説明

トリの生産形質の改変

本発明は、ニワトリなどのトリの形質、特に生産形質を改変する方法に関する。特に、本発明は、商業的に重要な鳥の生産形質を改変するためのdsRNA分子、特にsiRNAのin ovo送達に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニワトリなどのトリの形質、特に生産形質を改変する方法に関する。特に、本発明は、商業的に重要な鳥の生産形質を改変するためのdsRNA分子、特にsiRNAのin ovo送達に関する。
【背景技術】
【0002】
人類は、動物を家畜化してから多くの世代にわたって蓄積された種の選択により、家畜の表現型の特質を改変させてきた。このことは、体のサイズおよび筋肉量のような量的生産パラメータの改良を導いてきた。家禽の生産形質の改変および/または病原体に対する耐性の改善の最近の革新は、遺伝子導入アプローチに焦点を当てているが、多くの消費者は、遺伝子改変生物に関して懸念がある。
【0003】
ニワトリ生産者は、1日齢のひなの性別を決定する効率的で経済的な方法を探索している。肛門鑑別および羽毛鑑別は、種々の生産者により用いられているが、これらの方法は、実質的に必要な時間と雄のひなを雌のひなから分けるための労働力経費のために、実質的に経済的に不利益であることが分かっている。プローブの使用(米国特許第5,508,165号)も高価な手順であり、経済的に実用的でない。ひなの肛門部付近の光感知(米国特許第4,417,663号)は、ひなの性別を決定する別の方式であるが、これも高価であり、それぞれのひなを取り扱って操作しなければならないので、時間がかかる。ひなの羽毛鑑別ができる熟練者の使用が用いられてきたが、このような熟練者は経費がかかり、羽毛鑑別は時間がかかる。
【0004】
鳥のゲノムの形質転換をもたらさないが、ハイスループット処理に適用できる家禽の生産形質を改変する方法に対する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,508,165号
【特許文献2】米国特許第4,417,663号
【特許文献3】米国特許出願公開第20070004667号
【特許文献4】WO99/32619
【特許文献5】WO99/53050
【特許文献6】WO99/49029
【特許文献7】WO01/34815
【特許文献8】米国特許第4,903,635号
【特許文献9】米国特許第5,056,464号
【特許文献10】米国特許第5,136,979号
【特許文献11】米国特許出願公開第20060075973号
【特許文献12】米国特許出願第60/943,708号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J. Perbal、A Practical Guide to Molecular Cloning、John Wiley and Sons (1984)
【非特許文献2】J. Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory Press (1989)
【非特許文献3】T. A. Brown(編者)、Essential Molecular Biology: A Practical Approach、第1および2巻、IRL Press (1991)
【非特許文献4】D.M. GloverおよびB.D. Hames(編者)、DNA Cloning: A Practical Approach、第1〜4巻、IRL Press (1995および1996)
【非特許文献5】F.M. Ausubelら(編者)、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience (1988、現在までの全ての改訂を含む)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、2本鎖領域を含む適切な核酸分子をトリの卵に投与することにより、発生中の胚の表現型を改変できることを、驚くべきことに見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の第1の態様は、トリの形質を改変する方法であって、トリの卵に2本鎖領域を含む少なくとも1つの核酸分子を投与する段階を含み、該核酸分子が該卵内の少なくとも1つのRNA分子および/またはタンパク質のレベルの低減をもたらす方法を提供する。
【0009】
好ましい実施形態において、核酸分子はdsRNAである。より好ましくは、dsRNAはsiRNAまたはshRNAである。
【0010】
さらに好ましい実施形態において、形質は生産形質である。生産形質の例は、それらに限定されないが、筋肉量または性別を含む。
【0011】
ある実施形態において、生産形質は性別であり、核酸分子はDMRT1遺伝子によりコードされるタンパク質のレベルを低減させる。
【0012】
ある実施形態において、生産形質は性別であり、核酸分子はWPKCI(ASW)遺伝子によりコードされるタンパク質のレベルを低減させる。
【0013】
別の実施形態において、生産形質は筋肉量であり、核酸分子はミオスタチン遺伝子によりコードされるタンパク質のレベルを低減させる。
【0014】
好ましくは、核酸分子は注入により投与される。
【0015】
トリは、鳥綱の任意の種であり得る。その例は、それらに限定されないが、ニワトリ、カモ、シチメンチョウ、ガチョウ、チャボおよびウズラを含む。特に好ましい実施形態において、トリはニワトリである。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、本発明の方法を用いて生産されたトリを提供する。
【0017】
別の態様において、本発明は、本発明の方法を用いて生産されたニワトリを提供する。
【0018】
さらなる別の態様において、本発明は、トリの卵に投与されたときに少なくとも1つのRNA分子および/またはタンパク質のレベルを低減させる2本鎖領域を含む単離および/または外因性核酸分子を提供する。
【0019】
好ましくは、核酸分子はdsRNA分子である。より好ましくは、dsRNAはsiRNAまたはshRNAである。
【0020】
ある実施形態において、核酸分子はDMRT1遺伝子またはミオスタチン遺伝子によりコードされるタンパク質のレベルを低減させる。
【0021】
本発明による核酸分子またはその1本鎖をコードするベクターも提供される。このようなベクターは、宿主細胞または無細胞発現系で用いて、本発明の方法に有用な核酸分子を産生できる。
【0022】
別の態様において、本発明は、本発明の外因性核酸分子もしくはその1本鎖および/または本発明のベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0023】
別の態様において、本発明は、本発明の核酸分子もしくはその1本鎖、本発明のベクターおよび/または本発明の宿主細胞を含む組成物を提供する。
【0024】
さらなる態様において、本発明は、本発明の核酸分子もしくはその1本鎖、本発明のベクターおよび/または本発明の宿主細胞を含むトリの卵を提供する。
【0025】
別の態様において、本発明は、本発明の核酸分子もしくはその1本鎖、本発明のベクター、本発明の宿主細胞および/または本発明の組成物を含むキットを提供する。
【0026】
明らかになるように、本発明のある態様の好ましい特徴および特質は、本発明の多くのその他の態様に適用可能である。
【0027】
本明細書を通して、用語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」などの変形は、記載される要素、整数もしくは段階、または要素、整数もしくは段階の群を含むことを意図するが、任意のその他の要素、整数もしくは段階、または要素、整数もしくは段階の群の排除を意図しないと理解されるだろう。
【0028】
本発明を、以下の非限定的な実施例により、添付の図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】shRNA発現カセットについてのPCRを示す図である。shRNA発現ベクターを精製するために用いたPCRストラテジーの模式図。PCRは、フォワードプライマーと、全てのshRNA構成成分を含むリバースプライマーとの対を用いた。全ての最終PCR産物は、ニワトリU6プロモーター、shRNAセンス、ループ、shRNAアンチセンス、終結配列およびXhoI部位からなった。
【図2】EGFP-Dmrt1遺伝子融合体発現のノックダウンについての選択したshRNAの試験を示す図である。それぞれのトランスフェクション条件についての平均蛍光強度を、pEGFP-Dmrt1に対して表した。誤差バーは、3連で完了したそれぞれの個別の実験について算出された標準誤差を示す。
【図3】EGFP-Gdf8遺伝子融合体発現のノックダウンについての選択されたshRNAの試験を示す図である。DF1細胞は:パネル1、pEGFP-C単独;パネル2、pEGFP-Gdf8転写融合体単独;パネル3〜6 pshEGFPまたは特異的Gdf8 shRNA発現プラスミドpshGdf8-258、pshGdf8-913およびpshGdf8-1002のいずれかとpEGFP-Gdf8でトランスフェクションした。顕微鏡観察は、Leica DM LB蛍光顕微鏡(Leica Microsystems、Germany)を用いて行い、画像は、50×の倍率で、Leica DC300Fカラーデジタルカメラ(Leica Microsystems、Germany)およびPhotoshop 7.0画像処理ソフトウェア(Adobe(登録商標))を用いて取得した。
