁気コア14と、ボビン11に取り付けられた端子ピン16,17を備えたものを基本構成としている。
【0019】
ボビン11は、筒状の本体11aの両端にフランジ11bを備えるとともに、本体11aの中間の2箇所に所定枚数の仕切り板11cを備え、さらに、本体11aの適宜位置に端子装着部11dを設けた構成を採る。本体11aは、両端が開放した角筒形としている。また端子装着部11dは、本体11aの軸方向の位置では、フランジ11b,仕切り板11cとほぼ同じ位置に設ける。そして本実施形態のトランス10は、面実装タイプであり、ボビン11を横たわらせる状態で回路基板に設置する。端子装着部11dは、回路基板に設置する姿勢で当該回路基板に対向する底面側に設けられる。
【0020】
2箇所に設けた仕切り板11c間の領域は、中央巻線領域(巻線部)11fとなる。その中央巻線領域11fの本体11aの外周囲に巻線材を巻き付けることで、1次コイル12を装着する。2箇所の仕切り壁11cと両端のフランジ11bとの間の領域は、外側巻線領域(巻線部)11eとなる。その外側巻線領域11eの本体11aの外周囲に巻線材を巻き付けることで、2次コイル13を装着する。
【0021】
磁気コア14は、フェライトなどで構成した一対のE型コアを用い、各E型コアの中脚部14aを筒状の本体11a内に挿入する。そして、本体11aに挿入した中脚部14a同士並びに本体11aの外側に配置した外脚部14b同士の先端を接触或いは近接させて閉磁路を形成する。
【0022】
端子装着部11dの側面に外側に突出するように端子ピン16,17が挿入固定される。一方の側面に設けた端子ピン16は、1次コイル12の巻線材の先端12aが巻き付けられるとともに半田付けされて固定される。他方の側面に設けた端子ピン17には、2次コイル13の巻線材の先端13aが巻き付けられるとともに半田付けされて固定される。これらの基本的な構成は、従来のトランスと同様である。
【0023】
ここで本発明では、一次側の端子ピン16が配置された側面に、磁束検知用端子ピン18を設けた。この磁束検知用端子ピン18は、1次側の端子ピン16と同様に、端子装着部11dの側面から外側に突出するように配置する。この磁束検知用端子ピン18は、トランスの入力,出力(端子ピン16,17)に非導通状態で電気的に独立している。そして、2次コイル13の通電により発生する磁束の影響を受ける位置に設置している。
【0024】
この磁束検知用端子ピン18は、金属プレートからなる細長な帯状からなり、一端をボビン11の内部に埋め込むことで一体化し、外部に露出する部位を適宜折り曲げその先端は、他の端子ピン16,17の先端と同一平面上に位置する。これにより、このトランス10を回路基板に配置した際に、磁束検知用端子ピン18も他の端子ピン16,17同様に回路基板の表面に接触する。よって、磁束検知用端子ピン18は、図示省略する制御回路を構成する配線パターン上に置かれ、半田付け等されて電気的・機械的に接続することができる。またこの例では一箇所に磁束検知用端子ピン18を2本ずつ設けている。
【0025】
次に動作原理を説明する。図3(a)は、本実施形態のトランスの模式図であり、図3(b)は、2次コイル側を示す模式図である。上述した実施形態と同一の部材に対しては同一の符号を付してある。図3(a)に示すように、2次コイルは、トランス10の長手方向両端側に配置している。そこで、上記の磁束の影響を受けるためには、磁束検知用端子ピン18は、その2次コイル13が設置されている領域付近に配置するのが好ましい。
【0026】
そして、入力・出力と非導通の独立した状態にするためには、端子ピン16,17と離す配置がよい。そして、2次側の端子ピン17は、トランス10の一方の長辺の両端並びに中央とバランスよく配置しているため、当該2次側の端子ピン17が設置された側面に磁束検知用端子ピン18を設けるのはあまり好ましくない。また、それと反対側の長辺(1次側の端子ピン16が取り付けられた側)を見ると、長手方向中央には当該1次側の端子ピン16が存在しているので、あまり中央よりにするのは好ましくない。そこで、本実施形態では、1次側の側面であり、1次側の端子ピン16から最も離れた両端にそれぞれ磁束検知用端子ピン18を設けた。
【0027】
また、図3(b)に示すように、2次コイル13に流れる電流の向きがIとすると、2次コイル13の周囲で発生する磁束Bの向きは、図示する方向になる。よって、磁束の向きに合わせ、磁束検知用端子ピン18の感度が高くなるようにするため、本実施形態では、長辺の側面から外側(長手方向と直交する方向)に突出するように磁束検知用端子ピン18を取り付けた。
