説明

トランス

【課題】リーケージインダクタンスが低く、サージ電圧の発生を抑制でき、ノイズを低減できるトランスを提供する。
【解決手段】トランス1の巻線部13は、一次巻線P1及び二次巻線S1のそれぞれが並列に2分割され、4つの並列分割巻線部P11,P12,S11,S12が絶縁部材15と共にボイスコイルボビン12の巻芯部12aに積層されて、構成されている。巻線部13は、一次巻線P1の1つの並列分割巻線部P11が巻芯部12aに最も近い第1層となり、一次巻線P1の他の並列分割巻線部P11が二次巻線P2の2つの並列分割巻線部S11,S12の層間に挟まれて位置するような層構成を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トランスに関し、特に、一次巻線及び二次巻線のそれぞれが並列に分割されている巻線部を有するトランスに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の電源回路などに用いられるトランスには、一次巻線及び二次巻線のそれぞれを並列に分割した構造を有するものがある。このような構造を有する従来のトランスとしては、一次側と二次側とのそれぞれで並列に分割された巻線が、対(ペア)で同時にコイルボビンに巻回された構造(バイファイラ巻きという)を有するものが一般的である。
【0003】
図7は、従来のトランスの構造の一例を示す図である。
【0004】
図7に示されるように、トランス80は、大まかに、巻線83が巻回されたコイルボビン82を2つのE型のコア81で挟んで構成されている。2つのコア81の中磁脚は、コイルボビン82に貫入している。巻線83は、一次巻線P8と二次巻線S8とを有している。一次巻線P8は、並列に接続された2つの分割巻線P81,P82に分割されている。二次巻線S8は、並列に接続された2つの分割巻線S81,S82に分割されている。
【0005】
一次巻線P8は、コイルボビン82の巻芯部82aに巻回されている。このとき、分割巻線P81と分割巻線P82とは、互いに対となり、同時に巻回されている。一次巻線P8の外周部には、絶縁部材85を介して、二次巻線S8が巻回されている。このとき、分割巻線S81と分割巻線S82とは、互いに対となり、同時に巻芯部82aに巻回されている。二次巻線S8の外周部も、絶縁部材85で覆われている。
【0006】
ところで、従来のトランスでは、一次側のスイッチング動作が行われるとき、トランスのリーケージインダクタンス(漏洩インダクタンスということもある。)によってサージ電圧が発生し、放射ノイズや伝導ノイズなどのノイズが増加するという問題がある。
【0007】
上記の問題に関連して、リーケージインダクタンスを抑制することを狙った巻線構造を有するトランスがある(例えば、特許文献1)。
【0008】
下記特許文献1には、一次側の巻線と二次側の巻線とのそれぞれについて、ボビンの鍔部からのボビンの軸方向の距離をバリアテープを用いて規定した構造を有するトランスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−272438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているようなトランスには、以下のような問題がある。すなわち、特許文献1に記載のトランスでは、ボビンの軸方向について巻線の端部とボビンの鍔部との距離の関係が規定されているものの、一次巻線と二次巻線とのボビンの径方向の構成(層構成)については特に規定されていない。そのため、特許文献1に記載のトランスでは、層構成によっては、リーケージインダクタンスが十分には低減されない場合がある。
【0011】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、リーケージインダクタンスが低く、サージ電圧の発生を抑制でき、ノイズを低減できるトランスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、トランスは、磁気回路を形成するコア部と、巻線を巻回する巻芯部を有し、コア部に装着されるコイルボビンと、互いに並列に分割された複数の第1の分割巻線部を有する一次巻線と、互いに並列に分割された複数の第2の分割巻線部を有する二次巻線とを備え、複数の第1の分割巻線部と複数の第2の分割巻線部とは、少なくとも1つの第1の分割巻線部が、巻芯部に近い第1層となり、かつ、他の第1の分割巻線部のそれぞれが、2つの第2の分割巻線部の層間に挟まれるようにして、巻芯部に積層されている。
【0013】
好ましくは第1の分割巻線部は、第2の分割巻線部と同数だけ設けられており、複数の第1の分割巻線部と複数の第2の分割巻線部とは、それぞれ1つずつが一次側と二次側とで交互に並ぶように積層されている。
