説明

トランス

【課題】安全規格を満たし、1次巻線と2次巻線との磁気結合が高く、小型化及び低背化が図られたトランスの提供。
【解決手段】第一の1次巻線51は、仕切板22、23よりも上下方向及び左右方向へ突出しないように第1セクション21Aに巻回されている。第一の2次巻線52、第二の2次巻線53は、仕切板22、23よりも上下方向及び左右方向へ突出しないように第3セクション21Cに巻回されている。第二の1次巻線54は3層絶縁ワイヤからなり、第一の1次巻線51と直列接続される。第二の1次巻線54は、仕切板22、23よりも上下方向及び左右方向へ突出しないように第2セクション21Bに巻回され、その一端部、他端部は仕切板22の引出溝22aを通されて、略筒形状部21の断面形状を規定する前述の側辺に相当する部分に対向して端子台31の方へ引出されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトランスに関し、特にボビンの略筒形状部の周面が略筒形状部の軸方向において複数のセクションに仕切られ1次巻線、2次巻線が別々のセクションに巻回されているトランスに関する。
【背景技術】
【0002】
1次巻線と2次巻線とがボビンに巻回されている構成の電源用のトランスが従来より知られている。ボビンは略筒形状部を有しており、略筒形状部の軸方向において略筒形状部の周面は仕切板によって複数のセクションに仕切られている。各セクションには、1次巻線、2次巻線がそれぞれ巻回されており、略筒形状部の軸方向においては、仕切板が所定の厚さを有することにより1次巻線と2次巻線とは所定の距離で離間し、安全規格を満たしている。このようなトランスは、例えば、実開平5−48313号公報(特許文献1)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−48313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来のトランスでは、安全規格を満たすように仕切板が所定の厚さを有していたため、1次巻線と2次巻線との磁気結合を高くすることは困難であった。特に近年では、トランスに対して高周波化の要求が高まり、リーケージインダクタンスはより小さな値が要求されているが、上述のように安全規格を満たさなければならないために、磁気結合を高くするという手段によって、リーケージインダクタンスの値を小さくすることは困難であった。
【0005】
また、近年ではトランスに対して小型化及び低背化の要求が高まり、ボビンの小型化及び低背化が図られている。ボビンが小型化、低背化されると1次巻線、2次巻線を巻回するためのスペースが少なくなるが、前述のように仕切板を所定の厚さで確保しなければならないことから当該巻回のためのスペースの確保が困難になっていた。換言すれば、仕切板を所定の厚さで確保することが小型化及び低背化の妨げとなっていた。
【0006】
そこで本発明は、安全規格を満たし、1次巻線と2次巻線との磁気結合が高く、小型化及び低背化が図られたトランスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、絶縁材料からなる略筒形状部を備え、該略筒形状部の外周面が該略筒形状部の軸方向に隣接して並ぶ第1セクションと第2セクションと第3セクションとを有するボビンと、該ボビンに設けられた端子電極と、該略筒形状部の内周面により画成される空間に挿入されたコアと、絶縁被膜により被覆された導線からなり該第1セクションに巻回され一端部及び他端部が該端子電極に電気的に接続された1次巻線と、絶縁被膜により被覆された導線からなり該第3セクションに巻回され一端部及び他端部が該端子電極に電気的に接続された2次巻線と、該1次巻線及び該2次巻線の絶縁被膜よりも絶縁性の高い絶縁被膜により被覆された導線からなり該第2セクションに巻回され1次巻線又は2次巻線を構成する高絶縁巻線と、を備えるトランスを提供している。
【0008】