【発明を実施するための形態】
【0030】
配列表の説明
配列番号1-ニワトリミオスタチン(Genbank NM_001001461)。
配列番号2-ニワトリミオスタチンをコードするヌクレオチド配列(Genbank NM_001001461)。
配列番号3-ニワトリDMRT1の部分タンパク質配列(Genbank AF123456)。
配列番号4-ニワトリDMRT1をコードする部分核酸配列(Genbank AF123456)。
配列番号5-ニワトリWPKCI(ASW)(Genbank AF148455)。
配列番号6-ニワトリWPKCI(ASW)をコードするヌクレオチド配列(Genbank AF148455)。
配列番号7-ニワトリU6-1プロモーターのヌクレオチド配列。
配列番号8-ニワトリU6-3プロモーターのヌクレオチド配列。
配列番号9-ニワトリU6-4プロモーターのヌクレオチド配列。
配列番号10-ニワトリ7SKプロモーターのヌクレオチド配列。
配列番号11〜98および113〜122-本発明に有用なRNA配列。
配列番号99〜112-オリゴヌクレオチドプライマー。
【0031】
一般的な技術および定義
別段に具体的に定義しない限り、本明細書で用いられる全ての技術的および科学用語は、(例えば、細胞培養、分子遺伝学、トリの生物学、RNA干渉および生化学において)当業者に通常理解されるのと同じ意味を有すると解されるべきである。
【0032】
別段に示されない限り、本発明で用いられる組換えタンパク質、細胞培養および免疫学的技術は、当業者に公知の標準的な手順である。このような技術は、J. Perbal、A Practical Guide to Molecular Cloning、John Wiley and Sons (1984)、J. Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory Press (1989)、T. A. Brown(編者)、Essential Molecular Biology: A Practical Approach、第1および2巻、IRL Press (1991)、D.M. GloverおよびB.D. Hames(編者)、DNA Cloning: A Practical Approach、第1〜4巻、IRL Press (1995および1996)、ならびにF.M. Ausubelら(編者)、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience (1988、現在までの全ての改訂を含む)、Ed HarlowおよびDavid Lane(編者)のような出典の文献を通して記載され説明されている。
【0033】
用語「トリ」は、本明細書で用いる場合、それらに限定されないが、ニワトリ、シチメンチョウ、カモ、ガチョウ、ウズラ、キジ、オウム、フィンチ、タカ、カラス、ならびにダチョウ、エミューおよびヒクイドリを含む平胸類のような生物のような分類学上の鳥綱の生物の任意の種、亜種または系統のことをいう。この用語は、ガルス・ガルス(Gallus gallus)(ニワトリ)の種々の既知の系、例えば白色レグホーン、褐色レグホーン、横斑ロック、サセックス、ニューハンプシャー、ロードアイランド、オーストラロープ、コーニッシュ、ミノルカ、アムロックス(Amrox)、カリフォルニアグレー(California Gray)、イタリアパーティッジカラード(Italian Partidge-coloured)、ならびにシチメンチョウ、キジ、ウズラ、カモ、ダチョウおよび商業的な量で一般に飼育されているその他の家禽の系を含む。
【0034】
本明細書で用いる場合、用語「卵」は、鳥が産んだ受精卵のことをいう。典型的には、トリの卵は、堅い卵型の卵外殻、「卵白」またはアルビューメン、卵黄、および種々の薄膜からなる。さらに、「in ovo」とは卵の中のことをいう。
【0035】
用語「低減する」、「低減」またはその変形は、本明細書で用いる場合、本明細書で定義される核酸を投与していない同じ種のトリ、より好ましくは同じ系もしくは品種のトリ、さらにより好ましくは同じ鳥からの卵と比較したときの、卵内の標的RNAおよび/または標的タンパク質の量の測定可能な減少のことをいう。この用語は、標的タンパク質の活性の測定可能な低減のこともいう。好ましくは、標的RNAおよび/または標的タンパク質のレベルの低減は、少なくとも約10%である。より好ましくは、低減は、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、80%、90%、さらにより好ましくは約100%である。
【0036】
本明細書で用いる場合、「核酸分子が低減をもたらす」との句またはその変形は、当該技術において「RNA干渉」または「遺伝子発現抑制」として知られるプロセスによる卵内の相同RNAの分解を誘発する卵内の核酸分子の存在のことをいう。さらに、核酸分子は、直接、低減をもたらし、in ovoで転写されずに所望の効果を生じる。
【0037】
「少なくとも1つのRNA分子」は、トリの卵に存在し、かつ/またはトリの卵により産生される任意の型のRNAであり得る。その例は、それらに限定されないが、mRNA、snRNA、マイクロRNAおよびtRNAを含む。
【0038】
本明細書で用いる場合、用語「生産形質」は、筋肉量、性別および栄養分含量のような商業的価値があるトリの任意の表現型のことをいう。
【0039】
本明細書で用いる場合、用語「筋肉量」は、筋肉組織の重量のことをいう。筋肉量の増大は、本明細書で定義される核酸を投与していない同じ種のトリからの鳥、より好ましくは同じ系もしくは品種のトリ、さらにより好ましくは同じ鳥と比較したときの、本明細書で記載されるように処理した卵から孵化する鳥の全筋肉組織を秤量することにより決定できる。あるいは、胸筋肉および/または足筋肉のような特定の筋肉を用いて、筋肉量の増大を同定できる。好ましくは、本発明の方法は、筋肉量を少なくとも約1%、2.5%、5%、7.5%、さらにより好ましくは約10%増大させる。
【0040】
本発明の核酸分子の「変異体」は、サイズが変動し、かつ/または1つもしくは複数の異なるヌクレオチドを有するが、標的遺伝子の発現を抑制するためにまだ用いることができる分子を含む。例えば、変異体は、付加的ヌクレオチド(例えば1、2、3、4個以上)、またはより少ないヌクレオチドを含むことができる。さらに、いくつかのヌクレオチドを、標的遺伝子の発現を抑制する核酸の能力に影響することなく置換できる。ある実施形態において、変異体は、対応する標的RNA分子に相同であり、かつ/または核酸分子の安定性を増強する付加的な5'および/または3'ヌクレオチドを含む。別の実施形態において、核酸分子は、本明細書で提示される配列と比較したときに、4個以下、より好ましくは3個以下、より好ましくは2個以下、さらにより好ましくは1個以下のヌクレオチドの違いを有する。さらなる実施形態において、核酸分子は、本明細書で提示される配列と比較したときに、2個以下、より好ましくは1個以下の内部の付加ヌクレオチドおよび/または欠失ヌクレオチドを有する。
【0041】
「単離核酸分子」とは、天然の状態で会合または連結している核酸分子から少なくとも部分的に分離されている核酸分子を意味する。好ましくは、単離核酸分子は、それらが天然に会合しているその他の成分から少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも90%が遊離している。さらに、用語「ポリヌクレオチド」は、本明細書において用語「核酸」と交換可能に用いられる。
【0042】
核酸分子に関係する用語「外因性の」は、変化した量で細胞または無細胞発現系に存在する場合の核酸分子のことをいう。好ましくは、細胞は、該核酸分子を天然には含まない細胞である。しかし、細胞は、核酸分子の量の増大をもたらす外因性核酸分子を含む細胞であり得る。本発明の外因性核酸分子は、それが存在する組換え細胞または無細胞発現系のその他の成分から分離されていない核酸分子、ならびに少なくともいくつかのその他の成分が実質的に精製除去された細胞または無細胞系で産生された核酸分子を含む。
【0043】
遺伝子発現抑制
用語「RNA干渉」、「RNAi」または「遺伝子発現抑制」は、全般的に、2本鎖RNA(dsRNA)分子が実質的にまたは完全に相同性を有する核酸配列の発現を、該2本鎖RNA分子が低減させるプロセスのことをいう。しかし、遺伝子発現抑制は、非RNA 2本鎖分子を用いて達成できることがより最近になって示されている(例えば米国特許出願公開第20070004667号を参照されたい)。
【0044】