【0014】
好ましくは一次巻線及び二次巻線の少なくともいずれか一方は、それぞれが有する複数の第1の分割巻線部又は第2の分割巻線部に直列に接続された直列巻線部をさらに有し、直列巻線部は、複数の第1の分割巻線部と複数の第2の分割巻線部とが巻回された外側に積層されている。
【0015】
好ましくはトランスは、一次側及び二次側の少なくともいずれか一方に設けられた補助巻線をさらに備え、補助巻線は、複数の第1の分割巻線部と複数の第2の分割巻線部とが巻回された外側に積層されている。
【発明の効果】
【0016】
これらの発明に従うと、少なくとも1つの第1の分割巻線部が巻芯部に近い第1層となり、他の少なくとも1つの第1の分割巻線部が2つの第2の分割巻線部の層間に挟まれるようにして、それぞれ並列に分割された一次巻線の複数の第1の分割巻線部と二次巻線の複数の第2の分割巻線部とが積層されている。したがって、リーケージインダクタンスが低く、サージ電圧の発生を抑制でき、ノイズを低減できるトランスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるトランスを示す斜視図である。
【図2】トランスの巻線部の結線構造を示す図である。
【図3】トランスの巻線部の巻線構造を示す図である。
【図4】第2の実施の形態におけるトランスの巻線部の結線構造を示す図である。
【図5】トランスの巻線部の巻線構造を示す図である。
【図6】上述の第1の実施の形態の一変型例に係るトランスの巻線部の巻線構造を示す図である。
【図7】従来のトランスの構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態におけるトランスについて説明する。
【0019】
[第1の実施の形態]
【0020】
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるトランス1を示す斜視図である。
【0021】
図1に示されるように、トランス1は、例えば縦型のスイッチングトランスである。トランス1は、コア部11と、コイルボビン12と、巻線部13と、複数の絡げピン14とを備えている。
【0022】
コア部11は、2つのコア11a,11bからなる。コア11a,11bのそれぞれは、ヨーク部とヨーク部から延伸する3つの磁脚を備えている、いわゆるE型のものである。コア11a,11bは、磁脚同士が対向するように配置される。コア部11は、磁性材料からなり、磁気回路を形成している。
【0023】
コイルボビン12は、例えば外周に巻線が巻回される巻芯部12a(図3に示す。)の両端部に鍔部12b,12c(うち一方の鍔部12cは架台部となる。)が設けられて筒状に形成された巻回部を有している。コイルボビン12の巻芯部12aには、巻線部13が巻回されている。コイルボビン12の架台部(鍔部12c)には、複数の絡げピン14が設けられている。各絡げピン14の一端部は、架台部に埋め込まれている。各絡げピン14には、巻線部13の端部が絡げられて接続されている。
【0024】
トランス1は、巻線部13が巻回されている状態で、コイルボビン12がコア部11に装着されて組み立てられる。コイルボビン12は、巻芯部12aを貫通する孔部に、各コア11a,11bの中磁脚(中足ともいう)が突き合わされるようにして挿入されることで、コア部11に取り付けられる。
【0025】
図2は、トランス1の巻線部13の結線構造を示す図である。
【0026】
図2に示されるように、巻線部13は、一次巻線P1と、二次巻線S1とを有している。一次巻線P1は、並列に、同じ巻数で2分割された2つの並列分割巻線部(第1の分割巻線部の一例)P11,P12を有している。二次巻線S1は、並列に、同じ巻数で2分割された2つの並列分割巻線部(第2の分割巻線部の一例)S11,S12を有している。
【0027】
このように一次巻線P1及び二次巻線S1のそれぞれが並列に分割されているのは、例えば、次のような理由による。すなわち、分割されていない巻線と同じ巻数の2つの分割された巻線(分割巻線)を構成した場合であって、2つの分割巻線を重ねて巻回した状態での直径が、分割されていない巻線のそれと同等になるようにすると、分割巻線には、分割されていない巻線に用いる導線よりも細い導線を使用することになる。そのため、2つの分割巻線の表面積が、分割されていない巻線の表面積より増加するため、2つの分割巻線には、表皮効果により大きな電流を流すことができる。また、同じ電流が流れる場合には、表皮効果により、巻線の表面積が大きい方が巻線の発熱を低減できるため、トランス1の温度上昇を低減できる。
【0028】
図3は、トランス1の巻線部13の巻線構造を示す図である。
【0029】