【0028】
よって、例えば図3(b)中二点鎖線で示すように、短辺側の側面に設けた場合、突出方向は90度異なり、短辺の側面と直交する方向(トランスの長手方向と平行な方向)とすると良い。また、設置位置は、上述した理由から本実施形態では、1次側,2次側の端子ピンが未設置の角にしたが、本発明はこれに限ることはなく、絶縁耐圧がしっかりとれ、磁束検知用端子ピン18が非導通の状態を保てれば、1次側の端子ピン16に近づけても良いし、2次側に設置しても良い。
【0029】
また、上述した実施形態では、1次コイルが1つで2次コイルが2つ設けたタイプとしたが、2次コイルは1つでも良いし、3つ以上でも良い。さらに、冷陰極管用のインバータ用トランスに限ることはなく、熱陰極管その他の点灯管でも良いし、ランプ以外のものでも良い。但し、コイルからの漏れ磁束がある程度ないと検知できないため、高出力タイプに適用するのが好ましい。
【0030】
図4は、本実施形態のトランスに異常検出回路20を接続した状態の回路図を示している。磁束検知用端子ピン18には、2次コイル13に発生する磁束に応じた電位が発生するため、出力短絡或いは出力開放等の異常が生じた場合には、2次コイル13に電流が流れずに漏れ磁束が0になったり、異常電流が流れて漏れ磁束が通常よりも大きくなったりする。従って、異常検出回路20は、磁束検知用端子ピン18に発生する電位を検知し、正常範囲を超えた場合に異常検知信号を出力する。もちろん、異常検出回路の回路構成は、図示したものに限られず各種のものを用いることができる。
【0031】
本実施形態では、2次コイルの出力端子間電圧を監視するのではなく、2次コイルの漏れ磁束に基づいて発生する磁束検知用端子ピン18の電位に基づくため、監視対象の電圧は小さい。よって、異常検出回路20を構成する回路部品も、高耐圧のものは不要で小型なもので実現できる。その結果、実装面積も小さくできる。さらに、磁束検知用端子ピン18は、2次コイル13の近くに設置することができることも相まって、2次側の出力に比べれば小さいものの比較的電位は大きく現れるので、ノイズなどの影響にも強く、正常動作時で出現する電位の変動は少ない。よって、異常検出を含む保護回路も安定した動作が確保できる。
【符号の説明】
【0032】
10 トランス
11 ボビン
12 1次コイル
13 2次コイル
14 磁気コア
16,17 端子ピン
18 磁束検知用端子ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に1次コイルと2次コイルを装着するための巻線部、
前記1次コイルの端部を取り付けるための1次側の端子、
前記2次コイルの端部を取り付けるための2次側の端子、
を備えたトランス用ボビンであって、
前記2次コイルの漏れ磁束を検出するための磁束検知用端子を備え、
前記磁束検知用端子は、前記1次側の端子並びに前記2次側の端子と非導通であることを特徴とするトランス用ボビン。
【請求項2】
前記1次側の端子の設置側と、前記2次側の端子の設置側が異なり、
前記磁束検知用端子は、前記1次側の端子と同じ側に配置することを特徴とする請求項1に記載のトランス用ボビン。
【請求項3】
前記磁束検知用端子は、前記1次側の端子の設置側と、前記2次側の端子の設置側のいずれとも異なる箇所に設けたことを特徴とする請求項1に記載のトランス用ボビン。
【請求項4】
冷陰極管を負荷として電力供給するインバータトランス用のボビンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のトランス用ボビン。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかのトランス用ボビンと、前記巻線部に装着した1次コイル及び2次コイルを備えたトランス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−204567(P2012−204567A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67139(P2011−67139)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000237721)FDK株式会社 (449)