RNA干渉(RNAi)は、特定のRNAおよび/またはタンパク質の産生を特異的に阻害するために特に有用である。理論により限定されることを意図しないが、Waterhouseら(1998)は、dsRNA(2本鎖RNA)を用いてタンパク質産生を低減させる機構についてのモデルを提供した。この技術は、対象の遺伝子のmRNAまたはその一部分、この場合、本発明によるポリペプチドをコードするmRNAと本質的に同一である配列を含有するdsRNA分子の存在に依存する。簡便には、dsRNAは、組換えベクターまたは宿主細胞内の単一プロモーターから産生でき、ここで、センスおよびアンチセンス配列は、センスおよびアンチセンス配列がハイブリッド形成して、ループ構造を形成する関連しない配列とともにdsRNA分子を形成することを可能にする関連しない配列と接する。本発明のための適切なdsRNA分子の設計および産生は、特に、Waterhouseら(1998)、Smithら(2000)、WO99/32619、WO99/53050、WO99/49029およびWO01/34815を考慮して、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0045】
本発明は、遺伝子発現抑制のための2本鎖領域を含み、かつ/またはコードする核酸分子を含む。核酸分子は、典型的にはRNAであるが、DNA、化学修飾ヌクレオチドおよび非ヌクレオチドを含み得る。
【0046】
2本鎖領域は、少なくとも19の隣接するヌクレオチド、例えば約19〜23ヌクレオチドであるべきであるか、またはより長く、例えば30もしくは50ヌクレオチド、または100ヌクレオチド以上であることが可能である。全体の遺伝子転写産物に相当する全長配列を用いることができる。好ましくは、これらは、約19〜約23ヌクレオチド長である。
【0047】
核酸分子の2本鎖領域の、標的転写産物に対する同一性の程度は、少なくとも90%、より好ましくは95〜100%であるべきである。核酸分子の%同一性は、ギャップ生成ペナルティ=5、およびギャップ伸長ペナルティ=0.3でのGAP(NeedlemanおよびWunsch、1970)解析(GCGプログラム)により決定される。好ましくは、2つの配列をそれらの全長にわたって整列させる。
【0048】
核酸分子は、もちろん、分子を安定化させるために機能し得る関連しない配列を含んでよい。
【0049】
用語「低分子干渉RNA」または「siRNA」は、本明細書で用いる場合、例えば配列特異的な様式でRNAiを媒介することにより遺伝子発現を阻害または下方制御できるリボヌクレオチドを含む核酸分子のことをいい、ここで、2本鎖部分は50ヌクレオチド長未満、好ましくは約19〜約23ヌクレオチド長である。例えば、siRNAは、自己相補性のセンスおよびアンチセンス領域を含む核酸分子であり得、ここで、アンチセンス領域は、標的核酸分子またはその一部分のヌクレオチド配列と標的核酸配列またはその一部分に相当するヌクレオチド配列を有するセンス領域とに相補的であるヌクレオチド配列を含む。siRNAは、一方の鎖がセンス鎖であり、他方の鎖がアンチセンス鎖である2つの別々のオリゴヌクレオチドから組み立てることができ、ここで、アンチセンス鎖とセンス鎖とは自己相補性である。
【0050】
本明細書で用いる場合、用語siRNAは、配列特異的RNAiを媒介できる核酸分子、例えばマイクロRNA(miRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉オリゴヌクレオチド、低分子干渉核酸(siNA)、低分子干渉改変オリゴヌクレオチド、化学修飾siRNA、転写後遺伝子発現抑制RNA(ptgsRNA)などを表すために用いられるその他の用語と等しいことを意味する。さらに、本明細書で用いる場合、用語RNAiは、転写後遺伝子発現抑制、翻訳阻害またはエピジェネティクスのような配列特異的RNA干渉を表すために用いられるその他の用語と等しいことを意味する。例えば、本発明のsiRNA分子は、転写後レベルおよび転写前レベルの両方にてエピジェネティックに遺伝子の発現抑制をするために用いることができる。非限定的な例において、本発明のsiRNA分子による遺伝子発現のエピジェネティックな調節は、遺伝子発現を変化させるためのクロマチン構造のsiRNAにより媒介される改変に起因し得る。
【0051】
好ましい低分子干渉RNA(「siRNA」)分子は、標的mRNAの約19〜23の隣接ヌクレオチドと同一であるヌクレオチド配列を含む。ある実施形態において、標的mRNA配列は、ジヌクレオチドAAで開始し、約30〜70%(好ましくは30〜60%、より好ましくは40〜60%、より好ましくは約45%〜55%)のGC含量を含み、例えば標準的なBLAST検索により決定される、それが導入されるトリ(好ましくはニワトリ)のゲノム中の標的以外のいずれのヌクレオチド配列とも高いパーセンテージ同一性を有さない。
【0052】
「shRNA」または「低分子ヘアピンRNA」とは、約50ヌクレオチド未満、好ましくは約19〜約23ヌクレオチドが同じRNA分子上に位置する相補配列と塩基対を形成し、かつ該配列と相補配列とが、塩基相補性の2つの領域により創出されるステム構造の上に1本鎖ループを形成する少なくとも約4〜15ヌクレオチドの対形成していない領域により分けられるsiRNA分子を意味する。1本鎖ループの配列の例は、5' UUCAAGAGA 3'および5' UUUGUGUAG 3'である。
【0053】
shRNAは、RNA分子が、1本鎖スペーサー領域により分けられるこのようなステム-ループ構造を2つ以上含む2重またはバイフィンガーおよびマルチフィンガーヘアピンdsRNAを含む。
【0054】
siRNAの設計のためによく確立された基準が存在する(例えばElbashireら、2001;Amarzguiouiら、2004;Reynoldsら、2004を参照されたい)。詳細は、Ambion、Dharmacon、GenScriptおよびOligoEngineのようないくつかの商業的供給業者のウェブサイトで見出し得る。典型的には、それらの有効性を比較するために、いくつかのsiRNAを作製してスクリーニングしなければならない。
【0055】
一旦設計されると、本発明の方法で用いるためのdsRNAは、例えば組換えによるin vitro転写または合成的手段による当該技術において知られる任意の方法により作製できる。siRNAは、in vitroで、T7 RNAポリメラーゼのような組換え酵素と、DNAオリゴヌクレオチド鋳型を用いることにより作製できるか、またはin vivoで、例えば培養細胞において調製できる。好ましい実施形態において、核酸分子は合成的に産生される。
【0056】
さらに、例えばRNAポリメラーゼIIIプロモーターを含有するベクターからヘアピンsiRNAを産生するための戦略が記載されている。種々のベクターが、H1-RNAまたはsnU6 RNAプロモーターのいずれかを用いて宿主細胞内でヘアピンsiRNAを作製するために構築されている(配列番号7〜9を参照されたい)。上記のようなRNA分子(例えば第1部分、連結配列および第2部分)は、このようなプロモーターと作動的に連結できる。RNAポリメラーゼIIIにより転写される場合、第1および第2部分は、ヘアピンの2本鎖ステムを形成し、連結配列はループを形成する。pSuperベクター(OligoEngines Ltd.、Seattle、Wash.)を用いてsiRNAを作製することもできる。
【0057】
修飾またはヌクレオチドの類似体を導入して、本発明の核酸分子の特性を改善できる。特性の改善は、ヌクレアーゼ耐性の増大および/または細胞膜を透過する能力の増大を含む。よって、用語「核酸分子」および「2本鎖RNA分子」は、それらに限定されないが、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、6-メチル-、2-プロピル-およびその他のアルキル-アデニン、5-ハロウラシル、5-ハロシトシン、6-アザシトシンおよび6-アザチミン、プソイドウラシル、4-チオウラシル、8-ハロアデニン、8-アミノアデニン、8-チオールアデニン、8-チオールアルキルアデニン、8-ヒドロキシルアデニンおよびその他の8-置換アデニン、8-ハログアニン、8-アミノグアニン、8-チオールグアニン、8-チオアルキルグアニン、8-ヒドロキシルグアニンおよびその他の置換グアニン、その他のアザおよびデアザアデニン、その他のアザおよびデアザグアニン、5-トリフルオロメチルウラシルならびに5-トリフルオロシトシンのような合成的に修飾された塩基を含む。
【0058】
形質、特に生産形質とそれを担う遺伝子
本発明の方法は、トリの種の任意の形質、特に卵内での胚の発生中に決定または影響される形質を改変するために用いることができる。改変され得る好ましい形質は、性別および筋肉量を含む。
【0059】
ある実施形態において、生産形質は、性別であり、核酸分子は、DMRT1遺伝子によりコードされるタンパク質のレベルを低減させる。DMRT1は、門の間の配列保存を示す性別決定に関係する最初の分子であった。DMRT1のトリ相同体は、ニワトリのZ(性別)染色体上で見出され、雄および雌のニワトリの胚の生殖隆起において異なって発現される(Raymondら、1999;Smithら、1999)。DMRT1は、発現の厳密な生殖腺パターンを有しているようである哺乳動物性別決定に今までのところ関係するいくつかの遺伝子のうちの1つである(Raymondら、1999)。
【0060】
ニワトリDMRT1タンパク質のレベルを低減させるために用いることができる核酸分子の例は、それらに限定されないが、以下のヌクレオチド配列またはそれらのいずれか1つの変異体の少なくとも1つを含むものを含む。
CCAGUUGUCAAGAAGAGCA(配列番号11)
GGAUGCUCAUUCAGGACAU(配列番号12)
CCCUGUAUCCUUACUAUAA(配列番号13)
GCCACUGAGUCUUCCUCAA(配列番号14)
CCAGCAACAUACAUGUCAA(配列番号15)