図3において、トランス1の巻線部13の巻回中心を通過する平面における模式的な断面図が示されており、ボイスコイルボビン12の架台部や絡げピン14などの図示は省略されている。また、以下に示される巻線構造を示す図もこれと同様に模式的に示されている。
【0030】
図3に示されるように、巻線部13は、4層(後述の絶縁部材15を除く)の多層構造を有している。巻線部13は、一次側、二次側の4つの並列分割巻線部P11,P12,S11,S12が絶縁部材15とともに巻芯部12aに重ねて巻回されて、構成されている。すなわち、巻線部13は、並列分割巻線部P11,P12,S11,S12が巻芯部12aに積層された構造を有している。
【0031】
巻線部13は、一次巻線P1の1つの並列分割巻線部P11が巻芯部12aに最も近い第1層となるようにして、一次巻線P1の並列分割巻線部P11,P12と二次巻線S1の並列分割巻線部S11,S12とが巻芯部12aに交互に積層されて構成されている。すなわち、一次巻線P1の並列分割巻線部P11は、コア部11の中磁脚に最も近い側の第1層となっている。巻線部13は、巻芯部12aに対して、一次巻線P1の並列分割巻線部P11、二次巻線S1の並列分割巻線部S11、一次巻線P1の並列分割巻線部P12、二次巻線S1の並列分割巻線部S12の順に、内側から外側に、巻回された層構成を有している。換言すると、巻線部13は、一次側の並列分割巻線部P11,P12のそれぞれが二次側の並列分割巻線部S11,S12の少なくとも1つに隣接した積層構造を有している。
【0032】
巻線部13の各層は、間に絶縁部材15を挟んで積層されている。また、巻線部13の最外層すなわち並列分割巻線部S12の外側にも、絶縁部材15が巻回されている。絶縁部材15は、例えば、絶縁テープなどである。
【0033】
このように、本実施の形態において、一次巻線P1の並列分割巻線部P11,P12と二次巻線S1の並列分割巻線部S11,S12とは、同数(2つ)だけ設けられている。また、2つの並列分割巻線部P11,P12と2つの並列分割巻線部S11,S12とは、それぞれ1つずつ、交互に、巻芯部12aに積層されている。一次巻線P1の1つの並列分割巻線部P12は、二次巻線S1の2つの並列分割巻線部S11,S12の層間に挟まれている。また、二次巻線S1の1つの並列分割巻線部S11は、一次巻線P1の2つの並列分割巻線部P11,P12の層間に挟まれている。
【0034】
巻線部13がこのような層構成を有していることにより、トランス1のリーケージインダクタンスは、従来の構造と比較して、著しく低減する。このような効果を奏する要因としては、例えば、以下の(1)〜(3)が挙げられる。本実施の形態では、これらの要因の相乗効果が得られる。
【0035】
(1)コア部11の中心軸(中心部)に対する、一次巻線P1及び二次巻線S1の対の距離が短くなると、リーケージインダクタンスが低減する。本実施の形態のトランス1においては、一次巻線P1及び二次巻線S1の対のうち一つが、第1層及び第2層の並列分割巻線部P11,S11で構成される。すなわち、この対に関して、一次巻線P1及び二次巻線S1の対と、コア部11の中心軸との距離は、従来のような分割されていない一次巻線P1及び二次巻線S1からなる2層構造の巻線部と比較して、およそ2分の1となる。
【0036】
(2)トランス1は、一次巻線P1の並列分割巻線部P11,P12と二次巻線S1の並列分割巻線部S11,S12とが交互に積層された層構成を有しており、一次巻線P1と二次巻線S1とが対向する部分の面積(対向面積)が、従来のような構成の対向面積と比較して大きくなる。
【0037】
(3)一次巻線P1及び二次巻線S1のそれぞれの並列分割巻線部P11,P12,S11,S12同士の距離が近くなる。すなわち、並列分割巻線部P11と並列分割巻線部S11との距離、並列分割巻線部S11と並列分割巻線部P12との距離、及び並列分割巻線部P12と並列分割巻線部S12との距離のそれぞれが近くなる。
【0038】
以上のように、トランス1では、従来の構造と比較して、リーケージインダクタンスを低減できる。したがって、スイッチング動作時のサージ電圧が抑制でき、ノイズ(放射ノイズ、伝導ノイズ)の発生を低減できる。
【0039】
また、リーケージインダクタンスが低減するため、トランス1に電流を流すスイッチング素子に流れる無効電流が下がる。したがって、このトランス1が電源装置などに用いられる場合には、スイッチング素子やその他の回路素子の発熱が抑制され、電源装置などのスイッチング損失を低減させることができる。サージ電圧が抑制されるため、比較的耐圧の低いスイッチング素子を用いることができる。したがって、トランス1が用いられる装置の部品コストを低減し、製造コストを低減できる。
【0040】
本実施の形態では、一次巻線P1の並列分割巻線部P11がコア部11の中磁脚に最も近い第1層となっている。したがって、スイッチングノイズの発生源となる一次側の巻線のほうが巻線部13において内側に位置し、ノイズが放出されにくくなる。したがって、より効果的にノイズを低減することができる。