絶縁材料からなる略筒形状部を備え、略筒形状部の外周面が略筒形状部の軸方向に隣接して並ぶ第1セクションと第2セクションと第3セクションとを有するボビンと、絶縁被膜により被覆された導線からなり該第1セクションに巻回され一端部及び他端部が該端子電極に電気的に接続された1次巻線と、絶縁被膜により被覆された導線からなり該第3セクションに巻回され一端部及び他端部が該端子電極に電気的に接続された2次巻線と、該1次巻線及び該2次巻線の絶縁被膜よりも絶縁性の高い絶縁被膜により被覆された導線からなり該第2セクションに巻回され1次巻線又は2次巻線を構成する高絶縁巻線と、を備えるため、従来1次巻線と2次巻線とを所定の距離で離間させるためのデッドスペースとなっていた部分を、高絶縁巻線を巻回するためのスペースとして有効活用することができる。このため、小型化及び低背化の要求を充足し、且つ、所望の巻回数で1次巻線又は2次巻線を巻回することができる。
【0009】
また、第2セクションに1次巻線又は2次巻線を構成する高絶縁巻線を巻回したため、1次巻線と2次巻線の磁気結合を高くすることができ、これによってリーケージインダクタンスの値を小さくし、高周波化の要求を充足することができる。更に、高絶縁巻線の巻回数を調整することでリーケージインダクタンスの値を調整することができる。より具体的には、巻回数を多くすることによりリーケージインダクタンスの値を小さくすることができ、巻回数を少なくすることによりリーケージインダクタンスの値を大きくすることができる。
【0010】
また、1次巻線の全部、又は2次巻線の全部を高絶縁巻線としなくて済む。このため、高絶縁巻線は高価であるがトランスの製造にかかる費用を極力抑えることができる。また、絶縁被覆が厚く直径が大きい高絶縁巻線を多く巻回せずに済み、1次巻線又は2次巻線の巻回数が少なくなってしまうことを極力防止することができる。
【0011】
ここで、該高絶縁巻線は3層絶縁ワイヤからなることが好ましい。高絶縁巻線は3層絶縁ワイヤからなるため、より確実に絶縁を図ることができる。
【0012】
また、該第1セクションと該第2セクションとの境界部、及び該第2セクションと該3セクションとの境界部には、該略筒形状部の周方向へ延出する仕切板がそれぞれ立設され該第1セクションと該第2セクションとは該仕切板によって仕切られ、該第2セクションと該3セクションとは該仕切板によって仕切られていることが好ましい。
【0013】
第1セクションと第2セクションとの境界部、及び第2セクションと3セクションとの境界部には、略筒形状部の周方向へ延出する仕切板がそれぞれ立設され第1セクションと第2セクションとは仕切板によって仕切られ、第2セクションと3セクションとは仕切板によって仕切られているため、1次巻線、2次巻線、及び高絶縁巻線の略筒形状部への巻回を容易とすることができる。
【0014】
また、該略筒形状部の軸方向に垂直な平面で切った該略筒形状部の断面形状は底辺と上辺と互いに平行な一対の側辺とを有する略長方形状をなし、該端子電極は該略筒形状部の軸方向端部に設けられ、該一対の側辺上の該仕切板の部分にはそれぞれ該略筒形状部の軸方向に延出する引出溝が形成され、該高絶縁巻線の一端寄りの部分及び他端寄りの部分は、該第2セクションから該引出溝に通され該側辺に対向して該略筒形状部の軸方向にそれぞれ引き出されて該端子電極に電気的に接続されていることが好ましい。
【0015】
略筒形状部の軸方向に垂直な平面で切った略筒形状部の断面形状は底辺と上辺と互いに平行な一対の側辺とを有する略長方形状をなし、端子電極は略筒形状部の軸方向端部に設けられ、一対の側辺上の仕切板の部分にはそれぞれ略筒形状部の軸方向に延出する引出溝が形成され、高絶縁巻線の一端寄りの部分及び他端寄りの部分は、第2セクションから引出溝に通され側辺に対向して略筒形状部の軸方向にそれぞれ引き出されて端子電極に電気的に接続されているため、高絶縁巻線の引出された部分が当該底辺上や上辺上において引出されて、底辺と上辺とを結ぶ方向において当該引出された部分がボビンから離間する方向へ突出してしまうことを防止することができる。このため、底辺と上辺とを結ぶ方向において低背化を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上により本発明は、安全規格を満たし、1次巻線と2次巻線との磁気結合が高く、小型化及び低背化が図られたトランスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態によるトランスを示す平面図。