CCUGCGUCACACAGAUACU(配列番号16)
GGAGUAGUUGUACAGGUUG(配列番号17)
GACUGGCUUGACAUGUAUG(配列番号18)
AUGGCGGUUCUCCAUCCCU(配列番号19)
【0061】
特に好ましい実施形態において、ニワトリDMRT1タンパク質のレベルを低減させるために用いることができる核酸分子は、GCCACUGAGUCUUCCUCAA(配列番号14)の配列またはその変異体を含む。
【0062】
生産形質としての性別を改変する標的になり得る遺伝子のさらなる例は、WPKCI遺伝子である。トリ遺伝子WPKCIは、トリW染色体上で広く保存され、生殖腺分化の開始前に雌のニワトリの胚において活発に発現されることが示されている。WPKCIは、PKCIの機能を妨げることによるか、または核内でその独特の機能を提示することにより、雌の生殖腺の分化において役割を有しているようである(Horiら、2000)。この遺伝子は、ASW(トリ性別特異的W-連結)としても同定されている(O'Neillら、2000)。
【0063】
別の実施形態において、生産形質は筋肉量であり、核酸分子は、ミオスタチン遺伝子によりコードされるタンパク質のレベルを低減させる。「成長および分化因子-8」(GDF8)ともよばれるミオスタチンは、TGFβスーパーファミリーの最近発見されたメンバーである。ミオスタチンのmRNAおよびタンパク質は、骨格筋、心臓および乳腺で発現されることが示されている。マウスにおけるミオスタチン遺伝子の標的破壊と、非機能的ミオスタチンタンパク質が発現される筋肉を倍加させたベルギーブルー牛におけるミオスタチン遺伝子の3番目のエキソンにおける変異は、筋肉量の増大を導く。よって、ミオスタチンは、骨格筋成長の負の制御因子である。
【0064】
ニワトリミオスタチンタンパク質のレベルを低減させるために用いることができる核酸分子の例は、それらに限定されないが、以下のヌクレオチド配列またはそれらのいずれか1つの変異体の少なくとも1つを含むものを含む。
AAGCUAGCAGUCUAUGUUU(配列番号20)
GCUAGCAGUCUAUGUUUAU(配列番号21)
CGCUGAAAAAGACGGACUG(配列番号22)
AAAGACGGACUGUGCAAUG(配列番号23)
AGACGGACUGUGCAAUGCU(配列番号24)
UGCUUGUACGUGGAGACAG(配列番号25)
UACAAAAUCCUCCAGAAUA(配列番号26)
AAUCCUCCAGAAUAGAAGC(配列番号27)
UCCUCCAGAAUAGAAGCCA(配列番号28)
UAGAAGCCAUAAAAAUUCA(配列番号29)
GCCAUAAAAAUUCAAAUCC(配列番号30)
AAAUUCAAAUCCUCAGCAA(配列番号31)
AUUCAAAUCCUCAGCAAAC(配列番号32)
AUCCUCAGCAAACUGCGCC(配列番号33)
ACUGCGCCUGGAACAAGCA(配列番号34)
CAAGCACCUAACAUUAGCA(配列番号35)
GCACCUAACAUUAGCAGGG(配列番号36)
CAUUAGCAGGGACGUUAUU(配列番号37)
GCAGCUUUUACCCAAAGCU(配列番号38)
UUCCUGCAGUGGAGGAGCU(配列番号39)
CUGAUUGAUCAGUAUGAUG(配列番号40)
GACGAUGACUAUCAUGCCA(配列番号41)
CCGAGACGAUUAUCACAAU(配列番号42)
UGCCUACGGAGUCUGAUUU(配列番号43)
AUGGAGGGAAAACCAAAAU(配列番号44)
AACCAAAAUGUUGCUUCUU(配列番号45)
CCAAAAUGUUGCUUCUUUA(配列番号46)
AAUGUUGCUUCUUUAAGUU(配列番号47)
UGUUGCUUCUUUAAGUUUA(配列番号48)
GUUUAGCUCUAAAAUACAA(配列番号49)
AAUACAAUAUAACAAAGUA(配列番号50)
UACAAUAUAACAAAGUAGU(配列番号51)
UAUAACAAAGUAGUAAAGG(配列番号52)
CAAAGUAGUAAAGGCACAA(配列番号53)
AGUAGUAAAGGCACAAUUA(配列番号54)
AGGCACAAUUAUGGAUAUA(配列番号55)
UUAUGGAUAUACUUGAGGC(配列番号56)
GUCCAAAAACCUACAACGG(配列番号57)
AAACCUACAACGGUGUUUG(配列番号58)
ACCUACAACGGUGUUUGUG(配列番号59)
CGGUGUUUGUGCAGAUCCU(配列番号60)
GCCCAUGAAAGACGGUACA(配列番号61)
AGACGGUACAAGAUAUACU(配列番号62)
GAUAUACUGGAAUUCGAUC(配列番号63)
UUCGAUCUUUGAAACUUGA(配列番号64)
ACUUGACAUGAACCCAGGC(配列番号65)
CCCAGGCACUGGUAUCUGG(配列番号66)
GACAGUGCUGCAAAAUUGG(配列番号67)
AAUUGGCUCAAACAGCCUG(配列番号68)
UUGGCUCAAACAGCCUGAA(配列番号69)
ACAGCCUGAAUCCAAUUUA(配列番号70)
UCCAAUUUAGGCAUCGAAA(配列番号71)
UUUAGGCAUCGAAAUAAAA(配列番号72)
AUAAAAGCUUUUGAUGAGA(配列番号73)
AAGCUUUUGAUGAGACUGG(配列番号74)
GCUUUUGAUGAGACUGGAC(配列番号75)
GAUGGAUUGAACCCAUUUU(配列番号76)
CCCAUUUUUAGAGGUCAGA(配列番号77)
ACGGUCCCGCAGAGAUUUU(配列番号78)
CGGAAUCCCGAUGUUGUCG(配列番号79)
UCCAGUCCCAUCCAAAAGC(配列番号80)
GCUUUUGGAUGGGACUGGA(配列番号81)
AAGAUACAAAGCCAAUUAC(配列番号82)
GAUACAAAGCCAAUUACUG(配列番号83)
AGCCAAUUACUGCUCCGGA(配列番号84)
UUACUGCUCCGGAGAAUGC(配列番号85)
UGCGAAUUUGUGUUUCUAC(配列番号86)
CAGGUGAGUGUGCGGGUAU(配列番号87)
AUACCCGCACACUCACCUG(配列番号88)
GCAAAUCCCAGAGGUCCAG(配列番号89)
AUCCCAGAGGUCCAGCAGG(配列番号90)
GAUGUCCCCUAUAAACAUG(配列番号91)
ACAUGCUGUAUUUCAAUGG(配列番号92)
UGGAAAAGAACAAAUAAUA(配列番号93)
AAGAACAAAUAAUAUAUGG(配列番号94)
GAACAAAUAAUAUAUGGAA(配列番号95)
CAAAUAAUAUAUGGAAAGA(配列番号96)
AUAAUAUAUGGAAAGAUAC(配列番号97)
UAUAUGGAAAGAUACCAGC(配列番号98)
CCAGAAUAGAAGCCAUAAA(配列番号113)
GCACAAUUAUGGAUAUACU(配列番号114)
GUACAAGAUAUACUGGAAU(配列番号115)
CCUAUAAACAUGCUGUAUU(配列番号116)
GCGAAUUUGUGUUUCUACA(配列番号117)
GAGUAUUGAUGUGAAGACA(配列番号118)
CCUCCAGAAUAGAAGCCAU(配列番号119)
GGUCAGAGUUACAGACACA(配列番号120)
CAGUGGAUUUCGAAGCUUU(配列番号121)
CAACGGUGUUUGUGCAGAU(配列番号122)
【0065】
特に好ましい実施形態において、ニワトリミオスタチンタンパク質のレベルを低減させるために用いることができる核酸分子は、CAGGUGAGUGUGCGGGUAU(配列番号87)の配列またはその変異体を含む。
【0066】
ベクターおよび宿主細胞
本発明は、本発明の2本鎖領域またはその1本鎖を含む核酸分子をコードするベクターも提供する。好ましくは、ベクターは、宿主細胞および/または無細胞系にてdsRNAをコードするオープンリーディングフレーム(複数可)を発現できる発現ベクターである。宿主細胞は、それらに限定されないが細菌、真菌、植物または動物の細胞のような任意の型の細胞であり得る。
【0067】
典型的には、本発明のベクターは、本発明の核酸分子をコードするオープンリーディングフレームと作動的に連結したプロモーターまたはその鎖を含む。
【0068】
本明細書で用いる場合、用語「プロモーター」とは、作動的に連結された核酸分子の転写を支配できる核酸配列のことであり、例えば、RNAポリメラーゼIIおよびRNAポリメラーゼIIIのプロモーターを含む。この定義には、プロモーター依存性遺伝子発現を、細胞型特異的、組織特異的または時間特異的な様式で制御可能にするために十分であるか、または外部の因子もしくはシグナルによる誘導性である転写調節エレメント(例えばエンハンサー)も含まれる。
【0069】