【0041】
[第2の実施の形態]
【0042】
第2の実施の形態におけるトランスの基本的な構成は、第1の実施の形態におけるそれと同じであるため、ここでの説明を繰り返さない。第2の実施の形態においては、トランス20は、巻線部13に代えて、構成が巻線部13とは異なる巻線部23を有している点が第1の実施の形態とは異なる。
【0043】
図4は、第2の実施の形態におけるトランス20の巻線部23の結線構造を示す図である。
【0044】
図2に示されるように、巻線部23は、一次巻線P21と、一次補助巻線P3と、二次巻線S1と、二次補助巻線S2とを有している。一次巻線P21及び一次補助巻線P3は、一次側に設けられている。二次巻線S1及び二次補助巻線S2は、二次側に設けられている。二次巻線S1は、第1の実施の形態と同様に、並列分割巻線部S11,S12が並列に接続されて構成されている。
【0045】
一次巻線P21は、並列に、同じ巻数で2分割された2つの並列分割巻線部(第1の分割巻線部の一例)P11a,P12aと、これらの並列分割巻線部P11a,P12aに直列に接続された直列巻線部P2とを有している。換言すると、一次巻線P21は、次のように構成されているといえる。すなわち、一つの巻線が、直列に2分割され、その一方が直列巻線部P2とされている。また、直列に2分割された巻線の他方が、さらに並列の同じ巻数に2分割されて、並列分割巻線部P11a,P12aとされている。
【0046】
図5は、トランス20の巻線部23の巻線構造を示す図である。
【0047】
図5に示されるように、巻線部23は、7層(絶縁部材15を除く)の多層構造を有している。一次側、二次側の並列分割巻線部P11a,P12a,S11,S12、直列巻線部P2、一次補助巻線P3、及び二次補助巻線S2が、絶縁部材15とともに巻芯部12aに積層されて、巻線部23が構成されている。
【0048】
第2の実施の形態において、直列巻線部P2、一次補助巻線P3、及び二次補助巻線S2は、それぞれ、巻回部において、並列分割巻線部P11a,P12a,S11,S12が巻回された外側に積層されている。
【0049】
具体的には、巻線部23の第1層から第4層まで(巻芯部12aに近い順)は、一次巻線P21の並列分割巻線部P11a,P12aと二次巻線S1の並列分割巻線部S11,S12とが巻芯部12aに交互に積層されて構成されている。巻線部23において、一次巻線P21の並列分割巻線部P11aが巻芯部12aに最も近い第1層となっている。すなわち、第2の実施の形態の一次側と二次側との並列分割巻線部P11a,P12a,S11,S12部分の巻線構造は、第1の実施の形態の並列分割巻線部P11,P12,S11,S12の巻線構造と同様である。
【0050】
そして、巻線部23の第5層すなわち並列分割巻線部S12より外側に、二次補助巻線S2、一次補助巻線P3、及び直列巻線部P2が、例えばこの順で積層されている。なお、二次補助巻線S2、一次補助巻線P3、及び直列巻線部P2の積層順は、これに限られるものではなく、適宜順番が入れ替わっていてもよい。
【0051】
このように、第2の実施の形態のトランス20では、並列分割巻線部P11a,P12a,S11,S12部分の層構成が、第1の実施の形態の層構成のまま維持されている。したがって、第1の実施の形態と同様に、リーケージインダクタンスの低減効果が得られる。
【0052】
ここで、第2の実施の形態においては、第2の一次巻線P21に直列巻線部P2が設けられている。したがって、同じ巻数の一次巻線に直列巻線部P2を設けることなく構成した場合と比較して、並列分割巻線部P11a,P12aの巻数が小さくなる。このように一次巻線P21が構成されていることで、並列分割巻線部P11aと並列分割巻線部S11とで形成される一次巻線P21及び二次巻線S1の対と、コア部11の中心軸との距離は、第1の実施の形態におけるそれよりもさらに小さくなる。したがって、リーケージインダクタンスをさらに低減し、ノイズを低減することができる。
【0053】
[その他]
【0054】
トランスは、上述の実施の形態のような、ボビンの中心軸が実装面に対して垂直となるいわゆる縦型の構成に限定されるものではなく、例えば、ボビンの軸が実装面に対して平行となる、横型の構成を有していてもよい。
【0055】
一次巻線と二次巻線とのそれぞれで、並列分割巻線部の個数は2つに限定されない。例えば、一次巻線と二次巻線とは、それぞれ3つに並列に分割されていてもよい。
【0056】
一次巻線と二次巻線とで、並列分割巻線部の個数が異なっていてもよい。例えば、並列分割巻線部の個数は、一次側3つ、二次側2つ、すなわち一次巻線が並列に3分割され3つの並列分割巻線部を有するのに対し、二次巻線が並列に2分割され2つの並列分割巻線部を有するようにしてもよい。また、この逆であってもよい。