【図2】本発明の実施の形態によるトランスの1次巻線、2次巻線、及びボビンを示す底面図。
【図3】本発明の実施の形態によるトランスのケースを示す平面図。
【図4】本発明の実施の形態によるトランスのコアを示す平面図。
【図5】本発明の実施の形態によるトランスを示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態によるトランスについて図1乃至図5に基づき説明する。図1に示すようにトランス1は、コア10と、ボビン20と、導線50(図2等)と、ケース40とを有している。以下の説明では、図1の上方向を右方向と定義し下方向を左方向と定義して説明する。また、図1の紙面の表面から裏面へと向かう方向を下方向と定義し、図1の紙面の裏面から表面へと向かう方向を下方向と定義して説明する。
【0019】
図4に示すように、コア10は同一形状で一対設けられている。コア10は、底壁部10Aと、当該底壁部10Aの一端と他端とからそれぞれ離間するように延出する一対の側壁部10Bと、当該底壁部10Aの中央部から離間するように延出する中央壁部10Cとをそれぞれ有し、全体として略E字形状をなしている。一方のコア10の一対の側壁部10Bの延出端は、それぞれ他方のコア10の側壁部10Bの延出端と面で当接している。一方のコア10の中央壁部10Cの延出端は、他方のコア10の中央壁部10Cの延出端とは当接せずにこれらは所定の距離で離間している。
【0020】
ボビン20は、図2に示すように、絶縁樹脂により構成され略筒形状をなしその軸方向両端に端子台31、32が設けられた略筒形状部21を有している。
【0021】
略筒形状部21は、当該略筒形状部21の軸方向たる図2の矢印で示す方向に垂直な面で切った断面形状が、一対の平行な直線状をなす側辺と、一対の平行な直線状をなす上辺及び底辺と、を有する略長方形状の略筒状をなしている。略筒形状部21の内周面により画成される空間にはコア10の中央壁部10Cが、図2の矢印の方向に移動させられて挿入されている。略筒形状部21の軸方向における長さは33mm程度である。当該略長方形状の底辺に相当する略筒形状部21の部分は、トランス1が実装される図示せぬ実装基板の表面に平行をなす。
【0022】
略筒形状部21の周面には仕切板22、23が設けられている。仕切板22、23は、図1、図2に示すように、略筒形状部21の外周面の周方向に沿って全周に渡り板状をなして2枚立設されている。仕切板22、23によって略筒形状部21の周面は、略筒形状部21の軸方向において、第1セクション21A、第2セクション21B、第3セクション21Cの3つのセクションに仕切られている。
【0023】
上下方向における仕切板22、23の上端から仕切板22、23の下端までの長さは10mm程度であり、略筒形状部21の軸方向における仕切板22、23間の距離は4mm程度である。
【0024】
仕切板22の部分であって左右方向に略筒形状部21の周面から突出している部分には、引出溝22aが形成されている。引出溝22aは第1セクション21Aと第2セクション21Bとを結ぶように略筒形状部21の軸方向へ延出している。
【0025】
端子台31、32は、略筒形状部21の軸方向における一端及び他端には設けられている。端子台31、32は、略筒形状部21と同一の絶縁樹脂により構成されており、略筒形状部21の断面形状を規定する前述の底辺に相当する部分と一体をなしている。それぞれ端子台31、32は、それぞれ略筒形状部21の軸方向に垂直の方向に延出している。一方の端子台31には当該延出方向へ所定の間隔で5本の金属製のピンからなる端子電極61、62、63、64、65が、それぞれ他方の端子台32から一方の端子台31へ向かう方向へ端子台31から延出して設けられている。また、他方の端子台32には当該延出方向へ所定の間隔で7本の金属製のピンからなる端子電極71、72、73、74、75、76、77が、それぞれ一方の端子台31から他方の端子台32へ向かう方向へ端子台32から延出して設けられている。端子台31の底面には、略筒形状部21の軸方向へ延出する凸部31A、31B、31C、31D、31Eが設けられている。端子台32の底面には、略筒形状部21の軸方向へ延出する凸部32A、32B、32C、32D、32E、32F、32Gが設けられている。