「作動的に連結された」とは、本明細書で用いる場合、2つ以上の核酸(例えばDNA)セグメントの間の機能的関係のことをいう。典型的には、転写調節エレメントと転写される配列との機能的関係のことをいう。例えば、プロモーターは、それが適切な細胞内でコード配列の転写を刺激または調節するならば、本明細書で定義される2本鎖RNA分子をコードするオープンリーディングフレームのようなコード配列と作動的に連結されている。一般的に、転写される配列と作動的に連結されるプロモーター転写調節エレメントは、転写される配列と物理的に隣接しており、すなわちこれらはシス作用性である。しかし、エンハンサーのようないくつかの転写調節エレメントは、転写を増進させるコード配列と物理的に隣接するかまたはその近傍に位置する必要はない。
【0070】
「RNAポリメラーゼIIIプロモーター」または「RNA pol IIIプロモーター」または「ポリメラーゼIIIプロモーター」または「pol IIIプロモーター」とは、細胞内でのその天然の関係において、RNAポリメラーゼIIIと関連または相互作用して、それに作動的に連結された遺伝子またはその天然もしくは工学的に改変された変異体を転写し、選択された宿主細胞内でRNAポリメラーゼIIIと相互作用して作動的に連結された核酸配列を転写する任意の無脊椎動物、脊椎動物または哺乳動物、例えばニワトリ、ヒト、マウス、ブタ、ウシ、霊長類、サルなどのプロモーターを意味する。U6プロモーター(例えば、ニワトリU6、ヒトU6、マウスU6)、H1プロモーターまたは7SKプロモーターが、天然において、RNAポリメラーゼIIIと相互作用してその同族RNA産物、すなわちそれぞれU6 RNA、H1 RNAまたは7SK RNAを転写することが見出された任意の無脊椎動物、脊椎動物または哺乳動物のプロモーターまたは多型変異体もしくは突然変異体である。適切なプロモーターの例は、cU6-1(配列番号7)、cU6-3(配列番号8)、cU6-4(配列番号9)およびc7SK(配列番号10)を含む。
【0071】
大腸菌(E. coli)を宿主細胞として用いる場合、ベクターが、大腸菌(例えばJM109、DH5α、HB101またはXL1Blue)内でベクターを増幅し大量産生するための「ori」と、形質転換された大腸菌を選択するためのマーカー遺伝子(例えばアンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシンまたはクロラムフェニコールのような薬剤により選択される薬剤耐性遺伝子)を有するべきである以外は制限はない。例えば、M13シリーズベクター、pUCシリーズベクター、pBR322、pBluescript、pCR-Scriptなどを用いることができる。pGEM-T、pDIRECT、pT7なども、dsRNAおよび上記のベクターをコードする遺伝子のサブクローニングおよび切り出しのために用いることができる。
【0072】
大腸菌で用いるための発現ベクターについて、このようなベクターは、JM109、DH5α、HB101またはXL1Blueを含み、ベクターは、大腸菌内で所望の遺伝子の発現を効率的に促進できるlacZプロモーター、araBプロモーターまたはT7プロモーターのようなプロモーターを有するべきである。ベクターのその他の例は、「QIAexpressシステム」(Qiagen)、pEGFPおよびpETである(このベクターのために、T7RNAポリメラーゼを発現する株であるBL21を宿主として用いるのが好ましい)。
【0073】
大腸菌のためのベクターに加えて、例えば、ベクターは、哺乳類由来発現ベクター(例えばpcDNA3(Invitrogen)、pEGF-BOS、pEFおよびpCDM8)、昆虫細胞由来発現ベクター(例えば「Bac-to-BACバキュロウイルス発現系」(GibcoBRL)およびpBacPAK8)、植物由来発現ベクター(例えばpMH1およびpMH2)、動物ウイルス由来発現ベクター(例えばpHSV、pMVおよびpAdexLcw)、レトロウイルス由来発現ベクター(例えばpZIPneo)、酵母由来発現ベクター(例えば「ピキア(Pichia)発現キット」(Invitrogen)、pNV11およびSP-Q01)、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)由来発現ベクター(例えばpPL608およびpKTH50)であってよい。
【0074】
CHO、COS、VeroおよびNIH3T3細胞のような動物細胞において核酸分子を発現させるために、ベクターは、このような細胞における発現のために必要なプロモーター、例えばSV40プロモーター、MMLV-LTRプロモーター、EF1αプロモーター、CMVプロモーターなどを有するべきであり、より好ましくは、これは、形質転換体を選択するためのマーカー遺伝子を有する(例えば、薬剤により選択される薬剤耐性遺伝子(例えばネオマイシン、G418など))。このような特徴を有するベクターの例は、pMAM、pDR2、pBK-RSV、pBK-CMV、pOPRSVおよびpOP13を含む。
【0075】
本発明の2本鎖領域を含む核酸分子は、例えば、核酸をコードするオープンリーディングフレーム(複数可)を適切なベクターに挿入し、ベクターをレトロウイルス法、リポソーム法、カチオンリポソーム法、アデノウイルス法などにより導入することにより、動物で発現させ得る。用いられるベクターは、それらに限定されないが、アデノウイルスベクター(例えばpAdexlcw)およびレトロウイルスベクター(例えばpZIPneo)を含む。本発明の核酸のベクターへの挿入のような遺伝子操作の一般的な技術は、通常の方法に従って行うことができる。
【0076】
本発明は、典型的には本発明のベクター内の外因性核酸分子が導入された宿主細胞も提供する。本発明の宿主細胞は、例えば、核酸分子を産生または発現させるための産生系として用い得る。例えばin vitro産生のために、真核細胞または原核細胞を用い得る。
【0077】
有用な真核宿主細胞は、動物、植物または真菌細胞であり得る。動物細胞として、CHO、COS、3T3、骨髄腫、ベビーハムスター腎臓(BHK)、HeLaもしくはVero細胞、MDCK細胞、DF1細胞のような哺乳動物細胞、アフリカツメガエル(Xenopus)卵母細胞のような両生類細胞、またはSf9、Sf21もしくはTn5細胞のような昆虫細胞を用い得る。DHFR遺伝子を欠くCHO細胞(dhfr-CHO)またはCHO K-1を用いることもできる。ベクターは、宿主細胞に、例えばリン酸カルシウム法、DEAE-デキストラン法、カチオンリポソームDOTAP(Boehringer Mannheim)法、エレクトロポレーション、リポフェクションなどにより導入できる。
【0078】
有用な原核細胞は、大腸菌、例えばJM109、DH5aおよびHB101またはバシラス・サチリスのような細菌細胞を含む。
【0079】
DMEM、MEM、RPMI-1640またはIMDMのような培養培地を動物細胞用に用いてよい。培養培地は、胎児ウシ血清(FCS)のような血清補充物とともにまたはなしで用い得る。培養培地のpHは、好ましくは約6〜8の間である。細胞は、典型的には、約30〜40℃にて約15〜200時間培養され、培養培地は、必要ならば置換、曝気または撹拌してよい。
【0080】
組成物
本発明は、トリの卵に投与できる2本鎖領域を含む核酸分子を含む組成物も提供する。2本鎖領域を含む核酸分子を含む組成物は、組成物を投与に適したものにするために、医薬的に許容される担体を含有してよい。
【0081】
適切な医薬担体、賦形剤および/または希釈剤は、それらに限定されないが、ラクトース、スクロース、デンプン粉末、タルク粉末、アルカン酸のセルロースエステル、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、グリセリン、アルギン酸ナトリウム、抗菌剤、抗真菌剤、アラビアゴム、アカシアゴム、リン酸および硫酸のナトリウムならびにカルシウム塩、ポリビニルピロリドンおよび/またはポリビニルアルコール、塩水ならびに水を含む。ある実施形態において、担体、賦形剤および/または希釈剤は、リン酸緩衝塩水または水である。
【0082】
組成物は、トランスフェクション促進剤も含み得る。核酸の生細胞への取り込みを助長するために用いられるトランスフェクション促進剤は、当該技術において公知である。トランスフェクションを増強する試薬は、ポリカチオン、デンドリマー、DEAEデキストラン、ブロック共重合体およびカチオン性脂質の型の化学物質ファミリーを含む。好ましくは、トランスフェクション促進剤は、ミセルまたはリポソームとして一般的に知られる小胞への水性溶液中での自己集合を可能にする正に荷電された親水性領域と脂肪酸アシル疎水性領域とを提供する脂質含有化合物(または製剤)、およびリポポリアミンである。
【0083】
本発明の組成物または方法に不適合でない限りは、任意の通常の媒体または作用物質を用いてよいことが理解される。
【0084】
投与
2本鎖領域を含む核酸分子(2本鎖領域を含む核酸分子を含む組成物を含む)の投与は、卵への注入、一般的には気嚢への注入により、簡便に達成される。in ovo投与の好ましい経路は気嚢であるが、卵黄嚢または卵膜尿膜液のようなその他の領域へ注入により接種してもよい。孵化率は、投与の標的が気嚢でない場合はわずかに低減するが、必ずしも商業的に受け入れがたいレベルではない。針が卵または発生中の胚もしくは胚を取り囲む胚体外膜の組織および器官に過度の損傷を引き起こさないことが好ましいが、注入の機構は本発明の実行に重要でない。
【0085】
生産形質が性別である場合、核酸分子は、産卵してから4日以内に卵に投与することが好ましい。
【0086】