【0057】
並列分割巻線部の個数が、例えば、一次側2つ、二次側3つであれば、各並列分割巻線部は、一次/二次/一次/二次/二次とすればよい。このような場合であっても、外層の二次側の並列分割巻線部同士を、分割していない一つの並列分割巻線部と同等な構成と見なすことができ、従来の構造と比較してリーケージインダクタンスの低減効果が得られる。
【0058】
このように、上述の実施の形態のような、一次巻線と二次巻線とで並列分割巻線部が交互に積層される構成に限定されるものではなく、一次側の1つの並列分割巻線部が巻芯部に最も近い第1層となるようにして、他の一次側の並列分割巻線部のそれぞれが、二次側の2つの並列分割巻線部の層間に挟まれるようにすれば、リーケージインダクタンスを低減させ、ノイズの低減効果を得ることができる。
【0059】
図6は、上述の第1の実施の形態の一変型例に係るトランス40の巻線部43の巻線構造を示す図である。
【0060】
図6に示されるように、トランス40の巻線部43は、7層構造を有している。巻線部43は、一次巻線P41と二次巻線S41とを有している。一次巻線P41は、並列で巻数が互いに同一の3つの並列分割巻線部P11,P12,P13(以下、一次側P11、一次側P12、一次側P13ということがある。)に分割されている。二次巻線S41は、並列で巻数が互いに同一の4つの並列分割巻線部S11,S12,S13,S14(以下、二次側S11、二次側S12、二次側S13、二次側S14ということがある。)に分割されている。
【0061】
巻線部43は、コイルボビン12の巻芯部12aに近い第1層から外側に、一次側P11、二次側S11、一次側P12、二次側S12、一次側P13、二次側S13、二次側S14の順に積層されている。すなわち、一次側P12は、二次側S11と二次側S12との層間に挟まれ、かつ、一次側P13は、二次側S12と二次側S13との層間に挟まれている。これにより、トランス40でも、上述と同様に、ノイズの低減効果が得られる。
【0062】
上述の第2の実施の形態において、直列巻線部は、一次巻線、二次巻線のいずれか一方又は両方に設けられていてもよい。また、一次補助巻線と二次補助巻線とは、いずれか一方が設けられていなくてもよいし、両方とも設けられていなくてもよい。
【0063】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
1,20,40 トランス
11 コア部
12 コイルボビン
12a 巻芯部
13,23,43 巻線部
P1,P21,P41 一次巻線
P2 直列巻線部
P3 一次補助巻線
P11,P11a,P12,P12a,P13 一次巻線の並列分割巻線部(第1の分割巻線部の一例)
S1,S41 二次巻線
S2 二次補助巻線
S11,S12,S13,S14 二次巻線の並列分割巻線部(第2の分割巻線部の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気回路を形成するコア部と、
巻線を巻回する巻芯部を有し、前記コア部に装着されるコイルボビンと、
互いに並列に分割された複数の第1の分割巻線部を有する一次巻線と、
互いに並列に分割された複数の第2の分割巻線部を有する二次巻線とを備え、
前記複数の第1の分割巻線部と前記複数の第2の分割巻線部とは、
少なくとも1つの前記第1の分割巻線部が、前記巻芯部に近い第1層となり、かつ、
他の前記第1の分割巻線部のそれぞれが、2つの前記第2の分割巻線部の層間に挟まれるようにして、
前記巻芯部に積層されている、トランス。
【請求項2】
前記第1の分割巻線部は、前記第2の分割巻線部と同数だけ設けられており、
前記複数の第1の分割巻線部と前記複数の第2の分割巻線部とは、それぞれ1つずつが一次側と二次側とで交互に並ぶように積層されている、請求項1に記載のトランス。
【請求項3】
前記一次巻線及び前記二次巻線の少なくともいずれか一方は、それぞれが有する前記複数の第1の分割巻線部又は第2の分割巻線部に直列に接続された直列巻線部をさらに有し、
前記直列巻線部は、前記複数の第1の分割巻線部と前記複数の第2の分割巻線部とが巻回された外側に積層されている、請求項1又は2に記載のトランス。
【請求項4】
一次側及び二次側の少なくともいずれか一方に設けられた補助巻線をさらに備え、
前記補助巻線は、前記複数の第1の分割巻線部と前記複数の第2の分割巻線部とが巻回された外側に積層されている、請求項1から3のいずれか1つに記載のトランス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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