【0026】
導線50は、図2に示すように、第一の1次巻線51と、第二の1次巻線54と、第一の2次巻線52と、第二の2次巻線53とを有している。第一の1次巻線51、第一の2次巻線52、第二の2次巻線53はそれぞれウレタン等の絶縁性被覆が施された銅線からなる。第二の1次巻線54は、第一の1次巻線51、第一の2次巻線52、第二の2次巻線53の絶縁性被覆よりも絶縁性の高い高絶縁性被覆が施された銅線からなる三層絶縁ワイヤにより構成されている。
【0027】
第一の1次巻線51は、仕切板22、23よりも上下方向及び左右方向へ突出しないように第1セクション21Aに巻回され、その一端部、他端部は端子台31の方へ引出され、端子台31において凸部31Bと凸部31Cとの間、凸部31Cと凸部31Dとの間にそれぞれ通されている。そして、端子電極62、64にそれぞれ巻回され当該巻回された部分がはんだ付け等により端子電極62、64に電気的に接続されている。なお、図2においては、説明の便宜上第一の1次巻線51の一端部、他端部については、端子電極62、64にそれぞれ巻回されたままの状態で図示している。第一の2次巻線52、第二の2次巻線53、第二の1次巻線54についても同様である。
【0028】
第一の2次巻線52は、仕切板22、23よりも上下方向及び左右方向へ突出しないように第3セクション21Cに巻回され、その一端部、他端部は端子台32の方へ引出され、端子台32において凸部32Bと凸部32Cとの間、凸部32Eと凸部32Gとの間に通されている。そして、端子電極72、76にそれぞれ巻回され当該巻回された部分がはんだ付け等により端子電極72、76に電気的に接続されている。
【0029】
同様に第二の2次巻線53は、仕切板22、23よりも上下方向及び左右方向へ突出しないように第一の2次巻線52が巻回された第3セクション21Cに第一の2次巻線52に重ねられて巻回され、その一端部、他端部は端子台32の方へ引出され、端子台32において凸部32Cと凸部32Dとの間、凸部32Dと凸部32Eとの間に通されている。そして、端子電極73、75にそれぞれ巻回され当該巻回された部分がはんだ付け等により端子電極73、75に電気的に接続されている。
【0030】
第二の1次巻線54は、仕切板22、23よりも上下方向及び左右方向へ突出しないように第2セクション21Bに巻回され、その一端部、他端部は仕切板22の引出溝22aを通されて、略筒形状部21の断面形状を規定する前述の側辺に相当する部分に対向して端子台31の方へ引出され、端子台31において凸部31Aの右側、凸部31Eの左側に通されている。そして、端子電極61、65にそれぞれ巻回され当該巻回された部分がはんだ付け等により端子電極61、65に電気的に接続されている。第二の1次巻線54は、端子電極61と端子電極62とが図示せぬ実装基板上で電気的に接続されることにより第一の1次巻線51と直列接続され、第一の1次巻線51と共に1つの1次巻線を構成する。第1セクション21A、第2セクション21B、第3セクション21Cにおいては、図2においては説明の便宜上図示を省略しているが、図1に示すように、第一の1次巻線51、第二の1次巻線54、第二の2次巻線53の上にこれらを覆うように絶縁テープ81がそれぞれ巻回されている。
【0031】
図3に示すようにケース40は、絶縁樹脂により構成された略長方形状の略板状をなしている。略長方形状をなすケース40の長手方向一端側の2つの角部の部分、及び一対の長辺の略中央部分は、略長方形状に切欠かれている。また、略中央位置には、ケース40の長手方向にその長手方向が一致する長方形状の貫通孔40aが形成されており、貫通孔40aには略筒形状部21を挿入可能である。略筒形状部21が貫通孔40aに挿入された状態で、前述のように略筒形状部21の内周面により画成される空間にはコア10の中央壁部10Cが挿入されて、トランス1は組立てられている。