一般的に、およそ22ゲージ針を装着した皮下注射器が適切である。本発明の方法は、米国特許第4,903,635号、米国特許第5,056,464号、米国特許第5,136,979号および米国特許出願公開第20060075973号に記載されるもののような自動化注入システムで用いるために特によく適合される。
【0087】
核酸分子は、少なくともある程度は標的形質を改変するのに十分な有効量で投与される。性別について、改変は、本発明の方法に供した適切な数の試料を、供していない同様の数と比較することにより検出できる。2つの群の間の鳥の性別における統計学的に有意な変動は、有効量が投与されたことを示す。性別またはその他の形質についての有効量を決定するための他の手段は、当業者の能力の範囲内にある。
【0088】
好ましくは、約1ng〜100μg、より好ましくは約100ng〜1μgの核酸を卵に投与する。さらに、投与される核酸は、約1μl〜1ml、より好ましくは約10μl〜500μlの容量中にあることが好ましい。
【0089】
(実施例)
(実施例1)
ニワトリでのDMRT1タンパク質産生を下方制御するためのshRNA分子の同定
DMRT1を標的にするshRNA配列の選択
本発明者らは、Ambionにより設計されたsiRNAターゲットファインダー(www.ambion.com/techlib/misc/siRNA_finder.html)を用いて、Dmrt1についての30個の予測siRNA配列を選択した。30個のsiRNA配列を、次いで、shRNAの選択のためにスクリーニングした(Table1(表1))。特定の標的遺伝子についての可能性のあるsiRNA配列を選択するために用い得るいくつかのアルゴリズムが存在する。しかし、これらの予測siRNAの多くが、発現されたshRNAからプロセシングされたときに有効に機能しないことが示されている。Taxmanら(2006)は、有効なshRNA分子を予測するアルゴリズムを特に設計し、本発明者らは、shRNA予測を改良するためにそのアルゴリズムに独自の改変を加えた。本発明者らは、Dmrt1遺伝子発現の特異的ノックダウンのためのshRNAとして試験するための配列を選択するように、改変Taxmanアルゴリズムを、30個の選択されたsiRNAに適用した。
【0090】
Taxmanアルゴリズムを用いるshRNA選択のために4つの基準がある。基準の3つは、4点の最大数のうちから評点される。これらの基準は、1)配列の5'末端にCまたはG=1点、5'末端にAまたはT=-1点;2)3'末端にAまたはT=1点、3'末端にCまたはG=-1点;3)7つの3'塩基のうち5つ以上のAまたはT=2点、7つの3'塩基のうち4つのAまたはT=1点。最高のスコアのshRNA配列が好ましい。4番目の基準は、shRNA配列の6つの中央の塩基の自由エネルギーの算出に基づく(アンチセンス鎖の塩基9〜14とハイブリッド形成するセンス鎖の塩基6〜11)。中央の2本鎖のΔG>-12.9kcal/molのshRNAが好ましい。Taxmanアルゴリズムへの改変は、Freierら(1986)により発表されたRNA 2本鎖安定性の予測についての異なる自由エネルギーパラメータを用いることである。アルゴリズムに基づいて、本発明者らは、6つのsiRNAターゲットファインダーsiRNA配列を可能性のある有効shRNAとして選択して、Dmrt1遺伝子発現をノックダウンするそれらの能力について試験した。選択された配列は、Table1(表1)に太字で強調し、その5'〜3'配列をTable2(表2)に示す。これらの6つの配列を用いて、6つのshRNAの発現のためのddRNAiプラスミドを構築した。
【0091】
選択したshRNAの発現のためのddRNAiプラスミドの構築
ニワトリポリメラーゼIIIプロモーターcU6-1(GenBankアクセッション番号DQ531567)およびcU6-4(DQ531570)を鋳型として用いて、選択したdmrt1および対照(EGFPおよび無関係の)shRNAのためのddRNAi発現プラスミドを、1ステップPCRにより構築した(図1)。shRNAプラスミドの構築のためのPCRは、プライマーTD175とTH346(shDmrt1-346用)、TH461(shDmrt1-461)、TH566(shDmrt1-566)、TH622(shDmrt1-622)、TH697(shDmrt1-697)、TH839(shDmrt1-839)またはTD195(shEGFP)との対を用いた(プライマー配列および増幅された具体的なshRNAの詳細についてTable 3(表3)を参照されたい)。各PCRでのリバースプライマーは、各プロモーター配列の最後の20nt、shRNAセンス、ループおよびshRNAアンチセンス配列を含むように設計し、HPLCで精製した。全長の増幅した発現カセット産物をpGEM-T Easyに連結し、次いで配列決定した。遺伝子ノックダウンアッセイに用いた最終的なshRNA発現プラスミドは、pshDmrt1-346、pshDmrt1-461、pshDmrt1-566、pshDmrt1-622、pshDmrt1-697、pshDmrt1-839およびpshEGFPと命名した。cU6-1の無関係の対照プラスミドも構築し、遺伝子発現アッセイにおいて模擬比較として用いた(以下を参照されたい)。この模擬プラスミドについて、フォワードプライマーTD135を、chU6-1プロモーターの最後の20ntおよびその他の全ての無関係のshRNA成分を含むリバースプライマーTD149と対にした。PCR産物を、pGEM-T Easyに連結し、配列決定した。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
【表3】

【0095】
それぞれのddRNAiプラスミドは、それぞれのshRNA配列の開始が天然のU6 snRNA転写産物の+1位にあるように構築した。XhoI制限酵素部位を終結シグナルの下流に工学的に作製して、pGEM-T Easyに挿入された全長shRNA産物のスクリーニングを可能にした。全ての最終のshRNA発現ベクターは、全長ニワトリU6プロモーターのいずれか1つ、shRNAセンス配列、ループ配列、shRNAアンチセンス配列、終結配列およびXhoI部位からなった。全てのshRNAに用いたループ配列は、5'UUCAAGAGA3'であった。
【0096】
Dmrt1遺伝子発現のノックダウンについての選択したshRNAの試験
レポーター遺伝子発現アッセイを用いて、shRNAを、Dmrt1の発現抑制について試験した。レポーター遺伝子は、pEGFP-C(Clontech)中の高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)遺伝子の3'末端の下流に挿入されたDmrt1の転写遺伝子融合体であった。レポータープラスミドは、次のようにして構築した。Dmrt1のcDNAを、4日齢の胚から単離した全RNAから逆転写し、pCMV-Script(Stratagene)のマルチクローニング部位にクローニングした。Dmrt1挿入断片を、NotI-EcoRI断片としてクローニングベクターから回収し、pEGFP-C(Clontech)中のEGFP遺伝子の下流にクローニングした。得られたプラスミドは、pEGFP-Dmrt1と命名した。このプラスミドを、ニワトリDF-1細胞にトランスフェクションし、転写遺伝子融合体の発現を、以下に記載するようにフローサイトメトリーを用いてEGFP蛍光を測定することにより確認した。DF-1細胞は、ニワトリ胚繊維芽細胞の継続系統で、EV-0胚(ATCC、CRL-12203)に由来するので、RNAi分子のin ovo効果を研究するためのモデル系である。
【0097】
Dmrt1遺伝子発現抑制アッセイは、DF-1細胞に、pEGFP-Dmrt1レポータープラスミドとDmrt1特異的および対照shRNAを発現するddRNAiプラスミドのそれぞれとを同時トランスフェクションすることにより行った。同時トランスフェクション実験は、次のようにして行った。DF-1細胞(ATCC CRL- 12203、ニワトリ繊維芽細胞)を、5%CO2を含有する湿潤雰囲気で37℃にて、4.5g/lグルコース、1.5g/l重炭酸ナトリウム、10%胎児ウシ血清(FCS)、2mM L-グルタミンを含有し、ペニシリン(100U/ml)およびストレプトマイシン(100μg/ml)を補ったダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)中で維持した。DF1細胞は、必要に応じて、0.25%(w/v)トリプシン-エチレンジアミン4酢酸(EDTA)を用いて継代した。
【0098】