【0032】
貫通孔40aの左右の長辺に相当する部分を規定するケース40の部分には、上方へ突出する壁部が設けられている。壁部の突出端には、ケース40の上面40Aに平行に延出する鍔部40Bが設けられている。鍔部40Bは、貫通孔40aの周囲の全体に渡って設けられている。
【0033】
略筒形状部21の外周面が略筒形状部21の軸方向に隣接して並ぶ第1セクション21Aと第2セクション21Bと第3セクション21Cとを有するボビン20と、第1セクション21Aに巻回された第一の1次巻線51と、第3セクション21Cに巻回された第一の2次巻線52、第二の2次巻線53と、3層絶縁ワイヤからなり第2セクション21Bに巻回され1次巻線を構成する第二の1次巻線54と、を備えるため、従来1次巻線と2次巻線とを所定の距離で離間させるためのデッドスペースとなっていた部分を、第二の1次巻線54を巻回するためのスペースとして有効活用することができる。このため、小型化及び低背化の要求を充足し、且つ、所望の巻回数で1次巻線又は2次巻線を巻回することができる。
【0034】
また、第2セクション21Bに1次巻線を構成する第二の1次巻線54を巻回したため、1次巻線と2次巻線の結合を高くすることができ、これによってリーケージインダクタンスの値を小さくし、高周波化の要求を充足することができる。更に、第二の1次巻線54の巻回数を調整することでリーケージインダクタンスの値を調整することができる。より具体的には、巻回数を多くすることによりリーケージインダクタンスの値を小さくすることができ、巻回数を少なくすることによりリーケージインダクタンスの値を大きくすることができる。
【0035】
また、1次巻線の全部、又は2次巻線の全部を高絶縁巻線たる3層絶縁ワイヤとしなくて済む。このため、3層絶縁ワイヤは高価であるがトランス1の製造にかかる費用を極力抑えることができる。また、絶縁被覆が厚く直径が大きい3層絶縁ワイヤを多く巻回せずに済み、1次巻線又は2次巻線の巻回数が少なくなってしまうことを極力防止することができる。
【0036】
また、高絶縁巻線は3層絶縁ワイヤからなるため、より確実に絶縁を図ることができる。また、第1セクション21Aと第2セクション21Bとは仕切板22によって仕切られ、第2セクション21Bと3セクションとは仕切板23によって仕切られているため、1次巻線、2次巻線、及び第二の1次巻線54の略筒形状部21への巻回を容易とすることができる。
【0037】
また、仕切板22にはそれぞれ略筒形状部21の軸方向に延出する引出溝22aが形成され、第二の1次巻線54の一端寄りの部分及び他端寄りの部分は、第2セクション21Bから引出溝22aに通され側辺に対向して略筒形状部21の軸方向にそれぞれ引き出されているため、第二の1次巻線54の引出された部分が当該底辺上や上辺上において引出されて、引出された部分が上下方向へボビン20から離間する方向へ突出してしまうことを防止することができる。このため、上下方向において低背化を図ることができる。
【0038】
本発明のトランスは、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、本実施の形態では、第2セクション21Bには1次巻線を構成する3層絶縁ワイヤが巻回されたが、1次巻線を構成せず2次巻線を構成する3層絶縁ワイヤが巻回されてもよい。
【0039】
また、高絶縁巻線は3層絶縁ワイヤに限定されない。例えば、3層絶縁ワイヤに代えて、1次巻線及び2次巻線の絶縁被膜よりも絶縁性の高い高絶縁性材料により構成された絶縁被膜により被覆された導線からなる高絶縁巻線を用いてもよく、1次巻線及び2次巻線の絶縁被膜と同等の絶縁性を有する絶縁性材料を、1次巻線及び2次巻線の絶縁被膜よりも厚くして絶縁被膜として用いた高絶縁巻線を用いてもよい。
【0040】
また、第二の1次巻線54は第一の1次巻線51と直列接続されたが、並列接続されてもよい。また、端子台31、32は、略筒形状部21の軸方向両端に設けられたがこの位置に設けられることに限定されず、従って、端子電極も略筒形状部21の軸方向両端に設けられることに限定されない。