EGFP-Dmrt1融合体発現抑制アッセイのためのpEGFP-Dmrt1プラスミドとddRNAiプラスミドとの同時トランスフェクションは、フローサイトメトリー分析用の24ウェル培養プレート(Nunc)中で、80〜90%集密まで成長したDF-1細胞で行った。細胞に、ウェルあたり合計で1μgのプラスミドDNAを、Lipofectamine(商標)2000トランスフェクション試薬(Invitrogen)を用いてトランスフェクションした。EGFP発現を、トランスフェクションしたDF-1細胞で、トランスフェクションの60時間後に、3連で行うトランスフェクションのフローサイトメトリー分析を用いて分析した。細胞を、100μlの0.25%トリプシン-EDTAを用いてトリプシン処理し、2000rpmで5分間沈渣させ、1mlの冷リン酸緩衝塩水-A(PBSA)(Oxoid)で1回、1mlのFACS洗浄溶液(PBSA+1% FCS)で2回洗浄し、250μlのFACS洗浄溶液に再懸濁した。フローサイトメトリーのサンプリングは、FACScalibur(Becton Dickinson)蛍光活性化細胞ソーターを用いて行った。3連の同時トランスフェクション試料のデータ取得および平均蛍光強度(MFI)の値の算出は、CELLQuestソフトウェア(Becton Dickinson)を用いて行った。遺伝子発現抑制アッセイの結果を、図2に示す。pshEGFPは、陽性対照として用いた。このプラスミドから発現されるshRNAは、融合転写産物のEGFP領域を効率的に標的にすることが知られ、レポーターの蛍光をおよそ50%低減させることが示された。pshIrrから発現された無関係のshRNAの陰性対照と比較して、Dmrt1特異的shRNAは、レポーター遺伝子の発現を種々のレベルにノックダウンしたことが観察された。shDmrt1-622は、およそ60%の遺伝子発現抑制の最高レベルを誘発した。
【0099】
(実施例2)
ニワトリでのミオスタチンタンパク質産生を下方制御するためのshRNA分子の同定
ミオスタチン(Gdf8)を標的にするshRNA配列の選択
79個のGdf8についての予測siRNA配列を、Ambionにより設計されたsiRNAターゲットファインダー(www.ambion.com/techlib/misc/siRNA_finder.html)を用いて同定した(Table4(表4))。Taxmanアルゴリズムを用いて最適化した付加的なsiRNA配列を、Table5(表5)に示す。本発明者らは、これらの配列のうち3つ(Gdf8-258、Gdf8-913およびGdf8-1002)を、shRNAの発現のためのddRNAiプラスミドの構築のために選択した(Table4(表4)において太字で示す)。
【0100】
選択したshRNAの発現のためのddRNAiプラスミドの構築
ニワトリポリメラーゼIIIプロモーターcU6-1(GenBankアクセッション番号DQ531567)を鋳型として用いて、選択したGdf8およびcEGFP shRNAのためのddRNAi発現プラスミドを、1ステップPCRにより構築した(図1)。shRNAプラスミドの構築のためのPCRは、プライマーTD 135とDS304(shGdf8-253用)、DS305(shGdf8-913)、DS306(shGdf8-1002)またはTD148(shEGFP)との対を用いた(プライマー配列および増幅された具体的なshRNAについてTable6(表6)を参照されたい)。各PCRでのリバースプライマーは、各プロモーター配列の最後の20nt、shRNAセンス、ループおよびshRNAアンチセンス配列を含むように設計し、HPLCで精製した。全長の増幅した発現カセット産物をpGEM-T Easyに連結し、次いで配列決定した。遺伝子ノックダウンアッセイに用いた最終的なshRNA発現プラスミドは、pshGdf8-253、pshGdf8-913、pshGdf8-1002およびpshEGFPと命名した。
【0101】
【表4A】

【0102】
【表4B】

【0103】
【表5】

【0104】
それぞれのddRNAiプラスミドは、それぞれのshRNA配列の開始が天然のU6 snRNA転写産物の+1位にあるように構築した。XhoI制限酵素部位を終結シグナルの下流に工学的に作製して、pGEM-T Easyに挿入された全長shRNA産物のスクリーニングを可能にした。全ての最終のshRNA発現ベクターは、全長ニワトリU6プロモーター、shRNAセンス配列、ループ配列、shRNAアンチセンス配列、終結配列およびXhoI部位からなった。全てのshRNAに用いたループ配列は、5'UUCAAGAGA3'であった。
【0105】
【表6】

【0106】
Gdf8遺伝子発現のノックダウンについての選択したshRNAの試験
レポーター遺伝子発現アッセイを用いて、3つの選択したshRNAを、Gdf8の発現抑制について試験した。レポーター遺伝子は、pEGFP-C(Clontech)中の高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)の3'末端の下流に挿入されたGdf8の転写遺伝子融合体であった。レポータープラスミドは、次のようにして構築した。Gdf8のcDNAを、7日齢の胚から単離した全RNAから逆転写し、pGEM-T Easy(Promega)のマルチクローニング部位にクローニングした。Gdf8挿入断片を、NotI断片としてクローニングベクターから回収し、pEGFP-C(Clontech)中のEGFP遺伝子の下流にクローニングした。得られたプラスミドは、pEGFP-Gdf8と命名した。このプラスミドを、ニワトリDF-1細胞にトランスフェクションし、転写遺伝子融合体の発現を、以下に記載するようにフローサイトメトリーを用いてEGFP蛍光を測定することにより確認した。
【0107】
Gdf8遺伝子発現抑制アッセイは、DF-1細胞に、pEGFP-Gdf8レポータープラスミドとGdf8特異的またはEGFP対照shRNAを発現するddRNAiプラスミドのそれぞれとを同時トランスフェクションすることにより行った。同時トランスフェクション実験は、次のようにして行った。DF-1細胞(ATCC CRL- 12203、ニワトリ繊維芽細胞)を、5%CO2を含有する湿潤雰囲気で37℃にて、4.5g/lグルコース、1.5g/l重炭酸ナトリウム、10%胎児ウシ血清(FCS)、2mM L-グルタミンを含有し、ペニシリン(100U/ml)およびストレプトマイシン(100μg/ml)を補ったダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)中で維持した。DF1細胞は、必要に応じて、0.25%(w/v)トリプシン-エチレンジアミン4酢酸(EDTA)を用いて継代した。
【0108】
EGFP-Gdf8融合体発現抑制アッセイのためのpEGFP-Gdf8とddRNAiプラスミドとの同時トランスフェクションは、蛍光顕微鏡分析のための8ウェルチャンバースライド(Nunc)中で、80〜90%集密まで成長したDF-1細胞で行った。細胞に、ウェルあたり合計で1μgのプラスミドDNAを、Lipofectamine(商標)2000トランスフェクション試薬(Invitrogen)を用いてトランスフェクションした。EGFP発現を、トランスフェクションしたDF-1細胞で、トランスフェクションの60時間後に、次のようにして分析した。8ウェルチャンバースライド中の同時トランスフェクションされた細胞をPBSAで洗浄し、チャンバースライドの囲いを除去し、カバーガラスを細胞単層の上に載せた。顕微鏡観察を、Leica DM LB蛍光顕微鏡(Leica Microsystems、Germany)を用いて行い、画像を、50×の倍率で、Leica DC300Fカラーデジタルカメラ(Leica Microsystems、Germany)およびPhotoshop 7.0画像処理ソフトウェア(Adobe(登録商標))を用いて取得した。結果を図3に示す。shGdf8-1002は、融合転写産物の発現を非常に効率的に発現抑制したので、天然Gdf8転写産物の発現抑制のための優れた候補であろう。
【0109】
具体的な実施形態に示すように、本発明には多数の変更および/または改変を、広く記載される本発明の本質または範囲から逸脱することなく行うことができることが、当業者に認識されるだろう。よって、本発明の実施形態は、全ての点で、説明のためであり限定するものでないとみなされる。
【0110】
本出願は、2007年6月13日に出願された米国特許出願第60/943,708号の優先権を主張し、その全体の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0111】
本明細書で論じられ、かつ/または参照される全ての出版物は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0112】
本明細書に含まれる文献、行為、材料、デバイス、物体のいずれの議論も、本発明の場面を提供する目的のものに過ぎない。これらのことのいずれかまたは全てが、従来技術の基礎を形成するか、または本出願のそれぞれの請求項の優先日前に存在していた本発明に関連する分野の一般的な周知技術であることを認めるものであるとみなすべきでない。
【0113】
(参考文献)
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Elbashire et al. (2001) Nature 411 :494-498 Hori et al. (2000) MoI Biol Cell 11 :3645-3660
Freier et al. (1986) Proc Natl Acad Sci USA 83:9373-9377
Needleman and Wunsch (1970) J MoI Biol 48: 443-453
O'Neill et al. (2000) Dev Genes Evol 210:243-249
Raymond et al. (1999) Dev Biol. 215:208-220 Reynolds et al. (2004) Nat. Biotech., 22:326-330
Smith et al. (1999) Nature 402:601-602
Smith et al. (2000) Nature 407: 319-320.
Taxman et al. (2006) BMC Biotechnol, Jan 24, 6:7
Waterhouse et al. (1998) Proc Natl Acad Sci USA 95:13959-13964

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリの形質を改変する方法であって、トリの卵に2本鎖領域を含む少なくとも1つの核酸分子を投与する段階を含み、前記核酸分子が前記卵内の少なくとも1つのRNA分子および/またはタンパク質のレベルの低減をもたらす方法。
【請求項2】
前記核酸分子がdsRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記dsRNAがsiRNAまたはshRNAである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記形質が生産形質である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記生産形質が筋肉量または性別である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記生産形質が性別であり、前記核酸分子がDMRT1遺伝子によりコードされるタンパク質のレベルを低減させる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記核酸分子が、
CCAGUUGUCAAGAAGAGCA(配列番号11)
GGAUGCUCAUUCAGGACAU(配列番号12)
CCCUGUAUCCUUACUAUAA(配列番号13)
GCCACUGAGUCUUCCUCAA(配列番号14)
CCAGCAACAUACAUGUCAA(配列番号15)
CCUGCGUCACACAGAUACU(配列番号16)
GGAGUAGUUGUACAGGUUG(配列番号17)
GACUGGCUUGACAUGUAUG(配列番号18)
AUGGCGGUUCUCCAUCCCU(配列番号19)、
またはそれらのいずれか1つの変異体から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記生産形質が筋肉量であり、前記核酸分子がミオスタチン遺伝子によりコードされるタンパク質のレベルを低減させる、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記核酸分子が、配列CAGGUGAGUGUGCGGGUAU(配列番号87)またはその変異体を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記核酸分子が注入により投与される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記トリが、ニワトリ、カモ、シチメンチョウ、ガチョウ、チャボおよびウズラから選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を用いて生産されたトリ。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を用いて生産されたニワトリ。
【請求項14】
トリの卵に投与されたときに少なくとも1つのRNA分子および/またはタンパク質のレベルを低減させる2本鎖領域を含む単離および/または外因性核酸分子。
【請求項15】
dsRNA分子である、請求項14に記載の核酸分子。
【請求項16】
DMRT1遺伝子またはミオスタチン遺伝子によりコードされるタンパク質のレベルを低減させる、請求項14または請求項15に記載の核酸分子。
【請求項17】
CCAGUUGUCAAGAAGAGCA(配列番号11)
GGAUGCUCAUUCAGGACAU(配列番号12)
CCCUGUAUCCUUACUAUAA(配列番号13)
GCCACUGAGUCUUCCUCAA(配列番号14)
CCAGCAACAUACAUGUCAA(配列番号15)
CCUGCGUCACACAGAUACU(配列番号16)
GGAGUAGUUGUACAGGUUG(配列番号17)
GACUGGCUUGACAUGUAUG(配列番号18)
AUGGCGGUUCUCCAUCCCU(配列番号19)
AAGCUAGCAGUCUAUGUUU(配列番号20)
GCUAGCAGUCUAUGUUUAU(配列番号21)
CGCUGAAAAAGACGGACUG(配列番号22)
AAAGACGGACUGUGCAAUG(配列番号23)
AGACGGACUGUGCAAUGCU(配列番号24)
UGCUUGUACGUGGAGACAG(配列番号25)
UACAAAAUCCUCCAGAAUA(配列番号26)
AAUCCUCCAGAAUAGAAGC(配列番号27)
UCCUCCAGAAUAGAAGCCA(配列番号28)
UAGAAGCCAUAAAAAUUCA(配列番号29)
GCCAUAAAAAUUCAAAUCC(配列番号30)
AAAUUCAAAUCCUCAGCAA(配列番号31)
AUUCAAAUCCUCAGCAAAC(配列番号32)
AUCCUCAGCAAACUGCGCC(配列番号33)
ACUGCGCCUGGAACAAGCA(配列番号34)
CAAGCACCUAACAUUAGCA(配列番号35)
GCACCUAACAUUAGCAGGG(配列番号36)
CAUUAGCAGGGACGUUAUU(配列番号37)
GCAGCUUUUACCCAAAGCU(配列番号38)
UUCCUGCAGUGGAGGAGCU(配列番号39)
CUGAUUGAUCAGUAUGAUG(配列番号40)
GACGAUGACUAUCAUGCCA(配列番号41)
CCGAGACGAUUAUCACAAU(配列番号42)
UGCCUACGGAGUCUGAUUU(配列番号43)
AUGGAGGGAAAACCAAAAU(配列番号44)
AACCAAAAUGUUGCUUCUU(配列番号45)
CCAAAAUGUUGCUUCUUUA(配列番号46)
AAUGUUGCUUCUUUAAGUU(配列番号47)
UGUUGCUUCUUUAAGUUUA(配列番号48)
GUUUAGCUCUAAAAUACAA(配列番号49)
AAUACAAUAUAACAAAGUA(配列番号50)
UACAAUAUAACAAAGUAGU(配列番号51)
UAUAACAAAGUAGUAAAGG(配列番号52)
CAAAGUAGUAAAGGCACAA(配列番号53)
AGUAGUAAAGGCACAAUUA(配列番号54)
AGGCACAAUUAUGGAUAUA(配列番号55)
UUAUGGAUAUACUUGAGGC(配列番号56)
GUCCAAAAACCUACAACGG(配列番号57)
AAACCUACAACGGUGUUUG(配列番号58)
ACCUACAACGGUGUUUGUG(配列番号59)
CGGUGUUUGUGCAGAUCCU(配列番号60)
GCCCAUGAAAGACGGUACA(配列番号61)
AGACGGUACAAGAUAUACU(配列番号62)
GAUAUACUGGAAUUCGAUC(配列番号63)
UUCGAUCUUUGAAACUUGA(配列番号64)
ACUUGACAUGAACCCAGGC(配列番号65)
CCCAGGCACUGGUAUCUGG(配列番号66)
GACAGUGCUGCAAAAUUGG(配列番号67)
AAUUGGCUCAAACAGCCUG(配列番号68)
UUGGCUCAAACAGCCUGAA(配列番号69)
ACAGCCUGAAUCCAAUUUA(配列番号70)
UCCAAUUUAGGCAUCGAAA(配列番号71)
UUUAGGCAUCGAAAUAAAA(配列番号72)
AUAAAAGCUUUUGAUGAGA(配列番号73)
AAGCUUUUGAUGAGACUGG(配列番号74)
GCUUUUGAUGAGACUGGAC(配列番号75)
GAUGGAUUGAACCCAUUUU(配列番号76)
CCCAUUUUUAGAGGUCAGA(配列番号77)
ACGGUCCCGCAGAGAUUUU(配列番号78)
CGGAAUCCCGAUGUUGUCG(配列番号79)
UCCAGUCCCAUCCAAAAGC(配列番号80)
GCUUUUGGAUGGGACUGGA(配列番号81)
AAGAUACAAAGCCAAUUAC(配列番号82)
GAUACAAAGCCAAUUACUG(配列番号83)
AGCCAAUUACUGCUCCGGA(配列番号84)
UUACUGCUCCGGAGAAUGC(配列番号85)
UGCGAAUUUGUGUUUCUAC(配列番号86)
CAGGUGAGUGUGCGGGUAU(配列番号87)
AUACCCGCACACUCACCUG(配列番号88)
GCAAAUCCCAGAGGUCCAG(配列番号89)
AUCCCAGAGGUCCAGCAGG(配列番号90)
GAUGUCCCCUAUAAACAUG(配列番号91)
ACAUGCUGUAUUUCAAUGG(配列番号92)
UGGAAAAGAACAAAUAAUA(配列番号93)
AAGAACAAAUAAUAUAUGG(配列番号94)
GAACAAAUAAUAUAUGGAA(配列番号95)
CAAAUAAUAUAUGGAAAGA(配列番号96)
AUAAUAUAUGGAAAGAUAC(配列番号97)
UAUAUGGAAAGAUACCAGC(配列番号98)
CCAGAAUAGAAGCCAUAAA(配列番号113)
GCACAAUUAUGGAUAUACU(配列番号114)
GUACAAGAUAUACUGGAAU(配列番号115)
CCUAUAAACAUGCUGUAUU(配列番号116)
GCGAAUUUGUGUUUCUACA(配列番号117)
GAGUAUUGAUGUGAAGACA(配列番号118)
CCUCCAGAAUAGAAGCCAU(配列番号119)
GGUCAGAGUUACAGACACA(配列番号120)
CAGUGGAUUUCGAAGCUUU(配列番号121)
CAACGGUGUUUGUGCAGAU(配列番号122)、
またはそれらのいずれか1つの変異体から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、請求項16に記載の核酸分子。
【請求項18】
請求項14から17のいずれか一項に記載の核酸分子またはその1本鎖をコードするベクター。
【請求項19】
請求項14から17のいずれか一項に記載の外因性核酸分子もしくはその1本鎖および/または請求項18に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項20】
請求項14から17のいずれか一項に記載の核酸分子もしくはその1本鎖、請求項18に記載のベクターおよび/または請求項19に記載の宿主細胞を含む組成物。
【請求項21】
請求項14から17のいずれか一項に記載の核酸分子もしくはその1本鎖、請求項18に記載のベクターおよび/または請求項19に記載の宿主細胞を含むトリの卵。
【請求項22】
請求項14から17のいずれか一項に記載の核酸分子もしくはその1本鎖、請求項18に記載のベクター、請求項19に記載の宿主細胞および/または請求項20に記載の組成物を含むキット。
【請求項23】
個々にまたはまとめて特許請求の範囲に開示され、または本出願の明細書に示される段階、特徴、整数、組成物および/または化合物、ならびに前記段階または特徴の2つ以上のありとあらゆる組合せ。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−528667(P2010−528667A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511446(P2010−511446)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際出願番号】PCT/AU2008/000835
【国際公開番号】WO2008/151364
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(305039998)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼイション (92)
【出願人】(509336266)オーストラリアン ポールトリー シーアールシー ピーティーワイ リミテッド (4)
【Fターム(参考)】