【0041】
また、第一の1次巻線、第二の1次巻線、第一の2次巻線、第二の2次巻線を構成する銅線としては、銅線が複数本が寄り合わされたものを用いてもよい。
【0042】
また、略筒形状部21の外周面は第1セクション21A〜第3セクション21Cの3つのセクションに仕切られていたが、3つに限定されずそれ以上に仕切られてもよい。従って、1次巻線が巻回されたセクションが複数であってもよく、2次巻線が巻回されたセクションが複数であってもよい。この場合であっても、1次巻線が巻回されたセクションと、2次巻線が巻回されたセクションとの間に、1次巻線又は2次巻線を構成する高絶縁巻線が巻回されたセクションが設けられた構成とする。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のトランスは、特にボビンの略筒形状部の周面が略筒形状部の軸方向において複数のセクションに仕切られ1次巻線、2次巻線が別々のセクションに巻回されているトランスの分野において特に有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 トランス
10 コア
20 ボビン
21 略筒形状部
22、23 仕切板
21A 第1セクション
21B 第2セクション
21C 第3セクション
22a 引出溝
61、62、63、64、65、71、72、73、74、75、76、77 端子電極
51 第一の1次巻線
54 第二の1次巻線
52 第一の2次巻線
53 第二の2次巻線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料からなる略筒形状部を備え、該略筒形状部の外周面が該略筒形状部の軸方向に隣接して並ぶ第1セクションと第2セクションと第3セクションとを有するボビンと、
該ボビンに設けられた端子電極と、
該略筒形状部の内周面により画成される空間に挿入されたコアと、
絶縁被膜により被覆された導線からなり該第1セクションに巻回され一端部及び他端部が該端子電極に電気的に接続された1次巻線と、
絶縁被膜により被覆された導線からなり該第3セクションに巻回され一端部及び他端部が該端子電極に電気的に接続された2次巻線と、
該1次巻線及び該2次巻線の絶縁被膜よりも絶縁性の高い絶縁被膜により被覆された導線からなり該第2セクションに巻回され1次巻線又は2次巻線を構成する高絶縁巻線と、を備えることを特徴とするトランス。
【請求項2】
該高絶縁巻線は3層絶縁ワイヤからなることを特徴とする請求項1記載のトランス。
【請求項3】
該第1セクションと該第2セクションとの境界部、及び該第2セクションと該3セクションとの境界部には、該略筒形状部の周方向へ延出する仕切板がそれぞれ立設され該第1セクションと該第2セクションとは該仕切板によって仕切られ、該第2セクションと該3セクションとは該仕切板によって仕切られていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のトランス。
【請求項4】
該略筒形状部の軸方向に垂直な平面で切った該略筒形状部の断面形状は底辺と上辺と互いに平行な一対の側辺とを有する略長方形状をなし、該端子電極は該略筒形状部の軸方向端部に設けられ、
該一対の側辺上の該仕切板の部分にはそれぞれ該略筒形状部の軸方向に延出する引出溝が形成され、
該高絶縁巻線の一端寄りの部分及び他端寄りの部分は、該第2セクションから該引出溝に通され該側辺に対向して該略筒形状部の軸方向にそれぞれ引き出されて該端子電極に電気的に接続されていることを特徴とする請求項3記載のトランス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−165709(P2011−165709A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23347(P2010−23347)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】